説明

運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラム

【課題】車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる、運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムを提供すること。
【解決手段】運転支援装置60は、車両の走行経路を取得する経路取得部61aと、経路取得部61aが取得した走行経路から車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定部61bと、車両の車速を検出する車速検出部61cと、経路逸脱判定部61bにより車両が走行経路から逸脱したと判定された場合、車速検出部61cが検出した車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御部61dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、案内している走行経路から車両が逸脱した場合に、設定されている目的地までの経路を新たに求めなおして案内を行うナビゲーション装置が用いられている。特に、経路逸脱を想定して逸脱後の誘導経路を予め求めておくことで、経路逸脱時に速やかに次なる誘導を行えるようにした車両誘導装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、修正経路探索手段が経路逸脱後の修正経路を予め求め、逸脱地点や逸脱方向と対応付けて修正経路記憶手段に記憶させている。そして、経路逸脱検出手段が経路の逸脱を検出した場合には、誘導経路変更手段がその逸脱地点や逸脱方向に対する修正経路を修正経路記憶手段から取り出して新たな誘導経路を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−30193号公報(段落0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば高速道路や自動車専用道路等のように、隣接する交差点や分岐間の距離が所定距離以上の道路であって、且つ、一方通行であって対向車線側への進入が禁止されている道路等に対応する種別の道路を走行中に、車両が走行経路を逸脱した場合(例えば、分岐において走行経路とは異なる方向に車両が進行した場合)、特許文献1の如き従来の装置では次の分岐や出口まで前進する旨の走行経路が案内されることとなり、目的地まで大きく迂回をする必要が生じることとなる。その結果、迂回を避けるために運転者が車両をUターンあるいは後退等させ、一方通行の道路を逆走して逸脱前の経路に戻ろうとする可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる、運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の運転支援装置は、車両の走行経路を取得する経路取得手段と、前記経路取得手段が取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定手段と、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記経路逸脱判定手段により前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の運転支援装置は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記案内制御手段は、前記車速検出手段が検出した前記車速の変化と、前記車両が走行する道路の道路種別とに基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する。
【0008】
また、請求項3に記載の運転支援装置は、請求項1又は2に記載の運転支援装置において、前記案内制御手段は、前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に基づき前記車両が減速したと判定した場合、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定する。
【0009】
また、請求項4に記載の運転支援装置は、請求項3に記載の運転支援装置において、前記案内制御手段は、前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に対応する減速度が閾値以上である場合、又は当該車速の変化後に前記車速検出手段が検出した前記車速が閾値未満である場合に、前記車両が減速したと判定する。
【0010】
また、請求項5に記載の運転支援装置は、請求項3又は4に記載の運転支援装置において、前記案内制御手段が前記車両が減速したと判定した場合において、当該減速の要因の有無を判定する減速要因判定手段を備え、前記案内制御手段は、前記減速要因判定手段による判定結果に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する。
【0011】
また、請求項6に記載の運転支援装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置において、前記案内制御手段は、前記車速検出手段が検出した前記走行経路から前記車両が逸脱した位置を基準とする所定範囲内における前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する。
【0012】
また、請求項7に記載の運転支援装置は、車両の走行経路を取得する経路取得手段と、前記経路取得手段が取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定手段と、前記車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記経路逸脱判定手段により前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記加速度検出手段が検出した前記加速度に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御手段と、を備える。
【0013】
また、請求項8に記載の運転支援方法は、車両の走行経路を取得する経路取得ステップと、前記経路取得ステップで取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定ステップと、前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、前記経路逸脱判定ステップで前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記車速検出ステップで検出した前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御ステップと、を含む。
【0014】
また、請求項9に記載の運転支援プログラムは、請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の運転支援装置、請求項8に記載の運転支援方法、及び請求項9に記載の運転支援プログラムによれば、車両が走行経路から逸脱したと判定された場合、車速検出手段が検出した車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0016】
請求項2に記載の運転支援装置によれば、車速検出手段が検出した車速の変化と、車両が走行する道路の道路種別とに基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、例えば高速道路や自動車専用道路等、車両が走行経路を逸脱した場合の修正経路が大きな迂回路となる可能性が高く、運転者が逆走を試みる可能性が生じやすい道路を走行している場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の運転支援装置によれば、車速検出手段が検出した車速の変化に基づき車両が減速したと判定した場合、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定するので、逆走のおそれのある車両の動作を検出した場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0018】
請求項4に記載の運転支援装置によれば、車速検出手段が検出した車速の変化に対応する減速度が閾値以上である場合、又は当該車速の変化後に車速検出手段が検出した車速が閾値未満である場合に、車両が減速したと判定するので、運転者が車両を逆走させようとした場合の車両の動作を検出することができ、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0019】
請求項5に記載の運転支援装置によれば、減速要因判定手段による判定結果に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、減速が車両の逆走のおそれを示す場合にのみ、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0020】
請求項6に記載の運転支援装置によれば、走行経路から車両が逸脱した位置を基準とする所定範囲内における車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、逆走行為の発生頻度が高い範囲等、逆走行為を特に防止すべき範囲内で逆走のおそれがある場合に、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0021】
請求項7に記載の運転支援装置によれば、車両が走行経路から逸脱したと判定された場合、加速度検出手段が検出した加速度に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1に係る運転支援システムを例示するブロック図である。
【図2】案内制御処理のフローチャートである。
【図3】案内制御処理により案内制御が行われる状況を例示した図である。
【図4】案内制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る運転支援装置、運転支援方法、及び運転支援プログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、車両が走行経路から逸脱したか否かを判定し、逸脱したと判定された場合、車両の車速の変化に基づき、当該車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する形態である。
【0025】
(構成)
まず、実施の形態1に係る運転支援システムの構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る運転支援システムを例示するブロック図である。この運転支援システム1は、車速センサ10、現在位置検出処理部20、通信部30、スピーカ40、ディスプレイ50、及び運転支援装置60を備えている。
【0026】
(構成−車速センサ)
車速センサ10は、車軸の回転数に比例する車速パルス信号等を運転支援装置60に出力するものであり、公知の車速センサを用いることができる。また、車速センサ10と共に、又は車速センサ10に代えて、公知の加速度センサ(図示省略)を設けてもよい。
【0027】
(構成−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部20は、運転支援装置60が取り付けられた車両(以下、自車両)の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部20は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0028】
(構成−通信部)
通信部30は、他車両や管制センタ等から送信された情報を受信する通信手段であり、公知の無線通信装置を用いることができる。
【0029】
(構成−スピーカ)
スピーカ40は、運転支援装置60の制御に基づいて各種の音声を出力する出力手段である。スピーカ40より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0030】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ50は、運転支援装置60の制御に基づいて各種の画像を表示する表示手段である。なお、このディスプレイ50の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0031】
(構成−運転支援装置)
運転支援装置60は、運転支援を行う運転支援手段であり、制御部61及びデータ記録部62を備えている。
【0032】
(構成−運転支援装置−制御部)
制御部61は、運転支援装置60を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、実施の形態1に係る運転支援プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して運転支援装置60にインストールされることで、制御部61の各部を実質的に構成する。
【0033】
この制御部61は、機能概念的に、経路取得部61a、経路逸脱判定部61b、車速検出部61c、案内制御部61d、及び減速要因判定部61eを備えている。
【0034】
経路取得部61aは、車両の走行経路を取得する経路取得手段である。経路逸脱判定部61bは、経路取得部61aが取得した走行経路から車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定手段である。車速検出部61cは、車速センサ10からの入力に基づき車両の車速を検出する車速検出手段である。案内制御部61dは、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御手段である。減速要因判定部61eは、車両の減速の要因の有無を判定する減速要因判定手段である。これらの制御部61の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0035】
(構成−運転支援装置−データ記録部)
データ記録部62は、運転支援装置60の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0036】
このデータ記録部62は、地図情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)62aを備えている。地図情報DB62aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えばリンクデータ(リンク番号、接続ノード番号、道路座標、道路種別、車線数、走行規制(制限速度、Uターン禁止、一方通行等)等)、ノードデータ(ノード番号、座標)、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、建物等)、地形データ、地図をディスプレイ50に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。
【0037】
(処理)
次に、このように構成される運転支援システム1によって実行される案内制御処理について説明する。図2は案内制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この処理は、例えば公知のナビゲーション装置(図示省略)により経路案内が実行されている間、所定の周期で繰り返し起動される。また、図3は案内制御処理により案内制御が行われる状況を例示した図である。図3に示したように、高速道路の出口方向に進む走行経路が設定されている場合において、当該高速道路の出口に車両が接近した場合(図3におけるA地点)、ナビゲーション装置によって例えば「左方向です」等の経路案内が出力される。
【0038】
図2において、案内制御処理の起動後、案内制御部61dは、現在位置検出処理部20から入力された現在位置情報に基づき、車両の現在位置を取得する(SA1)。続いて、経路取得部61aは車両の走行経路を取得する(SA2)。例えば、経路取得部61aは、予め設定されている目的地までの走行経路をナビゲーション装置を介して取得する。
【0039】
続いて、経路逸脱判定部61bは、SA1で取得した車両の現在位置とSA2で取得した走行経路とに基づき、走行経路から車両が逸脱したか否かを判定する(SA3)。例えば、経路逸脱判定部61bは、車両の現在位置が走行経路を構成するリンク列上にない場合に、走行経路から車両が逸脱したと判定する。
【0040】
あるいは、カメラ(図示省略)で撮影した車両周辺の映像に基づき、車両が何れの道路を走行しているのかを特定し、走行経路から車両が逸脱したか否かを判定してもよい。例えば、図3に示すように高速道路の出口に進入する走行経路が設定されている場合において、車両が当該走行経路の通りに高速道路の出口車線に進入した場合には、高速道路の本線と出口車線との間に設けられているいわゆるゼブラゾーンの左側を車両が通過する。一方、車両が走行経路を逸脱して高速道路の本線を走行し続けた場合には、ゼブラゾーンの右側を車両が通過することとなる(図3におけるB地点)。従って、カメラにより車両の右側においてゼブラゾーンが撮影された場合には、車両が当該ゼブラゾーンの左側、すなわち高速道路の出口車線を車両が走行しているものとし、経路逸脱判定部61bは走行経路から車両が逸脱していないと判定する。一方、車両の左側においてゼブラゾーンが撮影された場合には、車両が当該ゼブラゾーンの右側、すなわち高速道路の本線を車両が走行しているものとし、経路逸脱判定部61bは走行経路から車両が逸脱したと判定する。
【0041】
図2に戻り、SA3の判定の結果、走行経路から車両が逸脱していないと判定した場合(SA3、No)、案内制御部61dは車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、案内制御処理を終了する。
【0042】
一方、走行経路から車両が逸脱したと判定した場合(SA3、Yes)、車速検出部61cは、車速センサ10から入力された信号に基づき車両の車速の変化を検出する(SA4)。あるいは、加速度センサ(図示省略)を用いて車速の変化を検出してもよい。なお、「車速の変化」として、走行経路からの逸脱前後間における車速の絶対値の差を検出してもよく、あるいは車両の加速度を直接的に検出してもよい。
【0043】
続いて案内制御部61dは、SA9で車速検出部61cが検出した車速の変化に対応する減速度が閾値以上か否かを判定する(SA5)。例えば、車速検出部61cが検出した車速の変化と当該変化に要した時間とに基づいて減速度を求めることができる。また、閾値の具体的な値は任意で、例えば急ブレーキ時の減速度に相当する値を用いることができる。
【0044】
SA5の判定の結果、減速度が閾値以上であった場合(SA5、Yes)、フラグ値Frを1としてRAMに記憶させる(SA6)。一方、減速度が閾値未満であった場合(SA5、No)、案内制御部61dは車速の変化後に車速検出部61cが検出した車速が第2閾値未満か否かを判定する(SA7)。ここで、第2閾値としては、例えば車両が停止する可能性が極めて高いと考えられる程度に低い車速が設定される。
【0045】
SA7の判定の結果、車速が第2閾値未満であった場合(SA7、Yes)、フラグ値Frを1としてRAMに記憶させる(SA6)。一方、車速が第2閾値未満ではなかった場合、すなわち車速が第2閾値以上であった場合(SA7、No)、案内制御部61dは車速の変化後に車速検出部61cが検出した車速が第1閾値未満であるか否かを判定する(SA8)。ここで、第1閾値としては、第2閾値よりも高い車速であって、例えば高速道路における最低速度等、周囲の他車両の車速と比較して低い車速が設定される。
【0046】
SA8の判定の結果、車速が第1閾値未満であった場合(SA8、Yes)、フラグ値Frを2としてRAMに記憶させる(SA9)。一方、車速が第1閾値未満ではなかった場合、すなわち車速が第1閾値以上であった場合(SA8、No)、逆走のおそれのある車両の動作は見出せないことから、逆走の可能性はないものとし、案内制御部61dは車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、走行経路から逸脱後の修正経路について通常の経路案内を行った後(SA10)、案内制御処理を終了する。
【0047】
SA6又はSA9の処理の後、案内制御部61dは、SA1で取得した車両の現在位置に基づき、車両が走行している道路の種別を取得する(SA11)。そして、当該特定した種別に基づき、車両が走行している道路が案内制御の対象となる道路であるか否かを判定する(SA12)。ここで、案内制御の対象となる道路としては、例えば高速道路や自動車専用道路(ランプウェイも含む)等のように、隣接する交差点や分岐間の距離が所定距離以上の道路であって、且つ、一方通行であって中央分離帯により対向車線が分離されている道路あるいはUターンによる対向車線側への進入が禁止されている道路等に対応する種別の道路が挙げられる。このような道路では、車両が走行経路を逸脱した場合の修正経路が大きな迂回路となる可能性が高く、運転者が逆走を試みる可能性が生じやすいからである。
【0048】
SA12の判定の結果、案内制御の対象となる道路でない場合には(SA12、No)、車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、フラグ値Frを0にリセットした後(SA19)、案内制御部61dは案内制御処理を終了する。
【0049】
一方、SA12の判定の結果、案内制御の対象となる道路である場合には(SA12、Yes)、減速要因判定部61eは減速要因の確認を行う(SA13)。ここで、「減速要因」とは、車両を減速させる要因であって、例えば車両の前方における渋滞や障害物、あるいは道路の合流地点における自車両前方への他車両の合流等が挙げられる。これらの減速要因の確認方法は任意で、例えば減速要因判定部61eは、通信部30を介して渋滞情報を取得し、当該渋滞情報に基づき車両前方における渋滞の有無を確認する。あるいは、カメラで撮影した車両前方の映像に基づき、車両前方における渋滞や障害物の有無、あるいは他車両の合流等を確認する。
【0050】
SA13で行った減速要因の確認に基づき、減速要因判定部61eは減速要因の有無を判定する(SA14)。その結果、減速要因が無いと判定しなかった場合(減速要因があると判定した場合)(SA14、No)、車両が減速したとしてもそれは当該車両の逆走のおそれを示すものではないことから、案内制御部61dは車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、フラグ値Frを0にリセットした後(SA19)、案内制御処理を終了する。
【0051】
一方、減速要因が無いと判定した場合(SA14、Yes)、案内制御部61dは車両の現在位置が走行経路から逸脱した位置を基準とする所定範囲内か否かを判定する(SA15)。この判定の基準となる所定範囲は任意で、逆走行為を起こしやすい範囲、例えば、統計的に逆走行為の発生頻度が高い範囲(例えば、高速道路のインターチェンジの出口やサービスエリアの入口等における分岐地点から、インターチェンジの入口やサービスエリアの出口等における合流地点までの範囲)を基準として判定する。
【0052】
その結果、車両の現在位置が走行経路から逸脱した位置を基準とする所定範囲内ではない場合(SA15、No)、案内制御部61dは車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、フラグ値Frを0にリセットした後(SA19)、案内制御処理を終了する。
【0053】
一方、車両の現在位置が走行経路から逸脱した位置を基準とする所定範囲内であると判定した場合(SA15、Yes)、案内制御部61dはフラグ値Frが1か否かを判定する(SA16)。その結果、フラグ値Frが1であった場合には(SA16、Yes)、運転者が経路逸脱に気付いたことにより元の走行経路に戻ろうと急激なブレーキ操作を行った結果減速度が閾値以上となった可能性や、運転者が経路逸脱に気付いたことにより車両を停止させ元の走行経路に戻ろうとした結果車速が第2閾値未満となった可能性が考えられることから、案内制御部61dは車両を減速させて逆走を行う意図があるものとし、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定し、逆走を禁止する旨の警告をスピーカ40及びディスプレイ50から出力させる(SA17)。この場合、警告の具体的な内容は任意であるが、例えば「逆走行為は危険です!」等の直接的な警告を出力させる。図3の例では、高速道路の出口を通過した後(図3におけるC地点)に運転者が経路逸脱に気付き車両を急減速させた場合や、車両を停止させようと第2閾値未満まで減速させた場合に、SA17の警告が出力される。
【0054】
図2に戻り、SA16の判定の結果フラグ値Frが1でなかった場合(Frが2であった場合)(SA16、No)、運転者が経路逸脱に気付いたことにより元の走行経路に戻ろうと車両を減速させた結果車速が第2閾値以上第1閾値未満となった可能性が考えられることから、案内制御部61dは車両を減速させて逆走を行う可能性があるものとし、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定し、逆走を禁止する旨の案内をスピーカ40及びディスプレイ50から出力させる(SA18)。この場合、案内の具体的な内容は任意であるが、例えば「次のインターチェンジまで行きましょう」等、逆走させないための間接的なメッセージを出力させる。図3の例では、高速道路の出口を通過した後(図3におけるC地点)に運転者が経路逸脱に気付き、第1閾値未満まで車両を減速させた場合に、SA18の案内が出力される。
【0055】
図2のSA17又はSA18の処理の後、案内制御部61dはフラグ値Frを0にリセットし(SA19)、案内制御処理を終了する。
【0056】
(効果)
このように実施の形態1によれば、車両が走行経路から逸脱したと判定された場合、車速検出部61cが検出した車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0057】
また、車速検出部61cが検出した車速の変化と、車両が走行する道路の道路種別とに基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、例えば高速道路や自動車専用道路等、車両が走行経路を逸脱した場合の修正経路が大きな迂回路となる可能性が高く、運転者が逆走を試みる可能性が生じやすい道路を走行している場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0058】
また、車速検出部61cが検出した車速の変化に基づき車両が減速したと判定した場合、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定するので、逆走のおそれのある車両の動作を検出した場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0059】
特に、車速検出部61cが検出した車速の変化に対応する減速度が閾値以上である場合、又は当該車速の変化後に車速検出部61cが検出した車速が閾値未満である場合に、車両が減速したと判定するので、運転者が車両を逆走させようとした場合の車両の動作を検出することができ、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0060】
また、減速要因判定部61eによる判定結果に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、減速が車両の逆走のおそれを示す場合にのみ、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0061】
また、走行経路から車両が逸脱した位置を基準とする所定範囲内における車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、逆走行為の発生頻度が高い範囲等、逆走行為を特に防止すべき範囲内で逆走のおそれがある場合に、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0062】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、車速の変化と道路種別とに基づき、逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0063】
(構成)
まず、実施の形態2に係る運転支援システム1の構成を説明する。この運転支援システム1は、実施の形態1に係る運転支援システム1とほぼ同様に構成することができるが、運転支援装置60が経路取得部61a及び経路逸脱判定部61bを備えていない点で異なる。
【0064】
(処理)
次に、このように構成される運転支援システム1によって実行される案内制御処理について説明する。図4は案内制御処理のフローチャートである。ただし、SB1は図2のSA1と同じであり、SB2からSB12は図2のSA4からSA14と同じであり、SB14からSB17は図2のSA16からSA19と同じであるため、その説明を省略する。
【0065】
SB12で減速要因が無いと判定した場合(SB12、Yes)、案内制御部61dは車両の現在位置が予め定められた所定の位置を基準とする所定範囲内か否かを判定する(SB13)。ここで、予め定められた所定の位置としては、例えば高速道路のインターチェンジやサービスエリアの入口等における分岐地点等、運転者が車両を進行させる道路を間違える可能性がある地点が設定される。また、この判定の基準となる所定範囲は任意で、実施の形態1の場合と同様に、例えば統計的に逆走行為の発生頻度が高く特に逆走行為を防止すべき範囲を基準として判定する。
【0066】
その結果、車両の現在位置が予め定められた所定の位置を基準とする所定範囲内ではない場合(SB13、No)、案内制御部61dは車両の逆走を禁止する旨の案内を行わないものとし、フラグ値Frを0にリセットした後(SB17)、案内制御処理を終了する。
【0067】
一方、車両の現在位置が予め定められた所定の位置を基準とする所定範囲内であると判定した場合(SB13、Yes)、案内制御部61dはフラグ値Frが1か否かを判定する(SB14)。
【0068】
(効果)
このように実施の形態2によれば、運転支援装置60は、車両の車速を検出する車速検出部61cと、車速検出部61cが検出した車速の変化と車両が走行する道路の道路種別とに基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御部61dとを備える。従って、例えば高速道路や自動車専用道路等、車両が走行経路を逸脱した場合の修正経路が大きな迂回路となる可能性が高く、運転者が逆走を試みる可能性が生じやすい道路を走行している場合であって、車速の変化に基づき車両が逆走するおそれが有る場合に逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0069】
特に、所定位置を基準とする所定範囲内において車速検出部61cが検出した車速の変化に基づき、車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定するので、逆走行為の発生頻度が高い範囲等、逆走行為を特に防止すべき範囲内で逆走のおそれがある場合に、逆走を禁止する旨の案内を行うことができる。
【0070】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0071】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0072】
(実施の形態の相互の関係について)
実施の形態1、2の相互間においては、その構成や処理の一部を相互に組み合わせたり、一方の構成や処理を他方に適用することもできる。例えば、実施の形態1の運転支援装置60と実施の形態2の運転支援装置60とを組み合わせて、ナビゲーション装置により経路案内が実行されている間は実施の形態1における案内制御処理を実行し、経路案内が実行されていない間は実施の形態2における案内制御処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 運転支援システム
10 車速センサ
20 現在位置検出処理部
30 通信部
40 スピーカ
50 ディスプレイ
60 運転支援装置
61 制御部
61a 経路取得部
61b 経路逸脱判定部
61c 車速検出部
61d 案内制御部
61e 減速要因判定部
62 データ記録部
62a 地図情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行経路を取得する経路取得手段と、
前記経路取得手段が取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記経路逸脱判定手段により前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記案内制御手段は、
前記車速検出手段が検出した前記車速の変化と、前記車両が走行する道路の道路種別とに基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記案内制御手段は、
前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に基づき前記車両が減速したと判定した場合、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うと決定する、
請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記案内制御手段は、
前記車速検出手段が検出した前記車速の変化に対応する減速度が閾値以上である場合、又は当該車速の変化後に前記車速検出手段が検出した前記車速が閾値未満である場合に、前記車両が減速したと判定する、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記案内制御手段が前記車両が減速したと判定した場合において、当該減速の要因の有無を判定する減速要因判定手段を備え、
前記案内制御手段は、
前記減速要因判定手段による判定結果に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する、
請求項3又は4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記案内制御手段は、
前記車速検出手段が検出した前記走行経路から前記車両が逸脱した位置を基準とする所定範囲内における前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
車両の走行経路を取得する経路取得手段と、
前記経路取得手段が取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定手段と、
前記車両の加速度を検出する加速度検出手段と、
前記経路逸脱判定手段により前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記加速度検出手段が検出した前記加速度に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項8】
車両の走行経路を取得する経路取得ステップと、
前記経路取得ステップで取得した走行経路から前記車両が逸脱したか否かを判定する経路逸脱判定ステップと、
前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、
前記経路逸脱判定ステップで前記車両が前記走行経路から逸脱したと判定された場合、前記車速検出ステップで検出した前記車速の変化に基づき、前記車両の逆走を禁止する旨の案内を行うか否かを決定する案内制御ステップと、
を含む運転支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させる運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−44109(P2011−44109A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193467(P2009−193467)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】