説明

車輌の走行制御装置

【課題】車輪のタイヤ空気圧が低下し当該車輪の接地荷重が低減される場合にも車輌の良好な走行安定性を確実に且つ効果的に確保する。
【解決手段】タイヤ空気圧低下率RPwtiに基づきタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiが演算され(S20、30)、各車輪についてタイヤ空気圧Pwtiが基準値Pwteiよりも低いか否かの判別によりタイヤ空気圧が低下している車輪があるか否かの判別が行われ(S40)、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、ステップ60に於いてタイヤ空気圧の低下度合に応じて制御ゲインKctが演算され(S60)、タイヤ空気圧が低下している車輪の接地荷重が低減され(S100)、接地荷重の変更に起因する車輌のステア特性の変化が低減されるようステアリングギヤ比(S200)、操舵アシスト力(S300)、制駆動力の配分(S400)が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌の走行制御装置に係り、更に詳細にはタイヤ空気圧が低下すると当該車輪の接地荷重を低減すると共に車輌の良好な走行安定性を確保する車輌の走行制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌の走行制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下すると、当該車輪の接地荷重が低減されるよう車輌のロール剛性を制御する走行制御装置が既に知られている。かかる走行制御装置によれば、タイヤ空気圧が低下した車輪の接地荷重が低減されるので、タイヤ空気圧が低下した車輪の接地荷重が低減されない場合に比して、タイヤ空気圧が低下した車輪のタイヤの劣化を低減しタイヤ空気圧の更なる低下を抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−114876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しその車輪の接地荷重が低減されると、当該車輪が車輌の旋回時に発生し得る横力が低下するため、車輌のステア特性がアンダーステア側又はオーバーステア側へ変化し、そのため車輪の接地荷重が低減されない場合に比して車輌の走行安定性が低下する。
【0004】
しかるに上述の如き従来の走行制御装置に於いては、車輪のタイヤ空気圧が低下しその車輪の接地荷重が低減される場合に於ける車輌のステア特性の変化及びその対策については十分な検討がなされておらず、そのため上述の如き従来の走行制御装置によっては車輪のタイヤ空気圧が低下しその車輪の接地荷重が低減される場合に車輌の安定的な走行を確保することができないという問題がある。
【0005】
また自動車等の車輌の走行制御装置の一つとして、車輌の目標ヨーレートの如き目標旋回状態量と車輌の実際のヨーレートの如き実際の旋回状態量との偏差を求め、旋回状態量の偏差の大きさが基準値以上であるときには旋回状態量の偏差の大きさが小さくなるよう車輌のステア特性を制御する走行制御装置も既に知られている。従って車輪のタイヤ空気圧が低下しその車輪の接地荷重が低減された場合にも旋回状態量の偏差に基づいて車輌のステア特性を制御することも考えられるが、その場合には旋回状態量の偏差の大きさが基準値以上になる比較的大きい車輌の挙動変化が生じてからしかステア特性を制御することができないため、車輪のタイヤ空気圧が低下しその車輪の接地荷重が低減される場合に於ける車輌の良好な走行安定性を確実に且つ効果的に確保することができない。
【0006】
本発明は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下すると当該車輪の接地荷重が低減されるよう車輌のロール剛性を制御する従来の走行制御装置や、旋回状態量の偏差に基づいて車輌のステア特性を制御する従来の走行制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下し当該車輪の接地荷重が低減されると発生するステア特性の変化を未然に抑制することにより、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下し当該車輪の接地荷重が低減される場合にも車輌の良好な走行安定性を確実に且つ効果的に確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち各車輪についてタイヤ空気圧を検知する手段と、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下したときには当該車輪の接地荷重を低減すると共に他の車輪の接地荷重を増大させる接地荷重可変手段と、運転者の操舵操作に対する操舵輪の転舵特性を変更することにより車輌のステア特性を可変制御するステア特性可変手段とを有する車輌の走行制御装置に於いて、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更に基づいて車輌のステア特性の変化を予測し、予測される車輌のステア特性の変化を低減するよう車輌のステア特性を制御することを特徴とする車輌の走行制御装置によって達成される。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記ステア特性可変手段は前輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化すると予測し、車輌のステア特性のアンダーステア方向への変化を低減するよう車輌のステア特性を制御するよう構成される(請求項2の構成)。
【0009】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくするよう構成される(請求項3の構成)。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化すると予測し、車輌のステア特性のオーバーステア方向への変化を低減するよう車輌のステア特性を制御するよう構成される(請求項4の構成)。
【0011】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを小さくするよう構成される(請求項5の構成)。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の構成に於いて、前記ステア特性可変手段は接地荷重が低減された車輪の側へ車輌が旋回するときには接地荷重が低減された車輪とは反対の側へ車輌が旋回するときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを小さくするよう構成される(請求項6の構成)。
【0013】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至6の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、前記ステア特性可変手段は前輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比を大きくするよう構成される(請求項7の構成)。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至6の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比を大きくするよう構成される(請求項8の構成)。
【0015】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至6の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪の舵角を制御する舵角制御手段であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者によりカウンタ操舵が行われたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向への前輪の舵角を大きくするよう構成される(請求項9の構成)。
【0016】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至9の構成に於いて、前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は操舵アシスト力を制御するパワーステアリング装置であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向の操舵アシスト力を大きくするよう構成される(請求項10の構成)。
【0017】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至10の構成に於いて、前記ステア特性可変手段は左右輪の制駆動力差を制御可能な制駆動力制御手段を含み、前記予測される車輌のステア特性の変化を低減するよう前記制駆動力制御手段により左右輪の制駆動力差を制御するよう構成される(請求項11の構成)。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至11の構成に於いて、前記ステア特性可変手段は前後輪の制駆動力の配分を制御可能な制駆動力制御手段を含み、前輪側及び後輪側のうち接地荷重が低減された車輪を含む側の制駆動力の配分が低下するよう前記制駆動力制御手段により前後輪の制駆動力の配分を制御するよう構成される(請求項12の構成)。
【0019】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至12の構成に於いて、前記接地荷重可変手段はタイヤ空気圧の低下度合が高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくするよう構成される(請求項13の構成)。
【0020】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至13の構成に於いて、前前記接地荷重可変手段はタイヤ空気圧が低下した車輪の更なるタイヤ空気圧低下の虞れが高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくするよう構成される(請求項14の構成)。
【発明の効果】
【0021】
上記請求項1の構成によれば、接地荷重可変手段による接地荷重の変更に基づいて車輌のステア特性の変化が予測され、予測される車輌のステア特性の変化が低減されるよう車輌のステア特性が制御されるので、接地荷重が変更されることに起因して実際に車輌のステア特性が変化する前に車輌のステア特性の変化が低減されるよう車輌のステア特性を制御することができ、これにより車輌のステア特性の変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0022】
また一般に、左右前輪の一方のタイヤ空気圧が低下し当該車輪の接地荷重が低減されると、接地荷重が低減された車輪が発生し得る横力が低下するため、タイヤ空気圧が正常である場合に比して車輌が旋回する際の前輪の横力が低下し、そのため車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化する。
【0023】
上記請求項2の構成によれば、前輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化すると予測され、車輌のステア特性のアンダーステア方向への変化が低減されるよう車輌のステア特性が制御されるので、前輪の接地荷重が低減された状態にて車輌が旋回する場合にも、車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0024】
また一般に、前輪が操舵輪である車輌に於いては、前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して、駆動力に起因して前輪が発生し得る横力が低下するため、前輪の接地荷重が低減されると前輪が発生し得る横力が更に低下し、車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化する度合が高くなる。
【0025】
上記請求項3の構成によれば、前輪が操舵輪であり、前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさが大きくされるので、前輪が操舵輪であり駆動輪であるときにも車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0026】
また一般に、左右後輪の一方のタイヤ空気圧が低下し当該車輪の接地荷重が低減されると、接地荷重が低減された車輪が発生し得る横力が低下するため、タイヤ空気圧が正常である場合に比して車輌が旋回する際の後輪の横力が低下し、そのため車輌のステア特性がオーバーステア側へ変化する。
【0027】
上記請求項4の構成によれば、後輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化すると予測され、車輌のステア特性のオーバーステア方向への変化が低減されるよう車輌のステア特性が制御されるので、後輪の接地荷重が低減された状態にて車輌が旋回する場合にも、車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0028】
また一般に、前輪が操舵輪である車輌に於いては、前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して、駆動力に起因して前輪が発生し得る横力が低下するため、後輪の接地荷重が低減されると後輪が発生し得る横力が更に低下し、車輌のステア特性がオーバーステア側へ変化する度合が低くなる。
【0029】
上記請求項5の構成によれば、前輪が操舵輪であり、前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさが小さくされるので、車輌のステア特性の制御量の大きさが過剰になることを防止しつつ車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0030】
また一般に、接地荷重が低減された車輪の側へ車輌が旋回するときには接地荷重が相対的に増大された左右反対側の車輪が旋回外輪になるので、接地荷重が低減された車輪の側とは反対側へ車輌が旋回するときに比して接地荷重が増大された車輪が発生し得る横力が大きくなり、従って車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化する度合が低くなる。
【0031】
上記請求項6の構成によれば、接地荷重が低減された車輪の側へ車輌が旋回するときには接地荷重が低減された車輪とは反対の側へ車輌が旋回するときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさが小さくされるので、接地荷重が低減された車輪の側へ車輌が旋回する場合にも制御量の大きさが過大であることに起因して車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0032】
また上述の如く前輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化するので、前輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者により過剰な切り込み操舵が行われると、車輌のステア特性が更に一層アンダーステア方向へ変化してしまう。
【0033】
上記請求項7の構成によれば、前輪が操舵輪であり、ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、前輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比が大きくされるので、前輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者により切り込み操舵が行われても、前輪の切り込み方向への転舵が抑制され、これにより車輌のステア特性が過剰にアンダーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0034】
また上述の如く後輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化するので、後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者により切り込み操舵が行われると、前輪の横力が増大するのに対し後輪の横力はそれほど増大せず、そのため車輌のステア特性が更に一層オーバーステア方向へ変化してしまう。
【0035】
上記請求項8の構成によれば、前輪が操舵輪であり、ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、後輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比が大きくされるので、後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者により切り込み操舵が行われても、前輪の切り込み方向への転舵が抑制されることによって前輪の横力の増大が抑制され、これにより車輌のステア特性が過剰にオーバーステア方向へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0036】
また一般に、車輌のステア特性がオーバーステア状態にあるときには、前輪をカウンタ操舵することにより車輌がスピン状態になることを防止することができるので、後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者によりカウンタ操舵が行われたときには、後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵が効果的に行われることが好ましい。
【0037】
上記請求項9の構成によれば、前輪が操舵輪であり、ステア特性可変手段は前輪の舵角を制御する舵角制御手段であり、後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者によりカウンタ操舵が行われたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向への前輪の舵角が大きくされるので、前輪を効果的にカウンタ操舵方向へ転舵し、車輌のステア特性が過剰にオーバーステア方向へ変化しスピン状態になることを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0038】
また上記請求項10の構成によれば、前輪が操舵輪であり、ステア特性可変手段は操舵アシスト力を制御するパワーステアリング装置であり、後輪の接地荷重が低減されたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向の操舵アシスト力が大きくされるので、運転者によるカウンタ操舵を促進し、車輌のステア特性が過剰にオーバーステア方向へ変化しスピン状態になる虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
【0039】
また一般に、左右輪の制駆動力差により車輌にヨーモーメントを付与することができるので、予測される車輌のステア特性の変化がアンダーステア方向へ変化であるときには左右輪の制駆動力差によって車輌に旋回補助方向のヨーモーメントを付与し、予測される車輌のステア特性の変化がオーバーステア方向へ変化であるときには左右輪の制駆動力差によって車輌に旋回抑制方向のヨーモーメントを付与することにより車輌のステア特性の変化を低減することができる。
【0040】
上記請求項11の構成によれば、ステア特性可変手段は左右輪の制駆動力差を制御可能な制駆動力制御手段を含み、予測される車輌のステア特性の変化が低減されるよう制駆動力制御手段により左右輪の制駆動力差を制御されるので、接地荷重の低減に起因する車輌のステア特性の変化を左右輪の制駆動力差によるヨーモーメントによって確実に且つ効果的に低減することができる。
【0041】
また一般に、接地荷重が低減された車輪の制駆動力(前後力)が低減されると、その車輪が発生し得る横力が大きくなるので、前輪側及び後輪側のうち接地荷重が低減された車輪を含む側の制駆動力の配分が低下するよう前後輪の制駆動力の配分を制御すれば、接地荷重の低減に起因する車輌のステア特性の変化を低減することができる。
【0042】
上記請求項12の構成によれば、ステア特性可変手段は前後輪の制駆動力の配分を制御可能な制駆動力制御手段を含み、前輪側及び後輪側のうち接地荷重が低減された車輪を含む側の制駆動力の配分が低下するよう制駆動力制御手段により前後輪の制駆動力の配分が制御されるので、接地荷重の低減に起因する車輌のステア特性の変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0043】
また上記請求項13の構成によれば、接地荷重可変手段はタイヤ空気圧の低下度合が高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさが大きくされるので、タイヤ空気圧の低下度合が高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくしてタイヤの劣化を効果的に抑制することができ、またタイヤ空気圧の低下度合が高く車輌のステア特性の変化が大きくなる虞れが高いほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくして車輌のステア特性の変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0044】
また上記請求項14の構成によれば、接地荷重可変手段はタイヤ空気圧が低下した車輪の更なるタイヤ空気圧低下の虞れが高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさが大きくされるので、タイヤ空気圧が低下した車輪の更なるタイヤ空気圧低下の虞れが高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくしてタイヤ空気圧の更なる低下を効果的に抑制することができ、またタイヤ空気圧の低下度合が高く車輌のステア特性の変化が大きくなる虞れが高いほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくして車輌のステア特性の変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0045】
[課題解決手段の好ましい態様]
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至14の構成に於いて、接地荷重変更手段はアクティブスタビライザ装置若しくはアクティブサスペンション装置を含むよう構成される(好ましい態様1)。
【0046】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至14又は上記好ましい態様1の構成に於いて、タイヤ空気圧が基準値よりも低いときにタイヤ空気圧が低下したと判定され、基準値はタイヤ空気圧の低下率が大きいほど大きくなるようタイヤ空気圧の低下率に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様2)。
【0047】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段、操舵輪の舵角を制御する舵角制御手段、操舵アシスト力を制御するパワーステアリング装置、左右輪の制駆動力差を制御可能な制駆動力制御手段、前後輪の制駆動力の配分を制御可能な制駆動力制御手段の少なくとも何れかを含んでいるよう構成される(好ましい態様3)。
【0048】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項11又は上記好ましい態様1乃至3の構成に於いて、車輌は左右輪の制駆動力差を制御可能な四輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様4)。
【0049】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項12又は上記好ましい態様1乃至4の構成に於いて、車輌は前後輪の制駆動力の配分を制御可能な四輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様5)。
【0050】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項14又は上記好ましい態様1乃至5の構成に於いて、タイヤ空気圧低下率が大きいほどタイヤ空気圧が低下した車輪の更なるタイヤ空気圧低下の虞れが高いと判定されるよう構成される(好ましい態様6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0052】
図1は前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置を有しステアリングギヤ比可変装置として機能する転舵角可変装置を備えた四輪駆動車に適用された本発明による車輌の走行制御装置の実施例1の要部を示す概略構成図、図2は実施例1の駆動系、転舵角可変装置、電動式パワーステアリング装置を示す概略構成図である。
【0053】
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の操舵輪である前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌12の非操舵輪である左右の後輪を示している。左右の前輪10FL及び10FRの間にはアクティブスタビライザ装置16が設けられ、左右の後輪10RL及び10RRの間にはアクティブスタビライザ装置18が設けられている。アクティブスタビライザ装置16及び18はアンチロールモーメントを車輌(車体)に付与すると共に必要に応じてアンチロールモーメントを増減するアンチロールモーメント付与手段として機能する。
【0054】
アクティブスタビライザ装置16は車輌の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分16TL及び16TRと、それぞれトーションバー部分16TL及び16TRの外端に一体に接続された一対のアーム部16AL及び16ARとを有している。トーションバー部分16TL及び16TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の回りに回転可能に支持されている。アーム部16AL及び16ARはそれぞれトーションバー部分16TL及び16TRに対し交差するよう車輌前後方向に延在し、アーム部16AL及び16ARの外端はそれぞれ図には示されていないゴムブッシュ装置を介して左右前輪10FL及び10FRの車輪支持部材又はサスペンションアームに連結されている。
【0055】
アクティブスタビライザ装置16はトーションバー部分16TL及び16TRの間にアクチュエータ20Fを有している。アクチュエータ20Fは必要に応じて一対のトーションバー部分16TL及び16TRを互いに逆方向へ回転駆動することにより、左右の前輪10FL及び10FRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化させ、これにより左右前輪の位置に於いて車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減して前輪側の車輌のロール剛性を可変制御し、また左右前輪の接地荷重の比を増減する。
【0056】
同様に、アクティブスタビライザ装置18は車輌の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分18TL及び18TRと、それぞれトーションバー部分18TL及び18TRの外端に一体に接続された一対のアーム部18AL及び18ARとを有している。トーションバー部分18TL及び18TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の回りに回転可能に支持されている。アーム部18AL及び18ARはそれぞれトーションバー部分18TL及び18TRに対し交差するよう車輌前後方向に延在し、アーム部18AL及び18ARの外端はそれぞれ図には示されていないゴムブッシュ装置を介して左右後輪10RL及び10RRの車輪支持部材又はサスペンションアームに連結されている。
【0057】
アクティブスタビライザ装置18はトーションバー部分18TL及び18TRの間にアクチュエータ20Rを有している。アクチュエータ20Rは必要に応じて一対のトーションバー部分18TL及び18TRを互いに逆方向へ回転駆動することにより、左右の後輪10RL及び10RRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化させ、これにより左右後輪の位置に於いて車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減して後輪側の車輌のロール剛性を可変制御し、また左右後輪の接地荷重の比を増減する。
【0058】
尚アクティブスタビライザ装置16及び18の構造自体は本発明の要旨をなすものではないので、電子制御装置22によって制御されることにより車輌のロール剛性を可変制御し左右輪の接地荷重の比を増減し得るものである限り当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよいが、例えば本願出願人の出願にかかる特開2005−88722の公開公報に記載のアクティブスタビライザ装置、即ち一方のトーションバー部分の内端に固定され駆動歯車が取り付けられた回転軸を有する電動機と、他方のトーションバー部分の内端に固定され駆動歯車に噛合する従動歯車とを有し、駆動歯車及び従動歯車は駆動歯車の回転を従動歯車へ伝達するが、従動歯車の回転を駆動歯車へ伝達しない歯車であるアクティブスタビライザ装置であることが好ましい。
【0059】
各車輪の制動力は制動装置26の油圧回路28によりホイールシリンダ30FL、30FR、30RL、30RR内の圧力Pi(i=fl、fr、rl、rr)、即ち制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。図1には示されていないが、油圧回路28はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル32の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ34により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く運転者によるブレーキペダル32の踏み込み操作に関係なく電子制御装置22により個別に制御される。
【0060】
また図示の実施例に於いては、図2に示されている如く、左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の電動式パワーステアリング装置36によりラックバー38及びタイロッド40L及び40Rを介して転舵される。電動式パワーステアリング装置36は電動機36Aと、電動機36Aの回転トルクをラックバー38の往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構36Bとを有し、ハウジング36Cに対し相対的にラックバー38を駆動する補助転舵力を発生することにより、運転者の操舵負担を軽減する操舵アシスト力としてのアシストトルクを発生する。
【0061】
ステアリングホイール14はアッパステアリングシャフト42、転舵角可変装置44、ロアステアリングシャフト46、ユニバーサルジョイント48を介してパワーステアリング装置36のピニオンシャフト50に駆動接続されている。図示の実施例に於いては、転舵角可変装置44はハウジング44Aの側にてアッパステアリングシャフト42の下端に連結され、回転子44Bの側にてロアステアリングシャフト46の上端に連結された補助転舵駆動用の電動機52を含んでいる。
【0062】
かくして転舵角可変装置44はアッパステアリングシャフト42に対し相対的にロアステアリングシャフト46を回転駆動することにより、ステアリングホイール14の回転角度に対する操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRの舵角の比、即ち操舵伝達比(ステアリングギヤ比の逆数)を変化させるステアリングギヤ比可変手段として機能し、電子制御装置22により制御される。
【0063】
また図示の実施例に於いては、図2に示されている如く、例えばエンジン及びトランスミッションよりなる駆動装置54の駆動トルクはセンターディファレンシャル56により前輪プロペラシャフト58及び後輪プロペラシャフト60へ伝達される。前輪プロペラシャフト58へ伝達された駆動トルクは前輪ディファレンシャル62により左前輪車軸64L及び右前輪車軸64Rへ伝達され、これにより左右の前輪10FL及び10FRが回転駆動される。また後輪プロペラシャフト60へ伝達された駆動トルクは後輪ディファレンシャル66により左後輪車軸68L及び右後輪車軸68Rへ伝達され、これにより左右の後輪10RL及び10RRが回転駆動される。
【0064】
センターディファレンシャル56は電子制御装置22によって制御されることにより、前輪プロペラシャフト58及び後輪プロペラシャフト60に対する駆動トルクの伝達比を制御可能である。また前輪ディファレンシャル62は電子制御装置22によって制御されることにより、左前輪車軸64L及び右前輪車軸64Rに対する駆動トルクの伝達比を制御可能であり、後輪ディファレンシャル66は電子制御装置22によって制御されることにより、左後輪車軸68L及び右後輪車軸68Rに対する駆動トルクの伝達比を制御可能である。
【0065】
図3に示されている如く、電子制御装置22はアクチュエータ20F及び20Rを制御することによりアクティブスタビライザ装置16及び18を制御するアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70と、制御装置26の油圧回路28を制御することにより各車輪の制動力を制御する挙動制御用電子制御装置72と、転舵角可変装置44を制御する転舵角制御用電子制御装置74と、電動式パワーステアリング装置36を制御するアシストトルク制御用電子制御装置76と、制御装置26の制動力又は駆動装置54の駆動トルク及び各ディファレンシャル(DFT)56、62、66を制御する制駆動力配分制御用電子制御装置78と、アクティブスタビライザ制御用電子制御装置70、挙動制御用電子制御装置72、転舵角制御用電子制御装置74、アシストトルク制御用電子制御装置76、制駆動力配分制御用電子制御装置78を統合的に制御する統合制御用電子制御装置80とを含んでいる。
【0066】
各電子制御装置70〜80はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよく、必要に応じてCAN80Aを経て相互に必要な情報の授受を行う。
【0067】
図3に示されている如く、CAN80Aには各車輪のタイヤ空気圧Pwti(i=fl、fr、rl、rr)を検出する空気圧センサ82FL〜82RR、車輌の横加速度Gyを検出する横加速度センサ84、車速Vを検出する車速センサ86、操舵角θを検出する操舵角センサ88、アクチュエータ20F及び20Rの実際の回転角度φF、φRを検出する回転角度センサ90F、90Rが接続されており、これらのセンサにより検出された値を示す信号は必要に応じてCAN80Aを経て統合制御用電子制御装置80等へ出力される。
【0068】
またCAN80Aにはマスタシリンダ圧力Pmを検出する圧力センサ92、各車輪の制動圧Pi(i=fl、fr、rl、rr)を検出する圧力センサ94FL〜94RR、アッパステアリングシャフト42に対するロアステアリングシャフト46の相対回転角度θreを検出する回転角度センサ96、アクセルペダル98Aの踏み込み量としてのアクセル開度αを検出するアクセル開度センサ98、操舵トルクTsを検出するトルクセンサ100が接続されており、これらのセンサにより検出された値を示す信号も必要に応じてCAN80Aを経て統合制御用電子制御装置80等へ出力される。
【0069】
尚横加速度センサ84、操舵角センサ88、回転角度センサ90F、90R、トルクセンサ100はそれぞれ車輌の左旋回時に生じる値を正として横加速度Gy、操舵角θ、回転角度φF、φR、操舵トルクTsを検出し、回転角度センサ96は左旋回方向への左右前輪の相対転舵の場合を正として相対回転角度θreを検出する。
【0070】
統合制御用電子制御装置80は、図4に示されたフローチャートに従って、空気圧センサ82FL〜82RRにより検出された各車輪のタイヤ空気圧Pwtiに基づき、タイヤ空気圧が低下している車輪があるか否かを判定し、タイヤ空気圧が低下している車輪がないときにはアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70、挙動制御用電子制御装置72、転舵角制御用電子制御装置74、アシストトルク制御用電子制御装置76、制駆動力配分制御用電子制御装置78に対しそれぞれタイヤ空気圧正常時の制御を実行すべき指令信号を出力する。
【0071】
これに対し統合制御用電子制御装置80は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときにはアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70、挙動制御用電子制御装置72、転舵角制御用電子制御装置74、アシストトルク制御用電子制御装置76、制駆動力配分制御用電子制御装置78に対しそれぞれタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき指令信号を出力する。
【0072】
アクティブスタビライザ制御用電子制御装置70は、タイヤ空気圧が低下している車輪がないときには、少なくとも車輌の横加速度Gyに基づき車輌に作用するロールモーメントを推定し、ロールモーメントの大きさが基準値以上であるときには、ロールモーメントを打ち消す方向のアンチロールモーメントが増大するよう車輌の目標アンチロールモーメントMatを演算する。
【0073】
そして電子制御装置70は、目標アンチロールモーメントMat及び前輪の目標ロール剛性配分比Rmfに基づき前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartを演算し、目標アンチロールモーメントMaft及びMartに基づきそれぞれアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φFt、φRtを演算し、アクチュエータ20F及び20Rの回転角度φF、φRがそれぞれ対応する目標回転角度φFt、φRtになるよう制御し、これにより旋回時等に於ける車輌のロールを好ましい前後輪のロール剛性配分比にて低減する。
【0074】
これに対しアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、図5に示されたフローチャートに従って、タイヤ空気圧が低下している車輪の接地荷重が低下し左右反対側の車輪の接地荷重が増大すると共に、車輌のステア特性が好ましく変化するようアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φFt、φRtを制御する。
【0075】
かくしてアクティブスタビライザ装置16及び18、電子制御装置70、横加速度センサ82等は、車輌に過大なロールモーメントが作用するときにはアンチロールモーメントを増減させて車輌のロール剛性を増減するロール剛性可変装置として機能し、車輪の接地荷重を制御する車輪の接地荷重可変装置として機能し、車輌のステア特性を制御するステア特性可変装置として機能する。
【0076】
何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下している状況に於いてアクティブスタビライザ装置16及び18が上述の如く制御され、車輪の接地荷重及び前後輪のロール剛性配分比が変更されると、車輌のステア特性が変化する。転舵角制御用電子制御装置74等は前輪の目標ロール剛性配分比Rmfに基づき、従ってタイヤ空気圧低下量に応じて制御される車輪の接地荷重の変化に応じて推定US度若しくは推定OS度を演算することにより車輌のステア特性の変化を予測し、その予測結果に応じてステアリングギヤ比等を制御する。
【0077】
車輌のステア特性の変化は基本的にはタイヤ空気圧の低下に対処する車輪の接地荷重の変更により決定されるが、車輪のタイヤ空気圧が低下している車輪が何れの車輪であるか、ロール剛性配分、車輌の旋回方向、前輪が駆動輪であるか否か、車輌の制駆動状態によっても車輌のステア特性が変化する。かかる車輌のステア特性の変化をまとめると下記の表1の通りになる。
【0078】
【表1】

【0079】
また転舵角制御用電子制御装置74は、タイヤ空気圧が低下している車輪がないときには、車速Vに基づき標準ステアリングギヤ比Rsgnを演算し、運転者の操舵操作量を示す操舵角θ及び標準ステアリングギヤ比Rsgnに基づき左右前輪の目標舵角δtを演算し、左右前輪の舵角δが目標舵角δtになるよう転舵角可変装置44を制御する。
【0080】
これに対し転舵角制御用電子制御装置74は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、図6に示されたフローチャートに従って、接地荷重の変更に起因する車輌のステア特性の変化を予測し、その予測結果に基づいてステア特性の変化を低減するよう転舵角可変装置44を制御することによってステアリングギヤ比を制御する。
【0081】
またアシストトルク制御用電子制御装置76は、タイヤ空気圧が低下している車輪がないときには、操舵トルクTs及び車速Vに基づいて操舵アシストトルクを制御するが、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、図7に示されたフローチャートに従って、接地荷重の変更に起因する車輌のステア特性の変化を低減する方向への運転者の操舵を補助し、或いは接地荷重の変更に起因する車輌のステア特性の変化を助長する方向への運転者の操舵を抑制するよう、操舵アシストトルクを制御する。
【0082】
また制駆動力配分制御用電子制御装置78は、アクセル開度センサ98により検出されるアクセル開度α及びマスタシリンダ圧力Pmに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌の目標制駆動力Fvtを演算し、タイヤ空気圧が低下している車輪がない場合に於いて、目標制駆動力Fvtが駆動力であるときには、アクセル開度センサ98により検出されるアクセル開度αに基づいてエンジンの出力を制御し、車輌の走行状況に基づいてトランスミッションの変速段を制御すると共に、駆動力の前後及び左右の配分が通常時の配分になるようセンターディファレンシャル56等を制御する。
【0083】
また制駆動力配分制御用電子制御装置78は、タイヤ空気圧が低下している車輪がない場合に於いて、目標制駆動力Fvtが制動力であるときには、挙動制御用電子制御装置72に対し通常時の制動力制御を実行すべき指令信号を出力し、挙動制御用電子制御装置72はマスタシリンダ圧力Pmに基づき各車輪の制動力を制御する。
【0084】
尚挙動制御用電子制御装置72は、タイヤ空気圧が低下している車輪がないときには、車輌の走行に伴い変化する車輌の横加速度Gyの如き車輌状態量に基づき車輌のスピンの程度を示すスピン状態量SS及び車輌のドリフトアウトの程度を示すドリフトアウト状態量DSを演算し、スピン状態量SS及びドリフトアウト状態量DSに基づき車輌のヨー運動が目標のヨー運動になるよう各車輪の制動力を制御する。
【0085】
これに対し制駆動力配分制御用電子制御装置78は、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、図8に示されたフローチャートに従って、駆動力又は制動力の前後及び左右の配分が車輪の接地荷重の変更に起因する車輌のステア特性の変化を低減する配分になるよう、センターディファレンシャル56等又は制動装置26を制御する。
【0086】
尚アクティブスタビライザ制御用電子制御装置70等によるタイヤ空気圧正常時の制御は本発明の要旨をなすものではなく、これらの制御は当技術分野に於いて公知の任意の要領にて実行されてよい。
【0087】
次に図4に示されたフローチャートを参照して実施例1に於いて統合制御用電子制御装置80により実行される車輌の走行制御のメインルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチが閉成されることにより開始され、イグニッションスイッチが開成されるまで所定の時間毎に繰返し実行される。
【0088】
まずステップ10に於いては車速センサ38により検出された車速Vを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはmサイクル前の各車輪のタイヤ空気圧をPwtfiとして下記の式1に従ってタイヤ空気圧低下率RPwtiが演算され、ステップ30に於いてはタイヤ空気圧低下率RPwtiに基づき図11に示されたグラフに対応するマップよりタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiが演算される。
RPwti=Pwti−Pwtfi ……(1)
【0089】
ステップ40に於いては各車輪についてタイヤ空気圧Pwtiが基準値Pwteiよりも低いか否かの判別により何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ50に於いてタイヤ空気圧正常時のアクティブスタビライザ装置16及び18の制御等が実行されるよう、アクティブスタビライザ制御用電子制御装置70、挙動制御用電子制御装置72、転舵角制御用電子制御装置74、アシストトルク制御用電子制御装置76、制駆動力配分制御用電子制御装置78に対しタイヤ空気圧正常時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、肯定判別が行われたときにはステップ60に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪のタイヤ空気圧Pwti及びタイヤ空気圧低下率RPwtiに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより制御ゲインKctが演算される。
【0090】
ステップ100に於いては図5に示されたフローチャートに従って後に詳細に説明する如くアクティブスタビライザ装置16及び18の制御による各車輪の接地荷重の制御が行われるよう、アクティブスタビライザ制御用電子制御装置70に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、ステップ200に於いては図6に示されたフローチャートに従って後に詳細に説明する如く転舵角可変装置44の制御によるステアリングギヤ比の制御が行われるよう、転舵角制御用電子制御装置74に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力される。
【0091】
ステップ300に於いては図7に示されたフローチャートに従って後に詳細に説明する如く電動式パワーステアリング装置36の制御による操舵アシスト力の制御が行われるよう、アシストトルク制御用電子制御装置76に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、ステップ400に於いては図8に示されたフローチャートに従って後に詳細に説明する如くセンターディファレンシャル56、制動装置26等の制御による制駆動力の配分制御が行われるよう、制駆動力配分制御用電子制御装置78に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力される。
【0092】
次に図5に示されたフローチャートを参照してアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70により達成されるタイヤ空気圧低下時の接地荷重の制御について説明する。
【0093】
まずステップ105に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪について基準値Pwteiとタイヤ空気圧Pwtiとの偏差としてタイヤ空気圧低下量ΔPwtiが演算され、ステップ110に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ125へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ115へ進む。
【0094】
ステップ115に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が左前輪及び右前輪の何れであるか及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiに応じて図13に示されたグラフに対応するマップより前輪のアクティブスタビライザ装置16の目標回転角度φf1が演算され、ステップ120に於いては車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側と同一であるか否か及び車輌の横加速度Gyの絶対値に基づき図14に示されたグラフに対応するマップより前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの補正量ΔRmftが演算され、しかる後ステップ135へ進む。
【0095】
ステップ125に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が左後輪及び右後輪の何れであるか及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiに応じて図15に示されたグラフに対応するマップより後輪のアクティブスタビライザ装置18の目標回転角度φr1が演算され、ステップ130に於いては車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側と同一であるか否か及び車輌の横加速度Gyの絶対値に基づき図16に示されたグラフに対応するマップより前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの補正量ΔRmftが演算され、しかる後ステップ135へ進む。
【0096】
ステップ135に於いては例えば車輌の横加速度Gyの大きさが大きいほど目標アンチロールモーメントMatが大きくなるよう、車輌の横加速度Gyに基づき目標アンチロールモーメントMatが演算され、ステップ140に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪及び後輪の何れであるか及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiに基づき図17に示されたグラフに対応するマップより前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの標準値Rmfto(0よりも大きく1よりも小さい値である)が演算される。
【0097】
ステップ145に於いては標準値Rmftoと補正量ΔRmftとの和として前輪の目標ロール剛性配分比Rmftが演算され、ステップ150に於いてはそれぞれ下記の式2及び3に従って前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartが演算され、ステップ155に於いてはそれぞれ前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartに基づき対応する目標アンチロールモーメントを達成するためのアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φf2及びφr2が演算される。
Maft=Rmft・Mat ……(2)
Mart=(1−Rmft)Mat ……(3)
【0098】
ステップ160に於いてはそれぞれ下記の式4及び5に従ってアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φft及びφrtが演算され、ステップ165に於いてはそれぞれアクチュエータ20F及び20Rの回転角φf及びφrがそれぞれ目標回転角φft及びφrtになるよう制御される。
φft=φf1+Kctφf2 ……(4)
φrt=φr1+Kctφr2 ……(5)
【0099】
次に図6に示されたフローチャートを参照して転舵角制御用電子制御装置74により達成されるタイヤ空気圧低下時のステアリングギヤ比の制御について説明する。
【0100】
まずステップ205に於いては車速Vに基づき図18に示されたグラフに対応するマップより標準ステアリングギヤ比Rsgnが演算され、ステップ210に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ225へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ215へ進む。
【0101】
ステップ215に於いては前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定US度が演算され、ステップ220に於いては推定US度に基づき図20に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップよりステアリングギヤ比補正量ΔRsgが演算される。
【0102】
ステップ225に於いては前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定OS度が演算され、ステップ240に於いては運転者により切り込み操舵が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ250へ進み、否定判別が行われたときにはステップ245に於いて推定OS度に基づき図21に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップよりステアリングギヤ比補正量ΔRsgが演算される。
【0103】
ステップ250に於いては運転者により切り戻し操舵が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ260へ進み、否定判別が行われたときにはステップ255に於いて推定OS度に基づき図22に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップよりステアリングギヤ比補正量ΔRsgが演算される。
【0104】
ステップ260に於いては下記の式6に従って目標ステアリングギヤ比Rsgtが演算され、ステップ265に於いては目標ステアリングギヤ比Rsgtを達成するための転舵角可変装置44の目標相対回転角度θrtが演算され、ステップ270に於いては転舵角可変装置44の相対回転角度θrが目標ステアリングギヤ比Rsgtになるよう制御される。
Rsgt=Rsgn+KctΔRsg ……(6)
【0105】
次に図7に示されたフローチャートを参照してアシストトルク制御用電子制御装置76により達成されるタイヤ空気圧低下時の操舵アシスト力の制御について説明する。
【0106】
まずステップ305に於いては操舵トルクTsの大きさが大きいほど基本アシストトルクTab′の大きさが大きくなるよう、操舵トルクTsに基づき図23に示されたグラフに対応するマップより基本アシストトルクTab′が演算される。
【0107】
ステップ310に於いては車速Vが高いほど車速係数Kvが小さくなるよう、車速Vに基づき図24に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kvが演算され、車速係数Kvと基本アシストトルクTab′との積として補正後の基本アシストトルクTabが演算される。
【0108】
ステップ315に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ320に於いて補正アシストトルクΔTacが0に設定された後ステップ340へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ330へ進む。
【0109】
ステップ330に於いてはステップ225の場合と同様前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定OS度が演算され、ステップ335に於いては推定OS度に基づき図25に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより補正アシストトルクΔTacが演算される。
【0110】
ステップ340に於いては下記の式7に従って目標アシストトルクTaが演算され、ステップ345に於いてはアシストトルクが目標アシストトルクTaとなるよう電動式パワーステアリング装置36が制御される。
Ta=Tab+KctΔTac ……(7)
【0111】
次に図8に示されたフローチャートを参照して制駆動力配分制御用電子制御装置78により達成されるタイヤ空気圧低下時の制駆動力の配分制御について説明する。
【0112】
まずステップ405に於いてはアクセル開度α及びマスタシリンダ圧力Pmに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌の目標制駆動力Fvtが演算され、ステップ410に於いてはタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ515へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ415へ進む。
【0113】
ステップ415に於いてはステップ215の場合と同様前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定US度が演算され、ステップ420に於いては車輌の目標制駆動力Fvtが正の値であり車輌が駆動状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ430へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ425へ進む。
【0114】
ステップ425に於いては推定US度に基づき図26に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより駆動力の目標前輪配分比Rdftの補正量ΔRdfが演算され、ステップ430に於いては推定US度に基づき図26に於いて破線にて示されたグラフに対応するマップより制動力の目標前輪配分比Rbftの補正量ΔRbfが演算される。
【0115】
ステップ435に於いてはRdfoを駆動力の目標前輪配分比Rdftの標準値として、下記の式8に従って駆動力の目標前輪配分比Rdftが演算され、ステップ440に於いては操舵角θに基づき図27に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより駆動力の目標左輪配分比Rdltの補正量ΔRdlが演算される。
Rdft=Rdfo+KctΔRdf ……(8)
【0116】
尚図示の実施例に於いては、駆動力の目標左輪配分比Rdltの補正量ΔRdlは操舵角θに基づいて演算されるようになっているが、例えば車輌の横加速度Gy若しくは車輌のヨーレートγの如く車輌の旋回方向及び旋回度合を示す任意の値に基づいて演算されてよい。
【0117】
ステップ445に於いては下記の式9に従って駆動力の目標左輪配分比Rdltが演算され、ステップ450に於いては車輌の制駆動力Fvが目標制駆動力Fvt(駆動力)になるよう駆動装置54の出力が制御され、ステップ455に於いては駆動力の前輪配分比Rdfが目標前輪配分比Rdftになり且つ駆動力の後輪配分比が目標後輪配分比1−Rdftになるようセンターディファレンシャル56が制御されると共に、駆動力の左輪配分比Rdlが目標左輪配分比Rdltになり且つ駆動力の右輪配分比が目標後輪配分比1−Rdltになるよう前輪ディファレンシャル62及び後輪ディファレンシャル66が制御される。
Rdlt=0.5+KctΔRdl ……(9)
【0118】
ステップ515に於いてはステップ225の場合と同様前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定OS度が演算され、ステップ520に於いては車輌の目標制駆動力Fvtが負の値であり車輌が制動状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ530へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ525へ進む。
【0119】
ステップ525に於いては推定OS度に基づき図28に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより制動力の目標前輪配分比Rbftの補正量ΔRbfが演算され、ステップ530に於いては推定OS度に基づき図28に於いて破線にて示されたグラフに対応するマップより駆動力の目標前輪配分比Rdftの補正量ΔRdfが演算される。
【0120】
ステップ535に於いてはRbfoを制動力の目標前輪配分比Rbftの標準値として、下記の式10に従って制動力の目標前輪配分比Rbftが演算され、ステップ540に於いては操舵角θに基づき図29に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより制動力の目標左輪配分比Rbltの補正量ΔRblが演算される。
Rbft=Rbfo+KctΔRbf ……(10)
【0121】
ステップ545に於いては下記の式11に従って制動力の目標左輪配分比Rbltが演算され、ステップ550に於いては下記の式12乃至15に従って各車輪の目標制動力Fwbti(i=fl、fr、rl、rr)が演算され、ステップ555に於いては目標制動力Fwbtiに基づき各車輪の目標制動圧Pti(i=fl、fr、rl、rr)が演算されると共に、各車輪の制動圧Piが対応する目標制動圧Ptiになるよう制動装置26が制御される。
【0122】
Rblt=0.5+KctΔRbl ……(11)
Pwbtfl=RbftRbltFvt ……(12)
Pwbtfr=Rbft(1−Rblt)Fvt ……(13)
Pwbtrl=(1−Rbft)RbltFvt ……(14)
Pwbtrr=(1−Rbft)(1−Rblt)Fvt ……(15)
【0123】
かくして図示の実施例1によれば、ステップ20に於いてタイヤ空気圧低下率RPwtiが演算され、ステップ30に於いてタイヤ空気圧低下率RPwtiに基づきタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiが演算され、ステップ40に於いて各車輪についてタイヤ空気圧Pwtiが基準値Pwteiよりも低いか否かの判別によりタイヤ空気圧が低下している車輪があるか否かの判別が行われ、何れの車輪のタイヤ空気圧も正常であるときはステップ50に於いてタイヤ空気圧正常時の各制御が実行される。
【0124】
これに対し何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下しているときには、ステップ40に於いて肯定判別が行われ、ステップ60に於いてタイヤ空気圧の低下度合に応じて制御ゲインKctが演算され、ステップ100〜400に於いてタイヤ空気圧低下時の車輌の走行制御が実行される。
【0125】
この場合ステップ20に於いてタイヤ空気圧低下率RPwtiが演算され、ステップ30に於いてタイヤ空気圧低下率RPwtiが大きいほどタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiが大きくなるようタイヤ空気圧低下率RPwtiに基づいてタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiが演算されるので、タイヤ空気圧低下判定の基準値が一定である場合に比してその後のタイヤ空気圧の低下の虞れを考慮してタイヤ空気圧が低下しているか否かを判定することができる。
【0126】
またステップ60に於いてタイヤ空気圧Pwtiが低くタイヤ空気圧低下率RPwtiが大きいほど制御ゲインKctが大きくなるようタイヤ空気圧の低下度合に応じて制御ゲインKctが演算され、車輪の接地荷重の制御等に於ける制御量が制御ゲインKctが大きいほど大きくなるよう制御されるので、タイヤ空気圧の低下度合が高いほどタイヤ空気圧が低下した車輪の接地荷重を小さくすることができると共に、接地荷重の変更量が大きく予測される車輌のステア変化の度合が高いほどステアリングギヤ比の制御等の制御量を大きくして車輌のステア変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0127】
特に図5に示された車輪の接地荷重の制御に於いては、ステップ110〜115、125、160、165に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の何れであるかに応じてタイヤ空気圧が低下している車輪の接地荷重が低減されるよう左右輪の接地荷重が変更され、またステップ135〜165に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であり予測される車輌のステア変化がUS側であるときには前後輪のロール剛性配分比が後輪寄りに制御され、タイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であり予測される車輌のステア変化がOS側であるときには前後輪のロール剛性配分比が前輪寄りに制御されるので、タイヤ空気圧が低下している車輪の接地荷重を確実に低減することができると共に、接地荷重の変更に起因する車輌のステア変化が生じる前に前後輪のロール剛性配分比を制御して車輌のステア変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0128】
またステップ110、120、130、145〜165に於いて、タイヤ空気圧が低下している車輪が前輪である場合に於いて車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側であるときには(上記表1のケース1又は4)、前後輪のロール剛性配分比の後輪寄りの度合が低減され、車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側とは逆の方向であるときには(上記表1のケース2又は3)、前後輪のロール剛性配分比が一層後輪寄りになり、タイヤ空気圧が低下している車輪が後輪である場合に於いて車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側であるときには(上記表1のケース5又は8)、前後輪のロール剛性配分比の前輪寄りの度合が低減され、車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側とは逆の方向であるときには(上記表1のケース6又は7)、前後輪のロール剛性配分比が一層前輪寄りになる。
【0129】
従って車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側であるか否かが考慮されることなく前後輪のロール剛性配分比が制御される場合に比して、車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側である場合に車輌のステア特性の変化を低減するための前後輪のロール剛性配分比の制御量が過剰になることを確実に防止することができ、また車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側とは逆の方向である場合に於ける車輌のステア特性の変化を確実に且つ効果的に低減することができる。
【0130】
また図6に示されたステアリングギヤ比の制御に於いては、ステップ210に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であり、前輪の横力が低下する状況であると判定されると、ステップ215に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき車輌の推定US度が演算され、ステップ220に於いて推定US度に基づきステアリングギヤ比補正量ΔRsgが演算され、ステップ260〜270に於いてタイヤ空気圧が正常である場合に比してステアリングギヤ比が大きくなるよう制御されるので、運転者により切り込み操舵が行われる場合にも前輪の舵角が過剰に大きくなることが抑制され、これにより車輌のステア特性が過剰にアンダーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0131】
ステップ210に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であり、後輪の横力が低下する状況であると判定されると、ステップ225に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき車輌の推定OS度が演算される。そしてステップ240に於いて運転者により切り込み操舵が行われていると判別されると、ステップ245に於いて推定OS度に基づきステアリングギヤ比補正量ΔRsgが演算され、ステップ260〜270に於いてタイヤ空気圧が正常である場合に比してステアリングギヤ比が大きくなるよう制御されるので、運転者により切り込み操舵が行われる場合にも前輪の舵角が大きくなり前輪の横力が大きくなることが抑制され、これにより車輌のステア特性が過剰にオーバーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0132】
これに対しタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪である場合に於いて、ステップ250に於いて運転者により切り戻し操舵が行われていると判別されると、ステップ255に於いて推定OS度に基づきステアリングギヤ比補正量ΔRsgが負の値として演算され、ステップ260〜270に於いてタイヤ空気圧が正常である場合に比してステアリングギヤ比が小さくなるよう制御されるので、運転者により切り戻し操舵が行われる場合に前輪の舵角が速やかに直進位置へ戻ることが促進され、これにより車輌のステア特性がオーバーステア特性になる虞れを速やかに低減することができる。
【0133】
また図7に示された操舵アシスト力の制御に於いては、ステップ305及び310に於いて運転者の操舵負担を軽減するための基本アシストトルクTabが演算され、タイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であり運転者によりカウンタ操舵が行われているときには、ステップ315及び325に於いて肯定判別が行われ、ステップ330及び335に於いて推定OS度に基づき補正アシストトルクΔTacが演算され、ステップ340及び345に於いてカウンタ操舵のアシストトルクが付与されるので、運転者によるカウンタ操舵を補助し、車輌のステア特性がオーバーステア特性になる虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
【0134】
また図8に示された制駆動力の配分制御に於いては、ステップ410に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であり、前輪の横力が低下する状況であると判定されると、ステップ415に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき車輌の推定US度が演算される。そしてステップ420に於いて車輌が駆動状態にあり、車輌後方への荷重移動により前輪の接地荷重が更に低下する虞れがあると判別されると、ステップ425に於いて推定US度に基づき駆動力の目標前輪配分比Rdftの補正量ΔRdfが演算され、ステップ435〜455に於いて前輪の駆動力配分が低減され、これにより前輪の駆動力に起因して前輪の横力が低下し車輌のステア特性が更にアンダーステア側へ変化する虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
【0135】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であり車輌が駆動状態にある場合には、ステップ440に於いて操舵角θに基づき駆動力の目標左輪配分比Rdltの補正量ΔRdlが演算され、ステップ445〜455に於いて旋回内輪側の駆動力配分が低減されると共に旋回外輪側の駆動力配分が増大され、これにより車輌に左右輪の駆動力差による旋回補助方向のヨーモーメントが付与されるので、車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
【0136】
これに対しステップ410に於いてタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であり、後輪の横力が低下する状況であると判定されると、ステップ515に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき車輌の推定OS度が演算される。そしてステップ520に於いて車輌が制動状態にあり、車輌前方への荷重移動により後輪の接地荷重が更に低下する虞れがあると判別されると、ステップ525に於いて推定OS度に基づき制動力の目標前輪配分比Rbftの補正量ΔRbfが演算され、ステップ535〜555に於いて後輪の制動力配分が低減され、これにより後輪の制動力に起因して後輪の横力が低下し車輌のステア特性が更にオーバーステア側へ変化する虞れを確実に且つ効果的に低減することができる。
【0137】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であり車輌が制動状態にある場合には、ステップ540に於いて操舵角θに基づき制動動力の目標左輪配分比Rbltの補正量ΔRblが演算され、ステップ545〜555に於いて旋回内輪側の制動力配分が低減されると共に旋回外輪側の制動力配分が増大され、これにより車輌に左右輪の制動力差による旋回抑制方向のヨーモーメントが付与されるので、車輌のステア特性がオーバーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
【0138】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であるが、車輌が制動状態にあるときには、ステップ430に於いて操舵角θに基づき制動力の目標前輪配分比Rbftの補正量ΔRbfが演算され、ステップ535に於いて制動力の目標前輪配分比Rbftが低減されるが、ステップ430に於いて演算される補正量ΔRbfの大きさはステップ525に於いて演算される補正量ΔRbfの大きさよりも小さく、これにより後輪の制動力が過大になって旋回時の車輌の安定性が低下する虞れを確実に低減することができる。
【0139】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が前輪であるが、車輌が制動状態にあるときにも、ステップ540〜555による左右輪の制動力配分の制御が実行される(但しステップ540に於いては図29に於いて破線にて示されたグラフに対応するマップより制動力の左輪配分比補正量ΔRblが演算される)ので、左右輪の制動力差による旋回補助方向のヨーモーメントにより車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
【0140】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であるが、車輌が駆動状態にあるときには、ステップ530に於いて操舵角θに基づき駆動力の目標前輪配分比Rdftの補正量ΔRdfが演算され、ステップ435に於いて駆動力の目標前輪配分比Rdftが増大されるので、後輪の駆動力が過大になり後輪の横力が更に低下することに起因して車輌のステア特性が更にオーバーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
【0141】
またタイヤ空気圧が低下している車輪が後輪であるが、車輌が駆動状態にあるときにも、ステップ440〜455による左右輪の駆動力配分の制御が実行される(但しステップ440に於いては図27に於いて破線にて示されたグラフに対応するマップより駆動力の左輪配分比ΔRdlが演算される)ので、左右輪の駆動力差による旋回抑制方向のヨーモーメントにより車輌のステア特性がオーバーステア側へ変化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
【実施例2】
【0142】
図9は前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置を有しステアリングギヤ比可変装置として機能する転舵角可変装置を備えた四輪駆動車に適用された本発明による車輌の走行制御装置の実施例2に於いて統合制御用電子制御装置により実行される車輌の走行制御のメインルーチンを示すフローチャート、図10は実施例2に於いて転舵角制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時のステアリングギヤ比制御及び前輪転舵角制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図9及び図10に於いて、それぞれ図4及び図6に示されたステップと同一のステップには図4及び図6に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0143】
この実施例2に於いては、転舵角可変装置44は上述の実施例1の場合と同様ステアリングギヤ比を変化させるステアリングギヤ比可変手段として機能すると共に、操舵輪である前輪の転舵角を制御する転舵角可変手段としても機能する。
【0144】
図9に示されている如く、ステップ10乃至100及びステップ300、400はそれぞれ上述の実施例1の場合と同様に実行され、ステップ200に於いては図10に示されたフローチャートに従って転舵角可変装置44についてステアリングギヤ比の制御及び前輪の転舵角の制御が行われる。
【0145】
図10に示されている如く、ステップ205乃至225及びステップ240乃至270はそれぞれ上述の実施例1の場合と同様に実行され、ステップ225が完了すると、ステップ230に於いて運転者によりカウンタ操舵が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ240へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ235に於いて推定OS度に基づき図30に示されたグラフに対応するマップより前輪のカウンタ転舵角の大きさを大きくするための転舵角可変装置44の目標相対回転角度θretが演算され、しかる後ステップ270へ進む。
【0146】
かくして図示の実施例2によれば、上述の実施例1の場合と同様の作用効果が得られると共に、前輪のタイヤ空気圧が低下し前輪の接地荷重が低減されている状況に於いて、運転者によりカウンタ操舵が行われている場合には、前輪のカウンタ転舵角の大きさが大きくなるよう転舵角可変装置44が制御されるので、前輪のタイヤ空気圧が低下している状況に於いて車輌のステア特性がアンダーステア側へ変化することを上述の実施例1の場合に比して更に一層確実に且つ効果的に防止することができる。
【0147】
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0148】
例えば上述の各実施例に於いては、ステップ40に於いて何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下していると判別されると、ステップ100に於いてアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、ステップ200に於いて転舵角制御用電子制御装置74に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、ステップ300に於いてはアシストトルク制御用電子制御装置76に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力され、ステップ400に於いて制駆動力配分制御用電子制御装置78に対しタイヤ空気圧低下時の制御を実行すべき旨の指令信号が出力されるようになっているが、ステップ100〜400の少なくとも何れかが省略され、これによりアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70、転舵角制御用電子制御装置74、アシストトルク制御用電子制御装置76、制駆動力配分制御用電子制御装置78の何れかによる制御が省略されてもよい。
【0149】
また上述の各実施例に於いては、前輪の目標ロール剛性配分比Rmftに基づき図19に示されたグラフに対応するマップより車輌の推定US度又は推定OS度が演算されるようになっているが、車輌の推定US度又は推定OS度は例えば図31に示されている如く前輪又は後輪のタイヤ空気圧の低下量ΔPwtiに基づいて直接演算されるよう修正されてもよく、また前輪及び後輪のアクティブスタビライザ装置の制御量に基づいて演算されるよう修正されてもよい。
【0150】
また上述の各実施例に於いては、車輌は駆動力の前後配分及び左右配分を制御可能な四輪駆動車であるが、車輌は駆動力の配分を制御することができない車輌に適用されてもよく、その場合には図8に示されたフローチャートによる制御は省略される。また本発明が適用される車輌は前輪駆動車や後輪駆動車であってもよく、その場合にも図8に示されたフローチャートによる制御は省略される。
【0151】
特に本発明が適用される車輌が後輪駆動車であり、前輪が従動輪である場合には、推定US度に基づいて演算される制御量及び操舵角θに基づいて演算される制御量は例えば図20、図26、図29に於いて二点鎖線にて示されている如く、前輪が駆動輪である場合よりも大きさが小さくされる。逆に本発明が適用される車輌が前輪駆動車であり、後輪が従動輪である場合には、推定US度に基づいて演算される制御量は例えば図21、図22、図22、図25、図28、図30に於いて二点鎖線にて示されている如く、後輪が駆動輪である場合よりも大きさが小さくされる。
【0152】
また上述の各実施例に於いては、車輌の推定US度又は推定OS度は転舵角制御用電子制御装置74等により個別に演算されるようになっているが、車輌の推定US度又は推定OS度は統合制御用電子制御装置80又はアクティブスタビライザ制御用電子制御装置70により一括して演算され、転舵角制御用電子制御装置74等へ出力されるよう修正されてもよい。
【0153】
また上述の各実施例に於いては、アクティブスタビライザ装置によりアンチロールモーメントを増減させて車輌のロールを低減し、前後輪ロール剛性配分比を可変制御し、車輪の接地荷重を変更するようになっているが、前後輪ロール剛性配分比を制御し車輪の接地荷重を変更する手段は例えばアクティブサスペンションの如く当技術分野に於いて公知の任意の手段であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置を有しステアリングギヤ比可変装置として機能する転舵角可変装置を備えた四輪駆動車に適用された本発明による車輌の走行制御装置の実施例1の要部を示す概略構成図である。
【図2】実施例1の駆動系、転舵角可変装置、電動式パワーステアリング装置を示す概略構成図である。
【図3】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図4】実施例1に於いて統合制御用電子制御装置により実行される車輌の走行制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施例1に於いてアクティブスタビライザ制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時の接地荷重制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】実施例1に於いて転舵角制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時のステアリングギヤ比制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施例1に於いてアシストトルク制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時の操舵アシスト力制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】実施例1に於いて制駆動力配分制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時の制駆動力の配分制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】実施例2に於いて統合制御用電子制御装置により実行される車輌の走行制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図10】実施例2に於いて転舵角制御用電子制御装置により達成されるタイヤ空気圧低下時のステアリングギヤ比制御及び前輪転舵角制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】タイヤ空気圧低下率RPwtiとタイヤ空気圧低下判定の基準値Pwteiとの間の関係を示すグラフである。
【図12】車輪のタイヤ空気圧Pwti及びタイヤ空気圧低下率RPwtiと制御ゲインKctとの間の関係を示すグラフである。
【図13】タイヤ空気圧が低下している車輪及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiと前輪のアクティブスタビライザ装置の目標回転角度φf1との間の関係を示すグラフである。
【図14】タイヤ空気圧が低下している車輪及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiと後輪のアクティブスタビライザ装置の目標回転角度φr1との間の関係を示すグラフである。
【図15】タイヤ空気圧が低下している車輪が前輪である場合について、車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側と同一であるか否か及び車輌の横加速度Gyの絶対値と前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの補正量ΔRmftとの間の関係を示すグラフである。
【図16】タイヤ空気圧が低下している車輪が後輪である場合について、車輌の旋回方向がタイヤ空気圧が低下している車輪の側と同一であるか否か及び車輌の横加速度Gyの絶対値と前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの補正量ΔRmftとの間の関係を示すグラフである。
【図17】タイヤ空気圧が低下している車輪及びタイヤ空気圧低下量ΔPwtiと前輪の目標ロール剛性配分比Rmftの標準値Rmftoとの間の関係を示すグラフである。
【図18】車速Vと標準ステアリングギヤ比Rsgnとの間の関係を示すグラフである。
【図19】前輪の目標ロール剛性配分比Rmftと車輌の推定US度及び推定OS度との間の関係を示すグラフである。
【図20】推定US度とステアリングギヤ比補正量ΔRsgとの間の関係を示すグラフである。
【図21】推定OS度とステアリングギヤ比補正量ΔRsgとの間の関係を示すグラフである。
【図22】推定OS度とステアリングギヤ比補正量ΔRsgとの間の関係を示すグラフである。
【図23】操舵トルクTsと基本アシストトルクTab′との間の関係を示すグラフである。
【図24】車速Vと車速係数Kvとの間の関係を示すグラフである。
【図25】推定OS度と補正アシストトルクΔTacとの間の関係を示すグラフである。
【図26】推定US度と駆動力の目標前輪配分比Rdftの補正量ΔRdfとの間の関係を示すグラフである。
【図27】操舵角θと駆動力の目標左輪配分比Rdltの補正量ΔRdlとの間の関係を示すグラフである。
【図28】推定OS度と制動力の目標前輪配分比Rbftの補正量ΔRbfとの間の関係を示すグラフである。
【図29】操舵角θと制動力の目標左輪配分比Rbltの補正量ΔRblとの間の関係を示すグラフである。
【図30】操舵角θと転舵角可変装置の目標相対回転角度θrtとの間の関係を示すグラフである。
【図31】タイヤ空気圧低下量ΔPwtiと車輌の推定US度及び推定OS度との間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0155】
16、18 アクティブスタビライザ装置
20F、20R アクチュエータ
22 電子制御装置
26 制動装置
44 転舵角可変装置
54 駆動装置
70 アクティブスタビライザ制御用電子制御装置
72 挙動制御用電子制御装置
74 転舵角制御用電子制御装置
76 アシストトルク制御用電子制御装置
78 制駆動力配分制御用電子制御装置
80 統合制御用電子制御装置
82FL〜82RR 空気圧センサ
84 横加速度センサ
86 車速センサ
88 操舵角センサ
90F、90R、96 回転角センサ
92、94FL〜94RR 圧力センサ
98 アクセル開度センサ
100 トルクセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車輪についてタイヤ空気圧を検知する手段と、何れかの車輪のタイヤ空気圧が低下したときには当該車輪の接地荷重を低減すると共に他の車輪の接地荷重を増大させる接地荷重可変手段と、運転者の操舵操作に対する操舵輪の転舵特性を変更することにより車輌のステア特性を可変制御するステア特性可変手段とを有する車輌の走行制御装置に於いて、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更に基づいて車輌のステア特性の変化を予測し、予測される車輌のステア特性の変化を低減するよう車輌のステア特性を制御することを特徴とする車輌の走行制御装置。
【請求項2】
前記ステア特性可変手段は前輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がアンダーステア方向へ変化すると予測し、車輌のステア特性のアンダーステア方向への変化を低減するよう車輌のステア特性を制御することを特徴とする請求項1に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項3】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくすることを特徴とする請求項2に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項4】
前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには車輌のステア特性がオーバーステア方向へ変化すると予測し、車輌のステア特性のオーバーステア方向への変化を低減するよう車輌のステア特性を制御することを特徴とする請求項1に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項5】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪が駆動輪であるときには前輪が従動輪であるときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを小さくすることを特徴とする請求項4に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項6】
前記ステア特性可変手段は接地荷重が低減された車輪の側へ車輌が旋回するときには接地荷重が低減された車輪とは反対の側へ車輌が旋回するときに比して車輌のステア特性の制御量の大きさを小さくすることを特徴とする請求項1乃至5に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項7】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、前記ステア特性可変手段は前輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比を大きくすることを特徴とする請求項1乃至6に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項8】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段はステアリングギヤ比可変手段であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには運転者により切り込み操舵が行われるときのステアリングギヤ比を大きくすることを特徴とする請求項1乃至6に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項9】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は前輪の舵角を制御する舵角制御手段であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減された状況に於いて運転者によりカウンタ操舵が行われたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向への前輪の舵角を大きくすることを特徴とする請求項1乃至6に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項10】
前輪が操舵輪であり、前記ステア特性可変手段は操舵アシスト力を制御するパワーステアリング装置であり、前記ステア特性可変手段は後輪の接地荷重が低減されたときには後輪の接地荷重が低減されていない場合に比してカウンタ操舵方向の操舵アシスト力を大きくすることを特徴とする請求項1乃至9に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項11】
前記ステア特性可変手段は左右輪の制駆動力差を制御可能な制駆動力制御手段を含み、前記予測される車輌のステア特性の変化を低減するよう前記制駆動力制御手段により左右輪の制駆動力差を制御することを特徴とする請求項1乃至10に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項12】
前記ステア特性可変手段は前後輪の制駆動力の配分を制御可能な制駆動力制御手段を含み、前輪側及び後輪側のうち接地荷重が低減された車輪を含む側の制駆動力の配分が低下するよう前記制駆動力制御手段により前後輪の制駆動力の配分を制御することを特徴とする請求項1乃至11に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項13】
前記接地荷重可変手段はタイヤ空気圧の低下度合が高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくすることを特徴とする請求項1乃至12に記載の車輌の走行制御装置。
【請求項14】
前記接地荷重可変手段はタイヤ空気圧が低下した車輪の更なるタイヤ空気圧低下の虞れが高いほど当該車輪の接地荷重の低減量を大きくすると共に他の車輪の接地荷重の増大量を大きくし、前記ステア特性可変手段は前記接地荷重可変手段による接地荷重の変更量の大きさが大きいほど車輌のステア特性の制御量の大きさを大きくすることを特徴とする請求項1乃至13に記載の車輌の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−112310(P2007−112310A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306255(P2005−306255)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】