説明

透明導電性基板、色素増感型太陽電池用透明導電性基板及び透明導電性基板の製造方法

【課題】低抵抗で透明性に優れる共に平坦性に優れる透明導電性基板及び該透明導電性基板を安価に製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】金属微粒子分散溶液を基材2上に塗布し乾燥させ、網目状の第一導電性層3を基材2上に形成させた後、第一導電性層3を透明性の高い接着層7で完全に覆い、前記基材2と被転写基板8とを貼り合せた後、基材2を剥離する。これにより第一導電性層3と接着層7とが一体的に被転写基板8に熱転写させる。その後、熱転写された第一導電性層3の表面15をエッチングし、エッチングで形成された孔部21にめっきを施す。これにより低抵抗で透明性に優れる共に平坦性に優れる透明導電性基板1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低抵抗で透明性に優れる透明導電性基板及びその製造方法に関し、特に耐溶剤性、電解質溶液に対する耐食性に優れる色素増感型太陽電池用透明導電性基板として好適に使用可能な透明導電性基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を用いたエネルギー創出法である太陽電池においては、化石燃料の高騰や枯渇、アジア諸国の経済成長に伴う消費電力の増加、化石燃料による炭酸ガス増加などの環境問題などを背景に注目され、研究開発が活発になされている。
【0003】
中でも結晶性シリコン又はアモルファスシリコンを用いた太陽電池が主流である。しかしながら結晶性シリコンなどを製造するためには多大なエネルギーが必要であり、省エネルギーを目指すに当たり、シリコンを利用することは太陽電池の本来の意図とは相反するものとなってしまう。また、シリコンは集積回路の基本となる材料でもあるため、シリコン需要の増加によるシリコンの不足及びシリコンの高価格化が生じている。
【0004】
このような理由から、シリコン太陽電池に比べて低エネルギーで作製でき、低コスト化が可能である色素増感型太陽電池が注目されている。
【0005】
代表的な色素増感型太陽電池は、ガラス基板上の片面に透明酸化物の電極(ITO:酸化錫と酸化インジウムの複合酸化物)が製膜され、その上に色素を含有した多孔質酸化チタンが形成され、電解質としてヨウ素及びヨウ素化合物を含んだ電解質溶液が用いられ、その上に対電極(白金電極又は白金−炭素電極)が配置された構造を有している。
【0006】
一般的に基板にはガラス基板が用いられているが、透明樹脂基板を用いることで、軽量でかつ柔軟性に富んだ色素増感型太陽電池を作製することができ、太陽電池の設置場所を拡大させることが可能となる。
【0007】
電解質にヨウ素及びヨウ素化合物を用いるのは、発電時のレドックス反応の担い手として、I/Iが利用されるためである。前記ヨウ素系は電解質として効率がよいため一般的に良く用いられるが、電極に透明酸化物の代わりに、より低抵抗な金属材料を用いると金属電極が腐食してしまうという問題がある。そのため、腐食してしまう金属材料を保護するために、耐食性のある金属でめっきする方法や導電性樹脂などで保護する方法が検討されている(例えば特許文献1参照)。この他、色素増感型太陽電池用導電性基板に限定されるものではないが、網目状の導電性部上にめっきを施し透明導電性基板を製造する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−66212号公報
【特許文献2】特開2007−227906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術は、網目状の第一導電性部を覆うように導電性樹脂が形成された構成であり、該構成では過剰な導電性樹脂により全光線透過率が低下してしまうとともに、導電性にほとんど寄与しない導電性樹脂が必要になるため低コストな基板を得る手法とは言い難い。
【0010】
特許文献2では、金属微粒子で構成される網目状の導電性部上にめっきを施す方法が開示されている。前記特許文献2では特に色素増感型太陽電池用導電性基板については言及されていないけれども、電解質に対して耐食性のあるめっき処理を行うことも可能である。図2は、前記特許文献2に記載の方法により得られる透明導電性基板を模式的に示す図である。前記特許文献2に記載されている好ましい網目状の導電性部26の形成方法では、図2(a)に示すように導電性部26は基板25に対して凸状に形成されているため、色素増感型太陽電池の発電層に相当する酸化チタンなどの半導体層を積層する際に平坦性の点で問題が残る。さらに導電性部26にめっき27処理を施すことで(図2(b))、平坦性の悪化とともに、めっき処理により導電性部26の幅が広がり、透過率の低下が懸念される。
【0011】
また、前記特許文献2において、その他の網目状の導電性部形成方法として記載されている手法である基板に網目状の溝を掘り、そこに金属微粒子を埋め込む手法では、フォトリソグラフィー法やレーザーエッチング法などを用いる必要があり、低コストで大面積の色素増感型太陽電池用導電性基板を得る手法としては課題が残る。
【0012】
さらに前記特許文献1又は特許文献2に記載の技術を用いて、高い導電性を得るためには金属微粒子分散溶液にせよ導電性ペーストにせよ、塗布又は印刷後に十分な加熱処理や化学処理が必要である。そのため耐熱性や耐薬品性に優れた基板しか用いることができないと言う問題が残っている。
【0013】
本発明の目的は、低抵抗で透明性に優れる共に平坦性に優れる透明導電性基板及び該透明導電性基板を安価に製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の本発明は、透明導電性基板の製造方法において、下記の1から5の製造工程にて製造することを特徴とする透明導電性基板の製造方法である。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程
2、前記第一導電性層を完全に覆う透明性の接着層を積層する接着層積層工程
3、前記接着層面と被転写基板とを貼り合せ、加熱加圧した後、基材を剥離し、第一導電性層と接着層が一体となった転写層を被転写基板に熱転写させる熱転写工程
4、熱転写された第一導電性層の表面をエッチングするエッチング工程
5、エッチングで形成された孔部にめっきを施し第二導電性層を積層する第二導電性層形成工程
【0015】
請求項2に記載の本発明は、透明導電性基板の製造方法において、下記の1から5の製造工程にて製造することを特徴とする透明導電性基板の製造方法である。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程
2、被転写基板に透明性の接着層を積層する接着層積層工程
3、前記第一導電性層面と被転写基板とを貼り合せ、加熱加圧した後、基材を剥離し、第一導電性層と接着層が一体となった転写層を被転写基板に熱転写させる熱転写工程
4、熱転写された第一導電性層の表面をエッチングするエッチング工程
5、エッチングで形成された孔部にめっきを施し第二導電性層を積層する第二導電性層形成工程
【0016】
請求項3に記載の本発明は、前記第一導電性層形成工程が、金属微粒子ペーストを基材上に印刷し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程であることを特徴とする請求項1又2に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0017】
請求項4に記載の本発明は、前記第一導電性層形成工程が、金属微粒子の前駆体である金属塩の溶液を、基材に塗布し乾燥させた後、金属微粒子の前駆体を加熱又は紫外線照射又は還元性ガスにより還元析出させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程であることを特徴とする請求項1又2に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0018】
請求項5に記載の本発明は、前記第一導電性層形成工程と、前記接着層積層工程との間に、前記第一導電性層に加熱処理及び/又は化学処理を行う工程を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0019】
請求項6に記載の本発明は、前記基材に前記金属微粒子分散溶液、前記金属微粒子ペースト又は前記金属塩の溶液を塗布するに先立ち、前記基材に表面処理を施すことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0020】
請求項7に記載の本発明は、前記接着層の厚みは、前記第一導電性層の高さよりも高く、前記被転写基板に前記第一導電性層は接触しないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0021】
請求項8に記載の本発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法により得られる透明導電性基板の表面に、さらに第三導電性層を積層する第三導電性層形成工程を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法である。
【0022】
請求項9に記載の本発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法により得られる透明導電性基板である。
【0023】
請求項10に記載の本発明は、前記第一導電性層と前記接着層の最大段差が300nm以下であり、表面の表面抵抗値が5Ω/□以下であることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性基板である。
【0024】
請求項11に記載の本発明は、前記接着層がアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の接着剤を含有することを特徴とする請求項9又は10に記載の透明導電性基板である。
【0025】
請求項12に記載の本発明は、請求項9から11のいずれか1項に記載の透明導電性基板であって、前記第二導電性層及び前記第三導電性層が電解質溶液に対して耐性を有することを特徴とする色素増感型太陽電池用透明導電性基板である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る透明導電性基板の製造方法によれば、金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子の前駆体である金属塩の溶液を塗布又は印刷することにより第一導電性層を形成するので低コストで、大面積な網目状の第一導電性層を形成することが出来る。さらに、耐熱性のある基材を用いることで金属微粒子の焼結に十分な加熱処理が行え、低抵抗な第一導電性層が得られる。続いて、高透明性の接着層を介在させ、第一導電性層を所望の被転写基板上に熱転写することにより、第一導電性層と接着層が一体となった転写層の表面が平坦となる。さらに、転写層の表面を酸又はアルカリなどの化学処理によりエッチングし、導電性部上のみに孔を形成し、続いて金属又は金属合金のめっきを平坦性に注意しながら孔部に施すことで、平坦性に優れ、さらにはめっきによる導電性部幅の拡大を防ぐことが出来るので、低抵抗で透明性に優れる透明導電性基板を得ることができる。
【0027】
また前記接着層の厚みを前記第一導電性層の高さよりも高くすることで、基板全面に接着層を接触させることができ接着力が向上する。
【0028】
また本発明に係る透明導電性基板の製造方法によれば、高透過率と低抵抗を同時に満足させると共に、透明導電性基板の表面の平坦性も高いので、電解質に対して耐食性のある金属又は金属合金をめっき材料とすれば色素増感型太陽電池用透明導電性基板として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の一形態としての透明導電性基板1の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】従来の透明導電性基板の製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る透明導電性基板の製造方法は、大略的には、金属微粒子分散溶液又は金属微粒子ペーストを基材上に塗布又は印刷、乾燥させ網目状の第一導電性層を形成し、その後、必要に応じて熱処理及び/又は化学処理を施した後、該網目状の第一導電性層を別の基板(被転写基板)上に、高透明性の接着層を介して熱転写し、熱転写後の第一導電性層の表面を酸処理などの化学処理によりエッチングし、次にめっき処理によりエッチングにより形成された孔部の第一導電性層上に第二導電性層を形成させ、透明導電性基板を製造する方法である。さらに、必要に応じて表面を導電性樹脂で被覆する。
【0031】
図1は、本発明の実施の一形態としての透明導電性基板1の製造方法を模式的に示す図である。以下、色素増感型太陽電池用の透明導電性基板1を例として製造方法を説明する。
【0032】
まず、基材2上に金属微粒子の分散溶液を塗布、乾燥し、網目状構造物からなる第一導電性層3を基材2上に形成させる。さらに必要に応じて第一導電性層3に対して加熱処理及び/又は化学的処理を施す。これにより網目状構造物からなる第一導電性層3が積層された基材2を得ることができる。図1(a)は、第一導電性層3が積層された基材2を示す。
【0033】
ここで使用可能な金属微粒子分散溶液は、基材2上へ塗布、乾燥後に、金属微粒子が自己組織化現象により網目状構造物を形成し、必要に応じて該積層基材を加熱処理及び化学処理又はいずれかの処理を行うことで網目状構造物が低抵抗、高透過率を示すものであればいずれの金属微粒子分散溶液を用いても良い。また金属微粒子分散溶液に代え、金属微粒子ペーストを用いて基材上2に印刷し、網目状構造物を形成させても良い。さらに金属微粒子分散溶液に代え、網目状構造物を形成可能な金属微粒子の前駆体である金属塩の溶液(以下、金属微粒子前駆体溶液と記す場合もある)を使用することもできる。金属微粒子前駆体溶液の場合、耐熱性及び/又は耐薬品性を有する基材2に塗布し乾燥させた後、金属微粒子の前駆体を加熱又は紫外線照射又は還元性ガスにより還元析出させることで網目状構造物を得ることができる。
【0034】
金属微粒子分散容液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液に含まれる金属微粒子は、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruなどの金属微粒子又は金属合金微粒子又は金属酸化物微粒子又は金属硫化物微粒子、又は炭素を含む炭素微粒子又はカーボンナノチューブやフラーレン、カーボンナノホーンなどの所謂ナノカーボン材料、又は珪素を含む珪素微粒子又は珪素と他金属との珪素合金微粒子、珪素酸化物微粒子又は珪素炭化物微粒子、珪素窒化物微粒子を用いることができる。耐酸化性と低コストの導電性基板を得ることを考慮するとAu、Agの金属微粒子分散液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液が好ましい。
【0035】
金属微粒子の調製法としては、従来から用いられている気相法(ガス中蒸発法など)、液相法(金属塩と還元剤による液相還元法)、熱分解法(金属錯体の熱分解法など)などの手法を用いることが出来る。
【0036】
金属微粒子の平均粒子径は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm〜500nm、さらに好ましくは50nm〜200nmである。平均粒子径が1μmを超える場合、又は10nm未満の場合には、良く発達した網目状構造が得にくくなり、結果、低抵抗と高透過率が得にくい。
【0037】
上記のような金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液は、例えば、特許文献3〜5を参考に調製した金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液を用いることが出来る。
【特許文献3】特開2007−234299号公報
【特許文献4】特表2005−530005号公報
【特許文献5】特開平10−312715号公報
【0038】
基材2は、金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液を塗布又は印刷し、網目状構造物を安定に形成させるものであり、金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液に含まれる有機溶剤に対して腐食又は溶解せず、続く加熱処理又は化学処理により網目状構造物の電気的特性(抵抗値)や光学的特性(透過率)が劣化しないものであれば特に限定されない。なお、基材2上に金属微粒子前駆体溶液を塗布し乾燥させた後、金属微粒子の前駆体を加熱又は紫外線照射又は還元性ガスにより還元析出させる場合には、これら操作に耐性を有するものである必要があることは言うまでもない。
【0039】
また基材2は、表面6の平滑度が重要である。基材2上に形成された網目状構造物からなる第一導電性層3は、接着層7を介して被転写基板8上に熱転写されるため、基材2上の第一導電性層の底面9は、被転写基板8上では表面15となる。このため基材の表面6の平滑度が低いと、最終的に得られる透明導電性基板1の表面11の平滑度が低くなる。
【0040】
また、金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液を塗布又は印刷する基材2の表面は、予め金属微粒子、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体が網目状構造を再現性良く形成するため、プライマー処理又はコロナ処理、酸・アルカリ処理による洗浄などを行う方が好ましい。上記手法は特に限定されないが、各金属微粒子分散溶液、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体溶液に適した処理を行うことが好ましい。
【0041】
また基材2上の第一導電性層3を被転写基板8に破壊されずスムーズに転写されるように、基材2上に予め弱い離型層(図示省略)を設けることが好ましい。離型層はシリコーン系高分子やフッ素系高分子など塗工液として、乾燥厚みが0.01〜1.0μmで塗布することで形成する。上記離型層は金属微粒子、金属微粒子ペースト又は金属微粒子前駆体の網目状構造を再現性良く形成させる程度に処理する。
【0042】
基材2は、工業的にはより安価な樹脂フィルムを用いることが好ましい。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂フィルムを用いることが出来る。また熱転写時の操作性等を考慮すれば基材2は、柔軟性を有することが好ましい。基材2は繰り返し使用することもできる。基材2の厚みは、6〜200μmが好ましい。さらに、好ましくは、12〜150μmの厚みのものを使用する。特に好ましくは、25〜125μmの厚みのものを使用する。
【0043】
金属微粒子分散溶液又は金属微粒子前駆体溶液の基材2上への塗布方法は、例えばバーコーター、ディップコーター、スプレーコーター、ダイコーター、スピンコーターなど公知のコーティング方法を用いることが出来る。
【0044】
金属微粒子ペーストの基材2上への印刷方法は、公知のスクリーン印刷法を用いることができる。
【0045】
塗布した後は、静置乾燥又は一定流量で空気などのガスを通風しながら乾燥させる方法、さらに加熱を組み合わせる方法などを用いることができる。
【0046】
金属微粒子分散溶液を塗布、乾燥させた後、又は金属微粒子ペーストを印刷、乾燥させた後、又は金属微粒子前駆体溶液の場合、金属微粒子の前駆体を加熱又は紫外線照射又は還元性ガスにより還元析出させた網目状構造物を加熱処理及び/又は化学的処理することが好ましい。化学的処理は、金属微粒子中に含まれる分散剤や樹脂などを取り除き、網目状構造物の抵抗値をより低くすることを主目的とするものであり、有機溶剤及び無機酸又は有機酸に浸漬することが好ましい。有機溶剤してはアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が例示される。好ましくはアセトンなどのケトン類である。無機酸又は有機酸としては塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸が例示され、好ましくは塩酸又は蟻酸である。浸漬後は純水又はエタノールなどでリンスした後、静置乾燥又は加熱乾燥などにより乾燥させることが好ましい。
【0047】
さらに、金属微粒子同士の焼結を促進し、抵抗値をより低くすることを目的に加熱処理を施すことがより好ましい。加熱処理温度は用いる基材2によって異なるが、十分な導電性を得るためには100〜300℃の範囲が好ましい。より好ましくは100〜200℃である。
【0048】
金属微粒子前駆体を還元する場合には、加熱又は紫外線や放射線などの光照射又は還元性ガスの手法を組み合わせて行うことも出来る。
【0049】
上記網目状構造物からなる第一導電性層3の全光線透過率は70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0050】
次に、基材2上に形成した網目状構造物からなる第一導電性層3を所望の被転写基板8に熱転写させるため、図1(b)に示すように第一導電性層3が積層された基材2の一面全体を透明性の高い接着剤で覆い接着層7を形成する。このとき第一導電性層3の全ての開口部12に接着剤を充填し、開口部12を接着剤で埋設することが重要である。第一導電性層3は、次の工程で、接着層7と一体的に熱転写されるため基材2上で底面9となっている第一導電性層の面が、熱転写後は表面となる(図1(c)、(d))。このため第一導電性層3の開口部12が接着剤で完全に埋設されていないと、熱転写後の転写層10(第一導電性層と接着層)の表面14は、局所的に穴の開いた状態となる。次工程以降において、熱転写後の第一導電性層3の表面15はエッチングされ、エッチング箇所にめっき処理が施され第二導電性層5が形成されるけれども、穴あき部はめっきが施されずそのまま状態で残るため、最終的に透明導電性基板1の表面11は、平坦とならず好ましくない。さらに第二導電性層5の表面17を覆うように導電性樹脂を含む樹脂を塗布し、第二導電性層5と接続する第三導電性層18を形成する場合にあっても、転写層10の上面14に局所的に穴が開いていると、第三導電性層18の表面19は平坦とならず、さらには第三導電性層18を形成する樹脂が穴に入り込み、透過率を低下させるので好ましくない。
【0051】
また接着層7の厚みは、第一導電性層3の高さを僅かに超える高さとする。本発明では、第一導電性層3の高さとは、第一導電性層3の中の最大高さを指すものである。接着層7は、次工程で被転写基板8に第一導電性層3と一体的に熱転写される。このため、基材2上で表面となっている接着層7の表面13は、熱転写後は、被転写基板8と接触する面となる。このため基材2上の第一導電性層3が接着層7に完全に覆われていなければ、熱転写後、十分な接着強度を得ることができない。接着層7の高さを第一導電性層3の高さと同一とすると、熱転写後、被転写基板8との接着面に局所的に接着剤が存在しない部分が生じるので好ましくない。一方、接着層7の厚さを必要以上に高くすると、透過率が低下するため好ましくない。
【0052】
接着層7は、基材2側に設ける代わりに被転写基板8の一面に設けておいてもよい。
【0053】
接着層7を形成する接着剤は、高透明性である他、次の点を注意して選定する必要がある。第一導電性層3が被転写基板8に熱転写された後、第一導電性層3の表面15は、次工程で酸液などを用いたエッチングが行われる。さらにエッチング工程の後には、エッチングで形成された孔部21をめっき被膜で塞ぐめっき操作が行われる。これら操作で接着層7は薬剤に接触し、エッチング操作及びめっき操作の環境下に置かれるため、エッチング工程及びめっき工程で使用される薬剤、環境に耐性を有する材料を選定する必要がある。
【0054】
接着層7に使用される接着剤としては各種接着剤が使用可能である。接着剤材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピロリドン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリプロピレン、ポリイミド、ウレア、セルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの共重合体からなる群の少なくとも1つ、及び又はこれらいずれか混合物などが例示される。また、最終的に得られる透明導電性基板の電解質溶液に対する高い耐性を得ることを目的としてイソシアネート系、メラミン系、エポキシ系等従来公知の硬化剤を添加することも可能である。
【0055】
また、接着層7には添加剤として紫外線吸収剤、着色顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤等も適宜、必要に応じて使用することができる。
【0056】
接着層7の形成方法としては、上記の接着剤材料を有機溶剤又は水に溶解あるいは水に分散し粘度を調整したコーティング剤を作製し、グラビヤコーティング、スピンコーティングなど従来公知のコーティング法により塗布乾燥する方法を用いることができる。接着層7の厚みは好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜30μmである。接着層7の厚みが0.5μm未満では第一導電性層3の開口部12が接着剤で完全に埋設されず、熱転写後の転写層10の表面14は、局所的に穴の開いた状態となる。次工程以降において、熱転写後の第一導電性層3の表面15はエッチングされ、エッチング箇所にめっき処理が施され第二導電性層5が形成されるけれども、穴あき部はめっきが施されずそのまま状態で残るため、最終的に透明導電性基板1の表面11は、平坦とならず好ましくない。さらに第二導電性層5の表面17を覆うように導電性樹脂を含む樹脂を塗布し、第二導電性層5と接続する第三導電性層18を形成する場合にあっても、転写層10の上面14に局所的に穴が開いていると、第三導電性層18の表面19は平坦とならず、さらには第三導電性層18を形成する樹脂が穴に入り込み、透過率を低下させるので好ましくない。また、接着層7の厚みが50μmよりも厚いと透明導電性基板20の透過率が低下するため好ましくない。
【0057】
次に図1(c)に示すように、基材2と被転写基板8とを貼り合せた後、加熱処理、加圧処理などを行い、基材2を剥離し、第一導電性層3を接着層7を介して被転写基板8に熱転写させる。熱転写方法は、公知の熱転写方法が使用可能であり、使用する基材2と被転写基板8の材質、接着層に応じて、適宜選択すればよい。例えば、ホットラミネーターで熱転写する方法、ホットプレス機で熱転写する方法、サーマルヘッドで熱転写する方法などを用いることができる。
【0058】
上記のようにして得られた被転写基板8上の転写層10の表面は、基材2と被転写基板8とを貼り合せた後、基材2が剥離されるので、非常に平坦であり(図1(d))、熱転写後の第一導電性層3と接着層7の段差は300nm以下とすることで、転写層10の表面の表面抵抗値が5Ω/□以下となるようにする。上述の製造方法により調製した第一導電性層3の表面抵抗値に対して、熱転写後の表面抵抗値の上昇率が10%以下になるように熱転写を行うことが好ましい。熱転写後の表面抵抗値の上昇率が10%以上になる場合は、接着層7が第一導電性層3と第二導電性層5との間に挿入され、第二導電性層5を含めた透明導電性基板1の表面抵抗値を上昇させてしまうため好ましくない。
【0059】
基材2の代わりに被転写基板8上に接着層7を設け、第一導電性層3を被転写基板8に熱転写させる場合も、基材2の第一導電性層面と被転写基板8とを貼り合せ、第一導電性層3の底面9を残した状態で第一導電性層3を接着層7に埋没させ、熱転写後、基材2を剥離することで、基材2に接着層7を設けた場合と同一の状態を得ることができる。
【0060】
被転写基板8は、各用途によって広範に選択することが出来る。但し、次の点を注意して選定する必要がある。熱転写後の第一導電性層3の表面15は、次工程で酸液を用いたエッチングが行われる。さらにエッチング工程の後には、エッチングで形成された孔部21をめっき被膜で塞ぐめっき操作が行われる。これら操作で被転写基板8は薬剤に接触し、エッチング操作及びめっき操作の環境下に置かれるため、エッチング工程及びめっき工程で使用される薬剤、環境に耐性を有する材料を選定する必要がある。被転写基板8としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイドの他、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、Si基材、多孔質セラミックスなどが例示される。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂フィルムを用いることが、ロールツーロールで安価に製造ができることから好ましい。
【0061】
次に図1(e)に示すように、熱転写後の第一導電性層3の表面15をエッチングする。エッチング方法は、薬液を使用するウエットエッチングで行うことができる。
【0062】
エッチングに用いるエッチング溶液は、第一導電性層3を形成している金属微粒子の種類により、種類及び濃度を適宜選択すればよい。Agの場合であれば、硝酸、リン酸と硝酸の混合用液、硝酸第二鉄、硝酸第二鉄と亜塩素酸ナトリウム混合溶液、硫酸と硫酸第二鉄の混合溶液、硫酸第二鉄などがあげられる。その他の金属では、CuやNiであれば塩化第二鉄を主成分とするエッチング溶液を用いるのが好ましい。また、各種界面活性剤などを含んだエッチング溶液であっても良い。あるいは市販されているものを用いても良い。エッチングのし易さ及びコストを考慮すると、Agと硝酸第二鉄−硝酸混合用液又はCuと塩酸又は塩酸−塩化第二鉄混合用液の組み合わせが好ましい。金属微粒子がAlあるいはSnなどの両性元素の場合には、アルカリ液として水酸化ナトリウム水溶液あるいは水酸化カリウム水溶液などを用いることが出来る。酸あるいはアルカリ液を用いてエッチングする場合には、接着層7が変性・変形しない条件で行なうことが好ましい。
【0063】
エッチングは、上記網目状の第一導電性層3が積層された被転写基板8を前記エッチング溶液中に浸漬するか、又は前記エッチング溶液を転写層10の表面14に吹き付けた後、所定の時間静置、続いて純水などで洗浄を行う。エッチングの程度(深さ)は、色素増感型太陽電池導電性基板の電解質に対する耐性、導電性を考慮して適宜最適化することが出来る。
【0064】
次に図1(f)に示すように、先のエッチング工程でエッチングされて形成された第一導電性層3の孔部21を塞ぐようにめっきを施す。このめっき操作により第一導電性層3と電気的に接続する第二導電性層5を形成する。めっき処理の金属としては、電解質に対して耐食性のある金属を用い、Ni、Zn、Au、Pt、Cr、Al、Cd、W、Sn、Co、Feなどの金属および前記金属を1種類以上含む合金が好ましい。
【0065】
めっきの手法は無電解めっき又は電解めっきを用いることが出来る。無電解めっきを行う場合には触媒としてPd又はPd−Snなどの触媒を用いることが出来る。めっき処理条件は、前記の第一導電性層3の孔部21のみが埋まるように最適化した条件で行うのが好ましく、第二導電性層の表面17と接着層の表面16に段差が生じないようにすることが好ましい。第二導電性層5の厚さは0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである。第二導電性層5の厚さが、0.1μm未満であると、十分な耐食性を得ることが出来ない。10μmを超えると平坦性が悪化する。
【0066】
以上の製造方法で得られる色素増感型太陽電池用の透明導電性基板1は、第二導電性層5が電解質溶液に対して耐性を有し、低抵抗で透明性に優れるので色素増感型太陽電池用の透明導電性基板として好適に使用することができる。さらに透明導電性基板1の表面11の平坦性にも優れるのでこの点も色素増感型太陽電池用の透明導電性基板として好都合である。
【0067】
さらに図1(g)に示すように、前記透明導電性基板上1にさらなる耐食性と電極の局在化防止のために、透明導電性基板上1の表面11に導電性樹脂を含む樹脂を塗布し第三導電性層18を形成させてもよい(図1(g))。
【0068】
第三導電性層18としては従来公知の導電性ポリマーを主成分とする塗液を塗布乾燥して形成することが望ましい。導電性ポリマーの種類に特に制限はないが、好ましい導電性ポリマーとしてポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびその誘導体、並びにそれらの混合物を挙げることが出来る。中でもポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が透明導電性に優れており特に好ましい。導電性ポリマーの塗液に含有される溶媒又は分散媒は導電性ポリマーを溶解または分散できるものであれば特に制限はなく、水、水系溶剤、有機溶剤のいずれもが使用可能である。
【0069】
導電性ポリマーの塗布乾燥方法としては、上記の接着剤材料を有機溶剤又は水に溶解あるいは水に分散し粘度を調整したコーティング剤を作製し、グラビヤコーティング、スピンコーティングなど従来公知のコーティング法により塗布乾燥する方法を用いることができる。
【0070】
水系溶剤の場合は、水と、水に混和可能な有機溶剤との混合溶剤が使用可能である。水に混和可能な有機溶剤は特に制限はないが、例えば、次の溶剤が挙げられる:メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリルおよびそれらの混和物。
【0071】
溶媒又は分散媒が有機溶剤系の場合は、上記水と混和する溶剤として挙げた溶剤及び水と混和しない溶剤が挙げられ、後者としては、トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタンなどが使用できる。なお、通常、導電性ポリマーや必要に応じて含有される添加剤が上記溶剤に完全に溶解している場合は、該溶剤は「溶媒」、何れかの成分が溶解せずに分散している場合は「分散媒」と記載される。
【0072】
本発明の第三導電性層18が導電性ポリマーの場合、導電性を向上させる目的で導電性向上剤を含有させることができる。このような導電性向上剤としては、水に混和する有機溶剤が利用される。それには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノンなどがある。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤は、溶媒又は分散媒を兼ねて用いられてもよい。導電性向上剤が含有される場合には、その量は特に限定されないが、通常、組成物中に95質量%以下の割合で含有される。
【0073】
導電性ポリマー塗液は、塗膜の耐傷性や表面硬度が高くなり、電解質溶液に対する耐性が向上することから、バインダーを含むことが好ましい。
バインダーとしては、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらバインダーは、有機溶剤に溶解されていてもよいし、スルホン酸基やカルボン酸基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
【0074】
バインダーの含有量は、導電性ポリマーに対して0.1〜1000倍量であることが好ましく、1〜100倍量であることがより好ましい。バインダーの含有量が前記下限値未満であると、得られる導電性塗膜の膜強度が低くなる傾向にあり、前記上限値を超えると、導電性ポリマー濃度の低下に起因する導電性の低下が起こることがある。
【0075】
第三導電性層18の厚みは好ましくは、0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜3.5μmである。0.1μm未満であると、耐ヨウ素性が低下する。10μmを超えると透明性が劣化する。
【0076】
以上の製造方法で得られる透明導電性基板22は、第三導電性層18が電解質溶液に対して耐性を有し、低抵抗で透明性に優れるので色素増感型太陽電池用の透明導電性基板として好適に使用することができる。
【実施例】
【0077】
作成した透明導電性基板の電気抵抗の測定は、JIS−K−7194に準拠した形で、ロレスタ−GP(株式会社ダイアインスツルメンツ製、型番:MCP−T610)において直列4探針プローブ(ASP)を用いて4端子4探針法で実施した。
【0078】
光学的透過率は全光線透過率として評価した。前記透明導電性基板をヘイズメーター(型番:NDH−2000、日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS K−7105に準拠して測定した。
【0079】
評価に利用したヨウ素電解質溶液は市販されている色素増感型太陽電池製作キットの内容物を用いた(西野田電工株式会社製)。作製した透明導電性基板の上に前記ヨウ素電解質溶液を塗布し、そのまま、室温下24時間暗所で静置した。前記ヨウ素電解質溶液を純水及びエタノールで洗浄した後、乾燥し、表面抵抗値を透明導電性基板作製後と耐ヨウ素性試験後で比較した。
【0080】
実施例1
<銀微粒子1の調製法>
金属微粒子の例として銀微粒子の液相還元調製法を説明するが、金属微粒子の種類や製造法を限定するものではない。
硝酸銀40g、ブチルアミン37.9g、メタノール200mLを加え、1時間攪拌しA液を調製した。別にイソアスコルビン酸62.2gを取り、水400mLを加え攪拌して溶解し、続いてメタノール200mLを加えB液を調製した。B液をよく攪拌しA液をB液に1時間20分かけて滴下した。滴下終了後、3時間30分攪拌を継続した。
攪拌終了後、30分間静置し固形物を沈降させた。上澄みをデカンテーションにより取り除いた後、新たに水500mLを加え、攪拌、静置、デカンテーションにより上澄み液を取り除いた。この精製操作を3回繰り返した。沈降した固形物を40℃の乾燥機中で乾燥し、水分を除去した。さらに、得られた銀微粒子20gとDISPERBYK−106(ビックケミージャパン社製)0.2gをメタノール100mLと純水5mLとの混合溶液中に混合し、1時間混合した後に、純水100mLを加えて、スラリーをろ過した後、40℃の乾燥機中で乾燥させて、銀微粒子1を得た。銀微粒子は電子顕微鏡による観察から一次粒子の平均粒子径が60nmであった。
【0081】
<銀微粒子分散溶液2の調製>
銀微粒子の分散溶液の調製は、特許文献4を参考に行った(特表2005−530005号公報を参考に調製)。
すなわち、前記銀微粒子1を4g、トルエン30g、BYK−410(ビックケミージャパン社製)0.2gを混合し、出力180Wの超音波分散機で1.5分間分散化処理を行い、純水15gを添加し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波分散機で30秒間分散処理を行い、銀微粒子分散溶液2を調製した。
【0082】
<第一導電性層の形成法>
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート基材上に前記銀微粒子分散溶液2を、バーコーターを用いてコーティングした。続いて、大気中で自然乾燥させることで、銀微粒子が自己組織化現象により網目状構造を形成した。次に、150℃で2分間加熱した後、アセトン及び1N塩酸にそれぞれ浸漬した後、150℃で5分間加熱乾燥させ、第一導電性層を形成した。第一導電性層を基材上に形成した後の全光線透過率は85%、表面抵抗値は4.5Ω/□であった。
【0083】
<接着層の形成>
第一導電性層が形成された基材の第一導電性層表面側に下記の接着層コーティング液1を乾燥後の厚みが5.1μm(実施例1)、6.0μm(実施例2)、6.5μm(実施例3)となるよう塗布し、100℃の温度で5分乾燥させて接着層を形成した。
【0084】
<接着層コーティング液1>
アクリル樹脂(三菱レイヨン製、ダイヤナールBR83)8.5g+ポリエステル樹脂(東洋紡製、バイロン200)1.5g+トルエン75g+メチルエチルケトン15gを加えて攪拌し、接着層コーティング液1を作製した。
【0085】
<熱転写>
厚み125μmのポリエチレンテレフタレート基板表面に、第一導電性層と接着層が形成された厚み100μmのポリエチレンテレフタレート基材の接着層が形成された表面を対向させ、ホットラミネーター(大成ラミネーター製、大成ファーストラミネーターVAII−700)を用いて180℃で熱圧接し、室温に下がるまで放置した後、ポリエチレンテレフタレート基材を剥離して第一導電性層及び接着層をポリエチレンテレフタレート基板上に熱転写した。
【0086】
<第二導電層の形成>
エッチング溶液として硝酸第二鉄10wt%−硝酸14wt%の混合水溶液を調製した。前記転写操作により作製した透明導電性基板を、該エッチング溶液中に浸漬させて、基板表面から0.8μm(実施例1)、1.0μm(実施例2)、1.5μm(実施例3)の深さでエッチングできる条件下、エッチング処理を行なった。
続いてNi−Zn無電解めっき溶液を調製し、0.8μm(実施例1)、1.0μm(実施例2)、1.5μm(実施例3)の膜厚になる条件下でめっき処理を行ない、エッチング孔にNi−Znの第二導電性層を形成させた。
作製した透明導電性基板の表面抵抗値は0.08Ω/□(実施例1)、0.08Ω/□(実施例2)、0.05Ω/□(実施例3)、全光線透過率は85%(実施例1〜3)であった。
【0087】
<耐ヨウ素性の評価結果>
耐ヨウ素性の評価結果を表1に示す。実施例1〜3および比較例1〜2で作製した透明導電性基板は耐ヨウ素性を有していた。一方、比較例2の透明導電性基板はめっき膜が薄いため十分な耐ヨウ素性を有していなかった。
【0088】
【表1】

【0089】
比較例1
実施例1の方法でポリエチレンテレフタレート基板上に第一導電性層を形成させた。続いて、Ni−Zn無電解めっき溶液を調製し、1.5μmの膜厚になる条件下でめっき処理を行ない、第二導電性層を形成させた。
作製した透明導電性基板の表面抵抗値は0.05Ω/□、全光線透過率は65%であり、めっき処理により表面抵抗値は下がったが、網目状構造における導電性部の幅が広がり、全光線透過率が低下してしまった。
【0090】
比較例2
実施例1の方法でポリエチレンテレフタレート基板上に第一導電性層を形成させた。続いて、Ni−Zn無電解めっき溶液を調製し、0.05μmの膜厚になる条件下でめっき処理を行ない、第二導電性層を形成させた。
作製した透明導電性基板の耐ヨウ素性試験を行ったところ、導電性部がヨウ素電解質溶液に溶解してしまい、表面抵抗値は測定できなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る透明導電性基板は、色素増感型太陽電池用電極基板に限らず、タッチパネル用導電性フィルム、電磁波シールドフィルムなどの耐食性、耐候性が要求される透明導電性基板にも応用することが出来る。また耐食性等が特に要求されない透明導電性基板であっても、本発明に係る透明導電性基板は、低抵抗でかつ高透過性を有しさらには基板上面の平坦性にも優れるので、透明導電性基板として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 透明導電性基板
2 基材
3 第一導電性層
5 第二導電性層
7 接着層
8 被転写基板
10 転写層
11 透明導電性基板の表面
12 開口部
14 転写層の表面
15 熱転写後の第一導電性層の表面
16 熱転写後の接着層の表面
17 第二導電性層の表面
18 第三導電性層
21 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性基板の製造方法において、下記の1から5の製造工程にて製造することを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程
2、前記第一導電性層を完全に覆う透明性の接着層を積層する接着層積層工程
3、前記接着層面と被転写基板とを貼り合せ、加熱加圧した後、基材を剥離し、第一導電性層と接着層が一体となった転写層を被転写基板に熱転写させる熱転写工程
4、熱転写された第一導電性層の表面をエッチングするエッチング工程
5、エッチングで形成された孔部にめっきを施し第二導電性層を積層する第二導電性層形成工程
【請求項2】
透明導電性基板の製造方法において、下記の1から5の製造工程にて製造することを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程
2、被転写基板に透明性の接着層を積層する接着層積層工程
3、前記第一導電性層面と被転写基板とを貼り合せ、加熱加圧した後、基材を剥離し、第一導電性層と接着層が一体となった転写層を被転写基板に熱転写させる熱転写工程
4、熱転写された第一導電性層の表面をエッチングするエッチング工程
5、エッチングで形成された孔部にめっきを施し第二導電性層を積層する第二導電性層形成工程
【請求項3】
前記第一導電性層形成工程が、金属微粒子ペーストを基材上に印刷し乾燥させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程であることを特徴とする請求項1又2に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項4】
前記第一導電性層形成工程が、金属微粒子の前駆体である金属塩の溶液を、基材に塗布し乾燥させた後、金属微粒子の前駆体を加熱又は紫外線照射又は還元性ガスにより還元析出させ、網目状の第一導電性層を基材上に形成させる第一導電性層形成工程であることを特徴とする請求項1又2に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項5】
前記第一導電性層形成工程と、前記接着層積層工程との間に、前記第一導電性層に加熱処理及び/又は化学処理を行う工程を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項6】
前記基材に前記金属微粒子分散溶液、前記金属微粒子ペースト又は前記金属塩の溶液を塗布するに先立ち、前記基材に表面処理を施すことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項7】
前記接着層の厚みは、前記第一導電性層の高さよりも高く、前記被転写基板に前記第一導電性層は接触しないことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法により得られる透明導電性基板の表面に、さらに第三導電性層を積層する第三導電性層形成工程を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の透明導電性基板の製造方法により得られる透明導電性基板。
【請求項10】
前記第一導電性層と前記接着層の最大段差が300nm以下であり、表面の表面抵抗値が5Ω/□以下であることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性基板。
【請求項11】
前記接着層がアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の接着剤を含有することを特徴とする請求項9又は10に記載の透明導電性基板。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の透明導電性基板であって、前記第二導電性層及び前記第三導電性層が電解質溶液に対して耐性を有することを特徴とする色素増感型太陽電池用透明導電性基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−182648(P2010−182648A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27817(P2009−27817)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】