説明

透明面状体及び透明タッチパネル

【課題】低抵抗化が可能でかつ視認性を向上させることができる透明面状体及び透明タッチパネルを提供する。
【解決手段】透明基板12の一方面側にパターニングされた透明導電膜11を有する透明面状体1であって、透明基板12の他方面側に偏光板13を備えており、透明基板12は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である環状オレフィンの付加(共)重合体よりなるリタデーション100nm〜150nmの位相差フィルムである透明面状体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明面状体及び透明タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機、パソコン、OA機器、電子手帳、PDA、携帯電話等の表示装置にタッチパネルが使用されている。タッチパネルは画面表示を邪魔せずに、どこをタッチしたかを検出するセンサであり、いろいろな方式が考案され、実用化されている。通常、タッチパネルと表示装置とは別々の部品であり、2つのモジュール部品を組み合わせ(貼り合わせ)、1つのケースに収められて使用する。
【0003】
代表的な抵抗膜式タッチパネルは、特許文献1に示されているように、透明なベースフィルムの片面にITO等の透明電極(透明導電膜)が形成された2つの透明面状体が、互いに透明導電膜を一定間隔をおいて対向配置された構成を有する。
【0004】
図13は、タッチパネルの断面図である。タッチパネル100は、上側電極フィルム110と下側電極基板120を備え、その隙間にドットスペーサ1
0 3が入れられている。上側電極フィルム110は位相差フィルム111とITO電極112とからなる。下側電極基板120はガラス基板121とITO電極1 2 2とからなる。位相差フィルム111と偏光板101は粘着層1
0 2で貼り合わされている。ガラス基板121と位相差フィルム105は、粘着層104で貼り合わされている。
【0005】
タッチパネル100において、偏光板101と位相差フィルム111,105を組み合わせて用いるのは、外光反射を抑制して視認性を向上させた表面低反射タッチパネルを得るためである(例えば特許文献2参照)。
【0006】
従来、位相差フィルム111は、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーフィルム等で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−89914号公報
【特許文献2】特開平10−48625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリカーボネートやシクロオレフィンポリマーフィルム等の、ガラス転移点(Tg)が150℃以下の素材からなる位相差フィルムは、フィルム111上にITO(酸化インジウムスズ)を成膜する際に、例えばTg=150℃のフィルムでは、フィルム温度を140℃以上に設定すると、リタデーションが低下する為、成膜温度や成膜後の熱処理(アニール処理)の温度が上げられず、ITOの結晶化度が低いものしか得られない。この結果、ITO膜の低抵抗化が困難であるという問題があった。
【0009】
また、透明導電膜を所定のパターン形状を有するように構成した場合(例えば、複数の帯状の導電部の集合体となるように構成した場合)、透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい、視認性が低下するという問題もあった。この問題の要因の一つとして、ITOの結晶化が不十分であると、波長400〜450nmの光の吸収が大きくなり、ITO膜が黄色味の強い色目となることが考えられる。
【0010】
また、透明導電膜のパターン形状を目立ちにくくするためには、透明導電膜の厚みを薄くする必要があるが、透明導電膜の厚みを薄くすると抵抗値が上昇してしまうという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、低抵抗化が可能でかつ視認性を向上させることができる透明面状体及び透明タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、透明基板の一方面側にパターニングされた透明導電膜を有する透明面状体であって、前記透明基板の他方面側に偏光板を備えており、前記透明基板は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である環状オレフィンの付加(共)重合体よりなるリタデーション100nm〜150nmの位相差フィルムである透明面状体により達成される。
【0013】
また、この透明面状体において、前記透明基板は、160℃で30分の熱処理による収縮率がMD(流れ方向)、TD(垂直方向)ともに、0.5%以下であることが好ましい。
【0014】
また、前記透明基板と前記透明導電膜との間にアンダーコート層が介在されており、前記アンダーコート層は、光屈折率が異なる2以上の層の積層体から構成され、低屈折率層側に前記透明導電膜が形成されていることが好ましい。
【0015】
また、前記低屈折率層は、酸化珪素により形成されており、前記高屈折率層は、光屈折率2.0〜2.8の金属酸化物粒子を含む樹脂素材により形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の上記目的は、上述の透明面状体を少なくとも1つ備える透明タッチパネルであって、前記透明面状体の透明導電膜と、該透明導電膜とは異なる第2の透明導電膜とが、互いに対向する向き、或いは、同一方向となる向きに配置されている透明タッチパネルにより達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低抵抗化が可能でかつ視認性を向上させることができる透明面状体及び透明タッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る透明タッチパネルの概略断面図である。
【図2】図1に示す透明タッチパネルの一部を示す平面図である。
【図3】図1に示す透明タッチパネルの他の一部を示す平面図である。
【図4】図1に示す透明タッチパネルの変形例の一部を示す平面図である。
【図5】図1に示す透明タッチパネルの変形例の他の一部を示す平面図である。
【図6】実施例1で得られたITO膜の結晶化度の測定結果を示す図である。
【図7】実施例2で得られたITO膜の結晶化度の測定結果を示す図である。
【図8】実施例3で得られたITO膜の結晶化度の測定結果を示す図である。
【図9】図1に示す透明タッチパネルの変形例を示す概略断面図である。
【図10】図1に示す透明タッチパネルの他の変形例を示す概略断面図である。
【図11】官能試験に用いた透明面状体サンプルの概略断面図である。
【図12】透明基板に対して熱処理(アニール処理)を行った場合のリタデーション値の変化確認実験の結果を示すグラフである。
【図13】従来のタッチパネルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る透明タッチパネルの概略構成断面図である。この透明タッチパネル100は、静電容量式のタッチパネルであり、第1透明面状体1と第2透明面状体2とを備えている。第1透明面状体1は、一方面側にパターニングされた透明導電膜11を有する透明基板12と、該透明基板12の他方面側に配置される偏光板13とを備えている。この偏光板13は、通常、図示しないエポキシ系やアクリル系などの一般的な透明接着剤を介して透明基板12に貼着されている。第2透明面状体2は、一方面側にパターニングされた透明導電膜21が形成された透明基板22を備えている。第1の透明面状体1と第2の透明面状体2とは、それぞれの透明導電膜11,21が互いに離間して対向するようにして、粘着層3を介して貼着されている。なお、それぞれの透明導電膜11,21が同一方向を向くようにして配置してもよい。
【0021】
このような構成のタッチパネル100は、例えば、銀行端末(キャッシュディスペンサー)、券売機、パソコン、OA機器、電子手帳、PDA、携帯電話等の表示装置に取り付けられて使用される。なお、タッチパネル100の取り付けに際しては、偏光板13側が露出面(タッチ面)となるように、透明な粘着層を介して表示装置に取り付けられる。
【0022】
透明基板12,22は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である、ガラス転移温度が170〜200℃の環状オレフィンの付加(共)重合体(環状オレフィンコポリマー:COC)よりなるリタデーション100nm〜150nmの位相差フィルムにより形成している。なお、位相差フィルムである各透明基板12,22は、それぞれの遅相軸が、直交する角度となるように配置されている。
【0023】
ノルボルネンとエチレンとの付加共重合体である環状オレフィンコポリマー(COC)としては、例えば、市販品を使用することができる。市販品としては、TOPAS Advanced Polymers(TAP)社製、商品名「TOPAS」等を挙げることができる。ノルボルネンとエチレンとの共重合比率は、質量比で80:20〜90:10とすることが好ましい。このような共重合比率とすることにより、ガラス転移温度(Tg)が170〜200℃の環状オレフィンの付加共重合体を得ることができる。なお、ノルボルネンの比率を80質量%未満に設定すると、表1に示すように、170℃以上の高いガラス転移温度を得ることができない。また、エチレンの比率を10質量%未満に設定すると、得られるフィルムの強度が低下し、必要な後加工工程(コーティング工程、薄膜形成工程等)に耐えることが困難となる。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定器(株式会社島津製作所製DSC−60)により測定される値である。
【表1】

【0024】
また、環状オレフィンコポリマー(COC)について、MVRが0.7cm/10分、1.8cm/10分、1.9cm/10分、2.2cm/10分、の4種類の樹脂を用い、ペレット化した後、フィルム化する際の加工性を評価した。その結果、表2に示すように、MVR=0.7cm/10分のものでは、ペレット化及びフィルム化共に加工が困難であった。また、MVR=2.2cm/10分のものでは、得られるフィルムの強度が低く、フィルム化が困難であった。これに対し、MVR=1.8cm/10分及びMVR=1.9cm/10分のものでは、ペレット化及びフィルム化の双方の加工性に優れていた。したがって、ノルボルネンとエチレンとの付加共重合体である環状オレフィンコポリマー(COC)のMVRは、0.8〜2.0cm/10分であることが好ましく、更には、1.5〜2.0cm/10分であることが好ましい。なお、MVRは、例えば共重合時の熱量調整等により調整することができる。
【表2】

【0025】
ここで、異方性物質に入射する光が互いに垂直な振動方向を持つ2つの光(常光線と異常光線)に分離する現象を複屈折といい、リタデーション(Retardation)とは常光線と異常光線との位相差をいう(位相遅れともいう)。本発明では、フィルム面内のMD方向(流れ方向)の屈折率をnx、TD方向(垂直方向)の屈折率をnyとし、フィルムの厚みをdとすると、リタデーション(Re)は、MD方向の屈折率(nx)とTD方向の屈折率(ny)の差(△n)と、フィルムの厚み(d)から式(1)であらわされ、例えば、王子計測機器製自動複屈折計 KOBRA
21-ADHで測定可能である。ノルボルネンとエチレンとの共重合体フィルムの延伸によって、リタデーションは制御されるが、その延伸手法に特に限定はない。外部応力が強いほど複屈折が大きくなり、リタデーションも大きくなる。
Re=△nd=|nx−ny|×d ・・・式(1)
【0026】
また、160℃で30分の熱処理による収縮率がMD(流れ方向)、TD(垂直方向)ともに、0.5%以下であるのが好ましい。収縮率が0.5%を超えると、例えば高結晶の透明導電膜(ITO膜)を形成するために150℃のような高温でスパッタリング加工する際に、フィルムのフラット性が維持できずに変形したり、さらには表面に形成したITO膜にクラックが発生する不具合が生じる。収縮率を0.5%以下に抑えるための手段は特に制限はないが、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm
10分である、ガラス転移温度が170〜200℃の環状オレフィンの付加(共)重合体を使用し、例えば180℃以上で延伸加工を行うことによって得られる。
【0027】
透明導電膜11,21の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系、酸化亜鉛、スズ酸化等の透明導電材料、或いは、スズ、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属材料、金属酸化物材料を例示することができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。また、酸やアルカリに弱い金属単体でも導電材料として使用できる。
【0028】
また、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維や銀素材からなる極細導電繊維をバインダーとして機能するポリマー材料に分散させた複合材を透明導電膜11,21の材料として用いることもできる。ここでポリマー材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレン、ポリ複素環ビニレン、PEDOT:poly(3,4-ethylenedioxythiophene)などの導電性ポリマーを採用することができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの非導電性ポリマーを採用することができる。
【0029】
透明導電膜11,21の材料として、特にカーボンナノチューブを非導電性ポリマー材料に分散させたカーボンナノチューブ複合材を採用した場合、カーボンナノチューブは、直径が一般的には0.8nm〜1.4nm(1nm前後)と極めて細いので、1本或いは1束ずつ非導電性ポリマー材料中に分散することでカーボンナノチューブが光透過を阻害することが少なくなり透明導電膜11,21の透明性を確保する上で好ましい。
【0030】
透明導電膜11,21の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法、塗工法、印刷法などを例示することができる。具体的には、上記特徴を有する透明基板(位相差フィルム)上に、該基板の温度を140℃以上に保って透明導電膜をスパッタリング法等により形成する。あるいは、上記特徴を有する透明基板(位相差フィルム)上に、該フィルムの温度を−10℃〜150℃に保って透明導電膜をスパッタリング法等により形成した後、140〜180℃の温度で熱処理を行うことにより形成することができる。また厚みについて、例えばスパッタリング法でITO膜を成膜する場合は、透明導電膜11,21の厚みは、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。なお、膜厚が5nm以下では連続した膜になり難く、安定な導電層を形成することは困難である。
【0031】
透明導電膜11,21は、図2及び図3に示すように、平行に延びる複数の帯状導電部11a,21aの集合体としてそれぞれ形成されており、各透明導電膜11,21の帯状導電部11a,21aは、互いに直交するように配置されている。透明導電膜11,21は、導電性インクなどからなる引き廻し回路(図示せず)を介して外部の駆動回路(図示せず)に接続される。透明導電膜11,21のパターン形状は、本実施形態のものに限定されず、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることが可能である。例えば、図4及び図5に示すように、透明導電膜11,21を、複数の菱形状導電部11b,21bが直線状に連結された構成とし、各透明導電膜11,21における菱形状導電部11b,21bの連結方向が互いに直交し、且つ、平面視において上下の菱形状導電部11b,21bが重なり合わないように配置してもよい。なお、透明タッチパネル100の分解能などの動作性能については、第1透明面状体1と第2透明面状体2とを重ね合わせた場合に、導電部が存在しない領域を少なくする構成を採用する方が優れている。このような観点から、透明導電膜11,21のパターン形状として、矩形状の構成よりも、複数の菱形状導電部11b,21bが直線状に連結された構成の方が望ましい。
【0032】
透明導電膜11,21のパターニングは、珪素含有層上又は透明基板上にそれぞれ形成された透明導電膜11,21の表面に、所望のパターン形状を有するマスク部を形成して露出部分を酸液などでエッチング除去した後、アルカリ液などによりマスク部を溶解させて行うことができる。
【0033】
偏光板13は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)を延伸し、ヨウ素で染色した層を偏光子として、その両側に保護層のセルローストリアセテート層(TAC層)を重ねて構成されている。透過軸方向の透過率が高く、吸収軸方向の透過率が低くなるような構成であれば、PVA以外に親水性高分子フィルム、ヨウ素以外に2色性色素、TAC以外に透明フィルム材料を用いて偏光板13を構成してもよい。このような偏光板13は、その透過軸と、位相差フィルムである透明基板12の遅相軸とが45度の角度をなすように貼り合わせられている。また、偏光板13の露出面を保護するために、図1に示すように、当該露出面上に被覆層4を設けるように構成してもよい。被覆層4は、透明性が高い材料からなることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアクリル(PAC)、アクリル、非晶質ポリオリフィン系樹脂、環状ポリオリフィン系樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの可撓性フィルムやこれら2種以上の積層体、およびガラスなどを挙げることができる。なお、偏光板13または被覆層4の露出面に対して、耐擦傷性、耐摩耗性、耐指紋性、反射防止性、ノングレア性の向上のため、表面処理加工を施してもよい。また、被覆層は、通常、図示しないエポキシ系やアクリル系などの一般的な透明接着剤を介して偏光板13に貼着されている。
【0034】
粘着層3は、エポキシ系やアクリル系など、一般的な透明接着剤を用いることができ、ノルボルネン系樹脂の透明性フィルムからなる芯材を含むものであってもよい。また、シート状粘着材を複数枚重ね合わせることにより粘着層3を形成してもよく、更に、複数種類のシート状粘着材を重ね合わせて形成してもよい。粘着層3の厚みは、特に指定はないが、実用上では200μm以下であることが好ましい。また、粘着層3の光屈折率は、1.40〜1.70が好ましく、1.46〜1.57であることが更に好ましい。粘着層の屈折率は透明導電膜の屈折率に近づける(高くする)と、界面での屈折率差が小さくなり、パターン形状を目立たなくする効果は高まるが、粘着層3の高屈折率化には高屈折材微粒子の添加等が必要であり、透明面状体としての透過率が下がる問題がある。また粘着層3は透明導電膜と接しており、酸など透明導電膜へダメージを与える材料を含むものは好ましくない。
【0035】
ここで、本発明に係る透明基板12,22の材料であるノルボルネンとエチレンとの共重合体は、その吸水率(23℃/24時間)が、通常、0.005〜0.1%程度であるのが好ましい。吸水率(ISO 62準拠、23℃/24時間)が、0.1%を超えると、得られる基板の寸法安定性が低下する傾向にある。透明基板12,22で使用するノルボルネンとエチレンとの共重合体の光屈折率(JIS K7142準拠)は、通常、1.49〜1.55程度であり、光線透過率(JIS K7361−1準拠(日本電色工業株式会社へ―ズメーターNDH5000にて測定))は、90.8%〜93.0%程度である。ノルボルネンとエチレンとの共重合体には紫外線吸収剤、無機や有機のアンチブロツキング剤、滑剤、静電気防止剤、安定剤等各種公知の添加剤を合目的に添加してもよい。MVR(メルトボリュームレート)は温度260℃、荷重2.16kgの条件での10分あたりの吐出体積(cm)が0.8〜2.0 cm/10分であることが好ましい。0.8cm/10分未満では、原料製造時あるいはフィルム製造時に成形機内の圧力が高くなりすぎ製造できない。また、2.0cm
1 0分よりも大きい場合には、得られる位相差フィルムの強度が弱すぎてタッチパネル等に必要な加工(スパッタリング等)工程に耐えることができない。
【0036】
ノルボルネンとエチレンとの共重合体から透明基板12,22用のフィルムを得る方法は特に限定はなく、例えば溶液流延法、押出し法、カレンダー法等が例示できる。ノルボルネンとエチレンとの共重合体フィルムの厚みは、20〜300μmが好ましく、さらに好ましくは、40〜200μmである。薄すぎるとフィルム強度が不足する傾向にあり、フィルム強度が十分であれば必要以上に厚くする必要はない。
【0037】
ノルボルネンとエチレンとの共重合体フィルム表面の濡れ性及び接着性を向上させるために、フレーム処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、イトロ処理、プライマー処理、化学薬品処理などの表面改質処理を行ってもよい。コロナ放電処理及び紫外線照射処理は、空気中、窒素ガス中、希ガス中等で行うことができる。このような表面改質処理によって、環状オレフィン系樹脂フィルム表面の濡れ張力を、450μN/cm(23℃)以上とすることが好ましく、500μN/cm(23℃)以上とすることがより好ましい。
【0038】
収縮率の測定は、100×100mmのサイズに切り出したフィルムの4辺の長さを測長機を用い、0.001mm単位で測定し、次いで測定したフィルムを160℃に設定したオーブンに30分間投入した後取りだし、再度フィルムの4辺の長さを測長機を用い、0.001mm単位で測定し、4辺の長さのそれぞれの変化量を求めた。2枚ずつ測定し、MD方向、TD方向それぞれについて平均値を求め収縮率とした。値がマイナスの場合は収縮を意味し、プラスの場合は膨張を意味する。
【0039】
ノルボルネンとエチレンとの共重合体フィルムを延伸することによって、リタデーションを制御する手法は特に限定はなく、例えばロール延伸法、テンタークリップ延伸法、圧延法等が例示できる。
【0040】
本発明者らは、上記構成を有する透明基板12(22)を評価するために、透明基板12(22)上に透明導電膜(ITO膜)を形成し、透明導電膜の結晶化度の測定を行ったので、その結果について説明する。
【0041】
まず、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が、82:18であり、ガラス転移温度180℃、MVR=1.5の共重合体を溶融押出法にて樹脂温度300℃、引取りロール温度130℃で、厚みが100μmになるようにフィルムを作成した。次いでロール周速が7.0m/minと、ロール周速が14.0m/minの2本の異なる周速の金属ロール間を、フィルム温度を190℃に保った状態で走行させることにより、延伸倍率2.0倍、リタデーション138nm、Nz係数=1.0、フィルム厚み86μmの位相差フィルムを得た。Nz係数は、屈折率成分nx,ny,nzの大小関係を表す指標の1つで、式(式2)で定義される。ここで、nx及びnyはフィルム面内の屈折率、nzはフィルム面に垂直な方向の屈折率である。
Nz=(nx−nz)/|nx−ny| ・・・式(2)
得られた位相差フィルムの160℃で30分での寸法変化率はMD=−0.46%、TD=0.22%であった。得られた位相差フィルムの強度は十分使用できるものであった。
【0042】
次に、得られた位相差フィルムの両面に、紫外線硬化型のアクリル系塗料を用い、厚みが表裏それぞれ6μmになるようにハードコート層を設けた。得られたフィルムの表面の鉛筆硬度はHBであった。
【0043】
上記で得られたフィルムの片面に、フィルム温度を150℃に保った状態で、抵抗値256Ω/□のITO透明導電膜をスパッタリング法により形成した。得られたITO膜(実施例1)の結晶化度の測定結果を図6に示す。
また、上記で得られたフィルムの片面に、フィルム温度を90℃に保った状態で、抵抗値450Ω/□のITO透明導電膜をスパッタリング法により形成した。さらに165℃温度で1時間熱処理を行うことによって抵抗値240Ω/□のITO透明導電膜を形成した。得られたITO膜(実施例2)の結晶化度の測定結果を図7に示す。
【0044】
また、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が、82:18であり、ガラス転移温度180℃、MVR=1.5の共重合体を溶融押出法にて樹脂温度300℃、引取りロール温度130℃で、厚みが200μmになるようにフィルムを作成した。次いでテンタークリップ方式の延伸機にて、速度1.0m/min、延伸倍率2.0倍、フィルム温度を185.5℃にて横延伸することにより、リタデーション138nm、Nz係数=1.5、フィルム厚み95μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの160℃で30分での寸法変化率はMD=−0.06%、TD=−0.12%であった。得られた位相差フィルムの強度は十分使用できるものであった。
【0045】
得られた位相差フィルムの両面に、紫外線硬化型のアクリル系塗料を用い、厚みが表裏それぞれ6μmになるようにハードコート層を設けた。得られたフィルムの表面の鉛筆硬度はHBであった。上記で得られたフィルムの片面に、フィルム温度を1
5 0℃に保った状態で抵抗値236Ω/□のITO透明導電膜をスパッタリング法により形成した。得られたITO膜(実施例3)の結晶化度の測定結果を図8に示す。
【0046】
図6〜図8に示ように、X線によるITO膜の結晶化度の測定結果から、実施例1〜3は全て、2θ=約30°付近のITO特有の(222)配向によるX線強度ピークが強く、得られた膜質の結晶化度が高いことが確認された。
【0047】
以上の構成を備える透明タッチパネル100において、タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチパネルと同様であり、第1透明面状体1の表面側における任意の位置を指などで触れると、透明導電膜11,21は接触位置において人体の静電容量を介して接地され、透明導電膜11,21を流れる電流値を検出することにより、接触位置の座標が演算される。
【0048】
本発明に係る透明面状体1,2は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である、ガラス転移温度が170〜200℃の環状オレフィンの付加(共)重合体よりなるリタデーション100nm〜150nmの位相差フィルムである透明基板12,22を備えている為、透明基板12,22上に透明導電膜11,21を成膜する際、もしくは成膜後の熱処理(アニール)の際に、透明基板12,22の温度を140℃以上に設定することが可能となり、成膜される透明導電膜11,21の結晶化度を高めることができる。この結果、透明導電膜11,21の低抵抗化が可能となる。
【0049】
また、透明導電膜11,21の結晶化度を高めることができる結果、ITO膜が黄色味の強い色目となることを防止することができ、透明導電膜のパターン形状を目立ちにくくして透明面状体及びタッチパネルの視認性を向上させることができる。さらに、透明導電膜11,21の結晶化度を高めて低抵抗化が可能になるため、透明導電膜の厚みをより一層薄くすることができ、更に視認性を向上させることができる。
【0050】
更に、本実施形態の透明面状体1は、位相差フィルムである透明基板12の他方面側(透明導電膜11が形成されている面とは反対側)に偏光板13を供えているため、偏光板13側から入射する外光が、パターニングされた透明導電膜11,21の表面で反射して、偏光板13を再度通過することを効果的に防止することができる。具体的に説明すると、タッチパネル100に入射した外光(図1において、被覆層4側から入射した外光)は、偏光板13を通過する際に水平の直線偏光に偏光されて位相差フィルムからなる透明基板12に入射する。透明基板12に入射した水平の直線偏光は、右回りの円偏光に偏光されて、パターニングされた透明導電膜11,21の表面や、透明導電膜11,21が形成されていない透明基板12,22の表面にて反射する。反射した右回りの円偏光は、反射時に左回りの円偏光になり、再度位相差フィルムである透明基板12に入射する。透明基板12に入射した左回りの円偏光は、透明基板12通過時に垂直の直線偏光に偏光されて偏光板13に入射する。偏光板13に入射した垂直の直線偏光は、この偏光板13を通過することができないため、パターニングされた透明導電膜11,21の表面や、透明導電膜11,21が形成されていない透明基板12,22の表面での反射光が視認できなくなる。このように円偏光構成を備えることにより、外光反射を防止できる結果、パターニングされた透明導電膜11,21のパターン形状を目立たなくできると共に、タッチパネルが設置される表示装置により表示される文字情報や画像情報をより見易くすることができる。
【0051】
以上、本発明に係る透明面状体1,2及びこれを使用する透明タッチパネル100の実施形態について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、図9に示すように、第2透明面状体2が有する透明基板22を、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である、ガラス転移温度が170〜200℃の環状オレフィンの付加(共)重合体よりなる光等方性フィルムにより形成すると共に、ポリカーボネート(PC)フィルムやポリビニルアルコール(PVA)フィルムを延伸して複屈折を付与した位相差板5を配置して透明タッチパネルを構成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、図10に示すように、透明基板12,22と透明導電膜11,21との間にアンダーコート層14,24が介在される構成を採用することができる。アンダーコート層14,24は、それぞれ低屈折率層14a,24aと、低屈折率層14a,24aよりも光屈折率が高い高屈折率層14b,24bとの積層体から構成されており、低屈折率層14a,24a側に透明導電膜11,21が形成されるように配置されている。
【0053】
低屈折率層14a,24aの材料としては、シリコン錫酸化物(silicon-tin oxide)、酸化珪素、酸化アルミなどの無機酸化物とこれらを組み合わせからなる組成物やフッソ系有機物素材、酸化ケイ素系ゾルゲル素材、酸化ケイ素系やフッソ系の微多孔質素材等を例示することができ、視認性・生産性向上の観点から特に好ましいのは、光屈折率が1.3〜1.5のものである。低屈折率層14a,24aは、スパッタリング法、抵抗蒸着法、電子ビーム蒸着法、種々ウエットコーティング法、などにより形成することができる。
【0054】
高屈折率層14b,24bは、光屈折率1.60〜1.80であることが望ましく、1.65を超え1.80以下であることがより望ましい。屈折率が1.60未満であると透明導電膜の有る部分と無い部分の光学特性を近似させ難くなり、透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい、良好な視認性が得られ難い。光屈折率が1.65を超えると非常に良好な視認性が得られるようになる。また、光屈折率が1.80を超える場合、透明基板12,22や粘着層3との屈折率差が大きくなり、この素材界面での反射光と高屈折率層14b,24bと低屈折率層14a,24aとの界面での反射光との光干渉による干渉斑が強く発生する結果、透明導電膜11,21のパターン形状が見えやすくなり、視認性が悪化する為好ましくない。また、屈折率が1.8を超え、傷つき性を改良できる程度の硬度と厚みを有する層を工業的に効率よく形成できる素材や手法が得られ難い事実もある。屈折率が1.65を超え1.80以下である高屈折率層14b,24b用のハードコート素材としては、アクリル系の紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等の樹脂素材を例示できる。また、これら樹脂素材に酸化チタン(屈折率:2.5〜2.8)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)、酸化セリウム(屈折率:2.2)、酸化アンチモン(屈折率:2.0〜2.3)等の屈折率の高い金属酸化物の微粒子を添加したものが例示できる。この場合、添加する金属酸化物微粒子は透明性を阻害しないように数十nm程度の粒子径であることが必要である。高屈折率層14b,24bの厚みは3μm以上が好ましい。3μm未満であると、透明基板12,22や粘着層3との界面での反射光と、高屈折率層14b,24bと低屈折率層14a,24aとの界面での反射光との光干渉による干渉斑が強く発生する結果、透明導電膜11,21のパターン形状が見えやすくなり、視認性が悪化する為好ましくない。
【0055】
このような構成のアンダーコート層14,24を透明基板12,22と透明導電膜11,21との間に介在させることにより、光の可視範囲波長である450nm〜700nmにおいて、透明導電膜11,21が形成された部分(パターン形成領域)を透過する光の透過スペクトルと、透明導電膜11,21が形成されていない部分(非パターン形成領域)を透過する光の透過スペクトルとの差を小さくすることができ、透明導電膜11,21のパターン形状が目立ちにくい視認性が良好な透明面状体1,2及び透明タッチパネル100を得ることが可能になる。なお、上記薄膜構成以外にも、光の可視範囲波長において、パターン形成領域を透過する光の透過スペクトルと、非パターン形成領域を透過する光の透過スペクトルとの差を小さくする構成であれば同様の効果が得られる。
【0056】
本発明者らは、アンダーコート層14を透明基板12と透明導電膜11との間に介在させた、図11に示す構造を有するサンプルを作成して、透過光を照射した場合に、透明導電膜11のパターン形状が目立たないか否かの官能試験、及びシート抵抗値の測定を行った。
[実施例1]
本サンプルは、図11に示す構造を有しており、アンダーコート層14を構成する低屈折率層14aと高屈折率層14bとは、それぞれ、スパッタで成膜したSiO薄膜(屈折率:1.46)と、酸化ジルコニウム微粒子を含有するハードコート剤(東洋インキ製造株式会社製リオデュラス)をコーティングして成膜した高屈折率ハードコート層(屈折率:1.65)と、により形成した。また、パターニングされた透明導電膜は、スパッタで成膜したITO膜をエッチングして形成した。低屈折率層14a(SiO薄膜)の厚みを7.5nmとし、高屈折率層14b(高屈折率ハードコート層)の厚みを5μmとし、透明導電膜(ITO膜)の厚みを20nmとした。また、粘着層3の厚みは、25μmであり、粘着層3の屈折率は、1.47である。また、透明基板12は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が、82:18であり、ガラス転移温度180℃、MVR=1.5の共重合体を溶融押出法にて樹脂温度300℃、引取りロール温度130℃で、厚みが100μmになるようにフィルムを作成し、次いでロール周速が7.0m/minと、ロール周速が14.0m/minの2本の異なる周遠の金属ロール間を、フィルム温度を190℃に保った状態で走行させることにより、延伸倍率2.0倍、リタデーション138nm、Nz係数=1.0、フィルム厚み86μmの位相差フィルムにより形成している。得られた位相差フィルムの160℃で30分での寸法変化率はMD=−0.46%、TD=0.22%である。なお、この位相差フィルム(透明基板12)の屈折率は、1.53である。また、透明基板12の他方面(透明導電膜11が形成されていない側の面)には、アクリル系UV硬化樹脂からなるハードコート層6が配置されている。このハードコート層の厚みは、5μmである。
【0057】
また、本サンプルは、透明導電膜11(ITO膜)を温度140℃下でスパッタ成膜した後、温度140℃下にて30分の熱処理(アニール処理)を行った。
【0058】
本サンプルに対して透過光を照射した場合、いずれも透明導電膜11のパターン形状を確認することができず、視認性が良好であるという結果を得た。なお、パターン形状の確認に際しては、三波長蛍光灯(27W)により透過光を照射し、本サンプルと目との距離を20cmに設定して行った。また、三波長蛍光灯の背景が白背景となるようにして判定を行なった。
【0059】
また、シート抵抗値は200Ω/□以下であり、透明面状体の低抵抗化を図ることができた(表3参照)。なお、シート抵抗値は、三菱化学株式会社製の抵抗率計であるロレスターEP
四探針プローブにて測定した。
【0060】
[比較例1]
上記サンプルの比較例として、図11に示す透明面状体の構成において、透明基板をゼオノアフィルム[日本ゼオン(株)製 ZMシリーズ]に変更した比較サンプルを作成した。なお、透明導電膜11(ITO膜)は、温度120℃下でスパッタリング法で成膜した後、温度120℃下にて30分の熱処理(アニール処理)を行った。透過光を照射した場合に、透明導電膜11のパターン形状が目立たないか否かの官能試験も行ったが、比較例1においては、透明導電膜11のパターン形状が確認され、視認性が悪いという結果であった(表3参照)。これは、ITO膜の結晶化が不十分のため、ITO膜が黄色味の強い色目になることで、パターンが視認されたと考えられる。
【表3】

【0061】
また、本発明者らは、実施例1及び比較例1における透明基板について、各所定温度において30分間の熱処理(アニール処理)を行った場合のリタデーション値の変化を確認する実験を行ったので、その結果について以下説明する。図12に実験結果を示す。この図12より、実施例1における透明基板は、アニール温度が150℃であっても、リタデーション値が約134nmと高い値を示すのに対し、比較例1における透明基板は、アニール温度:140℃を超えると、リタデーション値が急激に低下し、アニール温度:150℃でリタデーション値が約128nmとなることが分かる。
【0062】
このように、本発明に係る透明面状体を構成する透明基板12は、140℃を越える高温環境下でもそのリタデーション値を維持できることが分かる。その結果、透明基板12,22上に透明導電膜11,21を成膜する際、もしくは成膜後の熱処理(アニール)の際に、透明基板12,22の温度を140℃以上に設定することが可能となり、成膜される透明導電膜11,21の結晶化度を高めることができ、透明導電膜11,21の低抵抗化が可能になることが分かる。
【符号の説明】
【0063】
100 透明タッチパネル
1 第1透明面状体
2 第2透明面状体
11,21 透明導電膜
12,22 透明基板
13 偏光板
14,24 アンダーコート層
14a,24a 低屈折率層
14b,24b 高屈折率層
3 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方面側にパターニングされた透明導電膜を有する透明面状体であって、
前記透明基板の他方面側に偏光板を備えており、
前記透明基板は、ノルボルネンとエチレンとの共重合比率が80:20〜90:10、MVR(メルトボリュームレート)が0.8〜2.0cm/10分である環状オレフィンの付加(共)重合体よりなるリタデーション100nm〜150nmの位相差フィルムである透明面状体。
【請求項2】
前記透明基板は、160℃で30分の熱処理による収縮率がMD(流れ方向)、TD(垂直方向)ともに、0.5%以下である請求項1に記載の透明面状体。
【請求項3】
前記透明基板と前記透明導電膜との間にアンダーコート層が介在されており、
前記アンダーコート層は、光屈折率が異なる2以上の層の積層体から構成され、低屈折率層側に前記透明導電膜が形成されている請求項1又は2に記載の透明面状体。
【請求項4】
前記低屈折率層は、酸化珪素により形成されており、
前記高屈折率層は、光屈折率2.0〜2.8の金属酸化物粒子を含む樹脂素材により形成されている請求項3に記載の透明面状体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の透明面状体を少なくとも1つ備える透明タッチパネルであって、前記透明面状体の透明導電膜と、該透明導電膜とは異なる第2の透明導電膜とが、互いに対向する向き、或いは、同一方向となる向きに配置されている透明タッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−25158(P2012−25158A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131408(P2011−131408)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼発行者名 株式会社加工技術研究会 刊行物名 「コンバーテック」 2010年 6月号 No.447 発行年月日 2010年6月15日
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】