車載用表示装置及び音響制御方法
【課題】表示モード及び画像ソースの変更したときの、視聴者に応じた音響環境の提供と、使用者の操作性の向上を図る。
【解決手段】運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定する。以上の構成により、マルチビューディスプレイで、表示される画像のソースに応じて、最適な音響設定が自動的に行なわれるので表示モードに応じて、視聴者が手動で音響設定を変更する手間が省かれる。また、操作者に合った操作画面を表示することができる。これにより、視聴者の操作性が飛躍的に向上する。
【解決手段】運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定する。以上の構成により、マルチビューディスプレイで、表示される画像のソースに応じて、最適な音響設定が自動的に行なわれるので表示モードに応じて、視聴者が手動で音響設定を変更する手間が省かれる。また、操作者に合った操作画面を表示することができる。これにより、視聴者の操作性が飛躍的に向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる車載装置に係り、特に音声出力と操作表示に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、単一の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる、いわゆるマルチビューディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マルチビューディスプレイを具備した再生装置の音声出力部として、複数の高指向性スピーカにより各視聴者に対し個別の音声出力を提供する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−78080号
【特許文献2】特開2005−101979号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチビューディスプレイを有する車載ナビゲーション装置の場合、運転席側からナビゲーション画像を、助手席側からDVD画像等が視認できる。この場合、助手席の乗員には運転席側のナビゲーション画像が見えないため、映画等の表示画像を車内でも集中して観賞することができる。一方、音響環境に関しては、映像の視聴者が助手席側の同乗者であるにも関わらず、通常、運転席・助手席の中心に音像が設定されている。しかし、映画等のDVDでは、音響効果が重要である場合が多く、DVD映像を観賞しない運転者にDVD観賞に適した音響は不必要であるため、助手席同乗者が良好な音響環境で観賞できるよう音響設定を調整する必要があった。また、運転者よりも助手席同乗者は操作に慣れていないことがあり、同じ操作表示では操作が分かりにくいことがあった。本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、視聴者に応じた音響環境の提供と、使用者の操作性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る車載表示装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る車載音響装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示するデュアル表示モード、又は共通の画像ソースに基づく画像を該画面上に表示するシングル表示モードを検知する手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0007】
また本発明に係る車載表示装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、共通の画像ソースに基づく画像を前記表示手段に表示するシングル表示モードと、前記第1の画像及び前記第2の画像を前記表示手段に表示するデュアル表示モードとを切り換える手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0008】
また本発明に係る車載表示装置は、第1の視方向に第1の画像を、第2の視方向に第2の画像を、それぞれ同一画面上に表示可能な表示手段を備え、前記第1の画像を前記第1及び第2の視方向に表示するシングル表示モード、又は前記第1の画像を前記第1の視方向に、前記第2の画像を前記第2の視方向に、表示可能なデュアル表示モードによる表示を前記表示手段にさせ、表示画像に対して操作可能な操作表示をさせる表示制御手段と、前記シングル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示と前記デュアル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示が異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マルチビューディスプレイで、表示される画像のソースに応じて、最適な音響設定が自動的に行なわれるので表示モードに応じて、視聴者が手動で音響設定を変更する手間が省かれる。また、操作者に合った操作画面を表示することができる。これにより、視聴者の操作性が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチビュー車載表示装置の概念を説明するための図である。図1は、表示部100に対する観察者、例えば運転者(運転席)DR、助手席同乗者(助手席)PAの相対的位置に応じて、換言すれば表示部100に対する視野角に応じて、運転者DRは第1の画像IM1を、助手席同乗者PAは第2の画像IM2を実質的に同時に見ることができ、しかも各々の画像IM1、IM2は表示部100の表示面全体に渡ってみることができることを概念的に示している。
【0012】
この車載表示装置は、図1に示すように、表示制御部1、表示部100等から構成されている。表示制御部1は、供給源としての第1の画像ソースS1から画像データDT1が供給されるとともに、供給源としての第2の画像ソースS2から画像データDT2が供給されて、これら第1及び第2の画像データDT1、DT2からなる画像データADTを共通の表示部100へ出力する。
【0013】
表示部100は、図2に示すように、液晶パネル101、バックライト102、視差バリア115、タッチパネル103等から構成される。液晶パネル101は、バックライト102側から順に配置された、偏光板111、TFT基板(Thin Film Transistor)112、液晶層113、RGBの3原色の画素をもつカラーフィルタ基板114、視差バリア115、ガラス板116、偏光板117から構成された周知の構造を有する。この液晶パネル101は、例えば水平方向に800画素、垂直方向に480画素が配列された表示画面を有し、この表示画面には、水平方向において左側(助手席側PA)表示用画素118と右側(運転席側DR)表示用画素119とが交互に配置されて構成されている。また視差バリア115は、遮蔽部と透光部が交互に配置された構造を有し、右側表示用画素を透過した光、及び左側表示用画素を透過した光は、視差バリア115により、それぞれ右側及び左側に選択的に透過する。これにより、液晶パネル101の右側(運転席側DR)からは第1の画像IM1が視認でき、左側(助手席側PA)からは第2の画像IM2が視認できる。但し、視差バリア115は、特開平10−123461号公報や特開平11−84131号公報等に開示されているものを適用することができる。また、タッチパネル103は、透明なシート状に形成されて液晶パネル101の前面に貼着される。なお、第1、第2の画像ソースS1、S2が同じであれば、左右の利用者が同じ画像を見ることができる。
【0014】
図3は本発明に係る車載表示装置2の外観図である。車載表示装置2は、表示画面3および操作部4等を有する表示部100と本体部5からなる。図3(a)のように、表示部100は、本体部5の前面の周囲に設けられたフレームに収められた状態で使用する。また表示部100をチルト(斜動)させて、本体に対する角度の調整をすることができる他、図3(b)のように表示部100をオープンさせることにより表示部100を開けることができ、本体部5の前面よりCDやDVD、半導体メモリ等の記憶媒体を挿入・排出操作することができる構造となっている。
【0015】
図4は、本発明の車載表示装置2を車両へ適用した例を示す斜視図である。表示部100は、図4に示すように、車両のダッシュボード部分の運転席DRと助手席PAとの間に配置されており、運転者DR又は助手席同乗者PAは、表示部100に表示された異なる第1の画像IM1及び第2の画像IM2を同時に見ることができる。また表示部100には、車載表示装置2を手動で操作するための操作部4が設けられている。そして、車両の各ドアにはスピーカ6が配置され、表示画像に連動した音声や警告等が出される。
【0016】
上述の構成に、画像ソースとしてナビゲーションやテレビ、DVD等を備えることにより、例えば運転者DRがカーナビゲーションによる運転支援を受けるのと同時に、同乗者PAはテレビやDVDを楽しむことができる。しかもそれぞれの画像は例えば7インチの画面全体を使用して表されるため、従来のマルチウィンドウ表示のように画面サイズが小さくなることもない。つまり、運転者、同乗者にとっては、あたかも各々に独立した専用のディスプレイがあるかの如く、それぞれに最適な情報やコンテンツが提供されるのである。
【0017】
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る車載表示装置の具体的な構成を示す図であって、図5は車載表示装置の機能ブロック図、図6は表示手段34及び音響制御手段61の機能ブロック図である。
【0018】
この車載表示装置は、図5に示すように、表示部100に加えて、制御部10、分配回路11、第1及び第2の画質調整回路12A、12B、画像出力部30、音声出力部60等から構成されている。
【0019】
制御部10は、図5に示すように、車両に搭載されて画像や音声を供給する画像・音声ソース(供給源)40としての、外部からの音声や映像を入力する外部音声/映像入力部41、CD/MD(Compact Disc/Mini Disk)再生部42、ラジオ受信部43、TV受信部44、DVD(Digital Versatile Disc)から音楽情報や画像を再生するDVD再生部45、HD(Hard Disk)に記録された画像や音楽情報を再生するHD再生部46、GPS情報受信部47等が受信した地理情報を基にした地図やルート案内画像を出力するナビゲーション部48等と接続されて、これらとの間でデータを授受すると共にこれらを制御する。また、制御部10には、各種データを記憶する外部メモリ13、タッチパネル103上に表示、もしくは表示部100周辺に備えられており、車載表示装置2を操作や表示内容を選択・変更するためのボタン・スイッチやリモコンを含む操作部14、運転席や助手席に設けられる感圧センサ等で構成されて車両の乗員を検出する乗員検知センサ18等が接続され、制御部10は、これらから得られる各種データに基づいて各種制御が可能となっている。
【0020】
メモリ13は、例えば、フラッシュメモリ等の電気的書き換え可能な不揮発性メモリ又はバッテリバックアップされた揮発性メモリにより構成されており、制御部10による制御に必要なデータ等を記憶している。具体的には、例えば、後述する可視領域を設定するための設定情報や、車両のハンドル位置等の車両情報を記憶保持する。
【0021】
分配回路11は、図5及び図6に示すように、上記した画像・音声ソース40から供給される音声データADや画像データPDを、制御部10からの制御指令に応じて、音声処理部60、第1の画質調整回路12A、あるいは、第2の画質調整回路12Bへ分配する。第1及び第2の画質調整回路12A,12Bは、図示しないが、それぞれコントラスト調整部、輝度調整部、色調調整部、ガンマ値調整部等から構成され、制御部10からの制御指令に応じて、第1及び第2の画像データPD1、PD2の画質(コントラスト、輝度、色調、ガンマ値)をそれぞれ調整する。調整された画像データPD1、PD2は、画像出力部30を介して、表示手段34である表示部100にて表示される。なお、画像出力部30では、調整された第1及び第2の画像データPD1、PD2を第1及び第2の書込み回路31A、31Bを介して、VRAM(Video RAM)32の所定のアドレスに書き込まれ合成される。この合成した画像データは、液晶パネル101の各画素に対応しており、VRAM32に保持されている合成データに基づいて、表示パネル駆動部33が液晶パネル101の対応する画素を駆動する。
【0022】
一方、分配された音声データADは、音響制御手段61を介して、スピーカ6(DS〜RL)に出力される。音声制御手段61は、音声処理部60と制御部10等から構成され、音声処理部60では、音声データはA/D変換器62によりデジタル信号に変換され、DSP63(Digital Signal Proccecor)にて、各種音声処理がされる。処理された音声データは、D/A変換器64によりアナログ信号に変換され、アンプ65(DS〜RL)で増幅され、音声切替手段66で選択された音声が各スピーカ6から出力される。ここで、各種音声処理とは、EQ(Equalizer)で音質を、SFC(Sound Field Control)で反射音や残響音などの音響効果を、VOL(Volume)で音量を調整する処理などを言う。なお、車載音響装置は、制御部10及び音声処理部60で構成され、制御部10は、選択された画像ソースや表示モードを認識し、それに応じて音声処理部60で最適な音響環境を設定するよう制御する。
【0023】
以上の構成により、シングル表示モードからデュアル表示モードに切り換えられ、助手席同乗者がDVD等のビデオ画像を視聴する場合、通常音響モードから助手席側音響モードに設定変更することができ、手間な操作をすることなく、助手席同乗者に良好な音響環境を提供できる。
【0024】
ここで、表示モードについて説明する。シングル表示モードとは、第1の画像ソースS1と第2の画像ソースS2とが同一の画像ソースであり、この単一ソースに基づいて、同一の画像を第1及び第2の画面に表示する状態を言い、例えば図7の(a)に示すように、運転席側画像と助手席側画像とが同一のナビゲーションの画像として表示され、実質的に通常の1画面上に1画像が表示されているように見える。一方、デュアル表示モードとは、第1の画像ソースS1と第2の画像ソースS2とが異なる画像ソースであり、この異なる画像ソース或いは同一の画像ソースに基づいて、第1の画像IM1及び第2の画像IM2を第1及び第2の画面にそれぞれ表示し得る状態を言い、例えば図7の(b)に示すように、ソース選択操作により、運転席側画像としてナビゲーションの画像を表示し、助手席側画像としてTV(ビデオ)画像が表示され、運転者DRと助手席同乗者PAで異なる画像を見ることができる。なお、シングル表示モードでは、表示部100に表示された操作ボタンをタッチパネル103で、又は表示部100の枠周辺部に設置された操作部14で入力操作された指示が、両画面に表示される画像に反映される。例えば操作部14等を介してTV画像の表示が指示されると、第1及び第2の画面にTV画像が表示される。但し、デュアル表示モードでも、運転席側画像と助手席側画像が同一の画像である場合もあるが、操作を画面毎に別個に行える点がシングル表示モードと異なる。また図示しないが、デュアル表示モードの状態では、運転席側画像及び助手席側画像にTV画像が表示されていても、所定の規制(車両走行時の動画視聴規制)時には、運転席側画像の出力を規制し、助手席側画像にはTV画像がそのまま表示される。さらに、シングル表示モードとデュアル表示モードは、切換スイッチ等の表示モード切換手段7により切り換えることができる。また、第1の画像IM1又は第2の画像のどちらに対する操作を行なうか(操作権の選択)は、選択手段8により選択してもよい。
【0025】
次に、音響モードについて説明する。通常音響モードとは、シングル表示モード、つまり通常の1画面表示のように表示されているときの音響設定である。例として、各スピーカ6から出力される音の交点となり音の中心位置となる音像位置の場合、運転席と助手席の乗員が公平に音声を聴くことができるよう運転席と助手席の間に設定させている(図8(a))。一方、助手席側音響モードとは、助手席同乗者に配慮した音響設定であり、例えば、音像位置を助手席側に設定させている(図8(b))。その他、音場効果については、通常音響モードでは設定せず、助手席音響モードでは、ライブモードやコンサートホールモード、シアターモードなどの音場モードに設定させた場合などがある。なお、通常音響モードと助手席側音響モードが同じ設定である場合もあるが、助手席同乗者に最適な音響環境に設定することが好ましい。また通常音響モード及び助手席側音響モードは、ともに音像位置や音場効果の変更が可能である。さらに音場効果とは、例えばライブ会場やコンサートホール、映画館で聴くような音響環境にすることを言い、あたかもその場に居るかのような臨場感を楽しむことができる。
【0026】
図9に、表示手段34の処理フローの一例を示す。まず、操作手段14による表示モードの切り換え操作があり(ST1)、表示モードがデュアル表示モードであると判断された場合(ST2)、助手席側ソースはビデオ(DVDやテレビ等)ソースであるかを判断する(ST3)。ST3で、助手席側ソースがビデオソースであると判断されると、音響設定を助手席側音響モードの助手席側音像定位及びシアターモードにする(ST4)。このようにすることにより、表示モードをデュアル表示モードに切り換え、同乗者がビデオ画像を見ようとすると、画面の遷移と同時に、同乗者にとって良好な音響環境の設定とすることができる。一方、ST2で現在デュアル表示モードではない、つまりシングル表示モードである場合、もしくはST3で助手席側ソースがビデオソースでない場合は音響設定を通常音響モードにする(ST5)。このように、同乗者のみがビデオ画像を見るとき以外は、通常の音響設定にし、運転者にも同様の音響環境を提供できるようにすると、例えば動画映像を伴わない音楽再生であれば運転者もナビ画像を見ながら楽しむことができる。また、表示モードの切替操作ではなく、助手席側に表示されている画像のソース変更された場合(ST6)、ST3で表示モードを判断し、以後上記と同じ判断となる。このようにすることにより、デュアル表示モードにおいて、例えば運転席・助手席画像ともナビゲーションから、同乗者がDVDを視聴しようと思い、表示画像ソースをDVDに切り換えた場合にも、助手席側音響モードに切り換えることができる。
【0027】
図10に、上述した音響モードと表示画像のソースの組み合せを示す。図10のように、デュアル表示モードで、助手席画像がDVDやテレビのようなビデオ画像である場合に、音響モードを助手席側音響モードとし、それ以外の表示モード及び画像では、通常音響モードとしている。こうすることにより、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合には、同乗者が最適な音響環境で、ビデオ画像を視聴でき、ビデオ画像ではなくナビ画像等で音楽を聴く場合などには、運転者も同乗者と同様の音響環境で、楽しむことができる。ここで、運転席・助手席ともに同じ画像ソース(ビデオ)でもデュアル表示モードの場合に助手席側音響モードとするのは、デュアル表示モードが助手席に配慮した表示モードだからである。例えば、1画面に1画像しか表示できない車載表示装置では規制(走行規制等)等により見ることができない画像であっても、デュアル表示モードでは運転席と助手席で異なる画像を表示させることができるため、規制により運転席側画像が視聴できないとしても、助手席側画像は視聴可能である。そのため、デュアル表示モードにすることにより、助手席同乗者は、走行状態に関わらず、画像を視聴することができ、助手席に配慮した表示モードと言える。また、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合とするのは、DVDやテレビ等のビデオ画像は、ナビゲーション画像とは異なり、集中して見たい場合が多く、音響環境を視聴者にとって最適な環境にすることによって、助手席同乗者はより画像を楽しむことができるからである。つまり、シングル表示モードからデュアル表示モードに切り換え、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合に、通常の音響モードから助手席側音響モードにすることによって、助手席同乗者はより簡単に快適に、ビデオ画像を観賞することができる。こうすることにより、助手席同乗者は、表示モードを切り換えることによって視聴する画像のソースを変更しただけで、それに合った音響設定にすることができ、大変便利となる。なお、デュアル表示モードであっても運転席側画像及び助手席側画像が共にナビゲーション画像である場合などの両者にとって重要な表示画像である場合には、通常音響モードにすることが好ましい。また運転者のみが乗車している場合などでは、通常音響モードを運転者にとって最適な音響環境に設定しても良い。また、両席ともビデオ画像である場合に、両者に最適な音響環境を設定したい場合は、音響モードの自動変更を設定・解除できるようにしておくとよい。
【0028】
また、音響環境の変更方法としては、スピーカからの出力の遅延や音圧変化、出力するスピーカの選択などがある。さらに、運転席近傍に運転者専用6DSスピーカを設け、運転席側画像に対する音声出力の助手席への影響を軽減するようにしても良い。このとき、運転者専用スピーカとして、超音波スピーカなどの高い指向性を持つスピーカを用いるのが好ましい。これにより、助手席側音声に影響を及ぼさないだけではなく、運転手専用の音空間を作ることができる。この場合、ナビゲーション案内音声はもちろん、運転者が車のエンジン音や走行音、操作のクリック音などを聞きたい場合、これらの音を運転者専用スピーカで出力することにより、助手席同乗者に聞かせることなく(同乗者の観賞を妨げることなく)、運転者が快適に音声を楽しむことができる。さらに助手席への音声を軽減したい場合は、マイクを設置し、ノイズに対して逆位相の波を発するようなノイズキャンセラー機能を持たせても良い。その他、タクシーなど運転手が乗客を乗せる車両においては、ナビゲーションの案内音声を乗客に聞かせることなく、運転手だけが知ることができる。これにより、乗客に不快感を与えることなく、運転手は確実に案内を知ることができる。
【0029】
次に、本発明に係る車載表示装置の他の実施例として、選択操作を行なう際の車載表示装置の画面表示を、運転者DRに比べて操作が不慣れである場合が多い助手席同乗者PAに、分かりやすくする場合を説明する。一般に、運転手は車載装置の操作に慣れていることが多いが助手席同乗者は、操作が初めての場合や子供の場合など、車載装置の操作に慣れていない場合が多い。そのため、同乗者が操作をする場合、シングル表示モードではナビ画像を見ている運転者の指示により操作ができていても、デュアル表示モードにおいて、運転者がナビ画像を見られないときには、同乗者に配慮した操作表示画像が必要となる。
【0030】
図11に、表示手段34の処理フローを示す。まず、表示モードを判断し(ST11)、デュアル表示モードであると判断されると、運転席側表示画像IM1及び助手席側表示画像IM2のどちらに対して操作可能であるかの操作権状況を判断する(ST12)。ST12で、操作権が助手席側であると判断されると、選択操作等の表示画面が助手席用の操作画像になり(ST13)、ST11でシングル表示モード、またはST12で運転席操作権であると判断されると、通常操作画像(ST14)が表示される。こうすることで、デュアル表示モードにおいて運転者がナビ画像を見て指示できない場合でも、ナビゲーション等の選択や決定の操作をする助手席同乗者が、操作に迷わないように表示させることができる。ここで、通常操作画像とは、例えば図12(a)に示すナビゲーションの目的地設定画像ように、運転者が操作することを想定した表示画像であり、この場合、走行中に操作することを想定しているため、1画面に多くの細かい情報120を表示し操作回数を少なくするように設定されている。一方、助手席操作画像は、同乗者が操作する場合であり、運転操作を行っていないため、操作回数よりも分かりやすさを優先させた表示にする。例えば、図12(b)のように、よく使われる情報の選択ボタン130を大きく表示したり、操作に不慣れな助手席同乗者にヘルプ表示131で説明表示を見ることが可能にしたりする。またナビゲーション操作以外では、図12(c)のように、ナビゲーション操作ボタン140とオーディオ操作ボタン141を同一画面上に表示させたり、図12(d)のように「POS」ボタン150を「POSITION(ポジション):音像の位置を変更」のように略語を略さない表示にし、説明を表示させたりするようにしても良い。こうすることで、音響設定の操作の利便性を向上させ、助手席同乗者に配慮した表示が行なうことができる。また、操作権の選択操作でも、上述した設定変更を行なうようにしても良い。このように、助手席同乗者が操作する画面を通常の操作画面よりも分かりやすい表示にすることで、助手席同乗者は操作を容易に行なうことができる。なお、実施例では、助手席同乗者が操作に不慣れであるため、通常操作画面よりも簡単な表示とするとしたが、操作に慣れている場合などは、より情報量の多い操作画面にするなど、操作者の操作レベルに応じた表示に設定できるようにしても良い。
【0031】
なお、実施例中の車載装置2は、表示部100と一体型であっても、表示部100とは別途接続可能な別体型であっても良い。また、視差バリア115の効果を無効または除去することで、シングル表示させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチビュー車載表示装置の概念図である。
【図2】表示部100の断面構造の概略図である。
【図3】発明の一実施形態に係る車載表示装置2を示す図である。
【図4】発明の一実施形態に係る車載表示装置2の搭載例を示す斜視図である。
【図5】車載表示装置2の機能ブロック図である。
【図6】表示手段34及び音響制御手段61の機能ブロック図である。
【図7】シングル表示モード及びデュアル表示モードを説明する図である。
【図8】車両内における音響環境を説明する図である。
【図9】本発明の音響制御手段61のフローチャートである。
【図10】音響モードと表示画像のソースの組み合せを示す図である。
【図11】表示手段34のフローチャートである。
【図12】発明の一実施形態に係る車載表示装置2に表示される表示画像の例である。
【符号の説明】
【0033】
1 表示制御手段
2 車載表示装置
3 表示画面
4、14 操作部
5 本体部
6 スピーカ
10 制御部
11 分配回路
12A、B 第1及び第2の画像調整回路
30 画像出力部
34 表示手段
40 画像・音声ソース
60 音声処理部
61 音声制御手段
100 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる車載装置に係り、特に音声出力と操作表示に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、単一の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる、いわゆるマルチビューディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マルチビューディスプレイを具備した再生装置の音声出力部として、複数の高指向性スピーカにより各視聴者に対し個別の音声出力を提供する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−78080号
【特許文献2】特開2005−101979号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチビューディスプレイを有する車載ナビゲーション装置の場合、運転席側からナビゲーション画像を、助手席側からDVD画像等が視認できる。この場合、助手席の乗員には運転席側のナビゲーション画像が見えないため、映画等の表示画像を車内でも集中して観賞することができる。一方、音響環境に関しては、映像の視聴者が助手席側の同乗者であるにも関わらず、通常、運転席・助手席の中心に音像が設定されている。しかし、映画等のDVDでは、音響効果が重要である場合が多く、DVD映像を観賞しない運転者にDVD観賞に適した音響は不必要であるため、助手席同乗者が良好な音響環境で観賞できるよう音響設定を調整する必要があった。また、運転者よりも助手席同乗者は操作に慣れていないことがあり、同じ操作表示では操作が分かりにくいことがあった。本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、視聴者に応じた音響環境の提供と、使用者の操作性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る車載表示装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る車載音響装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示するデュアル表示モード、又は共通の画像ソースに基づく画像を該画面上に表示するシングル表示モードを検知する手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0007】
また本発明に係る車載表示装置は、運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、共通の画像ソースに基づく画像を前記表示手段に表示するシングル表示モードと、前記第1の画像及び前記第2の画像を前記表示手段に表示するデュアル表示モードとを切り換える手段と、車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴としている。
【0008】
また本発明に係る車載表示装置は、第1の視方向に第1の画像を、第2の視方向に第2の画像を、それぞれ同一画面上に表示可能な表示手段を備え、前記第1の画像を前記第1及び第2の視方向に表示するシングル表示モード、又は前記第1の画像を前記第1の視方向に、前記第2の画像を前記第2の視方向に、表示可能なデュアル表示モードによる表示を前記表示手段にさせ、表示画像に対して操作可能な操作表示をさせる表示制御手段と、前記シングル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示と前記デュアル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示が異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マルチビューディスプレイで、表示される画像のソースに応じて、最適な音響設定が自動的に行なわれるので表示モードに応じて、視聴者が手動で音響設定を変更する手間が省かれる。また、操作者に合った操作画面を表示することができる。これにより、視聴者の操作性が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチビュー車載表示装置の概念を説明するための図である。図1は、表示部100に対する観察者、例えば運転者(運転席)DR、助手席同乗者(助手席)PAの相対的位置に応じて、換言すれば表示部100に対する視野角に応じて、運転者DRは第1の画像IM1を、助手席同乗者PAは第2の画像IM2を実質的に同時に見ることができ、しかも各々の画像IM1、IM2は表示部100の表示面全体に渡ってみることができることを概念的に示している。
【0012】
この車載表示装置は、図1に示すように、表示制御部1、表示部100等から構成されている。表示制御部1は、供給源としての第1の画像ソースS1から画像データDT1が供給されるとともに、供給源としての第2の画像ソースS2から画像データDT2が供給されて、これら第1及び第2の画像データDT1、DT2からなる画像データADTを共通の表示部100へ出力する。
【0013】
表示部100は、図2に示すように、液晶パネル101、バックライト102、視差バリア115、タッチパネル103等から構成される。液晶パネル101は、バックライト102側から順に配置された、偏光板111、TFT基板(Thin Film Transistor)112、液晶層113、RGBの3原色の画素をもつカラーフィルタ基板114、視差バリア115、ガラス板116、偏光板117から構成された周知の構造を有する。この液晶パネル101は、例えば水平方向に800画素、垂直方向に480画素が配列された表示画面を有し、この表示画面には、水平方向において左側(助手席側PA)表示用画素118と右側(運転席側DR)表示用画素119とが交互に配置されて構成されている。また視差バリア115は、遮蔽部と透光部が交互に配置された構造を有し、右側表示用画素を透過した光、及び左側表示用画素を透過した光は、視差バリア115により、それぞれ右側及び左側に選択的に透過する。これにより、液晶パネル101の右側(運転席側DR)からは第1の画像IM1が視認でき、左側(助手席側PA)からは第2の画像IM2が視認できる。但し、視差バリア115は、特開平10−123461号公報や特開平11−84131号公報等に開示されているものを適用することができる。また、タッチパネル103は、透明なシート状に形成されて液晶パネル101の前面に貼着される。なお、第1、第2の画像ソースS1、S2が同じであれば、左右の利用者が同じ画像を見ることができる。
【0014】
図3は本発明に係る車載表示装置2の外観図である。車載表示装置2は、表示画面3および操作部4等を有する表示部100と本体部5からなる。図3(a)のように、表示部100は、本体部5の前面の周囲に設けられたフレームに収められた状態で使用する。また表示部100をチルト(斜動)させて、本体に対する角度の調整をすることができる他、図3(b)のように表示部100をオープンさせることにより表示部100を開けることができ、本体部5の前面よりCDやDVD、半導体メモリ等の記憶媒体を挿入・排出操作することができる構造となっている。
【0015】
図4は、本発明の車載表示装置2を車両へ適用した例を示す斜視図である。表示部100は、図4に示すように、車両のダッシュボード部分の運転席DRと助手席PAとの間に配置されており、運転者DR又は助手席同乗者PAは、表示部100に表示された異なる第1の画像IM1及び第2の画像IM2を同時に見ることができる。また表示部100には、車載表示装置2を手動で操作するための操作部4が設けられている。そして、車両の各ドアにはスピーカ6が配置され、表示画像に連動した音声や警告等が出される。
【0016】
上述の構成に、画像ソースとしてナビゲーションやテレビ、DVD等を備えることにより、例えば運転者DRがカーナビゲーションによる運転支援を受けるのと同時に、同乗者PAはテレビやDVDを楽しむことができる。しかもそれぞれの画像は例えば7インチの画面全体を使用して表されるため、従来のマルチウィンドウ表示のように画面サイズが小さくなることもない。つまり、運転者、同乗者にとっては、あたかも各々に独立した専用のディスプレイがあるかの如く、それぞれに最適な情報やコンテンツが提供されるのである。
【0017】
図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る車載表示装置の具体的な構成を示す図であって、図5は車載表示装置の機能ブロック図、図6は表示手段34及び音響制御手段61の機能ブロック図である。
【0018】
この車載表示装置は、図5に示すように、表示部100に加えて、制御部10、分配回路11、第1及び第2の画質調整回路12A、12B、画像出力部30、音声出力部60等から構成されている。
【0019】
制御部10は、図5に示すように、車両に搭載されて画像や音声を供給する画像・音声ソース(供給源)40としての、外部からの音声や映像を入力する外部音声/映像入力部41、CD/MD(Compact Disc/Mini Disk)再生部42、ラジオ受信部43、TV受信部44、DVD(Digital Versatile Disc)から音楽情報や画像を再生するDVD再生部45、HD(Hard Disk)に記録された画像や音楽情報を再生するHD再生部46、GPS情報受信部47等が受信した地理情報を基にした地図やルート案内画像を出力するナビゲーション部48等と接続されて、これらとの間でデータを授受すると共にこれらを制御する。また、制御部10には、各種データを記憶する外部メモリ13、タッチパネル103上に表示、もしくは表示部100周辺に備えられており、車載表示装置2を操作や表示内容を選択・変更するためのボタン・スイッチやリモコンを含む操作部14、運転席や助手席に設けられる感圧センサ等で構成されて車両の乗員を検出する乗員検知センサ18等が接続され、制御部10は、これらから得られる各種データに基づいて各種制御が可能となっている。
【0020】
メモリ13は、例えば、フラッシュメモリ等の電気的書き換え可能な不揮発性メモリ又はバッテリバックアップされた揮発性メモリにより構成されており、制御部10による制御に必要なデータ等を記憶している。具体的には、例えば、後述する可視領域を設定するための設定情報や、車両のハンドル位置等の車両情報を記憶保持する。
【0021】
分配回路11は、図5及び図6に示すように、上記した画像・音声ソース40から供給される音声データADや画像データPDを、制御部10からの制御指令に応じて、音声処理部60、第1の画質調整回路12A、あるいは、第2の画質調整回路12Bへ分配する。第1及び第2の画質調整回路12A,12Bは、図示しないが、それぞれコントラスト調整部、輝度調整部、色調調整部、ガンマ値調整部等から構成され、制御部10からの制御指令に応じて、第1及び第2の画像データPD1、PD2の画質(コントラスト、輝度、色調、ガンマ値)をそれぞれ調整する。調整された画像データPD1、PD2は、画像出力部30を介して、表示手段34である表示部100にて表示される。なお、画像出力部30では、調整された第1及び第2の画像データPD1、PD2を第1及び第2の書込み回路31A、31Bを介して、VRAM(Video RAM)32の所定のアドレスに書き込まれ合成される。この合成した画像データは、液晶パネル101の各画素に対応しており、VRAM32に保持されている合成データに基づいて、表示パネル駆動部33が液晶パネル101の対応する画素を駆動する。
【0022】
一方、分配された音声データADは、音響制御手段61を介して、スピーカ6(DS〜RL)に出力される。音声制御手段61は、音声処理部60と制御部10等から構成され、音声処理部60では、音声データはA/D変換器62によりデジタル信号に変換され、DSP63(Digital Signal Proccecor)にて、各種音声処理がされる。処理された音声データは、D/A変換器64によりアナログ信号に変換され、アンプ65(DS〜RL)で増幅され、音声切替手段66で選択された音声が各スピーカ6から出力される。ここで、各種音声処理とは、EQ(Equalizer)で音質を、SFC(Sound Field Control)で反射音や残響音などの音響効果を、VOL(Volume)で音量を調整する処理などを言う。なお、車載音響装置は、制御部10及び音声処理部60で構成され、制御部10は、選択された画像ソースや表示モードを認識し、それに応じて音声処理部60で最適な音響環境を設定するよう制御する。
【0023】
以上の構成により、シングル表示モードからデュアル表示モードに切り換えられ、助手席同乗者がDVD等のビデオ画像を視聴する場合、通常音響モードから助手席側音響モードに設定変更することができ、手間な操作をすることなく、助手席同乗者に良好な音響環境を提供できる。
【0024】
ここで、表示モードについて説明する。シングル表示モードとは、第1の画像ソースS1と第2の画像ソースS2とが同一の画像ソースであり、この単一ソースに基づいて、同一の画像を第1及び第2の画面に表示する状態を言い、例えば図7の(a)に示すように、運転席側画像と助手席側画像とが同一のナビゲーションの画像として表示され、実質的に通常の1画面上に1画像が表示されているように見える。一方、デュアル表示モードとは、第1の画像ソースS1と第2の画像ソースS2とが異なる画像ソースであり、この異なる画像ソース或いは同一の画像ソースに基づいて、第1の画像IM1及び第2の画像IM2を第1及び第2の画面にそれぞれ表示し得る状態を言い、例えば図7の(b)に示すように、ソース選択操作により、運転席側画像としてナビゲーションの画像を表示し、助手席側画像としてTV(ビデオ)画像が表示され、運転者DRと助手席同乗者PAで異なる画像を見ることができる。なお、シングル表示モードでは、表示部100に表示された操作ボタンをタッチパネル103で、又は表示部100の枠周辺部に設置された操作部14で入力操作された指示が、両画面に表示される画像に反映される。例えば操作部14等を介してTV画像の表示が指示されると、第1及び第2の画面にTV画像が表示される。但し、デュアル表示モードでも、運転席側画像と助手席側画像が同一の画像である場合もあるが、操作を画面毎に別個に行える点がシングル表示モードと異なる。また図示しないが、デュアル表示モードの状態では、運転席側画像及び助手席側画像にTV画像が表示されていても、所定の規制(車両走行時の動画視聴規制)時には、運転席側画像の出力を規制し、助手席側画像にはTV画像がそのまま表示される。さらに、シングル表示モードとデュアル表示モードは、切換スイッチ等の表示モード切換手段7により切り換えることができる。また、第1の画像IM1又は第2の画像のどちらに対する操作を行なうか(操作権の選択)は、選択手段8により選択してもよい。
【0025】
次に、音響モードについて説明する。通常音響モードとは、シングル表示モード、つまり通常の1画面表示のように表示されているときの音響設定である。例として、各スピーカ6から出力される音の交点となり音の中心位置となる音像位置の場合、運転席と助手席の乗員が公平に音声を聴くことができるよう運転席と助手席の間に設定させている(図8(a))。一方、助手席側音響モードとは、助手席同乗者に配慮した音響設定であり、例えば、音像位置を助手席側に設定させている(図8(b))。その他、音場効果については、通常音響モードでは設定せず、助手席音響モードでは、ライブモードやコンサートホールモード、シアターモードなどの音場モードに設定させた場合などがある。なお、通常音響モードと助手席側音響モードが同じ設定である場合もあるが、助手席同乗者に最適な音響環境に設定することが好ましい。また通常音響モード及び助手席側音響モードは、ともに音像位置や音場効果の変更が可能である。さらに音場効果とは、例えばライブ会場やコンサートホール、映画館で聴くような音響環境にすることを言い、あたかもその場に居るかのような臨場感を楽しむことができる。
【0026】
図9に、表示手段34の処理フローの一例を示す。まず、操作手段14による表示モードの切り換え操作があり(ST1)、表示モードがデュアル表示モードであると判断された場合(ST2)、助手席側ソースはビデオ(DVDやテレビ等)ソースであるかを判断する(ST3)。ST3で、助手席側ソースがビデオソースであると判断されると、音響設定を助手席側音響モードの助手席側音像定位及びシアターモードにする(ST4)。このようにすることにより、表示モードをデュアル表示モードに切り換え、同乗者がビデオ画像を見ようとすると、画面の遷移と同時に、同乗者にとって良好な音響環境の設定とすることができる。一方、ST2で現在デュアル表示モードではない、つまりシングル表示モードである場合、もしくはST3で助手席側ソースがビデオソースでない場合は音響設定を通常音響モードにする(ST5)。このように、同乗者のみがビデオ画像を見るとき以外は、通常の音響設定にし、運転者にも同様の音響環境を提供できるようにすると、例えば動画映像を伴わない音楽再生であれば運転者もナビ画像を見ながら楽しむことができる。また、表示モードの切替操作ではなく、助手席側に表示されている画像のソース変更された場合(ST6)、ST3で表示モードを判断し、以後上記と同じ判断となる。このようにすることにより、デュアル表示モードにおいて、例えば運転席・助手席画像ともナビゲーションから、同乗者がDVDを視聴しようと思い、表示画像ソースをDVDに切り換えた場合にも、助手席側音響モードに切り換えることができる。
【0027】
図10に、上述した音響モードと表示画像のソースの組み合せを示す。図10のように、デュアル表示モードで、助手席画像がDVDやテレビのようなビデオ画像である場合に、音響モードを助手席側音響モードとし、それ以外の表示モード及び画像では、通常音響モードとしている。こうすることにより、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合には、同乗者が最適な音響環境で、ビデオ画像を視聴でき、ビデオ画像ではなくナビ画像等で音楽を聴く場合などには、運転者も同乗者と同様の音響環境で、楽しむことができる。ここで、運転席・助手席ともに同じ画像ソース(ビデオ)でもデュアル表示モードの場合に助手席側音響モードとするのは、デュアル表示モードが助手席に配慮した表示モードだからである。例えば、1画面に1画像しか表示できない車載表示装置では規制(走行規制等)等により見ることができない画像であっても、デュアル表示モードでは運転席と助手席で異なる画像を表示させることができるため、規制により運転席側画像が視聴できないとしても、助手席側画像は視聴可能である。そのため、デュアル表示モードにすることにより、助手席同乗者は、走行状態に関わらず、画像を視聴することができ、助手席に配慮した表示モードと言える。また、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合とするのは、DVDやテレビ等のビデオ画像は、ナビゲーション画像とは異なり、集中して見たい場合が多く、音響環境を視聴者にとって最適な環境にすることによって、助手席同乗者はより画像を楽しむことができるからである。つまり、シングル表示モードからデュアル表示モードに切り換え、助手席同乗者がビデオ画像を見る場合に、通常の音響モードから助手席側音響モードにすることによって、助手席同乗者はより簡単に快適に、ビデオ画像を観賞することができる。こうすることにより、助手席同乗者は、表示モードを切り換えることによって視聴する画像のソースを変更しただけで、それに合った音響設定にすることができ、大変便利となる。なお、デュアル表示モードであっても運転席側画像及び助手席側画像が共にナビゲーション画像である場合などの両者にとって重要な表示画像である場合には、通常音響モードにすることが好ましい。また運転者のみが乗車している場合などでは、通常音響モードを運転者にとって最適な音響環境に設定しても良い。また、両席ともビデオ画像である場合に、両者に最適な音響環境を設定したい場合は、音響モードの自動変更を設定・解除できるようにしておくとよい。
【0028】
また、音響環境の変更方法としては、スピーカからの出力の遅延や音圧変化、出力するスピーカの選択などがある。さらに、運転席近傍に運転者専用6DSスピーカを設け、運転席側画像に対する音声出力の助手席への影響を軽減するようにしても良い。このとき、運転者専用スピーカとして、超音波スピーカなどの高い指向性を持つスピーカを用いるのが好ましい。これにより、助手席側音声に影響を及ぼさないだけではなく、運転手専用の音空間を作ることができる。この場合、ナビゲーション案内音声はもちろん、運転者が車のエンジン音や走行音、操作のクリック音などを聞きたい場合、これらの音を運転者専用スピーカで出力することにより、助手席同乗者に聞かせることなく(同乗者の観賞を妨げることなく)、運転者が快適に音声を楽しむことができる。さらに助手席への音声を軽減したい場合は、マイクを設置し、ノイズに対して逆位相の波を発するようなノイズキャンセラー機能を持たせても良い。その他、タクシーなど運転手が乗客を乗せる車両においては、ナビゲーションの案内音声を乗客に聞かせることなく、運転手だけが知ることができる。これにより、乗客に不快感を与えることなく、運転手は確実に案内を知ることができる。
【0029】
次に、本発明に係る車載表示装置の他の実施例として、選択操作を行なう際の車載表示装置の画面表示を、運転者DRに比べて操作が不慣れである場合が多い助手席同乗者PAに、分かりやすくする場合を説明する。一般に、運転手は車載装置の操作に慣れていることが多いが助手席同乗者は、操作が初めての場合や子供の場合など、車載装置の操作に慣れていない場合が多い。そのため、同乗者が操作をする場合、シングル表示モードではナビ画像を見ている運転者の指示により操作ができていても、デュアル表示モードにおいて、運転者がナビ画像を見られないときには、同乗者に配慮した操作表示画像が必要となる。
【0030】
図11に、表示手段34の処理フローを示す。まず、表示モードを判断し(ST11)、デュアル表示モードであると判断されると、運転席側表示画像IM1及び助手席側表示画像IM2のどちらに対して操作可能であるかの操作権状況を判断する(ST12)。ST12で、操作権が助手席側であると判断されると、選択操作等の表示画面が助手席用の操作画像になり(ST13)、ST11でシングル表示モード、またはST12で運転席操作権であると判断されると、通常操作画像(ST14)が表示される。こうすることで、デュアル表示モードにおいて運転者がナビ画像を見て指示できない場合でも、ナビゲーション等の選択や決定の操作をする助手席同乗者が、操作に迷わないように表示させることができる。ここで、通常操作画像とは、例えば図12(a)に示すナビゲーションの目的地設定画像ように、運転者が操作することを想定した表示画像であり、この場合、走行中に操作することを想定しているため、1画面に多くの細かい情報120を表示し操作回数を少なくするように設定されている。一方、助手席操作画像は、同乗者が操作する場合であり、運転操作を行っていないため、操作回数よりも分かりやすさを優先させた表示にする。例えば、図12(b)のように、よく使われる情報の選択ボタン130を大きく表示したり、操作に不慣れな助手席同乗者にヘルプ表示131で説明表示を見ることが可能にしたりする。またナビゲーション操作以外では、図12(c)のように、ナビゲーション操作ボタン140とオーディオ操作ボタン141を同一画面上に表示させたり、図12(d)のように「POS」ボタン150を「POSITION(ポジション):音像の位置を変更」のように略語を略さない表示にし、説明を表示させたりするようにしても良い。こうすることで、音響設定の操作の利便性を向上させ、助手席同乗者に配慮した表示が行なうことができる。また、操作権の選択操作でも、上述した設定変更を行なうようにしても良い。このように、助手席同乗者が操作する画面を通常の操作画面よりも分かりやすい表示にすることで、助手席同乗者は操作を容易に行なうことができる。なお、実施例では、助手席同乗者が操作に不慣れであるため、通常操作画面よりも簡単な表示とするとしたが、操作に慣れている場合などは、より情報量の多い操作画面にするなど、操作者の操作レベルに応じた表示に設定できるようにしても良い。
【0031】
なお、実施例中の車載装置2は、表示部100と一体型であっても、表示部100とは別途接続可能な別体型であっても良い。また、視差バリア115の効果を無効または除去することで、シングル表示させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチビュー車載表示装置の概念図である。
【図2】表示部100の断面構造の概略図である。
【図3】発明の一実施形態に係る車載表示装置2を示す図である。
【図4】発明の一実施形態に係る車載表示装置2の搭載例を示す斜視図である。
【図5】車載表示装置2の機能ブロック図である。
【図6】表示手段34及び音響制御手段61の機能ブロック図である。
【図7】シングル表示モード及びデュアル表示モードを説明する図である。
【図8】車両内における音響環境を説明する図である。
【図9】本発明の音響制御手段61のフローチャートである。
【図10】音響モードと表示画像のソースの組み合せを示す図である。
【図11】表示手段34のフローチャートである。
【図12】発明の一実施形態に係る車載表示装置2に表示される表示画像の例である。
【符号の説明】
【0033】
1 表示制御手段
2 車載表示装置
3 表示画面
4、14 操作部
5 本体部
6 スピーカ
10 制御部
11 分配回路
12A、B 第1及び第2の画像調整回路
30 画像出力部
34 表示手段
40 画像・音声ソース
60 音声処理部
61 音声制御手段
100 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載表示装置。
【請求項2】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示するデュアル表示モード、又は共通の画像ソースに基づく画像を該画面上に表示するシングル表示モードを検知する手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載音響装置。
【請求項3】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、
共通の画像ソースに基づく画像を前記表示手段に表示するシングル表示モードと、前記第1の画像及び前記第2の画像を前記表示手段に表示するデュアル表示モードとを切り換える手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載表示装置。
【請求項4】
第1の視方向に第1の画像を、第2の視方向に第2の画像を、それぞれ同一画面上に表示可能な表示手段を備え、
前記第1の画像を前記第1及び第2の視方向に表示するシングル表示モード、又は前記第1の画像を前記第1の視方向に、前記第2の画像を前記第2の視方向に、表示可能なデュアル表示モードによる表示を前記表示手段にさせ、表示画像に対して操作可能な操作表示をさせる表示制御手段と、
前記シングル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示と前記デュアル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示が異なることを特徴とする車載表示装置。
【請求項1】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
該音響制御手段は、前記第2の画像のソースの切り換えに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載表示装置。
【請求項2】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示するデュアル表示モード、又は共通の画像ソースに基づく画像を該画面上に表示するシングル表示モードを検知する手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載音響装置。
【請求項3】
運転席方向に第1の画像を、助手席方向に第2の画像を同一画面上に表示可能な表示手段と、
共通の画像ソースに基づく画像を前記表示手段に表示するシングル表示モードと、前記第1の画像及び前記第2の画像を前記表示手段に表示するデュアル表示モードとを切り換える手段と、
車内の音像位置を制御する音響制御手段とを備え、
前記音響制御手段は、前記シングル表示モードから前記デュアル表示モードに切り換えられた場合に、前記第2の画像のソースに応じて、該ソースに基づく音声の音像位置を助手席側に設定することを特徴とする車載表示装置。
【請求項4】
第1の視方向に第1の画像を、第2の視方向に第2の画像を、それぞれ同一画面上に表示可能な表示手段を備え、
前記第1の画像を前記第1及び第2の視方向に表示するシングル表示モード、又は前記第1の画像を前記第1の視方向に、前記第2の画像を前記第2の視方向に、表示可能なデュアル表示モードによる表示を前記表示手段にさせ、表示画像に対して操作可能な操作表示をさせる表示制御手段と、
前記シングル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示と前記デュアル表示モードにおける表示画像に対して操作可能な操作表示が異なることを特徴とする車載表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−308084(P2007−308084A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141242(P2006−141242)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]