説明

運転支援装置、運転支援システム、および運転支援方法

【課題】運転支援のために必要な領域の俯瞰画像を、画像処理によって制御部の処理負荷を増大させることなく、運転支援のために必要なタイミングにおいて安定的に、ドライバに案内することが困難であった。
【解決手段】自車両に搭載され、撮像部を備える画像撮影ユニットを当該撮影部とその撮影対象との位置関係に基づいて制御して、前記自車両の上方から前記撮影対象を撮影するための撮影位置に配置し、撮影部が撮影した画像を取得し、取得した画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、見通しの悪い交差点などにおける事故の発生を抑制するために、交差点近傍に設置されたカメラで道路を撮影した画像を、車両の搭乗者へ提供する車両事故防止システムが知られている(例えば、特許文献1)。この車両事故防止システムでは、道路状況をドライバに案内する際に用いられる情報が文字情報ではなく実画像であるので、車両、自転車、人などの交差点までの距離、接近速度などを直感的に把握することができることなどが記載されている。
【特許文献1】特開2003−109199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術において、見通しの悪い交差点ごとにカメラを設置するのは、設置に要する時間および費用を考慮すると現実的ではない。一方、例えば見通しの悪い交差点の画像を車車間通信によって他車両から取得することを考えると、信号を発する他車両が近くにない場合や、信号を発する他車両と自車両との間に高層の建造物やその他の障害物が建ち並んでいるような場合には、他車両からの信号を受信しにくいため、所望のタイミングで所望の画像が得られないという問題がある。
【0004】
ところで、運転席から死角となる自車両の後方の画像を撮影し、運転席のディスプレイで視認できるようにした駐車支援システムが知られている。このようなシステムでは、自車両の後部に取り付けられたカメラで自車両の後方を撮影して得られた画像を、自車両を真上から見た俯瞰画像に変換することにより、ドライバが自車両と駐車スペースとの位置関係を直感的に理解しやすく、容易に駐車することができるようにしている。しかしながら、自車両を真上から見た俯瞰画像に変換するための処理量は多く、制御部に負荷がかかる。また、俯瞰画像としてドライバに提供するために実際にはカメラで撮影された画像に写っていない部分を補完する場合は、正確でない情報もドライバに案内される可能性がある。同様の理由から、上記のように自車両に取り付けられたカメラで撮影した画像からは、広範囲の俯瞰画像を得ることは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、運転支援のために必要な領域の俯瞰画像を、画像処理によって制御部の処理負荷を増大させることなく、運転支援のために必要なタイミングにおいて安定的に、ドライバに案内する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、自車両に搭載され、撮像部を備える画像撮影ユニットを当該撮影部とその撮影対象との位置関係に基づいて制御して、自車両の上方から撮影対象を撮影するための撮影位置に配置し、撮影部が撮影した画像を取得し、取得した画像を表示する構成を採用している。この構成によると、視点変換処理を実施することなく俯瞰画像を取得することができ、制御部にかかる処理負荷を増大させることなく、自車両周辺の俯瞰画像を得ることができる。俯瞰画像は自車両とその周辺の地物との位置関係を直感的にドライバに認識させるのに有効である。
【0007】
ここで、撮影部の配置は、当該撮影部とその撮影対象との位置関係に基づいて制御されればよく、撮影部についてその視野を予め特定しておき、当該視野に前記撮影対象が含まれるように撮影部の位置を特定すればよい。また、運転支援に役立つ全ての対象を前記撮影部における撮影対象とすることができ、例えば、交差点自体、交差点付近の車両、信号、路面の構造物、駐車場等を撮影対象とすることができる。
【0008】
画像取得手段は、前記画像撮影ユニットが撮影した画像を示す画像データを取得することができればよく、その取得態様は限定されない。例えば、有線によって画像データを取得しても良いし、無線通信によって画像データを取得しても良い。本発明は、例えば潜水艦の潜望鏡のように、自車両に取り付けられた潜望鏡に相当する部分が伸縮することにより、自車両の上方に撮影部を配置するような形態であってもよい。
尚、「上方」は、真上を含む広く上方の位置を指し、「下方」は真下を含む広く下方の位置を指す。
【0009】
また、本発明において、自車両の変速機のシフト装置のポジションを取得するシフトポジション取得手段を備えていてもよい。位置制御手段は、シフト装置のポジションがリバースに切り換わったことを検出したときに、撮影部を自車両の上方に配置する構成とする。この構成によれば、ドライバは変速機のシフトポジションをリバースに切り換えたときに、自車両の上方に配置された撮影部が撮影した俯瞰画像を視認することができる。
【0010】
また、本発明において、自車両の現在位置を取得する自車位置取得手段と、地図情報を取得する地図情報取得手段とを備えていてもよい。位置制御手段が、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて自車両が駐車場に入場したことを検出したときに、撮影部を自車両の上方に配置する構成であるので、ドライバは駐車場に自車両を入場させると、自車両の上方に配置された撮影部が撮影した俯瞰画像を視認することができる。
尚、この構成において地図情報には、駐車場の領域を特定するための情報が含まれている。例えば、駐車場の領域の四隅の地点の位置情報が予め地図情報に含まれている。
【0011】
また、本発明において、自車両の速度を取得する車速取得手段を備えていてもよい。この構成においては、前記地図情報に見通しの悪い交差点を識別するための情報を含め、これらの情報を組み合わせて案内を開始する。例えば、地図情報として、交差点を示すノードの属性として見通しの善し悪しを示す情報を含む構成とする。位置制御手段は、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて自車両の前方に見通しの悪い交差点が存在することを検出し、自車両が所定速度以下に減速したことを検出したときに、撮影部を自車両の上方に配置する構成であるので、ドライバが見通しの悪い交差点を通過しようとするとき、自車両の上方に配置された撮影部が撮影した俯瞰画像をドライバは視認することができる。尚、自車両の速度が所定速度以下であるときに撮像部が上方に配置される構成であるので、高速で走行中であるときと比較すると、画像撮影ユニットを配置させやすい。
【0012】
また、本発明において、自車両の前方の画像を取得する前方画像取得手段を備えていてもよい。位置制御手段は、自車両の現在位置と地図情報とに基づいて自車両の前方に交差点が存在することを検出し、自車両が所定速度以下に減速したことを検出し、自車両の前方の画像に基づいて自車両の前方に位置する他車両によって対向車線の画像が遮蔽されていると判断したときに、撮影部を自車両の上方に配置する構成であるので、自車両の前方の状況に応じて撮影部による処理を開始することができる。例えば、自車両が前方の交差点にて右折する際に、自車両の前方で交差点の手前に大型トラックが存在していると、運転席から対向車線の様子を明確に把握することができない。そこで、前記撮影部によって俯瞰画像を提供すれば、ドライバは、自車両の前方の状況に影響されずに交差点の状況を正確に把握することができる。尚、自車両の速度が所定速度以下であるときに撮像部が上方に配置される構成であるので、高速で走行中であるときと比較すると、画像撮影ユニットを配置させやすい。
【0013】
また、前記撮影部と撮影対象との位置関係は、自車両と地図情報によって特定される目標地点とのいずれかまたは双方に基づいて定義しても良い。すなわち、撮影対象として自車両を含む場合には、自車両と撮影部との位置関係に基づいて撮影位置を特定可能である。また、撮影対象として地図情報によって特定される目標地点(例えば、交差点)を含む場合には、目標地点と撮影部との位置関係に基づいて撮影位置を特定可能である。
以上の構成によれば、自車両の上方や、自車両と目標地点との中間に位置する地点の上方や、目標地点の上方などに撮影部を配置することができる。地上からの高度を指定してもよい。その結果、自車両周辺の状況や、目標地点周辺の状況、および自車両と目標地点との位置関係をドライバは把握することができる。尚、撮影位置は、GPS衛星や地図情報などによって特定される絶対位置としての自車位置および目標地点から指定されるものであってもよいし、例えば、自車両からの角度や距離および高度のように相対位置として指定されるものであってもよい。また、撮影部の撮影位置の指定のみならず、撮影部を上下左右に動かすように指定して、撮影範囲を制御するものであってもよい。
【0014】
さらに、本発明にかかる運転支援装置と協働する画像撮影ユニットとして、自車両が出力する位置制御信号によって特定される撮影位置に飛行する飛行制御手段と、その撮影位置にて下方の画像を撮影する画像撮影手段と、撮影した画像を自車両に転送する画像転送手段と、を備える構成としてもよい。この構成によれば、画像撮影ユニットは、自車両によって指示された撮影位置に飛行し下方の画像を撮影することができ、撮影した俯瞰画像を自車両に転送することができる。
【0015】
さらに、上記の運転支援装置と、上記の画像撮影ユニットとを組み合わせて運転支援システムを構成することもできる。この構成によれば、自車両は、自車両が指定した位置に画像撮影ユニットの撮影部を配置することができ、画像撮影ユニットによって撮影された俯瞰画像を取得し、取得した俯瞰画像をドライバに案内することができる。すなわち例えば、車車間通信によって他車両が撮影した画像を取得する場合と比較すると、他車両は自車両とは独立した動きをするが本発明の画像撮影ユニットは自車両の制御に応じて配置することができるため、自車両が指定した撮影位置の俯瞰画像を安定的に画像撮影ユニットから取得することができる。
【0016】
本発明のように、自車両に搭載されている画像撮影ユニットの撮影部を自車両の上方に配置し、撮影部が撮影した下方の画像を表示することによってドライバの運転を支援する手法は、この運転支援を行うプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような運転支援装置および方法は、単独の運転支援装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、運転支援装置を制御するプログラムやそのプログラムを記録する記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)運転支援:
(2−1)駐車支援処理:
(2−2)交差点支援処理:
(3)他の実施形態:
【0018】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる運転支援装置を含むナビゲーション装置10と、本発明にかかる画像撮影ユニットを含むヘリコプタ50とを含む運転支援システムの構成を示すブロック図である。本発明にかかるナビゲーション装置10によって運転支援が実施される車両のルーフには、無人のヘリコプタ50が搭載されている。
【0019】
ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム21を実施可能であり、当該ナビゲーションプログラム21はその機能の一つとして自車両の上方から撮影した画像をドライバに案内し、後述する運転支援を行う機能を備えている。尚、「上方」は、真上を含む広く上方の位置を指し、「下方」は真下を含む広く下方の位置を指す。
【0020】
自車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)には、ナビゲーションプログラム21を実現するためにGPS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43、カメラ44、変速機のシフト装置40、表示部45が備えられており、これらの各部と制御部20との信号の授受は図示しないインタフェースによって実現されている。また、図示しない地磁気センサ、スピーカなどを備え、それらの各部と制御部20とが図示しないインタフェースを介して各種の信号を授受してもよい。
【0021】
カメラ44は、自車両の前方の道路を撮影範囲に含むように自車両に取り付けられており、撮影した画像を示す画像データを出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、他車両の検出や各種の案内に利用する。
【0022】
制御部20は、ナビゲーションプログラム21を実行することにより、上述のようにして取得した各種情報に基づいて、目的地までの経路案内や、運転支援を行う。すなわち、制御部20は、画像によってそれらの案内を行うための制御信号を表示部45に出力し、表示部45にその画像を表示させる。制御部20は、音声によって各種の案内を行うための制御信号をスピーカに出力し、スピーカから案内情報としての音声を出力してもよい。
【0023】
さらに、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による案内を実施するため、地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、道路の高度を示すデータ、駐車場や各種施設などの目標物を示すデータ等を含み、自車両の位置の特定や目的地への案内に利用される。交差点はノードとして記憶され、ノードデータには位置情報が含まれている。
【0024】
本実施形態において、地図情報30aには、駐車場の領域を特定するための情報や、見通しの悪い交差点を識別するための情報が含まれている。例えば、駐車場の領域を特定するための情報として、駐車場の領域の四隅の地点の位置情報が予め含まれており、見通しの悪い交差点を識別するための情報として、交差点を示すノードの属性に見通しの善し悪しを示す情報が予め含まれている。
【0025】
また、本実施形態において、ナビゲーションプログラム21は、後述する運転支援を行うために、シフトポジション取得部21aと、自車位置取得部21bと、地図情報取得部21cと、車速取得部21dと、前方画像取得部21eと、位置制御部21fと、画像取得部21gと、案内部21hとを備えている。
【0026】
シフトポジション取得部21aは、自車両の変速機のシフト装置40のポジションを取得するモジュールであり、取得したシフトポジション情報は、図示しないメモリに保持される。
【0027】
自車位置取得部21bは、自車両の現在位置を取得するモジュールである。自車位置取得部21bは、GPS受信部41から取得した位置情報を、車速センサ42から取得した自車両の進行速度や、ジャイロセンサ43から取得した自車両の進行角度を示す情報、および地図情報30aなどに基づいて補正し、自車両の現在位置を特定する。
【0028】
地図情報取得部21cは、後述する運転支援を実施するために必要とされる区域の地図情報30aを記憶媒体30から取得し、図示しないメモリに格納するモジュールである。
車速取得部21dは、車速センサ42から、自車両の進行速度を取得するモジュールである。
【0029】
前方画像取得部21eは、カメラ44で撮影された画像を取得するモジュールであり、取得した画像データを図示しないメモリに保持する。本実施形態においては、例えば特定の時間間隔毎にカメラ44で自車両の前方を撮影した画像を取得し、各フレームの画像に基づいて、自車両の前方の道路状況が解析される。より具体的には、自車両の前方に他車両が存在し、当該他車両によって自車両の前方の視界が遮られているかなどが解析される。なお、この画像解析処理は公知の手法によって実施可能である。
【0030】
位置制御部21fは、上述のシフトポジション取得部21a、自車位置取得部21b、地図情報取得部21c、車速取得部21dおよび前方画像取得部21eによって取得された情報に基づいて撮影位置を設定し、設定した撮影位置にヘリコプタ50およびヘリコプタ50のカメラを配置するための制御を行うモジュールである。
【0031】
画像取得部21gは、ヘリコプタ50から転送された画像データを取得するモジュールであり、取得した画像を図示しないメモリに格納する。
案内部21hは、画像取得部21gが取得した画像を表示部45に出力し、ドライバに案内する。尚、案内部21hは、運転支援のための情報を、表示部45の他にスピーカ等を用いて案内してもよい。
【0032】
ヘリコプタ50は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部を備えており、当該制御部に、飛行制御部50aと、画像撮影部50bと、画像転送部50cとが含まれている。また、ヘリコプタ50は、カメラ50d、機体を飛行させるための図示しない駆動機構や、各種のセンサを備えている。
飛行制御部50aは、ナビゲーション装置10から指示された撮影位置にヘリコプタ50を移動させ、その位置にホバリングさせるために、ヘリコプタ50の各部を制御するモジュールである。具体的には例えば、ヘリコプタ50に搭載された図示しないGPS受信部やジャイロセンサ、地磁気センサ、および高度計などから出力された情報に基づいて特定されたヘリコプタ50の現在位置を、ナビゲーション装置10によって指定された撮影位置に近づけるための自動操縦が飛行制御部50aによって実施される。尚、自動操縦のための技術は、例えば農薬散布などの用途で既に実用化されている産業用無人ヘリコプタの自動操縦技術などが適用可能である。
【0033】
画像撮影部50bは、ヘリコプタ50に搭載されているカメラ50dを制御して下方の画像を撮影するモジュールである。画像撮影部50bは、例えば特定の時間間隔毎に画像を撮影し、同じくヘリコプタ50に搭載されている図示しないメモリに画像データを格納する。カメラ50dは、請求項に記載の撮影部に相当する。
【0034】
カメラ50dは、自車両から指定された撮影範囲の画像を撮影することができればよく、ヘリコプタ50のいずれの位置に取り付けられていても良いし、カメラの台数は特に限定されない。カメラを上下方向あるいは左右方向に回転させる機構を有していても良い。
【0035】
画像転送部50cは、画像撮影部50bによって撮影され、図示しないメモリに格納されている画像データを、ナビゲーション装置10に転送するモジュールである。転送される画像データの形式や、ナビゲーション装置10とヘリコプタ50との間の通信方式は、適宜選択可能である。
【0036】
以上、運転支援システムの構成を説明した。以上の構成を採用することにより、自車両は、自車両が指定した撮影位置にヘリコプタ50を配置し、撮影させた俯瞰画像を表示部45に出力してドライバに案内することができる。
【0037】
(2)運転支援:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10およびヘリコプタ50が実施する運転支援について説明する。本実施形態では運転支援の具体例として、駐車支援処理と、交差点支援処理とを説明する。
(2−1)駐車支援処理:
図2は、本実施形態における駐車支援処理を示すフローチャートである。この処理が開始されると、位置制御部21fは、ヘリコプタ50を発進させる起動条件を判定する(ステップS100)。具体的には、自車位置取得部21bによって特定された自車両の現在位置と地図情報取得部21cによって取得した地図情報に含まれる駐車場の領域を示す位置情報とに基づいて自車両が駐車場に入場したか否かが判定される。駐車場に入場したと判定されると、ステップS105に移行する。シフトポジション取得部21aが取得した情報に基づいて、シフトポジションがリバースに切り換わったか否かを判定し、切り換わったと判定すると、ステップS105に移行してもよい。
【0038】
次に、位置制御部21fは、撮影位置を設定する(ステップS105)。図3は、駐車場を上方から見た画像の一例を示す模式図である。自車両Mが駐車場Pに入場したことが検出されると、駐車場Pの全体領域Tが撮影範囲に含まれる地点qの上方の位置が撮影位置として設定される。具体的には、例えば地図情報30aに含まれる駐車場Pの四隅P、P、P、Pの緯度経度などの位置情報に基づいて地点qを目標地点とし、撮影位置の緯度経度および地上からの高度が設定される。すなわち、この場合の撮影対象は駐車場Pの全体領域Tであり、前記地点qとカメラ50dとの位置関係に基づいて全体領域Tがカメラ50dの撮影範囲に含まれるように撮影位置を設定する。
【0039】
あるいは例えば、自車両Mのシフト装置40のポジションがリバースに切り換わったことが検出された場合は、自車両Mを中心に自車両を含む自車両周辺領域Tが撮影範囲に含まれる地点qの上方の位置が撮影位置として設定される。具体的には、自車両Mの真上であって予め決められた所定高度が設定される。この場合の撮影対象は自車両周辺領域Tであり、前記地点qとカメラ50dとの位置関係に基づいて自車両周辺領域Tがカメラ50dの撮影範囲に含まれるように撮影位置を設定する。
次に、位置制御部21fは、設定した撮影位置にヘリコプタ50を移動させる(ステップS110)。具体的には、撮影位置に移動させるための指示を送信する。
【0040】
ヘリコプタ50の飛行制御部50aは、自車両から撮影位置を示す情報を受信すると、自らの機体を撮影位置に移動させるための制御を行う(ステップS115)。撮影位置に到達すると、飛行制御部50aはその位置で機体をホバリングさせる。
次に、画像撮影部50bは、画像を撮影する(ステップS120)。
次に、撮影した画像を自車両に転送する(ステップS125)。
【0041】
画像取得部21gは、ヘリコプタ50から転送された画像データを受信し、図示しないメモリに格納する(ステップS130)。
次に、案内部21hは、図示しないメモリに格納された画像データを表示部45に表示する(ステップS135)。
【0042】
ステップS140では、カメラ50dによる撮影を終了させ、自車両のルーフに戻すための条件が判定される。具体的には、自車両のシフト装置40のポジションがパーキングに切り換わったか否かが判定される。パーキングに切り換わっていない場合は、ステップS110に戻り、パーキングに切り換わっている場合は、自車両Mのヘリコプタ50のルーフの搭載位置に戻るようにヘリコプタ50に指示が送信される(ステップS145)。搭載位置は、自車両の現在位置に基づいて設定される。
【0043】
ヘリコプタ50は自車両Mによる終了指示を受信すると、搭載位置に向かって飛行する(ステップS150)。搭載位置にヘリコプタ50が降り立つと(ステップS155)、駐車支援処理が終了する。
【0044】
このように、ドライバが自車両を駐車場に入場させると、あるいはシフトポジションをリバースに切り換えると、ヘリコプタ50から撮影された俯瞰画像をドライバに案内することができる。その結果ドライバは、駐車場の空きスペースと自車両との位置関係や、運転席からは死角である自車両の後方の地物と当該自車両との位置関係を、俯瞰画像により直感的に把握することができる。
【0045】
また、従来のように自車両に取り付けられたカメラで撮影した画像に視点変換処理を施して俯瞰画像を得る構成と比較すると、視点変換処理に要する制御部の処理負荷を増大させることなく、自車両周辺の俯瞰画像を得ることができる。
さらに、この運転支援システムでは、ヘリコプタ50を自車両の指示に応じて配置し、画像を撮影させ、撮影させた画像を自車両は取得することができるため、すなわち車車間通信のように自車両が制御できない他車両に依存することなく画像を取得できるため、安定的に画像を取得することができる。
【0046】
以上の説明では、ステップS105において設定された撮影位置にて画像を撮影する例を示したが、経過時間や状況に応じて撮影位置を変更してもよい。例えば、駐車場に入場したことが検出されると、まず最初に駐車場全体Tを撮影できる地点qの上方の位置を撮影位置としてヘリコプタ50を配置し、駐車場全体Tが含まれた画像がドライバに案内される。次に、駐車場全体Tが含まれた画像を解析して、空きスペースを検出すると、当該空きスペースの地点qの上方の位置を新たな撮影位置としてヘリコプタ50を移動させ当該空きスペースを含む領域Tの画像を撮影し、ドライバに案内する。所定時間が経過すると、自車両と当該空きスペースとの位置関係をドライバが把握できるように、自車両と空きスペースとの中間地点qの上方を新たな撮影位置としてヘリコプタ50を移動させ、自車両と空きスペースとが含まれる領域Tの画像を撮影してドライバに案内するようにしてもよい。
【0047】
(2−2)交差点支援処理:
次に、交差点支援処理について説明する。交差点支援処理は、上述の駐車支援処理における、ステップS100とステップS105とステップS140における処理内容が異なる以外は、実質的に同一であるであるため、同一ステップの説明は省略する。
【0048】
ステップS100では、位置制御部21fは、ヘリコプタ50を発進させる起動条件を判定する。具体的には、自車両の前方に交差点が存在するか否かおよび、自車両の速度が所定速度以下に減速しているか否かが判定される。交差点が存在し、自車両が所定速度以下に減速している場合、次の2つの条件が判定される。条件1は、当該交差点が見通しが悪い交差点として予め地図情報30aに設定されている交差点であるか否かである。条件2は、カメラ44で撮影された自車両の前方の画像を解析し、自車両の前方に他車両が存在し、かつ当該他車両によって対向車線の画像が遮蔽されているか否かである。
【0049】
ステップS105では、位置制御部21fは、撮影位置を設定する。条件1が成立する場合は、図4Aに示すように自車両の走行する車線と交差する車線の両側(領域TおよびT')が撮影範囲に入る地点qの上方の位置が撮影位置として設定される。具体的には例えば、地図情報30aから取得した当該交差点の緯度経度などの位置情報に基づいて地点qを目標地点とし、交差点の大きさなどに応じて予め決められた高度の位置が撮影位置として設定される。この場合の撮影対象は領域TおよびT'であり、目標地点としての前記地点qとカメラ50dとの位置関係に基づいて領域TおよびT'がカメラ50dの撮影範囲に含まれるように撮影位置を設定する。尚、この場合、地点qにおいて領域TおよびT'が撮影範囲に含まれるように、カメラ50dの画角は調整可能である。カメラ50dは複数台備えられていてもよい。
【0050】
条件2が成立する場合は、図4Bに示すように自車両前方の対向車線の領域Tが撮影範囲に入る地点qの上方の位置が撮影位置として設定される。具体的には例えば、地図情報30aから取得した当該交差点の緯度経度などの位置情報や幅員、車線数などに基づいて地点qを目標地点とし、交差点の大きさなどに応じて予め決められた高度の位置が撮影位置として設定される。この場合の撮影対象は領域Tであり、目標地点としての前記地点qとカメラ50dとの位置関係に基づいて領域Tがカメラ50dの撮影範囲に含まれるように撮影位置を設定する。条件1と条件2が同時に成立する場合は、図4Aに示すように交差点全体T"が撮影範囲に入る地点qの上方の位置が撮影位置として設定されてもよい。尚、ヘリコプタ50を自車両の真上に配置するだけで、カメラの撮影範囲を上下方向や、左右方向に回転させることによって、撮影すべき領域が撮影範囲に含まれるようにしてもよい。
【0051】
ステップS140では、ヘリコプタ50のカメラによる撮影を終了させ、自車両のルーフに戻すための条件が判定される。具体的には例えば、自車両が交差点を通過したか否かが判定される。自車両が交差点を通過する前と後とでは、自車両が走行している路面に対応した前記リンクが変わるため、そのリンクの変化を検出することによって交差点を通過したことを判定する。あるいは、交差点を右左折する場合は、ウィンカーがオン状態からオフ状態に切り換わったことが検出されると、交差点を通過したと判定してもよい。
【0052】
このように、ドライバが見通しの悪い交差点を通過しようとするとき、あるいは前方の大型トラックなどによって見通しが悪化している交差点を通過しようとするときに、ヘリコプタ50から撮影された俯瞰画像をドライバに案内することができる。その結果、ドライバは、対向車の有無や、交差車線の他車両の有無や、歩行者の有無を、俯瞰画像により直感的に把握することができる。尚、自車両の速度が所定速度以下であるときにヘリコプタ50を発進させる構成であるので、自車両が高速に走行中であるときと比較して、ヘリコプタ50を発進させやすい。
【0053】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、自車両に搭載されている画像ユニットの撮影部を自車両の上方に配置し、下方の画像を撮影し、撮影した画像をドライバに案内できる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の実施形態においては、撮影位置の設定が自動的になされる場合の例を説明したが、ドライバの指示を入力するための入力手段を備えて、ドライバが指定した位置を撮影位置として設定できてもよい。また、上記実施形態のステップS100で実施される起動条件の判定を行わず、ヘリコプタ50を発進させるタイミングをユーザが指示してもよい。
【0054】
また、ヘリコプタ50が撮影位置に到着するまでの間であっても画像撮影部50bは画像の撮影を開始してよい。
また、撮影位置は、上記実施形態のようにGPS衛星や地図情報などによって特定される絶対位置としての自車位置および目標地点から指定されるものであってもよいし、例えば、自車両からの角度や距離および高度のように相対位置として指定されるものであってもよい。
【0055】
さらに、駐車支援においては、例えば、検出した空きスペースの位置、自車両の現在位置、地図情報30aに含まれる駐車スペースの位置を示す情報等に基づいて、自車両の現在位置から空きスペースまでの経路を探索し、ヘリコプタ50の先導により、空き駐車スペースまでの経路を誘導してもよい。広大な駐車場である場合、そのような誘導がなされることによってドライバはより容易に空き駐車スペースまで自車両を運転することができる。
【0056】
さらに、自車両が入場した駐車場が立体駐車場であることが、地図情報30aなどから識別できる場合は、上述のような駐車支援処理は行わないようにしてもよいし、立体駐車場の天井までの高さが地図情報30aなどから識別できる場合は、ヘリコプタ50の飛行高度の上限を天井の高さ未満に設定した上で駐車支援処理を実施してもよい。
【0057】
また、交差点支援においては、自車両が右左折する際に、右左折先の車線を横断するための横断歩道を撮影範囲に含んでもよいし、後方から来る二輪車の巻き込みを防止するために、後方の画像も撮影範囲に含んでもよい。
また、見通しの悪い交差点以外にも、例えば、地図情報30aのカーブ情報と自車両の現在位置とに基づいて前方のカーブを検出し、当該カーブに自車両がさしかかる前に、当該カーブを撮影する撮影位置にヘリコプタ50を飛行させて画像を撮影し、ドライバが対向車の有無を把握できるようにしてもよい。追い越し時に自車両の前方の上空に飛行して画像を撮影し、ドライバが対向車の有無を把握できるようにしてもよい。高速道路などの本線に合流することを地図情報30aの合流地点情報と自車両の現在位置とに基づいて検出したときに、当該合流地点情報に含まれる合流地点を撮影する撮影位置にヘリコプター50を飛行させて合流先の車線の後方の画像を撮影し、ドライバが合流先の車線の状況を把握できるようにしてもよい。
【0058】
また、交差点付近の道路の画像を自車両の上方から撮影する以外にも、自車両の周囲に車体の大きな他車両が存在するために、その他車両に遮蔽されて道路状況が把握できない場合に、ヘリコプタ50を発進させてもよい。例えば、大型トラックに追従して走行していると、トラックの前方の状況がわからないため、遠方の信号を考慮した運転ができない。このように前方の他車両に所定距離以下の車間距離で追従して自車両が走行していることをカメラ44や自車両に取り付けられている図示しないレーダ等により検出した場合に、前記他車両の前方を撮影する撮影位置にヘリコプター50を飛行させて、ヘリコプタ50が前方の信号を撮影した画像を、ドライバに案内するようにしてもよい。
【0059】
また、ヘリコプタ50は車車間通信の経由点として利用可能されてもよい。
尚、画像撮影ユニットはヘリコプタのような飛行体であることに限らず、潜水艦の潜望鏡のように、自車両に取り付けられた潜望鏡に相当する部分が伸縮することにより撮影部を自車両の上方に配置し、下方を撮影するような形態であってもよい。画像撮影ユニットが撮影した画像を示す画像データを取得する手段および画像撮影ユニットに位置制御を指示する手段は、有線によって実現されてもよいし、無線通信によって実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】駐車支援装置を含むナビゲーション装置と画像撮影ユニットとを含む運転支援システムのブロック図である。
【図2】駐車支援処理を示すフローチャートである。
【図3】駐車支援処理における、撮影位置と撮影範囲を示す模式図である。
【図4】(4A)および(4B)は交差点支援処理における、撮影位置と撮影範囲を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…ナビゲーションプログラム、21a…シフトポジション取得部、21b…自車位置取得部、21c…地図情報取得部、21d…車速取得部、21e…前方画像取得部、21f…位置制御部、21g…画像取得部、21h…案内部、30…記憶媒体、30a…地図情報、40…シフト装置、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…カメラ、50…ヘリコプタ、50a…飛行制御部、50b…画像撮影部、50c…画像転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、撮像部を備える画像撮影ユニットを当該撮影部とその撮影対象との位置関係に基づいて制御して、前記自車両の上方から前記撮影対象を撮影するための撮影位置に前記撮影部を配置する位置制御手段と、
前記画像撮影ユニットが撮影した画像を取得する画像取得手段と、
前記取得した画像を表示する案内手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記自車両の変速機のシフト装置のポジションを取得するシフトポジション取得手段を備え、
前記位置制御手段は、前記ポジションがリバースに切り換わったことを検出したときに、前記撮影部を前記自車両の上方に配置する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記自車両の現在位置を取得する自車位置取得手段と、
地図情報を取得する地図情報取得手段と、
を備え、
前記位置制御手段は、前記自車両の現在位置と前記地図情報とに基づいて、前記自車両が駐車場に入場したことを検出したときに、前記撮影部を前記自車両の上方に配置する、
請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車両の現在位置を取得する自車位置取得手段と、
地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記自車両の速度を取得する車速取得手段と、
を備え、
前記位置制御手段は、前記自車両の現在位置と前記地図情報とに基づいて前記自車両の前方に見通しの悪い交差点が存在することを検出し、前記自車両が所定速度以下に減速したことを検出したときに、前記撮影部を前記自車両の上方に配置する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記自車両の現在位置を取得する自車位置取得手段と、
地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記自車両の速度を取得する車速取得手段と、
前記自車両の前方の画像を取得する前方画像取得手段と、
を備え、
前記位置制御手段は、前記自車両の現在位置と前記地図情報とに基づいて前記自車両の前方に交差点が存在することを検出し、前記自車両が所定速度以下に減速したことを検出し、前記自車両の前方の画像に基づいて前記自車両の前方に位置する他車両によって対向車線の画像が遮蔽されていると判断したときに、前記撮影部を前記自車両の上方に配置する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記位置制御手段は、前記自車両と、前記地図情報によって特定される目標地点とのいずれかまたは双方の位置に対して予め決められた関係にある前記撮影位置に、前記撮影部を配置する、
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
自車両が出力する位置制御信号によって特定される撮影位置に飛行する飛行制御手段と、
前記撮影位置にて下方の画像を撮影する画像撮影手段と、
前記撮影した画像を前記自車両に転送する画像転送手段と、
を備える画像撮影ユニット。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の運転支援装置と、
請求項7に記載の画像撮影ユニットと、
を備える運転支援システム。
【請求項9】
自車両に搭載され、撮影部を備える画像撮影ユニットを当該撮影部とその撮影対象との位置関係に基づいて制御して、前記自車両の上方から前記撮影対象を撮影するための撮影位置に前記撮影部を配置する位置制御工程と、
前記画像撮影ユニットが撮影した画像を取得する画像取得工程と、
前記取得した画像を表示する案内工程と、
を含む運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−74275(P2008−74275A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256479(P2006−256479)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】