車両
車台102と、少なくとも1つの前輪106と、2つの表面係合型後輪108と、後輪108を駆動する推進ユニット122とを備え、各後輪108が、それぞれの後輪108が車台102に対して移動するのを可能にする後輪支持体116と、油圧シリンダ144とを備える車輪支持組立体114によって車台102に連結され、油圧シリンダ144が、車台102及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストン148とを備え、ピストン148が、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体156をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、油圧シリンダのピストンがそれぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位し、車台102が表面に対して関節運動する車両が提供される。この構成は、クロス・ブレーシング又は支持部材を不要にし、後輪支持組立体の近く或いは後輪支持組立体間に配置することのできる推進ユニット又はエンジンのような車両100の内部構成部材の空間効率的な実装を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関する。特に、本発明は、傾斜車両に関するがそれに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
周知のように、道路交通量は毎年増加している。この増加の大部分は、乗用車数の増大によるものである。車両製造業者は、小型(「コンパクト」)車を提供することによってこのような問題に部分的に対応している。着実に上昇する燃料価格も小型車の使用を助長している。従来の座席構成、モータ構成、及び車輪構成を有する自動車の最小サイズには限界がある。
【0003】
二輪オートバイは、従来の四輪車の代替手段である。しかし、オートバイは、積載能力に限界があること、雨除けが不十分であること、オートバイを静止させておくときには支持が必要であることを含むある欠点を有する。
【0004】
前部が二輪で後部が一輪であるか、それとも前部が一輪で後部が二輪であるかにかかわらず、三輪車に関する多数の提案がなされている。或いは、非常に幅の狭い四輪車も提案されている。車両は、曲がるときに、曲がる車両を外側に回転させる傾向のある有効力(「遠心力」)を受ける。このことは通常、四輪車では、そのような車両の固有の安定性のために問題にならず、又、オートバイでも、曲がるときに重力と遠心力のバランスを取るようにオートバイが傾けられるので特に問題にならない。
【0005】
しかし、後輪に共通のハブアクスルを有する幅の狭い車両は、より幅の広い従来の車両固有の、曲がるときの安定性を有さない。従って、従来、曲がるときに遠心力に対抗するために傾斜する幅の狭い車両を提供する多数の提案がなされている。
【0006】
このような車両の実例はJamesの米国特許出願公開第2008/0238005号明細書に示されている。この文献は、一実施例において、後輪同士の間を車両の幅に沿って延びる平行四辺形を形成する後部クロスアームを有する三輪車両を開示している。コーナリング時に平行四辺形のクロスアームを一方向又は逆方向に傾斜させて車両を助けることによって、車体を車両の後輪と一緒に傾斜させることができる。
【0007】
傾斜車両の代替構成がShotterの英国特許第2444250号明細書において開示されている。この文献は、後輪に油圧ダンパー構成が連結された高い重心を有する傾斜車両を開示している。各車輪上の油圧ダンパーは、クロスバーによって機械的に連結されている。一動作モードでは、これらのダンパーが互いに独立に動作し、クロスバーが移動することによって傾斜動作が実現される。別の動作モードでは、ダンパー同士が相互に連結され、同じ方向に移動して差動運動を防止するように構成される。英国特許第2444250号明細書は、完全に密閉されたキャビンを有さない狭軌車両に関する特許である。
【0008】
傾斜車両の更なる代替構成がJacksonの国際公開第99/61302号に開示されている。一実施例において、各々が後輪を保持する一対の後部サスペンションストラットを有する三輪車両を図示し説明している。これらのストラットは、サスペンション機能を実現するとともに、車両が傾斜するのを可能にする。
【0009】
三輪車両用の他の周知の傾斜機構は、車両を傾斜させる機構に連結されたレバーを乗員/運転者が故意に作動させることに依存する機構であり、このような機構は、重量が大きいことが多く、且つこのようなレバー操作機構はまったく直感的なものではないので、運転者がレバーの操作方法を覚える必要がある。
【0010】
従って、小型であってよく、好ましくは三輪を有し、運転者が操作するのが容易であり、好ましくは直感的な操作が可能である従来の受動機構、又は直感的な電子制御によって傾斜しながら曲がることのできる、完全に密閉された車両を提供する必要があることが認識されている。
【0011】
また、幅の狭い乗用車は、本質的に、極端に制限された内部空間を備える。周知の構成では、これらの車両の後輪同士の間の空間が、車両が傾斜するのを可能にする機構によって占有される。従って、傾斜する幅の狭い周知の乗用車が車両内の利用可能な空間を効率的に使用できない技術的な問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0238005号明細書
【特許文献2】英国特許第2444250号明細書
【特許文献3】国際公開第99/61302号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備え、各後輪が、それぞれの後輪が車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、油圧シリンダのピストンがそれぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位し、車台が地面に対して関節運動し、車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動がポンプ構成によって選択的に制御される車両が提供される。
【0014】
このような構成を提供することによって、油圧シリンダ同士の間で流体を移動させることによって車台を傾斜又は関節運動させることができる。この構成は、対角材又は支持部材を不要にし、後輪支持組立体の近く又は後輪支持組立体同士の間に配置されてもよい推進ユニットのような車両の内部構成部材を空間効率的に実装するのを可能にする。
【0015】
一構成では、推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に車輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。この構成は、車両の重心を下げ、空間効率的な実装を可能にし、旋回時に車両を安定させるのを助ける。
【0016】
他の実例では、車両は電源を更に備える。変形例では、電源の少なくとも一部が車輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。
【0017】
一構成では、推進ユニットは内燃機関を備え、電源は燃料タンクを備える。他の構成では、推進ユニットは電気モータを備え、電源は少なくとも1つのバッテリ及び/又は燃料電池を備える。
【0018】
実例では、車輪支持組立体及び車台は、車台が車台の垂直直立位置に対して各方向に実質的に30度の角度まで傾斜するのを可能にするように構成される。角度は、必要に応じて地面に対して測定されてもよい。
【0019】
一変形例では、推進ユニット、電源、及び車台は、車両の重心が車台の傾斜角度にかかわらず実質的に後輪同士の間に留まるように構成される。
【0020】
実例では、ポンプ構成は電気的に作動される。他の実例では、ポンプ構成は双方向ポンプである。
【0021】
実例では、車両は、制御構成を更に備え、制御構成は、ユーザが車両を操舵するのを可能にする制御デバイスを備える。実例では、制御構成は、第1の動作モードにおいて、少なくとも一方の前輪がこの制御デバイスを動作させることによって操舵可能になるように構成される。
【0022】
別の実例では、第1の動作モードにおいて、一方の側に力を加え、それによって、車台を力が加えられた側において下方に傾斜させることによって、一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダへの油圧流体の移動を実現することができる。
【0023】
変形例では、車両は、ポンプ構成に平行に配置されたバイパス弁を更に備え、制御構成は、第1の動作モードでは、バイパス弁を開いてポンプ構成を迂回させ、力を加えることによって車台を傾斜させるように構成される。
【0024】
他の実例では、第2の動作モードにおいて、制御構成は、車両が制御デバイスの動作に応じて傾斜可能になるように制御デバイスを制御するように構成される。変形例では、第2の動作モードにおいて、少なくとも一方の前輪は自由にキャスター動作する。他の変形例では、制御構成は、少なくとも1つの車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードの一方を自動的に選択するように動作可能である。
【0025】
実例では、少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される。他の実例では、制御構成は、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに第1のモードを選択し、車両の速度が事前に定められた値以上になったときに第2のモードを選択するように動作可能である。一構成では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。他の構成では、第1のモード及び第2のモードはユーザによって選択可能である。
【0026】
実例では、前輪又は各前輪は、操舵可能なスイング・アーム部材によって車台に連結される。変形例では、スイング・アーム部材又は各スイング・アーム部材は、一方の端部の所で車台に回動可能に連結され、他方の端部の所に増幅器前輪を保持する。他の変形例では、ダンパーがスイング・アーム部材と車台との間に配置される。
【0027】
実例では、スイング・アーム部材又は各スイング・アーム部材は、制御デバイスに選択的に係合可能であり、各前輪を操舵するのを可能にする。更なる構成では、車両は、第1のチャンバ同士の間と第2のチャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げるように選択的に動作可能であり、それによって、車両の傾斜を選択的に抑制する停止手段を備える。更なる例では、停止手段は弁を備える。
【0028】
更なる例では、停止手段は、事前に定められた車両パラメータに応じて電子コントローラによって自動的に制御される。更なる例では、電子コントローラは加速度計を備え、電子コントローラは、加速度計からの情報に基づいて停止手段を制御するように動作可能である。
【0029】
一構成では、停止手段は手動の選択に応じて動作可能である。一変形例では、車両は駐車ブレーキを更に備え、停止手段は駐車ブレーキをかけることに応答して動作可能である。別の変形例では、各後輪支持体はそれぞれの後輪が車台に対して回動するのを可能にするように構成される。更なる変形例では、各後輪支持体は、それぞれの後輪が車台に対して垂直に回動するのを可能にするように構成される。
【0030】
別の変形例では、各後輪用の後輪支持体は、車台の第1の端部に回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アーム部材を備える。実例では、少なくとも1つのハウジングを後輪支持体又は車台に連結することがショック・アブソーバを介して行われる。
【0031】
別の実例では、ショック・アブソーバは、少なくとも1つのハウジングと一体であるか或いは少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結される。変形例では、少なくとも1つのピストンがショック・アブソーバによって実現される。更なる変形例では、各トレーリング・スイング・アーム部材は、車台に回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備える。
【0032】
更なる変形例では、各トレーリング・スイング・アーム用の油圧シリンダは、車台と一次スイング・アームとの間に連結され、一次スイング・アームと二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備える。
【0033】
一構成では、各後輪支持組立体は、車台の関節運動に対抗する復元力を車台とそれぞれの後輪との間に加えるように構成された付勢手段を更に備える。更なる構成では、付勢手段は、それぞれの油圧シリンダと車台又は後輪支持体との間に配置さればねを備える。
【0034】
一構成では、車両は、単一の前輪と2つ以下の後輪とを備える。他の構成では、前輪又は各前輪及び後輪は、使用時に車台と共に傾斜するように構成される。
【0035】
一構成では、車両は、使用時にヨークによって車台に連結される単一の前輪と、ヨークと車台との間に連結された少なくとも1つの減衰手段とを備える。一実施例では、減衰手段は、使用時にヨークを車台に対して移動させるように動作可能な油圧シリンダを備える。
【0036】
一実施例では、車両は、各々がステアリング構成によって車台に連結された2つの前輪を備え、ステアリング構成は、一対の前部油圧シリンダを備え、各前部油圧シリンダが、車台及びステアリング構成のうちの一方に連結されたハウジングと、ステアリング構成及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、前部油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各前部油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各前部油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の前部油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、各前部油圧シリンダのピストンが変位される。
【0037】
一実施例では、前部油圧シリンダは、後部車輪支持体に取り付けられた油圧シリンダと流体連通する。実例では、車両は、車台に連結され、運転者を収容するように構成された車両の内部空間を形成するボディを備える。変形例では、内部空間は実質的に完全に密閉される。更なる変形例では、ボディに開放可能なドアが形成される。
【0038】
実例では、車両は、後輪を駆動する推進ユニットを備える。更なる例では、推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に後輪支持組立体又は後輪同士の間に配置される。一構成では、推進ユニットは内燃機関を備える。変形例では、車両は燃料タンクを更に備える。更なる変形例では、燃料タンクの少なくとも一部は、後輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。代替構成では、推進ユニットは、電気モータを備える。
【0039】
変形例では、車両は電源を更に備える。更なる変形例では、電源は少なくとも1つのバッテリを備える。更なる変形例では、電源は少なくとも1つのバッテリを備える。更なる変形例では、電源は車載燃料電池を更に備える。一構成では、電源の少なくとも一部は、後輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。
【0040】
変形例では、油圧シリンダは油空圧部材を備える。別の構成では、推進ユニットから後輪への駆動は、チェーン駆動又はベルト駆動又はシャフト駆動である。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、各後輪が、車台に回動可能に連結され且つ後輪が車台に対して垂直方向に回動するのを可能にするそれぞれのトレーリング・スイング・アームによって車台に連結された2つの後輪と、ショック・アブソーバと、各スイング・アームと車台との間に直列に連結されたショック・アブソーバ及び油圧シリンダとを備え、各油圧シリンダが、ピストンとピストンが移動するハウジングとを有し、ピストンが、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をチャンバに流入させ且つ油圧流体をチャンバから流出させるポートを有する上部チャンバ及び下部チャンバに分割し、油圧シリンダの上部チャンバ同士が互いに連通し、油圧シリンダの下部チャンバ同士が互いに連通し、従って、車台の一方の側に下向きの力が加えられたときに、油圧流体が一方の油圧シリンダの上部チャンバから他方の油圧シリンダの上部チャンバに送られ、他方の油圧シリンダの下部チャンバから一方の油圧シリンダの下部チャンバに送られ、それによって、車両が、上記の側において下向きに傾き、他方の側において上向きに傾くことによって回転する車両が提供される。
【0042】
変形例では、少なくとも一方のショック・アブソーバは、このショック・アブソーバが直列に連結された油圧シリンダのハウジングと一体であるか或いはこのハウジングにしっかりと連結される。更なる変形例では、少なくとも一方の油圧シリンダのピストンは、少なくとも一方の油圧シリンダが直列に連結されたショック・アブソーバによって実現される。
【0043】
本発明は、単に油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに移動させることによって傾斜させることができる車両を提供する。この傾斜運動を実現するのに複雑なブレーシングアーム又は構造部材は必要とされない。同様に、いくつかの周知の構成と同様の複雑で重い機械的リンケージは必要ではない。
【0044】
各後輪用の後輪支持体は、前端の所でフレームに回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アームを備えることが好ましい。少なくとも1つのハウジングと後輪支持体又はフレームとの連結は、ショック・アブソーバを介して行うことが好ましい。
【0045】
ショック・アブソーバは、少なくとも1つのハウジングと一体であっても、或いは少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結されてもよい。この代わりに或いはこれに加えて、少なくとも1つのプランジャがショック・アブソーバによって実現されてもよい。
【0046】
各トレーリング・スイング・アームは、フレームに回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備えてよい。各トレーリング・スイング・アームの油圧シリンダは、フレームと一次スイング・アームとの間に連結されてよく、車両は、一次スイング・アームと二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備えてよい。
【0047】
弁が、上部チャンバ同士の間及び下部チャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げ、それによって選択的に車両の回転を抑制することが好ましい。これによって、必要に応じて車両の姿勢を固定することができ、例えば、車両が静止するとき又は高速に直線状に移動するときに車両を直立に固定することができる。好ましい実施例では、車両は、単一の前輪と2つ以下の後輪とを備える。
【0048】
本発明の第3の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪とを備え、各後輪が、それぞれの後輪を車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つ油圧流体をそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が互いに連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバ同士のポート同士が互いに連通し、従って、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1のチャンバ又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1のチャンバ又は第2のチャンバまで移動したときに、油圧シリンダのピストン同士がそれぞれのハウジングに対して逆方向に変位し、車台が表面に対して関節運動し、車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動がポンプ構成によって選択的に制御される車両が提供される。
【0049】
本発明の第4の態様によれば、傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを備える制御構成とを備え、制御構成が、車両パラメータを求め、車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するように動作可能であり、第1の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が制御デバイスによって直接操舵できるように構成され、車台が、車両のユーザの動きによって傾斜できるように構成され、第2の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作するように構成され、制御構成が、制御デバイスの動作に応答して車台を傾斜させて車両を操舵するように構成される車両が提供される。
【0050】
一実施例では、制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を自動的に選択するように動作可能である。
【0051】
一実施例では、制御構成は、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに第1のモードを選択し、車両の速度が事前に定められた値以上になったときに第2のモードを選択するように動作可能である。一実施例では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。他の構成では、第1のモード及び第2のモードはユーザによって選択可能である。
【0052】
一実施例では、制御構成は、第1の動作モードのときに、制御デバイスと少なくとも1つの前輪との機械的連結部又は油圧連結部に係合し、第2の動作モードのときに機械的連結部又は油圧連結部から係合解除するように動作可能である。一実施例では、車両は2つの前輪を備える。一実施例では、各前輪は、2対の支持アームによって車台に連結される。一実施例では、車両の各側において少なくとも一対の支持アームと車台との間にダンパーが設けられる。
【0053】
一実施例では、両方のダンパー間を延びるブリッジング・リンケージによってダンパー同士が連結される。
【0054】
本発明の第5の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両を傾斜させる方法であって、各後輪が、それぞれの後輪が車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通する方法において、油圧流体を一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動させて油圧シリンダのピストンをそれぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位させ、且つ車台を表面に対して関節運動させるようにポンプ構成を選択的に制御することを含む方法が提供される。
【0055】
本発明の第6の態様によれば、傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを備える制御構成とを備える車両を操舵する方法であって、車両パラメータを求めることと、車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択することとを含み、第1の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が制御デバイスによって直接操舵可能であり、車台が、車両のユーザの動きによって傾斜することができ、第2の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作し、制御構成が、制御デバイスの動作に応答して車台を傾斜させて車両を操舵する方法が提供される。
【0056】
実例では、車両の各後輪は、ハウジングとピストンとを備える油圧シリンダによって車台に連結され、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、第1の動作モードにおいてユーザによって車両を傾斜させることは、一方の側に力を加えることによって油圧流体を一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダに移動させ、それによって、車台を、力が加えられた側において下向きに傾斜させることを含む。
【0057】
別の実例では、第2の動作モードにおいて、傾斜は、油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに送ることによって実施される。更なる例では、少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される。変形例では、第1のモードは、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに選択され、第2のモードは、車両の速度が事前に定められた値以上であるときに選択される。更なる変形例では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。
【0058】
本発明の第7の態様によれば、車台と、2つの表面係合型前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両用のステアリング構成であって、車両の車台と一緒に移動可能な中央部材と、それぞれの前輪に連結される一対のホイール・ハブと、各対の上部支持アームが中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに回動可能に連結された2対の上部支持アームと、各対の下部支持アームが中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに回動可能に連結された2対の下部支持アームと、各々が中央部材とそれぞれの上部支持アーム又は下部支持アームの少なくとも一方との間を延びる2つのダンパー組立体と、各ダンパー組立体間に連結された横材と、前輪のステアリングを制御する制御デバイスとを備え、制御デバイスによる前輪のステアリングを可能にし、地面に対する前輪の傾斜を可能にするように動作可能であるステアリング構成が提供される。
【0059】
一実施例では、横材は、回動可能な連結部によって接合された1つのセグメントを備える1つ又は複数のアーチ状部材を備える。一実施例では、横材は、1つ又は複数のリンケージ・ワイヤ・プリー構成を備える。一実施例では、各対の支持アームは、それぞれのホイール・ハブに隣接する端部の所で互いに連結される。一実施例では、各対の支持アームは、中央部材に隣接する端部の所で支持部材によって互いに連結され、三角形を形成する。一実施例では、制御デバイスは、一対又は複数対のリンケージ・アームによってホイール・ハブに連結される。
【0060】
一実施例では、制御デバイスは、ギア・リンケージによってリンケージ・アームに連結されたステアリング・コラムに連結される。一実施例では、ギア・リンケージは、一対の傘歯車を備える。一実施例では、制御デバイスは、前輪が自由にキャスター動作できるように選択的に係合解除可能である。一実施例では、各ダンパー組立体は、車両が直立位置にあるときに地面に対して鋭角に配置されるか或いは平行に配置される。
【0061】
本発明の第8の態様によれば、第7の態様によるステアリング構成を備える四輪車両が提供される。
【0062】
次に、本発明の各実施例について添付の図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】三輪車両の実例の側面図である。
【図2】図1の三輪車両の平面図である。
【図3】図1の三輪車両の正面図である。
【図4】図1の車両の後輪、ドライブ・トレイン、及びサスペンションを示す詳細斜視図である。
【図5】伸長状態及び引込状態における後部サスペンションを示す図1の車両の後部の一部の側面図である。
【図6】図4の例の油圧シリンダの概略断面図である。
【図7】曲がるときに傾斜している図1の車両の背面図である。
【図8】図6の油圧シリンダを制御する制御構成の概略図である。
【図9】後部サスペンション・ユニットの別の実例の動作を示す概略断面図である。
【図10】後輪サスペンションの別の実例の概略側面図である。
【図11】図1の車両と一緒に使用するのに適した前輪組立体の概略側面図である。
【図12】図11の組立体の一部の概略図である。
【図13】図1の車両に使用するのに適した代替前輪組立体の概略側面図である。
【図14】図1の車両に使用するのに適した代替前輪組立体の概略側面図である。
【図15】図12の前輪組立体を組み込んだ車両を示す概略側面図である。
【図16】2つの前輪を有する車両用の代替前輪組立体の等角図である。
【図17】2つの前輪を有する車両用の更なる代替前輪組立体の等角図である。
【図18】2つの前輪を有する車両用の更なる代替前輪組立体の等角図である。
【図19】図17及び図18に示されている構成と同様な構成の簡略化された正面図である。
【図20】更なる代替前輪組立体の簡略化された正面図である。
【図21】更なる代替前輪組立体の簡略化された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1〜図3は、都市環境における輸送に適した幅の狭い三輪車両100の実例を示している。車両100は、車台102と、ボディ104と、表面係合型前輪106と、一対の表面係合後輪108とを備える。車両100は、縦に並んだ最大2人の乗員を輸送するのに適している。
【0065】
車両100は、縦に並んだ運転者シートと乗員シートとを有してよく、運転者と乗員は車両100の長手方向軸X−Xの上方に並んで座る。車両100のボディ104は全体的に密閉されてよい。言い換えれば、ボディ104は、実質的に密閉された運転者(及び任意に乗員)用の内部空間104aを形成し、それによって、車両の乗員を外部環境から実質的に保護することができる。車両100への出入りを可能にするために、ボディ104は、例えば、2枚又は4枚の従来の側開自動車型ドアを備えてよい(図1〜図3には2枚のドアが示されている)。任意に、車両100は、垂直開放式テール・ゲートを備えてもよい。或いは、車両100は、単一のドア若しくはハッチ又は一対のドア若しくはハッチを含む1人乗り自動車であってもよい。
【0066】
車両100は通常、全幅が750mm〜900mmであり、全長が2000mm〜2400mmであり、高さが1400mm〜1600mmであってよい。タイヤは通常、外径が約350mm〜450mmであり、幅が100mm〜150mmである。しかし、車両の全長は最大で2600mmであってよく、タイヤの直径は最大で550mmであってよい。
【0067】
車台102は、剛性が高く、例えば管状空間フレーム又はモノコック構造を有してよい。当業者には、フレームに施すことができ、なお且つ本発明の範囲内である変形例が容易に認識されよう。車台102は、任意の適切な材料から形成されてよい。しかし、より軽量の材料、例えばアルミニウムやカーボンファイバが好ましい。
【0068】
車台102は、車両100を操舵するのを可能にするステアリング構成110を備える。ステアリング構成110は前部スイング・アーム110aを備える。ステアリング構成110及び潜在的な代替構成について以下に説明する。
【0069】
前輪106は、車台102の前端の所に回転可能に取り付けられている。前輪112によって保持されているフロントタイヤ112は、丸い外形を有することが好ましい。なぜなら、以下に詳しく論じるように、前輪106は、車両100が旋回するときに車台102と一緒に傾斜するからである。しかし、これが当てはまらない場合もあり、他のタイヤ・車輪構成を利用してもよい。
【0070】
ステアリング構成110は、前輪106を回動させて車両を操舵するときに運転者が操作することのできるオートバイのハンドル又は自動車のハンドルの形をとってよい制御デバイス110bを備える。前輪106用の代替ステアリング機構及びサスペンション機構を使用してよいことが理解されよう。これについて以下に説明する。
【0071】
2つの後輪支持組立体114が図4及び図5に示されている。後輪支持組立体114は、車台102の後部の各側に配置されている。各後輪支持組立体114は、車台102の後部の側面に取り付けられたスイング・アーム116を備える。各スイング・アーム116は、一方の端部の所で車台102のピボット軸受118に固定されており、従って、各アーム116は車台102から片持ち梁状に延び、又、各アーム116は、車台102に沿って延び、車両100の長手方向軸X−Xに平行な平面内に位置している。従って、各アーム116は、自由端の所で一方の後輪108に回転可能に取り付けられたトレーリング・スイング・アームである。タイヤ120は、各後輪108によって保持され、好ましくは丸い外形を有する。というのは、以下に詳しく論じるように、各後輪108が、車両が曲がるときに車台102と一緒に傾斜するからである。各トレーリング・スイング・アーム116は、その軸受118の周りを回動することができ、それによって、各後輪108は、図4にブロック矢印によって示されているようにそれぞれの軸受118の周りを孤状に上下動することができる。
【0072】
推進ユニット122(図2に点線で概略的に示されている)が、後輪108同士の間に配置されており、そのため、車両100は低い重心を有することができる。このことは、コーナリング時に車両100を安定させることによって車両100の助けになる。なぜなら、車両100の最も重い構成部材の1つの一部又は全体が後輪108の軸R1、R2同士の間に(或いは少なくとも軸R1、R2の近くに)配置されているからである。
【0073】
又、推進ユニット122を後輪支持組立体114同士の間及び後輪108同士の間に配置することによって、車両の各構成部材を空間効率的に実装することができる。推進ユニット122は、例えば車両100の乗員シートの下方に配置されてよい。推進ユニット122をこのように配置するのが可能であるのは、周知の構成とは異なり、後述のように、傾斜機構の構造部材又は構成部材を後輪108同士の間に配置する必要がないからである。
【0074】
推進ユニット122は任意の適切な形態をとってよく、例えば、ガソリン・エンジン又はディーゼル・エンジンのような内燃機関として、電気モータ又はいわゆる「ハイブリッド・エンジン」(内燃機関と電気モータの組み合わせ)が車台102に取り付けられる。
【0075】
推進ユニット122は後輪108を駆動する。推進ユニット122が内燃機関である場合、推進ユニット122は、推進ユニット122(又はエンジン)と一体であってよい歯車箱(不図示)を含んでも、或いは推進ユニット122から分離して配置されてもよい。しかし、車両100の重心を低くするように歯車箱が車両102の車台102内の低い位置に配置されることが望ましい。小型のドライブ・トレイン構成を形成するように歯車箱が後輪108同士の間に配置されることも望ましい。
【0076】
推進ユニット122は、電源124も備える(図2には点線で概略的に示されている)。利用される電源124の種類は、車両100において使用される推進ユニット122の種類によって決まる。内燃機関の場合、電源124は、燃料タンクの形をとり、望ましくは車両100の後部に配置され、従って、燃料タンクの少なくとも一部が後輪支持組立体114同士の間又は後輪108同士の間に配置される。
【0077】
電気モータ又はハイブリッドドライブを推進ユニット122として使用する場合、電源124はバッテリ、例えばリチウムイオンバッテリのアレイを備えてよい。バッテリは、任意の適切な方法、例えば、コンセントのような外部電源又は燃料電池若しくは「レンジ・エクステンダ」型小型内燃機関のような車載電源によって充電されてよい。或いは、必要に応じて、バッテリなしで燃料電池を利用してもよい。
【0078】
このような車載電源を使用する場合、電源を車台102の後部の方に配置し、望ましくは電源124の少なくとも一部が後輪支持組立体114同士の間又は後輪108同士の間に配置されるように配置することが好ましい。
【0079】
推進ユニット122から後輪108への駆動は、任意の適切な手段によって行われてよい。例えば、図4に示されているように、推進ユニット122からの出力は、前部駆動スプロケット128が各端部に固定された水平横駆動軸126に接続される。前部駆動スプロケット128は、各後輪108に取り付けられたそれぞれの後部スプロケット130をそれぞれの駆動チェーン又は駆動ベルト132を介して駆動する。水平駆動軸126の回転軸がスイング・アーム116の軸受118の軸と同一直線上に位置することに留意されたい。
【0080】
図4に示されているチェーン駆動装置又はベルト駆動装置の代替構成として、スイング・アーム116に平行に延び、水平駆動軸126によって駆動されるそれぞれの駆動軸によって各後輪108を駆動してもよい。
【0081】
各後輪支持組立体114は、それぞれの各スイング・アーム116の垂直方向の孤状運動を制御するように設けられたショック・アブソーバ134を備える。図示の例では、各ショック・アブソーバ134は、凹凸に当たった際の後輪108の衝撃を吸収するコイル状圧縮ばね136と、コイルばね136の圧縮及び拡張を周知のように減衰させる油圧ダンパー138とを有する。この代わりにガス充填ダンパーを使用してもよい。更なる代替構成では、圧電段ダンパーを使用してもよい。このダンパーは圧電素子を利用して、静止時にダンパーをロックする。圧電材料は、車両100の移動時に乗り心地を変化させるように絶えず調整されてよい。
【0082】
各ショック・アブソーバ134の油圧ダンパー138の端部は油圧ダンパー138のそれぞれのスイング・アーム116に連結されている。各ショック・アブソーバ134の他方の端部140は、各後輪支持組立体114の一部も形成するそれぞれの油圧シリンダ144のハウジング142にしっかりと連結されている。図4に示されているように、油圧シリンダ144の他方の端部は車両の車台102に連結されている。
【0083】
図6に示されている簡略図に示されているように、各油圧シリンダ144は、ハウジング142に対して軸Y−Yに沿って移動可能な中央ピストン・ロッド146を有する。ピストン・ロッド146の下端は、Oリング150によってハウジング142の内壁に密封係合するピストン・ヘッド148を有する。ピストン・ヘッド148及びOリング150は、油圧シリンダ144を第1の上部チャンバ152と第2の下部チャンバ154に分割する。上部チャンバ152と下部チャンバ154の体積は、ピストン・ロッド146が上下動するにつれて変化する。上部チャンバ152と下部チャンバ154の体積は反比例し、即ち、ピストン・ヘッド148が(図6に示されている構成に対して)上方に移動したとき、上部チャンバ152は下部チャンバ154が増大する量に等しい量だけ減少する。油圧シリンダ144の上部チャンバ152及び下部チャンバ154の全体に油圧流体156が充填されている。油圧流体156は、Filisko等の磁気(MR)流体であってよい。
【0084】
ピストン・ヘッド148と向かい合う各ピストン・ロッド146の端部158は車両の車台102に連結されている。従って、各スイング・アーム116は、直列に連結された油圧シリンダ144及びショック・アブソーバ134と、スイング・アーム116が周囲を回動する軸受118とによって、車台102に連結されている。
【0085】
各油圧シリンダ144は、ハウジング142を貫通して上部チャンバ152に至る上部ポート160と、ハウジング142を貫通して下部チャンバ154に至る下部ポート162とを有する。図1に示され、図5に概略的に示されているように、一方の油圧シリンダ144の上部ポート160は、可撓性のホース164によって他方の油圧シリンダ144の上部ポート160に連結されている。同様に、各油圧シリンダ144の下部ポート162は、可撓性のホース166によって他方の油圧シリンダ144の下部ポート162に連結されている。従って、可撓性のホース164、166及び油圧シリンダ144によって閉ループ油圧回路が形成される。
【0086】
可撓性のホース164、166を使用した閉油圧ループの構成では、好都合な実装構成を車両100において使用することができる。例えば、車両100内の後輪108と油圧シリンダ144との間の空間を車両の推進ユニット122に利用することができる(図2参照)。これは、車両100のこのような部品の周りに可撓性のホース164、166を通すことができるからである。
【0087】
従って、動作時には、ピストン・ロッド146が一方の油圧シリンダ144内で下降すると、そのシリンダ27の下部チャンバ154の流体156が下部ホース166を介して他方の油圧シリンダ144の下部チャンバ154に送られる。これによって、他方の油圧シリンダ144のピストン・ロッド146が上昇させられ、それによって、油圧流体156が他方の油圧シリンダ144の上部チャンバ152から上部可撓性ホース164を通して油圧シリンダ144の上部チャンバ152に送られる。言い換えれば、一方の油圧シリンダ144のピストン・ヘッド148が第1の方向(上方又は下方のいずれか)に移動すると、他方の油圧シリンダ144のピストン・ヘッド148は逆方向に移動する。このことは、後述のように車両100が傾斜するのを助ける。
【0088】
各油圧シリンダ144は、それぞれのピストン・ロッド148の端部158とハウジング142との間に取り付けられたコイルばね168も有する。コイルばね168は、各油圧シリンダ144に復元力を加えるように構成されている。それによって、他の力が存在しない場合、コイルばね168は、油圧シリンダ144内のピボット・ヘッド148を同じ変位位置に戻し、車両100を自動的に直立位置に戻す。
【0089】
車両100が曲がるときに車両100を傾斜させる(即ち、車両100の長手方向軸X−Xの周りで回転させる)には、油圧流体156を第1の油圧シリンダ144の上部チャンバ152又は下部チャンバ154からいずれかの可撓性ホース164、164を介して第2の油圧チャンバ144の対応する上部チャンバ152又は下部チャンバ154に移動させる。油圧系が閉ループであり、油圧流体156が実質的に圧縮不能であるので、流体は他方の可撓性ホース164、166を通って第1の油圧シリンダ144に戻る。従って、油圧流体156のこの移動によって、ピストン・ヘッド148が互いに逆方向に異なるように移動し、車両が地面に対して傾斜する。
【0090】
油圧流体156の移動は様々な方法で実現されてよい。好ましい方法は、車両速度、傾斜角度、加速度、コーナリングフォース、又は他の適切なパラメータ等の乗物動特性条件によって決まる。いくつかの状況では、ユーザの直接的な入力によって車両を傾斜させることなく、車両100の傾斜に自動的に対処しなければならない(例えば、人的エラーによって事故が起こる恐れがある高速時)。他の状況では、(例えば、低速時又は後退/駐車時に)車両を操作又は操舵する方法としてユーザ入力(例えば、傾くことによってユーザの体重を移動させること)が好ましい方法である。
【0091】
従って、本発明の実施例は、車両を傾斜させる様々な動作モードを実現するように構成されている。
【0092】
第1の動作モードでは、運転者は、自分の体重を操作することによって車両を手動によって傾斜させることができる。車両を傾斜させる場合、車両100の運転者は車両が曲がるときに体を傾け、自分の体重を車両100の長手方向軸X−Xから横方向に離れるように所望の方向に移動させる。例えば、車両100が左に曲がる場合、運転者は左に傾く。このように体重が車両100の左側に移動すると、左側の油圧シリンダ144のピストン・ロッド146が下降し、それによって、油圧流体156がその油圧シリンダ144の下部チャンバ154から下部ホース166を通して右側油圧シリンダ144の下部チャンバ154に送り込まれる。
【0093】
これによって、右側シリンダ144のピストン・ロッド146が上昇し、その結果、油圧流体156が右側シリンダ144の上部チャンバ152から左側シリンダ144の上部チャンバ152まで移動する。左側油圧シリンダ144の全長が圧縮されるため、左側スイング・アーム116が車台102に対して上昇し、それによって、車台102の左側が下方に傾く。
【0094】
同様に、右側油圧シリンダ144が伸長すると、車両102の右側が上昇し、右側スイング・アーム116がその軸受118の周りを相対的に下向きに回動する。従って、車両100は、運転者が傾く量によって調整可能な適切な量だけ傾斜し、運転者の体重の移動を助けるとともに、車両の重量を2つの後輪108の間でより均等に分配する。又、当業者によって理解されるように、長手方向軸X−Xに平行な適切な力をオートバイのハンドルのような制御デバイスに加えることによって、車両100を傾斜させることもできる。従って、車両100は、アクティブな制御システム(コンピュータ又は他の電子制御装置等)を使用せず、且つ車両を傾斜させるのに運転者がフットペダルを操作する必要があるものもある、いくつかの周知の構成の重く複雑なセミアクティブ・レバー・リンケージなしに、完全に受動的に制御可能に傾斜させることができる。
【0095】
油圧シリンダ144のハウジング142内でのピストン・ロッド142の移動及びスイング・アーム116の移動が更に図6に示されている。油圧シリンダ144の完全に伸長した構成が図6の左側油圧シリンダ144に示されており、油圧シリンダ144の完全に圧縮された構成が図6の右側油圧シリンダ144によって示されている。
【0096】
図7は、右に曲がるために右側に傾斜したときの、後部から見た車両100を示している。右側油圧シリンダ144が完全に圧縮され、それによって、車両100の右側が下方に地面の方へ傾いている。左側油圧シリンダ144が完全に伸長され、車両100の左側を上方に押している。
【0097】
図7から、車台102内の低い位置にある推進ユニット122及び電源124の構成が、車両100の重心を後輪108同士の間に維持するのを助けることも分かる。これは、車両100の車台102の傾斜角度にかかわらず維持され、車両100の安定性を助け、車両100が曲がるときに転倒するのを防止する。車両100の安定性は更に、横方向と長手方向の両方において車輪組立体114同士の間に位置し、安定性を補助する、推進ユニット122及び電源124の各々の少なくとも一部の位置によって補助される。重心は又、車両100内の低い位置、好ましくは地面から450mm以下の位置に存在すべきである。
【0098】
図7から、車両100の全ての車輪106、108が車台102と一緒に傾斜することも分かる。このため、車両のタイヤは湾曲した外形を有し、小形の傾斜構成が維持される。
【0099】
車両100の車台102は関節運動するか或いは傾斜するように構成されている。傾斜角度αは、(図7に軸V−Vによって示されている)直立垂直位置に対して測定され、車両100は、垂直直立位置V−Vから最大30度の角度まで(30度を含む)傾斜することができる。これによって、車両100は、安定性及び後輪108と表面との係合を維持しつつ、敏速に曲がることができる。重心が低いことによってもたらされる車両100の固有の安定性によって、角度αは周知の構成よりもずっと大きい。しかし、必要に応じて他の最大傾斜角度を使用してもよい。例えば、車両100ではより大きい傾斜角度が可能であるにもかかわらず、安全上の理由で、車両100を事前に定めたより小さい角度に制限してよい。
【0100】
本発明の油圧構成は第2の動作モードも有する。第2の動作モードでは、車両100の傾斜は、運転者の体重の移動によってではなく自動的に実施される。図8は、これを実現する制御構成200の概略図を示している。
【0101】
制御構成200は、例えば、マイクロプロセッサを備え、油圧シリンダ144及びショック・アブソーバ134を制御して車両の傾斜を制御するように動作可能である。制御構成200は、ポンプ構成202、バイパス弁204、弁206、及び各ショック・アブソーバ134に関連するダンパー・コントローラ208を制御する。乗物動特性情報を制御構成200に供給するために、第1の加速度計210及び第2の加速度計212が設けられる。加速度計210、212は、車両100上の任意の適切な場所に配置されてよく、任意の適切な手段、例えば、ワイヤ、又は例えば短距離無線網を使用した無線通信によって制御構成と通信することができる。
【0102】
加速度計210は、ステアリング構成110上に配置され、(自動車のハンドル、又は図2に示されているオートバイのハンドルのような)制御デバイスの現在位置を制御構成200に伝えることが好ましい。この構成では、制御構成200と加速度計210との無線通信を用いると、これらの構成要素間のワイヤが不要になり、重量及び機械的摩耗が低減されるので有利である。
【0103】
制御構成200は、ステアリング構成ロックアウト部214も制御する。又、制御構成200は(例えば速度計によって)車両速度等の情報にアクセスすることもできる。
【0104】
第2の動作モードでは、閉油圧ループ内及び各油圧シリンダ144間の油圧流体156の移動がポンプ構成202によって制御される。ポンプ構成202は、可撓性のホース166と連通するように配置されている。しかし、他の構成を使用してもよい。任意の適切な種類のポンプを使用してよい。しかし、双方向ポンプ、例えばヘリカルスクリューポンプが好ましい。或いは、ポンプ構成202は複数のポンプを備えてよい。ポンプ構成202は制御構成200によって制御される。
【0105】
ポンプ構成202と平行にバイパス弁204が配置されている。バイパス弁204は、少なくとも双安定性を有し、即ち、開閉可能な任意の適切な形態の弁であってよい。可変開放弁を使用してもよい。適切な弁の実例は電磁弁であってよい。バイパス弁204は、制御構成200によって制御される。バイパス弁204を開いて車両が第1の動作モードで動作するのを可能にすることができ、即ち、運転者の体を長手方向軸X−Xから横方向に離れるように移動させることによって車両を傾斜させることができる。
【0106】
第1の動作モードでは、ポンプ構成202が迂回され、油圧流体156はバイパス弁204を通って流れることができる。制御構成200は、車両100の速度が所定の値よりも遅く、例えば25km/hよりも遅く、好ましくは15km/hよりも遅いことが判定されたとき又は車両が後退しているときに自動的に第1の動作モードを選択する。この動作モードでは、ステアリング構成ロックアウト部214が係合されず、従って、運転者は、制御デバイス106を使用して車両100を操舵することができる。又、これらの速度では、運転者は、車両100を傾斜させることによって安全に操舵し、例えば他の車両の間を走り抜けるか或いはうまく後退することができる。
【0107】
或いは、第1の動作モードは運転者によって選択可能であってよく、第2の動作モードは、第1のモードが運転者により、例えば制御デバイス106上のボタンによって明示的に選択されない限りデフォルト動作モードである。
【0108】
しかし、第2の動作モードでは、制御構成200はバイパス弁204を閉じ、従って、油圧流体156の動きはポンプ構成202の動作によって支配される。これは、約15km/hを超える高速で行われる。第2の動作モードでは、ステアリング構成ロックアウト214も作動され、従って、ステアリング構成110が車両100の前輪を直接操舵することはなくなる。その代わり、車両の前輪は自由にキャスター動作し、運転者が制御デバイス106を回転させると、加速度計210が制御デバイス106の動きを検出し、制御信号を制御構成200に伝達する。制御構成200は、加速度計210からの信号に応答して、ポンプ構成202を動作させ、運転者が動こうとする方向(運転者が制御デバイス106を動かす方向によって示される)に車両100を傾斜させるのに適切な方向に油圧流体156を送る。
【0109】
制御構成は弁206も制御する。弁206は、他の可撓性のホース164の流路に沿って配置され(ただし、他の構成を使用してもよい)、ロックとして機能して閉ループ油圧流体回路をするように構成されている。このため、車両100は静止時に安定することができる。弁206が開くと、油圧流体156が油圧シリンダ144同士の間を流れることができ、必要に応じて車両100が傾斜することが可能になる。弁206を閉じると、油圧シリンダ144同士の間を油圧流体156が流れることはできなくなり、即ち、車両100の傾斜角度が固定される。
【0110】
このことは、車両100を安定した直立位置において駐車できることを意味する。弁206を開く前に傾斜を考慮して傾斜量を適切に設定することによって、車両100をキャンバー付きの道路上に直立させて駐車することもできる。車両が比較的速い速度で移動するときに弁206を動作させて、必要に応じて車両が急速に傾くのを防止することができる。制御構成200は、車両駐車ブレーキ(不図示)をかけられたときに弁206を閉じるように構成されてもよい。従来、制御デバイス106上又は制御デバイス106の近くに取り付けられる可能性があるスイッチ(不図示)を必要に応じて動作させて弁206を開閉することができる。
【0111】
制御構成200は、ダンパー・コントローラ208によるショック・アブソーバ134の減衰を制御するようにも動作可能である。ダンパー・コントローラ208は、ショック・アブソーバ134の減衰特性を修正することができる。減衰の割合及び/又はレベルは、車両100が駆動される表面に応じて調整可能であり、或いはショック・アブソーバ134は、車両100が静止し、例えば、運転者及び/又は乗員が車両100に出入りするときに車両が安定するように「ロック」し、極めて高い剛性を有することができる。ダンパー・コントローラ208は、様々な適切な技術、例えば、圧電ダンパー又はFilisko等の磁気(MR)流体を使用して、調整可能な減衰を実現することができる。
【0112】
上記の制御構成を変形することが可能である。例えば、代替加速度計構成を使用してもよい。考えられる構成では、いくつかの加速度計を使用して、a)第1のモードと第2のモードの両方において、車両が停止したことを測定によって判定すること、b)第1のモードと第2のモードの両方において、(順方向と逆方向の両方における)車両加速度を測定すること、b)ダンパーを自動的に調整できるように後輪上の上下動を検知すること、及び/又はc)車台102が最大の30度の傾斜に近いか或いは達したときにそれを視覚的又は音声的に示すことが可能である。
【0113】
油圧シリンダ及びショック・アブソーバの代替構成230が図9に示されている。この実例では、ショック・アブソーバ234は、油圧シリンダ244と一体であり、油圧シリンダ244のハウジング242の内部に取り付けられ、更に、油圧シリンダ244のピストン・ロッド246を構成する。そのため、ショック・アブソーバ234は、ハウジング242内のその端部の所にピストン・ヘッド248を保持している。ピストン・ヘッド248は、Oリング250によってハウジング242の内壁に密封係合している。この実例では、油圧シリンダ244のハウジング242が車台102に連結され、ショック・アブソーバ234によって形成されるピストン・ロッド246がスイング・アーム116に連結されている。従って、例えば左に曲がるとき、運転者が左に傾くと、油圧流体256が左側油圧シリンダ244の上部チャンバ252から右側油圧シリンダ244の上部チャンバ252に送られ、右側油圧シリンダ244の下部チャンバ254から左側油圧シリンダ244の下部チャンバ254に送られる。他の点では、図9の一体的な油圧シリンダ244とショック・アブソーバ234の動作は、図6に示し上記に説明した油圧シリンダ144の動作と同様である。
【0114】
油圧流体用の膨張タンク(不図示)を設けることができ、必要に応じて膨張タンクに手を届かせて油圧流体256を補給することができる。
【0115】
後部サスペンションの代替構成260が図10に示されている。この実例では、後輪108用の各スイング・アーム116は、2つの部分、即ち一次スイング・アーム280及び二次スイング・アーム281を含む。一次スイング・アーム280は、一方の端部の所で車台102内のピボット軸受282に固定されている。一次スイング・アーム280は、その長さに沿った一部が上向きに約25度の角度だけ捩じられている。二次スイング・アーム281の第1の端部は、軸受283によって一次スイング・アーム280の捩じれ部の所で一次スイング・アーム280に回動可能に連結されている。二次スイング・アーム281は、その他方の端部の所に後輪284を保持している。ショック・アブソーバ285は、二次スイング・アーム281と一次スイング・アーム280の上向きに捩じれた部分(即ち、最後部)との間に連結されている。衝突の衝撃吸収は、二次スイング・アーム281が一次スイング・アーム280に対して移動し、その結果ショック・アブソーバ285の圧縮が減衰することによって実現される。油圧シリンダ286は車台102と一次スイング・アーム280との間に連結されている。車両100の傾斜は、上述のように実現される。運転者は、車両の下降する側に体重を移動させ、その結果、油圧流体が油圧シリンダ286同士の間で送られ、一次スイング・アーム280が車台102に対して移動する。或いは、図8に示されているポンプ構成202のようなポンプを使用してもよい。
【0116】
ショック・アブソーバ134、285は、様々な電圧を印加することによって粘度を調整することのできる「Filisko」又は同様の磁気流体を使用して減衰されてよい。例えば車両100が静止しているときに、Filisko減衰流体に電荷を流すことによってこの場合のショック・アブソーバ134、285を所定の位置にロックし、更に安定性を向上させることができる。油圧シリンダ144、286内の油圧流体は、様々な電圧を印加することによって粘度を調整することのできる「Filisko」又は同様の流体であってよい。
【0117】
図11及び図12は、図8の制御構成200と一緒に使用するのに適した車両100の前輪の考えられる構成を示している。図11は、ステアリング・コラム302と、キングピン304と、ステアリング・ヨーク306とを備えるステアリング構成300を示している。前部スイング・アーム308がステアリング・ヨーク306に連結されており、前記スイング・アームは、その端部の所に回転可能に固定された前輪310に連結されている。前部スイング・アーム308とステアリング・ヨーク306との間にショック・アブソーバ312が連結され、即ち、実際上、ショック・アブソーバ(又はダンパー)312は前部スイング・アーム308と車台102との間に連結されている。ショック・アブソーバ312は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図9を見ると分かるように、キングピンの中心線Z−Zは前輪310の中心の前方を通過している。このため、前輪310は自由にキャスター動作することができる。
【0118】
図12を参照すると、車両100のステアリングを分離してキャスター動作(即ち、第1の動作モード)を可能にする機構が示されている。ステアリング・コラム302の上端の所に、オートバイのハンドルの形をした制御デバイス314が配置されている。ハンドルとステアリング・コラム302は、ばね付きボタン318によって制御されるロック・ピン316によって相互に連結されている。ボタン318は任意に、ステアリング・コラム302とハンドルの係合/係合解除を可能にする。ロック・ピン316は、第1の動作モード(前輪310が制御デバイス314によって直接制御可能である)と第2の動作モード(前輪310及び前部スイング・アーム308が自由にキャスター動作し、且つ車台102を傾斜させることによって操舵が実現される)との切替えを可能にするように、制御構成200によって制御されるソレノイドによって動作させることもできる。言い換えれば、ロック・ピン316は、操舵可能で回動可能な前部スイング・アーム308と制御デバイス314との間の機械的リンクの係合/係合解除を選択的に行うことができる。
【0119】
図13は、図8の制御構成と一緒に使用するのに適した車両100の前輪の代替構成を示している。図13は、ステアリング・コラム402と、キングピン404と、ステアリング・ヨーク406とを備えるステアリング構成400を示している。前部スイング・アーム408がステアリング・ヨーク406に連結されており、前記スイング・アームは、その端部の所に回転可能に固定された前輪410に連結されている。前部スイング・アーム408とステアリング・ヨーク406との間にショック・アブソーバ412が連結されている。ショック・アブソーバ412は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図11を見ると分かるように、キングピンの中心線Z1は前輪410の中心の前方を通過している。このため、前輪410は自由にキャスター動作することができる。
【0120】
この実施例では、車両の操舵が、ステアリング・コラム402の遠位端の所に配置され、ヨーク406上に配置された補傘歯車416に係合する傘歯車411によって行われる。必要に応じて、前述の実施例に関して説明したように前輪410とステアリング・コラム402との機械的リンクを係合又は係合解除することができる。図13の実施例では、ステアリング・リンケージ(傘歯車414、416を備える)は、車輪410の中心線の真上に配置されている。しかし、必ずしもこうでなくてもよい。ステアリング・リンケージは、必要に応じて車輪410の中心線の前方又は後方に配置されてよい。又、図13には傘歯車414、416が示されているが、ウォーム・ギア又はラック・アンド・ピニオンのような代替機構を使用してもよい。
【0121】
又、ステアリング・コラム402は、軸Z2に沿って伸縮動作可能であり、ステアリング・コラムを個々の運転者に適するように調整してもよい。
【0122】
図14は、図8の制御構成200に使用するのに適した更なる代替ステアリング構成500を示している。図14は、ステアリング・コラム502と、キングピン504と、ステアリング・ヨーク506とを備えるステアリング構成500を示している。この実施例では、ステアリング・ヨーク506は、車両ボディの前部508に隣接して配置されている。このため、ヨーク506をよりしっかりとより確実に配置することができる。
【0123】
前部スイング・アーム510がステアリング・ヨーク506に連結されており、前記スイング・アーム510は、その端部の所に回転可能に固定された前輪512に連結されている。前部スイング・アーム510とステアリング・ヨーク506との間にショック・アブソーバ514が連結されている。ショック・アブソーバ514は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図14を見ると分かるように、キングピンの中心線Z3は前輪512の中心の前方を通過している。このため、前輪512は自由にキャスター動作することができる。
【0124】
図13の実施例と同様に、ステアリング・コラム502は、一対の傘歯車516、518によってステアリング・ヨーク506と機械的に連絡している。しかし、他の代替機械的連結部、例えば、ラック・アンド・ピニオン・システム又はウォーム・ギア及びフォロアを使用してもよい。
【0125】
この実施例では、ステアリング・ヨーク506が車両ボディの前部510に近接しているため、一対のキャスター・シミー・ダンパー520(図14には一方しか示されていない)を付加することができる。各キャスター・シミー・ダンパー520は、車両ボディの前部510とステアリング・ヨーク506との間に連結され、キャスター・モードで動作するときに前輪512の異常振動を防止するように構成されている。この実施例では、キャスター・シミー・ダンパー520はばねであってもよい。
【0126】
又、キャスター・シミー・ダンパー520は、後輪構成を参照して説明したシリンダ144のような一対の油圧シリンダによって置き換えられてもよい。この構成では、油圧シリンダは、車両を第1の(マニュアル・カウンター・ステア)動作モードで操舵するのに使用されても、或いは傘歯車構成が故障した場合にフェールセーフ・モードとして使用されてもよい。
【0127】
後輪構成と共通して、このような油圧シリンダ構成では、ステアリング構成の各側に油圧シリンダが配置されており、車両の前輪512を中央に戻すために(前述の実施例と同様に)油圧シリンダ上にばねが設けられてよい。
【0128】
図15は、図1〜図3に示されているのと同様な車両100に組み込まれたステアリング構成500を示している。図を明確にするために、図15に示され図1〜図3にも示されている特徴は、同じ参照符号を有する。
【0129】
図15に示されているように、ステアリング・コラム502は、水平軸X−Xに対して10度から15度の間の角度に位置している。しかし、これは特定の運転者に適合するように調整可能であってよい。又、前部スイング・アーム510は、水平軸X−Xに対して10度から15度の間の角度にわたって、ステアリング・ヨーク506に対して回動可能である。これによって、車両100は、隆起部又は丘陵部のような表面の凹凸を越えることができる。後部スイング・アーム116も、水平軸X−Xの各側において20度から35度の間の角度にわたって、スイング・アームの中心軸の周りを回動可能である。
【0130】
又、図15に示されているように、推進ユニット122は少なくとも一部が後輪同士の間に配置されている。この構成では、後方の低い位置に重心を配置することができ、車両が曲がるときの安定性が向上する。
【0131】
上述の構成はそれぞれ、単一の前輪が設けられる三輪車両に関する構成である。しかし、本発明は、四輪車両にも適用可能である。図16〜図21は、四輪車両に使用するのに適した代替ステアリング構成を示している。
【0132】
図16は、2つの前輪602が設けられたステアリング構成600の一実施例を示している。2つの前輪602は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。ステアリング構成600は、図1に示されている軸X−Xに平行に位置する軸R1−R1の周りを回転するように配置された中央ビーム604を備える。中央ビーム604は、車両100の車台102の残りの部分と一緒に回転するように構成されており、従って、車両100は曲がるときに傾斜する。車両の順方向は矢印Dによって示されている。中央ビーム604には4本のA字形アーム606が取り付けられている。各Aアームは、一方の端部の所で互いに接合され別の端部の所で共通の横材に連結された2本のロッドを備える。各Aアームは三角形の部材を形成している。
【0133】
2本のAアーム606が、中央ビーム604の上部の両側に配置され、ヒンジ608によって連結されている。更なる2本のAアームが、中央ビーム604の下部の両側に位置しヒンジによって連結されている。言い換えれば、一対のAアーム606が中央ビーム604の各側から離れる方向に延びている。Aアーム606の各対の遠位端の所に前輪602が配置されている。各前輪602は、Aアーム606の各対にハブ610によって連結されている。従って、中央ビーム604が車台102の残りの部分に対して回転すると、上部Aアーム及び下部Aアーム606が横方向に変位し、各ハブ610(従って、ハブ610に取り付けられた各車輪602)が軸R−Rに平行な軸の周りを回転する。従って、車輪602の傾斜をこのように実施することができる。
【0134】
推進ユニット122の代替構成として、必要に応じて、各ハブ610に電気モータを組み込んで前輪を駆動してもよい。この場合、車両の前部の方に追加的な質量が配置されるが、四輪構成によって安定性が向上するので、このことに関連する問題は軽減される。
【0135】
一対のダンパー・アーム612が設けられている。各ダンパー・アーム612は、中央ビーム604の上面と上部Aアーム606及び下部Aアーム606のそれぞれとの間に連結されている。各ダンパー・アーム612は、連結ロッド部614とダンパー616とを備える。ダンパー616は実質的に水平に配置され、連結ロッド部614は、ダンパー616に概ね垂直であり、ピボットによってダンパー616に連結されている。中央ビーム604が回転すると、連結ロッド部614もダンパー616に対してピボットの周りを回転する。
【0136】
中央ビーム604は、ステアリング・コラム618を収容するようにも構成されている。ステアリング・コラム618は、中央ビーム604を貫通して延びており、軸R1−R1の周りを回転するように構成されている。傘歯車620が、ステアリング・コラム618の遠位端の所に配置されており、中央スピンドル624上に配置された補傘歯車622によって前輪602を操舵するように構成されている。リンケージ・アーム626が中央スピンドル624とホイール・ハブ610との間に連結されており、それによって、第1の動作モードのときにステアリング・コラム618が回転して前輪602を操舵するのが可能になる。任意に、第2の動作モードの必要に応じて、ステアリング・コラム618と車輪602との間の機械的リンクを係合解除して前輪602が自由にキャスター動作するのを可能にすることができる。
【0137】
或いは、傘歯車の代わりに、ウォーム・ギア、ラック・アンド・ピニオン、又は油圧ラムを設けて車両を操舵することができる。更なる代替構成として、各々が中央ビーム604の各側に位置する2本のステアリング・アームを設けてもよい。
【0138】
図17は、2つの前輪702が設けられたステアリング構成700の更なる代替実施例を示している。2つの前輪702は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500及び2つの前輪を備えるステアリング構成600と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。
【0139】
ステアリング構成700は、図1に示されている軸X−Xに平行に位置する軸R2−R2の周りを回転するように構成された中央ビーム704を備える。中央ビーム704は、車両100の車台102の残りの部分と一緒に回転するように構成されている。車両の順方向は矢印Dによって示されている。
【0140】
中央ビーム704には4本のAアーム706が取り付けられている。2本のAアーム706が、中央ビーム704の上部の両側に配置され、ヒンジ708によって連結されている。更なる2本のAアーム706が、中央ビーム704の下部の両側に位置しヒンジによって連結されている。言い換えれば、一対のAアーム706が中央ビーム704の各側から離れる方向に延びている。
【0141】
Aアーム706の各対の遠位端の所に前輪702が配置されている。各前輪702は、Aアーム706の各対にハブ710によって連結されている。従って、中央ビーム704が車台102の残りの部分に対して回転すると、上部Aアーム706及び下部Aアーム706が横方向に変位し、各ハブ710(従って、ハブ710に取り付けられた各車輪702)が軸R2−R2に平行な軸の周りを回転する。従って、車輪702の傾斜をこのように実施することができる。
【0142】
推進ユニット122の代替構成として、必要に応じて、各ハブ610に電気モータを組み込んで前輪を駆動してもよい。この場合、車両の前部の方に追加的な質量が配置されるが、四輪構成によって安定性が向上するので、このことに関連する問題は軽減される。
【0143】
一対のダンパー・アーム712が設けられている。しかし、前述の実施例とは異なり、各ダンパー・アーム712は、中央ビーム704の中央側面とそれぞれの下部Aアーム706のみとの間に連結されている。各ダンパー・アーム712は、連結ロッド部714とダンパー716とを備える。ダンパー716は実質的に水平に配置され、連結ロッド部714は、ダンパー716に概ね垂直であり、ピボットによってダンパー716に連結されている。中央ビーム704が回転すると、連結ロッド部714もダンパー716に対してピボットの周りを回転する。又、この実施例では、各ダンパー・アーム712のピボットが湾曲したリンケージ718によって連結されている。湾曲したリンケージ718は、中央継手によって連結された2つの部分に分割される。湾曲したリンケージ718は、上部Aアーム706の中央を貫通して、中央ビーム704の上方を延びている。この実施例ではリンケージが湾曲しているものとして記載されているが、必ずしもそうである必要はない。空間効率には湾曲した構成が有用であるが、他の構成、例えば直線状のリンケージを使用してもよい。
【0144】
このような構成を設けると、ダンパー712を車両100内のより低い位置に取り付けて、車両100全体としての重心を低くすることができる。又、この構成は車両のばね下質量を低減させる。重心が低くばね下質量が小さいことは、完全密閉型傾斜装置の操作性、横風安定性、及び制動時安定性を確保する上で重要である。
【0145】
ステアリング・コラム720は、中央ビーム704の上方を延びており、中央ビーム704に平行であってよい。ステアリング・コラム720は、軸R2−R2に平行であり、且つ軸R2−R2から間隔を置いて配置された軸R3−R3の周りを回転するように構成されている。車両の操舵は、傘歯車又は同様の構成によって行われる。この構成については、前述の実施例を参照して説明済みであり、これ以上は説明しない。
【0146】
中央スピンドル724とホイール・ハブ710との間にリンケージ・アーム722が連結されており、第1の動作モードのときにステアリング・コラム720を回転させて前輪702を操舵するのが可能になる。しかし、前述の実施例とは異なり、4つのリンケージ・アーム722(即ち、2対)が設けられている。この構成では、高速時に自由にキャスター動作するモードになり、一次傘歯車又はステアリング・リンケージに障害が生じた場合に、フェールセーフ機構が実現される。
【0147】
任意に、第2の動作モードの必要に応じて、ステアリング・コラム720と車輪702と間の機械的リンクを係合解除して前輪602が自由にキャスター動作可能にすることができる。自由なキャスター動作は、ステアリング・リンケージ・アーム722がホイール・ハブ710の中心線の前部又は後部のいずれかに配置された場合に可能になる。
【0148】
図18は、2つの前述の実施例2が配置されたステアリング構成800の更なる代替実施例を示している。2つの前輪802は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500及び2つの前輪を備えるステアリング構成600、700と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。
【0149】
ステアリング構成800は、前述の実施例のステアリング構成700と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0150】
ステアリング構成800は、より小型でより軽量のホイール・ハブ810が設けられるという点がステアリング構成700と異なる。ホイール・ハブ810は、前述の実施例のホイール・ハブよりも直径が小さく、Aアーム706に取り付けられたピボットヒンジ812に連結されている。又、一対のリンケージ・アーム722が設けられている。しかし、フェールセーフ・モードではリンケージ・アーム722を再び重複することができる。又、この直径の小さいホイール・ハブを上述の2前輪構成においてを使用してもよい。
【0151】
このような構成を設けると、車両の重心を更に低くすることができる。又、この構成では、車両のばね下質量が更に低減される。重心が低くばね下質量が小さいことは、完全密閉型傾斜装置の操作性、横風安定性、及び制動時安定性を確保する上で重要である。
【0152】
上述の実施例の動作が、図18の実施例に関して図19に示されている。図19は、凹凸のある地面上で曲がるときの図18の実施例の簡略図を示している。
【0153】
図19に示されているように、車両が曲がるとき、中央ビーム704(従って、車両の車台102及びボディ104)が回転し、Aアーム706が移動してホイール・ハブ810同士を互いに平行に回転させ、車輪702を傾斜させる。又、地面に凹凸があるために、左車輪702(図17に示されている)が右車輪702よりも高くなる。この変位は、復元力を作用させる湾曲したリンケージ718によって妨害され、ショック・アブソーバ及び左車輪702が車両100の残りの部分に対して過度に遠ざかるのが防止され、即ち、車両100が一方の車輪上に倒れ込むのが防止される。図19に示されているように、独立した前輪アーム706によって、前輪は、単一の固定平行四辺形構成が両車輪間を延びる車両に必要なダンパー開度を必要とせずに凹凸のある地面上を走行することができる。
【0154】
ステアリング構成900の更なる実施例が図20に概略的に示されている。ステアリング構成900は、前述の実施例のステアリング構成700、800と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0155】
ステアリング構成900は、代替中央リンキング部材が設けられるという点が前述の2つの実施例と異なる。前述の実施例の湾曲したリンケージ718の代わりに、張力をかけたワイヤ918とプリー920とを備える構成が設けられている。この構成は、必要な復元力を生じさせる構成であるが、前述の2つの実施例の半円形リンケージ718よりも軽量にすることができる。又、一対のプリー/ワイヤを設けてフェールセーフ動作を実現してもよい。
【0156】
ステアリング構成950の更なる実施例が図21に概略的に示されている。ステアリング構成950は、前述の実施例のステアリング構成700、800、900と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0157】
ステアリング構成950は、代替サスペンション・ダンパー構成が設けられるという点が前述の実施例と異なる。ステアリング構成950は、一対の前部油圧シリンダ952を備える。油圧シリンダ952は、前述の実施例における車両100の後輪に連結された油圧シリンダ144と構造が実質的に類似している。従って、各油圧シリンダ952は、各油圧シリンダ852を2つの別個のチャンバに分割する可動ピストン(不図示)を備える。
【0158】
各油圧シリンダ952は、図21に示されているように、一方の端部の所で、回動可能な連結部954によって中央ビーム704に連結され、下方の端部の所でそれぞれの下部Aアーム706に連結されている。2つの油圧シリンダ952は、下方の端部の所で下部連結管958によって互いに流体連結され、上方の端部の所で上部連結管960によって互いに流体連結されている。従って、2つの油圧シリンダ952は、流体が2つの油圧シリンダ952間を往復するときに互いに逆方向に連動して前輪構成950を傾斜させることができる。
【0159】
一構成では、2つの油圧シリンダ952を後部油圧シリンダ144と結合して、前輪と後輪を連結するシリンダの回路を形成してもよい。又、ポンプ構成202を使用して、後部油圧シリンダ144に加えて前部油圧シリンダ952の動作を制御してもよい。
【0160】
又、車両100に復元力を生じさせて車両100のボディを直立させるために油圧シリンダ952上に付勢手段としてばね962(図21には1つのみが示されている)を設けてもよい。このことは、他の力が存在しない場合に、車両100のボディが直立位置に戻ることを意味する。
【0161】
上記に示した実施例は四輪車両を傾斜させることに関して例示されているが、Aアーム及び湾曲したリンケージを含む上述の平行四辺形構成(又はワイヤ及びプリー・リンクを含む平行四辺形構成)は、自動車のような従来の非傾斜四輪車両にも適切に使用することができる。又、上述の構成は、傾斜前二輪車両、一輪車両、又は傾斜/非傾斜トラクター若しくはオフロード・クアッド・バイクにも適切に使用することができる。
【0162】
又、上述の構成を使用して傾斜スノー・モービル又は非傾斜スノー・モービルの2つのフロント・スキーを制御してもよい。上述の例は全てマニュアル・ステア制御機能を有してもよい。
【0163】
上述の構成を図21に示されている前輪構成950と一緒に使用してもよく、図21に示されている油圧シリンダ952に適用してもよい。
【0164】
車両100が3つの車輪のみを有することが好ましいが、車両100は、前述の実施例に示されているように前部の2つの車輪と後部の2つの車輪とを含む4つの車輪を有してもよい。
【0165】
両方の後輪を駆動するのに単一の推進ユニットを使用する代わりに、各後輪をそれ自体の専用モータによって駆動してもよい。この駆動はモータからの直接的な駆動であってよく、その場合、モータは効果的にスイング・アームを形成することができる。或いは、この駆動は、例えばチェーン、ベルト、又は軸を介した間接的な駆動であってもよい。
【0166】
前輪は任意に、それ自体の専用モータから駆動されても、或いは後輪を駆動する1つ又は複数のモータから駆動されてもよい。
【0167】
図を明確にすることのみのために、図面には、例えば後輪用の差動装置を含む様々な構成部材が示されていないことが理解されよう。上述の実例の後輪は、そのそれぞれのスイング・アーム116の一方の側に取り付けられるように示されているが、スイング・アームを分岐させ、スイング・アームの分岐部同士の間に後輪を取り付けてもよい。
【0168】
当業者には上述の実施例の変形例が明らかであろう。ハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の厳密な構成は異なるものであってもよく、その場合も本発明の範囲内である。
【0169】
本発明の実施例を特に実例を参照して説明した。特定の実例を図示し、本明細書において詳しく説明したが、図面及び詳細な説明が本発明を開示された特定の形態に限定するものではないことを理解されたい。上述の実例に本発明の範囲内で変形及び修正を施してもよいことが理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関する。特に、本発明は、傾斜車両に関するがそれに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
周知のように、道路交通量は毎年増加している。この増加の大部分は、乗用車数の増大によるものである。車両製造業者は、小型(「コンパクト」)車を提供することによってこのような問題に部分的に対応している。着実に上昇する燃料価格も小型車の使用を助長している。従来の座席構成、モータ構成、及び車輪構成を有する自動車の最小サイズには限界がある。
【0003】
二輪オートバイは、従来の四輪車の代替手段である。しかし、オートバイは、積載能力に限界があること、雨除けが不十分であること、オートバイを静止させておくときには支持が必要であることを含むある欠点を有する。
【0004】
前部が二輪で後部が一輪であるか、それとも前部が一輪で後部が二輪であるかにかかわらず、三輪車に関する多数の提案がなされている。或いは、非常に幅の狭い四輪車も提案されている。車両は、曲がるときに、曲がる車両を外側に回転させる傾向のある有効力(「遠心力」)を受ける。このことは通常、四輪車では、そのような車両の固有の安定性のために問題にならず、又、オートバイでも、曲がるときに重力と遠心力のバランスを取るようにオートバイが傾けられるので特に問題にならない。
【0005】
しかし、後輪に共通のハブアクスルを有する幅の狭い車両は、より幅の広い従来の車両固有の、曲がるときの安定性を有さない。従って、従来、曲がるときに遠心力に対抗するために傾斜する幅の狭い車両を提供する多数の提案がなされている。
【0006】
このような車両の実例はJamesの米国特許出願公開第2008/0238005号明細書に示されている。この文献は、一実施例において、後輪同士の間を車両の幅に沿って延びる平行四辺形を形成する後部クロスアームを有する三輪車両を開示している。コーナリング時に平行四辺形のクロスアームを一方向又は逆方向に傾斜させて車両を助けることによって、車体を車両の後輪と一緒に傾斜させることができる。
【0007】
傾斜車両の代替構成がShotterの英国特許第2444250号明細書において開示されている。この文献は、後輪に油圧ダンパー構成が連結された高い重心を有する傾斜車両を開示している。各車輪上の油圧ダンパーは、クロスバーによって機械的に連結されている。一動作モードでは、これらのダンパーが互いに独立に動作し、クロスバーが移動することによって傾斜動作が実現される。別の動作モードでは、ダンパー同士が相互に連結され、同じ方向に移動して差動運動を防止するように構成される。英国特許第2444250号明細書は、完全に密閉されたキャビンを有さない狭軌車両に関する特許である。
【0008】
傾斜車両の更なる代替構成がJacksonの国際公開第99/61302号に開示されている。一実施例において、各々が後輪を保持する一対の後部サスペンションストラットを有する三輪車両を図示し説明している。これらのストラットは、サスペンション機能を実現するとともに、車両が傾斜するのを可能にする。
【0009】
三輪車両用の他の周知の傾斜機構は、車両を傾斜させる機構に連結されたレバーを乗員/運転者が故意に作動させることに依存する機構であり、このような機構は、重量が大きいことが多く、且つこのようなレバー操作機構はまったく直感的なものではないので、運転者がレバーの操作方法を覚える必要がある。
【0010】
従って、小型であってよく、好ましくは三輪を有し、運転者が操作するのが容易であり、好ましくは直感的な操作が可能である従来の受動機構、又は直感的な電子制御によって傾斜しながら曲がることのできる、完全に密閉された車両を提供する必要があることが認識されている。
【0011】
また、幅の狭い乗用車は、本質的に、極端に制限された内部空間を備える。周知の構成では、これらの車両の後輪同士の間の空間が、車両が傾斜するのを可能にする機構によって占有される。従って、傾斜する幅の狭い周知の乗用車が車両内の利用可能な空間を効率的に使用できない技術的な問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0238005号明細書
【特許文献2】英国特許第2444250号明細書
【特許文献3】国際公開第99/61302号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備え、各後輪が、それぞれの後輪が車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、油圧シリンダのピストンがそれぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位し、車台が地面に対して関節運動し、車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動がポンプ構成によって選択的に制御される車両が提供される。
【0014】
このような構成を提供することによって、油圧シリンダ同士の間で流体を移動させることによって車台を傾斜又は関節運動させることができる。この構成は、対角材又は支持部材を不要にし、後輪支持組立体の近く又は後輪支持組立体同士の間に配置されてもよい推進ユニットのような車両の内部構成部材を空間効率的に実装するのを可能にする。
【0015】
一構成では、推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に車輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。この構成は、車両の重心を下げ、空間効率的な実装を可能にし、旋回時に車両を安定させるのを助ける。
【0016】
他の実例では、車両は電源を更に備える。変形例では、電源の少なくとも一部が車輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。
【0017】
一構成では、推進ユニットは内燃機関を備え、電源は燃料タンクを備える。他の構成では、推進ユニットは電気モータを備え、電源は少なくとも1つのバッテリ及び/又は燃料電池を備える。
【0018】
実例では、車輪支持組立体及び車台は、車台が車台の垂直直立位置に対して各方向に実質的に30度の角度まで傾斜するのを可能にするように構成される。角度は、必要に応じて地面に対して測定されてもよい。
【0019】
一変形例では、推進ユニット、電源、及び車台は、車両の重心が車台の傾斜角度にかかわらず実質的に後輪同士の間に留まるように構成される。
【0020】
実例では、ポンプ構成は電気的に作動される。他の実例では、ポンプ構成は双方向ポンプである。
【0021】
実例では、車両は、制御構成を更に備え、制御構成は、ユーザが車両を操舵するのを可能にする制御デバイスを備える。実例では、制御構成は、第1の動作モードにおいて、少なくとも一方の前輪がこの制御デバイスを動作させることによって操舵可能になるように構成される。
【0022】
別の実例では、第1の動作モードにおいて、一方の側に力を加え、それによって、車台を力が加えられた側において下方に傾斜させることによって、一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダへの油圧流体の移動を実現することができる。
【0023】
変形例では、車両は、ポンプ構成に平行に配置されたバイパス弁を更に備え、制御構成は、第1の動作モードでは、バイパス弁を開いてポンプ構成を迂回させ、力を加えることによって車台を傾斜させるように構成される。
【0024】
他の実例では、第2の動作モードにおいて、制御構成は、車両が制御デバイスの動作に応じて傾斜可能になるように制御デバイスを制御するように構成される。変形例では、第2の動作モードにおいて、少なくとも一方の前輪は自由にキャスター動作する。他の変形例では、制御構成は、少なくとも1つの車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードの一方を自動的に選択するように動作可能である。
【0025】
実例では、少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される。他の実例では、制御構成は、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに第1のモードを選択し、車両の速度が事前に定められた値以上になったときに第2のモードを選択するように動作可能である。一構成では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。他の構成では、第1のモード及び第2のモードはユーザによって選択可能である。
【0026】
実例では、前輪又は各前輪は、操舵可能なスイング・アーム部材によって車台に連結される。変形例では、スイング・アーム部材又は各スイング・アーム部材は、一方の端部の所で車台に回動可能に連結され、他方の端部の所に増幅器前輪を保持する。他の変形例では、ダンパーがスイング・アーム部材と車台との間に配置される。
【0027】
実例では、スイング・アーム部材又は各スイング・アーム部材は、制御デバイスに選択的に係合可能であり、各前輪を操舵するのを可能にする。更なる構成では、車両は、第1のチャンバ同士の間と第2のチャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げるように選択的に動作可能であり、それによって、車両の傾斜を選択的に抑制する停止手段を備える。更なる例では、停止手段は弁を備える。
【0028】
更なる例では、停止手段は、事前に定められた車両パラメータに応じて電子コントローラによって自動的に制御される。更なる例では、電子コントローラは加速度計を備え、電子コントローラは、加速度計からの情報に基づいて停止手段を制御するように動作可能である。
【0029】
一構成では、停止手段は手動の選択に応じて動作可能である。一変形例では、車両は駐車ブレーキを更に備え、停止手段は駐車ブレーキをかけることに応答して動作可能である。別の変形例では、各後輪支持体はそれぞれの後輪が車台に対して回動するのを可能にするように構成される。更なる変形例では、各後輪支持体は、それぞれの後輪が車台に対して垂直に回動するのを可能にするように構成される。
【0030】
別の変形例では、各後輪用の後輪支持体は、車台の第1の端部に回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アーム部材を備える。実例では、少なくとも1つのハウジングを後輪支持体又は車台に連結することがショック・アブソーバを介して行われる。
【0031】
別の実例では、ショック・アブソーバは、少なくとも1つのハウジングと一体であるか或いは少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結される。変形例では、少なくとも1つのピストンがショック・アブソーバによって実現される。更なる変形例では、各トレーリング・スイング・アーム部材は、車台に回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備える。
【0032】
更なる変形例では、各トレーリング・スイング・アーム用の油圧シリンダは、車台と一次スイング・アームとの間に連結され、一次スイング・アームと二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備える。
【0033】
一構成では、各後輪支持組立体は、車台の関節運動に対抗する復元力を車台とそれぞれの後輪との間に加えるように構成された付勢手段を更に備える。更なる構成では、付勢手段は、それぞれの油圧シリンダと車台又は後輪支持体との間に配置さればねを備える。
【0034】
一構成では、車両は、単一の前輪と2つ以下の後輪とを備える。他の構成では、前輪又は各前輪及び後輪は、使用時に車台と共に傾斜するように構成される。
【0035】
一構成では、車両は、使用時にヨークによって車台に連結される単一の前輪と、ヨークと車台との間に連結された少なくとも1つの減衰手段とを備える。一実施例では、減衰手段は、使用時にヨークを車台に対して移動させるように動作可能な油圧シリンダを備える。
【0036】
一実施例では、車両は、各々がステアリング構成によって車台に連結された2つの前輪を備え、ステアリング構成は、一対の前部油圧シリンダを備え、各前部油圧シリンダが、車台及びステアリング構成のうちの一方に連結されたハウジングと、ステアリング構成及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、前部油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各前部油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各前部油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の前部油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、各前部油圧シリンダのピストンが変位される。
【0037】
一実施例では、前部油圧シリンダは、後部車輪支持体に取り付けられた油圧シリンダと流体連通する。実例では、車両は、車台に連結され、運転者を収容するように構成された車両の内部空間を形成するボディを備える。変形例では、内部空間は実質的に完全に密閉される。更なる変形例では、ボディに開放可能なドアが形成される。
【0038】
実例では、車両は、後輪を駆動する推進ユニットを備える。更なる例では、推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に後輪支持組立体又は後輪同士の間に配置される。一構成では、推進ユニットは内燃機関を備える。変形例では、車両は燃料タンクを更に備える。更なる変形例では、燃料タンクの少なくとも一部は、後輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。代替構成では、推進ユニットは、電気モータを備える。
【0039】
変形例では、車両は電源を更に備える。更なる変形例では、電源は少なくとも1つのバッテリを備える。更なる変形例では、電源は少なくとも1つのバッテリを備える。更なる変形例では、電源は車載燃料電池を更に備える。一構成では、電源の少なくとも一部は、後輪支持組立体同士の間又は後輪同士の間に配置される。
【0040】
変形例では、油圧シリンダは油空圧部材を備える。別の構成では、推進ユニットから後輪への駆動は、チェーン駆動又はベルト駆動又はシャフト駆動である。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、各後輪が、車台に回動可能に連結され且つ後輪が車台に対して垂直方向に回動するのを可能にするそれぞれのトレーリング・スイング・アームによって車台に連結された2つの後輪と、ショック・アブソーバと、各スイング・アームと車台との間に直列に連結されたショック・アブソーバ及び油圧シリンダとを備え、各油圧シリンダが、ピストンとピストンが移動するハウジングとを有し、ピストンが、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をチャンバに流入させ且つ油圧流体をチャンバから流出させるポートを有する上部チャンバ及び下部チャンバに分割し、油圧シリンダの上部チャンバ同士が互いに連通し、油圧シリンダの下部チャンバ同士が互いに連通し、従って、車台の一方の側に下向きの力が加えられたときに、油圧流体が一方の油圧シリンダの上部チャンバから他方の油圧シリンダの上部チャンバに送られ、他方の油圧シリンダの下部チャンバから一方の油圧シリンダの下部チャンバに送られ、それによって、車両が、上記の側において下向きに傾き、他方の側において上向きに傾くことによって回転する車両が提供される。
【0042】
変形例では、少なくとも一方のショック・アブソーバは、このショック・アブソーバが直列に連結された油圧シリンダのハウジングと一体であるか或いはこのハウジングにしっかりと連結される。更なる変形例では、少なくとも一方の油圧シリンダのピストンは、少なくとも一方の油圧シリンダが直列に連結されたショック・アブソーバによって実現される。
【0043】
本発明は、単に油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに移動させることによって傾斜させることができる車両を提供する。この傾斜運動を実現するのに複雑なブレーシングアーム又は構造部材は必要とされない。同様に、いくつかの周知の構成と同様の複雑で重い機械的リンケージは必要ではない。
【0044】
各後輪用の後輪支持体は、前端の所でフレームに回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アームを備えることが好ましい。少なくとも1つのハウジングと後輪支持体又はフレームとの連結は、ショック・アブソーバを介して行うことが好ましい。
【0045】
ショック・アブソーバは、少なくとも1つのハウジングと一体であっても、或いは少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結されてもよい。この代わりに或いはこれに加えて、少なくとも1つのプランジャがショック・アブソーバによって実現されてもよい。
【0046】
各トレーリング・スイング・アームは、フレームに回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備えてよい。各トレーリング・スイング・アームの油圧シリンダは、フレームと一次スイング・アームとの間に連結されてよく、車両は、一次スイング・アームと二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備えてよい。
【0047】
弁が、上部チャンバ同士の間及び下部チャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げ、それによって選択的に車両の回転を抑制することが好ましい。これによって、必要に応じて車両の姿勢を固定することができ、例えば、車両が静止するとき又は高速に直線状に移動するときに車両を直立に固定することができる。好ましい実施例では、車両は、単一の前輪と2つ以下の後輪とを備える。
【0048】
本発明の第3の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪とを備え、各後輪が、それぞれの後輪を車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つ油圧流体をそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が互いに連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバ同士のポート同士が互いに連通し、従って、油圧流体が一方の油圧シリンダの第1のチャンバ又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1のチャンバ又は第2のチャンバまで移動したときに、油圧シリンダのピストン同士がそれぞれのハウジングに対して逆方向に変位し、車台が表面に対して関節運動し、車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動がポンプ構成によって選択的に制御される車両が提供される。
【0049】
本発明の第4の態様によれば、傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを備える制御構成とを備え、制御構成が、車両パラメータを求め、車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するように動作可能であり、第1の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が制御デバイスによって直接操舵できるように構成され、車台が、車両のユーザの動きによって傾斜できるように構成され、第2の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作するように構成され、制御構成が、制御デバイスの動作に応答して車台を傾斜させて車両を操舵するように構成される車両が提供される。
【0050】
一実施例では、制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を自動的に選択するように動作可能である。
【0051】
一実施例では、制御構成は、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに第1のモードを選択し、車両の速度が事前に定められた値以上になったときに第2のモードを選択するように動作可能である。一実施例では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。他の構成では、第1のモード及び第2のモードはユーザによって選択可能である。
【0052】
一実施例では、制御構成は、第1の動作モードのときに、制御デバイスと少なくとも1つの前輪との機械的連結部又は油圧連結部に係合し、第2の動作モードのときに機械的連結部又は油圧連結部から係合解除するように動作可能である。一実施例では、車両は2つの前輪を備える。一実施例では、各前輪は、2対の支持アームによって車台に連結される。一実施例では、車両の各側において少なくとも一対の支持アームと車台との間にダンパーが設けられる。
【0053】
一実施例では、両方のダンパー間を延びるブリッジング・リンケージによってダンパー同士が連結される。
【0054】
本発明の第5の態様によれば、車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両を傾斜させる方法であって、各後輪が、それぞれの後輪が車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって車台に連結され、油圧シリンダが、車台及び後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、後輪支持体及び車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通する方法において、油圧流体を一方の油圧シリンダの第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダのそれぞれの第1又は第2のチャンバに移動させて油圧シリンダのピストンをそれぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位させ、且つ車台を表面に対して関節運動させるようにポンプ構成を選択的に制御することを含む方法が提供される。
【0055】
本発明の第6の態様によれば、傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを備える制御構成とを備える車両を操舵する方法であって、車両パラメータを求めることと、車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択することとを含み、第1の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が制御デバイスによって直接操舵可能であり、車台が、車両のユーザの動きによって傾斜することができ、第2の動作モードでは、少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作し、制御構成が、制御デバイスの動作に応答して車台を傾斜させて車両を操舵する方法が提供される。
【0056】
実例では、車両の各後輪は、ハウジングとピストンとを備える油圧シリンダによって車台に連結され、ピストンが、ハウジング内で移動可能であり、油圧シリンダを、各チャンバが油圧流体をそれぞれのチャンバに流入させ且つそれぞれのチャンバから流出させるように構成されたそれぞれのポートを有する第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各油圧シリンダの第1のチャンバのポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの第2のチャンバのポート同士が流体連通し、第1の動作モードにおいてユーザによって車両を傾斜させることは、一方の側に力を加えることによって油圧流体を一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダに移動させ、それによって、車台を、力が加えられた側において下向きに傾斜させることを含む。
【0057】
別の実例では、第2の動作モードにおいて、傾斜は、油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに送ることによって実施される。更なる例では、少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される。変形例では、第1のモードは、車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに選択され、第2のモードは、車両の速度が事前に定められた値以上であるときに選択される。更なる変形例では、事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である。
【0058】
本発明の第7の態様によれば、車台と、2つの表面係合型前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両用のステアリング構成であって、車両の車台と一緒に移動可能な中央部材と、それぞれの前輪に連結される一対のホイール・ハブと、各対の上部支持アームが中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに回動可能に連結された2対の上部支持アームと、各対の下部支持アームが中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに回動可能に連結された2対の下部支持アームと、各々が中央部材とそれぞれの上部支持アーム又は下部支持アームの少なくとも一方との間を延びる2つのダンパー組立体と、各ダンパー組立体間に連結された横材と、前輪のステアリングを制御する制御デバイスとを備え、制御デバイスによる前輪のステアリングを可能にし、地面に対する前輪の傾斜を可能にするように動作可能であるステアリング構成が提供される。
【0059】
一実施例では、横材は、回動可能な連結部によって接合された1つのセグメントを備える1つ又は複数のアーチ状部材を備える。一実施例では、横材は、1つ又は複数のリンケージ・ワイヤ・プリー構成を備える。一実施例では、各対の支持アームは、それぞれのホイール・ハブに隣接する端部の所で互いに連結される。一実施例では、各対の支持アームは、中央部材に隣接する端部の所で支持部材によって互いに連結され、三角形を形成する。一実施例では、制御デバイスは、一対又は複数対のリンケージ・アームによってホイール・ハブに連結される。
【0060】
一実施例では、制御デバイスは、ギア・リンケージによってリンケージ・アームに連結されたステアリング・コラムに連結される。一実施例では、ギア・リンケージは、一対の傘歯車を備える。一実施例では、制御デバイスは、前輪が自由にキャスター動作できるように選択的に係合解除可能である。一実施例では、各ダンパー組立体は、車両が直立位置にあるときに地面に対して鋭角に配置されるか或いは平行に配置される。
【0061】
本発明の第8の態様によれば、第7の態様によるステアリング構成を備える四輪車両が提供される。
【0062】
次に、本発明の各実施例について添付の図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】三輪車両の実例の側面図である。
【図2】図1の三輪車両の平面図である。
【図3】図1の三輪車両の正面図である。
【図4】図1の車両の後輪、ドライブ・トレイン、及びサスペンションを示す詳細斜視図である。
【図5】伸長状態及び引込状態における後部サスペンションを示す図1の車両の後部の一部の側面図である。
【図6】図4の例の油圧シリンダの概略断面図である。
【図7】曲がるときに傾斜している図1の車両の背面図である。
【図8】図6の油圧シリンダを制御する制御構成の概略図である。
【図9】後部サスペンション・ユニットの別の実例の動作を示す概略断面図である。
【図10】後輪サスペンションの別の実例の概略側面図である。
【図11】図1の車両と一緒に使用するのに適した前輪組立体の概略側面図である。
【図12】図11の組立体の一部の概略図である。
【図13】図1の車両に使用するのに適した代替前輪組立体の概略側面図である。
【図14】図1の車両に使用するのに適した代替前輪組立体の概略側面図である。
【図15】図12の前輪組立体を組み込んだ車両を示す概略側面図である。
【図16】2つの前輪を有する車両用の代替前輪組立体の等角図である。
【図17】2つの前輪を有する車両用の更なる代替前輪組立体の等角図である。
【図18】2つの前輪を有する車両用の更なる代替前輪組立体の等角図である。
【図19】図17及び図18に示されている構成と同様な構成の簡略化された正面図である。
【図20】更なる代替前輪組立体の簡略化された正面図である。
【図21】更なる代替前輪組立体の簡略化された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1〜図3は、都市環境における輸送に適した幅の狭い三輪車両100の実例を示している。車両100は、車台102と、ボディ104と、表面係合型前輪106と、一対の表面係合後輪108とを備える。車両100は、縦に並んだ最大2人の乗員を輸送するのに適している。
【0065】
車両100は、縦に並んだ運転者シートと乗員シートとを有してよく、運転者と乗員は車両100の長手方向軸X−Xの上方に並んで座る。車両100のボディ104は全体的に密閉されてよい。言い換えれば、ボディ104は、実質的に密閉された運転者(及び任意に乗員)用の内部空間104aを形成し、それによって、車両の乗員を外部環境から実質的に保護することができる。車両100への出入りを可能にするために、ボディ104は、例えば、2枚又は4枚の従来の側開自動車型ドアを備えてよい(図1〜図3には2枚のドアが示されている)。任意に、車両100は、垂直開放式テール・ゲートを備えてもよい。或いは、車両100は、単一のドア若しくはハッチ又は一対のドア若しくはハッチを含む1人乗り自動車であってもよい。
【0066】
車両100は通常、全幅が750mm〜900mmであり、全長が2000mm〜2400mmであり、高さが1400mm〜1600mmであってよい。タイヤは通常、外径が約350mm〜450mmであり、幅が100mm〜150mmである。しかし、車両の全長は最大で2600mmであってよく、タイヤの直径は最大で550mmであってよい。
【0067】
車台102は、剛性が高く、例えば管状空間フレーム又はモノコック構造を有してよい。当業者には、フレームに施すことができ、なお且つ本発明の範囲内である変形例が容易に認識されよう。車台102は、任意の適切な材料から形成されてよい。しかし、より軽量の材料、例えばアルミニウムやカーボンファイバが好ましい。
【0068】
車台102は、車両100を操舵するのを可能にするステアリング構成110を備える。ステアリング構成110は前部スイング・アーム110aを備える。ステアリング構成110及び潜在的な代替構成について以下に説明する。
【0069】
前輪106は、車台102の前端の所に回転可能に取り付けられている。前輪112によって保持されているフロントタイヤ112は、丸い外形を有することが好ましい。なぜなら、以下に詳しく論じるように、前輪106は、車両100が旋回するときに車台102と一緒に傾斜するからである。しかし、これが当てはまらない場合もあり、他のタイヤ・車輪構成を利用してもよい。
【0070】
ステアリング構成110は、前輪106を回動させて車両を操舵するときに運転者が操作することのできるオートバイのハンドル又は自動車のハンドルの形をとってよい制御デバイス110bを備える。前輪106用の代替ステアリング機構及びサスペンション機構を使用してよいことが理解されよう。これについて以下に説明する。
【0071】
2つの後輪支持組立体114が図4及び図5に示されている。後輪支持組立体114は、車台102の後部の各側に配置されている。各後輪支持組立体114は、車台102の後部の側面に取り付けられたスイング・アーム116を備える。各スイング・アーム116は、一方の端部の所で車台102のピボット軸受118に固定されており、従って、各アーム116は車台102から片持ち梁状に延び、又、各アーム116は、車台102に沿って延び、車両100の長手方向軸X−Xに平行な平面内に位置している。従って、各アーム116は、自由端の所で一方の後輪108に回転可能に取り付けられたトレーリング・スイング・アームである。タイヤ120は、各後輪108によって保持され、好ましくは丸い外形を有する。というのは、以下に詳しく論じるように、各後輪108が、車両が曲がるときに車台102と一緒に傾斜するからである。各トレーリング・スイング・アーム116は、その軸受118の周りを回動することができ、それによって、各後輪108は、図4にブロック矢印によって示されているようにそれぞれの軸受118の周りを孤状に上下動することができる。
【0072】
推進ユニット122(図2に点線で概略的に示されている)が、後輪108同士の間に配置されており、そのため、車両100は低い重心を有することができる。このことは、コーナリング時に車両100を安定させることによって車両100の助けになる。なぜなら、車両100の最も重い構成部材の1つの一部又は全体が後輪108の軸R1、R2同士の間に(或いは少なくとも軸R1、R2の近くに)配置されているからである。
【0073】
又、推進ユニット122を後輪支持組立体114同士の間及び後輪108同士の間に配置することによって、車両の各構成部材を空間効率的に実装することができる。推進ユニット122は、例えば車両100の乗員シートの下方に配置されてよい。推進ユニット122をこのように配置するのが可能であるのは、周知の構成とは異なり、後述のように、傾斜機構の構造部材又は構成部材を後輪108同士の間に配置する必要がないからである。
【0074】
推進ユニット122は任意の適切な形態をとってよく、例えば、ガソリン・エンジン又はディーゼル・エンジンのような内燃機関として、電気モータ又はいわゆる「ハイブリッド・エンジン」(内燃機関と電気モータの組み合わせ)が車台102に取り付けられる。
【0075】
推進ユニット122は後輪108を駆動する。推進ユニット122が内燃機関である場合、推進ユニット122は、推進ユニット122(又はエンジン)と一体であってよい歯車箱(不図示)を含んでも、或いは推進ユニット122から分離して配置されてもよい。しかし、車両100の重心を低くするように歯車箱が車両102の車台102内の低い位置に配置されることが望ましい。小型のドライブ・トレイン構成を形成するように歯車箱が後輪108同士の間に配置されることも望ましい。
【0076】
推進ユニット122は、電源124も備える(図2には点線で概略的に示されている)。利用される電源124の種類は、車両100において使用される推進ユニット122の種類によって決まる。内燃機関の場合、電源124は、燃料タンクの形をとり、望ましくは車両100の後部に配置され、従って、燃料タンクの少なくとも一部が後輪支持組立体114同士の間又は後輪108同士の間に配置される。
【0077】
電気モータ又はハイブリッドドライブを推進ユニット122として使用する場合、電源124はバッテリ、例えばリチウムイオンバッテリのアレイを備えてよい。バッテリは、任意の適切な方法、例えば、コンセントのような外部電源又は燃料電池若しくは「レンジ・エクステンダ」型小型内燃機関のような車載電源によって充電されてよい。或いは、必要に応じて、バッテリなしで燃料電池を利用してもよい。
【0078】
このような車載電源を使用する場合、電源を車台102の後部の方に配置し、望ましくは電源124の少なくとも一部が後輪支持組立体114同士の間又は後輪108同士の間に配置されるように配置することが好ましい。
【0079】
推進ユニット122から後輪108への駆動は、任意の適切な手段によって行われてよい。例えば、図4に示されているように、推進ユニット122からの出力は、前部駆動スプロケット128が各端部に固定された水平横駆動軸126に接続される。前部駆動スプロケット128は、各後輪108に取り付けられたそれぞれの後部スプロケット130をそれぞれの駆動チェーン又は駆動ベルト132を介して駆動する。水平駆動軸126の回転軸がスイング・アーム116の軸受118の軸と同一直線上に位置することに留意されたい。
【0080】
図4に示されているチェーン駆動装置又はベルト駆動装置の代替構成として、スイング・アーム116に平行に延び、水平駆動軸126によって駆動されるそれぞれの駆動軸によって各後輪108を駆動してもよい。
【0081】
各後輪支持組立体114は、それぞれの各スイング・アーム116の垂直方向の孤状運動を制御するように設けられたショック・アブソーバ134を備える。図示の例では、各ショック・アブソーバ134は、凹凸に当たった際の後輪108の衝撃を吸収するコイル状圧縮ばね136と、コイルばね136の圧縮及び拡張を周知のように減衰させる油圧ダンパー138とを有する。この代わりにガス充填ダンパーを使用してもよい。更なる代替構成では、圧電段ダンパーを使用してもよい。このダンパーは圧電素子を利用して、静止時にダンパーをロックする。圧電材料は、車両100の移動時に乗り心地を変化させるように絶えず調整されてよい。
【0082】
各ショック・アブソーバ134の油圧ダンパー138の端部は油圧ダンパー138のそれぞれのスイング・アーム116に連結されている。各ショック・アブソーバ134の他方の端部140は、各後輪支持組立体114の一部も形成するそれぞれの油圧シリンダ144のハウジング142にしっかりと連結されている。図4に示されているように、油圧シリンダ144の他方の端部は車両の車台102に連結されている。
【0083】
図6に示されている簡略図に示されているように、各油圧シリンダ144は、ハウジング142に対して軸Y−Yに沿って移動可能な中央ピストン・ロッド146を有する。ピストン・ロッド146の下端は、Oリング150によってハウジング142の内壁に密封係合するピストン・ヘッド148を有する。ピストン・ヘッド148及びOリング150は、油圧シリンダ144を第1の上部チャンバ152と第2の下部チャンバ154に分割する。上部チャンバ152と下部チャンバ154の体積は、ピストン・ロッド146が上下動するにつれて変化する。上部チャンバ152と下部チャンバ154の体積は反比例し、即ち、ピストン・ヘッド148が(図6に示されている構成に対して)上方に移動したとき、上部チャンバ152は下部チャンバ154が増大する量に等しい量だけ減少する。油圧シリンダ144の上部チャンバ152及び下部チャンバ154の全体に油圧流体156が充填されている。油圧流体156は、Filisko等の磁気(MR)流体であってよい。
【0084】
ピストン・ヘッド148と向かい合う各ピストン・ロッド146の端部158は車両の車台102に連結されている。従って、各スイング・アーム116は、直列に連結された油圧シリンダ144及びショック・アブソーバ134と、スイング・アーム116が周囲を回動する軸受118とによって、車台102に連結されている。
【0085】
各油圧シリンダ144は、ハウジング142を貫通して上部チャンバ152に至る上部ポート160と、ハウジング142を貫通して下部チャンバ154に至る下部ポート162とを有する。図1に示され、図5に概略的に示されているように、一方の油圧シリンダ144の上部ポート160は、可撓性のホース164によって他方の油圧シリンダ144の上部ポート160に連結されている。同様に、各油圧シリンダ144の下部ポート162は、可撓性のホース166によって他方の油圧シリンダ144の下部ポート162に連結されている。従って、可撓性のホース164、166及び油圧シリンダ144によって閉ループ油圧回路が形成される。
【0086】
可撓性のホース164、166を使用した閉油圧ループの構成では、好都合な実装構成を車両100において使用することができる。例えば、車両100内の後輪108と油圧シリンダ144との間の空間を車両の推進ユニット122に利用することができる(図2参照)。これは、車両100のこのような部品の周りに可撓性のホース164、166を通すことができるからである。
【0087】
従って、動作時には、ピストン・ロッド146が一方の油圧シリンダ144内で下降すると、そのシリンダ27の下部チャンバ154の流体156が下部ホース166を介して他方の油圧シリンダ144の下部チャンバ154に送られる。これによって、他方の油圧シリンダ144のピストン・ロッド146が上昇させられ、それによって、油圧流体156が他方の油圧シリンダ144の上部チャンバ152から上部可撓性ホース164を通して油圧シリンダ144の上部チャンバ152に送られる。言い換えれば、一方の油圧シリンダ144のピストン・ヘッド148が第1の方向(上方又は下方のいずれか)に移動すると、他方の油圧シリンダ144のピストン・ヘッド148は逆方向に移動する。このことは、後述のように車両100が傾斜するのを助ける。
【0088】
各油圧シリンダ144は、それぞれのピストン・ロッド148の端部158とハウジング142との間に取り付けられたコイルばね168も有する。コイルばね168は、各油圧シリンダ144に復元力を加えるように構成されている。それによって、他の力が存在しない場合、コイルばね168は、油圧シリンダ144内のピボット・ヘッド148を同じ変位位置に戻し、車両100を自動的に直立位置に戻す。
【0089】
車両100が曲がるときに車両100を傾斜させる(即ち、車両100の長手方向軸X−Xの周りで回転させる)には、油圧流体156を第1の油圧シリンダ144の上部チャンバ152又は下部チャンバ154からいずれかの可撓性ホース164、164を介して第2の油圧チャンバ144の対応する上部チャンバ152又は下部チャンバ154に移動させる。油圧系が閉ループであり、油圧流体156が実質的に圧縮不能であるので、流体は他方の可撓性ホース164、166を通って第1の油圧シリンダ144に戻る。従って、油圧流体156のこの移動によって、ピストン・ヘッド148が互いに逆方向に異なるように移動し、車両が地面に対して傾斜する。
【0090】
油圧流体156の移動は様々な方法で実現されてよい。好ましい方法は、車両速度、傾斜角度、加速度、コーナリングフォース、又は他の適切なパラメータ等の乗物動特性条件によって決まる。いくつかの状況では、ユーザの直接的な入力によって車両を傾斜させることなく、車両100の傾斜に自動的に対処しなければならない(例えば、人的エラーによって事故が起こる恐れがある高速時)。他の状況では、(例えば、低速時又は後退/駐車時に)車両を操作又は操舵する方法としてユーザ入力(例えば、傾くことによってユーザの体重を移動させること)が好ましい方法である。
【0091】
従って、本発明の実施例は、車両を傾斜させる様々な動作モードを実現するように構成されている。
【0092】
第1の動作モードでは、運転者は、自分の体重を操作することによって車両を手動によって傾斜させることができる。車両を傾斜させる場合、車両100の運転者は車両が曲がるときに体を傾け、自分の体重を車両100の長手方向軸X−Xから横方向に離れるように所望の方向に移動させる。例えば、車両100が左に曲がる場合、運転者は左に傾く。このように体重が車両100の左側に移動すると、左側の油圧シリンダ144のピストン・ロッド146が下降し、それによって、油圧流体156がその油圧シリンダ144の下部チャンバ154から下部ホース166を通して右側油圧シリンダ144の下部チャンバ154に送り込まれる。
【0093】
これによって、右側シリンダ144のピストン・ロッド146が上昇し、その結果、油圧流体156が右側シリンダ144の上部チャンバ152から左側シリンダ144の上部チャンバ152まで移動する。左側油圧シリンダ144の全長が圧縮されるため、左側スイング・アーム116が車台102に対して上昇し、それによって、車台102の左側が下方に傾く。
【0094】
同様に、右側油圧シリンダ144が伸長すると、車両102の右側が上昇し、右側スイング・アーム116がその軸受118の周りを相対的に下向きに回動する。従って、車両100は、運転者が傾く量によって調整可能な適切な量だけ傾斜し、運転者の体重の移動を助けるとともに、車両の重量を2つの後輪108の間でより均等に分配する。又、当業者によって理解されるように、長手方向軸X−Xに平行な適切な力をオートバイのハンドルのような制御デバイスに加えることによって、車両100を傾斜させることもできる。従って、車両100は、アクティブな制御システム(コンピュータ又は他の電子制御装置等)を使用せず、且つ車両を傾斜させるのに運転者がフットペダルを操作する必要があるものもある、いくつかの周知の構成の重く複雑なセミアクティブ・レバー・リンケージなしに、完全に受動的に制御可能に傾斜させることができる。
【0095】
油圧シリンダ144のハウジング142内でのピストン・ロッド142の移動及びスイング・アーム116の移動が更に図6に示されている。油圧シリンダ144の完全に伸長した構成が図6の左側油圧シリンダ144に示されており、油圧シリンダ144の完全に圧縮された構成が図6の右側油圧シリンダ144によって示されている。
【0096】
図7は、右に曲がるために右側に傾斜したときの、後部から見た車両100を示している。右側油圧シリンダ144が完全に圧縮され、それによって、車両100の右側が下方に地面の方へ傾いている。左側油圧シリンダ144が完全に伸長され、車両100の左側を上方に押している。
【0097】
図7から、車台102内の低い位置にある推進ユニット122及び電源124の構成が、車両100の重心を後輪108同士の間に維持するのを助けることも分かる。これは、車両100の車台102の傾斜角度にかかわらず維持され、車両100の安定性を助け、車両100が曲がるときに転倒するのを防止する。車両100の安定性は更に、横方向と長手方向の両方において車輪組立体114同士の間に位置し、安定性を補助する、推進ユニット122及び電源124の各々の少なくとも一部の位置によって補助される。重心は又、車両100内の低い位置、好ましくは地面から450mm以下の位置に存在すべきである。
【0098】
図7から、車両100の全ての車輪106、108が車台102と一緒に傾斜することも分かる。このため、車両のタイヤは湾曲した外形を有し、小形の傾斜構成が維持される。
【0099】
車両100の車台102は関節運動するか或いは傾斜するように構成されている。傾斜角度αは、(図7に軸V−Vによって示されている)直立垂直位置に対して測定され、車両100は、垂直直立位置V−Vから最大30度の角度まで(30度を含む)傾斜することができる。これによって、車両100は、安定性及び後輪108と表面との係合を維持しつつ、敏速に曲がることができる。重心が低いことによってもたらされる車両100の固有の安定性によって、角度αは周知の構成よりもずっと大きい。しかし、必要に応じて他の最大傾斜角度を使用してもよい。例えば、車両100ではより大きい傾斜角度が可能であるにもかかわらず、安全上の理由で、車両100を事前に定めたより小さい角度に制限してよい。
【0100】
本発明の油圧構成は第2の動作モードも有する。第2の動作モードでは、車両100の傾斜は、運転者の体重の移動によってではなく自動的に実施される。図8は、これを実現する制御構成200の概略図を示している。
【0101】
制御構成200は、例えば、マイクロプロセッサを備え、油圧シリンダ144及びショック・アブソーバ134を制御して車両の傾斜を制御するように動作可能である。制御構成200は、ポンプ構成202、バイパス弁204、弁206、及び各ショック・アブソーバ134に関連するダンパー・コントローラ208を制御する。乗物動特性情報を制御構成200に供給するために、第1の加速度計210及び第2の加速度計212が設けられる。加速度計210、212は、車両100上の任意の適切な場所に配置されてよく、任意の適切な手段、例えば、ワイヤ、又は例えば短距離無線網を使用した無線通信によって制御構成と通信することができる。
【0102】
加速度計210は、ステアリング構成110上に配置され、(自動車のハンドル、又は図2に示されているオートバイのハンドルのような)制御デバイスの現在位置を制御構成200に伝えることが好ましい。この構成では、制御構成200と加速度計210との無線通信を用いると、これらの構成要素間のワイヤが不要になり、重量及び機械的摩耗が低減されるので有利である。
【0103】
制御構成200は、ステアリング構成ロックアウト部214も制御する。又、制御構成200は(例えば速度計によって)車両速度等の情報にアクセスすることもできる。
【0104】
第2の動作モードでは、閉油圧ループ内及び各油圧シリンダ144間の油圧流体156の移動がポンプ構成202によって制御される。ポンプ構成202は、可撓性のホース166と連通するように配置されている。しかし、他の構成を使用してもよい。任意の適切な種類のポンプを使用してよい。しかし、双方向ポンプ、例えばヘリカルスクリューポンプが好ましい。或いは、ポンプ構成202は複数のポンプを備えてよい。ポンプ構成202は制御構成200によって制御される。
【0105】
ポンプ構成202と平行にバイパス弁204が配置されている。バイパス弁204は、少なくとも双安定性を有し、即ち、開閉可能な任意の適切な形態の弁であってよい。可変開放弁を使用してもよい。適切な弁の実例は電磁弁であってよい。バイパス弁204は、制御構成200によって制御される。バイパス弁204を開いて車両が第1の動作モードで動作するのを可能にすることができ、即ち、運転者の体を長手方向軸X−Xから横方向に離れるように移動させることによって車両を傾斜させることができる。
【0106】
第1の動作モードでは、ポンプ構成202が迂回され、油圧流体156はバイパス弁204を通って流れることができる。制御構成200は、車両100の速度が所定の値よりも遅く、例えば25km/hよりも遅く、好ましくは15km/hよりも遅いことが判定されたとき又は車両が後退しているときに自動的に第1の動作モードを選択する。この動作モードでは、ステアリング構成ロックアウト部214が係合されず、従って、運転者は、制御デバイス106を使用して車両100を操舵することができる。又、これらの速度では、運転者は、車両100を傾斜させることによって安全に操舵し、例えば他の車両の間を走り抜けるか或いはうまく後退することができる。
【0107】
或いは、第1の動作モードは運転者によって選択可能であってよく、第2の動作モードは、第1のモードが運転者により、例えば制御デバイス106上のボタンによって明示的に選択されない限りデフォルト動作モードである。
【0108】
しかし、第2の動作モードでは、制御構成200はバイパス弁204を閉じ、従って、油圧流体156の動きはポンプ構成202の動作によって支配される。これは、約15km/hを超える高速で行われる。第2の動作モードでは、ステアリング構成ロックアウト214も作動され、従って、ステアリング構成110が車両100の前輪を直接操舵することはなくなる。その代わり、車両の前輪は自由にキャスター動作し、運転者が制御デバイス106を回転させると、加速度計210が制御デバイス106の動きを検出し、制御信号を制御構成200に伝達する。制御構成200は、加速度計210からの信号に応答して、ポンプ構成202を動作させ、運転者が動こうとする方向(運転者が制御デバイス106を動かす方向によって示される)に車両100を傾斜させるのに適切な方向に油圧流体156を送る。
【0109】
制御構成は弁206も制御する。弁206は、他の可撓性のホース164の流路に沿って配置され(ただし、他の構成を使用してもよい)、ロックとして機能して閉ループ油圧流体回路をするように構成されている。このため、車両100は静止時に安定することができる。弁206が開くと、油圧流体156が油圧シリンダ144同士の間を流れることができ、必要に応じて車両100が傾斜することが可能になる。弁206を閉じると、油圧シリンダ144同士の間を油圧流体156が流れることはできなくなり、即ち、車両100の傾斜角度が固定される。
【0110】
このことは、車両100を安定した直立位置において駐車できることを意味する。弁206を開く前に傾斜を考慮して傾斜量を適切に設定することによって、車両100をキャンバー付きの道路上に直立させて駐車することもできる。車両が比較的速い速度で移動するときに弁206を動作させて、必要に応じて車両が急速に傾くのを防止することができる。制御構成200は、車両駐車ブレーキ(不図示)をかけられたときに弁206を閉じるように構成されてもよい。従来、制御デバイス106上又は制御デバイス106の近くに取り付けられる可能性があるスイッチ(不図示)を必要に応じて動作させて弁206を開閉することができる。
【0111】
制御構成200は、ダンパー・コントローラ208によるショック・アブソーバ134の減衰を制御するようにも動作可能である。ダンパー・コントローラ208は、ショック・アブソーバ134の減衰特性を修正することができる。減衰の割合及び/又はレベルは、車両100が駆動される表面に応じて調整可能であり、或いはショック・アブソーバ134は、車両100が静止し、例えば、運転者及び/又は乗員が車両100に出入りするときに車両が安定するように「ロック」し、極めて高い剛性を有することができる。ダンパー・コントローラ208は、様々な適切な技術、例えば、圧電ダンパー又はFilisko等の磁気(MR)流体を使用して、調整可能な減衰を実現することができる。
【0112】
上記の制御構成を変形することが可能である。例えば、代替加速度計構成を使用してもよい。考えられる構成では、いくつかの加速度計を使用して、a)第1のモードと第2のモードの両方において、車両が停止したことを測定によって判定すること、b)第1のモードと第2のモードの両方において、(順方向と逆方向の両方における)車両加速度を測定すること、b)ダンパーを自動的に調整できるように後輪上の上下動を検知すること、及び/又はc)車台102が最大の30度の傾斜に近いか或いは達したときにそれを視覚的又は音声的に示すことが可能である。
【0113】
油圧シリンダ及びショック・アブソーバの代替構成230が図9に示されている。この実例では、ショック・アブソーバ234は、油圧シリンダ244と一体であり、油圧シリンダ244のハウジング242の内部に取り付けられ、更に、油圧シリンダ244のピストン・ロッド246を構成する。そのため、ショック・アブソーバ234は、ハウジング242内のその端部の所にピストン・ヘッド248を保持している。ピストン・ヘッド248は、Oリング250によってハウジング242の内壁に密封係合している。この実例では、油圧シリンダ244のハウジング242が車台102に連結され、ショック・アブソーバ234によって形成されるピストン・ロッド246がスイング・アーム116に連結されている。従って、例えば左に曲がるとき、運転者が左に傾くと、油圧流体256が左側油圧シリンダ244の上部チャンバ252から右側油圧シリンダ244の上部チャンバ252に送られ、右側油圧シリンダ244の下部チャンバ254から左側油圧シリンダ244の下部チャンバ254に送られる。他の点では、図9の一体的な油圧シリンダ244とショック・アブソーバ234の動作は、図6に示し上記に説明した油圧シリンダ144の動作と同様である。
【0114】
油圧流体用の膨張タンク(不図示)を設けることができ、必要に応じて膨張タンクに手を届かせて油圧流体256を補給することができる。
【0115】
後部サスペンションの代替構成260が図10に示されている。この実例では、後輪108用の各スイング・アーム116は、2つの部分、即ち一次スイング・アーム280及び二次スイング・アーム281を含む。一次スイング・アーム280は、一方の端部の所で車台102内のピボット軸受282に固定されている。一次スイング・アーム280は、その長さに沿った一部が上向きに約25度の角度だけ捩じられている。二次スイング・アーム281の第1の端部は、軸受283によって一次スイング・アーム280の捩じれ部の所で一次スイング・アーム280に回動可能に連結されている。二次スイング・アーム281は、その他方の端部の所に後輪284を保持している。ショック・アブソーバ285は、二次スイング・アーム281と一次スイング・アーム280の上向きに捩じれた部分(即ち、最後部)との間に連結されている。衝突の衝撃吸収は、二次スイング・アーム281が一次スイング・アーム280に対して移動し、その結果ショック・アブソーバ285の圧縮が減衰することによって実現される。油圧シリンダ286は車台102と一次スイング・アーム280との間に連結されている。車両100の傾斜は、上述のように実現される。運転者は、車両の下降する側に体重を移動させ、その結果、油圧流体が油圧シリンダ286同士の間で送られ、一次スイング・アーム280が車台102に対して移動する。或いは、図8に示されているポンプ構成202のようなポンプを使用してもよい。
【0116】
ショック・アブソーバ134、285は、様々な電圧を印加することによって粘度を調整することのできる「Filisko」又は同様の磁気流体を使用して減衰されてよい。例えば車両100が静止しているときに、Filisko減衰流体に電荷を流すことによってこの場合のショック・アブソーバ134、285を所定の位置にロックし、更に安定性を向上させることができる。油圧シリンダ144、286内の油圧流体は、様々な電圧を印加することによって粘度を調整することのできる「Filisko」又は同様の流体であってよい。
【0117】
図11及び図12は、図8の制御構成200と一緒に使用するのに適した車両100の前輪の考えられる構成を示している。図11は、ステアリング・コラム302と、キングピン304と、ステアリング・ヨーク306とを備えるステアリング構成300を示している。前部スイング・アーム308がステアリング・ヨーク306に連結されており、前記スイング・アームは、その端部の所に回転可能に固定された前輪310に連結されている。前部スイング・アーム308とステアリング・ヨーク306との間にショック・アブソーバ312が連結され、即ち、実際上、ショック・アブソーバ(又はダンパー)312は前部スイング・アーム308と車台102との間に連結されている。ショック・アブソーバ312は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図9を見ると分かるように、キングピンの中心線Z−Zは前輪310の中心の前方を通過している。このため、前輪310は自由にキャスター動作することができる。
【0118】
図12を参照すると、車両100のステアリングを分離してキャスター動作(即ち、第1の動作モード)を可能にする機構が示されている。ステアリング・コラム302の上端の所に、オートバイのハンドルの形をした制御デバイス314が配置されている。ハンドルとステアリング・コラム302は、ばね付きボタン318によって制御されるロック・ピン316によって相互に連結されている。ボタン318は任意に、ステアリング・コラム302とハンドルの係合/係合解除を可能にする。ロック・ピン316は、第1の動作モード(前輪310が制御デバイス314によって直接制御可能である)と第2の動作モード(前輪310及び前部スイング・アーム308が自由にキャスター動作し、且つ車台102を傾斜させることによって操舵が実現される)との切替えを可能にするように、制御構成200によって制御されるソレノイドによって動作させることもできる。言い換えれば、ロック・ピン316は、操舵可能で回動可能な前部スイング・アーム308と制御デバイス314との間の機械的リンクの係合/係合解除を選択的に行うことができる。
【0119】
図13は、図8の制御構成と一緒に使用するのに適した車両100の前輪の代替構成を示している。図13は、ステアリング・コラム402と、キングピン404と、ステアリング・ヨーク406とを備えるステアリング構成400を示している。前部スイング・アーム408がステアリング・ヨーク406に連結されており、前記スイング・アームは、その端部の所に回転可能に固定された前輪410に連結されている。前部スイング・アーム408とステアリング・ヨーク406との間にショック・アブソーバ412が連結されている。ショック・アブソーバ412は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図11を見ると分かるように、キングピンの中心線Z1は前輪410の中心の前方を通過している。このため、前輪410は自由にキャスター動作することができる。
【0120】
この実施例では、車両の操舵が、ステアリング・コラム402の遠位端の所に配置され、ヨーク406上に配置された補傘歯車416に係合する傘歯車411によって行われる。必要に応じて、前述の実施例に関して説明したように前輪410とステアリング・コラム402との機械的リンクを係合又は係合解除することができる。図13の実施例では、ステアリング・リンケージ(傘歯車414、416を備える)は、車輪410の中心線の真上に配置されている。しかし、必ずしもこうでなくてもよい。ステアリング・リンケージは、必要に応じて車輪410の中心線の前方又は後方に配置されてよい。又、図13には傘歯車414、416が示されているが、ウォーム・ギア又はラック・アンド・ピニオンのような代替機構を使用してもよい。
【0121】
又、ステアリング・コラム402は、軸Z2に沿って伸縮動作可能であり、ステアリング・コラムを個々の運転者に適するように調整してもよい。
【0122】
図14は、図8の制御構成200に使用するのに適した更なる代替ステアリング構成500を示している。図14は、ステアリング・コラム502と、キングピン504と、ステアリング・ヨーク506とを備えるステアリング構成500を示している。この実施例では、ステアリング・ヨーク506は、車両ボディの前部508に隣接して配置されている。このため、ヨーク506をよりしっかりとより確実に配置することができる。
【0123】
前部スイング・アーム510がステアリング・ヨーク506に連結されており、前記スイング・アーム510は、その端部の所に回転可能に固定された前輪512に連結されている。前部スイング・アーム510とステアリング・ヨーク506との間にショック・アブソーバ514が連結されている。ショック・アブソーバ514は任意に、上述のダンパー・コントローラと同様のダンパー・コントローラによって制御されてよい。図14を見ると分かるように、キングピンの中心線Z3は前輪512の中心の前方を通過している。このため、前輪512は自由にキャスター動作することができる。
【0124】
図13の実施例と同様に、ステアリング・コラム502は、一対の傘歯車516、518によってステアリング・ヨーク506と機械的に連絡している。しかし、他の代替機械的連結部、例えば、ラック・アンド・ピニオン・システム又はウォーム・ギア及びフォロアを使用してもよい。
【0125】
この実施例では、ステアリング・ヨーク506が車両ボディの前部510に近接しているため、一対のキャスター・シミー・ダンパー520(図14には一方しか示されていない)を付加することができる。各キャスター・シミー・ダンパー520は、車両ボディの前部510とステアリング・ヨーク506との間に連結され、キャスター・モードで動作するときに前輪512の異常振動を防止するように構成されている。この実施例では、キャスター・シミー・ダンパー520はばねであってもよい。
【0126】
又、キャスター・シミー・ダンパー520は、後輪構成を参照して説明したシリンダ144のような一対の油圧シリンダによって置き換えられてもよい。この構成では、油圧シリンダは、車両を第1の(マニュアル・カウンター・ステア)動作モードで操舵するのに使用されても、或いは傘歯車構成が故障した場合にフェールセーフ・モードとして使用されてもよい。
【0127】
後輪構成と共通して、このような油圧シリンダ構成では、ステアリング構成の各側に油圧シリンダが配置されており、車両の前輪512を中央に戻すために(前述の実施例と同様に)油圧シリンダ上にばねが設けられてよい。
【0128】
図15は、図1〜図3に示されているのと同様な車両100に組み込まれたステアリング構成500を示している。図を明確にするために、図15に示され図1〜図3にも示されている特徴は、同じ参照符号を有する。
【0129】
図15に示されているように、ステアリング・コラム502は、水平軸X−Xに対して10度から15度の間の角度に位置している。しかし、これは特定の運転者に適合するように調整可能であってよい。又、前部スイング・アーム510は、水平軸X−Xに対して10度から15度の間の角度にわたって、ステアリング・ヨーク506に対して回動可能である。これによって、車両100は、隆起部又は丘陵部のような表面の凹凸を越えることができる。後部スイング・アーム116も、水平軸X−Xの各側において20度から35度の間の角度にわたって、スイング・アームの中心軸の周りを回動可能である。
【0130】
又、図15に示されているように、推進ユニット122は少なくとも一部が後輪同士の間に配置されている。この構成では、後方の低い位置に重心を配置することができ、車両が曲がるときの安定性が向上する。
【0131】
上述の構成はそれぞれ、単一の前輪が設けられる三輪車両に関する構成である。しかし、本発明は、四輪車両にも適用可能である。図16〜図21は、四輪車両に使用するのに適した代替ステアリング構成を示している。
【0132】
図16は、2つの前輪602が設けられたステアリング構成600の一実施例を示している。2つの前輪602は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。ステアリング構成600は、図1に示されている軸X−Xに平行に位置する軸R1−R1の周りを回転するように配置された中央ビーム604を備える。中央ビーム604は、車両100の車台102の残りの部分と一緒に回転するように構成されており、従って、車両100は曲がるときに傾斜する。車両の順方向は矢印Dによって示されている。中央ビーム604には4本のA字形アーム606が取り付けられている。各Aアームは、一方の端部の所で互いに接合され別の端部の所で共通の横材に連結された2本のロッドを備える。各Aアームは三角形の部材を形成している。
【0133】
2本のAアーム606が、中央ビーム604の上部の両側に配置され、ヒンジ608によって連結されている。更なる2本のAアームが、中央ビーム604の下部の両側に位置しヒンジによって連結されている。言い換えれば、一対のAアーム606が中央ビーム604の各側から離れる方向に延びている。Aアーム606の各対の遠位端の所に前輪602が配置されている。各前輪602は、Aアーム606の各対にハブ610によって連結されている。従って、中央ビーム604が車台102の残りの部分に対して回転すると、上部Aアーム及び下部Aアーム606が横方向に変位し、各ハブ610(従って、ハブ610に取り付けられた各車輪602)が軸R−Rに平行な軸の周りを回転する。従って、車輪602の傾斜をこのように実施することができる。
【0134】
推進ユニット122の代替構成として、必要に応じて、各ハブ610に電気モータを組み込んで前輪を駆動してもよい。この場合、車両の前部の方に追加的な質量が配置されるが、四輪構成によって安定性が向上するので、このことに関連する問題は軽減される。
【0135】
一対のダンパー・アーム612が設けられている。各ダンパー・アーム612は、中央ビーム604の上面と上部Aアーム606及び下部Aアーム606のそれぞれとの間に連結されている。各ダンパー・アーム612は、連結ロッド部614とダンパー616とを備える。ダンパー616は実質的に水平に配置され、連結ロッド部614は、ダンパー616に概ね垂直であり、ピボットによってダンパー616に連結されている。中央ビーム604が回転すると、連結ロッド部614もダンパー616に対してピボットの周りを回転する。
【0136】
中央ビーム604は、ステアリング・コラム618を収容するようにも構成されている。ステアリング・コラム618は、中央ビーム604を貫通して延びており、軸R1−R1の周りを回転するように構成されている。傘歯車620が、ステアリング・コラム618の遠位端の所に配置されており、中央スピンドル624上に配置された補傘歯車622によって前輪602を操舵するように構成されている。リンケージ・アーム626が中央スピンドル624とホイール・ハブ610との間に連結されており、それによって、第1の動作モードのときにステアリング・コラム618が回転して前輪602を操舵するのが可能になる。任意に、第2の動作モードの必要に応じて、ステアリング・コラム618と車輪602との間の機械的リンクを係合解除して前輪602が自由にキャスター動作するのを可能にすることができる。
【0137】
或いは、傘歯車の代わりに、ウォーム・ギア、ラック・アンド・ピニオン、又は油圧ラムを設けて車両を操舵することができる。更なる代替構成として、各々が中央ビーム604の各側に位置する2本のステアリング・アームを設けてもよい。
【0138】
図17は、2つの前輪702が設けられたステアリング構成700の更なる代替実施例を示している。2つの前輪702は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500及び2つの前輪を備えるステアリング構成600と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。
【0139】
ステアリング構成700は、図1に示されている軸X−Xに平行に位置する軸R2−R2の周りを回転するように構成された中央ビーム704を備える。中央ビーム704は、車両100の車台102の残りの部分と一緒に回転するように構成されている。車両の順方向は矢印Dによって示されている。
【0140】
中央ビーム704には4本のAアーム706が取り付けられている。2本のAアーム706が、中央ビーム704の上部の両側に配置され、ヒンジ708によって連結されている。更なる2本のAアーム706が、中央ビーム704の下部の両側に位置しヒンジによって連結されている。言い換えれば、一対のAアーム706が中央ビーム704の各側から離れる方向に延びている。
【0141】
Aアーム706の各対の遠位端の所に前輪702が配置されている。各前輪702は、Aアーム706の各対にハブ710によって連結されている。従って、中央ビーム704が車台102の残りの部分に対して回転すると、上部Aアーム706及び下部Aアーム706が横方向に変位し、各ハブ710(従って、ハブ710に取り付けられた各車輪702)が軸R2−R2に平行な軸の周りを回転する。従って、車輪702の傾斜をこのように実施することができる。
【0142】
推進ユニット122の代替構成として、必要に応じて、各ハブ610に電気モータを組み込んで前輪を駆動してもよい。この場合、車両の前部の方に追加的な質量が配置されるが、四輪構成によって安定性が向上するので、このことに関連する問題は軽減される。
【0143】
一対のダンパー・アーム712が設けられている。しかし、前述の実施例とは異なり、各ダンパー・アーム712は、中央ビーム704の中央側面とそれぞれの下部Aアーム706のみとの間に連結されている。各ダンパー・アーム712は、連結ロッド部714とダンパー716とを備える。ダンパー716は実質的に水平に配置され、連結ロッド部714は、ダンパー716に概ね垂直であり、ピボットによってダンパー716に連結されている。中央ビーム704が回転すると、連結ロッド部714もダンパー716に対してピボットの周りを回転する。又、この実施例では、各ダンパー・アーム712のピボットが湾曲したリンケージ718によって連結されている。湾曲したリンケージ718は、中央継手によって連結された2つの部分に分割される。湾曲したリンケージ718は、上部Aアーム706の中央を貫通して、中央ビーム704の上方を延びている。この実施例ではリンケージが湾曲しているものとして記載されているが、必ずしもそうである必要はない。空間効率には湾曲した構成が有用であるが、他の構成、例えば直線状のリンケージを使用してもよい。
【0144】
このような構成を設けると、ダンパー712を車両100内のより低い位置に取り付けて、車両100全体としての重心を低くすることができる。又、この構成は車両のばね下質量を低減させる。重心が低くばね下質量が小さいことは、完全密閉型傾斜装置の操作性、横風安定性、及び制動時安定性を確保する上で重要である。
【0145】
ステアリング・コラム720は、中央ビーム704の上方を延びており、中央ビーム704に平行であってよい。ステアリング・コラム720は、軸R2−R2に平行であり、且つ軸R2−R2から間隔を置いて配置された軸R3−R3の周りを回転するように構成されている。車両の操舵は、傘歯車又は同様の構成によって行われる。この構成については、前述の実施例を参照して説明済みであり、これ以上は説明しない。
【0146】
中央スピンドル724とホイール・ハブ710との間にリンケージ・アーム722が連結されており、第1の動作モードのときにステアリング・コラム720を回転させて前輪702を操舵するのが可能になる。しかし、前述の実施例とは異なり、4つのリンケージ・アーム722(即ち、2対)が設けられている。この構成では、高速時に自由にキャスター動作するモードになり、一次傘歯車又はステアリング・リンケージに障害が生じた場合に、フェールセーフ機構が実現される。
【0147】
任意に、第2の動作モードの必要に応じて、ステアリング・コラム720と車輪702と間の機械的リンクを係合解除して前輪602が自由にキャスター動作可能にすることができる。自由なキャスター動作は、ステアリング・リンケージ・アーム722がホイール・ハブ710の中心線の前部又は後部のいずれかに配置された場合に可能になる。
【0148】
図18は、2つの前述の実施例2が配置されたステアリング構成800の更なる代替実施例を示している。2つの前輪802は、単一の前輪のみを備える前述のステアリング構成300、400、500及び2つの前輪を備えるステアリング構成600、700と同様に、操舵、傾斜、及びキャスター動作が可能である。
【0149】
ステアリング構成800は、前述の実施例のステアリング構成700と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0150】
ステアリング構成800は、より小型でより軽量のホイール・ハブ810が設けられるという点がステアリング構成700と異なる。ホイール・ハブ810は、前述の実施例のホイール・ハブよりも直径が小さく、Aアーム706に取り付けられたピボットヒンジ812に連結されている。又、一対のリンケージ・アーム722が設けられている。しかし、フェールセーフ・モードではリンケージ・アーム722を再び重複することができる。又、この直径の小さいホイール・ハブを上述の2前輪構成においてを使用してもよい。
【0151】
このような構成を設けると、車両の重心を更に低くすることができる。又、この構成では、車両のばね下質量が更に低減される。重心が低くばね下質量が小さいことは、完全密閉型傾斜装置の操作性、横風安定性、及び制動時安定性を確保する上で重要である。
【0152】
上述の実施例の動作が、図18の実施例に関して図19に示されている。図19は、凹凸のある地面上で曲がるときの図18の実施例の簡略図を示している。
【0153】
図19に示されているように、車両が曲がるとき、中央ビーム704(従って、車両の車台102及びボディ104)が回転し、Aアーム706が移動してホイール・ハブ810同士を互いに平行に回転させ、車輪702を傾斜させる。又、地面に凹凸があるために、左車輪702(図17に示されている)が右車輪702よりも高くなる。この変位は、復元力を作用させる湾曲したリンケージ718によって妨害され、ショック・アブソーバ及び左車輪702が車両100の残りの部分に対して過度に遠ざかるのが防止され、即ち、車両100が一方の車輪上に倒れ込むのが防止される。図19に示されているように、独立した前輪アーム706によって、前輪は、単一の固定平行四辺形構成が両車輪間を延びる車両に必要なダンパー開度を必要とせずに凹凸のある地面上を走行することができる。
【0154】
ステアリング構成900の更なる実施例が図20に概略的に示されている。ステアリング構成900は、前述の実施例のステアリング構成700、800と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0155】
ステアリング構成900は、代替中央リンキング部材が設けられるという点が前述の2つの実施例と異なる。前述の実施例の湾曲したリンケージ718の代わりに、張力をかけたワイヤ918とプリー920とを備える構成が設けられている。この構成は、必要な復元力を生じさせる構成であるが、前述の2つの実施例の半円形リンケージ718よりも軽量にすることができる。又、一対のプリー/ワイヤを設けてフェールセーフ動作を実現してもよい。
【0156】
ステアリング構成950の更なる実施例が図21に概略的に示されている。ステアリング構成950は、前述の実施例のステアリング構成700、800、900と実質的に同様である。従って、本実施例と前述の実施例に共通の構成部材についてここでは繰り返し説明せず、前述の実施例と同じ参照符号を使用する。
【0157】
ステアリング構成950は、代替サスペンション・ダンパー構成が設けられるという点が前述の実施例と異なる。ステアリング構成950は、一対の前部油圧シリンダ952を備える。油圧シリンダ952は、前述の実施例における車両100の後輪に連結された油圧シリンダ144と構造が実質的に類似している。従って、各油圧シリンダ952は、各油圧シリンダ852を2つの別個のチャンバに分割する可動ピストン(不図示)を備える。
【0158】
各油圧シリンダ952は、図21に示されているように、一方の端部の所で、回動可能な連結部954によって中央ビーム704に連結され、下方の端部の所でそれぞれの下部Aアーム706に連結されている。2つの油圧シリンダ952は、下方の端部の所で下部連結管958によって互いに流体連結され、上方の端部の所で上部連結管960によって互いに流体連結されている。従って、2つの油圧シリンダ952は、流体が2つの油圧シリンダ952間を往復するときに互いに逆方向に連動して前輪構成950を傾斜させることができる。
【0159】
一構成では、2つの油圧シリンダ952を後部油圧シリンダ144と結合して、前輪と後輪を連結するシリンダの回路を形成してもよい。又、ポンプ構成202を使用して、後部油圧シリンダ144に加えて前部油圧シリンダ952の動作を制御してもよい。
【0160】
又、車両100に復元力を生じさせて車両100のボディを直立させるために油圧シリンダ952上に付勢手段としてばね962(図21には1つのみが示されている)を設けてもよい。このことは、他の力が存在しない場合に、車両100のボディが直立位置に戻ることを意味する。
【0161】
上記に示した実施例は四輪車両を傾斜させることに関して例示されているが、Aアーム及び湾曲したリンケージを含む上述の平行四辺形構成(又はワイヤ及びプリー・リンクを含む平行四辺形構成)は、自動車のような従来の非傾斜四輪車両にも適切に使用することができる。又、上述の構成は、傾斜前二輪車両、一輪車両、又は傾斜/非傾斜トラクター若しくはオフロード・クアッド・バイクにも適切に使用することができる。
【0162】
又、上述の構成を使用して傾斜スノー・モービル又は非傾斜スノー・モービルの2つのフロント・スキーを制御してもよい。上述の例は全てマニュアル・ステア制御機能を有してもよい。
【0163】
上述の構成を図21に示されている前輪構成950と一緒に使用してもよく、図21に示されている油圧シリンダ952に適用してもよい。
【0164】
車両100が3つの車輪のみを有することが好ましいが、車両100は、前述の実施例に示されているように前部の2つの車輪と後部の2つの車輪とを含む4つの車輪を有してもよい。
【0165】
両方の後輪を駆動するのに単一の推進ユニットを使用する代わりに、各後輪をそれ自体の専用モータによって駆動してもよい。この駆動はモータからの直接的な駆動であってよく、その場合、モータは効果的にスイング・アームを形成することができる。或いは、この駆動は、例えばチェーン、ベルト、又は軸を介した間接的な駆動であってもよい。
【0166】
前輪は任意に、それ自体の専用モータから駆動されても、或いは後輪を駆動する1つ又は複数のモータから駆動されてもよい。
【0167】
図を明確にすることのみのために、図面には、例えば後輪用の差動装置を含む様々な構成部材が示されていないことが理解されよう。上述の実例の後輪は、そのそれぞれのスイング・アーム116の一方の側に取り付けられるように示されているが、スイング・アームを分岐させ、スイング・アームの分岐部同士の間に後輪を取り付けてもよい。
【0168】
当業者には上述の実施例の変形例が明らかであろう。ハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の厳密な構成は異なるものであってもよく、その場合も本発明の範囲内である。
【0169】
本発明の実施例を特に実例を参照して説明した。特定の実例を図示し、本明細書において詳しく説明したが、図面及び詳細な説明が本発明を開示された特定の形態に限定するものではないことを理解されたい。上述の実例に本発明の範囲内で変形及び修正を施してもよいことが理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、を備える車両であって、
各後輪が、それぞれの後輪が前記車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と、油圧シリンダとを有する車輪支持組立体によって前記車台に連結され、
前記油圧シリンダが、前記車台及び前記後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、前記後輪支持体及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを有し、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、前記油圧シリンダの前記ピストンが前記それぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位し、前記車台が地面に対して関節運動し、
前記車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動が前記ポンプ構成によって選択的に制御される車両。
【請求項2】
前記推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に前記車輪支持組立体同士の間又は前記後輪同士の間に配置される、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
電源を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電源の少なくとも一部は、前記車輪支持組立体同士の間又は前記後輪同士の間に配置される、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記推進ユニットは内燃機関を備え、前記電源は燃料タンクを備える、請求項3又は請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記推進ユニットは電気モータを備え、前記電源は少なくとも1つのバッテリ及び/又は燃料電池を備える、請求項3又は請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記車輪支持組立体及び車台は、前記車台が前記車台の垂直直立位置に対して各方向に実質的に30度の角度まで傾斜するのを可能にするように構成される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記推進ユニット、電源、及び車台は、前記車両の重心が前記車台の傾斜角度にかかわらず実質的に後輪同士の間に留まるように構成される、請求項3及び請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記ポンプ構成は電気的に作動される、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記ポンプ構成は双方向ポンプを備える、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
制御構成を更に備え、前記制御構成が、前記ユーザが前記車両を操舵するのを可能にする制御デバイスを備える、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記制御構成は、第1の動作モードにおいて、前記少なくとも一方の前輪が前記制御デバイスを動作させることによって操舵可能になるように構成される、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記第1の動作モードにおいて、一方の側に力を加え、それによって、前記車台を前記力が加えられた側において下方に傾斜させることによって、一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダへの油圧流体の移動を実現することができる、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記ポンプ構成に平行に配置されたバイパス弁を更に備え、前記制御構成は、前記第1の動作モードでは、前記バイパス弁を開いて前記ポンプ構成を迂回させ、前記力を加えることによって前記車台を傾斜させるように構成される、請求項13に記載の車両。
【請求項15】
前記第2の動作モードにおいて、前記制御構成は、前記車両が前記制御デバイスの動作に応じて傾斜可能になるように前記ポンプ構成を制御するように構成される、請求項11から請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記第2の動作モードにおいて、前記少なくとも一方の前輪は自由にキャスター動作する、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードの一方を自動的に選択するように動作可能である、請求項15又は請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記制御構成は、前記車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに前記第1のモードを選択し、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上になったときに前記第2のモードを選択するように動作可能である、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項19に記載の車両。
【請求項20】
前記第1のチャンバ同士の間と前記第2のチャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げるように選択的に動作可能であり、それによって、前記車両の傾斜を選択的に抑制する停止手段を更に備える、請求項1から請求項19までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項21】
前記停止手段は、事前に定められた車両パラメータに応じて電子コントローラによって自動的に制御される、請求項20に記載の車両。
【請求項22】
前記電子コントローラは加速度計を備え、前記電子コントローラは、前記加速度計からの情報に基づいて前記停止手段を制御するように動作可能である、請求項21に記載の車両。
【請求項23】
各後輪支持体は、それぞれの後輪が前記車台に対して垂直に回動するのを可能にするように構成される、請求項1から請求項22までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項24】
各後輪用の前記後輪支持体は、前記車台の第1の端部に回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アームを備える、請求項23に記載の車両。
【請求項25】
少なくとも1つの前輪シリンダ・ハウジングを前記後輪支持体又は前記車台に連結することがショック・アブソーバを介して行われる、請求項1から請求項24までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項26】
前記ショック・アブソーバは、前記少なくとも1つのハウジングと一体であるか或いは前記少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結される、請求項25に記載の車両。
【請求項27】
前輪ピストンの少なくとも1つがショック・アブソーバによって実現される、請求項1から請求項26までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項28】
各トレーリング・スイング・アームは、前記車台に回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で前記一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備える、請求項24から請求項27までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項29】
各トレーリング・スイング・アーム用の前記油圧シリンダは、前記車台と前記一次スイング・アームとの間に連結され、前記一次スイング・アームと前記二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備える、請求項28に記載の車両。
【請求項30】
各後輪支持組立体は、前記車台の関節運動に対抗する復元力を前記車台と前記それぞれの後輪との間に加えるように構成された付勢手段を更に備える、請求項1から請求項29までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項31】
前記前輪又は各前輪及び前記後輪は、使用時に前記車台と共に傾斜するように構成される、請求項1から請求項30までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項32】
前記車両は、使用時にヨークによって前記車台に連結される単一の前輪と、前記ヨークと前記車台との間に連結された少なくとも1つの減衰手段とを備える、請求項1から請求項31までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項33】
前記減衰手段は、使用時に前記ヨークを前記車台に対して移動させるように動作可能な油圧シリンダを備える、請求項32に記載の車両。
【請求項34】
前記車両は、各々がステアリング構成によって前記車台に連結された2つの前輪を備え、前記ステアリング構成は、一対の前部油圧シリンダを有し、
各前部油圧シリンダは、前記車台及び前記ステアリング構成のうちの一方に連結されたハウジングと、前記ステアリング構成及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを有し、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各前部油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各前部油圧シリンダの前記第2のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の前部油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の前部油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、前記前部油圧シリンダの前記ピストンが変位されるようになっている、請求項1から請求項31までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項35】
前記前部油圧シリンダは、前記後部車輪支持体に取り付けられた前記油圧シリンダと流体連通する、請求項34に記載の車両。
【請求項36】
前記車台に連結され、運転者を収容するように構成された前記車両の内部空間を形成するボディを更に備える、請求項1から請求項35までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項37】
前記内部空間は完全に密閉される、請求項36に記載の車両。
【請求項38】
前記ボディに開放可能なドアが形成される、請求項36又は請求項37に記載の車両。
【請求項39】
車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両を傾斜させる方法であって、
各後輪が、前記それぞれの後輪が前記車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって前記車台に連結され、
前記油圧シリンダが、前記車台及び前記輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、前記後輪支持体及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバの前記ポート同士が流体連通する方法において、
油圧流体を一方の油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動させて前記油圧シリンダの前記ピストンを前記それぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位させ、かつ、前記車台を表面に対して関節運動させるようにポンプ構成を選択的に制御するステップを含む方法。
【請求項40】
傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記後輪を駆動する推進ユニットと、前記車両を操舵する制御デバイスを有する制御構成とを備え、
前記制御構成が、車両パラメータを求め、前記車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するように動作可能であり、
前記第1の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が前記制御デバイスによって直接操舵できるように構成されるとともに、前記車台が前記車両のユーザの動きによって傾斜できるように構成され、
前記第2の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作するように構成されるとともに、前記制御構成が前記制御デバイスの動作に応答して前記車台を傾斜させて前記車両を操舵するように構成される車両。
【請求項41】
前記制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードのうちの一方を自動的に選択するように動作可能である、請求項40に記載の車両。
【請求項42】
前記制御構成は、前記車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに前記第1のモードを選択し、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上になったときに前記第2のモードを選択するように動作可能である、請求項40又は請求項41に記載の車両。
【請求項43】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項40、請求項41、又は請求項42に記載の車両。
【請求項44】
前記制御構成は、前記第1の動作モードのときに、前記制御デバイスと前記少なくとも1つの前輪との機械的連結部又は油圧連結部に係合し、前記第2の動作モードのときに機械的連結部又は油圧連結部から係合解除されるように動作可能である、請求項40から請求項43までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項45】
ヨークによって前記車台に連結される単一の前輪を備え、前記第1のモードでは、前記前輪が油圧手段によって操舵可能である、請求項40から請求項44までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項46】
前記油圧手段は、前記ヨークと前記車台との間に連結された少なくとも1つの油圧シリンダを備える、請求項45に記載の車両。
【請求項47】
前記油圧シリンダはポンプによって動作可能であり、前記ポンプが前記制御デバイスによって制御される、請求項46に記載の車両。
【請求項48】
2つの前記を備える、請求項40から請求項44までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項49】
各前輪は、2対の支持アームによって前記車台に連結される、請求項48に記載の車両。
【請求項50】
前記車両の各側において少なくとも一対の支持アームと前記車両の車台との間にダンパーが設けられる、請求項49に記載の車両。
【請求項51】
各ダンパーは油圧シリンダを備える、請求項50に記載の車両。
【請求項52】
前記油圧シリンダは、前記第2のモードのときに前記制御構成によって動作可能である、請求項51に記載の車両。
【請求項53】
両方のダンパー間を延びるブリッジング・リンケージによって前記ダンパー同士が連結される、請求項51に記載の車両。
【請求項54】
傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを有する制御構成とを備える車両を操舵する方法であって、
車両パラメータを求めるステップと、
前記車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するステップとを含み、
前記第1の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が前記制御デバイスによって操舵可能であり、前記車台が、前記車両のユーザの動きによって傾斜することができ、
前記第2の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作し、前記制御構成が、前記制御デバイスの動作に応答して前記車台を傾斜させて前記車両を操舵する方法。
【請求項55】
前記車両の各後輪は、ハウジングとピストンとを備える油圧シリンダによって車台に連結され、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバのポート同士が流体連通し、
前記第1の動作モードにおいて前記ユーザによって前記車両を傾斜させるステップは、一方の側に力を加えることによって油圧流体を一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダに移動させるステップを含み、それによって、前記車台を、前記力が加えられた側において下向きに傾斜させるようになっている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の動作モードにおいて、前記傾斜は、油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに送ることによって実施される、請求項54又は請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される、請求項54、請求項55、又は請求項56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のモードは、前記車両の速度が事前に定められた値よりも小さいときに選択され、前記第2のモードは、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上であるときに選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
車台と、2つの表面係合型前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記前輪又は後輪のいずれかを駆動する推進ユニットとを備える車両用のステアリング構成であって、
前記車両の車台と一緒に移動可能な中央部材と、
それぞれの前輪に連結される一対のホイール・ハブと、
各対の上部支持アームが前記中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに独立に回動可能に連結された2対の上部支持アームと、
各対の下部支持アームが前記中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに独立に回動可能に連結された2対の下部支持アームと、
各々が前記中央部材とそれぞれの下部支持アームの少なくとも一方との間を延びる2つのダンパー組立体と、
前記前輪のステアリングを制御する制御デバイスとを備え、前記制御デバイスによる前記前輪のステアリングを可能にし、表面に対する前記前輪の傾斜を可能にするように動作可能であるステアリング構成。
【請求項61】
各ダンパー組立体間に連結された横材を更に備える、請求項60に記載のステアリング構成。
【請求項62】
前記横材は、少なくとも1つの回動可能な連結部によって接合された少なくとも2つのセグメントを備える成形された部材を備える、請求項61に記載のステアリング構成。
【請求項63】
前記横材は、少なくとも1つのリンケージ・ワイヤ・プリー構成を備える、請求項61又は請求項62に記載のステアリング構成。
【請求項64】
各対の支持アームは、それぞれのホイール・ハブに隣接する端部の所で互いに連結される、請求項60から請求項63までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項65】
各対の支持アームは、中央部材に隣接する端部の所で支持部材によって互いに連結され、三角形又は「A字」形を形成する、請求項64に記載のステアリング構成。
【請求項66】
前記制御デバイスは、一対又は複数対のリンケージ・アームによって前記ホイール・ハブに連結される、請求項60から請求項65までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項67】
前記制御デバイスは、ギア・リンケージによってリンケージ・アームに連結されたステアリング・コラムに連結される、請求項66に記載のステアリング構成。
【請求項68】
前記ギア・リンケージは、一対の傘歯車を備える、請求項59に記載のステアリング構成。
【請求項69】
前記制御デバイスは、前記前輪が自由にキャスター動作できるように選択的に係合解除可能である、請求項60から請求項68までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項70】
各ダンパー組立体は、前記車両が直立位置にあるときに前記地面に対して鋭角に配置されるか或いは平行に配置される、請求項60から請求項69までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項71】
各ダンパー組立体は油圧シリンダを備える、請求項60から請求項70までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項72】
請求項60から請求項71までのいずれか一項に記載のステアリング構成を備える四輪車両。
【請求項1】
車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、を備える車両であって、
各後輪が、それぞれの後輪が前記車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と、油圧シリンダとを有する車輪支持組立体によって前記車台に連結され、
前記油圧シリンダが、前記車台及び前記後輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、前記後輪支持体及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを有し、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバのポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、前記油圧シリンダの前記ピストンが前記それぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位し、前記車台が地面に対して関節運動し、
前記車両がポンプ構成を更に備え、油圧流体の移動が前記ポンプ構成によって選択的に制御される車両。
【請求項2】
前記推進ユニットの少なくとも一部は、実質的に前記車輪支持組立体同士の間又は前記後輪同士の間に配置される、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
電源を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電源の少なくとも一部は、前記車輪支持組立体同士の間又は前記後輪同士の間に配置される、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記推進ユニットは内燃機関を備え、前記電源は燃料タンクを備える、請求項3又は請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記推進ユニットは電気モータを備え、前記電源は少なくとも1つのバッテリ及び/又は燃料電池を備える、請求項3又は請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記車輪支持組立体及び車台は、前記車台が前記車台の垂直直立位置に対して各方向に実質的に30度の角度まで傾斜するのを可能にするように構成される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記推進ユニット、電源、及び車台は、前記車両の重心が前記車台の傾斜角度にかかわらず実質的に後輪同士の間に留まるように構成される、請求項3及び請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記ポンプ構成は電気的に作動される、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記ポンプ構成は双方向ポンプを備える、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
制御構成を更に備え、前記制御構成が、前記ユーザが前記車両を操舵するのを可能にする制御デバイスを備える、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記制御構成は、第1の動作モードにおいて、前記少なくとも一方の前輪が前記制御デバイスを動作させることによって操舵可能になるように構成される、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記第1の動作モードにおいて、一方の側に力を加え、それによって、前記車台を前記力が加えられた側において下方に傾斜させることによって、一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダへの油圧流体の移動を実現することができる、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記ポンプ構成に平行に配置されたバイパス弁を更に備え、前記制御構成は、前記第1の動作モードでは、前記バイパス弁を開いて前記ポンプ構成を迂回させ、前記力を加えることによって前記車台を傾斜させるように構成される、請求項13に記載の車両。
【請求項15】
前記第2の動作モードにおいて、前記制御構成は、前記車両が前記制御デバイスの動作に応じて傾斜可能になるように前記ポンプ構成を制御するように構成される、請求項11から請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記第2の動作モードにおいて、前記少なくとも一方の前輪は自由にキャスター動作する、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードの一方を自動的に選択するように動作可能である、請求項15又は請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記制御構成は、前記車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに前記第1のモードを選択し、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上になったときに前記第2のモードを選択するように動作可能である、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項19に記載の車両。
【請求項20】
前記第1のチャンバ同士の間と前記第2のチャンバ同士の間の少なくとも一方における流体の流れを妨げるように選択的に動作可能であり、それによって、前記車両の傾斜を選択的に抑制する停止手段を更に備える、請求項1から請求項19までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項21】
前記停止手段は、事前に定められた車両パラメータに応じて電子コントローラによって自動的に制御される、請求項20に記載の車両。
【請求項22】
前記電子コントローラは加速度計を備え、前記電子コントローラは、前記加速度計からの情報に基づいて前記停止手段を制御するように動作可能である、請求項21に記載の車両。
【請求項23】
各後輪支持体は、それぞれの後輪が前記車台に対して垂直に回動するのを可能にするように構成される、請求項1から請求項22までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項24】
各後輪用の前記後輪支持体は、前記車台の第1の端部に回動可能に取り付けられ、第2の端部の所に後輪を保持するトレーリング・スイング・アームを備える、請求項23に記載の車両。
【請求項25】
少なくとも1つの前輪シリンダ・ハウジングを前記後輪支持体又は前記車台に連結することがショック・アブソーバを介して行われる、請求項1から請求項24までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項26】
前記ショック・アブソーバは、前記少なくとも1つのハウジングと一体であるか或いは前記少なくとも1つのハウジングにしっかりと連結される、請求項25に記載の車両。
【請求項27】
前輪ピストンの少なくとも1つがショック・アブソーバによって実現される、請求項1から請求項26までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項28】
各トレーリング・スイング・アームは、前記車台に回動可能に連結された一次スイング・アームと、第1の端部の所で前記一次スイング・アームに回動可能に連結され、他方の端部の所で後輪を保持する二次スイング・アームとを備える、請求項24から請求項27までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項29】
各トレーリング・スイング・アーム用の前記油圧シリンダは、前記車台と前記一次スイング・アームとの間に連結され、前記一次スイング・アームと前記二次スイング・アームとの間に連結されたショック・アブソーバを備える、請求項28に記載の車両。
【請求項30】
各後輪支持組立体は、前記車台の関節運動に対抗する復元力を前記車台と前記それぞれの後輪との間に加えるように構成された付勢手段を更に備える、請求項1から請求項29までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項31】
前記前輪又は各前輪及び前記後輪は、使用時に前記車台と共に傾斜するように構成される、請求項1から請求項30までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項32】
前記車両は、使用時にヨークによって前記車台に連結される単一の前輪と、前記ヨークと前記車台との間に連結された少なくとも1つの減衰手段とを備える、請求項1から請求項31までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項33】
前記減衰手段は、使用時に前記ヨークを前記車台に対して移動させるように動作可能な油圧シリンダを備える、請求項32に記載の車両。
【請求項34】
前記車両は、各々がステアリング構成によって前記車台に連結された2つの前輪を備え、前記ステアリング構成は、一対の前部油圧シリンダを有し、
各前部油圧シリンダは、前記車台及び前記ステアリング構成のうちの一方に連結されたハウジングと、前記ステアリング構成及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを有し、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各前部油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各前部油圧シリンダの前記第2のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、それによって、油圧流体が一方の前部油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の前部油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動したときに、前記前部油圧シリンダの前記ピストンが変位されるようになっている、請求項1から請求項31までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項35】
前記前部油圧シリンダは、前記後部車輪支持体に取り付けられた前記油圧シリンダと流体連通する、請求項34に記載の車両。
【請求項36】
前記車台に連結され、運転者を収容するように構成された前記車両の内部空間を形成するボディを更に備える、請求項1から請求項35までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項37】
前記内部空間は完全に密閉される、請求項36に記載の車両。
【請求項38】
前記ボディに開放可能なドアが形成される、請求項36又は請求項37に記載の車両。
【請求項39】
車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記後輪を駆動する推進ユニットとを備える車両を傾斜させる方法であって、
各後輪が、前記それぞれの後輪が前記車台に対して移動するのを可能にする後輪支持体と油圧シリンダとを備える車輪支持組立体によって前記車台に連結され、
前記油圧シリンダが、前記車台及び前記輪支持体のうちの一方に連結されたハウジングと、前記後輪支持体及び前記車台のうちの他方に連結されたピストンとを備え、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバの前記ポート同士が流体連通する方法において、
油圧流体を一方の油圧シリンダの前記第1又は第2のチャンバから他方の油圧シリンダの前記それぞれの第1又は第2のチャンバに移動させて前記油圧シリンダの前記ピストンを前記それぞれのハウジングに対して互いに逆方向に変位させ、かつ、前記車台を表面に対して関節運動させるようにポンプ構成を選択的に制御するステップを含む方法。
【請求項40】
傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記後輪を駆動する推進ユニットと、前記車両を操舵する制御デバイスを有する制御構成とを備え、
前記制御構成が、車両パラメータを求め、前記車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するように動作可能であり、
前記第1の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が前記制御デバイスによって直接操舵できるように構成されるとともに、前記車台が前記車両のユーザの動きによって傾斜できるように構成され、
前記第2の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作するように構成されるとともに、前記制御構成が前記制御デバイスの動作に応答して前記車台を傾斜させて前記車両を操舵するように構成される車両。
【請求項41】
前記制御構成は、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される少なくとも1つの車両パラメータに基づいて前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードのうちの一方を自動的に選択するように動作可能である、請求項40に記載の車両。
【請求項42】
前記制御構成は、前記車両の速度が事前に定められた値よりも遅いときに前記第1のモードを選択し、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上になったときに前記第2のモードを選択するように動作可能である、請求項40又は請求項41に記載の車両。
【請求項43】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項40、請求項41、又は請求項42に記載の車両。
【請求項44】
前記制御構成は、前記第1の動作モードのときに、前記制御デバイスと前記少なくとも1つの前輪との機械的連結部又は油圧連結部に係合し、前記第2の動作モードのときに機械的連結部又は油圧連結部から係合解除されるように動作可能である、請求項40から請求項43までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項45】
ヨークによって前記車台に連結される単一の前輪を備え、前記第1のモードでは、前記前輪が油圧手段によって操舵可能である、請求項40から請求項44までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項46】
前記油圧手段は、前記ヨークと前記車台との間に連結された少なくとも1つの油圧シリンダを備える、請求項45に記載の車両。
【請求項47】
前記油圧シリンダはポンプによって動作可能であり、前記ポンプが前記制御デバイスによって制御される、請求項46に記載の車両。
【請求項48】
2つの前記を備える、請求項40から請求項44までのいずれか一項に記載の車両。
【請求項49】
各前輪は、2対の支持アームによって前記車台に連結される、請求項48に記載の車両。
【請求項50】
前記車両の各側において少なくとも一対の支持アームと前記車両の車台との間にダンパーが設けられる、請求項49に記載の車両。
【請求項51】
各ダンパーは油圧シリンダを備える、請求項50に記載の車両。
【請求項52】
前記油圧シリンダは、前記第2のモードのときに前記制御構成によって動作可能である、請求項51に記載の車両。
【請求項53】
両方のダンパー間を延びるブリッジング・リンケージによって前記ダンパー同士が連結される、請求項51に記載の車両。
【請求項54】
傾斜するように構成された車台と、少なくとも1つの前輪と、2つの表面係合型後輪と、後輪を駆動する推進ユニットと、車両を操舵する制御デバイスを有する制御構成とを備える車両を操舵する方法であって、
車両パラメータを求めるステップと、
前記車両パラメータに基づいて第1の動作モード及び第2の動作モードのうちの一方を選択するステップとを含み、
前記第1の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が前記制御デバイスによって操舵可能であり、前記車台が、前記車両のユーザの動きによって傾斜することができ、
前記第2の動作モードでは、前記少なくとも1つの前輪が自由にキャスター動作し、前記制御構成が、前記制御デバイスの動作に応答して前記車台を傾斜させて前記車両を操舵する方法。
【請求項55】
前記車両の各後輪は、ハウジングとピストンとを備える油圧シリンダによって車台に連結され、
前記ピストンが、前記ハウジング内で移動可能であり、前記油圧シリンダを、第1のチャンバ及び第2のチャンバに分割するように構成され、各チャンバは油圧流体をそれぞれのチャンバに流入及び流出させるポートを有し、
各油圧シリンダの前記第1のチャンバの前記ポート同士が流体連通し、各油圧シリンダの前記第2のチャンバのポート同士が流体連通し、
前記第1の動作モードにおいて前記ユーザによって前記車両を傾斜させるステップは、一方の側に力を加えることによって油圧流体を一方の油圧シリンダから別の油圧シリンダに移動させるステップを含み、それによって、前記車台を、前記力が加えられた側において下向きに傾斜させるようになっている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の動作モードにおいて、前記傾斜は、油圧流体を一方のシリンダから別のシリンダに送ることによって実施される、請求項54又は請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの車両パラメータは、車両速度、車両加速度、車両ターン速度、車両方向の群から選択される、請求項54、請求項55、又は請求項56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のモードは、前記車両の速度が事前に定められた値よりも小さいときに選択され、前記第2のモードは、前記車両の速度が前記事前に定められた値以上であるときに選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記事前に定められた値は5km/h〜30km/hの範囲である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
車台と、2つの表面係合型前輪と、2つの表面係合型後輪と、前記前輪又は後輪のいずれかを駆動する推進ユニットとを備える車両用のステアリング構成であって、
前記車両の車台と一緒に移動可能な中央部材と、
それぞれの前輪に連結される一対のホイール・ハブと、
各対の上部支持アームが前記中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに独立に回動可能に連結された2対の上部支持アームと、
各対の下部支持アームが前記中央部材及びそれぞれのホイール・ハブに独立に回動可能に連結された2対の下部支持アームと、
各々が前記中央部材とそれぞれの下部支持アームの少なくとも一方との間を延びる2つのダンパー組立体と、
前記前輪のステアリングを制御する制御デバイスとを備え、前記制御デバイスによる前記前輪のステアリングを可能にし、表面に対する前記前輪の傾斜を可能にするように動作可能であるステアリング構成。
【請求項61】
各ダンパー組立体間に連結された横材を更に備える、請求項60に記載のステアリング構成。
【請求項62】
前記横材は、少なくとも1つの回動可能な連結部によって接合された少なくとも2つのセグメントを備える成形された部材を備える、請求項61に記載のステアリング構成。
【請求項63】
前記横材は、少なくとも1つのリンケージ・ワイヤ・プリー構成を備える、請求項61又は請求項62に記載のステアリング構成。
【請求項64】
各対の支持アームは、それぞれのホイール・ハブに隣接する端部の所で互いに連結される、請求項60から請求項63までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項65】
各対の支持アームは、中央部材に隣接する端部の所で支持部材によって互いに連結され、三角形又は「A字」形を形成する、請求項64に記載のステアリング構成。
【請求項66】
前記制御デバイスは、一対又は複数対のリンケージ・アームによって前記ホイール・ハブに連結される、請求項60から請求項65までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項67】
前記制御デバイスは、ギア・リンケージによってリンケージ・アームに連結されたステアリング・コラムに連結される、請求項66に記載のステアリング構成。
【請求項68】
前記ギア・リンケージは、一対の傘歯車を備える、請求項59に記載のステアリング構成。
【請求項69】
前記制御デバイスは、前記前輪が自由にキャスター動作できるように選択的に係合解除可能である、請求項60から請求項68までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項70】
各ダンパー組立体は、前記車両が直立位置にあるときに前記地面に対して鋭角に配置されるか或いは平行に配置される、請求項60から請求項69までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項71】
各ダンパー組立体は油圧シリンダを備える、請求項60から請求項70までのいずれか一項に記載のステアリング構成。
【請求項72】
請求項60から請求項71までのいずれか一項に記載のステアリング構成を備える四輪車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2013−516354(P2013−516354A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547548(P2012−547548)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050018
【国際公開番号】WO2011/083335
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512178710)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050018
【国際公開番号】WO2011/083335
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512178710)
【Fターム(参考)】
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