説明

車載ナビゲーション装置

【課題】現在地マーク及びその周辺地図を表示した画面を参照しながら走行する際に、確実に目標地点に到達できる車載ナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】現在の車速に基づいて標準的な車両における標準的なドライバーが普通に減速操作したときの理想停止距離を演算する(ステップS10、S11)。さらに、あらかじめ記憶しておいた車両の重量やタイヤ特性などの減速動作に関連する車両情報と、ドライバーの減速操作に関する癖の情報を参照し、さらに現在の走行時間、路面状況を考慮して車両の停止可能範囲を算出する(ステップS12、S13)。その後、現在地、その周辺地図に重ねて、この停止可能範囲を画面表示する(ステップS14〜16)。これにより、ドライバーは、現在地と目標地点との相対的な位置関係を画面から把握することができ、確実かつ安全にその目標地点に到達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の現在地を検出しその周辺の地図を表示して、車両の走行をナビゲートする車載ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車載ナビゲーション装置では、一般的に探索した経路に対して交差点などの分岐点手前で、所定距離ごとに「あと○○m先の交差点を右折してください」などの音声案内を行う。特許文献1では、この音声案内をするタイミングを車速に応じて変えている。つまり、車速が大きいときは早めに音声案内をし、反対に車速が小さいときは遅めに音声案内をする。これによって、分岐点に到達するまでの時間を考慮した音声案内を実現することができ、ドライバーは違和感なく分岐点を曲がることができる。
【0003】
一方特許文献2では、経路案内の際に、現在地と分岐点までの距離及びその分岐点における曲折方向に応じた図形(案内矢印)を表示している。これによって、ドライバーは短い画面注視時間で分岐点までの距離とその曲折方向とを直感的に認識することができるので、安全な誘導を実現することができる。
【特許文献1】特開2001−241962号公報
【特許文献2】特開平6−341850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行経路を設定せずに走行する場合は、刻々と更新される、現在地を示す現在地マーク及びその周辺地図を表示した画面を参照しながら、目標地点(交差点、コンビニエンスストアなど)を目指す。ここで、現在地は、ジャイロスコープ、車速(時には加減速度センサにて代用場合もあり)及びGPS受信機からの検出信号に基づく推定現在地を地図データにマッチングした後に表示されるため、実際の現在地との時間的な遅れが生じる。また、通常画面に表示される現在地マークの大きさは、画面に表示される地図スケールに関係なく同じ大きさであるため、画面からは目標地点との相対位置関係が認識しにくいということがある。このため、画面の地図スケールが大きいときには、目標地点を通り過ぎた後に、初めて現在地マークで通り過ぎたことが分かることも少なくない。
【0005】
したがって、特許文献1のように案内対象地点までの距離を案内しただけでは、画面からはこの距離感覚を把握することはできないので、上記問題点を解決することはできない。この点、特許文献2に記載の技術を用いれば、画面から直感的に案内対象地点までの距離感覚を把握することができるが、車速によってはその案内対象地点を通り過ぎてしまう可能性もある。さらに、特許文献1、2のいずれも走行経路を設定していることが前提となっているため、走行経路を設定せずに走行する場合には適用することができない。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、現在地マーク及びその周辺地図を表示した画面を参照しながら走行する際に、確実に目標地点に到達できる車載ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の車載ナビゲーション装置は、車両の現在地を検出する位置検出手段と、前記車両が立ち寄る可能性のある施設データを含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記車両の現在地を示すマークとともに、その周辺の地図データを表示する表示手段とを備える車載ナビゲーション装置において、前記車両の速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段が検出した前記車両の速度に応じた当該車両の減速操作に伴う停止可能範囲を算出する算出手段とを備え、前記表示手段は、前記算出手段が算出した前記車両の停止可能範囲を前記表示している地図データとともに表示することを特徴とする。これにより、ドライバーはこの停止可能範囲にコンビニエンスストアや交差点などの目標地点が含まれていれば、迅速に減速操作をすることにより、確実にその目標地点に到達することができる。
【0008】
請求項2の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲を示す図形を前記地図データに重ねて表示することを特徴とする。これにより、ドライバーは停止可能範囲に地図上の目標地点が含まれているか否かを認識することができる。
【0009】
請求項3の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲に含まれる道路又は前記施設データ自体を目立つ態様で表示することを特徴とする。これによってもドライバーは停止可能範囲を認識することができる。この道路(交差点を含む)又は施設データ自体を目立つ態様で表示する方法としては、それらの色を変えたり、点滅表示したりする方法などが挙げられる。
【0010】
請求項4の車載ナビゲーション装置は、前記車両の減速操作に関するドライバーの癖を学習する学習手段を備え、前記算出手段は、前記学習手段が学習した前記車両の減速操作に関するドライバーの癖を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする。この車両の減速操作に関するドライバーの癖とは、減速するタイミングが遅いか早いかや、ブレーキのかけ度合いが強いか弱いかなどのことをいう。これにより、ドライバーの減速操作の癖を反映した停止可能範囲を表示することができる。
【0011】
請求項5の車載ナビゲーション装置は、前記車両の減速操作に関する車両情報を取得する車両情報取得手段を備え、前記算出手段は、前記車両情報を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする。例えば、車両の重量が異なると同じ条件で減速操作をしても停止するまでの距離が異なると考えられる。つまり、同じ減速操作をしたとしても、車両によって停止可能範囲は異なる。すなわち、この車両の減速操作に関する車両情報とは、車両の重量など減速操作したときのブレーキの効き具合に関係してくる情報をいう。これにより、各車両にあった停止可能範囲を表示することができる。
【0012】
請求項6の車載ナビゲーション装置は、少なくとも道路の路面状況又は走行時間帯に関する走行時の環境情報を取得する環境情報取得手段を備え、前記算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した前記路面状況又は走行時間帯を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする。例えば、降雨時は路面が濡れているので、路面が濡れていないときに比べて減速操作してから停止するまでの距離は大きくなる。また、夜間走行時は、昼間走行時に比べて減速操作するタイミングが遅れる。さらに路面降雪時や路面凍結時には、著しく車両減速度が小さくなり、何事にも早め早めの操作が求められる。すなわち、走行時の環境が異なると、車両の停止可能範囲は異なると考えられる。よって、走行時の環境を反映した停止可能範囲を表示することができる。
【0013】
請求項7の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段が表示する前記車両の停止可能範囲をユーザーによって補正させる補正手段を備えることを特徴とする。車載ナビゲーション側で算出した車両の停止可能範囲と、ユーザーが想定する停止可能範囲とがズレが生じることもありえる。また、複数の人が頻繁に運転する場合には、外部メモリ9に記憶するドライバーの癖が、今現在のドライバーの癖とは異なっている場合も考えられる。このようなことを鑑みて、請求項7ではユーザーによって表示された停止可能範囲を補正するようにしたものである。
【0014】
請求項8の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、減速操作の度合いが認識できる態様で前記車両の停止可能範囲を表示することを特徴とする。この減速操作の度合いが認識できる態様とは、例えば停止可能範囲を示す図形において、急減速して停止する範囲と徐々に減速して停止する範囲とを色を変えて表示する。これにより、ドライバーは目標地点に対して適切に減速操作を行うことができる。
【0015】
請求項9の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲のうち、理想的に減速操作したときの停止可能範囲を目立たせて表示することを特徴とする。例えば、目標地点に対して、早めに減速操作をすると再び加速しないといけない場合もある。反対に、遅めに減速操作をするとそれだけ危険がともなう。すなわち、目標地点に到達しようとするときは、理想的な減速操作をするのが望ましい。請求項9は、このようなことを想定してなされたものである。
【0016】
請求項10の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記施設データ又は分岐点を表示するときのみ、前記車両の停止可能範囲を表示することを特徴とする。一般的に、車両が減速操作をするのは、交差点を曲がったり、コンビニエンスストアに立ち寄ったりする場合である。請求項10はこのような趣旨のもとでなされたものである。見方を変えれば、施設データや分岐点が表示されない場合は停止可能範囲も表示されないので、この停止可能範囲が表示されることによる煩わしさを防ぐことができる。
【0017】
請求項11の車載ナビゲーション装置は、出発地及び目的地を設定する設定手段と、前記設定手段が設定した出発地から目的地までの経路を探索する探索手段とを備え、前記算出手段は、前記探索手段が探索した経路に沿った前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする。例えば、探索経路に沿って走行しているときに、車両が曲がるべき分岐点に近づいた場合でも直進したときの停止可能範囲を表示しても意味がない。そこで、請求項11では探索経路に沿って分岐点を曲がる方向を考慮した停止可能範囲を表示することができる。これにより、曲がった直後に目標地点がある場合でも、通りすぎることなく確実にその目標地点に到達することができる。
【0018】
請求項12の車載ナビゲーション装置は、前記地図データは、複数のスケールの地図データを有しており、前記表示手段は、前記複数のスケールの地図データを表示可能であり、当該複数のスケールの地図データのうち、所定スケール以上の地図データを表示しているときには、前記車両の停止可能範囲の表示を中止することを特徴とする。通常車両の停止可能範囲は数m〜数十m範囲であるため、ある程度のスケールの大きい地図にその停止可能範囲を表示しても、ドライバーは認識することができない。請求項12にこのような趣旨でなされたものである。
【0019】
請求項13の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段が表示する前記車両の停止可能範囲の表示をユーザーの操作によって中止する中止手段を備えることを特徴とする。これは、ユーザーによっては車両の停止可能範囲を表示するとかえって煩わしく感じる場合もあり、またはよく知っている道路を走行する場合には、停止可能範囲を表示するまでもない場合もあり得ることを考慮したものである。
【0020】
請求項14の車載ナビゲーション装置は、前記表示手段は、前記車両停止可能範囲の表示とともに、当該停止可能範囲に対応する前記車両が停止するまでの距離又は時間を示す情報を表示することを特徴とする。このように、停止するまでの距離や時間を示す情報を表示することにより、さらにドライバーは現在地と目標地点との相対位置関係を把握しやすくなる。すなわち、より目標地点に到達しやすくすることができる。この車両が停止するまでの距離又は時間を示す情報を表示方法としては、例えば車両の停止可能範囲を示す図形を、停止するまでの距離や時間に応じて色分けして表示する方法などが考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る車載ナビゲーション装置の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように車載ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、音声出力装置11、リモコンセンサ12、リモコン13、減速関連センサ群14及びこれらと接続する制御回路8から構成される。以下各構成部品について説明する。
【0022】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4(時には加減速度センサにて代用する場合もあり)、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。この位置検出器1により、車両の現在地が検出され、後述する制御回路8は、例えば、経路案内を行う際には、車両が探索経路のどの位置を走行しているのかを認識でき、また車両がその経路に沿って走行しているか否かを判定することができる。
【0023】
また、距離センサ4で用いられる車速を検出する車速センサ(図示せず)は、本発明の特徴である車速に応じた停止可能範囲の算出のために用いられる。その際の処理については、フローチャートを用いて後述する。
【0024】
地図データ入力器6は、道路の接続構造を示す道路地図データ、この道路地図データを用いた道路地図を表示する際に、地形や施設に関する背景を表示するための背景データ、地名等を表示するための文字データなどの各種の地図データを制御回路8に入力するためのものである。この地図データ入力器6は、上述した地図データを記憶する記憶媒体を備え、記憶媒体としては、そのデータ量からDVD−ROMやハードディスクを用いるのが一般的であるが、メモリカード等の他の記憶媒体を用いてもよい。
【0025】
ここで、地図データ入力機6の記憶媒体に記憶されている地図データについて、簡単に説明する。まず、道路地図データは、複数の道路が交差、合流、分岐する地点に関するノードデータと、その地点間を結ぶ道路に関するリンクデータを有する。ノードデータは、ノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、及び交差点種類などの各データから構成される。また、リンクデータは、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク長、始点及び終点座標、高速道路や一般道路などの道路種別、道路幅員、リンク旅行時間などの各データから構成されている。
【0026】
背景データは、地図上の各施設や地形等と、それに対応する地図上の座標を関連付けたデータとして構成している。なお、施設に関しては、その施設に関連付けて電話番号や、住所等のデータも記憶されている。また、文字データは、地名、施設名、道路名等を地図上に表示するものであって、その表示すべき位置に対応する座標データと関連付けて記憶されている。
【0027】
従って、この道路地図データに背景データ及び文字データを組み合わせることにより、道路を含む地図を表示することができる。また、道路地図データは、地図を表示する以外に、マップマッチング処理を行う際の道路の形状を与えるために用いられたり、目的地までの案内経路を検索する際に用いられる。
【0028】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、例えば、経路探索の際の出発地及び目的地の設定をするのに用いられる。
【0029】
外部メモリ9は、例えば、メモリカードやハードディスク等の記憶媒体からなる。この外部メモリ9には、ユーザーによって記憶されたテキストデータ、画像データ、音声データ等の各種データが記憶される。また、本実施形態では、車両の重量や、ブレーキの操作度合いと制動力との関係、タイヤ特性など減速操作に関連する車両情報を記憶している。さらに、外部メモリ9には、ドライバーの減速操作に関する癖の情報も記憶している。このドライバーの減速操作に関する癖とは、例えば減速操作をするタイミングが早いか遅いか、またブレーキペダルの踏み具合が強いか弱いかなどの情報をいう。この情報は、普段の走行時に自動的に取得し記憶される。後述するように、制御回路8はこの車両情報及びドライバーの減速操作に関する癖の情報を用いて、車速に応じた車両の停止可能範囲を算出している。
【0030】
表示装置10は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には、通常、車両の現在位置に対応する自車位置マーク、及び、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される自車両周辺の道路地図が表示される。また、操作スイッチ群7の操作によって、表示装置10には、メニュー画面や設定画面等の各種の画面が表示される。さらに、本発明の特徴である車両の停止可能範囲も、表示装置10に地図表示に重ねて表示される。
【0031】
音声出力装置11は、スピーカやオーディオアンプ等から構成されるもので、経路案内などの音声案内等を行う際に用いられる。
【0032】
また、本実施形態の車載ナビゲーション装置100は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)13及びリモコンセンサ12を備えており、このリモコン13によっても、上述した操作スイッチ群7とほぼ同様に、各種のナビゲーション操作を行うことが可能である。
【0033】
減速関連センサ群14は、車両が減速動作をしたときに停止可能範囲に関係してくる情報を取得する種々のセンサからなる。具体的には、先ずブレーキペダル、アクセルペダルの操作度合いを検出するセンサがある。これらの操作度合いは、車両の停止可能範囲に直接関係してくるからである。また、上述したドライバーの減速操作に関する癖の情報も、このブレーキレーキペダル、アクセルペダルの操作度合いを検出するセンサから取得される。次に、ヘッドライトの点灯を検出するセンサがある。これは、走行時間が昼間か夜間かを判定するために用いられる。つまり、ヘッドライトの点灯を検出したときは夜間走行と判定でき、検出できないときには昼間走行と判定することができる。このように、昼間、夜間走行の別を判定しているのは、夜間走行時は昼間走行時に比べて周囲が暗いことから、減速操作に入るタイミングが遅くなると考えられ、それによって停止可能範囲も異なってくると考えられるからである。次に、ワイパーの駆動を検出するセンサがある。これは雨が降っているか否かを判定するために用いられる。なお、降雨を直接検出するレインセンサを用いてもよい。この判定をするのは、雨が降っているときは路面が濡れているので、雨が降っていないときよりも停止するまでの距離が伸びるからである。つまり、停止可能範囲が異なってくるからである。次に、外気温を検出するセンサがある。これは外気温の状態で、路面が降雪や凍結になっているか否かを判定する為に用いられる。この判定をするのも、路面が降雪や凍結している場合は、停止距離が著しく異なってくるからである。
【0034】
制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、制御回路8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPUが上記各部を利用した各種演算処理を行う。例えば、ユーザーから出発地と目的の設定があった場合には、地図データを用いて、その出発地から目的地までの最適経路を探索し、その探索経路を沿って車両を誘導案内する。また、経路を設定していない場合であっても、位置検出器1からの信号に基づいて車両の現在地を検出し、それを地図データの道路上の位置にくるようにマッチング処理を行う。
【0035】
さらに制御回路8は、表示装置10に、現在地マーク及びその周辺地図とともに、車速に応じて車両が減速動作をしたときに停止可能範囲を重ねて表示する処理を行う。このときの処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、この停止可能範囲を表示する前提として、表示装置10に表示されている地図のスケールが所定以下であるとする。これは、通常車両の停止可能範囲は数m〜数十m範囲であるため、所定以上のスケールの大きい地図にその停止可能範囲を表示しても、ドライバーは認識することができないためである。
【0036】
先ずステップS10において、車速を取得する。次にステップS11において、ドライバーが車両の減速操作をしたときにおける、車速に応じた理想停止距離を演算する。ここでいう理想停止距離とは、標準的な車両に対する標準的なドライバーが普通の減速操作をしたときに、その車両が停止するまでの距離をいうものとする。この理想停止距離を、車両の運動エネルギー(車速、車両の重量)と制動力、タイヤと路面との摩擦力などによって算出することができる。
【0037】
次にステップS12において、減速操作に関連する情報を取得する。具体的には、外部メモリ9に記憶されている車両の重量などの車両情報、減速操作に関するドライバーの癖の情報、及び減速関連センサ群14から昼間か夜間かの情報、雨が降っているか否かの情報を取得する。そして、これらの情報に基づいて、ステップS13において停止可能範囲を算出する。具体的には、ステップS12にて算出した理想停止距離を補正し、さらにブレーキペダルを操作して最短で停止することができる距離、及び最長で停止することができる距離を算出する。例えば、ステップS12にて算出したときの標準的な車両に比べて、重量が重い車両である場合には、その理想停止距離が大きくなるように補正されることになる。また、ドライバーの減速操作のタイミングが標準的な人よりも遅い場合には、全体的に停止可能範囲は現在地から離れるように算出されることになる。
【0038】
次にステップS14において、位置検出器1に基づいて現在地を検出し、ステップS15において、その現在地を示すマーク及び現在地周辺の地図を表示装置10に表示する。これと同時にステップS16において、ステップS13にて算出した車両の停止可能範囲を示す図形を、図3に示すように表示装置10に表示されている地図に重ねて表示する。なお、図3に示している車両の停止可能範囲を示す図形は、理想停止位置に近づくにつれて徐々に幅が広くなっている。これにより、ドライバーは理想停止位置を一見して把握することができ、さらに停止位置によってその図形の幅が異なっているので、ドライバーはどのくらいの加減で減速すればよいのかが短時間で把握することができる。このように、地図に重ねて車両の停止可能範囲を表示することにより、ドライバーは交差点やコンビニエンスストアなどの目標地点が停止可能範囲に含まれているか否かによって、安全、確実にその目標地点に到達することができる。例えば、図3に示す例で言えば、画面には車両の進行方向の先にコンビニエンスストア表示されており、そのコンビニエンスストアが停止可能範囲を示す図形に含まれつつあるので、ドライバーは徐々に減速すればそのコンビニエンスストアに到達できる。またドライバーによっては、そのコンビニエンスストアは未だ理想停止位置に到達していないので、それまでは注意しつつ減速操作を控えることも考えられる。理想停止位置で減速操作をしたほうが自然に車両を停止させることができるからである。さらに、表示されている交差点が曲がるべき交差点である場合には、その交差点が理想停止位置より手前にあることから、通常よりブレーキペダルを強く踏む必要があることが分かる。いずれにせよ、地図に重ねて車両の停止可能範囲を表示することにより、ドライバーは車両と目標地点との位置関係を把握することができ、確実かつ安全にその目標地点に到達することができる。
【0039】
その後再びステップS10に戻り、上述の処理が繰り返される。すなわち、ドライバーが加減速操作をすることにより車速が変化するので、リアルタイムで停止可能範囲が変化することになる。したがって、ドライバーは各時点において適切な減速操作をすることができる。
【0040】
以上本実施形態の車載ナビゲーション装置100では、地図に重ねて車速に応じた車両の停止可能範囲を表示する。この停止可能範囲は、車両の特性、ドライバーの癖、昼間・夜間の別、路面状況を反映して算出したものであるので、より実際の停止可能範囲と一致したものと言える。これにより、ドライバーは画面から現在地と目標地点との相対的な位置関係を把握することができ、その目標地点に確実、かつ安全に到達することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。例えば、本実施形態では車両の停止可能範囲を示す図形として、減速度合いが認識できるように、停止位置に応じてその図形の幅を変えていた(図3参照)。そこで、例えば図4に示すように、車両の停止可能範囲を示す図形は停止位置にかかわらず一定で、色、グラデーションを停止位置に応じて変えることによって、停止位置に応じた減速度合いを認識できるようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0042】
また本実施形態では、常に車両の進行方向に対する停止可能範囲を示す図形を表示していた。しかし、経路設定がされている場合に、交差点を曲がることがあらかじめ分かっているにもかかわらず、その交差点において車両進行方向の停止可能範囲を表示してもほとんど意味がない。逆に曲がった先の目標地点を通りすぎてしまうことも起こりうる。そこで、経路が設定されている場合は、その経路に沿って車両の停止可能範囲を表示するようにしてもよい。図5はこれを実現する処理を示すフローチャートである。なお、上述した処理と同一の処理には同一の符号を付している。同図に示すように、図2のフローチャートとはステップS17が異なっているだけである。つまり、ステップS17において、探索経路に沿って車両の停止可能範囲を表示する。これによって、図6に示すように車両が曲がるべき交差点に近づいたときには、停止可能範囲も曲がって表示される。したがって、曲がった先の目標地点に対しても、現在地との相対的な位置関係を把握することができ、確実、かつ安全にその目標地点に到達することができる。
【0043】
また、本実施形態では車両が走行している間は常に停止可能範囲を示す図形を表示していた。しかし、通常ドライバーが減速操作をするのは、分岐点を曲がるときやコンビニエンスストアなどの施設に立ち寄る場合である。そこで、分岐点又は施設を表示するときのみ車両の停止可能範囲を表示するようにしてもよい。図7は、これを実現する処理を示すフローチャートである。なお、上述した処理と同一の処理には同一の符号を付している。同図に示すように、図2のフローチャートのステップS15とS16の間に、分岐点又は施設が有るか否かを判定する処理(ステップS18)を入れることによって実現できる。つまり、ステップS18において分岐点又は施設がない場合には、停止可能範囲を表示しないでステップS10に戻る。これにより、分岐点又は施設がないにもかかわらず停止可能範囲を表示することに対する煩わしさを防ぐことができる。
【0044】
また、ドライバーによってはどのような状況にあっても停止可能範囲を表示する必要はないと考える場合も予想される。または、よく知っている道路を走行する場合には、停止可能範囲を表示するまでもない場合も考えられる。そこで、停止可能範囲の表示を停止するスイッチを設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態では停止可能範囲を示す図形を、減速度合いが認識できるように表示していた(図3、図4参照)。さらに、停止可能範囲の停止位置に応じた停止するまでの距離又は時間も把握できるようにしてもよい。例えば、図8(a)、(b)に示すように、停止可能範囲を停止位置に応じて色分け表示する。これにより、ドライバーはさらに現在地と目標地点までの相対的な位置関係を把握しやすくなると考えられる。
【0046】
また、本実施形態では停止可能範囲を表示するのに、それを示す図形を用いていた。しかし、停止可能範囲が画面上で認識できればこれにかぎられることはなく、例えば図9(a)に示すように、停止可能範囲に含まれる地図表示物(交差点、施設)の色を変えたり、又は点滅させたりして強調表示してもよい。または図9(b)に示すように、停止可能範囲に含まれる地図の道路を色を変えるなどして強調表示してもよい。
【0047】
また、本実施形態では画面に2次元の地図が表示されている場合における、車両の停止可能範囲について説明したが、3次元の地図表示がされている場合にも適用してもよい。例えば、図10(a)に示すように、停止可能範囲に含まれたときには表示物の色を変えたり、図10(b)に示すように、停止可能範囲を道路に重ねて表示したりする。これにより、ドライバーはどの範囲が停止可能範囲かを認識することができる。
【0048】
また、本実施形態における停止可能範囲は、各種条件を考慮して算出したとはいっても、あくまで理論値であるため、ドライバーが想定している停止可能範囲とは若干ずれている場合も予想される。また、複数の人が頻繁に運転する場合には、外部メモリ9に記憶するドライバーの癖が、今現在運転しているドライバーの癖とは異なっている場合も考えられる。そこで、ドライバー自身がこの停止可能範囲の表示位置を微調整できるようにしてもよい。具体的には、例えばリモコン13に備えられている十字キーの操作方向に停止可能範囲を移動させる。これにより、より実際に近い停止可能範囲を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】画面に現在地及びその周辺地図の表示とともに、これに重ねて車両の速度に応じた停止可能範囲を表示する処理を示すフローチャートである。
【図3】現在地及びその周辺地図とともに、停止可能範囲を示す図形を表示した例図である。
【図4】現在地及びその周辺地図とともに、停止可能範囲を示す図形を表示した例図であって、減速の度合いをその停止可能範囲内で色分けして表したものである。
【図5】経路設定がされている場合の、画面に現在地及びその周辺地図の表示とともに、これに重ねて車両の速度に応じた停止可能範囲を表示する処理を示すフローチャートである。
【図6】経路設定がされている場合の、その経路に沿って停止可能範囲を表示したことを示す例図である。
【図7】分岐点、又は施設を表示するときのみ、停止可能範囲を表示する処理を示すフローチャートである。
【図8】停止可能範囲とともに、停止位置に応じた停止するまでの距離(同図(a))、時間(同図(b))も表示したことを示す例図である。
【図9】停止可能範囲を示す図形の代わりに、停止可能範囲に含まれる分岐点や施設を強調表示したことを示す例図(同図(a))、地図の道路を強調表示したことを示す例図(同図(b))である。
【図10】3次元地図表示した場合における、停止可能範囲を示した例図である。
【符号の説明】
【0050】
100 車載ナビゲーション装置
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11 音声出力装置
12 リモコンセンサ
13 リモコン
14 減速関連センサ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地を検出する位置検出手段と、
前記車両が立ち寄る可能性のある施設データを含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両の現在地を示すマークとともに、その周辺の地図データを表示する表示手段とを備える車載ナビゲーション装置において、
前記車両の速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段が検出した前記車両の速度に応じた当該車両の減速操作に伴う停止可能範囲を算出する算出手段とを備え、
前記表示手段は、前記算出手段が算出した前記車両の停止可能範囲を前記表示している地図データとともに表示することを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲を示す図形を前記地図データに重ねて表示することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲に含まれる道路又は前記施設データ自体を目立つ態様で表示することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両の減速操作に関するドライバーの癖を学習する学習手段を備え、
前記算出手段は、前記学習手段が学習した前記車両の減速操作に関するドライバーの癖を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記車両の減速操作に関する車両情報を取得する車両情報取得手段を備え、
前記算出手段は、前記車両情報を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項6】
少なくとも道路の路面状況又は走行時間帯に関する走行時の環境情報を取得する環境情報取得手段を備え、
前記算出手段は、前記環境情報取得手段が取得した前記路面状況又は走行時間帯を考慮して、前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記表示手段が表示する前記車両の停止可能範囲をユーザーによって補正させる補正手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記表示手段は、減速操作の度合いが認識できる態様で前記車両の停止可能範囲を表示することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記車両の停止可能範囲のうち、理想的に減速操作したときの停止可能範囲を目立たせて表示することを特徴とする請求項8に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記表示手段は、前記施設データ又は分岐点を表示するときのみ、前記車両の停止可能範囲を表示することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項11】
出発地及び目的地を設定する設定手段と、
前記設定手段が設定した出発地から目的地までの経路を探索する探索手段とを備え、
前記算出手段は、前記探索手段が探索した経路に沿った前記車両の停止可能範囲を算出することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項12】
前記地図データは、複数のスケールの地図データを有しており、
前記表示手段は、前記複数のスケールの地図データを表示可能であり、当該複数のスケールの地図データのうち、所定スケール以上の地図データを表示しているときには、前記車両の停止可能範囲の表示を中止することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項13】
前記表示手段が表示する前記車両の停止可能範囲の表示をユーザーの操作によって中止する中止手段を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項14】
前記表示手段は、前記車両停止可能範囲の表示とともに、当該停止可能範囲に対応する前記車両が停止するまでの距離又は時間を示す情報を表示することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−24599(P2007−24599A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204809(P2005−204809)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】