説明

車間距離制御装置

【課題】 本発明は、車間距離制御装置に関し、先行車両との関係で自車両が自動停車されることにより停止されたレーダによる照射を適当なタイミングで再開させることにより、車間距離制御を的確に実行させることを目的とする。
【解決手段】 車両前方にレーザ光を照射するレーダセンサを用いて先行車両との車間距離を制御するうえで、先行車両の停車に伴って自車両を停車させる車両停車制御を実行させる。車両停車制御により自車両の停車が開始された際には、レーダセンサによるレーザ光の照射を停止させる。そして、レーダセンサによるレーザ光の照射が停止された後、運転者により照射再開スイッチのオン操作が行われた際には、そのレーザ光の照射を再開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車間距離制御装置に係り、特に、車両前方に光又は電磁波を照射するレーダを用いて先行車両との車間距離を制御するうえで、自車両を自動的に停車させる車両停車制御を実行し得る車間距離制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体前部に配設された車載レーダから車両前方へ向けて光又は電磁波を照射することにより、自車両の前方に存在する先行車両を検出し、その先行車両との車間距離を適当に制御するようにした車間距離制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置においては、車両が走行中であるときは車載レーダによる光又は電磁波の照射が実行される一方、車両が停車中であるときはその照射が停止される。このため、停車中に同一歩行者に対してレーダによる照射が長時間継続して行われるのを抑制することができ、レーダによる照射の人への影響をできるだけ軽減することができる。
【特許文献1】特開平10−325865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した車間距離制御が先行車両の停車に伴って自車両を停車させる車両停車制御を含むものであるときには、その車両停車制御によって自車停車が開始されると、車載レーダによる照射が停止されることとなるため、以後、自車両がレーダを用いて先行車両の状況を把握することが不可能となり、その結果として、車間距離制御の実行に支障が生ずることとなってしまう。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、先行車両との関係で自車両が自動停車されることにより停止されたレーダによる照射を適当なタイミングで再開させることにより、車間距離制御を的確に実行させることが可能な車間距離制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、車両前方に光又は電磁波を照射するレーダと、前記レーダを用いて先行車両との車間距離を制御するうえで自車両を停車させる車両停車制御を実行し得る車間距離制御手段と、を備える車間距離制御装置であって、前記車両停車制御により自車停車が開始された場合に前記レーダによる照射を停止する照射停止手段と、前記照射停止手段により前記レーダによる照射が停止された後、運転者による所定スイッチ操作が行われた際に該レーダによる照射を再開する照射再開手段と、を備える車間距離制御装置により達成される。
【0006】
本発明において、車両前方に光又は電磁波を照射するレーダを用いた先行車両との車間距離の制御時に車両停車制御により自車停止が開始されると、そのレーダからの照射が停止される。また、その後、運転者による所定スイッチ操作が行われると、そのレーダからの照射が再開される。このため、車両停車制御中にレーダによる照射が継続することに起因する不都合を極力回避しつつ、その停車制御中に運転者の意思でレーダによる照射を再開することで車間距離制御を的確に実行させることが可能となる。
【0007】
この場合、請求項2に記載する如く、請求項1記載の車間距離制御装置において、前記照射停止手段は、また、前記照射再開手段により前記レーダによる照射が再開された直後、該レーダを用いて先行車両の停車が検出されるときには、再度、該レーダによる照射を停止することとすれば、レーダ照射の再開によって検出された先行車両が停車しているため自車両が停車を継続する状況で、再開されたレーダによる照射が継続することに起因する不都合を回避することが可能となる。
【0008】
尚、請求項3に記載する如く、請求項2記載の車間距離制御装置において、前記車間距離制御手段は、前記照射再開手段により前記レーダによる照射が再開された直後、該レーダを用いて先行車両の停車が検出されるときには、前記車両停車制御による自車停車の保持を継続することとすればよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1乃至3記載の発明によれば、先行車両との関係で自車両が自動停車されることにより停止されたレーダによる照射を適当なタイミングで再開させることにより、車間距離制御を的確に実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施例である車両に搭載される車間距離制御装置10のシステム構成図を示す。本実施例の車間距離制御装置10は、自車両と自車両の直前に存在する先行車両との車間距離を低車速域(例えば0km/h〜30km/h)で又は全車速域(0km/h〜)で制御する車間距離制御を実行するクルーズコントロールシステムである。車間距離制御装置10は、図1に示す如く、車間距離制御のための演算を行う電子制御ユニット(以下、車間制御ECUと称す)12を備えており、車間制御ECU12を用いて車間距離制御を実行する。
【0011】
車間制御ECU12には、車両の例えばフロントグリル近傍に配設されるレーダセンサ14が接続されている。レーダセンサ14は、車両前方の所定領域を所定周期でスキャニングするように構成されており、車両前方の所定領域に照射したレーザ光が対象物に反射した際の反射波を受信することによりその照射から受信までの時間に基づいた対象物の有無及びその対象物までの距離に応じた信号を出力する。レーダセンサ14の出力信号は、車間制御ECU12に供給されている。車間制御ECU12は、レーダセンサ14の出力信号に基づいて、自車両の前方所定領域内に先行車両が存在するか否かを判別すると共に、先行車両が存在する場合には自車両とその先行車両との車間距離Lを検出し、また、その検出した車間距離Lを微分処理することにより自車両と先行車両との相対速度Vrを検出する。
【0012】
車間制御ECU12には、また、車輪速センサ16及びGセンサ18が接続されている。車輪速センサ16は、自車両の速度に応じた信号を車間制御ECU12に対して出力する。車間制御ECU12は、車輪速センサ16の出力信号に基づいて自車速V1を検出すると共に、また、その自車速V1と上記の相対速度Vrとの関係に基づいて先行車両の速度V2を検出する。また、Gセンサ18は、自車両の加減速度に応じた信号を車間制御ECU12に対して出力する。車間制御ECU12は、Gセンサ18の出力信号に基づいて自車両の加減速度αを検出する。尚、この加減速度αは、加速時にプラスとなり、減速時にマイナスとなる値である。
【0013】
車間制御ECU12には、また、車両運転者に操作され得るクルーズコントロールスイッチ22が接続されている。クルーズコントロールスイッチ22は、例えばステアリングコラムの側部に取り付けられたレバー式のスイッチであり、上記した車間距離制御を実行するクルーズコントロールシステムを起動するためのラッチ式のメインスイッチと、車間距離制御を開始するためのセット操作スイッチと、クルーズコントロールシステムによる制御走行を解除するためのキャンセル操作スイッチと、が一体化されて構成されている。尚、セット操作スイッチ及びキャンセル操作スイッチの操作は、メインスイッチがシステム起動のためにオン状態にある場合にのみ有効となる。車間制御ECU12は、クルーズコントロールスイッチ22の各種状態を検知し、後述の如くその状態に従って車間距離制御を実行する。
【0014】
車間制御ECU12には、また、車両運転者に操作され得る照射再開スイッチ24が接続されている。照射再開スイッチ24は、上記したクルーズコントロールスイッチ22と一体に構成されており、或いは、クルーズコントロールスイッチ22とは別体でステアリングホイールの表面等に取り付けられている。照射再開スイッチ24は、後に詳述する如く、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止している適当なタイミングで、そのレーザ光の照射を再開させるための専用スイッチである。照射再開スイッチ24の操作は、かかるタイミングでのみ有効となる。車間制御ECU12は、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止している適当なタイミングで、照射再開スイッチ24の状態を検知し、照射再開スイッチ24がオン操作された際にレーダセンサ14からのレーザ光の照射を再開させる。
【0015】
車間制御ECU12には、また、車両動力であるエンジンの制御を行うエンジンECU26、及び、車両ブレーキの制御を行うブレーキECU28が接続されている。エンジンECU26には、エンジンの回転駆動により車両を駆動させる駆動力を発生するスロットルアクチュエータ30が接続されている。また、ブレーキECU28には、車両の有する電動式又は油圧式のブレーキ機構の作動及び変速機のシフトダウンによる各車輪の回転抑制により車両を制動させる制動力を発生するブレーキアクチュエータ32が接続されている。車間制御ECU12は、後述の如く、自車両を先行車両に対して目標車間距離を空けて走行させ或いは停車させるべくスロットルアクチュエータ30及びブレーキアクチュエータ32を適当に作動させるようにエンジンECU26及びブレーキECU28に対してそれぞれ指令信号を供給して、車間距離制御を実行する。エンジンECU26及びブレーキECU28は、車間制御ECU12から供給される指令信号に従って、スロットルアクチュエータ30及びブレーキアクチュエータ32を適当に作動させる。
【0016】
車間制御ECU12には、更に、警報装置34が接続されている。警報装置34は、クルーズコントロールシステムに異常が生じていることや自車両が先行車両に衝突する可能性のあること、車両距離制御の実行により自車両が停車していること等を車両運転者に対して聴覚的に知らせるべくブザー等の警報音や音声を出力する装置である。車間制御ECU12は、クルーズコントロールシステムに異常が生じ或いは車間距離制御時に自車両が先行車両に衝突する可能性があると判断された際などに警報装置34を駆動する。尚、警報装置34に代えて或いは警報装置34と共に、運転者に対して異常や衝突可能性を視覚的に知らせる警報表示器を設けることとしてもよい。
【0017】
次に、本実施例の車間距離制御装置10の動作について説明する。図2は、本実施例における車間距離制御を説明するための図を示す。
【0018】
本実施例において、エンジンECU26及びブレーキECU28は、クルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ状態にありクルーズコントロールシステムの起動がなされていないときは、車間制御ECU12から指令信号の供給を受けず、車両運転者によるアクセルペダルの操作に応じた駆動力が車両に生ずるようにスロットルアクチュエータ30に対して指令信号を供給し、或いは、車両運転者によるブレーキペダルの操作に応じた制動力が車両に生ずるようにブレーキアクチュエータ32に対して指令信号を供給する。従って、クルーズコントロールシステムの非起動時において、車両は、車両運転者のアクセル操作及びブレーキ操作に従った加減速度で走行することとなる。
【0019】
かかる状態からクルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替わりシステム起動がなされると、車間制御ECU12は、車間距離制御を実行するモードとなる。かかるモードにおいて、自車両の直前に先行車両が存在する状況で車両運転者が車両の速度調整を行い車両の速度V1が車間距離制御の対象速度域(例えば0km/h〜30km/h)に達している際にクルーズコントロールスイッチ22のセット操作スイッチがオン操作されると、車間距離制御が実行の許可されない待機状態から現実に実行される状態へ移行してその車間距離制御の実行が開始されることとなる。
【0020】
このように車間距離制御の実行が開始されると、車間制御ECU12は、レーダセンサ14を駆動して自車両の前方へ向けて所定領域がスキャニングされるようにレーザ光を照射させる。そして、車間制御ECU12は、レーダセンサ14を用いて自車両と同一車線上で自車両の直前に存在する先行車両を検出し、その先行車両の速度V2が制御対象速度域内の例えば20km/hであるときには、図2(A)に示す如く、その速度(20km/h)で自車両がその先行車両に追従して走行するようにエンジンECU26及びブレーキECU28に対して適宜指令信号を供給する。
【0021】
この場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作若しくはアクセル操作を伴うことなく自動的に先行車両との車間距離が車速V1に比例した目標車間距離に一致するように加減速される(以下、この車間距離制御中の一態様を追従制御と称す)。尚、この目標車間距離は、制御対象である先行車両が急制動により停車した際にも運転者によるブレーキ操作により自車両をその先行車両の直前で停止させることが可能な距離であって、自車速V1が大きいほど長い距離に設定されるが、車両運転者による所定のスイッチ操作によって例えば「長」,「中」,「短」と多段階に切り替え可能となるようにしてもよい。
【0022】
また、車間距離制御の実行開始後、車間制御ECU12は、レーダセンサ14を用いて制御対象の先行車両が停車したことを検知した場合、図2(B)に示す如く、その先行車両の停車に伴って自車両も所定の目標車間距離を保って停車するようにブレーキECU28に対して指令信号を供給する。この場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作を伴うことなく自動的に停車される(以下、この車間距離制御中の一態様を車両停車制御と称す)。
【0023】
ここで、車両が停車した状態で継続してレーザ光の照射が行われると、道路上にいる歩行者などが車両前方を覗き込むなどしてそのレーザ光を直視し得る可能性が高くなると共に、レーザ光の直視を長時間継続して行い得るものとなるため、レーザ光照射の人への影響が過大となってしまう。これに対して、本実施例において、車両停車制御による車両停車が開始されて車両が実際に停車すると、以後、車間制御ECU12は、かかる車両停車を保持した状態で、先行車両の検出のために設けられたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を停止させる。このため、車両停車中におけるレーダセンサ14のレーザ光の人への照射を抑制することができ、かかる照射の人への影響を軽減することが可能となっている。
【0024】
車両停車制御による車両停車に起因してレーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止されると、その後、車両制御ECU12は、後に詳述するタイミングでレーダセンサ14からのレーザ光の照射を再開する。そして、レーダセンサ14を用いて先行車両が検出される場合には、以後上記した追従制御又は車両停車制御に従って再度その先行車両との車間距離を制御する。
【0025】
尚、車間距離制御の実行中に、ブレーキペダルが踏み込み操作された場合、クルーズコントロールスイッチ22のキャンセル操作スイッチがオン操作された場合、変速機のシフトポジションがドライブレンジ以外へシフトされた場合、先行車両又は自車両の車線変更等により制御対象の先行車両が存在しなくなった場合、パーキングブレーキがオン操作された場合、及び、自車速V1が対象速度域の上限値(例えば30km/h)を上回った場合、車間制御ECU12は、その車間距離制御の実行を中止する。また、クルーズコントロールシステムの起動後にクルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ操作された場合、車間制御ECU12は、車間距離制御が現に実行されている場合はその実行を中止する。
【0026】
このように車間距離制御によれば、0km/hを超える対象速度域において先行車両が存在するとき、先行車両との車間距離が車速に応じた目標車間距離に一致するように自車両をその先行車両に追従して走行させることができ、また、先行車両が停車した際にはその停車に伴って自車両を自動的に停車させることができる。このため、本実施例によれば、特に車両に制動力及び駆動力を交互に繰り返し発生させる必要のある渋滞走行時等において、運転者の行うべきアクセル操作及びブレーキ操作を支援してその負担軽減を図り、運転者の利便性を向上させることが可能となっている。
【0027】
ところで、上記の如く、本実施例においては、車両停車制御による車両停車が開始された以後、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止される。この点、このように車両停車制御の実行中にレーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止されると、以後、自車両においてレーダセンサ14を用いて先行車両の状況を把握することが不可能となるため、その間に先行車両が発進すると以後自車両と先行車両との車間距離が適切に制御されず、車間距離制御の実行に支障をきたすこととなる。そこで、本実施例のシステムは、先行車両の停車に伴う自車両の停車に起因して停止されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を適当なタイミングで再開させて、車間距離制御を的確に実行させる点に特徴を有している。以下、図3を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
【0028】
図3は、本実施例の車間距離制御装置10において車間制御ECU12が実行する制御ルーチンのフローチャートを示す。図3に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図3に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
【0029】
ステップ100では、車間距離制御中において先行車両の停車に起因して車両停車制御が実行されており現に自車両が停車されているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、車両停車制御が開始されると、以後、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止されることとなるが、本ステップ100において肯定判定がなされた場合は、次にステップ102の処理が実行される。
【0030】
ステップ102では、上記ステップ100において肯定判定がなされた後、照射再開スイッチ24がオン操作されたか否かが判別される。その結果、照射再開スイッチ24のオン操作が行われていないと判別された場合は、今回のルーチンは終了される。一方、照射再開スイッチ24のオン操作が行われたと判別された場合は、次にステップ104の処理が実行される。
【0031】
ステップ104では、停止されていたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を再開する処理が実行される。本ステップ104の処理が実行されると、以後、自車両の前方に先行車両が存在する場合には、その先行車両をレーダセンサ14を用いて検出することが可能となり、その先行車両との車間距離を制御することが可能となる。本ステップ104の処理が実行されると、次にステップ106の処理が実行される。
【0032】
ステップ106では、上記ステップ104でレーダセンサ14からのレーザ光が再開された時点で、そのレーダセンサ14を用いて検出される先行車両が停車している或いはそのレーダセンサ14を用いて先行車両を検出することができない状態にあるか否かが判別される。その結果、レーダセンサ14を用いて先行車両が検出されかつその先行車両が停車していない場合は、先行車両が停車状態から移行して発進状態にあると判断できるので、自車両はレーダセンサ14を用いた車間距離制御によってその先行車両に追従走行することが適切となる。従って、上記ステップ106において否定判定がなされた場合は、今回のルーチンは終了される。
【0033】
一方、レーザ光の照射を再開したレーダセンサ14を用いて先行車両が検出されたがその先行車両が停車している場合は、車間距離制御の制御対象である先行車両が未だ継続して停車していると判断できるので、車間距離制御によって自車両が発進することはなく自車両の停車は保持されることとなる。この際には、一旦は再開されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射は、そのレーザ光照射の人への影響を考慮して停止させることが適切となる。また、レーザ光の照射を再開したレーダセンサ14を用いて先行車両が検出されない場合は、車間距離制御の制御対象である先行車両が存在しないと判断できるので、以後、レーダセンサ14を用いた車間距離制御を実行することはできない。この際には、一旦は再開されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を継続することは不要である。従って、上記ステップ106において肯定判定がなされた場合は、次にステップ108の処理が実行される。
【0034】
ステップ108では、上記ステップ104で再開されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を停止する処理が実行される。本ステップ108の処理が実行されると、以後再び、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止されることとなるので、停車中の車両からのレーザ照射が歩行者などの人に与える影響は軽減されることとなる。本ステップ108の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0035】
上記図3に示すルーチンによれば、レーダセンサ14を用いた車両停車制御によって先行車両の停車に伴う自車両の停車が実現されることによりレーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止された後、運転者による照射再開スイッチ24のオン操作が行われたときに、その停止されたレーザ光の照射を再開することができる。従って、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が停止された後、先行車両が発進し始めた適当なタイミングで運転者が照射再開スイッチ24をオン操作することとすれば、レーダセンサ14からのレーザ光の照射が再開されて、先行車両の検出が再び行われ、その先行車両に対する車間距離制御の実行が可能となる。
【0036】
この点、本実施例のシステムによれば、車両停車制御による自車両の自動停車中にレーダセンサ14からのレーザ光の照射を停止することで、そのレーザ光照射が継続することに起因して歩行者等の人への影響が過大となる不都合を極力回避することができると共に、その後、その自動停車中に運転者の意思でレーダセンサ14からのレーザ光の照射を再開することで、先行車両に対する車間距離制御を的確に実行させることが可能となっている。
【0037】
尚、車両停車制御中かつレーザ照射の停止中における運転者による照射再開スイッチ24のオン操作が、先行車両が発進し始める適当なタイミングで行われることは保証しきれず、先行車両が停車を継続している際に行われる可能性は十分にあり得る。しかし、先行車両が停車するときには、自車両はレーザ照射再開後のレーダセンサ14を用いた車両停車制御によって停車することとなるので、自車両の停車が保持されるにもかかわらず、照射再開スイッチ24のオン操作によって再開されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射が継続するものとすると、歩行者などの人への影響を払拭することが困難となる不都合が生じ得る。
【0038】
これに対して、上記図3に示すルーチンによれば、運転者の照射再開スイッチ24のオン操作に起因してレーダセンサ14からのレーザ光の照射が再開された直後に、そのレーダ照射によって先行車両が停車していることが検知されるときには、再びレーダセンサ14からのレーザ光の照射を停止することができる。レーダセンサ14を用いた車間距離制御中に先行車両が停車する際には、自車両は車両停車制御によって停車されることとなる。従って、本実施例のシステムによれば、一旦は再開されたレーザ光の照射がその照射に基づく先行車両の停車検出によって直ちに停止することとなるので、再開されたレーザ光の照射が先行車両の停車検出後ひいては自車両の停車後も継続することに起因する不都合を回避することができ、歩行者等の人への影響を軽減することが可能となっている。
【0039】
尚、上記の実施例においては、レーダセンサ14が特許請求の範囲に記載した「レーダ」に相当していると共に、車間制御ECU12が、自車両を停車させる車両停車制御を含めてレーダセンサ14を用いて先行車両との車間距離を制御する車間距離制御を実行することにより特許請求の範囲に記載した「車間距離制御手段」が、車両停車制御により自車両の停車が開始された場合にレーダセンサ14からのレーザ光の照射を停止することにより特許請求の範囲に記載した「照射停止手段」が、上記図3に示すルーチン中ステップ104の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「照射再開手段」が、それぞれ実現されている。
【0040】
ところで、上記の実施例においては、レーザ光を照射するレーダセンサ14を用いて先行車両を検出することとしているが、レーザ光以外にミリ波や超音波等の電磁波を照射するセンサやカメラなどを用いて先行車両を検出することとしてもよい。かかる構成においても、車両停車制御が実行されて先行車両の停車に伴って自車両が停車されると、センサ等からの電磁波の照射が停止されることとなり、その後、照射再開スイッチ24がオン操作された際にかかる照射が再開されることとなる。尚、このように電磁波の照射を停止するのは、車両停車中は先行車両検出のために電磁波を照射する必要性があまりなく、電磁波照射を行ううえでの電力消費を低減するうえで効果的となるからである。
【0041】
また、上記の実施例においては、車両停車制御による自車両の自動停車が実現された際に停止されたレーダセンサ14からのレーザ光の照射を、運転者による照射再開スイッチ24のオン操作により再開することとし、この照射再開スイッチ24をクルーズコントロールスイッチ22に一体に構成し或いは別個に設けた専用スイッチとしているが、運転者がアクセルペダルを操作した際にオン状態となるアクセル操作スイッチや運転者がブレーキペダルを操作した際にオン状態となるブレーキ操作スイッチなどの、既存のスイッチを上記の照射再開スイッチ24として兼用することとしてもよい。かかる構成においては、アクセル操作スイッチがオン操作された際やブレーキ操作スイッチがオン操作された際又はオン操作後にオフ操作された際に、停止されているレーダセンサ14からのレーザ光の照射を再開することとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例である車両に搭載される車間距離制御装置のシステム構成図である。
【図2】本実施例における車間距離制御を説明するための図である。
【図3】本実施例の車間距離制御装置において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 車間距離制御装置
12 車間制御ECU
14 レーダセンサ
24 照射再開スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に光又は電磁波を照射するレーダと、前記レーダを用いて先行車両との車間距離を制御するうえで自車両を停車させる車両停車制御を実行し得る車間距離制御手段と、を備える車間距離制御装置であって、
前記車両停車制御により自車停車が開始された場合に前記レーダによる照射を停止する照射停止手段と、
前記照射停止手段により前記レーダによる照射が停止された後、運転者による所定スイッチ操作が行われた際に該レーダによる照射を再開する照射再開手段と、
を備えることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
前記照射停止手段は、また、前記照射再開手段により前記レーダによる照射が再開された直後、該レーダを用いて先行車両の停車が検出されるときには、再度、該レーダによる照射を停止することを特徴とする請求項1記載の車間距離制御装置。
【請求項3】
前記車間距離制御手段は、前記照射再開手段により前記レーダによる照射が再開された直後、該レーダを用いて先行車両の停車が検出されるときには、前記車両停車制御による自車停車の保持を継続することを特徴とする請求項2記載の車間距離制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−21578(P2006−21578A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199713(P2004−199713)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】