説明

車両用メンバー製作方法及びこれを利用したサイドメンバー

【課題】付加的な補強材なく衝突エネルギーの吸収方向性を安定的に維持し、衝突吸収性能を向上させる車両用メンバー製作方法及びこれを利用したサイドメンバーを提供する。
【解決手段】ボロン鋼板を素材としてメンバー用のブランクを準備する段階S1と、ブランクを変態点温度以上の高温でプレス熱間成形によってメンバーを成形する段階S2と、熱間成形されたメンバーを第1冷却法によって冷却して、高強度の第1金属組織を有するようにする段階S3と、高強度の第1金属組織を有するメンバーに対してエネルギー吸収方向性を考慮して計算された位置に加熱源を通じて変態点温度まで2次加熱する段階S4と、2次加熱されたメンバーを第2冷却法によって冷却して、部分的に相対的な低強度の第2金属組織を有するようにする段階S5と、第1金属組織上に部分的に第2金属組織を有するメンバーを組立てる段階S6と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用メンバー製作方法及びこれを利用したサイドメンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車メーカーで最初に新車を開発する時には、開発された車両の安全性を検証するために多様な安全性試験を行うが、これは一定の基準を準備し、この基準に符合するかどうかによって完成度をチェックする。
【0003】
車両における安全性は特に、乗車者の生命に関するものであって、車両の完成度に最も大きい影響を与える要素であると言え、世界の各国でもこのような車両の安全度に最も厳しい基準を適用しているのが実情である。
【0004】
このような安全性試験において、特に、車両の正面衝突に備えるための車両用フロントサイドメンバーSMは、図1で示したように、その前方先端にクラッシュボックスとステイを通じてバンパービーム5が設けられ、中央部にダッシュパネル7が溶接組立され、その後方先端がセンターサイドメンバー9と溶接組立される。
【0005】
このように組立てられたフロントサイドメンバーSMは、前方のバンパービーム5から衝突エネルギーFが1次吸収された後、残余衝突エネルギーFが伝えられると、その残余衝突エネルギーFを車体に伝達する機能を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフロントサイドメンバーSMは、スチール(Steel)系鋼板素材をプレス成形して構成されるインナーメンバー11とアウターメンバー13からなって、その強度性能と軽量化を同時に満足するのには限界があった。
【0007】
そのために、最近は強度性能と軽量化を同時に満足させる新成形工法と高強度超軽量新素材に関する研究が集中されている。
【0008】
このような研究開発の一環として、前記フロントサイドメンバーSMに適用される新成形工法の事例としては、プレス成形(press stamping)工法に代替したロールフォーミング(roll forming)工法で超高張力鋼板の成形を可能にすることによって適用素材の厚さを薄くして従来プレス成形品対比15%以上の軽量化を可能にした。
【0009】
また、互いに異なる材質、厚さ、強度を有する素材で注文型ブランクを製造するTWB(tailor welded blank)及びTRB(tailor rolled blank)技術、一体化成形技術である液圧成形(hydro forming)技術などが適用される。
【0010】
特に、最近は図2で示したように、ボロン鋼板15を利用した熱間プレス成形技術であるホットスタンピング技術が活発に研究されている。
【0011】
つまり、ホットスタンピング技術はボロン鋼板15を適正温度(約900℃)に加熱して、プレス金型17内でプレス成形で一度に成形した後、急速冷却して高強度部品19を製造する成形技術であって、ここに適用されるボロン鋼板15は微量のボロン(boron、B)を添加した鋼板で、前記適正温度条件でのオーステナイト結晶粒界でボロンが原子状態で偏析して、オーステナイト結晶粒界の自由エネルギーを下げることで初析フェライト核生成を抑制させて鋼の硬化能(クエンチングする時、マルテンサイト形成で硬化する鋼の能力)を顕著に改善させる。
【0012】
このようなホットスタンピング成形は従来の高強度鋼を利用した成形法とは異なって、成形前500〜800MPa程度の引張強度を有するフェライト組織のボロン鋼板を900℃以上の高温でオーステナイト化して高温成形した後、急速冷却させて1300〜1600MPa程度の高引張強度を有するマルテンサイト組織Mの成形品を得るようになる。
【0013】
ここで得られるホットスタンピング成形品は一般の鋼板部品より強度が4〜5倍高く、さらに重量は従来のそれに比べて最大40%まで減少して前記のような車体の軽量化と強度向上を同時に達成することができる利点があった。
【0014】
しかし、前記のような従来のホットスタンピング成形品は従来鋼板部品に比べてその強度性能が一層向上して衝突エネルギーを効果的に吸収しなければならないバンパービーム5やフィラー、または前記のようなフロントサイドメンバーSMなどに適用すると、高強度軽量化は可能であるが、衝突エネルギーの吸収性能には不完全な短所を示す。
【0015】
特に、前記フロントサイドメンバーSMの場合、衝突エネルギーを車体に均等に分散させるために衝突エネルギーの吸収方向性が重要であるが、このようなフロントサイドメンバーSMをホットスタンピング成形によって高強度で適用する場合には、衝突エネルギーの順次的な吸収よりは局部的な座屈現象を先に起こして車両の安全度を顕著に低下させる問題を有している。
【0016】
したがって、本発明は前記のような従来技術の短所及び問題を解消するために発明されたもので、本発明が目的とするところは、付加的な補強材なく衝突エネルギーの吸収方向性を安定的に維持し、その結果衝突吸収性能を向上させる車両用メンバー製作方法及びこれを利用したサイドメンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明にかかる車両用メンバー製作方法の第一の特徴構成は、ボロン鋼板を素材としてメンバー用のブランクを準備する段階;前記ブランクを変態点温度以上の高温でプレス熱間成形によって前記メンバーを成形する段階;前記熱間成形されたメンバーを第1冷却法によって冷却して、高強度の第1金属組織を有するようにする段階;前記高強度の第1金属組織を有するメンバーに対してエネルギー吸収方向性を考慮して計算された位置に加熱源を通じて変態点温度まで2次加熱する段階;前記2次加熱されたメンバーを第2冷却法によって冷却して、部分的に相対的な低強度の第2金属組織を有するようにする段階;前記第1金属組織上に部分的に第2金属組織を有するメンバーを組立てる段階を含む点にある。
【0018】
上記目的を達成するための本発明にかかる車両用メンバー製作方法の第二の特徴構成は、ボロン鋼板を素材としてインナーメンバーとアウターメンバー用のブランクをそれぞれ準備する段階;前記各ブランクを変態点温度以上の高温でプレス熱間成形を通じて前記インナーメンバーとアウターメンバーをそれぞれ成形する段階;前記熱間成形されたインナーメンバーとアウターメンバーをそれぞれ第1冷却法によって冷却して、高強度の第1金属組織を有するようにする段階;前記高強度の第1金属組織を有するインナーメンバーとアウターメンバーに対してエネルギー吸収方向性を考慮して計算された位置に加熱源を通じてそれぞれ変態点温度まで2次加熱する段階;前記2次加熱されたインナーメンバーとアウターメンバーを第2冷却法によってそれぞれ冷却して、部分的に相対的な低強度の第2金属組織を有するようにする段階;前記第1金属組織上に部分的に第2金属組織を有するインナーメンバーとアウターメンバーを互いに組立てる段階を含む点にある。
【0019】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記プレス熱間成形は、前記ブランクを900℃以上の高温が形成されたプレス金型で直接成形すると好適である。
【0020】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記プレス熱間成形は、前記ブランクを一般常温のプレス金型で最終部品の90%以上を仮成形した後、900℃以上の高温が形成されたプレス金型で仕上げ成形すると好適である。
【0021】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記プレス熱間成形は、前記ブランクを電気炉上で900℃以上の温度にまで加熱して、一定時間安定させた状態でプレス金型内部に投入して成形すると好適である。
【0022】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第1冷却法は、プレス金型の内部に冷媒が循環する冷却流路を形成して、57℃/sec以上の冷却速度で急冷させると好適である。
【0023】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第1冷却法は、前記熱間成形されたメンバーに対してオイルを直接噴射して、57℃/sec以上の冷却速度で急冷させる油冷であると好適である。
【0024】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第1冷却法は、前記熱間成形されたメンバーに対して空気を強制噴射して、57℃/sec以上の冷却速度で急冷する強制空冷であると好適である。
【0025】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第1金属組織は、マルテンサイト組織であると好適である。
【0026】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記加熱源は、高周波誘導加熱による誘導加熱器であると好適である。
【0027】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記加熱源は、レーザー装備の伝導区間のレーザビームであると好適である。
【0028】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第2冷却法は、自然空冷による徐冷であると好適である。
【0029】
上記第一の特徴構成又は第二の特徴構成を備えた車両用メンバー製作方法において、前記第2金属組織は、フェライト組織であると好適である。
【0030】
また、サイドメンバーは、上述した本発明にかかる車両用メンバー製作方法のうちのいずれかの方法によって製作されると好適である。
【発明の効果】
【0031】
本発明による車両用メンバー製作方法によると、ボロン鋼板を素材としてホットスタンピング成形(プレス熱間成形)して高強度の第1金属組織を有する高強度車両用メンバーを先に製作した後、エネルギー吸収方向性を考慮した単数又は複数の箇所に加熱源を利用した2次熱処理を行って、部分的に強度は低くて靭性は改善された第2金属組織の区間を形成することによって、付加的な補強材がなくても衝突エネルギーの吸収方向性を安定的に維持し、これによる衝突吸収性能を向上させる効果がある。
【0032】
また、従来衝突方向に対する強度性能補強のために設けられた複雑なビードの成形が不要であり、これによる金型の設計費用を節減することができるなどの利点もある。
【0033】
その結果、従来のホットスタンピング成形品が有する衝突エネルギーの吸収性能及びその吸収方向性に関する短所の解消が可能で、衝突エネルギーの順次的な吸収を誘導して、これによる車両の安全度を高める効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一般のフロントサイドメンバーの組立斜視図である。
【図2】一般のホットスタンピング工程の概念図である。
【図3】本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法によって製作されるフロントサイドメンバーの斜視図である。
【図4】ボロン添加による効果を示す等温冷却変態曲線(TTT:Time Temperature Transformation)である。
【図5】本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法の工程ブロック図である。
【図6】本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法の工程図である。
【図7】レーザビームの焦点区間概念図である。
【図8】本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法によって製作されたフロントサイドメンバー組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい構成及び作用を添付した図面に基づいてより詳しく説明する。
【0036】
図3は本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法によって製作されるフロントサイドメンバーSMの斜視図であり、図5と図6は本発明の実施例にかかる車両用メンバー製作方法の工程ブロック図及び工程図である。
【0037】
但し、本発明の構成を説明することにおいて、従来技術の構成要素と同一な構成要素については同一な図面符号を適用して説明する。
【0038】
本実施例にかかる車両用メンバー製作方法を説明するために、車両用メンバーの一例として図3で示したように、車両用フロントサイドメンバーSMを例に挙げて説明する。
【0039】
前記車両用フロントサイドメンバーSMはホットスタンピング成形の特性上、プレス金型17内部で成形されるが、閉断面形状のメンバーとして一度に製作することが不可能であるために、インナーメンバー11とアウターメンバー13をそれぞれ製作して互いに組立てて構成される。
【0040】
このような車両用フロントサイドメンバーSMの本実施例にかかる製作方法にはボロン鋼板15をその素材として適用する。
【0041】
前記ボロン鋼板15は微量のボロン(boron、B)を添加した鋼板であって、本実施例では酸化皮膜発生を防止するためにAl+Siをメッキ処理したUSIBOR 1500P素材として一般に22MnB5で知られているボロン添加鋼を使用することができる。
【0042】
このようなボロン鋼板15は、図4に示したボロン添加による効果を示す等温冷却変態曲線(TTT)から分かるように、ボロンの添加でマルテンサイトM金属組織の生成を遅延する効果がある。
【0043】
前記ボロン鋼板15は900℃の温度条件でオーステナイト結晶粒界にボロンが原子状態で偏析して、オーステナイト結晶粒界の自由エネルギーを下げることで初析フェライト核生成を抑制させて鋼の硬化能が顕著に改善される。
【0044】
このようなボロン鋼板15の物理的特徴を利用して本実施例によって車両用フロントサイドメンバーSMを製作するための製作方法は、図5と図6で示したようにボロン鋼板15を素材として前記インナーメンバー11とアウターメンバー13用ブランク21、23をそれぞれ準備するブランク素材準備段階(S1)を進める。
【0045】
次いで、前記インナーメンバー11及びアウターメンバー13用ブランク21、23を変態点温度である900℃以上の高温でホットスタンピング成形、つまり、プレス熱間成形を通じて前記インナーメンバー11とアウターメンバー13をそれぞれ成形するホットスタンピング成形段階(S2)を進める。
【0046】
この時、プレス熱間成形は各ブランク21、23を変態点温度である900℃以上の高温が形成されたプレス金型17内に直接投入して成形する直接成形法であるか、或いは前記各ブランク21、23を一般常温のプレス金型17で最終部品の90%以上を仮成形した後、前記のような900℃以上の高温が形成されたプレス金型17で仕上げ熱間成形する間接成形法を適用することができる。
【0047】
その他にも、電気炉上で変態点温度(900℃)まで加熱された各ブランク21、23をプレス金型17内部に投入して成形する方法を適用することもできる。
【0048】
このような各ブランク21、23のプレス熱間成形で形成されたインナーメンバー11とアウターメンバー13はそれぞれ第1冷却法によって急速冷却して金属組織が高強度のマルテンサイトM組織(第1金属組織の一例)を有するようにする急速冷却段階(S3)を進める。
【0049】
したがって、前記インナーメンバー11とアウターメンバー13はその金属組織が成形前500〜800MPa程度の強度を有するフェライトP組織から、900℃以上の高温でオーステナイト化して高温成形された後、急速冷却によって1300〜1600MPa程度の高強度を有するマルテンサイトM組織を有するようになる。
【0050】
ここで、前記プレス熱間成形されたインナーメンバー11とアウターメンバー13の冷却方法(第1冷却法)は、プレス金型17の内部に冷媒が循環する冷却流路を形成して57℃/sec以上の冷却速度で急速冷却したり、前記熱間成形されたインナーメンバー11及びアウターメンバー13に対してオイルを直接噴射して57℃/sec以上の冷却速度で急速冷却する油冷の方法を適用することができる。
【0051】
ここで、オイルを適用することが困難な場合には、第1冷却法として、前記熱間成形されたインナーメンバー11及びアウターメンバー13に対して空気を強制噴射して57℃/sec以上の冷却速度で急速冷却する強制空冷などの方法を適用することができる。
【0052】
このように、プレス熱間成形後急速冷却されて金属組織が高強度のマルテンサイトM組織からなるインナーメンバー11とアウターメンバー13は、そのエネルギー吸収方向性を考慮して既に計算された位置に、或いは、当該位置にのみ加熱源を通じてそれぞれ変態点温度である900℃まで再び2次加熱する2次熱処理段階(S4)を進める。
【0053】
ここで、前記加熱源としては高周波を利用した誘導加熱(高周波誘導加熱)を行う高周波誘導加熱器30(誘導加熱器の一例)を適用することができ、レーザー装備40から照射される非焦点区間である伝導区間のレーザビームLBを適用することもできる。
【0054】
つまり、前記誘導加熱は高周波電流の電磁気誘導原理を利用して高周波電磁場中で前記インナーメンバー11とアウターメンバー13をそれぞれ加熱するようになるが、加熱位置や加熱パターンに応じて誘導加熱器30の形状を設定して別途に製作して使用することができる。
【0055】
一方、前記伝導区間(T2)のレーザビームLBは、図7で示したように非焦点区間のレーザビームで、キーホール区間(T1)の焦点サイズより何倍ものビーム面積を占める。したがって、レーザビームLBの密度は焦点位置より非常に低いが、レーザビームLBがボロン鋼板15の表面に衝突する瞬間、熱伝導によって加熱され、このようなエネルギー密度をよく利用してキーホール区間(T1)のレーザビームLBとは異なる形状で鋼板に熱エネルギーを供給して加熱することができる。
【0056】
このように、前記誘導加熱または伝導区間(T2)のレーザビームLBを利用してエネルギー吸収方向性が考慮された位置に、或いは、当該位置にのみ変態点温度である900℃まで2次加熱されたインナーメンバー11とアウターメンバー13は自然冷却による徐冷(第2冷却法の一例)を進めて部分的に相対的な低強度のフェライトP金属組織(第2金属組織の一例)を有するようにする徐冷段階(S5)を構成する。
【0057】
この時、前記インナーメンバー11とアウターメンバー13の各エネルギー吸収方向性が考慮された位置は、図8で示したように、バンパービーム5とクラッシュボックス1を通じて前方衝突エネルギーFが伝えられる前方部がその位置になり、より具体的には順次的な衝突エネルギーFの吸収のために前方部の一定区間Dに対して一定間隔で離隔された2乃至3個所となる。なお、図8中の符号3は、ステイを示す。
【0058】
つまり、全体金属組織が高強度のマルテンサイトM組織で成形されたインナーメンバー11とアウターメンバー13の各前方部の一定区間Dの2乃至3個所の強度を下げて靭性を高めるフェライトP金属組織に変態させると、前方から伝えられる衝突エネルギーFを吸収しながら座屈されず、各フェライトP金属組織から順次に崩壊して衝突エネルギーFの吸収方向性を車体後方に向かって安定的に誘導する原理である。なお、フェライトP金属組織に変態させる箇所は2乃至3個所に限定されず、1個所としたり、4個所以上としても好適である。
【0059】
このように、高強度のマルテンサイトM金属組織のインナーメンバー11とアウターメンバー13上にその前方部の一定区間に沿って2乃至3個所が相対的に強度の低いフェライトP金属組織を有するようにした後には、前記インナーメンバー11とアウターメンバー13を前方プレート25と内部の補強版27を通じて互いに溶接して組立てることによって、車両用フロントサイドメンバーSMの製作を完了する組立段階を構成する(S6)。すなわち、組立段階S6は、マルテンサイトM組織(第1金属組織)上に部分的にフェライトP金属組織(第2金属組織)を有するインナーメンバー11とアウターメンバー13を互いに組立てる段階である。
【0060】
このような車両用メンバー製作方法は、ボロン鋼板15を素材としてホットスタンピング成形してマルテンサイトM組織の高強度車両用メンバーを先に製作し、エネルギー吸収方向性を考慮して部分的に誘導加熱または伝導区間(T2)のレーザビームLBを利用して2次熱処理を進めることによって、部分的にその強度は低くて靭性は改善されたフェライトPあるいはテンパリング熱処理された金属組織に変化させる。
【0061】
その結果、付加的な補強材がなくても衝突エネルギーFの吸収方向性を安定的に誘導して衝突吸収性能を向上させることができる。
【0062】
特に、このような車両用メンバー製作方法によってフロントサイドメンバーSMを製作すると、従来ホットスタンピング素材が有する、高強度軽量化を達することがてきても衝突時の座屈により安全性が低下するという短所を解消することが可能であり、安定した衝突エネルギー吸収性能を実現することができる。
【0063】
以上、現在として実質的であると考慮される実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものであると理解されてはならず、前述した本発明の実施例から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等であると認められる範囲のすべての変更を含むと解釈されなければならない。例えば、上記の実施例では、車両用フロントサイドメンバーSMがインナーメンバー11とアウターメンバー13とを互いに組み立てて構成される場合を例として説明したが、車両用フロントサイドメンバーSMがその他の構成を有していても好適である。また、車両用フロントサイドメンバーSM以外の車両用メンバーに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
11:インナーメンバー
13:アウターメンバー
15:ボロン鋼板
17:プレス金型
30:高周波誘導加熱器(誘導加熱器)
40:レーザー装備
SM:車両用フロントサイドメンバー(サイドメンバー、車両用メンバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用メンバー製作方法において、
ボロン鋼板を素材としてメンバー用のブランクを準備する段階;
前記ブランクを変態点温度以上の高温でプレス熱間成形によって前記メンバーを成形する段階;
前記熱間成形されたメンバーを第1冷却法によって冷却して、高強度の第1金属組織を有するようにする段階;
前記高強度の第1金属組織を有するメンバーに対してエネルギー吸収方向性を考慮して計算された位置に加熱源を通じて変態点温度まで2次加熱する段階;
前記2次加熱されたメンバーを第2冷却法によって冷却して、部分的に相対的な低強度の第2金属組織を有するようにする段階;
前記第1金属組織上に部分的に第2金属組織を有するメンバーを組立てる段階;
を含むことを特徴とする車両用メンバー製作方法。
【請求項2】
インナーメンバーとアウターメンバーを互いに組み立てて構成される車両用メンバー製作方法において、
ボロン鋼板を素材として前記インナーメンバーとアウターメンバー用のブランクをそれぞれ準備する段階;
前記各ブランクを変態点温度以上の高温でプレス熱間成形を通じて前記インナーメンバーとアウターメンバーをそれぞれ成形する段階;
前記熱間成形されたインナーメンバーとアウターメンバーをそれぞれ第1冷却法によって冷却して、高強度の第1金属組織を有するようにする段階;
前記高強度の第1金属組織を有するインナーメンバーとアウターメンバーに対してエネルギー吸収方向性を考慮して計算された位置に加熱源を通じてそれぞれ変態点温度まで2次加熱する段階;
前記2次加熱されたインナーメンバーとアウターメンバーを第2冷却法によってそれぞれ冷却して、部分的に相対的な低強度の第2金属組織を有するようにする段階;
前記第1金属組織上に部分的に第2金属組織を有するインナーメンバーとアウターメンバーを互いに組立てる段階;
を含むことを特徴とする車両用メンバー製作方法。
【請求項3】
前記プレス熱間成形は、前記ブランクを900℃以上の高温が形成されたプレス金型で直接成形することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項4】
前記プレス熱間成形は、前記ブランクを一般常温のプレス金型で最終部品の90%以上を仮成形した後、900℃以上の高温が形成されたプレス金型で仕上げ成形することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項5】
前記プレス熱間成形は、前記ブランクを電気炉上で900℃以上の温度まで加熱して、一定時間安定させた状態でプレス金型内部に投入して成形することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項6】
前記第1冷却法は、プレス金型の内部に冷媒が循環する冷却流路を形成して57℃/sec以上の冷却速度で急冷することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項7】
前記第1冷却法は、前記熱間成形されたメンバーに対してオイルを直接噴射して57℃/sec以上の冷却速度で急冷する油冷であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項8】
前記第1冷却法は、前記熱間成形されたメンバーに対して空気を強制噴射して57℃/sec以上の冷却速度で急冷する強制空冷であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項9】
前記第1金属組織は、マルテンサイト組織であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項10】
前記加熱源は、高周波誘導加熱による誘導加熱器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項11】
前記加熱源は、レーザー装備の伝導区間のレーザビームであることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項12】
前記第2冷却法は、自然空冷による徐冷であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項13】
前記第2金属組織は、フェライト組織であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用メンバー製作方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の車両用メンバー製作方法によって製作されることを特徴とするサイドメンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−25900(P2011−25900A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179297(P2009−179297)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(508342264)株式会社星宇ハイテック (3)
【出願人】(509217172)釜山大学校産学協力団 (1)
【Fターム(参考)】