説明

車両

【課題】
前輪に対して後輪のトレッド幅を広くとったハイルーフ仕様のエクステリアデザインを施した車両と、床下トランクルームをさらに設けて、ファミリー仕様ならびに環境性能やユニバーサルデザインに対応した車両の提供を図る。
【解決手段】
前輪のトレッド幅に対して後輪のトレッド幅を広く設けて、車両前部の車幅に対して車両後部の車幅を広く形成することで車室前部の室内幅に対して車室後部の室内幅を広く形成し、かつ、ハイルーフ部を設け、さらには、床下トランクルームを設けた構造を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、詳しくは、車両前部の車幅に対して車両後部の車幅を広くとることで、車室後部の室内空間を広くし、さらには、車内に床下トランクルームを設けたハイルーフ仕様の車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、特に現行スタイルのミ二バンおける発展の歴史は、90年代のセミミニキャブスタイルの進化に始まり、それまで商業的要素が強かった前輪駆動方式のFF化の採用によってその使い勝手、乗り心地、操縦性の技術が一挙に向上した。一方、ユーザーの購買志向も、最高速度や加速度、高出力トルクなどといったエンジンスペックの要求から、燃費性能や静寂性、軽量化などのエンジン環境の要求へと時代を反映して徐々に変化し、最近では、SRSエアバックやABSなど、走行・停止・曲がるといった安全性能を踏まえたプラットホーム志向へと移りつつある。さらには、エアロパーツなどのエクステリアデザインや両側スライドドア、アレンジシート等のファミリー志向の機能や、色彩や材質を含めトータル的なインテリアデザインが重視されるようになってきている。
【0003】
また、上記背景を経て、今日においては、環境性能やユニバーサルデザインに対応する機能も求められていて、ユーザーの目的別要求に対して各自動車メーカーがしのぎを削って開発しており、例えば図18に示すような、様々なデザイン・機能を備える車両が、ユーザーに対して従来より提供されている。すなわち、図18(a)のようなサンルームを設けたハイルーフ仕様のミニバンの車両や、図18(b)のような車両前部の車幅に対して車両後部の車幅を広くしたキャンピング仕様の車両、そして図18(c)に示すような後輪のトレッド幅を大きくした高馬力のスポーツカー仕様の車両などが、メーカーにより提供されている。
【0004】
しかしながら、エネルギー不足やCO2排出規制に対応した環境性能の開発や、高齢福祉社会を迎えて人にやさしいユニバーサルデザインの要求を満たしながら、魅力あるエクステリア並びにインテリアデザインが施された自動車を提供するには、未だ多くの技術的要素とコスト的な問題点をクリアしなければならないのが現状である。
【0005】
かかる問題の中で、本発明の基本構成要素の一つに近い二段式フロア方式の自動車(登録実用新案第3051257号)が提案されているが、その構成内容は、単に後部座席が前部座席に対して高い位置に設けて前方視界を確保しているに過ぎず、その構造からワンボックスタイプのミニバンに限定され、さらに座席周辺が壁に囲まれているため、現在の多様化したユーザーの要求を満たすことできない構造となっている。また、座席の高さが異なるゴルフカート(特開平9−38257号)が提案されているが、前記同様、後部座席が前部座席に対して高い位置に設けられ、単に視界を開放しているに過ぎず、しかもゴルフプレーヤーにとってゴルフ場でのゴルフカートの視界の開放は、プレーを進行する上で乗車時間の占める割合を考慮してもその快適性を特に感じさせるものではない。
【特許文献1】登録実用新案第3051257号公報
【特許文献2】特開平9−38257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、現在受け入れられているエクステリアデザイン並びにインテリアデザインを加味し、また、ユーザーシュチュエーションによる要求を満たす機能を有し、さらには、環境性能やユニバーサルデザインに対応する要求を満たした車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、前輪のトレッド幅に対して後輪のトレッド幅を広く設けて、車両前部の車幅に対して車両後部の車幅を広く形成することで車室前部の室内幅に対して車室後部の室内幅を広く形成し、かつ、ハイルーフ部を設けた構造となっている。
【0008】
また、本発明は、前記ハイルーフ部を車両後部にのみ設けることで、車両前部の全高及び室内ルーフ高と車両後部の全高及び室内ルーフ高とに段差が付けられている構造を採ることもできる。
【0009】
さらに、本発明は、前記ハイルーフ部の前方面に、窓が備えられている構造とすることができる。
【0010】
そして、本発明は、前記ハイルーフ部に、着脱可能なサンルーフを設けた構造を採用することができる。
【0011】
またさらに、本発明は、前記ハイルーフ部の前方面下部の車内に、手摺りを併設したダッシュボードを設置した構造とすることもできる。
【0012】
さらにまた、本発明は、前記車両において、前記車両において、車両後部室内フロアを車両前部室内フロアよりも高い位置に形成し、該車両後部室内フロア下部に床下収納トランクルームを設けた構造を採用することもできる。
【0013】
そしてまた、本発明は、前記車両において、車両後部フロアを着脱可能とした構造とすることができる。
【0014】
またさらに、本発明は、前記車両において、床下収納トランクルーム内にスライド式のインナートランクルームを設けた構造を採用することができる。
【0015】
そしてさらに、本発明は、前記車両において、車両前部室内フロアと車両後部室内フロアとの段差位置に、移動式のコンソールボックスを設けた構造とすることもできる。
【0016】
またさらに、本発明は、前記車両の室内側壁に、少なくとも一段以上の就寝マットを支持するための支持機構を備えた構造を採ることができる。
【0017】
さらにまた、本発明は、前記車両において、後部座席が車両後部フロアに敷設したスライドレールによって遊動自在であるとともに、該車両後部フロアの略中央にはテーブルが設置可能であって、前記スライドレールをテーブル設置箇所を中心として周回状並びに放射状に敷設することで、後部座席がテーブルを中心に周回・放射遊動可能とした構造を採用することができる。
【0018】
またそして、本発明は、前記車両において、テントルーフ、テントハウス、伸縮ポールのうち少なくとも一以上が着脱可能な着脱機構をバックドアに備えた構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる車両によれば、車両前部と車両後部との車幅が異なるサイドボディデザインとハイルーフ仕様が織り成すボディバランスの良い斬新なエクステリアデザインを形成し、現在流行のエアロキットと比較して、よりスポーティーでファッショナブルなカーフォルムは、ミニバンは無論のこと座席空間が小さい小型乗用車ならびに軽自動車においてもその斬新的なデザイン性は受け継がれる。
【0020】
また、本発明にかかる車両によれば、床下収納トランクルームを設ける構造を採用することにより、利便性・居住性はもとより、環境性能やユニバーサルデザイン機能にも対応する構造も共有している。
【0021】
さらに、本発明にかかる車両によれば、車両後部の室内居住スペースを大きく取ることができるとともに、床下収納トランクルームを車両後部フロア下部に設ける構造から、必然的に後部座席の位置が高くなったことと相俟って、従来邪魔であったタイヤハウスの出っ張りを回避することができ、後部座席空間並びにラゲッジスペースは飛躍的に広く取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、前輪のトレッド幅に対して後輪のトレッド幅を広く設けるとともに、車両前部1aの車幅に対して車両後部1bの車幅を広く形成することで車室前部の室内幅に対して車室後部の室内幅を広く形成し、かつ、ハイルーフ部2を設けることにより、優れたデザイン性と優れた機能性とを兼備した車両を実現したことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる車両の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明にかかるミニバンの車両1の実施形態を示しており、図1(a)はワンボックスタイプの車両1、図1(b)はワゴンタイプの車両1におけるそれぞれの実施形態を示す斜視図であり、図2は該車両1の実施形態を示す平面図である。図面に示す通り、本発明にかかる車両1は、前輪のトレッド幅に対して後輪のトレッド幅を広く設けるとともに、車両前部1aの車幅3Bに対して車両後部1bの車幅3Aを広く形成することで車室前部の室内幅に対して車室後部の室内幅を広く形成してなり、さらに、車両1の全高をフロントガラス上辺位置よりも高く形成することで車室内のルーフ高がフロントガラス上辺位置よりも高く形成されているハイルーフ部2を設けた全体としてハイルーフ仕様の車両1として構成されている。
【0024】
尚、車両1における車両前部1aと車両後部1bとの境については、特に限定するものではないが、前部座席7(運転席及び助手席)の背面位置近辺から前後に区別して、車両前部1aと車両後部1bとの境とすることとなる。
【0025】
上記ハイルーフ部2について、車両前部1aから車両後部1bにかけて全体的に設ける構造も考え得るが、車両前部1aについてはそのままに車両後部1bについてのみハイルーフ部2を設ける構造も考え得る。すなわち、車両1における車両後部1bの全高のみフロントガラス上辺位置よりも高く形成することで、車室内における車両後部1bのルーフ高のみフロントガラス上辺位置よりも高く形成して、車両前部1aの全高及びルーフ高と車両後部1bの全高及びルーフ高とに段差を付けてハイルーフ部2を設ける態様である。尚、図面では、後者構造を採用した場合を示している。
【0026】
また、図1に示すように、ハイルーフ部2の前方面に、窓2aを備えた態様も考えられる。すなわち、車両前部1aから車両後部1bにかけて全体的にハイルーフ部2を設ける態様の場合は、ハイルーフ部2の前方面すなわちフロントガラスとは別にその上部に窓2aが備えられ、車両後部1bにのみハイルーフ部2が設けられる態様の場合は、車両前部1aのルーフと車両後部1bのルーフとの段差面となるハイルーフ部2の前方面に窓2aが備えられる格好となる。かかる窓2aは、車室内の採光や後部座席搭乗者の視界確保用窓として機能する。
【0027】
また、図4に示すように、上記ハイルーフ部2には、着脱可能なサンルーフ10を設ける態様も可能である。尚、図4(a)はワンボックスタイプの車両1、図4(b)はワゴンタイプの車両1におけるそれぞれの態様を示している。該サンルーフ10は、その周縁部にワンタッチ式の取付具を設けて着脱自在にしたもので、ユーザーシチュエーションに合わせて人手でもって簡単にオープンカー仕様にできることとなる。取り外されたサンルーフ10は、そのままの形で後述する床下収納トランクルーム4に格納することが可能である。
【0028】
上記着脱可能なサンルーフ10構造を採用することにより、従来におけるオープンカー仕様の車両について構造的にルーフ強化の必要性からコスト高となっていた問題点を解消し、また、取り外されたサンルーフ10がそのままの形で後述の床下収納トランクルーム4に格納できるため、従前のサンルーフ構造を利用したオープンカー仕様の車両1が低コストで実現することができる。
【0029】
さらに、ハイルーフ部2の前方面下部に、手摺りを併設したダッシュボード12を設ける構造とすることも考え得る。図3は、かかる構造を採用した場合を示している。尚、図面では、車両後部1bのみをハイルーフ仕様とした車両1について示しているが、車両1の全体をハイルーフ仕様とした場合についても同様である。該ダッシュボード12は、単なる収納としての機能だけではなく、運転席と同様な計器類や内蔵式のテレビ・TVゲーム・ナビゲーション・ステレオ・DVD・カラオケなどの音響映像機器、冷蔵庫、食事用ならびに事務用トレー、書棚ラック、応接用テーブル、子供用ハンドル付運転席などといった、あらゆるものを装備させることも可能であり、住宅に隣接して駐車することによりプラーベートルームとして従来にない利用手段を提案するものである。そしてまた、該ダッシュボード12には、急ブレーキや衝撃時の搭乗者の安全を確保するための手摺り27が装備されている。
【0030】
前記車両1において、車両後部室内フロア6を車両前部室内フロアよりも高い位置に形成し、該車両後部室内フロア6下部に床下収納トランクルーム4を設けた構造とすることも可能である。図3は、かかる構造とした場合の車両1を示す透過説明図である。すなわち、本発明にかかる車両1は、ハイルーフ部2が設けられていることにより、通常よりも室内フロア位置を高く形成することが可能であり、車両後部室内フロア6を車両前部室内フロアよりも高くすることで、後部座席搭乗者の前方視界を拡げることができ、このことは、上述の通りハイルーフ部2の前方面に窓2aを備える態様を採ることによって、より視界性を良好にする。
【0031】
また、車両後部室内フロア6を高くすることでその下部にできたスペースを、床下収納トランクルーム4として活用することができ、車両後部室内並びにラゲッチスペースを飛躍的に広く取ることが可能であって、さらには、従来邪魔であったタイヤハウスの出っ張りを回避することができる。
【0032】
かかる床下収納トランクルーム4は、停車時並びに走行時において該床下収納トランクルーム4から直接荷物19の出し入れを可能とすべく、車内外から開閉可能なハッチ5を装備して、いつでも開閉することができる構造とすることが望ましい。
【0033】
また、該床下収納トランクルーム4は、スライド式のインナートランクルーム9を配設した構造とすることが可能である。図5は、かかるインナートランクルーム9を配設した態様を示す説明図である。該インナートランクルーム9は、床下収納トランクルーム4内に敷設されたスライドレールを介して、床下収納トランクルーム4外へ引き出される。かかる構造とすることにより、車両装備品やゴルフバック・釣竿・スキー・スノーボード・サーフボード・スキューバーダイビング・スカイダイビングなどのレジャー用品など、これまで収納できなかった大きくて長い荷物19の積み込み、積み出しを容易にすることが可能となる。
【0034】
その外にも、上記床下収納トランクルーム4は、種々様々な態様で使用することが可能である。例えば、図7に示すように、車両1内に簡易トイレ22を設けて、該簡易トイレ22を床下収納トランクルーム4へ収納することもできる。構造的に床下収納トランクルーム4は密封・個室化することが可能であるため、臭気のある簡易トイレ22を格納しても、その臭気が外部へ漏れる心配がなく、また、外部と隔離した状態で人目を気にせずに用を足すこともできる。さらに、床下収納トランクルーム4の密封・個室化という機能性から、野菜や魚など汚れや水分のある荷物19を隔離して収納することも可能である。
【0035】
また、図8に示すように、上記床下収納トランクルーム4内に燃料電池23を積載する態様も考え得る。かかる態様では、次世代の低公害車として普及が予想される燃料電池23の収納スペースとして床下収納トランクルーム4が有効に利用され、その大容量の容積からして燃料電池23の小型化の実用性を待つことなく燃料電池車の量産化が可能になるため、燃料電池車の早期普及が期待される。そして、車内外から開閉できる開閉ハッチ5によって燃料電池23のメンテナンスも容易に行うことができるという優れた効果も発揮する。
【0036】
前記車両1において、車両後部室内フロア6を着脱可能な構造とすることができる。図9は、かかる車両後部室内フロア6の構造例を示す平面図である。該車両後部室内フロア6は、一枚板あるいは複数枚に分割した状態で構成され、後部座席8を取り外した後、床下収納トランクルーム4及び車両1本体から分離して、取り外すことができる構造になっている。尚、図面では、該車両後部室内フロア6を車両後部室内フロア前部6a×2及び車両後部室内フロア後部6b×2の四分割にして構成された場合を示している。
【0037】
上記車両後部室内フロア6を複数枚に分割することで、かかる分割された車両後部室内フロア6a・6bの取り外し態様により、車両1の様々な使用態様を見出すことができる。例えば、車両後部室内フロア後部6bと3列目の後部座席8を取り外すことにより、図10に示すような使用態様が可能となる。すなわち、3列目の後部座席8を取り外した後、車両後部室内フロア後部6bをスライドさせて取り外し、仕切りカーテンなどを取り付けることで、海水浴時の着替え室やシャワー21ハウスとして利用することができる。また、高さのある資材や植木なども積み込むことも可能である。
【0038】
さらに、車両後部室内フロア6と後部座席8の全てを取り外すことにより、図11に示すような使用態様が可能である。すなわち、後部座席8を取り外した後、車両後部室内フロア6をスライドさせて全て取り外すことで、車室後部空間は大容量の荷物19が掲載可能なスペースを確保でき、レジャー用と商業用との供用が図れることとなる。
【0039】
そしてまた、車両後部室内フロア前部6a・車両後部室内フロア後部6bの片側一方及び2列目・3列目の後部座席8の片側一方を取り外すことにより、図12並びに図17に示すような使用態様が可能となる。すなわち、2列目・3列目の後部座席8の片側一方を取り外した後、該後部座席8の取り外された車両後部室内フロア前部6a・車両後部室内フロア後部6bの片側一方をスライドさせて取り外すことで、図12に示すように、かかる取り外した箇所にシンク等の厨房器具20を設置してキッチンスペースとして活用したり、さらには、図17に示すように、車椅子26の乗車スペースとして活用することができる。
【0040】
尚、車椅子26の乗車スペースとして活用する場合には、リア開閉ハッチ5bを開放して、そこに架設板25を架けることで車椅子26の乗降を行うこととなり、乗車口が車体後方あるため常に乗車スペースが確保されていて安全であるという利点がある。そしてまた、架設板25の収納も床下収納トランクルーム4内に容易にスライドさせて収まることから、高額なウェルキャブ仕様の装置を必要とすることなく、安価な福祉車両を提供できるものである。
【0041】
次に、前記車両1において、図3に示すように、車両前部室内フロアと車両後部室内フロア6との段差位置に、移動式のコンソールボックス11を設ける構造とすることが考え得る。かかるコンソールボックス11は、前部座席7の中央に移動可能に設置され、単に収納としての機能だけではなく、前部座席7のある車両前部室内フロアから段差のある車両後部室内フロア6への移動に際し、該コンソールボックス11を踏み台として利用することで、現行のフラットなミニバン車両と同様なウォークスルーを実現することができる。そしてまた、後述する3段就寝ベッド13の最下段を使用する際のオットマンとしても機能させることが可能である
【0042】
前記車両1の室内側壁に、少なくとも一段以上の就寝マット13を支持するための支持機構13aを備えた構造とすることができる。図6は、かかる支持機構13aを備えて車室内を3段ベッド状に活用する実施形態を示す透過断面図である。すなわち、床下収納トランクルーム4の前方の室内開閉ハッチ5aを開放し、前部座席7を回転するとともに背部を倒して床下収納トランクルーム4の方向にスライドし、さらに2列目及び3列目の後部座席8の向きを向い合わせにするとともにスライドさせて座部同士を突き合わせて背部を倒し、車両1の室内側壁に備えられた支持機構13aによって就寝マット13を支持させることにより、従来不可能だった運転席の搭乗者も含め、搭乗者全員が足元まで完全に伸ばして就寝できる3段ベッドを提供することが可能となる。尚、就寝マット13を支持する支持機構の取付け方法、位置、仕様、個数については特に限定するものではない。
【0043】
次に、前記車両1において、後部座席8が車両後部フロア6に敷設したスライドレール28によって遊動自在であるとともに、該車両後部フロア6の略中央にはテーブル29が設置可能であって、前記スライドレール28をテーブル29設置箇所を中心として周回状並びに放射状に敷設することで、後部座席8がテーブル29を中心に周回・放射遊動可能とする構造を採用し得る。図13は、かかる構造を採用した場合の使用態様を示す透過断面図である。図面に示すように、かかる構造を採用することにより、トランプゲームやマージャンなどの2人以上の複数人による対局的なテーブルゲームを、車両後部1bの室内で楽しむことが可能となる。
【0044】
このとき、後部座席8のスライド方式について特に限定するものではないが、例えば図14(a)に示すような、スライドレール28に後部座席8の下面に備えられるスライド軸30を装着させるスライド方式が採用可能である。尚、後部座席8をスムーズにスライドさせるべく、該後部座席8の下面に全方位キャスター32を備え、これにより旋回も自在に行うことを可能とする構造を採用し得る。このとき、後部座席8の所定箇所に遊動ストッパー34を設け、後部座席8の遊動可能状態を停止できる構造とすることが望ましい。また、かかるスライド軸30は、図14(b)に示すように、スライドレール28に設けられた取り外しポイントを介して、装着状態を解除可能な構造とすることができ、かかる構造により、後部座席8を車両後部フロア6から自在に着脱可能とすることができる。
【0045】
そしてまた、後部座席8は、シート8aと基台31とに分割可能な構造とすることも考え得る。かかる分割の構造について特に限定するものではないが、例えば図14(a)に示すような、シート8aの下面に備えた取付軸8b及びガイド脚と基台31の上面に備えた取付軸受け8c及びガイド脚受けとをそれぞれ嵌合・着脱可能とすることにより、該後部座席8を分割可能とする構造を採用し得る。尚、固定されたシート8aを基台31から分割して取り外す際には、シート8aの所定箇所に備えられた取り外しレバー33を操作することにより行うこととなる。かかる構造とすることにより、シート8aを、後述するアウトドア仕様における椅子として使用することができる。
【0046】
前記車両1において、テントルーフ17、テントハウス24、伸縮ポール18のうち少なくとも一以上が着脱可能な着脱機構35をバックドア16に備えた構造とすることもできる。図15及び図16は、にかかる構造を採用した場合の実施形態を示している。かかる構造を採用することにより、本発明にかかる車両1について、アウトドア仕様としての使用態様を提供することが可能となる。
【0047】
図15は、バックドア16に、着脱機構35を介してテントルーフ17及び伸縮ポール18を取り付けた実施形態を示している。すなわち、バックドア16を開放してテントルーフ17及び伸縮ポール18を取り付けた後、テーブルを車外に持ち出して駐車場のスペースを利用したフリーマーケットなどの移動式露店としてや雨よけテントとして利用できる。尚、着脱機構35の構造や位置、個数については特に限定するものではない。
【0048】
図16は、バックドア16に、着脱機構35を介してテントルーフ17及び伸縮ポール18、さらにはテントハウス24を取り付けた実施形態を示している。すなわち、バックドア16を開放してテントルーフ17及び伸縮ポール18を取り付けた後、テントハウス24を取付け、後部座席8を車外に持ち出して長期滞在のキャンプ用テントとして利用することができる。尚、着脱機構35の構造や位置、個数について特に限定がないことは上記同様である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した通り、本発明にかかる車両1は、車両前部1aと車両後部1bとの車幅・室内幅・フロアの高さが異なるハイルーフ仕様の車両1であって、その構造に付帯する上記各種構造を備えており、その構造からエクステリアデザイン仕様と、ファミリー仕様と、ユニバーサルデザイン仕様と、環境性能仕様との4つの分野において産業上の利用の可能性があるもので、その詳細について下記に述べる。
【0050】
エクステリアデザイン仕様は、車両前部1aの車幅3Bと車両後部1bの車幅3Aとが異なるサイドボディデザインと段差のあるハイルーフ部2が織り成すボディバランスの良い斬新なエクステリアデザインで、現在流行のエアロキットと比較して、よりスポーティーでファッショナブルなカーフォルムを有し、ミニバンは無論のこと座席空間が小さい小型乗用車ならびに軽自動車においてもその斬新的なデザイン性を提供するものである。
【0051】
ファミリー仕様は、車両前部フロアと段差のある車両後部フロア6、床下収納トランクルーム4、着脱式のサンルーフ10、移動式のコンソールボックス11、ハイルーフ部に設置されるダッシュボード12、就寝マット13、分割式の車両後部フロア6、遊動自在な後部座席8及びそのためのスライドレール28、バックドアを利用したアウトドア仕様、といった各態様において、従来の車両構造から進化した新しい用途及び態様を提案するものである。
【0052】
ユニバーサルデザイン仕様は、高齢福祉社会を迎えて人にやさしい要求を満たす構造であって、具体的には、車両後部室内フロア6の片側一方及び後部座席8の片側一方を取り外して車椅子26を収容することによって、高額なウェルキャブ仕様の装置を必要とすることなく、安価な福祉車両を提供するものである。
【0053】
環境性能仕様は、次世代の低公害車として普及が予想される燃料電池23の収納スペースとして床下収納トランクルーム4のスペースを有効活用することができ、その大容量の容積からして燃料電池23の小型化の実用性を待つことなく、燃料電池車の量産化が可能になるため、燃料電池車の早期普及が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる車両の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる車両の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図4】本発明にかかる車両の実施形態を示す側面図である。
【図5】本発明にかかる車両の実施形態を示す側面図である。
【図6】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図7】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図8】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図9】本発明にかかる車両後部室内フロアの構造例を示す平面図である。
【図10】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図11】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図12】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図13】本発明にかかる車両の実施形態を示す透過断面図である。
【図14】本発明にかかる後部座席及びスライドレールの構造例を示す斜視図である。
【図15】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図16】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図17】本発明にかかる車両の実施態様を示す透過断面図である。
【図18】本発明にかかる車両の従来の実施態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
1a 車両前部
1b 車両後部
2 ハイルーフ部
2a 窓
3A 車両後部の車幅
3B 車両前部の車幅
4 床下収納トランクルーム
5 開閉ハッチ
5a 室内開閉ハッチ
5b リア開閉ハッチ
6 車両後部室内フロア
6a 車両後部室内フロア前部
6b 車両後部室内フロア後部
7 前部座席
8 後部座席
8a シート
8b 取付軸
8c 取付軸受け
9 インナートランクルーム
10 サンルーフ
11 コンソールボックス
12 ダッシュボード
13 就寝マット
13a 支持機構
16 バックドア
17 テントルーフ
18 伸縮ポール
19 荷物
20 厨房器具
21 シャワー
22 簡易トイレ
23 燃料電池
24 テントハウス
25 架設板
26 車椅子
27 手摺り
28 スライドレール
29 テーブル
30 スライド軸
31 基台
32 全方位キャスター
33 取り外しレバー
34 遊動ストッパー
35 着脱機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪のトレッド幅に対して後輪のトレッド幅を広く設けて、車両前部の車幅に対して車両後部の車幅を広く形成することで車室前部の室内幅に対して車室後部の室内幅を広く形成し、かつ、ハイルーフ部を設けたことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記ハイルーフ部を車両後部にのみ設けることで、車両前部の全高及び室内ルーフ高と車両後部の全高及び室内ルーフ高とに段差が付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ハイルーフ部の前方面に、窓が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記ハイルーフ部に、着脱可能なサンルーフを設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
前記ハイルーフ部の前方面下部の車内に、手摺りを併設したダッシュボードを設置したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両。
【請求項6】
前記車両において、車両後部室内フロアを車両前部室内フロアよりも高い位置に形成し、該車両後部室内フロア下部に床下収納トランクルームを設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
前記車両において、車両後部室内フロアを着脱可能としたことを特徴する請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記車両において、床下収納トランクルーム内にスライド式のインナートランクルームを設けたことを特徴する請求項6に記載の車両。
【請求項9】
前記車両において、車両前部室内フロアと車両後部室内フロアとの段差位置に、移動式のコンソールボックスを設けたことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の車両。
【請求項10】
前記車両の室内側壁に、少なくとも一段以上の就寝マットを支持するための支持機構を備えたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両。
【請求項11】
前記車両において、後部座席が車両後部フロアに敷設したスライドレールによって遊動自在であるとともに、該車両後部フロアの略中央にはテーブルが設置可能であって、前記スライドレールをテーブル設置箇所を中心として周回状並びに放射状に敷設することで、後部座席がテーブルを中心に周回・放射遊動可能としたことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の車両。
【請求項12】
前記車両において、テントルーフ、テントハウス、伸縮ポールのうち少なくとも一以上が着脱可能な着脱機構をバックドアに備えたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−22273(P2007−22273A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206229(P2005−206229)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(597116252)
【Fターム(参考)】