説明

車両用表示装置

【課題】画面角度調整機構と裸眼立体視表示機能を備えた車両用表示装置において、表示画面の角度が変化しても違和感の無い適切な表示を可能にすること。
【解決手段】表示制御部は、画面角度検出部によって検出された立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても表示画面に対する2次元地図上の強調表示用マークの見た目の相対位置が変わらず、なおかつ立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても3次元地図の見た目の傾きを維持するような立体表示用画像データを生成して、立体表示装置へと出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用表示装置に関し、特に、画面角度調整機構と裸眼立体視表示機能を備えた車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、裸眼立体視表示機能を備えた表示装置の例として、3次元地図情報に基づいて所定方向から見た場合のホログラム画像データをリアルタイムで作成し、このホログラム画像データに基づいてホログラム画像を表示する表示装置がある(例えば、特許文献1参照)。この表示装置によれば、映像が表示画面から浮き出して見えるので、画面上の地図に対応する場所の地形の形状をユーザが認識しやすくなる。
【0003】
また、表示画面の傾斜角度を感知し、その傾斜角度に対応する表示形式の地図情報を表示する表示装置がある(例えば、特許文献2参照)。この表示装置によれば、ユーザは、単に表示画面の傾斜を変えるだけで、地図情報の表示形式(2次元地図表示モードまたは3次元地図表示モード)を簡単に変更することができる。
【0004】
また、車両の現在位置と現在位置前方の経路情報を立体的に表示する表示装置がある(例えば、特許文献3参照)。この表示装置によれば、車両の現在位置が強調表示されるので、画面上の自車位置をユーザが認識しやすくなる。
【特許文献1】特開昭63−200182号公報
【特許文献2】特開2004−151752号公報
【特許文献3】特開平9−292256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の裸眼立体視表示機能を備えた表示装置には、表示画面の傾きが変化したときに、違和感のある表示になってしまい適切な表示ができないという問題がある。
【0006】
図23は、水平に置かれた表示画面に地図画像を表示したときのユーザからの見た目の様子を示している。表示画面の左領域には2次元地図が表示され、右領域には3次元地図が表示されている。左領域には、2次元地図上には現在地を示すマークが表示画面から浮き出して見えるように表示されている。右領域には、車両の前方の交差点の付近の建物や信号機や進行方向を示す矢印が表示画面から浮き出して見えるように表示されている。図24は、図23の表示画面を垂直に立てたときのユーザからの見た目の様子を示している。
【0007】
ここで、左領域に着目すると、図23では現在地が交差点よりも手前であるように見えるが、図24では現在地が交差点の中にあるように見えてしまう。次に、右領域に着目すると、図23では建物や信号機が、車室内から見える実際の景色と同じように水平面に対して垂直に立っているように見えるが、図24では建物や信号機が、水平面に対して斜めに傾いて立っているように見えてしまう。
【0008】
上記のような問題は、前述の現在地を示すマークや建物や信号機などのオブジェクトが表示画面から浮き出して見えるとき、それらのオブジェクトが浮き出す方向が表示画面とユーザの視点との位置関係に依存して変化するという、裸眼立体視表示機能を備えた表示装置の特性に起因する。つまり、このような問題は、裸眼立体視表示機能を備えた表示装置に特有の問題である。例えば、上記特許文献3に記載の表示装置は裸眼立体視表示機能
を備えていない表示装置であるので、表示画面の傾斜角度に応じて車両の現在位置が変化しているように見えてしまうことはない。
【0009】
なお、上記特許文献2に記載の表示装置は、表示画面の傾斜角度に応じて表示形式を2次元地図表示モードと3次元地図表示モードとの間で切り替えるものである。よって、2次元地図または3次元地図の一方を常に表示したい場合や、図23および図24のように2次元地図と3次元地図の両方を常に表示したい場合には、上記特許文献2に記載の表示装置を適用できない。
【0010】
それゆえに本発明は、画面角度調整機構と裸眼立体視表示機能を備えた車両用表示装置において、表示画面の角度が変化しても違和感の無い適切な表示を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および図番号は、図面との対応関係の一例を示したものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0012】
本発明の車両用表示装置は、3次元オブジェクト(24,26,28,30,32)が表示画面から浮き出して見えるように表示可能な立体表示装置(18)と、前記立体表示装置の表示画面(20)の傾きを変更可能にする画面角度調整機構(図示せず)と、前記立体表示装置の表示画面の傾きを検出する画面角度検出部(14)と、前記3次元オブジェクトを含む画像を前記立体表示装置の表示画面に表示するための立体表示用画像データを生成する表示制御部(16)とを備える。前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、当該前記立体表示装置の表示画面に対する前記3次元オブジェクトの見た目の相対位置を制御する機能を有する。
【0013】
前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記3次元オブジェクト(24)の見た目の相対位置を維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい(図6,図9,図12)。
【0014】
前記表示制御部は、2次元地図(22)を前記立体表示装置の表示画面に表示しかつ当該2次元地図上の所定位置を示す強調表示用マーク(24)を表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記強調表示用マークの見た目の相対位置を維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい。
【0015】
前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元オブジェクト(26,28,30,32)の見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい(図7,図10,図13)。
【0016】
前記表示制御部は、3次元地図(26,28,30,32)を前記立体表示装置の表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元地図の見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい。
【0017】
前記表示制御部は、第1オブジェクト(24)と第2オブジェクト(26,28,30,32)を含む少なくとも2つの3次元オブジェクトを含む画像を前記立体表示装置の表示画面に表示するための立体表示用画像データを生成するときに、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても、当該表示画面に対する前記第1オブジェクトの見た目の相対位置が変わらずかつ前記第2オブジェクトの見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい。
【0018】
前記表示制御部は、前記立体表示装置の表示画面の第1領域(20L)に2次元地図(22)を表示しかつ当該2次元地図上の所定位置を示す強調表示用マーク(24)を表示画面から浮き出して見えるように表示し、なおかつ前記立体表示装置の表示画面の前記第1領域とは異なる第2領域(20R)に3次元地図(26,28,30,32)を表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記強調表示用マークの見た目の相対位置が変わらず、なおかつ前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元地図の見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画面角度調整機構と裸眼立体視表示機能を備えた車両用表示装置において、表示画面の角度が変化しても違和感の無い適切な表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用表示装置について説明する。
【0021】
図1は、車両用表示装置の構成を示すブロック図である。車両用表示装置は車両に搭載され、地図情報記憶部10と、現在地検出部12と、画面角度検出部14と、表示制御部16と、立体表示装置18とを備える。
【0022】
地図情報記憶部10には、立体表示装置18の表示画面に地図を表示するために必要となる画像データやポリゴンデータ等の情報が格納されている。なお、本実施形態では、立体表示装置18の表示画面に地図(2次元地図および3次元地図)を表示する例を説明するが、本発明はこれに限らず、地図以外の画像を表示する場合にも本発明を適用することができる。
【0023】
現在地検出部12は、GPS等の測位システムを利用して車両の現在地(例えば緯度情報と経度情報)を検出する。
【0024】
画面角度検出部14は、立体表示装置18の表示画面の傾き(例えば水平面と表示画面の間の角度)を検出する。なお、立体表示装置18の表示画面の傾きを検出するための具体的な手段としては、公知の任意の手段を採用することができる。例えば、表示画面の裏側に傾きセンサを設け、この傾きセンサの出力に基づいて表示画面の傾きを検出してもよい。また例えば、表示画面がヒンジ部によって支持されている場合には、ヒンジ部の内部に角度検出センサを設け、この角度検出センサの出力に基づいて表示画面の傾きを検出してもよい。
【0025】
表示制御部16は、地図情報記憶部10に格納されている地図情報に基づいて、立体表示装置18の表示画面に地図を表示するために必要となる立体表示用の画像データを生成する。なお、立体表示用の画像データの生成方法は、立体表示装置18の方式や種類によって異なる。表示制御部16は、典型的には、コンピュータプログラムに従って動作する
プロセッサと、コンピュータプログラムやデータを格納する主記憶装置とで構成される。
【0026】
立体表示装置18は、裸眼立体視表示機能を備えた、すなわち3次元オブジェクトを表示画面から浮き出して見えるように表示可能な表示装置である。裸眼立体視を実現するための方式として、パララックスバリア(視差バリア)方式やレンティキュラ方式などの方式が存在する。立体表示装置18は、いずれの方式で裸眼立体視を実現するものであってもよい。また、裸眼立体視表示機能を備えた表示装置には、特定の方向から見たときだけ正常に立体視できるものもあれば、複数の異なる方向から正常に立体視できるものもある。立体表示装置18としては、どちらの種類のものを用いてもよい。なお、特定の方向から見たときだけ正常に立体視できるものを利用する場合は、観察者(運転者または助手席のユーザ)の視点から見て正常な立体視が可能となるように画像を生成すればよい。
【0027】
図2は、車両用表示装置を設置した車両のインスツルメントパネルの外観を示している。インスツルメントパネル上には、立体表示装置18の表示画面20が設置されている。この表示画面20には、表示画面20の傾きを変更可能にする画面角度調整機構(図示は省略)が設けられており、ユーザは表示画面20の傾きを自由に変更することができる。図2は、水平面と表示画面20との角度を0度、すなわち表示画面20を水平にしたときの様子を示しており、図3は、水平面と表示画面20との角度を45度にしたときの様子を示しており、図4は、水平面と表示画面20との角度を90度にしたときの様子を示している。このように、ユーザは表示画面20の傾きを自由に変更することができるので、自分の目の位置や、表示画面20への太陽光の入射角度などを考慮して、ユーザが感覚的に画像を見やすいと感じる好みの傾きとなるように表示画面20の傾きを適宜に調整できる。
【0028】
以下、図5〜図13を参照して、本実施形態の表示画面20に地図画像が表示されたときに、その地図画像がユーザからどのように見えるかについて具体的に説明する。
【0029】
図5は、図2のように表示画面20を水平にしたときに、車両の前列右側座席(右ハンドル車の場合は運転席)に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示している。
【0030】
図5において、表示画面20の左領域20Lには、現在地の周辺の様子を示す2次元地図22が表示されている。左領域20Lに表示される2次元地図22には、現在地を示す3Dオブジェクトである現在地マーク24が重畳表示されている。2次元地図22は、現在地に対応する2次元地図22上の地点が左領域20Lの中央に位置するように表示される。現在地マーク24は、あたかも、現在地に対応する2次元地図22上の地点から、表示画面20に対して垂直方向に例えば1cmほど浮き出しているように、ユーザには知覚される。図6は、ユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。
【0031】
図5において、表示画面20の右領域20Rには、車両の前方の様子を示す3次元地図が表示されている。右領域20Rに表示される3次元地図は、信号機26や、車両が進行すべき方向を示す矢印28や、建物30や、道路32などの3Dオブジェクトが配置された仮想3次元空間を所定の投影平面に投影することによって生成される。信号機26,矢印28,建物30および道路32は、あたかも、表示画面20から浮き出しているように、ユーザには知覚される。図7は、ユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。図7に示すように、右領域20Rに表示される仮想3次元空間における鉛直方向が、現実の空間における鉛直方向と一致しているように、ユーザには知覚される。したがって、右領域20Rに表示される3次元地図とユーザが車室から眺める現実の空間との対応関係が分かり易く、ユーザは、右領域20Rに表示さ
れる3次元地図から現在地や次に車両が進むべき方向などを直感的に把握することができる。
【0032】
図8は、図3のように水平面と表示画面20との角度を45度にしたときに、車両の前列右側座席(右ハンドル車の場合は運転席)に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示している。
【0033】
図8において、2次元地図22は、現在地に対応する2次元地図22上の地点が左領域20Lの中央に位置するように表示される。現在地マーク24は、あたかも、現在地に対応する2次元地図22上の地点から、表示画面20に対して垂直方向に例えば1cmほど浮き出しているように、ユーザには知覚される。図9は、ユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。
【0034】
図8において、信号機26,矢印28,建物30および道路32は、あたかも、表示画面20から浮き出しているように、ユーザには知覚される。図10は、ユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。図10に示すように、右領域20Rに表示される仮想3次元空間における鉛直方向が、現実の空間における鉛直方向と一致しているように、ユーザには知覚される。したがって、右領域20Rに表示される3次元地図とユーザが車室から眺める現実の空間との対応関係が分かり易く、ユーザは、右領域20Rに表示される3次元地図から現在地や次に車両が進むべき方向などを直感的に把握することができる。
【0035】
図11は、図4のように水平面と表示画面20との角度を90度にしたときに、車両の前列右側座席(右ハンドル車の場合は運転席)に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示している。
【0036】
図11において、2次元地図22は、現在地に対応する2次元地図22上の地点が左領域20Lの中央に位置するように表示される。現在地マーク24は、あたかも、現在地に対応する2次元地図22上の地点から、表示画面20に対して垂直方向に例えば1cmほど浮き出しているように、ユーザには知覚される。図12は、ユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。
【0037】
図11において、信号機26,矢印28,建物30および道路32は、あたかも、表示画面20から浮き出しているように、ユーザには知覚される。図13は、ユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示している(もちろん、実際に表示画面20を横から見たとしても、このようには見えない)。図13に示すように、右領域20Rに表示される仮想3次元空間における鉛直方向が、現実の空間における鉛直方向と一致しているように、ユーザには知覚される。したがって、右領域20Rに表示される3次元地図とユーザが車室から眺める現実の空間との対応関係が分かり易く、ユーザは、右領域20Rに表示される3次元地図から現在地や次に車両が進むべき方向などを直感的に把握することができる。
【0038】
なお、ここでは水平面と表示画面20との角度が0度、45度、90度のときについてのみそれぞれ説明したが、その他の角度のときについても同様である。
【0039】
このように、左領域20Lに表示される現在地マーク24は、表示画面20の傾きによらず、あたかも、現在地に対応する2次元地図22上の地点から、表示画面20に対して
垂直方向に例えば1cmほど浮き出しているように、ユーザには知覚される。したがって、ユーザが表示画面20の傾斜角度を変更しても、現在地マーク24が指している2次元地図22上の地点が変化して見えることはない。また、右領域20Rにおいては、表示画面20の傾きによらず、仮想3次元空間における鉛直方向が、現実の空間における鉛直方向と一致しているように、ユーザには知覚される。したがって、ユーザが表示画面20の傾斜角度を変更しても、右領域20Rに表示される3次元地図の見た目の傾きが変わらず、ユーザは、右領域20Rに表示される3次元地図から現在地や次に車両が進むべき方向などを直感的に把握することができる。
【0040】
次に、図14のフローチャートを参照して、表示制御部16の動作について説明する。
【0041】
ステップS10において、表示制御部16は、現在地検出部12から出力される信号に基づいて現在地を取得して記憶領域(例えば主記憶装置)に格納する。
【0042】
ステップS12において、表示制御部16は、ステップS10で取得した現在地に基づいて地図情報記憶部10から現在地の周辺の地図情報(2次元地図画像、ポリゴンデータ等)を読み出して記憶領域に格納する。
【0043】
ステップS14において、表示制御部16は、画面角度検出部14から出力される信号に基づいて、水平面と表示画面20の角度を取得して記憶領域に格納する。
【0044】
ステップS16において、表示制御部16は、予め設定されている複数の視点の中から、未選択の1つの視点を選択する。ドライバから立体的に見える画像を生成するためには、ドライバの右目(仮に視点Aと称す)から見える画像と左目(仮に視点Bと称す)から見える画像の2つの画像をそれぞれ生成し、その後、これらの2つの画像を合成することによって立体表示用の画像データを生成して立体表示装置18へと出力する必要がある。ステップS16の処理は、上記の2つの画像(つまり視点Aから見える画像と視点Bから見える画像)のうち、どちらの画像をこれから生成すべきかを決定する処理である。なお、立体表示用の画像データを生成するために必要となる画像の数(すなわち視点の数)は、立体表示装置18の方式や種類に依存する。
【0045】
ステップS18において、表示制御部16は、左画像生成処理を行う。左画像生成処理とは、表示画面20の左領域20Lに表示すべき画像を生成するための処理である。左画像生成処理の詳細については後述する。左画像生成処理によって生成された左画像データは記憶領域に格納される。
【0046】
ステップS20において、表示制御部16は、右画像生成処理を行う。右画像生成処理とは、表示画面20の右領域20Rに表示すべき画像を生成するための処理である。右画像生成処理の詳細については後述する。右画像生成処理によって生成された右画像データは記憶領域に格納される。
【0047】
ステップS22において、表示制御部16は、ステップS18の左画像生成処理によって生成された左画像データとステップS20の右画像生成処理によって生成された右画像データとを合成し、合成により得られた画像データを、ステップS16で選択された視点と関連付けて記憶領域に格納する。
【0048】
ステップS24において、表示制御部16は、前述の予め設定されている複数の視点の中に、まだステップS16で選択されていない視点が存在するかどうかを判断し、未選択の視点が存在する場合には処理はステップS16に戻り、未選択の視点が存在しない場合には処理はステップS26に進む。
【0049】
ステップS26において、表示制御部16は、ステップS16〜S24の処理によって生成された、予め設定されている複数の視点にそれぞれ対応する複数の画像データから、立体表示装置18に対応する立体表示用の画像データを生成する。
【0050】
ステップS28において、表示制御部16は、ステップS26で生成した立体表示用の画像データを立体表示装置18へと出力する。その後、処理はステップS10に戻る。
【0051】
次に、図15のフローチャートを参照して、左画像生成処理の詳細を説明する。
【0052】
ステップS30において、表示制御部16は、ステップS10で取得した現在地と、ステップS12で読み出した地図情報(2次元地図画像)に基づいて、現在地を中心とした2次元地図画像を生成して記憶領域に格納する。
【0053】
ステップS32において、表示制御部16は、ステップS14で取得した水平面と表示画面20の角度に応じて、仮想3次元空間に投影平面を配置する(図16〜図18参照)。なお、図16は、表示画面20が水平であるときの仮想3次元空間の様子を示しており、図17は、水平面と表示画面20との角度が45度であるときの仮想3次元空間の様子を示しており、図18は、水平面と表示画面20との角度が90度であるときの仮想3次元空間の様子を示している。
【0054】
ステップS34において、表示制御部16は、ステップS16で選択された視点に応じて、仮想3次元空間に透視投影用基準点(図16〜図18参照)を配置する。ここで“透視投影用基準点”とは、投影平面へのオブジェクトの投影方向を決定するための基準点である。仮想3次元空間における透視投影用基準点と投影平面の位置関係(図16〜図18参照)は、現実の世界における視点と表示画面20の左領域20Lの位置関係(図6,図9,図12参照)に対応している。例えば、ドライバの右目から見た画像を生成する場合は、ドライバの左目から見た画像を生成する場合と比べて、透視投影用基準点が少しずれた位置に配置される。
【0055】
ステップS36において、表示制御部16は、ステップS32で配置した投影平面を基準として、仮想3次元空間に3Dオブジェクト(ここでは現在地マーク24)を配置する。つまり、図16〜図18から明らかなように、水平面と表示画面20との角度が変化しても、投影平面に対する現在地マーク24の相対位置は変化しない。本実施形態では、投影平面の中心から投影平面に対して垂直方向に一定距離だけ離れた位置に現在地マーク24を配置する。
【0056】
ステップS38において、表示制御部16は、ステップS36で配置した3Dオブジェクトを、ステップS34で配置した透視投影用基準点に基づいて、ステップS32で配置した投影平面に投影(透視投影)する。これにより、3Dオブジェクトの画像が得られる。なお、透視投影の代わりに、平行投影によって3Dオブジェクトを投影平面に投影しても構わない。
【0057】
ステップS40において、表示制御部16は、ステップS38で得られた3Dオブジェクトの画像を、ステップS30で生成された2次元地図画像に合成する。
【0058】
ステップS42において、表示制御部16は、ステップS40での合成により得られた画像データを左画像データとして記憶領域に格納し、左画像生成処理を終える。
【0059】
次に、図19のフローチャートを参照して、右画像生成処理の詳細を説明する。
【0060】
ステップS50において、表示制御部16は、ステップS14で取得した水平面と表示画面20の角度に応じて、仮想3次元空間に投影平面を配置する(図20〜図22参照)。なお、図20は、表示画面20が水平であるときの仮想3次元空間の様子を示しており、図21は、水平面と表示画面20との角度が45度であるときの仮想3次元空間の様子を示しており、図22は、水平面と表示画面20との角度が90度であるときの仮想3次元空間の様子を示している。
【0061】
ステップS52において、表示制御部16は、ステップS16で選択された視点に応じて、仮想3次元空間に透視投影用基準点(図20〜図22参照)を配置する。仮想3次元空間における透視投影用基準点と投影平面の位置関係(図20〜図22参照)は、現実の世界における視点と表示画面20の右領域20Rの位置関係(図7,図10,図13参照)に対応している。例えば、ドライバの右目から見た画像を生成する場合は、ドライバの左目から見た画像を生成する場合と比べて、透視投影用基準点が少しずれた位置に配置される。
【0062】
ステップS54において、表示制御部16は、ステップS10で配置した現在地に基づいて、車両の前方に存在する建物,信号機,道路および車両の進行方向を示す矢印を示す3Dオブジェクト(信号機26,矢印28,建物30,道路32)を仮想3次元空間に配置する。表示画面20が水平であるときに、仮想3次元空間における鉛直方向が投影平面に対して垂直方向となるように各3Dオブジェクトが配置される。また、図20〜図22から明らかなように、水平面と表示画面20との角度が変化しても、透視投影用基準点に対する各3Dオブジェクト(信号機26,矢印28,建物30,道路32)の相対位置は変化しない。
【0063】
ステップS56において、表示制御部16は、ステップS54で配置した3Dオブジェクトを、ステップS52で配置した透視投影用基準点に基づいて、ステップS50で配置した投影平面に投影(透視投影)する。これにより、表示画面20の右領域20Rに表示すべき3次元地図の画像データが得られる。なお、透視投影の代わりに、平行投影によって3Dオブジェクトを投影平面に投影しても構わない。
【0064】
ステップS58において、表示制御部16は、ステップS56で得られた画像データを右画像データとして記憶領域に格納し、右画像生成処理を終える。
【0065】
表示制御部16は、以上のような処理により、図5,図8,図11のような画像を立体表示装置18の表示画面20に表示するための立体表示用の画像データを生成して、立体表示装置18へと出力する。
【0066】
以上のように、本実施形態の車両用表示装置によれば、表示画面の角度が変化しても違和感の無い適切な表示が可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、左領域20Lに表示される3Dオブジェクトが現在地マーク24である例を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、現在地マーク24だけでなく、信号機マークやランドマーク記号など、任意のマークが表示画面20から浮き出して見えるように表示してもよい。
【0068】
なお、図14〜図22を参照して説明した立体表示用の画像データの生成方法は単なる一例に過ぎず、本実施形態と同様の効果が得られるのであれば、公知の任意の手法を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、3次元オブジェクトを表示画面から浮き出して見えるように表示でき、かつ表示画面の角度が変化しても違和感の無い適切な表示が可能となるので、例えば、現在地の周辺の地図を表示する車両用の表示装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用表示装置の構成を示すブロック図
【図2】車両用表示装置を設置した車両のインスツルメントパネルの外観を示す図
【図3】車両用表示装置を設置した車両のインスツルメントパネルの外観を示す他の図
【図4】車両用表示装置を設置した車両のインスツルメントパネルの外観を示すさらに他の図
【図5】表示画面20を水平にしたときに車両の前列右側座席に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示す図
【図6】図5の表示画面20の左領域20Lを見るユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示す図
【図7】図5の表示画面20の右領域20Rを見るユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示す図
【図8】水平面と表示画面20との角度を45度にしたときに車両の前列右側座席に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示す図
【図9】図8の表示画面20の左領域20Lを見るユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示す図
【図10】図8の表示画面20の右領域20Rを見るユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示す図
【図11】水平面と表示画面20との角度を45度にしたときに車両の前列右側座席に座っているユーザから見た表示画面20の様子を示す図
【図12】図11の表示画面20の左領域20Lを見るユーザによって知覚される現在地マーク24の表示位置を示す図
【図13】図11の表示画面20の右領域20Rを見るユーザによって知覚される信号機26,矢印28,建物30および道路32の表示位置を示す図
【図14】表示制御部16の動作を示すフローチャート
【図15】表示制御部16によって実行される左画像生成処理の詳細を示すフローチャート
【図16】表示画面20が水平であるときに左画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図17】水平面と表示画面20との角度が45度であるときに左画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図18】水平面と表示画面20との角度が90度であるときに左画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図19】表示制御部16によって実行される右画像生成処理の詳細を示すフローチャート
【図20】表示画面20が水平であるときに右画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図21】水平面と表示画面20との角度が45度であるときに右画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図22】水平面と表示画面20との角度が90度であるときに右画像生成処理で利用される仮想3次元空間の様子を示す図
【図23】従来の表示装置において、水平に置かれた表示画面に地図画像を表示したときのユーザからの見た目の様子を示す図
【図24】図23の表示画面を垂直に立てたときのユーザからの見た目の様子を示す図
【符号の説明】
【0071】
10 地図情報記憶部
12 現在地検出部
14 画面角度検出部
16 表示制御部
18 立体表示装置
20 表示画面
20L 左領域
20R 右領域
22 2次元地図
24 現在地マーク
26 信号機
28 矢印
30 建物
32 道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元オブジェクトを表示画面から浮き出して見えるように表示可能な立体表示装置と、
前記立体表示装置の表示画面の傾きを変更可能にする画面角度調整機構と、
前記立体表示装置の表示画面の傾きを検出する画面角度検出部と、
前記3次元オブジェクトを含む画像を前記立体表示装置の表示画面に表示するための立体表示用画像データを生成する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、当該前記立体表示装置の表示画面に対する前記3次元オブジェクトの見た目の相対位置を制御する機能を有することを特徴とする、車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記3次元オブジェクトの見た目の相対位置を維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、2次元地図を前記立体表示装置の表示画面に表示しかつ当該2次元地図上の所定位置を示す強調表示用マークを表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記強調表示用マークの見た目の相対位置を維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元オブジェクトの見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、3次元地図を前記立体表示装置の表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元地図の見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、第1オブジェクトと第2オブジェクトを含む少なくとも2つの3次元オブジェクトを含む画像を前記立体表示装置の表示画面に表示するための立体表示用画像データを生成するときに、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても、当該表示画面に対する前記第1オブジェクトの見た目の相対位置が変わらずかつ前記第2オブジェクトの見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記立体表示装置の表示画面の第1領域に2次元地図を表示しかつ当該2次元地図上の所定位置を示す強調表示用マークを表示画面から浮き出して見えるように表示し、なおかつ前記立体表示装置の表示画面の前記第1領域とは異なる第2領域に3次元地図を表示画面から浮き出して見えるように表示する場合は、前記画面角度検出部によって検出された前記立体表示装置の表示画面の傾きに基づいて、前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても当該表示画面に対する前記強調表示用マークの見た目の相対位置が変わらず、なおかつ前記立体表示装置の表示画面の傾きが変化しても前記3次元地
図の見た目の傾きを維持するような前記立体表示用画像データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−117334(P2008−117334A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302321(P2006−302321)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】