説明

車両用成形天井の製造方法

【課題】成形天井を成形した後に端材を不織布層にて表皮材から容易にはがすことができ、基材の端縁処理を簡単にすることで生産性を向上させる。
【解決手段】成形面が所要曲面に形成された成形型18,19に基材1を表皮材7とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井20を製造する方法であって、基材と表皮材との間に成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする不織布層12を予め介在させ、成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材1aのみを該不織布層にて表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形天井の周縁部、或いは開口部の端縁等が表皮材により被覆処理される車両用成形天井の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用成形天井は、一般に、成形面が所要曲面に形成された成形型に、繊維系,段ボール系,ウレタン系,発泡オレフィン系等の基材を、ファブリック,クロス,ニット等と称される布帛からなる表皮材とともにセットして加熱・加圧することにより製造される。
また、該成形天井に例えばサンルーフ用の開口部が形成された場合、開口によって生じた基材の端縁に表皮材を巻き込むことにより該端縁が室内側に直接露呈しないように被覆される。また、成形天井の周縁部についても同様の被覆処理がされる。
【0003】
また、下記特許文献1,2には成形天井の端縁を表皮材により被う製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−264734号公報
【特許文献2】特開平10−264735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の製造方法では、基材を成形するための第1のプレス工程と、表皮材を被着するための第2のプレス工程とを要するので、工程数が増すという問題点、および、基材に表皮材を接着させるためのホットメルトフィルムが硬化するので、表皮材によって基材の端縁を被覆するためには硬化したホットメルトフィルムを除去しなければならない等の問題があった。
そこで本発明は、これらの問題を生じさせることなく、少ない工程で成形天井の端縁の被覆処理がなされるようにし、生産性を向上できる車両用成形天井の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した車両用成形天井の製造方法は、成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を製造する方法であって、基材と表皮材との間に成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする不織布層を予め介在させ、成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを該不織布層にて表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載した車両用成形天井の製造方法は、成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を製造する方法であって、表皮材の裏面に該表皮材と基材とを成形後もはがれ易くする不織布層を有した裏打材が予め貼付され、成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを該不織布層にて表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、上記車両用成形天井の製造方法において、表皮材は、布帛の裏面にウレタンフォームシートを貼着するとともに、該ウレタンフォームシートの裏面に不織布層を介在させて接着剤非透過性の紙を貼着したものであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、上記車両用成形天井の製造方法において、表皮材は、布帛と、ウレタンフォームシートと、不織布層を有した接着剤非透過性の紙とがフレームラミネート工法により貼着されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
成形天井を成形した後に基材に切り込みを入れることにより出来た端材を不織布層にて分離させることで該端材を容易にはがすことができる。このため端縁処理が簡単にできるようになる。また、所要工程を少なくできることと相俟って生産性が向上する。
【実施例1】
【0010】
次に図面とともに本発明の実施例を説明する。図1に示すように、基材1は半硬質ウレタンフォームからなる芯材2の両面に熱硬化性接着剤を塗布してガラス繊維マット3,4を積層するとともに、その裏面に非通気性フィルム5を介在させPET樹脂繊維不織布からなる裏材6を積層してなる。また、表皮材7は、図2に示したフレームラミネート工法により製造されるもので、同図において、8はロール状に巻回されたファブリック等の布帛、9はロール状に巻回されたウレタンフォームシート、10はロール状に巻回された裏打材である。裏打材10は、図3に拡大して示したように接着剤非透過性の紙11の片面にPET樹脂繊維を周知のスパンレース法によって交絡してなる不織布層12を設けてなるものである。このフレームラミネート工法では、ガスバーナ13の火炎によりウレタンフォームシート9の一方の表面をあぶって溶融し、そこへ裏打材10の不織布層12側を重合させてロール14,15間に通すとともに、ガスバーナ16の火炎により該ウレタンフォームシート9の他方の表面をあぶって溶融し布帛8を重合させてロール15,17間に通すことにより、図1に示した断面構造の表皮材7をロール状に巻き取り製造する。なお、上記紙11の目付量は5〜200g/m(好ましくは25g/m)のものを使用できる。また上記不織布層12の目付量は5〜200g/m(好ましくは40g/m)のものを使用できる。
【0011】
そして、図4に示したように、成形面が所要曲面に形成された成形型18,19間に該基材1を表皮材7とともにセットし加熱・加圧することにより、該基材1と表皮材7との間に前記熱硬化性接着剤を溶融浸透させて該基材1と表皮材7とを接着させる。このとき紙11はこの加熱・加圧時に該熱硬化性接着剤が不織布層12に浸透するのを防ぐ。これによって、図5に示したような所要の立体曲面状の成形天井20となる。図5は成形天井20の基材1側からの斜視図であって、20aはサンルーフ用開口部を形成するために基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部、20b,20cは下面(室内側)にサンバイザーを収容できるように基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部を示す。
【0012】
次いで、図6に示したように該成形天井20の丘状部20aに基材1側よりカッターナイフ21により切り込みを入れ、該基材1にサンルーフ等の必要な開口部を形成する。そしてこの切り込みによって出来た端材1aのみを図7に示したように前記不織布層12にて表皮材7からはがす。このとき不織布層12は接着剤が浸透していないことから分離し易く、ウレタンフォームシート9が強く引っ張られて破るようなことはなく、端材1aのみを容易に離脱することができる。そして、このウレタンフォームシート9に接着剤を塗布し、該表皮材7の端縁を図8に示したように該基材1の端縁に巻き込んで接着することにより、該基材1の端縁を表皮材7によって被覆でき見栄えのよいものとなる。
【0013】
なお、紙11を設けたことにより表皮材7に接着剤が染み出すおそれがなく、外観を美しく仕上げることができる。また、不織布層12を設けたことから該不織布層が吸音層として機能し、この成形天井20は吸音性能も優れたものとなる。
なお、この実施例ではサンルーフ用開口部について説明したが、成形天井20の周縁部、或いはマップランプやアシストグリップ等を装着するための孔の内縁部についても同様の端縁処理をすることが可能である。
【0014】
このように本発明では、成形型によって加熱・加圧することにより基材を所要曲面に付形することと表皮材を被着することとが同時になされるので、所要工程を少なくできるとともに、不織布層を予め介在させたことによって基材と表皮材とがはがれ易くなるので、基材の端材の除去が容易となり、端縁処理が簡単にできるようになり、成形天井の生産性を向上させる顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用成形天井の基材と表皮材の縦断面図。
【図2】本発明に係る車両用成形天井の表皮材を製造するフレームラミネート工法の概略図。
【図3】本発明に係る車両用成形天井の裏打材の拡大縦断面図。
【図4】本発明に係る車両用成形天井の製造方法を示す成形型の縦断面図。
【図5】本発明に係る車両用成形天井の斜視図。
【図6】本発明に係る車両用成形天井の要部に切り込みを入れたときの縦断面図。
【図7】本発明に係る車両用成形天井の要部の端材をはがしたときの縦断面図。
【図8】本発明に係る車両用成形天井の要部の縦断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 基材
1a 端材
7 表皮材
8 布帛
9 ウレタンフォームシート
10 裏打材
11 紙
12 不織布層
18,19 成形型
20 成形天井
21 カッターナイフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を製造する方法であって、基材と表皮材との間に成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする不織布層を予め介在させ、成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを該不織布層にて表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆することを特徴とした車両用成形天井の製造方法。
【請求項2】
成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を製造する方法であって、表皮材の裏面に該表皮材と基材とを成形後もはがれ易くする不織布層を有した裏打材が予め貼付され、成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを該不織布層にて表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆することを特徴とした車両用成形天井の製造方法。
【請求項3】
表皮材は、布帛の裏面にウレタンフォームシートを貼着するとともに、該ウレタンフォームシートの裏面に不織布層を介在させて接着剤非透過性の紙を貼着したものである請求項1または2に記載の車両用成形天井の製造方法。
【請求項4】
表皮材は、布帛と、ウレタンフォームシートと、不織布層を有した接着剤非透過性の紙とがフレームラミネート工法により貼着されたものである請求項1または2に記載の車両用成形天井の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−30773(P2007−30773A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219493(P2005−219493)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000241599)豊和繊維工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】