説明

転がり軸受

【課題】軸受寿命の延命化が可能な高い負荷容量の放熱性に優れた低コストでコンパクトな転がり軸受を提供する。
【解決手段】環状に連続した回転輪20と、回転輪に対向配置され、当該回転輪の一部を支持可能な支持ユニット22と、回転輪に形成された回転軌道面20sと支持ユニットに形成された支持軌道面22sとの間を転動可能に組み込まれた複数の転動体24と、複数の転動体を1つずつ回転自在に保持する可撓性の保持器26とを具備し、支持ユニットには、保持器に保持された複数の転動体を所定方向に循環させる循環経路28が支持軌道面に連続して設けられており、回転輪の回転に伴って当該回転輪の回転軌道面と支持ユニットの支持軌道面との間を転動した複数の転動体は、循環経路を経由した後、再び回転軌道面と支持軌道面との間を転動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転輪の一部を支持しつつ当該回転輪を回転自在に軸支する転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を回転自在に軸支する種々の転がり軸受が知られている(特許文献1)。その一例として図4(a)には、互いに矢印方向Fに圧接しながら回転する一対のロール2の回転軸4の両側を回転自在に軸支する転がり軸受6が示されている。かかる軸受構造に適用した転がり軸受6は、それぞれ、回転軸4に外嵌された環状の内輪8と、内輪8に対向してハウジング(図示しない)に内嵌された環状の外輪10と、内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体12とを備えている。
【0003】
ところで、図4(a)の軸受構造において、各転がり軸受6は、互いに同一平面上に整列されているため、隣り合う軸受同士(例えば、外輪10同士)の干渉(例えば、接触)を避ける必要上、外輪10の外径がロール2の外径よりも小さく設定されている。この場合、外輪10の外径を小さくするためには、例えば内外輪8,10の肉厚を比較的薄くしなければならない。しかしながら、薄肉の内外輪8,10を成形する場合、特に熱処理工程において内外輪8,10が変形し易くなり、その結果、高い精度で環状の内外輪8,10を成形することが困難になってしまう場合がある。また、内外輪8,10を薄肉化する場合には、それに合わせて転動体12も小径化させる必要があり、そうなると転がり軸受6の負荷容量が小さくなり、その結果、軸受寿命の延命化を図ることが困難になってしまう。
【0004】
そこで、転がり軸受6全体を小型化させる方法も考えられるが、かかる方法では、内輪8の内径が小さくなり、それに合わせてロール2の回転軸4の外径を小さく設定する必要がある。この場合、ロール2の外径に対する回転軸4の外径の絞り率が大きくなるため、ロール2の製造プロセスが煩雑になり、その結果、ロール2の製造コストが上昇してしまう場合がある。また、小型化した転がり軸受6は、その負荷容量が小さくなるため、軸受寿命の延命化を図ることが困難になってしまう。
【0005】
また、他の方法としては、例えば図4(b)に示すように、転がり軸受6を異なる平面上に配置させる軸受構造が考えられる。かかる軸受構造によれば、比較的大型の転がり軸受6を使用することができるため、その負荷容量が大きくなり、軸受寿命の延命化を図ることが可能となる。しかしながら、図4(b)の構成では、各転がり軸受6周りに広いスペースを確保しなければならず、その結果、軸受構造のコンパクト化を図るには限界がある。
【0006】
また、図4(a),(b)に示された転がり軸受6を用いた軸受構造では、高温環境下での使用に際し、各転がり軸受6の放熱効果を更に高めることが要望されているが、現在、これに応えることができる転がり軸受は知られていない。
【特許文献1】特開2002−192635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、軸受寿命の延命化が可能な高い負荷容量の放熱性に優れた低コストでコンパクトな転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明は、環状に連続した回転輪と、回転輪に対向配置され、当該回転輪の一部を支持可能な支持ユニットと、回転輪に形成された回転軌道面と支持ユニットに形成された支持軌道面との間を転動可能に組み込まれた複数の転動体と、複数の転動体を1つずつ回転自在に保持する可撓性の保持器とを具備し、支持ユニットには、保持器に保持された複数の転動体を所定方向に循環させる循環経路が支持軌道面に連続して設けられており、回転輪の回転に伴って当該回転輪の回転軌道面と支持ユニットの支持軌道面との間を転動した複数の転動体は、循環経路を経由した後、再び回転軌道面と支持軌道面との間を転動する。
【0009】
この場合、支持ユニットの支持軌道面には、回転輪に作用した荷重を負荷可能な荷重負荷部が回転輪の回転軌道面に対向して設けられており、転動体が荷重負荷部と回転軌道面との間を転動した際に、当該転動体に作用した公転力が保持器を介して他の転動体に伝達されることで、保持器に保持された複数の転動体は、循環経路を経由した後、回転輪と支持ユニットとの間に案内され、再び回転軌道面と支持軌道面との間を転動する。
【0010】
また、本発明において、支持ユニットの支持軌道面のうち、少なくとも荷重負荷部は、熱処理された鋼材で形成されている。また、支持ユニットには、その循環経路に潤滑剤が封入されている。更に、支持ユニットには、循環経路に封入された潤滑剤の漏洩防止用の密封板が設けられており、当該密封板は、少なくとも、回転軌道面と支持軌道面との間を転動した複数の転動体が循環経路に導入される領域を覆うように配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸受寿命の延命化が可能な高い負荷容量の放熱性に優れた低コストでコンパクトな転がり軸受を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る転がり軸受について、図1を参照して説明する。
図1(a)には、本実施の形態の転がり軸受を用いた軸受構造の構成が示されており、かかる軸受構造において、転がり軸受14は、互いに矢印方向Fに圧接しながら回転する一対のロール16の回転軸18の両側を回転自在に軸支している。この場合、転がり軸受14は、それぞれ、環状に連続した回転輪20と、回転輪20に対向配置され、当該回転輪20の一部を支持可能な支持ユニット22と、回転輪20に形成された回転軌道面20sと支持ユニット22に形成された支持軌道面22sとの間を転動可能に組み込まれた複数の転動体24と、複数の転動体24を1つずつ回転自在に保持する可撓性の保持器26とを備えている。なお、転動体24としては、例えば高炭素クロム鋼製の玉を想定する。
【0013】
本実施の形態において、回転輪20は、ロール16の回転軸18に外嵌され、支持ユニット22は、ハウジング(図示しない)に固定されている。なお、図1(a)の構成では、回転輪20の回転軌道面20s及び支持ユニット22の支持軌道面22sを断面略円弧状としているが、これに限定されることは無く、支持軌道面22sと回転軌道面20sとの間で転動体(玉)24が蛇行或いは脱落すること無く円滑に転動可能であれば、任意の形状とすることが可能である。例えば回転軌道面20s及び支持軌道面22sの一方或いは双方を断面略矩形状或いは断面略三角形状としても良い。また、支持軌道面22sと回転軌道面20sの大きさや深さは、例えば転動体(玉)24の種類や径寸法により任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0014】
図1(b),(c)に示すように、支持ユニット22には、保持器26に保持された複数の転動体(玉)24を所定方向に循環させる循環経路28が支持軌道面22sに連続して設けられている。この場合、支持軌道面22sは、当該支持軌道面22sと回転輪20の回転軌道面20sとの間に転動体(玉)24が円滑に転動可能な隙間を確保できるような半円形状を成している。ここで、半円形状の支持軌道面22sは、例えば回転軌道面20sと同一の曲率或いはそれよりも大きな曲率で形成すれば良い。
【0015】
また、循環経路28は、支持ユニット22内に設けられた循環部28pと、回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間を転動した転動体(玉)24を循環部28p内に円滑に導入する導入部28aと、循環部28pに沿って循環した転動体(玉)24を再び回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間に円滑に案内する案内部28bとを備えて構成されている。このような循環経路28を構成する方法としては、例えば支持ユニット22内を掘り抜いて、循環部28p及び導入部28a並びに案内部28bを一体形成しても良いし、或いは別体形成しても良い。その一例として図1(b),(c)には、循環部28p及び導入部28a並びに案内部28bが別体形成された構成例が示されている。
【0016】
具体的に説明すると、支持ユニット22は、ハウジング(図示しない)に固定される支持本体22aと、支持本体22aに対して回転輪20側からボルト30で締結された軌道構成体22bとを備えている。この場合、支持本体22aには、その表面(軌道構成体22bに対向した面)を半円形状に掘り込んで循環部28pが形成されており、一方、軌道構成体22bには、その表面(回転輪20の回転軌道面20sに対向した面)に支持軌道面22sが形成されていると共に、導入部28a及び案内部28bがそれぞれ循環部28pに向けて穿孔されている。なお、支持本体22aをハウジングに固定する方法としては、例えば支持本体22aに固定穴Hを穿孔し、これに固定ボルト(図示しない)を通して支持本体22aをハウジングに締結すれば良い。
【0017】
循環部28pには、導入部28aから導入された転動体(玉)24を蛇行或いは脱落させること無く案内部28bに向けて転動させる循環軌道面28cが形成されており、一方、軌道構成体22bの裏面22pには、循環軌道面28cに対向してガイド軌道面22cが形成されている。この場合、ガイド軌道面22cは、導入部28a及び案内部28bを介して支持軌道面22sに連続している。また、導入部28a及び案内部28bには、それぞれ、ガイド軌道面22cに対向して断面略円弧状の導入軌道面28e及び案内軌道面28fが形成されている。
【0018】
なお、図1(c)の構成では、循環軌道面28c及びガイド軌道面22c、導入軌道面28e及び案内軌道面28fを断面略円弧状としているが、これに限定されることは無く、導入部28aから循環部28pを介して案内部28bに亘って転動体(玉)24が蛇行或いは脱落すること無く円滑に転動可能であれば、任意の形状とすることが可能である。例えば循環軌道面28c及びガイド軌道面22cの一方或いは双方、導入軌道面28e及び案内軌道面28fの一方或いは双方を選択的に断面略矩形状或いは断面略三角形状としても良い。また、循環軌道面28c及びガイド軌道面22c、導入軌道面28e及び案内軌道面28fの大きさや深さは、例えば転動体(玉)24の種類や径寸法により任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0019】
このような支持ユニット22によれば、支持本体22aと軌道構成体22bとをボルト30で締結することで、支持軌道面22sに連続した循環経路28(循環部28p、導入部28a、案内部28b)を構成することができる。この場合、回転輪20が矢印R方向に回転すると、その回転に伴って回転輪20の回転軌道面20sと支持ユニット22の支持軌道面22sとの間を転動した複数の転動体(玉)24は、導入部28aにおいてガイド軌道面22cと導入軌道面28eとの間を蛇行或いは脱落すること無く円滑に転動して循環部28p内に導入される。
【0020】
このとき、循環部28p内に導入された転動体(玉)24は、ガイド軌道面22cと循環軌道面28cとの間を蛇行或いは脱落すること無く円滑に転動した後、案内部28bにおいてガイド軌道面22cと案内軌道面28fとの間を蛇行或いは脱落すること無く円滑に転動して、回転輪20と支持ユニット22との間に案内され、再び回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間を転動する。
【0021】
また、複数の転動体(玉)24は、可撓性の保持器26で1つずつ回転自在に保持されているため、上述したような転動体(玉)24の循環転動に伴って保持器26も循環することになる。このため、循環経路28(循環部28p、導入部28a、案内部28b)には、保持器26が干渉(例えば、接触、摺接)すること無く循環できる程度の保持器用スペースが設けられている。なお、図1(c)には、一例として循環部28pに設けられた保持器用スペース28dが示されており、この場合、保持器用スペース28dは、循環軌道面28cの両側を拡げるように循環部28pを掘り込んで形成されている。
【0022】
この場合、保持器用スペース28dの大きさや形状は、保持器26の大きさや形状に合わせて任意に設定されるため、ここでは特に限定しないが、例えば図1(d)に示すような断面矩形状の保持器26を用いた場合には、その形状に合わせて保持器用スペース28dを矩形に構成すれば良い。この場合、保持器26には、所定間隔(例えば、等間隔)で複数のポケット26pが形成されており、各ポケット26pに1つずつ転動体(玉)24が回転自在に保持されている(図1(e))。なお、各ポケット26pには、転動体(玉)24が脱落しないような構成(例えば、開口径K(図1(d))を転動体(玉)24の直径よりも小さくした構成)が施されている。
【0023】
このような保持器26は、回転輪20の回転軌道面20sと支持ユニット22の支持軌道面22sとの間から、循環経路28(循環部28p、導入部28a、案内部28b)に亘って連続して配置されており、複数の転動体(玉)24の循環転動に伴って同様に循環するように構成されている。このため、保持器26には可撓性が要求されており、それに応えるために、本実施の形態の保持器26は、例えばゴム材料や樹脂材料で形成されている。なお、これ以外に、例えば複数の板状部材を互いに回転自在に連結して保持器26を構成することで、当該保持器26全体に可撓性を持たせるように構成しても良い。
【0024】
また、互いに矢印方向Fに圧接しながら一対のロール16が回転している間、回転軸18から回転輪20に作用した荷重は、常時、転動体(玉)24を介して支持ユニット22の支持軌道面22sに伝わる。そこで、支持ユニット22には、支持軌道面22sのうち最も荷重がかかる部分に、荷重負荷部32が回転輪20の回転軌道面20sに対向して設けられている。この場合、荷重負荷部32は、熱処理された鋼材(例えば、SUI-2材)で形成することが好ましい。なお、荷重負荷部32の形成方法としては、例えば鋼材に焼入れ、焼戻しを行って、その表面に半円形状の支持軌道面22sを形成すれば良い。そして、かかる荷重負荷部32を支持軌道面22sに埋設(例えば、インサート成形、接着)することで、荷重負荷部32を含んだ一連の支持軌道面22sを構成することができる。
【0025】
このような構成によれば、転動体(玉)24が荷重負荷部32と回転軌道面20sとの間を転動した際に、転動体(玉)24に作用した公転力が保持器26を介して他の転動体(玉)24に伝達されることで、保持器26に保持された複数の転動体(玉)24は、循環経路28を経由した後、回転輪20と支持ユニット22との間に案内され、再び回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間を転動する。この場合、回転輪20に作用した荷重が荷重負荷部32で堅牢且つ安定して負荷可能となるため、当該荷重負荷部32以外の支持ユニット22を例えば樹脂などで形成することが可能となる。これにより、転がり軸受14(支持ユニット22)の軽量化や低コスト化を図ることができる。なお、荷重負荷部32を含めて支持ユニット22全体を鋼材で形成しても良い。
【0026】
また、転がり軸受14の潤滑性(例えば、転動体(玉)24の公転性や回転性)を図るために、支持ユニット22には、循環経路28に潤滑剤(例えば、油、グリース)が封入されているが、循環経路28に封入された潤滑剤の漏洩防止用の密封板34(図1(b))を設けることが好ましい。この場合、密封板34は、少なくとも、回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間を転動した複数の転動体(玉)24が循環経路28(循環部28p)に導入される領域(導入部28a)を覆うように配置することが好ましい。ここで、密封板34の配置方法としては、例えばボルト30により密封板34の基端を支持ユニット22に固定し、その先端を回転輪20に接触させるように配置すれば良い。
【0027】
これにより、複数の転動体(玉)24の循環転動に伴って、例えば回転輪20に付着しつつ外部へ漏洩しようとする潤滑剤は、密封板34により欠き取られ、再び循環経路28に戻されることになる。この結果、長期に亘って転がり軸受14の潤滑性(例えば、転動体(玉)24の公転性や回転性)を一定に維持することが可能となる。また、このように潤滑剤の漏洩防止を図ることで、周囲環境の汚染など問題を生じることも無い。なお、密封板34の大きさや形状、厚みは、例えば導入部28aの広さや、回転軌道面20sと支持軌道面22sとの隙間寸法に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。また、循環経路28に潤滑剤を封入することで、当該潤滑剤は、転動体(玉)24の循環転動に伴って回転軌道面20sと支持軌道面22sとの間にも行き渡るため、軸受全体の潤滑性が一定に維持されることは言うまでも無い。
【0028】
以上、本実施の形態によれば、回転輪20の一部を支持ユニット22で支持可能な転がり軸受14となり、これにより従来の軸受構造に比べて軸受外径を小さくすることができる。この結果、軸受周りの省スペース化並びに軸受のコンパクト化を実現することができるため、転がり軸受14を互いに同一平面上に整列させた場合でも、軸受同士が干渉することは無い。また、支持ユニット22を固定穴Hに通した固定ボルトで固定するようにしたことで、転がり軸受14の設置が容易となる。この場合、従来の外輪設置止め輪が不要となるため、軸受外径方向の省スペース化及び軸受のコンパクト化に更に有利となる。
【0029】
この場合、転がり軸受14の構成について、例えば回転輪20の肉厚を薄くしたり、転動体(玉)24の直径を小さくしたりするといった軸受全体を小型化する必要は無い。これにより当該転がり軸受14の負荷容量を一定に維持することが可能となり、その結果、軸受寿命の延命化を図ることができる。また、ロール16の外径に対する回転軸18の外径の絞り率も小さくできるため、ロール16の製造コストを低減することができる。更に、各ロール16の圧力作用を受けることで、転がり軸受14には、常に回転輪20から支持ユニット22に荷重がかかる構造となるため、軸受が外れたりガタ付いたりすることは無い。
【0030】
また、本実施の形態によれば、回転輪20の一部を支持ユニット22で支持する軸受構造としたことで、回転軸18周りに開放空間を確保することが可能となる。この場合、回転輪20から支持ユニット22に伝達される熱量が少ないため、軸受温度の上昇を抑えることができる。加えて、従来の軸受に比べて、高温環境下での使用に際し放熱効果を更に高めることができる。これにより軸受寿命の延命化を更に図ることができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることは無く、以下のように変形することが可能である。
第1の変形例として図2に示すように、密封板34に加えて更に、案内部28bを覆うように異物浸入防止用の密封板36を配置しても良い。ここで、密封板36の配置方法としては、例えばボルト30により密封板36の基端を支持ユニット22に固定し、その先端を回転輪20に接触させるように配置すれば良い。これにより、複数の転動体(玉)24の循環転動に伴って、例えば回転輪20に付着しつつ軸受内部へ侵入しようとする異物(例えば、水、塵埃など)は、密封板36により欠き取られ、軸受外部に放出されることになる。この結果、長期に亘って転がり軸受14の潤滑性を一定に維持することが可能となる。
【0032】
また、上述した実施の形態では、回転輪20の外側に支持ユニット22を配置した軸受構造を例示したが、これに代えて、第2の変形例として図3に示すように、回転輪20の内側に支持ユニット22を配置した軸受構造としても良い。この場合、回転輪20の内側に回転軌道面20sが形成され、これに合わせて支持ユニット22の各構成の配置が設定される。なお、支持ユニット22の各構成については、上述した実施の形態と同様であるため、図面上に同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0033】
また、上述した実施の形態において、転動体24として玉を想定したが、ころであっても良い。また、潤滑剤としては、導電性グリースを適用すると共に、回転輪20と支持ユニット22との間に導電性を付加しても良い。更に、回転輪20に防錆メッキ(例えば、無電解ニッケルメッキ)を施しても良い。また、密封板34,36に導電材を適用し、回転輪20と接触させることで導電性能を付加しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る転がり軸受を用いた軸受構造の構成例を示す断面図、(b)は、同図(a)のX−X線に沿う断面図、(c)は、同図(b)のY−Y線に沿う断面図、(d)は、保持器の一部を拡大して示す平面図、(e)は、同図(d)のW−W線に沿う断面図。
【図2】本発明の第1の変形例に係る転がり軸受を用いた軸受構造の構成例を示す断面図。
【図3】本発明の第2の変形例に係る転がり軸受を用いた軸受構造の構成例を示す断面図。
【図4】(a)は、従来の軸受構造の構成例を示す図、(b)は、従来の軸受構造の他の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0035】
20 回転輪
20s 回転軌道面
22 支持ユニット
22s 支持軌道面
24 転動体
26 保持器
28 循環経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に連続した回転輪と、
回転輪に対向配置され、当該回転輪の一部を支持可能な支持ユニットと、
回転輪に形成された回転軌道面と支持ユニットに形成された支持軌道面との間を転動可能に組み込まれた複数の転動体と、
複数の転動体を1つずつ回転自在に保持する可撓性の保持器とを具備し、
支持ユニットには、保持器に保持された複数の転動体を所定方向に循環させる循環経路が支持軌道面に連続して設けられており、
回転輪の回転に伴って当該回転輪の回転軌道面と支持ユニットの支持軌道面との間を転動した複数の転動体は、循環経路を経由した後、再び回転軌道面と支持軌道面との間を転動することを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
支持ユニットの支持軌道面には、回転輪に作用した荷重を負荷可能な荷重負荷部が回転輪の回転軌道面に対向して設けられており、転動体が荷重負荷部と回転軌道面との間を転動した際に、当該転動体に作用した公転力が保持器を介して他の転動体に伝達されることで、保持器に保持された複数の転動体は、循環経路を経由した後、回転輪と支持ユニットとの間に案内され、再び回転軌道面と支持軌道面との間を転動することを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
支持ユニットの支持軌道面のうち、少なくとも荷重負荷部は、熱処理された鋼材で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
支持ユニットには、その循環経路に潤滑剤が封入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受。
【請求項5】
支持ユニットには、循環経路に封入された潤滑剤の漏洩防止用の密封板が設けられており、当該密封板は、少なくとも、回転軌道面と支持軌道面との間を転動した複数の転動体が循環経路に導入される領域を覆うように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−113638(P2007−113638A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304323(P2005−304323)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】