説明

車両用動力源の支持構造

【課題】左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合、左右のサイドフレームを車体外側に向けて折り曲げるように変形可能な車両用動力源の支持構造を提供する。
【解決手段】車両用動力源の支持構造25は、左支持部材61に前貫通孔85を車体外側に向けて開口するスリット部86が車幅方向を向けて形成されている。そして、左サイドフレーム11に車体前後方向の衝撃荷重F1が作用した場合、左サイドフレーム11を車体外側に向けて変形可能とするように、ボルト91の車幅方向への移動をスリット部86で許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のサイドフレーム間に配置された動力源を左右の支持部材を用いて左右のサイドフレームに取り付ける車両用動力源の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用動力源の支持構造のなかには、左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用したとき、車体から動力源を離して車体後方に移動可能に支持するものが知られている。
車体から動力源を離して車体後方に移動させることで、左右のサイドフレームを車体前後方向に圧縮(圧潰)変形させることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−90965号公報
【0003】
特許文献1によれば、左右のサイドフレーム間に動力源が配置され、動力源に支持部材が設けられ、支持部材の貫通孔にボルトを貫通することで、支持部材がサイドフレームにボルト止めされている。
この支持部材には、貫通孔を車体前方に向けて開口する切欠部が車体前後方向を向いて形成されている。
【0004】
よって、車体前方向からの衝撃荷重が動力源に作用した場合、貫通孔に差し込まれたボルトに沿って切欠部が車体後方に移動して動力源が車体後方に移動する。
動力源が車体後方に移動することで、左右のサイドフレームを圧縮(圧潰)変形させて衝撃荷重を吸収することが可能であるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、左右のサイドフレームのなかには、車体前方向からの衝撃荷重が動力源に作用した場合、左右のサイドフレームを圧縮(圧潰)変形するとともに、車体外側に向けて折り曲げるように変形するように形成されたものがある。
左右のサイドフレームを圧縮(圧潰)変形させながら、車体外側に向けて折り曲げるように変形させることで衝撃荷重を効率よく吸収することが可能である。
【0006】
しかし、特許文献1の車両用動力源の支持構造は、支持部材の切欠部が車体前後方向を向いて形成されている。よって、支持部材の貫通孔に差し込まれたボルトは、支持部材で車体外側に向けて移動しないように拘束されている。
このため、左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合、左右のサイドフレームを車体外側に向けて折り曲げるように変形させることが難しい。
【0007】
本発明は、左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合、左右のサイドフレームを車体外側に向けて折り曲げるように変形可能な車両用動力源の支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、左右のサイドフレーム間に配置した動力源に左右の支持部材が設けられ、前記左右の支持部材の貫通孔に締結部材がそれぞれ貫通され、前記それぞれの締結部材で前記左右の支持部材が前記左右のサイドフレームに取り付けられた車両用動力源の支持構造において、前記左右の支持部材の少なくとも一方に、前記貫通孔を車体外側に向けて開口するスリット部が車幅方向を向けて形成され、前記左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合、前記左右のサイドフレームを車体外側に向けて変形可能とするように、前記締結部材の車幅方向への移動を前記スリット部で許容することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記スリット部は、前記左右のサイドフレームのうち、車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位に対応させて設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、左右の支持部材の少なくとも一方に、スリット部を車幅方向を向けて形成し、このスリット部で貫通孔を車体外側に向けて開口させた。
よって、貫通孔に差し込まれた締結部材が、車体外側に向けて移動することをスリット部で許容できる。
これにより、左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合に、左右のサイドフレームを車体外側に向けて変形させて衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、左右のサイドフレームのうち、車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位に対応させてスリット部を設けた。
よって、車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位に、動力源を支持する左右の支持部材を取り付けても、その部位をスリット部で円滑に変形することが可能になる。
これにより、衝撃荷重を良好に吸収するために、動力源を支持する左右の支持部材のレイアウトを変える必要がなく、左右の支持部材で動力源を効率よく支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0013】
図1は本発明に係る車両用動力源の支持構造を備えた車体前部構造を示す平面図である。
車体前部構造10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左サイドフレーム11の外側に設けられた左フロントサスペンション13と、右サイドフレーム12の外側に設けられた右フロントサスペンション14と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたフロントサブフレーム16と、フロントサブフレーム16の上部に取り付けられたステアリングギヤボックス18と、フロントサブフレーム16の前方に配置された動力源21と、動力源21を左右のサイドフレーム11,12およびフロントサブフレーム16に取り付ける車両用動力源の支持構造25とを備えている。
【0014】
左フロントサスペンション13のナックルにハブ(図示せず)を介して左前輪27が取り付けられている。
右フロントサスペンション14のナックルにハブ(図示せず)を介して右前輪28が取り付けられている。
【0015】
図2は本発明に係る車体前部構造の左右のサイドフレームを示す平面図である。
左サイドフレーム11は、車体前後方向に対して略平行に延出された左前半部31と、左前半部31から車体後方に向けて湾曲状に延出された左後半部32とを有している。
左前半部31および左後半部32は一体に連続して形成されている。
左後半部32の後端部32bは、左サイドフレームリヤエンド38に連結されている。
【0016】
右サイドフレーム12は、車体前後方向に対して略平行に延出された右前半部34と、右前半部34から車体後方に向けて湾曲状に延出された右後半部35とを有している。
右前半部34および右後半部35は一体に連続して形成されている。
右後半部35の後端部35bは、右サイドフレームリヤエンド39に連結されている。
【0017】
左後半部32の前端部32aおよび右後半部35の前端部35a間の距離L1は、左後半部32の後端部32bおよび右後半部35の後端部35b間の距離L2より大きく設定されている。
具体的には、左後半部32は、前端部32aから後端部32bまで車体中心37側に徐々に近づくように湾曲状に延出されている。
同様に、右後半部35は、前端部35aから後端部35bまで車体中心37側に徐々に近づくように湾曲状に延出されている。
【0018】
また、左サイドフレーム11は、左後半部32の幅寸法W1が左前半部31と比較して小さく設定されている。よって、左サイドフレーム11は、左前半部31および左後半部32の左境界部(すなわち、左後半部32の前端部)32aにおいて幅寸法W1が大きく変化する。
【0019】
ここで、左サイドフレーム11に車体前方から衝撃荷重F1が作用した場合、幅寸法W1が大きく変化する前端部32aに荷重が車体外側に向けて作用する。
よって、左サイドフレーム11は、左後半部32の前端部32aを車体外側に矢印Aの如く折れ曲がるように変形させることが可能である。
すなわち、左後半部32の前端部32aは、「車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位」である。
【0020】
また、左サイドフレーム11は、左後半部32の前端部32a上部に前取付孔(取付孔)41が形成され、前取付孔41と同軸に前溶接ナット(図示せず)が取り付けられ、左後半部32の略中央に後取付孔42が形成され、後取付孔42と同軸に後溶接ナット(図示せず)が取り付けられている。
前後の溶接ナットは、左サイドフレーム11の上部裏面に溶接で固定されている。
【0021】
同様に、右サイドフレーム12は、右後半部35の幅寸法W1が右前半部34と比較して小さく設定されている。よって、右サイドフレーム12は、右前半部34および右後半部35の境界部(すなわち、右後半部35の前端部)35aにおいて幅寸法W1が大きく変化する。
【0022】
ここで、右サイドフレーム12に車体前方から衝撃荷重F1が作用した場合、幅寸法W1が大きく変化する前端部35aに荷重が車体外側に向けて作用する。
よって、右サイドフレーム12は、右後半部35の前端部35aを車体外側に矢印Bの如く折れ曲がるように変形させることが可能である。
すなわち、右後半部35の前端部35aは、「車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位」である。
【0023】
また、右サイドフレーム12は、右後半部35の前端部35aから車体前方に向けて距離L3離れた上部に取付孔44が形成されている。
そして、取付孔44と同軸に溶接ナット(図示せず)が取り付けられている。
この溶接ナットは、右サイドフレーム12の上部裏面に溶接で固定されている。
【0024】
フロントサブフレーム16は、平面視で略矩形状に形成され、左端部46が左サイドフレーム11に取り付けられ、右端部47が右サイドフレーム12に取り付けられ、上部にステアリングギヤボックス18が取り付けられている。
【0025】
ステアリングギヤボックス18は、ステアリングギヤ(図示せず)などを収容する円筒状のケースである。
このステアリングギヤボックス18は、左右の取付片51,52および中央取付片53がフロントサブフレーム16の上部にそれぞれボルト止めされている。
【0026】
ステアリングギヤボックス18から延出されたステアリングシャフト55にステアリングホイール56(図1参照)が取り付けられている。
ステアリングホイール56を回転することにより左右の前輪27,28(図1参照)の向きを変える。
【0027】
図1に戻って、動力源21は、フロントサブフレーム16の前方に配置されるとともに、左右のサイドフレーム11,12間に配置されている。
動力源21は、エンジン22とトランスミッション23とが一体に形成され、左右のサイドフレーム11,12間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
この動力源21は、車両用動力源の支持構造25で左右のサイドフレーム11,12およびフロントサブフレーム16に支持されている。
【0028】
車両用動力源の支持構造25は、トランスミッション23を左サイドフレーム11に取り付ける左支持手段(左支持部材)61と、エンジン22を右サイドフレーム12に取り付ける右支持手段(右支持部材)62と、動力源21の中央部21aをフロントサブフレーム16に連結する支持ロッド63とを備えている。
【0029】
右支持手段62は、エンジン22の右端部22aに基部62aが設けられ、先端部62bが右サイドフレーム12にボルト止めされている。
具体的には、基部62aは、エンジン22の右端部22aに2本のボルト65で取り付けられている。
【0030】
また、先端部62bは、ボルト(締結部材)66を貫通させる貫通孔(図示せず)が形成され、この貫通孔に対して同軸上に防振用ラバー部材(図示せず)が設けられている。
この防振用ラバー部材にボルト66を貫通させる貫通孔が形成されている。
先端部62bおよび防振用ラバー部材の貫通孔にボルト66を差し込み、貫通孔から突出されたねじ部が、右サイドフレーム12の取付孔44(図2参照)の溶接ナットにねじ結合されることで、先端部62bが右サイドフレーム12に取り付けられている。
【0031】
ここで、取付孔44は、図2で説明したように、右サイドフレーム12の境界部(すなわち、右後半部35の前端部35a)から車体前方側に距離L3離れている。
よって、右サイドフレーム12に車体前方から衝撃荷重F1(図2参照)が作用した場合、右サイドフレーム12は、右後半部35の前端部35aで車体外側に折れ曲がるように変形させることが可能である。
【0032】
左支持手段61は、トランスミッション23の左端部23aに設けられた支持ブラケット71と、支持ブラケット71に連結されるとともに左サイドフレーム11に設けられた取付部材72とを備えている。
【0033】
図3は図1の3部拡大図、図4は図3の左支持手段を分解した状態を示す平面図である。
支持ブラケット71は、トランスミッション23の左端部23aに基部74が3本のボルト75,75,76で取り付けられ、基部74から一対の支持アーム77が所定間隔をおいて左サイドフレーム11に向けて突出されている。
【0034】
一対の支持アーム77のうち、前側の支持アーム77の先端部77aに取付孔78が貫通され、後側の支持アーム77の先端部77aにねじ孔79が形成されている。
取付孔78およびねじ孔79はそれぞれ同軸上に形成されている。
一対の支持アーム77間に取付部材72が配置されている。
【0035】
取付部材72は、左サイドフレーム11に基部81がボルト止めされ、基部81に防振用ラバー部材82が設けられ、防振用ラバー部材82が一対の支持アーム77にボルト83を介して連結されている。
【0036】
具体的には、防振用ラバー部材82の中央に貫通孔82aが形成され、前側の支持アーム77の取付孔78および貫通孔82aにボルト83が差し込まれている。
そして、貫通孔82aから突出したねじ部83aが後側の支持アーム77のねじ孔79にねじ結合されている。
これにより、防振用ラバー部材82が一対の支持アーム77にボルト83を介して連結されている。
【0037】
図5は本発明に係る左支持手段の取付部材を示す平面図である。
取付部材72の基部81は、左サイドフレーム11に沿って設けられている。
この基部81は、前端部81aに前貫通孔(貫通孔)85が形成されるとともにスリット部86が形成され、後端部81bに後貫通孔(貫通孔)88が形成されている。
【0038】
前貫通孔85にボルト(締結部材)91(図4参照)が貫通され、前貫通孔85から突出したねじ部91a(図4参照)が左サイドフレーム11の前取付孔41に差し込まれ、前取付孔41と同軸上の溶接ナットにねじ結合されている。
【0039】
また、後貫通孔88にボルト(締結部材)92(図4参照)が貫通され、後貫通孔88から突出したねじ部92a(図4参照)が左サイドフレーム11の後取付孔42に差し込まれ、後取付孔42と同軸上の溶接ナットにねじ結合されている。
これにより、取付部材72の基部81が左サイドフレーム11に取り付けられている。
【0040】
スリット部86は、前貫通孔85から前端部81aの外辺81cまでスリット幅W2で車幅方向に向けて形成された隙間である。
スリット幅W2は、一例として、前貫通孔85の直径と同じ寸法に設定されている。
このスリット部86は、内端部86aが前貫通孔85に開口するとともに、外端部86bが外辺81cに開口されている。
よって、前貫通孔85は、車体外側に向けて開口されている。
【0041】
これにより、前貫通孔85および前取付孔41にボルト91が差し込まれ、ねじ部91a(図4参照)が溶接ナットにねじ結合された状態で、ボルト91がスリット部86に沿って車体幅方向に移動することができる。
このように、基部81の前端部81aにスリット部86を形成することで、前貫通孔85に差し込まれたボルト91が、車体外側に向けて車体幅方向に移動することをスリット部86で許容できる。
【0042】
つぎに、左右のサイドフレーム11,12に車体前方側から衝撃荷重が作用した例を図6〜図9に基づいて説明する。
図6は本発明に係る左右のサイドフレームに車体前方側から衝撃荷重が作用する例について説明した図である。
車体前部構造10の前方から相手車両95のバンパビーム96が左右のサイドフレーム11,12に衝突する。
左サイドフレーム11の前端部11aに衝撃荷重F1が矢印の如く作用するとともに、右サイドフレーム12の前端部12aに衝撃荷重F1が矢印の如く作用する。
【0043】
図7(a),(b)は本発明に係る左サイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
(a)において、左サイドフレーム11の前端部11aに衝撃荷重F1が矢印の如く作用することで、図2で説明したように、左サイドフレーム11の左後半部32の前端部32aにおいて車体外側に向けて荷重F2が作用する。
【0044】
ここで、基部81の前端部81aにスリット部86が形成されている。
よって、前貫通孔85(図7(b)参照)に差し込まれたボルト91をスリット部86に沿わせて車体外側に向けて移動させることができる。
これにより、左サイドフレーム11は、左後半部32の前端部32aが車体外側に向けて折れ曲がるように変形を開始する。
【0045】
(b)において、左後半部32の前端部32aが車体外側に向けて折れ曲がるように変形することで、前貫通孔85に差し込まれたボルト91がスリット部86を経て基部81から外れる。
ボルト91が基部81から外れることで、左後半部32の前端部32aが車体外側に向けて円滑に折れ曲がるように変形する。
これにより、左サイドフレーム11で衝撃荷重F1を良好に吸収することができる。
【0046】
図8(a),(b)は本発明に係る右サイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
(a)において、右サイドフレーム12の前端部12aに衝撃荷重F1が矢印の如く作用することで、図2で説明したように、右サイドフレーム12が右後半部35の前端部35aにおいて車体外側に向けて荷重F2が作用する。
【0047】
ここで、ボルト66(すなわち、図2に示す取付孔44)は、図2で説明したように、右後半部35の前端部35aから車体前方側に距離L3離れている。
よって、右後半部35の前端部35aにおいて車体外側に向けて荷重F2が作用した場合、右サイドフレーム12は、右後半部35の前端部35aで車体外側に折れ曲がるように変形を開始する。
【0048】
(b)において、右後半部35の前端部35aが車体外側に向けて折れ曲がるように変形する。
これにより、右サイドフレーム12で衝撃荷重F1を良好に吸収することができる。
【0049】
図9は本発明に係る左右のサイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
以上説明したように、車両用動力源の支持構造25によれば、左右のサイドフレーム11,12をそれぞれ車体外側に向けて円滑に折れ曲げるように変形させることで、左右のサイドフレーム11,12の前端部に作用した衝撃荷重F1を良好に吸収することができる。
【0050】
さらに、左右のサイドフレーム11,12のうち、車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位、すなわち左後半部32の前端部32aに対応させてスリット部86を設けた。
よって、左後半部32の前端部32aに、動力源21を支持する左支持手段61を取り付けても、左支持手段61をスリット部86で前端部32aから外すことができる。
左支持手段61を前端部32aから外すことで、前端部32aを円滑に変形することができる。
【0051】
これにより、衝撃荷重F1を良好に吸収するために、動力源21を支持する左支持手段61のレイアウトを変える必要がなく、左右の支持手段61,62で動力源21を効率よく支持することができる。
【0052】
なお、前記実施の形態では、スリット幅W2を前貫通孔85の直径と同じ寸法に設定した例について説明したが、これに限定するものではなく、例えば、スリット幅W2を前貫通孔85の直径より小さく設定することも可能である。
【0053】
また、前記実施の形態では、取付部材72の前端部81aにスリット部86を形成した例について説明したが、これに限らないで、取付部材72の前後の端部81a,81bにスリット部86をそれぞれ形成することも可能である。
【0054】
さらに、前記実施の形態では、左支持手段61の取付部材72にスリット部86を形成した例について説明したが、これに限らないで、左右の支持手段61,62にスリット部86をそれぞれ形成することも可能である。
【0055】
また、前記実施の形態では、締結部材としてボルト66,91,92を例示したが、これに限らないで、例えばリベットなどの他の締結部材を用いることも可能である。
【0056】
さらに、前記実施の形態で示した左支持手段61や右支持手段62などは例示した形状に限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、左右のサイドフレーム間に配置された動力源を左右の支持部材で左右のサイドフレームに取り付ける車両用動力源の支持構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る車両用動力源の支持構造を備えた車体前部構造を示す平面図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の左右のサイドフレームを示す平面図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図3の左支持手段を分解した状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る左支持手段の取付部材を示す平面図である。
【図6】本発明に係る左右のサイドフレームに車体前方側から衝撃荷重が作用する例について説明した図である。
【図7】本発明に係る左サイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
【図8】本発明に係る右サイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
【図9】本発明に係る左右のサイドフレームで衝撃荷重を吸収する例について説明した図である。
【符号の説明】
【0059】
10…車体前部構造、11…左サイドフレーム、12…右サイドフレーム、21…動力源、25…車両用動力源の支持構造、32a…前端部(車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位)、61…左支持手段(左支持部材)、62…右支持手段(右支持部材)、66,91,92…ボルト(締結部材)、85…前貫通孔(貫通孔)、88…後貫通孔(貫通孔)、86…スリット部、F1…衝撃荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレーム間に配置した動力源に左右の支持部材が設けられ、前記左右の支持部材の貫通孔に締結部材がそれぞれ貫通され、前記それぞれの締結部材で前記左右の支持部材が前記左右のサイドフレームに取り付けられた車両用動力源の支持構造において、
前記左右の支持部材の少なくとも一方に、前記貫通孔を車体外側に向けて開口するスリット部が車幅方向を向けて形成され、
前記左右のサイドフレームに車体前後方向の衝撃荷重が作用した場合、前記左右のサイドフレームを車体外側に向けて変形可能とするように、前記締結部材の車幅方向への移動を前記スリット部で許容することを特徴とする車両用動力源の支持構造。
【請求項2】
前記スリット部は、前記左右のサイドフレームのうち、車体外側に向けて折り曲がるように変形する部位に対応させて設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用動力源の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−873(P2010−873A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160740(P2008−160740)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】