説明

車両用走行路面検出装置

【課題】簡単な構成でかつ小さい処理負担で、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出できるようにする。
【解決手段】第1地点で撮像された第1画像中の走行路面に基づいて、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定して、その仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出し(ステップS3,S4)、第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面に基づいて第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出し(ステップS8,S9)、上記第1走行路幅と上記第2走行路幅との大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を判定する(ステップS10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出する車両用走行路面検出装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両が走行する走行路面の勾配を検出する装置は知られている。例えば特許文献1では、自車両の進行方向に並列に配置されて進行方向前方の道路を2箇所から撮像し、この撮像された前方路面上の1地点までの距離を求め、その距離と1地点が撮像されている画像上の位置より、カメラの光軸と1地点との高低差を求めることで、前方の道路の勾配を求めるようにしている。
【0003】
また、特許文献2では、路面を撮像する撮像手段によって撮像された複数の撮像画像同士について、任意の領域のオプティカルフローを検出し、そのオプティカルフローのフローベクトルが大きくなっている領域を登坂路として、フローベクトルが小さくなっている領域を降坂路とするようにしている。
【特許文献1】特開平09−325026号公報
【特許文献2】特開2008−33781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、自車両前方の走行路面を撮像する2つのカメラ(ステレオカメラ)が必要であるとともに、2つのカメラによる撮像画像に対する処理が必要であるため、処理負担が大きく処理に時間がかかるという問題がある。また、特許文献2のものでも、オプティカルフローという複雑な処理が必要であるため、多大な処理時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成でかつ小さい処理負担で、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、自車両が走行路面の第1地点を走行しているときに撮像された第1画像中の走行路面において、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定した仮想走行路面の該第2地点に対応する特定位置での第1画像上の走行路幅を求め、かつ該第1画像上の走行路幅に基づいて、上記仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出する第1走行路幅算出手段と、自車両が走行路面の第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置での第2画像上の走行路幅を求め、かつ該第2画像上の走行路幅に基づいて上記第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出する第2走行路幅算出手段と、上記第1走行路幅と上記第2走行路幅との大小関係に基づいて、上記第2地点での走行路面の勾配状態を判定する勾配状態判定手段とを備えるものとした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出する車両用走行路面検出装置を対象とする。
【0008】
そして、自車両前方の上記走行路面を撮像する撮像手段と、自車両が上記走行路面の第1地点を走行しているときに上記撮像手段により撮像された第1画像中の走行路面において、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定した仮想走行路面の該第2地点に対応する特定位置での第1画像上の走行路幅を求め、かつ該第1画像上の走行路幅に基づいて、上記仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出する第1走行路幅算出手段と、自車両が上記走行路面の第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置での第2画像上の走行路幅を求め、かつ該第2画像上の走行路幅に基づいて上記第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出する第2走行路幅算出手段と、上記第1走行路幅算出手段により算出された第1走行路幅と、上記第2走行路幅算出手段により算出された第2走行路幅との大小関係に基づいて、上記第2地点での走行路面の勾配状態を判定する勾配状態判定手段とを備えているものとする。
【0009】
上記の構成により、第1走行路幅算出の際には、第2地点の実際の勾配が第1地点と同じで第1地点から継続したものである場合(実際の走行路面が仮想走行路面と同じ場合)には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際の走行路面の第2地点に対応する位置となる。一方、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して上り勾配である場合には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際には第2地点よりも手前の地点に対応する位置となる。逆に、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して下り勾配である場合には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際には第2地点よりも遠方の地点に対応する位置となる。
【0010】
そして、第2地点の手前近傍の地点で撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置は、上記第1画像中の走行路面の特定位置とは異なり、第2地点の勾配に関係なくほぼ正確に第2地点に対応する位置であるといえる(それ故、第2走行路幅は第2地点の実際の走行路幅と等しい)。このことは、第2画像を撮像する地点が第2地点に近いほど当てはまるので、第2地点を撮像可能な範囲で出来る限り第2地点に近い地点で第2画像を撮像すればよい。
【0011】
したがって、第2地点の実際の勾配が第1地点と同じで継続したものである場合には、第1走行路幅と第2走行路幅とが略同じ値になる(両者の差が所定値以下になる)が、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して上り勾配である場合には、第1画像上の走行路幅は、第2地点とその手前の地点との距離の分だけ、同じ勾配が継続する場合に比べて大きくなる。この結果、第1走行路幅が第2走行路幅よりも大きくなる。逆に、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して下り勾配である場合には、第1画像上の走行路幅は、第2地点とその遠方の地点との距離の分だけ、同じ勾配が継続する場合に比べて小さくなる。この結果、第1走行路幅が第2走行路幅よりも小さくなる。
【0012】
この結果、撮像手段としての1つのカメラ等で撮像された2地点の画像から第1及び第2走行路幅をそれぞれ算出して、これら第1及び第2走行路幅の大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を判定(検出)することが可能になり、複雑な処理を行わなくても済む。また、第1走行路幅と第2走行路幅との差の大きさにより、第1地点に対してどの程度上り勾配又は下り勾配であるかも分かる。よって、簡単な構成でかつ小さい処理負担で、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出することができる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅と上記第2走行路幅との差が所定値以下である場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点と同じ勾配であると判定するように構成されているものとする。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅が上記第2走行路幅よりも大きくかつ両者の差が所定値を超える場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点に対して上り勾配であると判定するように構成されているものとする。
【0015】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅が上記第2走行路幅よりも小さくかつ両者の差が所定値を超える場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点に対して下り勾配であると判定するように構成されているものとする。
【0016】
これら請求項2〜4の発明により、第1及び第2走行路幅の大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を正確に検出することができる。
【0017】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記第1走行路幅算出手段は、上記第1画像中の走行路面の車線幅又は左右両側の路側端間の距離を第1画像上の走行路幅として求めるように構成され、上記第2走行路幅算出手段は、上記第2画像中の走行路面において上記第1走行路幅算出手段により求められた第1画像上の走行路幅に対応して第2画像上の走行路幅を求めるように構成されているものとする。
【0018】
このことで、第1及び第2画像から車線を区画する白線や路側端を抽出するのは容易であるので、第1及び第2画像上の走行路幅を求める際の処理負担をより一層軽減することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の車両用走行路面検出装置によると、自車両が走行路面の第1地点を走行しているときに撮像された第1画像中の走行路面において、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定した仮想走行路面の該第2地点に対応する特定位置での第1画像上の走行路幅を求め、かつ該第1画像上の走行路幅に基づいて、上記仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出するとともに、自車両が走行路面の第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置での第2画像上の走行路幅を求め、かつ該第2画像上の走行路幅に基づいて上記第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出して、上記第1走行路幅と上記第2走行路幅との大小関係に基づいて、上記第2地点での走行路面の勾配状態を判定するようにしたことにより、撮像手段として1つのカメラを設けるだけで済み、また、そのカメラによる画像処理も簡単で済み、簡単な構成でかつ小さい処理負担で、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用走行路面検出装置が搭載された車両W(自車両に相当し、本実施形態では自動車である)の概略構成を示す。同図において、1は、車両W前方の走行路面を撮像する撮像手段としての前方撮像カメラであり、CCD等の撮像素子を有するデジタルカメラにより構成されている。この前方撮像カメラ1により撮像された画像は、各種の演算を行う制御ユニット10に送信される。また、この制御ユニット10には、車両Wの走行距離を検出する距離センサ2からの情報が入力されるようになっている。そして、制御ユニット10にて、前方撮像カメラ1からの画像及び距離センサ2からの情報を基に後述の如く演算が行われて、車両Wが走行する走行路面の勾配状態が検出されるようになっている。この勾配状態の検出情報が、ナビゲーション装置の表示装置5、車両Wのエンジンを制御するエンジン制御ユニット6及び車両Wの自動変速機を制御する変速機制御ユニット7へ送信される。尚、本実施形態では、車両Wは、その左右両側にある白線21で区画された車線の走行路面上を走行しているものとし、両白線21間の距離である車線幅を走行路幅という。白線21の有無に関わらず、左右両側の路側端間の距離を走行路幅としてもよい。
【0022】
上記制御ユニット10内には、図2に示すように、白線検出部11、走行路幅算出部12及び勾配状態判定部13が設けられている。白線検出部11は、上記前方撮像カメラ1により撮像された画像から、上記左右両白線21に対応する部分を通常の画像処理によって検出する。
【0023】
上記走行路幅算出部12は、先ず、車両Wが走行している走行路面の或る地点(第1地点)で前方撮像カメラ1により撮像された画像(第1画像)中の走行路面の特定位置での第1画像上の走行路幅(白線検出部11により検出された、両白線21に対応する部分の間の距離、つまり第1画像上の車線幅)を求める。上記特定位置は、図3に示すように、前方撮像カメラ1の光軸に相当する点を原点とする2次元座標のY座標がY1となる位置である。この第1画像中の走行路面においてY座標がY1となる特定位置は、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離(L)先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定した仮想走行路面の該第2地点に対応する位置である。尚、左右両側の路側端間の距離を走行路幅とする場合には、左右両側の路側端にある段差やガードレール等を検出して、それらに対応する部分の間の距離を求めるようにすればよい。
【0024】
図4に示すように、第1画像中の走行路面においてY座標がY1となる特定位置は、上記の仮定により、第2地点の実際の勾配が第1地点と同じで第1地点から継続したもの(図4では水平状態が継続)である場合には、実際の走行路面の第2地点(A1)に対応する位置となるが、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して上り勾配である場合には、実際には第2地点(この場合にはA2点となる)よりも手前のP地点に対応する位置となり、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して下り勾配である場合には、実際には第2地点(この場合にはA3点となる)よりも遠方のQ地点に対応する位置となる。尚、図4中、一点鎖線で示すラインCは、前方撮像カメラ1の光軸であり、実線で示すラインEは、第1画像においてY座標がY1となる特定位置に到達する光線のラインである。
【0025】
続いて、走行路幅算出部12は、上記第1画像上の走行路幅に基づいて、上記仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出する。すなわち、第1走行路幅B1は、第1画像上の走行路幅をb1とし、前方撮像カメラ1の焦点距離をfとして、
B1=b1・L/f
により算出する。
【0026】
次いで、走行路幅算出部12は、車両Wが上記走行路面の第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置での第2画像上の走行路幅を求める。本実施形態では、第1画像上の走行路幅として、車線幅を求めたので、第2画像上の走行路幅としても、第1画像上の走行路幅に対応して車線幅を求める。
【0027】
上記第2画像中の走行路面において第2地点に対応する位置は、図5に示すように、第2画像の下端に近い位置、つまり車両Wに出来る限り近い位置である。このように、第2画像は、第2地点を撮像可能な範囲で第2地点に出来る限り近い地点で撮像される。これにより、第2画像中の走行路面において第2地点に対応する位置は、上記第1画像中の走行路面の特定位置とは異なり、第2地点の勾配に関係なくほぼ正確に第2地点に対応する位置となる。この結果、第2走行路幅は第2地点の走行路幅と等しくなる。
【0028】
上記第2画像が撮像される地点は、距離センサ2により検出される、第1地点からの走行距離が、上記所定距離Lに対して、上記の如く第2地点を撮像可能な範囲で第2地点に出来る限り近くするという観点から予め設定された設定距離Lbだけ小さい距離Laとなった地点である。そして、第2画像中の走行路面において第2地点に対応する位置は、第2画像が撮像された地点から第2地点までの距離が上記設定距離Lbであることから求めることができ、本実施形態では、Y座標が−Y2となる位置であるとする。
【0029】
続いて、走行路幅算出部12は、上記第2画像上の走行路幅に基づいて、第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出する。すなわち、第2走行路幅B2は、第2画像上の走行路幅をb2とし、前方撮像カメラ1の焦点距離をfとして、
B2=b2・Lb/f
により算出する。
【0030】
上記勾配状態判定部13は、上記第1走行路幅B1と第2走行路幅B2との大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を判定(検出)する。すなわち、上記の如く、第1走行路幅B1の算出の際には、第1画像中の走行路面が第1地点から第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定しているので、第2地点の実際の勾配が第1地点と同じで継続したものである場合(実際の走行路面が仮想走行路面と同じ場合)には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際にも第2地点(A1)に対応する位置となり、第1走行路幅B1と第2走行路幅B2とが略同じ値になる(両者の差が所定値以下になる)。一方、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して上り勾配である場合には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際には第2地点(この場合には、A2地点となり、第2走行路幅B2は、A2地点での走行路幅である)よりも手前のP地点に対応する位置となり、このため、第1画像上の走行路幅b1は、第2地点(A2)とその手前のP地点との距離の分だけ、同じ勾配が継続する場合に比べて大きくなる。この結果、第1走行路幅B1が第2走行路幅B2よりも大きくなる。逆に、第2地点の実際の勾配が第1地点に対して下り勾配である場合には、第1画像中の走行路面の特定位置は、実際には第2地点(この場合には、A3地点となり、第2走行路幅B2は、A3地点での走行路幅である)よりも遠方のQ地点に対応する位置であり、この結果、第1画像上の走行路幅b1は、第2地点(A3)とその遠方のQ地点との距離の分だけ、同じ勾配が継続する場合に比べて小さくなる。この結果、第1走行路幅B1が第2走行路幅B2よりも小さくなる。
【0031】
したがって、勾配状態判定部13は、第1走行路幅B1と第2走行路幅B2との差が所定値以下である場合には、両者の大小に拘わらず、第2地点での走行路面が第1地点と同じ勾配であると判定し、第1走行路幅B1が第2走行路幅B2よりも大きくかつ両者の差が上記所定値を超える場合には、第2地点での走行路面が第1地点に対して上り勾配であると判定し、第1走行路幅B1が第2走行路幅B2よりも小さくかつ両者の差が上記所定値を超える場合には、第2地点での走行路面が第1地点に対して下り勾配であると判定する。上記所定値は、第1走行路幅B1及び第2走行路幅B2の算出誤差を考慮して出来る限り小さい値に設定すればよい。
【0032】
尚、第2地点での走行路面が第1地点に対して上り又は下り勾配であると判定した場合には、第1走行路幅B1と第2走行路幅B2との差の大きさに応じて、勾配度を算出するようにしてもよい(上記差が大きいほど勾配度が大きくなる)。
【0033】
また、本実施形態では、第2地点での走行路面の勾配状態は、第1地点に対する相対的なものであるが、水平状態等の基準状態を検出するようにすれば、第2地点での走行路面の絶対的な勾配状態や勾配度が分かる。
【0034】
ここで、上記制御ユニット10による処理動作を、図6のフローチャートにより説明する。
【0035】
最初のステップS1では、前方撮像カメラ1により撮像された画像(第1画像)を入力し、次のステップS2で、白線検出部11にて、その入力された第1画像から左右両白線21に対応する部分を検出する。
【0036】
次のステップS3では、走行路幅算出部12にて、第1画像中の走行路面においてY座標がY1となる特定位置での第1画像上の走行路幅b1を求め、次のステップS4で、走行路幅算出部12にて、上記第1画像上の走行路幅b1に基づいて第1走行路幅B1を算出する。
【0037】
次のステップS5では、距離センサ2により検出される、第1地点からの走行距離がLaになったか否かを判定する。尚、距離センサ2の代わりに車速センサを用いて、第1地点からの走行において車速センサにより検出された車速と、第1地点(第1画像の撮像時)からの経過時間とから、第1地点からの走行距離がLaになったか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
上記ステップS5の判定がNOであるときには、ステップS5の動作を繰り返す一方、判定がYESになると、ステップS6に進んで、前方撮像カメラ1により撮像された画像(第2画像)を入力し、次のステップS7で、白線検出部11にて、その入力された第2画像から左右両白線21に対応する部分を検出する。
【0039】
次のステップS8では、走行路幅算出部12にて、第2画像中の走行路面においてY座標が−Y2となる位置での第2画像上の走行路幅b2を求め、次のステップS9で、走行路幅算出部12にて、上記第2画像上の走行路幅b2に基づいて第2走行路幅B2を算出する。
【0040】
次のステップS10では、勾配状態判定部13にて、上記第1走行路幅B1と上記第2走行路幅B2との大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を判定し、しかる後にリターンする。
【0041】
尚、第2画像が撮像された地点を新たな第1地点とし、第2画像を新たな第1画像として、この新たな第1画像に基づいて新たな第1走行路幅B1を算出し、その新たな第1地点から距離Laだけ走行した地点で撮像された新たな第2画像に基づいて新たな第2走行路幅B2を算出し、これら新たな第1走行路幅B1及び新たな第2走行路幅B2から新たな第2地点での走行路面の勾配状態を判定し、これを繰り返すようにしてもよい。こうすれば、走行路面の勾配状態を連続的に検出していくことができる。
【0042】
上記制御ユニット10の勾配状態判定部13による勾配状態の検出情報は、ナビゲーション装置の表示装置5、エンジン制御ユニット6及び変速機制御ユニット7へそれぞれ送信され、表示装置5は、車両Wの乗員に知らせるために勾配状態の検出情報を表示し、エンジン制御ユニット6及び変速機制御ユニット7は、勾配状態の検出情報をエンジンや自動変速機の制御に用いる。
【0043】
本実施形態では、上記走行路幅算出部12が、本発明の第1及び第2走行路幅算出手段を構成し、上記勾配状態判定部13が、本発明の勾配状態判定手段を構成することになる。
【0044】
したがって、本実施形態では、第1地点で撮像された第1画像中の走行路面に基づいて、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定して算出した、仮想走行路面での第2地点の走行路幅である第1走行路幅と、第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面に基づいて算出した第2地点の走行路幅である第2走行路幅との大小関係に基づいて、第2地点での走行路面の勾配状態を判定(検出)するようにしたので、ステレオカメラのように2つのカメラは必要なくて、1つのカメラを設けるだけで済み、また、そのカメラによる画像処理も簡単で済み、簡単な構成でかつ小さい処理負担で、車両Wが走行する走行路面の勾配状態を検出することができる。
【0045】
尚、上記実施形態では、第1画像からは第2地点での勾配状態を検出することはできないが、過去の走行路幅の変化から推定することは可能である。すなわち、第1画像及び第2画像においてY座標が−Y2となる位置での第1及び第2画像上の走行路幅d1,d2(d2=b2)をそれぞれ求め、これら第1及び第2画像上の走行路幅d1,d2から、Y座標が−Y2となる位置に対応する地点での実際の走行路幅D1,D2をそれぞれ算出する(例えば上記実施形態における走行路幅算出部12にて実行)。そして、例えば制御ユニット10内に新たに設けた変化率算出部にて、これら実際の走行路幅D1,D2の差を、当該両地点間の距離(La)で割って走行路幅の変化率を求める。
【0046】
続いて、上記第2画像を新たな第1画像として、上記実施形態と同様にして新たな第1画像上の走行路幅b1を求める。一方、新たな第1地点から新たな第2地点まで、上記変化率で走行路幅が変化しかつ新たな第1地点での勾配が継続していると仮定して、上記第2画像(新たな第1画像)上の走行路幅d2から、第1画像中の走行路面の特定位置での第1画像上の走行路幅b1′を求める(例えば上記実施形態における走行路幅算出部12にて実行)。
【0047】
そして、例えば制御ユニット10内に新たに設けた勾配状態推定部にて、上記新たな第1画像上の走行路幅b1とb1′と差が基準値以下である場合には、新たな第2地点での走行路面が新たな第1地点と同じ勾配であると推定し、b1がb1′よりも大きくかつ両者の差が上記基準値を超える場合には、新たな第2地点での走行路面が新たな第1地点に対して上り勾配であると推定し、b1がb1′よりも小さくかつ両者の差が上記基準値を超える場合には、新たな第2地点での走行路面が新たな第1地点に対して下り勾配であると推定する。最終的には、上記実施形態と同様に、上記新たな第1画像上の走行路幅b1から算出される第1走行路幅B1と、新たな第2画像に基づいて算出される第2走行路幅B2との大小関係により、新たな第2地点での走行路面が検出される。
【0048】
上記推定情報は、エンジン制御ユニット6及び変速機制御ユニット7へ送信され、エンジン制御ユニット6及び変速機制御ユニット7は、その推定情報に基づいて、車両Wが新たな第2地点の手前近傍の地点に達する前に事前の準備をしておく。例えば、新たな第2地点での走行路面が新たな第1地点に対して下り勾配であるとの推定情報を入力したときには、車両Wが新たな第2地点の手前の地点に達して勾配状態の検出情報を入力したときに直ぐにシフトダウンできるような前処理を実行しておく。そして、エンジン制御ユニット6及び変速機制御ユニット7は、勾配状態の検出情報を入力したとき、上記推定と同じ結果であれば、上記準備に続けて本処理を実行し、上記推定と異なる結果になった場合には、制御を修正して本処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出する車両用走行路面検出装置に有用であり、特に撮像手段として1つのカメラを設ける場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用走行路面検出装置が搭載された車両の概略図である。
【図2】車両用走行路面検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1画像を示す図である。
【図4】第1画像中の走行路面の特定位置が実際の走行路面のどの地点に対応するかを説明するための図である。
【図5】第2画像を示す図である。
【図6】制御ユニット10による処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 前方撮像カメラ(撮像手段)
10 制御ユニット
12 走行路幅算出部(第1走行路幅算出手段)(第2走行路幅算出手段)
13 勾配状態判定部(勾配状態判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する走行路面の勾配状態を検出する車両用走行路面検出装置であって、
自車両前方の上記走行路面を撮像する撮像手段と、
自車両が上記走行路面の第1地点を走行しているときに上記撮像手段により撮像された第1画像中の走行路面において、上記第1地点から該第1地点に対して所定距離先にある第2地点まで同じ勾配が継続すると仮定した仮想走行路面の該第2地点に対応する特定位置での第1画像上の走行路幅を求め、かつ該第1画像上の走行路幅に基づいて、上記仮想走行路面での第2地点の走行路幅を第1走行路幅として算出する第1走行路幅算出手段と、
自車両が上記走行路面の第2地点の手前近傍の地点に達したときに撮像された第2画像中の走行路面において該第2地点に対応する位置での第2画像上の走行路幅を求め、かつ該第2画像上の走行路幅に基づいて上記第2地点の走行路幅を第2走行路幅として算出する第2走行路幅算出手段と、
上記第1走行路幅算出手段により算出された第1走行路幅と、上記第2走行路幅算出手段により算出された第2走行路幅との大小関係に基づいて、上記第2地点での走行路面の勾配状態を判定する勾配状態判定手段とを備えていることを特徴とする車両用走行路面検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用走行路面検出装置において、
上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅と上記第2走行路幅との差が所定値以下である場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点と同じ勾配であると判定するように構成されていることを特徴とする車両用走行路面検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用走行路面検出装置において、
上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅が上記第2走行路幅よりも大きくかつ両者の差が所定値を超える場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点に対して上り勾配であると判定するように構成されていることを特徴とする車両用走行路面検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両用走行路面検出装置において、
上記勾配状態検出手段は、上記第1走行路幅が上記第2走行路幅よりも小さくかつ両者の差が所定値を超える場合には、上記第2地点での走行路面が上記第1地点に対して下り勾配であると判定するように構成されていることを特徴とする車両用走行路面検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用走行路面検出装置において、
上記第1走行路幅算出手段は、上記第1画像中の走行路面の車線幅又は左右両側の路側端間の距離を第1画像上の走行路幅として求めるように構成され、
上記第2走行路幅算出手段は、上記第2画像中の走行路面において上記第1走行路幅算出手段により求められた第1画像上の走行路幅に対応して第2画像上の走行路幅を求めるように構成されていることを特徴とする車両用走行路面検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−18223(P2010−18223A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182502(P2008−182502)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】