車体構造
【課題】本発明は、車体前部の側部にフロントピラーとサブウインドウ開口部を備えた車体構造において、確実にフロントピラーとボンネットとの間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部の前端部分の視界を向上することができる車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂で成形されたピラーガーニッシュ51は、側面視で、ボンネット側端部2aの緩やかな傾斜角α1と、フロントピラー52の急な傾斜角α2が滑らかに連続するように、下凸状に湾曲して、弓形に反った円弧形状として構成している。
【解決手段】樹脂で成形されたピラーガーニッシュ51は、側面視で、ボンネット側端部2aの緩やかな傾斜角α1と、フロントピラー52の急な傾斜角α2が滑らかに連続するように、下凸状に湾曲して、弓形に反った円弧形状として構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体構造に関し、特に、車体前部の側部に三角窓等のサブウインドウとフロントピラーを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミニバン等の自動車において、車体前部の側方視界を向上するためフロントピラーの下部に三角窓等のサブウインドウを設けることが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントピラーの下部に三角窓を設ける車体構造が開示されており、これにより、車体前部の側方視界を向上している。
【0004】
この特許文献1では、さらに、その周辺構造であるエプロンレインメンバ等も開示され、この三角窓周辺が複数の構成要素で構成されていることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−103360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サブウインドウの視界は、サブウインドウの形状によって変化するが、このサブウインドウ形状は、フロントピラーの傾斜角等により決定される。一般に、フロントピラーは、その上部を車体後方側に傾斜するように配置されるが、この傾斜角はボンネットの傾斜角に比して急に設定されていることから、通常フロントピラーは、側面視でボンネットとの間で角部を有した状態で配置されることになる。
【0006】
このようにフロントピラーがボンネットとの間で角部を持って配置されると、必然的に、サブウインドウの前端角部も略鋭角の前下がり形状に形成するしかなく、サブウインドウ前端の視界が制限されることになる。
【0007】
こうしたことから、フロントピラーとボンネットとの間の車体外表面を、下凸の円弧形状に形成して、サブウインドウの前端角部を、前上がりに円弧形状に構成することが考えられる。
【0008】
しかし、フロントピラーとボンネットとの間の車体外表面を、フロントピラー等の金属材料で形成した場合には、下凸の円弧形状に延びる頂部(ピラー長手方向に延びる峰部)と、フロントウインドウガラス側端部を支持する直線状に延びる支持フランジ(基部)とが、フロントピラー下方に向うに従って大きく離間してしまうため、プレス成形で行なうのが困難になり、十分な下凸の円弧形状を形成することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、車体前部の側部にフロントピラーとサブウインドウ開口部を備えた車体構造において、確実にフロントピラーとボンネットとの間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部の前端部分の視界を向上することができる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車体構造は、車体側部のドアヒンジピラーの上方にサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部を設け、該サブウインドウ開口部の上方に前傾したフロントウインドウガラスの両端部を支持するフロントピラーを設け、該フロントピラーの前方にボンネットを設け、前記サブウインドウ開口部の下方にホイールハウスを有するフロントフェンダーを配置した車体構造であって、前下がりに傾斜した前記フロントピラーと該フロントピラーの傾斜角より小さく傾斜した前記ボンネットの側端部との間に、側面視で該フロントピラー部と該ボンネット側端部が連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュを配置して、該樹脂製のピラーガーニッシュの下凸の円弧形状の下縁と前記フロントフェンダーの車体前後方向に延びる上縁との間に、前記サブウインドウガラスを配置したものである。
【0011】
上記構成によれば、フロントピラーとボンネットとの間を、樹脂製のピラーガーニッシュで構成することで、金属材料ではプレス成形が困難な「下凸の円弧形状」を容易に成形することができる。
このため、フロントピラーとボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラスの上縁形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
【0012】
発明の一実施態様においては、前記ピラーガーニッシュと前記フロントフェンダーとの間の前記サブウインドウガラスの前方に、フェンダーガーニッシュを配置したものである。
上記構成によれば、サブウインドウガラスの前方にフェンダーガーニッシュを配置することで、車体側部に、サブウインドウガラスとフェンダーガーニッシュとからなるベルトライン面部を形成することができる。
よって、車体側部に、車体パネルとは異なるベルトライン面部を形成することで、車体側部の外観上の美感を向上できる。特に、フェンダーガーニッシュを設けたことで、サブウインドウガラスの前端形状の処理を比較的自由に行なうことができ、サブウインドウガラスの前端部分の見栄えの悪化を防止することができる。
なお、フェンダーガーニッシュは、サブウインドウガラスと同様に、外表面が透明又は半透明のクリアタイプであってもよいし、色彩を有する有色タイプであってもよい。
【0013】
発明の一実施態様においては、前記フロントフェンダーの上部に上方に突出する取付部を設けて、該取付部でフロントフェンダーを車体側部に固定し、該取付部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように前記フェンダーガーニッシュを配置したものである。
上記構成によれば、フロントフェンダーの締結固定部を、フェンダーガーニッシュを利用して、車体外表面から隠蔽することができる。
このため、車体側部にフロントフェンダー上部の締結固定部を設定しても、車体外表面に締結固定部が露出することがなく、また、この締結固定部を隠蔽する部材がフェンダーガーニッシュであるため、フロントフェンダー交換時、サブウインドウガラスを取り外すことなく、フェンダーガーニッシュのみを取り外すだけで、フロントフェンダーを着脱することができる。
よって、車体側部の外観の悪化を防止しつつも、フロントフェンダーの交換時の着脱作業も容易に行なうことができる。
【0014】
発明の一実施態様においては、前記フェンダーガーニッシュの前方に、ヘッドランプを配置して、該ヘッドランプ、前記サブウインドウガラス、及びフェンダーガーニッシュによって、車体前後方向に連続するベルトライン面部を形成したものである。
【0015】
上記構成によれば、ヘッドランプも含め、サブウインドウガラスとフェンダーガーニッシュとで、ベルトライン面部を形成することで、車体パネルと異なるベルトライン面部を、車体側部で車体前後方向に延びるように形成できる。
このため、車体前部の側方部分における、車外からの視認性を高めることができる。
よって、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部が車体のベルトライン位置で車体前後方向に延びることで、車体全体の美感も向上することができる。
【0016】
発明の一実施態様においては、前記ピラーガーニッシュと前記ボンネット側端部の合わせラインと、前記フェンダーガーニッシュと前記ヘッドランプの合わせラインとを、上下方向に一致するように設定したものである。
上記構成によれば、樹脂製のピラーガーニッシュとボンネット側端部の合わせラインとフェンダーガーニッシュとヘッドランプの合わせラインとで、上下方向に延びる凹状の溝部を、車体側部に形成することになる。
このため、車体側部等に付着した雨水等を、この凹状の合わせラインに沿って、円滑に下方に流れ落とすことができる(合わせラインのストリームライン化)。
よって、樹脂製のピラーガーニッシュとボンネット、フェンダーガーニッシュとヘッドランプといった複数の構成要素を車体側部に配置して、合わせラインが複数形成される場合であっても、確実に雨水等を車体下方に案内することができ、雨水等による汚れ付着を防止することができる。また、合わせラインが上下で一致することで、車体側部の美感も向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フロントピラーとボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラスの上縁形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
よって、車体前部の側部にフロントピラーとサブウインドウ開口部を備えた車体構造において、確実にフロントピラーとボンネットとの間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部の前端部分の視界を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0019】
まず、図1〜図11により、第一実施形態について説明する。図1は本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図、図2はその車体構造の前部側部の側面図、図3はサブウインドウガラス等を分解した分解斜視図、図4はフロントフェンダー等を分解した分解斜視図、図5はサブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図、図6は図1のA−A線矢視断面図、図7は図1のB−B線矢視断面図、図8は図1のC−C線矢視断面図、図9はフロントフェンダーの車体内方側の斜視図、図10は図9のD−D線矢視断面図、図11は図9のE−E線矢視断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の自動車は、車体前部に設けられるエンジンルームE部分が前後に短い、所謂ミニバンタイプの車体構造1で構成される。
この車体構造1は、エンジンルームEの上方に前傾して設置されるボンネット2と、エンジンルームEの前方で車幅方向にわたって設置されるフロントバンパー3と、エンジンルームEの側方に車体前後方向にわたって設置されてホイールアーチHを下部に形成するフロントフェンダー4と、そのフロントフェンダー4の後方に連なるように設置されるフロントドア5と、ボンネット2後方で上方に向って傾斜設置されるフロントウインドウガラス6と、フロントウインドウガラス6の後方で略水平状に配置されるルーフパネル7とを備える。また、フロントフェンダー4の内方には、エンジンルームEの側壁上縁を構成するエプロンレインメンバ8を配置している。このエプロンレインメンバ8の上方には、前述のボンネット2が延在している。
【0021】
そして、この車体側部には、車体前後方向に延びるように、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、それぞれ車体前方側から順に配置している。
【0022】
このヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30は、共に外表面が透明又は半透明となっており、これらが車体側面の中央付近で水平線状(所謂ベルトライン)に位置することで、車体側面に光の反射率の高い透明又は半透明のベルトライン面部Fを構成している。
【0023】
図2に示すように、このベルトライン面部Fは、車体前端から車体後方側にかけて直線状に延びるとともに、ヘッドランプ10前端部の幅t1と、クリアガーニッシュ20の幅t2と、サブウインドウガラス30の幅t3とが、t1<t2<t3となるように車体前方側から車体後方側に向かうにしたがって、徐々に幅広となるように設定している。
【0024】
そして、各部材10,20,30の下端縁11,21,31を直線状に形成し、上端縁12,22,32をなだらかな湾曲線状に形成することで、ベルトライン面部Fが一体となって車外から視認されるように構成している。
【0025】
また、この実施形態では、ベルトライン面部Fの後方に、フロントドア5のドアウインドウガラス50が位置するように設定している。このため、ドアウインドウガラス50も含めて、透明又は半透明領域を構成することができ、車体側面に、より広い範囲の透明又は半透明領域を形成することができる。
【0026】
ベルトライン面部Fの上方には、車体前方から、ボンネット側端部2a、ピラーガーニッシュ51、それとフロントピラー52が順に配置され、各部材の形状は、側面視で、ベルトライン面部Fの上端縁と略一致するように湾曲形成されている。
なお、ここでフロントピラー52は、前述のフロントウインドウガラス6の側端部を支持して上下方向に延在している。
【0027】
特に、樹脂で成形されたピラーガーニッシュ51は、図2に示すように、側面視で、ボンネット側端部2aの緩やかな傾斜角α1と、フロントピラー52の急な傾斜角α2が滑らかに連続するように、下凸に湾曲して、弓形に反った円弧形状として構成することで、ボンネット側端部2aとフロントピラー52の間の外表面を補間している。なお、「補間」とは、フロントピラー52下部とボンネット側端部2aとの間の空隙領域に位置して車体外表面を構成することをいう。
このため、外観上、ボンネット側端部2aとフロントピラー52が連続しているように視認されることになる。
【0028】
また、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aとの合わせラインL1と、ヘッドランプ10とクリアガーニッシュ20との合わせラインL2とは、上下方向で略一致するように設定して、車両後方側に傾斜するように設定している。このため、この合わせラインL1,L2により、車体側部に上下方向に延びる凹状の溝が形成されることになり、車体側部等に付着した雨水等を、容易に車体下部に案内することができる。
【0029】
次に、ベルトライン面部Fを構成する車体構造について説明する。
このベルトライン面部Fは、図3に示すように、車体前部の側面部に形成したベルトライン凹部60に、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を収容することで構成している(図3では、クリアガーニッシュ20とサブウインドウガラス30を分解した状態を図示)。
【0030】
このベルトライン凹部60は、上部をボンネット側端部2a、ピラーガーニッシュ51の下端縁部51a、フロントピラー52の下縁部52aで、下部をフロントフェンダー4の上端縁部4aで挟まれ、さらに、前部をフロントバンパー3のヘッドランプ切欠縁部3aで仕切られ、車体外表面から一段凹んだ領域で構成している。
【0031】
このベルトライン凹部60に対して、ヘッドランプ10を締結固定によって固定して、クリアガーニッシュ20をクリップ固定によって固定して、サブウインドウガラス30を接着固定によって固定することで、フロントフェンダー4とボンネット2との間の車体外表面を、連続させるように構成している。
【0032】
クリアガーニッシュ20については、その裏面に複数(4つ)のクリップ脚21…を設けて、その対応するガーニッシュプレート20Pに複数(4つ)の係止穴22…を設け、クリアガーニッシュ20を車幅方向外方から押圧し、クリップ脚21を係止穴22に係合させることで、ベルトライン凹部60に嵌合装着している。
【0033】
一方、サブウインドウガラス30については、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aの周囲に接着剤を塗布して、車幅方向外方から組付け、サブウインドウ開口部30A周縁にサブウインドウガラス30を接着固定することで、ベルトライン凹部60に嵌合装着している。
【0034】
こうしてサブウインドウガラス30を接着固定とすることで、車外からの雨水等の浸入を防ぐことができ、サブウインドウ開口部30Aの防水性を高めることができる。
【0035】
これに対して、クリアガーニッシュ20については、クリップ固定としたことで、車体から取り外し自在とすることができる。このため、フロントフェンダー4を修理する際に、自由に着脱することができ、フロントフェンダー4の修復性を確保することができる。
【0036】
なお、このサブウインドウ開口部30Aに接着されるサブウインドウガラス30は、図3に示すように、前端上縁33が角部となった略台形形状のガラス体で構成しており、通常の三角形状のものよりも、前端上縁33部分のガラス領域を増加させている。
【0037】
これは、前述のようにピラーガーニッシュ51の下端縁部51aを下凸の円弧形状に形成したことで、その前端部分を前上がりに形成できるため、このような形状にできるのであるが、このため、サブウインドウガラス30は、従来のものより、前端部分の可視領域を広げることができる。
【0038】
また、図4に示すように、フロントフェンダー4は、車体から自由に取り外すことができるように構成している。
【0039】
具体的には、クリップ固定されたクリアガーニッシュ20(図3参照)を工具等で取り外し、フロントフェンダー4上部の締結固定部42を露出させ(図3参照)、この締結固定部42に位置する締結ボルト41,41(図4参照)を、取り外すことで、フロントフェンダー4を車体から取り外すことができる。
【0040】
フロントフェンダー4の上部には、締結固定部たる締結フランジ42,42を上方に突出するように二つ設け、フロントフェンダー4上部を、車体に締結固定できるように構成している。
【0041】
さらに、フロントフェンダー4の後部には、ウィンカーランプ(方向指示燈)44を装着する開口45を設け、その開口45に対応する車幅方向内方側に、フロントフェンダー4を車体(ドアヒンジピラー70)に締結固定する取付けガセット46を設けている。
【0042】
また、フロントフェンダー4の前部や下部にも、同様に、車体に対して取り外し可能となる締結固定部を設けているが、従来と同様の構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0043】
一方、ピラーガーニッシュ51については、後述するようにフロントピラー52にクリップ固定によって固定するように構成している。
【0044】
ベルトライン面部Fの車体内方側の車体構造は、さらに図5に示すように、複数の構成要素を組み合わせることで構成している。
【0045】
この車体構造は、前述のフロントフェンダー4に加え、上下方向に延びてフロントピラー52の外表面を構成するピラーアウタパネル61と、車体前後方向に延びてエンジンルームE側端上縁を構成するエプロンレインメンバ8と、サブウインドウ開口部30A周囲に位置してサブウインドウ開口部30Aの剛性を高めるピラーレイン62と、車室内方側に位置してフロントピラー52の内表面を構成するピラーインナパネル63とを備え、このうち、ピラーアウタパネル61、エプロンレインメンバ8、ピラーレイン62及びピラーインナパネル63の4つの構成要素を接合することで、構成している。
【0046】
前述のピラーアウタパネル61は、上部にフロントピラー52の外表面を構成する曲面形状の化粧面61aを設け、その下部に一段低くなった絞り部61bを設けている。また、絞り部61bの上面中央には、ピラーガーニッシュ51をクリップ固定するために二つの差込孔53,53を形成している。
【0047】
また、このピラーアウタパネル61は、後端位置に化粧面61aから下方に延びる縦梁部61cを設けることで、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aを形成している。そして、このサブウインドウ開口部30Aの周囲に、前述のサブウインドウガラス30を接着固定する接着座部61dを形成している。
【0048】
また、この接着座部61dからサブウインドウ開口部30A中心側の一段奥まった位置には、ピラーインナパネル63と接合を行なう接合フランジ61eを設けている。さらに、接着座部61dの前方に、折り曲げ形成した段差接合部61fを設けている。この段差接合部61fを設けることで、エプロンレインメンバ8に溶接する際に生じる「熱歪み」が、サブウインドウ開口部30A周囲の接着座部61dに生じないようにしている。
【0049】
前述のエプロンレインメンバ8は、車体前後方向に延びる上下二段の閉断面を有する前後メンバ部8aと、その後方位置でフロントピラー52側(上方側)とドアヒンジピラー側(下方側)にそれぞれ分岐して延びる分岐メンバ部8bとを設け、サブウインドウ開口部30A前方の骨格部材として車体剛性を確保している。また、分岐メンバ部8bの上方には、ボンネット2後端の回転ヒンジ(図示せず)を固定するヒンジブラケット64を設けている。
【0050】
前述のピラーレイン62は、ピラーアウタパネル61のサブウインドウ開口部30Aに対応するように三角形状の開口62aを形成した略三角形のパネル体で構成している。上端縁62b、前端縁62c及び下端縁62dを、車幅方向内方側に折り曲げると共に、前端縁62cと下端縁62dには、上下方向に延びる接合フランジ62eを設けている。
【0051】
前述のピラーインナパネル63は、斜め上方に延びるピラーメンバ部63aと、サブウインドウ開口部30A周囲に位置する三角枠部63bとを設け、フロントピラー52の内側面を構成している。このうち、三角枠部63bには、その中心側に車幅方向外方側に突出する棚部63cを形成し、その内端には、ピラーアウタパネル61に接合される接合フランジ63eを形成している。
【0052】
このように構成された各構成要素は、エプロンレインメンバ8の後端に対して、車幅方向の両側からピラーアウタパネル61の前端とピラーインナパネル63の前端を挟み込むようにして組み合わせ、さらに、このピラーアウタパネル61とピラーインナパネル63との間でピラーレイン62を挟持し、各構成要素の接合フランジ等を溶接ガン(図示せず)で溶接することで、車体構造を構成している。
【0053】
図6の断面図に示すように、この車体構造は、車体前方側に第一閉断面S1を有するエプロンレインメンバ8を設置し、その後方に、エプロンレインメンバ8に接合されるピラーレイン62と、エプロンレインメンバ8のインナパネル81に接合されるピラーインナパネル63とを設置して、エプロンレインメンバ8との間で第二閉断面S2を構成している。また、このピラーインナパネル63の前部と後端の接合フランジ63eに対してピラーレイン62の前端の接合フランジ62eと後端をそれぞれ接合して、ピラーインナパネル63とピラーレイン62との間で第三閉断面S3を構成し、さらに、ピラーレイン62の中央と後端に対してピラーアウタパネル61の前端の段差接合部61fを接合し、後端の接合フランジ61eを接合することで、ピラーレイン62とピラーアウタパネル61との間で第四閉断面S4を構成している。
【0054】
このように複数の閉断面を形成することで、本実施形態の車体構造では、ベルトライン面部Fの車体内方側の車体剛性を高めている。
【0055】
本実施形態では、この剛性の高い車体構造に対して、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、図6に示すように、各外表面が面一となるように設置している。
【0056】
まず、ヘッドランプ10は、図示しない取付けネジ等で車体に装着固定されている。また、クリアガーニッシュ20は、その裏面のクリップ脚21をガーニッシュプレート20Pにクリップ固定し、このガーニッシュプレート20Pを締結ボルト41,41で車体に固定することで、車体に装着固定されている。さらに、サブウインドウガラス30は、接着剤Gによってピラーアウタパネル61の接着座部61dに接着されて、車体に装着固定されている。
【0057】
また、図7の断面図に示すように、本実施形態では、フロントピラー52の断面形状をサブウインドウ開口部30Aに対して、前部52Aと後部52Bで変更して、運転者の視界を広げる構造を採用している。すなわち、フロントピラー前部52Aのサブウインドウ開口部30A側の接合フランジ52A1を、後部52Bの接合フランジ52B1よりも、車体内方側に車体内方側に位置するように形成している。
【0058】
このように、接合フランジ52A1をサブウインドウガラス30から離間して形成することにより、図示するように、運転者Dからの可視範囲をより車体前方側まで広げることができる(一点鎖線P1が可視範囲を示す線で、二点鎖線P2がそのまま延ばした場合の可視範囲を示す線)。なお、mは、フロントピラー52A,52Bを覆うピラートリムである。
【0059】
また、本実施形態では、図8の断面図に示すように、フロントピラー52の前部(下部)に、樹脂製のピラーガーニッシュ51をクリップ固定している。すなわち、前述した絞り部61bの上面61b1に形成した差込孔53に、ピラーガーニッシュ51の裏面に形成したクリップ脚51Aを嵌合係止することで、ピラーガーニッシュ51をフロントピラー52の絞り部61bに装着している。
【0060】
このように、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間の車体外表面を構成する部材を、樹脂製のピラーガーニッシュ51とすることで、この部分(以下、連続部分)の形状を、確実且つ容易に成形することができる。
【0061】
すなわち、連続部分を、側面視で下凸の円弧形状に成形した場合には、図8に示すように、フロントウインドウガラス6と上下距離Zが離間して、ピラーガーニッシュ51の上端51bの絞りが深くなってしまい、金属材料でプレス成形すると十分に成形できない。しかし、本実施形態のように樹脂で成形することで、プレス成形の成形性等を考慮することなく、所望の形状を容易に成形でき、確実に成形することができる。
【0062】
また、この連続部分だけをピラーガーニッシュ51で構成することで、その他のフロントピラー52部分を鉄板で成形できるため、車体製作のコストアップも避けることができ、また、フロントピラー52の剛性低下も避けることができる。
【0063】
次に、フロントフェンダー4の内部に設けられる取付けガセット46について説明する。図9に示すように、フロントフェンダー4の車幅方向内方側には、前述したように取付けガセット46を設けている。
【0064】
この取付けガセット46は、車幅方向内方側に隆起する山型隆起部46aを中央に設け、その車幅方向内端の平面当接部46bに締結ボルト47(図10参照)を挿通する挿通穴46cを設けている。また、山型隆起部46aの周縁にはフロントフェンダー4の内側面4bに複数の接着クッション材46d…を介して接着される当接フランジ部46eを設け、さらに、当接フランジ部46eの上端位置と後端位置には、フロントフェンダー4の折り曲げフランジ4c,4cに接合固定される固定フランジ46f,46gを設けている。なお、取付けガセット46の山型隆起部46aは、その下側部分46hを開放している(図10参照)。
【0065】
この取付けガセット46は、フロントフェンダー4の後部を、サブウインドウ開口部30Aの下方に位置するドアヒンジピラー70(図3参照)に締結固定するために、側面視でウィンカーランプ44の位置と略一致する位置に設置している(図2参照)。この位置に設置することで、ウィンカーランプ44を装着する開口45を通じて、締結ボルト47を操作して、フロントフェンダー4を着脱できるように構成している。
【0066】
このように、取付けガセット46を設けて、フロントフェンダー4を車体(ドアヒンジピラー70)に固定することにより、フロントフェンダー4のガタツキを確実に抑えることができる。
【0067】
すなわち、本実施形態のように、サブウインドウガラス30を接着固定した場合には、その下方のフロントフェンダー4上部の締結場所を確保できないため、フロントフェンダー4上部の締結力が低下して、フロントフェンダー4にガタツキが生じるおそれがある。これを、取付けガセット46を設けることで、フロントフェンダー4内の車体(ドアヒンジピラー70)に、締結固定できるため、フロントフェンダー4の締結力を高めることができるのである。
【0068】
フロントフェンダー4の取り外し方法は、まず、図11に示すように、フロントフェンダー4の開口45に装着されたウィンカーランプ44を、マイナスドライバー等の工具Tを用いて、爪44aとフック44bによる係合固定を解除して、さらにコネクタ48(図10参照)との結合を外したうえで、ウィンカーランプ44をフロントフェンダー4の開口45から取り外す。
【0069】
そして、フロントフェンダー4の開口45を通じて、露出した締結ボルト47を、開口45から挿入した工具(図示せず)を用いて解除操作する。こうして、締結ボルト47の締結を解除して、フロントフェンダー4を車体から取り外す。
【0070】
このように、ウィンカーランプ44の開口45を利用して、取付けガセット46の締結ボルト47を解除するため、フロントフェンダー4の着脱のために別途、フロントフェンダー4に開口等を形成する必要がなく、フロントフェンダー4の外表面の見栄えの悪化も防止することができる。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の車体構造は、前下がりに傾斜(傾斜角α2)したフロントピラー52とそのフロントピラー52の傾斜角より小さく傾斜(傾斜角α1)したボンネット2の側端部2aとの間に、側面視でフロントピラー52とボンネット側端部2aが連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュ51を配置して、その樹脂製のピラーガーニッシュ52の下凸の円弧形状の下縁とフロントフェンダー4の車体前後方向に延びる上縁との間に、サブウインドウガラス30を配置している。
【0072】
これにより、金属材料ではプレス成形が困難な「下凸の円弧形状」を容易に成形することができる。
このため、フロントピラー52とボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラス30の上縁(32)形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
よって、車体前部の側部にフロントピラー52とサブウインドウ開口部30Aを備えた車体構造において、確実にフロントピラー52とボンネット2との間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部30Aの前端部分の視界を向上することができる。
【0073】
また、この実施形態では、ピラーガーニッシュ51とフロントフェンダー4との間のサブウインドウガラス30の前方に、クリアガーニッシュ20を配置している。
これにより、車体側部に、サブウインドウガラス30とクリアガーニッシュ20とを備えるベルトライン面部Fを形成することができる。
よって、車体側部に車体パネルとは異なるベルトライン面部Fを形成することで、車体側部の外観上の美感を向上できる。特に、クリアガーニッシュ20を設けたことで、サブウインドウガラス30の前端形状の処理を、比較的自由に行なうことができ、サブウインドウガラス30の前端部分の見栄えの悪化を、防止することができる。
【0074】
なお、クリアガーニッシュ20の代わりに、色彩を有する有色タイプのパネル体でガーニッシュを構成してもよい。
【0075】
また、この実施形態では、フロントフェンダー4の上部に上方に突出する締結フランジ42,42を設け、クリアガーニッシュ20が側面視で重複する車体部位に、締結フランジ42,42を締結固定したものである(図2参照)。
これにより、フロントフェンダー4上部の締結フランジ42,42を、クリアガーニッシュ20を利用して、車体外表面から隠蔽することができる。
このため、車体側部にフロントフェンダー4を締結する締結フランジ42,42を設定しても、車体外表面に締結フランジ42,42が露出することがなく、また、この締結フランジ42,42を隠蔽する部材がクリアガーニッシュ20であるため、フロントフェンダー交換時、サブウインドウガラス30を取り外さなくても、クリアガーニッシュ20のみを取り外すだけで、フロントフェンダー4を着脱することができる。
よって、車体側部の車体外観の悪化を防止しつつも、フロントフェンダー4交換時の着脱作業も容易に行なうことができる。
【0076】
また、この実施形態では、クリアガーニッシュ20の前方に、ヘッドランプ10を配置して、そのヘッドランプ10、サブウインドウガラス30、及びクリアガーニッシュ20で、車体前後方向に連続するベルトライン面部Fを形成している。
【0077】
これにより、車体パネルと異なるベルトライン面部Fを、車体側部で車体前後方向に延びるように形成できる。
このため、車体前部の側方部分における、車外からの視認性を高めることができる。
よって、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部Fが車体のベルトライン位置で車体前後方向に延びることで、車体全体の美感も向上することができる。
【0078】
また、この実施形態では、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aの合わせラインL1と、クリアガーニッシュ20とヘッドランプ10の合わせラインL2とを、上下方向で一致するように設定している。
これにより、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aの合わせラインL1とクリアガーニッシュ20とヘッドランプ10の合わせラインL2とで構成される、上下方向に延びる凹状の溝が、車体側部に形成されることになる。
このため、この凹状の溝に沿って、車体側部等に付着した雨水等を円滑に下方に流れ落とすことができる。
よって、ピラーガーニッシュ51とボンネット2、クリアガーニッシュ20とヘッドランプ10といった複数の構成要素を車体側部に配置して、合わせラインL1,L2が複数形成される場合であっても、確実に雨水等を車体下方に案内することができ、雨水等による汚れ付着を防止することができる。また、合わせラインL1,L2が上下で一致することで、車体側部の美感も向上することができる。
【0079】
なお、その他の実施形態として、具体的には図示しないが、樹脂で成形されるピラーガーニッシュ51とクリアガーニッシュ20を、一体に成形して、一部品として構成することが考えられる。
【0080】
このように、一部品で構成した場合には、部品点数の削減が図れ、また、着脱作業も一度で済むため、簡単に行なうことができる。
【0081】
よって、この実施形態によると、前述の実施形態と同様に、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間を連続的に視認させることが可能となり、さらに、部品点数の削減、着脱作業の簡略化をも図ることができる。
【0082】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明のフェンダーガーニッシュは、実施形態のクリアガーニッシュ20に対応し、
以下、同様に、
締結固定部は、締結フランジ42に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車体構造に適用する実施形態を含むものである。この実施形態では、ミニバンタイプの車体構造で説明をしたが、その他の、セダンタイプ、ワゴンタイプ等々の車体構造で採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図。
【図2】車体構造の前部側部の側面図。
【図3】サブウインドウガラス等を分解した分解斜視図。
【図4】フロントフェンダー等を分解した分解斜視図。
【図5】サブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図。
【図6】図1のA−A線矢視断面図。
【図7】図1のB−B線矢視断面図。
【図8】図1のC−C線矢視断面図。
【図9】フロントフェンダーの車体内方側の斜視図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】図9のE−E線矢視断面図。
【符号の説明】
【0084】
E…エンジンルーム
F…ベルトライン面部
1…車体構造
2…ボンネット
2a…ボンネット側端部
4…フロントフェンダー
10…ヘッドランプ
20…クリアガーニッシュ
30…サブウインドウガラス
42…締結フランジ
51…ピラーガーニッシュ
52…フロントピラー
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体構造に関し、特に、車体前部の側部に三角窓等のサブウインドウとフロントピラーを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミニバン等の自動車において、車体前部の側方視界を向上するためフロントピラーの下部に三角窓等のサブウインドウを設けることが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントピラーの下部に三角窓を設ける車体構造が開示されており、これにより、車体前部の側方視界を向上している。
【0004】
この特許文献1では、さらに、その周辺構造であるエプロンレインメンバ等も開示され、この三角窓周辺が複数の構成要素で構成されていることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−103360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サブウインドウの視界は、サブウインドウの形状によって変化するが、このサブウインドウ形状は、フロントピラーの傾斜角等により決定される。一般に、フロントピラーは、その上部を車体後方側に傾斜するように配置されるが、この傾斜角はボンネットの傾斜角に比して急に設定されていることから、通常フロントピラーは、側面視でボンネットとの間で角部を有した状態で配置されることになる。
【0006】
このようにフロントピラーがボンネットとの間で角部を持って配置されると、必然的に、サブウインドウの前端角部も略鋭角の前下がり形状に形成するしかなく、サブウインドウ前端の視界が制限されることになる。
【0007】
こうしたことから、フロントピラーとボンネットとの間の車体外表面を、下凸の円弧形状に形成して、サブウインドウの前端角部を、前上がりに円弧形状に構成することが考えられる。
【0008】
しかし、フロントピラーとボンネットとの間の車体外表面を、フロントピラー等の金属材料で形成した場合には、下凸の円弧形状に延びる頂部(ピラー長手方向に延びる峰部)と、フロントウインドウガラス側端部を支持する直線状に延びる支持フランジ(基部)とが、フロントピラー下方に向うに従って大きく離間してしまうため、プレス成形で行なうのが困難になり、十分な下凸の円弧形状を形成することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、車体前部の側部にフロントピラーとサブウインドウ開口部を備えた車体構造において、確実にフロントピラーとボンネットとの間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部の前端部分の視界を向上することができる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車体構造は、車体側部のドアヒンジピラーの上方にサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部を設け、該サブウインドウ開口部の上方に前傾したフロントウインドウガラスの両端部を支持するフロントピラーを設け、該フロントピラーの前方にボンネットを設け、前記サブウインドウ開口部の下方にホイールハウスを有するフロントフェンダーを配置した車体構造であって、前下がりに傾斜した前記フロントピラーと該フロントピラーの傾斜角より小さく傾斜した前記ボンネットの側端部との間に、側面視で該フロントピラー部と該ボンネット側端部が連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュを配置して、該樹脂製のピラーガーニッシュの下凸の円弧形状の下縁と前記フロントフェンダーの車体前後方向に延びる上縁との間に、前記サブウインドウガラスを配置したものである。
【0011】
上記構成によれば、フロントピラーとボンネットとの間を、樹脂製のピラーガーニッシュで構成することで、金属材料ではプレス成形が困難な「下凸の円弧形状」を容易に成形することができる。
このため、フロントピラーとボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラスの上縁形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
【0012】
発明の一実施態様においては、前記ピラーガーニッシュと前記フロントフェンダーとの間の前記サブウインドウガラスの前方に、フェンダーガーニッシュを配置したものである。
上記構成によれば、サブウインドウガラスの前方にフェンダーガーニッシュを配置することで、車体側部に、サブウインドウガラスとフェンダーガーニッシュとからなるベルトライン面部を形成することができる。
よって、車体側部に、車体パネルとは異なるベルトライン面部を形成することで、車体側部の外観上の美感を向上できる。特に、フェンダーガーニッシュを設けたことで、サブウインドウガラスの前端形状の処理を比較的自由に行なうことができ、サブウインドウガラスの前端部分の見栄えの悪化を防止することができる。
なお、フェンダーガーニッシュは、サブウインドウガラスと同様に、外表面が透明又は半透明のクリアタイプであってもよいし、色彩を有する有色タイプであってもよい。
【0013】
発明の一実施態様においては、前記フロントフェンダーの上部に上方に突出する取付部を設けて、該取付部でフロントフェンダーを車体側部に固定し、該取付部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように前記フェンダーガーニッシュを配置したものである。
上記構成によれば、フロントフェンダーの締結固定部を、フェンダーガーニッシュを利用して、車体外表面から隠蔽することができる。
このため、車体側部にフロントフェンダー上部の締結固定部を設定しても、車体外表面に締結固定部が露出することがなく、また、この締結固定部を隠蔽する部材がフェンダーガーニッシュであるため、フロントフェンダー交換時、サブウインドウガラスを取り外すことなく、フェンダーガーニッシュのみを取り外すだけで、フロントフェンダーを着脱することができる。
よって、車体側部の外観の悪化を防止しつつも、フロントフェンダーの交換時の着脱作業も容易に行なうことができる。
【0014】
発明の一実施態様においては、前記フェンダーガーニッシュの前方に、ヘッドランプを配置して、該ヘッドランプ、前記サブウインドウガラス、及びフェンダーガーニッシュによって、車体前後方向に連続するベルトライン面部を形成したものである。
【0015】
上記構成によれば、ヘッドランプも含め、サブウインドウガラスとフェンダーガーニッシュとで、ベルトライン面部を形成することで、車体パネルと異なるベルトライン面部を、車体側部で車体前後方向に延びるように形成できる。
このため、車体前部の側方部分における、車外からの視認性を高めることができる。
よって、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部が車体のベルトライン位置で車体前後方向に延びることで、車体全体の美感も向上することができる。
【0016】
発明の一実施態様においては、前記ピラーガーニッシュと前記ボンネット側端部の合わせラインと、前記フェンダーガーニッシュと前記ヘッドランプの合わせラインとを、上下方向に一致するように設定したものである。
上記構成によれば、樹脂製のピラーガーニッシュとボンネット側端部の合わせラインとフェンダーガーニッシュとヘッドランプの合わせラインとで、上下方向に延びる凹状の溝部を、車体側部に形成することになる。
このため、車体側部等に付着した雨水等を、この凹状の合わせラインに沿って、円滑に下方に流れ落とすことができる(合わせラインのストリームライン化)。
よって、樹脂製のピラーガーニッシュとボンネット、フェンダーガーニッシュとヘッドランプといった複数の構成要素を車体側部に配置して、合わせラインが複数形成される場合であっても、確実に雨水等を車体下方に案内することができ、雨水等による汚れ付着を防止することができる。また、合わせラインが上下で一致することで、車体側部の美感も向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フロントピラーとボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラスの上縁形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
よって、車体前部の側部にフロントピラーとサブウインドウ開口部を備えた車体構造において、確実にフロントピラーとボンネットとの間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部の前端部分の視界を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0019】
まず、図1〜図11により、第一実施形態について説明する。図1は本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図、図2はその車体構造の前部側部の側面図、図3はサブウインドウガラス等を分解した分解斜視図、図4はフロントフェンダー等を分解した分解斜視図、図5はサブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図、図6は図1のA−A線矢視断面図、図7は図1のB−B線矢視断面図、図8は図1のC−C線矢視断面図、図9はフロントフェンダーの車体内方側の斜視図、図10は図9のD−D線矢視断面図、図11は図9のE−E線矢視断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の自動車は、車体前部に設けられるエンジンルームE部分が前後に短い、所謂ミニバンタイプの車体構造1で構成される。
この車体構造1は、エンジンルームEの上方に前傾して設置されるボンネット2と、エンジンルームEの前方で車幅方向にわたって設置されるフロントバンパー3と、エンジンルームEの側方に車体前後方向にわたって設置されてホイールアーチHを下部に形成するフロントフェンダー4と、そのフロントフェンダー4の後方に連なるように設置されるフロントドア5と、ボンネット2後方で上方に向って傾斜設置されるフロントウインドウガラス6と、フロントウインドウガラス6の後方で略水平状に配置されるルーフパネル7とを備える。また、フロントフェンダー4の内方には、エンジンルームEの側壁上縁を構成するエプロンレインメンバ8を配置している。このエプロンレインメンバ8の上方には、前述のボンネット2が延在している。
【0021】
そして、この車体側部には、車体前後方向に延びるように、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、それぞれ車体前方側から順に配置している。
【0022】
このヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30は、共に外表面が透明又は半透明となっており、これらが車体側面の中央付近で水平線状(所謂ベルトライン)に位置することで、車体側面に光の反射率の高い透明又は半透明のベルトライン面部Fを構成している。
【0023】
図2に示すように、このベルトライン面部Fは、車体前端から車体後方側にかけて直線状に延びるとともに、ヘッドランプ10前端部の幅t1と、クリアガーニッシュ20の幅t2と、サブウインドウガラス30の幅t3とが、t1<t2<t3となるように車体前方側から車体後方側に向かうにしたがって、徐々に幅広となるように設定している。
【0024】
そして、各部材10,20,30の下端縁11,21,31を直線状に形成し、上端縁12,22,32をなだらかな湾曲線状に形成することで、ベルトライン面部Fが一体となって車外から視認されるように構成している。
【0025】
また、この実施形態では、ベルトライン面部Fの後方に、フロントドア5のドアウインドウガラス50が位置するように設定している。このため、ドアウインドウガラス50も含めて、透明又は半透明領域を構成することができ、車体側面に、より広い範囲の透明又は半透明領域を形成することができる。
【0026】
ベルトライン面部Fの上方には、車体前方から、ボンネット側端部2a、ピラーガーニッシュ51、それとフロントピラー52が順に配置され、各部材の形状は、側面視で、ベルトライン面部Fの上端縁と略一致するように湾曲形成されている。
なお、ここでフロントピラー52は、前述のフロントウインドウガラス6の側端部を支持して上下方向に延在している。
【0027】
特に、樹脂で成形されたピラーガーニッシュ51は、図2に示すように、側面視で、ボンネット側端部2aの緩やかな傾斜角α1と、フロントピラー52の急な傾斜角α2が滑らかに連続するように、下凸に湾曲して、弓形に反った円弧形状として構成することで、ボンネット側端部2aとフロントピラー52の間の外表面を補間している。なお、「補間」とは、フロントピラー52下部とボンネット側端部2aとの間の空隙領域に位置して車体外表面を構成することをいう。
このため、外観上、ボンネット側端部2aとフロントピラー52が連続しているように視認されることになる。
【0028】
また、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aとの合わせラインL1と、ヘッドランプ10とクリアガーニッシュ20との合わせラインL2とは、上下方向で略一致するように設定して、車両後方側に傾斜するように設定している。このため、この合わせラインL1,L2により、車体側部に上下方向に延びる凹状の溝が形成されることになり、車体側部等に付着した雨水等を、容易に車体下部に案内することができる。
【0029】
次に、ベルトライン面部Fを構成する車体構造について説明する。
このベルトライン面部Fは、図3に示すように、車体前部の側面部に形成したベルトライン凹部60に、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を収容することで構成している(図3では、クリアガーニッシュ20とサブウインドウガラス30を分解した状態を図示)。
【0030】
このベルトライン凹部60は、上部をボンネット側端部2a、ピラーガーニッシュ51の下端縁部51a、フロントピラー52の下縁部52aで、下部をフロントフェンダー4の上端縁部4aで挟まれ、さらに、前部をフロントバンパー3のヘッドランプ切欠縁部3aで仕切られ、車体外表面から一段凹んだ領域で構成している。
【0031】
このベルトライン凹部60に対して、ヘッドランプ10を締結固定によって固定して、クリアガーニッシュ20をクリップ固定によって固定して、サブウインドウガラス30を接着固定によって固定することで、フロントフェンダー4とボンネット2との間の車体外表面を、連続させるように構成している。
【0032】
クリアガーニッシュ20については、その裏面に複数(4つ)のクリップ脚21…を設けて、その対応するガーニッシュプレート20Pに複数(4つ)の係止穴22…を設け、クリアガーニッシュ20を車幅方向外方から押圧し、クリップ脚21を係止穴22に係合させることで、ベルトライン凹部60に嵌合装着している。
【0033】
一方、サブウインドウガラス30については、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aの周囲に接着剤を塗布して、車幅方向外方から組付け、サブウインドウ開口部30A周縁にサブウインドウガラス30を接着固定することで、ベルトライン凹部60に嵌合装着している。
【0034】
こうしてサブウインドウガラス30を接着固定とすることで、車外からの雨水等の浸入を防ぐことができ、サブウインドウ開口部30Aの防水性を高めることができる。
【0035】
これに対して、クリアガーニッシュ20については、クリップ固定としたことで、車体から取り外し自在とすることができる。このため、フロントフェンダー4を修理する際に、自由に着脱することができ、フロントフェンダー4の修復性を確保することができる。
【0036】
なお、このサブウインドウ開口部30Aに接着されるサブウインドウガラス30は、図3に示すように、前端上縁33が角部となった略台形形状のガラス体で構成しており、通常の三角形状のものよりも、前端上縁33部分のガラス領域を増加させている。
【0037】
これは、前述のようにピラーガーニッシュ51の下端縁部51aを下凸の円弧形状に形成したことで、その前端部分を前上がりに形成できるため、このような形状にできるのであるが、このため、サブウインドウガラス30は、従来のものより、前端部分の可視領域を広げることができる。
【0038】
また、図4に示すように、フロントフェンダー4は、車体から自由に取り外すことができるように構成している。
【0039】
具体的には、クリップ固定されたクリアガーニッシュ20(図3参照)を工具等で取り外し、フロントフェンダー4上部の締結固定部42を露出させ(図3参照)、この締結固定部42に位置する締結ボルト41,41(図4参照)を、取り外すことで、フロントフェンダー4を車体から取り外すことができる。
【0040】
フロントフェンダー4の上部には、締結固定部たる締結フランジ42,42を上方に突出するように二つ設け、フロントフェンダー4上部を、車体に締結固定できるように構成している。
【0041】
さらに、フロントフェンダー4の後部には、ウィンカーランプ(方向指示燈)44を装着する開口45を設け、その開口45に対応する車幅方向内方側に、フロントフェンダー4を車体(ドアヒンジピラー70)に締結固定する取付けガセット46を設けている。
【0042】
また、フロントフェンダー4の前部や下部にも、同様に、車体に対して取り外し可能となる締結固定部を設けているが、従来と同様の構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0043】
一方、ピラーガーニッシュ51については、後述するようにフロントピラー52にクリップ固定によって固定するように構成している。
【0044】
ベルトライン面部Fの車体内方側の車体構造は、さらに図5に示すように、複数の構成要素を組み合わせることで構成している。
【0045】
この車体構造は、前述のフロントフェンダー4に加え、上下方向に延びてフロントピラー52の外表面を構成するピラーアウタパネル61と、車体前後方向に延びてエンジンルームE側端上縁を構成するエプロンレインメンバ8と、サブウインドウ開口部30A周囲に位置してサブウインドウ開口部30Aの剛性を高めるピラーレイン62と、車室内方側に位置してフロントピラー52の内表面を構成するピラーインナパネル63とを備え、このうち、ピラーアウタパネル61、エプロンレインメンバ8、ピラーレイン62及びピラーインナパネル63の4つの構成要素を接合することで、構成している。
【0046】
前述のピラーアウタパネル61は、上部にフロントピラー52の外表面を構成する曲面形状の化粧面61aを設け、その下部に一段低くなった絞り部61bを設けている。また、絞り部61bの上面中央には、ピラーガーニッシュ51をクリップ固定するために二つの差込孔53,53を形成している。
【0047】
また、このピラーアウタパネル61は、後端位置に化粧面61aから下方に延びる縦梁部61cを設けることで、略三角形状に開口したサブウインドウ開口部30Aを形成している。そして、このサブウインドウ開口部30Aの周囲に、前述のサブウインドウガラス30を接着固定する接着座部61dを形成している。
【0048】
また、この接着座部61dからサブウインドウ開口部30A中心側の一段奥まった位置には、ピラーインナパネル63と接合を行なう接合フランジ61eを設けている。さらに、接着座部61dの前方に、折り曲げ形成した段差接合部61fを設けている。この段差接合部61fを設けることで、エプロンレインメンバ8に溶接する際に生じる「熱歪み」が、サブウインドウ開口部30A周囲の接着座部61dに生じないようにしている。
【0049】
前述のエプロンレインメンバ8は、車体前後方向に延びる上下二段の閉断面を有する前後メンバ部8aと、その後方位置でフロントピラー52側(上方側)とドアヒンジピラー側(下方側)にそれぞれ分岐して延びる分岐メンバ部8bとを設け、サブウインドウ開口部30A前方の骨格部材として車体剛性を確保している。また、分岐メンバ部8bの上方には、ボンネット2後端の回転ヒンジ(図示せず)を固定するヒンジブラケット64を設けている。
【0050】
前述のピラーレイン62は、ピラーアウタパネル61のサブウインドウ開口部30Aに対応するように三角形状の開口62aを形成した略三角形のパネル体で構成している。上端縁62b、前端縁62c及び下端縁62dを、車幅方向内方側に折り曲げると共に、前端縁62cと下端縁62dには、上下方向に延びる接合フランジ62eを設けている。
【0051】
前述のピラーインナパネル63は、斜め上方に延びるピラーメンバ部63aと、サブウインドウ開口部30A周囲に位置する三角枠部63bとを設け、フロントピラー52の内側面を構成している。このうち、三角枠部63bには、その中心側に車幅方向外方側に突出する棚部63cを形成し、その内端には、ピラーアウタパネル61に接合される接合フランジ63eを形成している。
【0052】
このように構成された各構成要素は、エプロンレインメンバ8の後端に対して、車幅方向の両側からピラーアウタパネル61の前端とピラーインナパネル63の前端を挟み込むようにして組み合わせ、さらに、このピラーアウタパネル61とピラーインナパネル63との間でピラーレイン62を挟持し、各構成要素の接合フランジ等を溶接ガン(図示せず)で溶接することで、車体構造を構成している。
【0053】
図6の断面図に示すように、この車体構造は、車体前方側に第一閉断面S1を有するエプロンレインメンバ8を設置し、その後方に、エプロンレインメンバ8に接合されるピラーレイン62と、エプロンレインメンバ8のインナパネル81に接合されるピラーインナパネル63とを設置して、エプロンレインメンバ8との間で第二閉断面S2を構成している。また、このピラーインナパネル63の前部と後端の接合フランジ63eに対してピラーレイン62の前端の接合フランジ62eと後端をそれぞれ接合して、ピラーインナパネル63とピラーレイン62との間で第三閉断面S3を構成し、さらに、ピラーレイン62の中央と後端に対してピラーアウタパネル61の前端の段差接合部61fを接合し、後端の接合フランジ61eを接合することで、ピラーレイン62とピラーアウタパネル61との間で第四閉断面S4を構成している。
【0054】
このように複数の閉断面を形成することで、本実施形態の車体構造では、ベルトライン面部Fの車体内方側の車体剛性を高めている。
【0055】
本実施形態では、この剛性の高い車体構造に対して、ヘッドランプ10、クリアガーニッシュ20及びサブウインドウガラス30を、図6に示すように、各外表面が面一となるように設置している。
【0056】
まず、ヘッドランプ10は、図示しない取付けネジ等で車体に装着固定されている。また、クリアガーニッシュ20は、その裏面のクリップ脚21をガーニッシュプレート20Pにクリップ固定し、このガーニッシュプレート20Pを締結ボルト41,41で車体に固定することで、車体に装着固定されている。さらに、サブウインドウガラス30は、接着剤Gによってピラーアウタパネル61の接着座部61dに接着されて、車体に装着固定されている。
【0057】
また、図7の断面図に示すように、本実施形態では、フロントピラー52の断面形状をサブウインドウ開口部30Aに対して、前部52Aと後部52Bで変更して、運転者の視界を広げる構造を採用している。すなわち、フロントピラー前部52Aのサブウインドウ開口部30A側の接合フランジ52A1を、後部52Bの接合フランジ52B1よりも、車体内方側に車体内方側に位置するように形成している。
【0058】
このように、接合フランジ52A1をサブウインドウガラス30から離間して形成することにより、図示するように、運転者Dからの可視範囲をより車体前方側まで広げることができる(一点鎖線P1が可視範囲を示す線で、二点鎖線P2がそのまま延ばした場合の可視範囲を示す線)。なお、mは、フロントピラー52A,52Bを覆うピラートリムである。
【0059】
また、本実施形態では、図8の断面図に示すように、フロントピラー52の前部(下部)に、樹脂製のピラーガーニッシュ51をクリップ固定している。すなわち、前述した絞り部61bの上面61b1に形成した差込孔53に、ピラーガーニッシュ51の裏面に形成したクリップ脚51Aを嵌合係止することで、ピラーガーニッシュ51をフロントピラー52の絞り部61bに装着している。
【0060】
このように、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間の車体外表面を構成する部材を、樹脂製のピラーガーニッシュ51とすることで、この部分(以下、連続部分)の形状を、確実且つ容易に成形することができる。
【0061】
すなわち、連続部分を、側面視で下凸の円弧形状に成形した場合には、図8に示すように、フロントウインドウガラス6と上下距離Zが離間して、ピラーガーニッシュ51の上端51bの絞りが深くなってしまい、金属材料でプレス成形すると十分に成形できない。しかし、本実施形態のように樹脂で成形することで、プレス成形の成形性等を考慮することなく、所望の形状を容易に成形でき、確実に成形することができる。
【0062】
また、この連続部分だけをピラーガーニッシュ51で構成することで、その他のフロントピラー52部分を鉄板で成形できるため、車体製作のコストアップも避けることができ、また、フロントピラー52の剛性低下も避けることができる。
【0063】
次に、フロントフェンダー4の内部に設けられる取付けガセット46について説明する。図9に示すように、フロントフェンダー4の車幅方向内方側には、前述したように取付けガセット46を設けている。
【0064】
この取付けガセット46は、車幅方向内方側に隆起する山型隆起部46aを中央に設け、その車幅方向内端の平面当接部46bに締結ボルト47(図10参照)を挿通する挿通穴46cを設けている。また、山型隆起部46aの周縁にはフロントフェンダー4の内側面4bに複数の接着クッション材46d…を介して接着される当接フランジ部46eを設け、さらに、当接フランジ部46eの上端位置と後端位置には、フロントフェンダー4の折り曲げフランジ4c,4cに接合固定される固定フランジ46f,46gを設けている。なお、取付けガセット46の山型隆起部46aは、その下側部分46hを開放している(図10参照)。
【0065】
この取付けガセット46は、フロントフェンダー4の後部を、サブウインドウ開口部30Aの下方に位置するドアヒンジピラー70(図3参照)に締結固定するために、側面視でウィンカーランプ44の位置と略一致する位置に設置している(図2参照)。この位置に設置することで、ウィンカーランプ44を装着する開口45を通じて、締結ボルト47を操作して、フロントフェンダー4を着脱できるように構成している。
【0066】
このように、取付けガセット46を設けて、フロントフェンダー4を車体(ドアヒンジピラー70)に固定することにより、フロントフェンダー4のガタツキを確実に抑えることができる。
【0067】
すなわち、本実施形態のように、サブウインドウガラス30を接着固定した場合には、その下方のフロントフェンダー4上部の締結場所を確保できないため、フロントフェンダー4上部の締結力が低下して、フロントフェンダー4にガタツキが生じるおそれがある。これを、取付けガセット46を設けることで、フロントフェンダー4内の車体(ドアヒンジピラー70)に、締結固定できるため、フロントフェンダー4の締結力を高めることができるのである。
【0068】
フロントフェンダー4の取り外し方法は、まず、図11に示すように、フロントフェンダー4の開口45に装着されたウィンカーランプ44を、マイナスドライバー等の工具Tを用いて、爪44aとフック44bによる係合固定を解除して、さらにコネクタ48(図10参照)との結合を外したうえで、ウィンカーランプ44をフロントフェンダー4の開口45から取り外す。
【0069】
そして、フロントフェンダー4の開口45を通じて、露出した締結ボルト47を、開口45から挿入した工具(図示せず)を用いて解除操作する。こうして、締結ボルト47の締結を解除して、フロントフェンダー4を車体から取り外す。
【0070】
このように、ウィンカーランプ44の開口45を利用して、取付けガセット46の締結ボルト47を解除するため、フロントフェンダー4の着脱のために別途、フロントフェンダー4に開口等を形成する必要がなく、フロントフェンダー4の外表面の見栄えの悪化も防止することができる。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の車体構造は、前下がりに傾斜(傾斜角α2)したフロントピラー52とそのフロントピラー52の傾斜角より小さく傾斜(傾斜角α1)したボンネット2の側端部2aとの間に、側面視でフロントピラー52とボンネット側端部2aが連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュ51を配置して、その樹脂製のピラーガーニッシュ52の下凸の円弧形状の下縁とフロントフェンダー4の車体前後方向に延びる上縁との間に、サブウインドウガラス30を配置している。
【0072】
これにより、金属材料ではプレス成形が困難な「下凸の円弧形状」を容易に成形することができる。
このため、フロントピラー52とボンネットとの間の下凸の円弧形状を、確実に形成することができ、その下方に配置するサブウインドウガラス30の上縁(32)形状も同様に下凸の円弧形状(前上がりの円弧形状)とすることができる。
よって、車体前部の側部にフロントピラー52とサブウインドウ開口部30Aを備えた車体構造において、確実にフロントピラー52とボンネット2との間で下凸の円弧形状を形成して、サブウインドウ開口部30Aの前端部分の視界を向上することができる。
【0073】
また、この実施形態では、ピラーガーニッシュ51とフロントフェンダー4との間のサブウインドウガラス30の前方に、クリアガーニッシュ20を配置している。
これにより、車体側部に、サブウインドウガラス30とクリアガーニッシュ20とを備えるベルトライン面部Fを形成することができる。
よって、車体側部に車体パネルとは異なるベルトライン面部Fを形成することで、車体側部の外観上の美感を向上できる。特に、クリアガーニッシュ20を設けたことで、サブウインドウガラス30の前端形状の処理を、比較的自由に行なうことができ、サブウインドウガラス30の前端部分の見栄えの悪化を、防止することができる。
【0074】
なお、クリアガーニッシュ20の代わりに、色彩を有する有色タイプのパネル体でガーニッシュを構成してもよい。
【0075】
また、この実施形態では、フロントフェンダー4の上部に上方に突出する締結フランジ42,42を設け、クリアガーニッシュ20が側面視で重複する車体部位に、締結フランジ42,42を締結固定したものである(図2参照)。
これにより、フロントフェンダー4上部の締結フランジ42,42を、クリアガーニッシュ20を利用して、車体外表面から隠蔽することができる。
このため、車体側部にフロントフェンダー4を締結する締結フランジ42,42を設定しても、車体外表面に締結フランジ42,42が露出することがなく、また、この締結フランジ42,42を隠蔽する部材がクリアガーニッシュ20であるため、フロントフェンダー交換時、サブウインドウガラス30を取り外さなくても、クリアガーニッシュ20のみを取り外すだけで、フロントフェンダー4を着脱することができる。
よって、車体側部の車体外観の悪化を防止しつつも、フロントフェンダー4交換時の着脱作業も容易に行なうことができる。
【0076】
また、この実施形態では、クリアガーニッシュ20の前方に、ヘッドランプ10を配置して、そのヘッドランプ10、サブウインドウガラス30、及びクリアガーニッシュ20で、車体前後方向に連続するベルトライン面部Fを形成している。
【0077】
これにより、車体パネルと異なるベルトライン面部Fを、車体側部で車体前後方向に延びるように形成できる。
このため、車体前部の側方部分における、車外からの視認性を高めることができる。
よって、例えば、見通しの悪い交差点等において、自車の車体側部を側方から走行してくる他車の運転者に認識させやすくなり、衝突予防も図ることができ、安全性を高めることができる。
また、ベルトライン面部Fが車体のベルトライン位置で車体前後方向に延びることで、車体全体の美感も向上することができる。
【0078】
また、この実施形態では、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aの合わせラインL1と、クリアガーニッシュ20とヘッドランプ10の合わせラインL2とを、上下方向で一致するように設定している。
これにより、ピラーガーニッシュ51とボンネット側端部2aの合わせラインL1とクリアガーニッシュ20とヘッドランプ10の合わせラインL2とで構成される、上下方向に延びる凹状の溝が、車体側部に形成されることになる。
このため、この凹状の溝に沿って、車体側部等に付着した雨水等を円滑に下方に流れ落とすことができる。
よって、ピラーガーニッシュ51とボンネット2、クリアガーニッシュ20とヘッドランプ10といった複数の構成要素を車体側部に配置して、合わせラインL1,L2が複数形成される場合であっても、確実に雨水等を車体下方に案内することができ、雨水等による汚れ付着を防止することができる。また、合わせラインL1,L2が上下で一致することで、車体側部の美感も向上することができる。
【0079】
なお、その他の実施形態として、具体的には図示しないが、樹脂で成形されるピラーガーニッシュ51とクリアガーニッシュ20を、一体に成形して、一部品として構成することが考えられる。
【0080】
このように、一部品で構成した場合には、部品点数の削減が図れ、また、着脱作業も一度で済むため、簡単に行なうことができる。
【0081】
よって、この実施形態によると、前述の実施形態と同様に、フロントピラー52とボンネット側端部2aとの間を連続的に視認させることが可能となり、さらに、部品点数の削減、着脱作業の簡略化をも図ることができる。
【0082】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明のフェンダーガーニッシュは、実施形態のクリアガーニッシュ20に対応し、
以下、同様に、
締結固定部は、締結フランジ42に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車体構造に適用する実施形態を含むものである。この実施形態では、ミニバンタイプの車体構造で説明をしたが、その他の、セダンタイプ、ワゴンタイプ等々の車体構造で採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の車体構造を採用した自動車の前部右側の全体斜視図。
【図2】車体構造の前部側部の側面図。
【図3】サブウインドウガラス等を分解した分解斜視図。
【図4】フロントフェンダー等を分解した分解斜視図。
【図5】サブウインドウ開口部周辺の車体を分解した分解斜視図。
【図6】図1のA−A線矢視断面図。
【図7】図1のB−B線矢視断面図。
【図8】図1のC−C線矢視断面図。
【図9】フロントフェンダーの車体内方側の斜視図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】図9のE−E線矢視断面図。
【符号の説明】
【0084】
E…エンジンルーム
F…ベルトライン面部
1…車体構造
2…ボンネット
2a…ボンネット側端部
4…フロントフェンダー
10…ヘッドランプ
20…クリアガーニッシュ
30…サブウインドウガラス
42…締結フランジ
51…ピラーガーニッシュ
52…フロントピラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部のドアヒンジピラーの上方にサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部を設け、該サブウインドウ開口部の上方に前傾したフロントウインドウガラスの両端部を支持するフロントピラーを設け、該フロントピラーの前方にボンネットを設け、前記サブウインドウ開口部の下方にホイールハウスを有するフロントフェンダーを配置した車体構造であって、
前下がりに傾斜した前記フロントピラーと該フロントピラーの傾斜角より小さく傾斜した前記ボンネットの側端部との間に、側面視で該フロントピラー部と該ボンネット側端部が連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュを配置して、
該樹脂製のピラーガーニッシュの下凸の円弧形状の下縁と前記フロントフェンダーの車体前後方向に延びる上縁との間に、前記サブウインドウガラスを配置した
車体構造。
【請求項2】
前記ピラーガーニッシュと前記フロントフェンダーとの間の前記サブウインドウガラスの前方に、フェンダーガーニッシュを配置した
請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記フロントフェンダーの上部に上方に突出する取付部を設けて、該取付部でフロントフェンダーを車体側部に固定し、
該取付部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように前記フェンダーガーニッシュを配置した
請求項2記載の車体構造。
【請求項4】
前記フェンダーガーニッシュの前方に、ヘッドランプを配置して、
該ヘッドランプ、前記サブウインドウガラス、及びフェンダーガーニッシュによって、車体前後方向に連続するベルトライン面部を形成した
請求項3記載の車体構造。
【請求項5】
前記ピラーガーニッシュと前記ボンネット側端部の合わせラインと、
前記フェンダーガーニッシュと前記ヘッドランプの合わせラインとを、上下方向に一致するように設定した
請求項2〜4いずれか記載の車体構造。
【請求項1】
車体側部のドアヒンジピラーの上方にサブウインドウガラスを装着するサブウインドウ開口部を設け、該サブウインドウ開口部の上方に前傾したフロントウインドウガラスの両端部を支持するフロントピラーを設け、該フロントピラーの前方にボンネットを設け、前記サブウインドウ開口部の下方にホイールハウスを有するフロントフェンダーを配置した車体構造であって、
前下がりに傾斜した前記フロントピラーと該フロントピラーの傾斜角より小さく傾斜した前記ボンネットの側端部との間に、側面視で該フロントピラー部と該ボンネット側端部が連続するように下凸の円弧形状に形成した樹脂製のピラーガーニッシュを配置して、
該樹脂製のピラーガーニッシュの下凸の円弧形状の下縁と前記フロントフェンダーの車体前後方向に延びる上縁との間に、前記サブウインドウガラスを配置した
車体構造。
【請求項2】
前記ピラーガーニッシュと前記フロントフェンダーとの間の前記サブウインドウガラスの前方に、フェンダーガーニッシュを配置した
請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記フロントフェンダーの上部に上方に突出する取付部を設けて、該取付部でフロントフェンダーを車体側部に固定し、
該取付部の車幅方向外方側に、側面視で重複するように前記フェンダーガーニッシュを配置した
請求項2記載の車体構造。
【請求項4】
前記フェンダーガーニッシュの前方に、ヘッドランプを配置して、
該ヘッドランプ、前記サブウインドウガラス、及びフェンダーガーニッシュによって、車体前後方向に連続するベルトライン面部を形成した
請求項3記載の車体構造。
【請求項5】
前記ピラーガーニッシュと前記ボンネット側端部の合わせラインと、
前記フェンダーガーニッシュと前記ヘッドランプの合わせラインとを、上下方向に一致するように設定した
請求項2〜4いずれか記載の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−308015(P2007−308015A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138966(P2006−138966)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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