運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム
【課題】現在の状況に適合した適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることを可能とした運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】自車両が交差点に所定距離まで接近した場合であって、その交差点に他車両が接近する場合には、自車両及び他車両の交差点の通過形態と交差点への進入タイミングをそれぞれ取得し、取得した各情報と音像定位パターン選択テーブルとに基づいて他車両を案内する案内音声を定位させる方向を選択し、選択された方向に音像を定位させるようにスピーカ16A〜16Dを制御するように構成する。
【解決手段】自車両が交差点に所定距離まで接近した場合であって、その交差点に他車両が接近する場合には、自車両及び他車両の交差点の通過形態と交差点への進入タイミングをそれぞれ取得し、取得した各情報と音像定位パターン選択テーブルとに基づいて他車両を案内する案内音声を定位させる方向を選択し、選択された方向に音像を定位させるようにスピーカ16A〜16Dを制御するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行の案内を行う運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーションシステムの普及にともなって、車両の周辺の状況を車室内の表示装置に表示したり、障害物の接近を音で警告する運転支援システムを搭載する車両が増加している。このようなシステムによれば、運転者の死角方向から接近する障害物等の運転中の運転者が把握し難い障害物を運転者に事前に把握させ、安全に走行させることが可能となる。
【0003】
例えば、特開2006−11516号公報には、車両の周囲環境をカメラで撮像し、撮像した画像に対して所定の画像処理を施すことによって障害物を検出し、検出した障害物の位置を音声によって案内する技術が記載されている。
また、このような運転支援システムを用いることにより、特に車両が交差点を通過する際において交差点に進入する他車両を案内することが行われていた。即ち、交差点においては、複数の方向から車両が交差点へと進入する。従って、運転者は交差点を通過する場合に他車両が進入する可能性のある全ての方向を視認し、他車両に対して注意を払う必要があるが、他車両の進入に気付くのが遅れてしまう場合もあった。また、交差点では死角が形成されていることも多いので、死角方向から他車両が進入する場合には、運転者が他車両の進入に気付かない場合もあった。そこで、交差点を通過する際に自車周辺の他車両を案内することにより、他車両の接近を運転者に把握させ、他車両との接触を回避させることが可能となる。
【特許文献1】特開2006−11516号公報(第11頁〜第12頁、図11、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、運転者に対して検出した障害物の方向に音像を定位させる。しかし、自車両や他車両の交差点の通過形態や進入のタイミングについては考慮されていなかった。
【0005】
ここで、交差点の通過形態によっては、交差点へと同じタイミングで進入する場合であっても、自車両と接触する虞がない他車両も存在する。例えば、図7に示すように自車両が交差点を右折して通過する場合であって、且つ自車両の左方向から交差点に進入した他車両が左折して通過する場合には、自車両と他車両とは接触する虞が無い。しかしながら、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、そのような他車両についても通過形態に関わらず一律に案内を行っていた。従って、不要な案内が行われることによって、逆に運転者の注意力を低下させる原因となっていた。
【0006】
また、自車両と他車両がともに交差点を通過する状況では、(a)自車両より他車両が先に交差点に進入する場合、(b)自車両と他車両が同時に交差点に進入する場合、(c)他車両が自車両より先に交差点に進入する場合があり、それぞれの場合において自車両の運転者は注意すべき内容が異なる。しかしながら、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、進入タイミングに関わらず一律に同じ内容の案内を行っていた。
従って、交差点を車両が通過する場合においては、特許文献1に記載された運転支援装置のように常に同一内容で他車両の案内を行うのではなく、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが望まれていた。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることを可能とした運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る運転支援装置(1)は、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得手段(13)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得手段(13)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得手段(13)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得手段(13)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
ここで、「交差点の通過形態」とは、車両の交差点への進入方向、並びに交差点からの退出方向を少なくとも含む。
【0009】
また、請求項2に係る運転支援装置(1)は、請求項1に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、前記交差点における自車両の通過形態と他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が接触の虞があるか否か判定する接触判定手段(13)を備え、前記接触判定手段によって自車両と他車両が接触の虞があると判定した場合に案内を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る運転支援装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、他車両の位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る運転支援装置(1)は、請求項3に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段(13)を備え、前記比較手段によって他車両が自車両よりも早いタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る運転支援装置(1)は、請求項3に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段(13)を備え、前記比較手段によって他車両が自車両と同一のタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る運転支援方法は、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得ステップ(S1)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得ステップ(S1)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得ステップ(S1)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得ステップ(S1)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内ステップ(S9)と、を有することを特徴とする。
【0014】
更に、請求項7に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得機能(S1)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得機能(S1)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得機能(S1)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得機能(S1)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内機能(S9)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両と他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【0016】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、自車両と接触の虞があると判定された他車両についてのみ案内対象とするので、不要な案内を行うことによって、運転者の注意力を低下させることがない。
【0017】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、交差点における自車両と他車両の通過形態と進入のタイミングに応じて他車両の位置する方向に音像を定位させるので、スピーカからの音出力に応じて他車両の位置する方向を運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0018】
また、請求項4に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両より他車両が先に交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、交差点における他車両の自車両に対する位置変化を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0019】
また、請求項5に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両と他車両が同一のタイミングで交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、自車両と同一のタイミングで交差点に進入する他車両の自車に対する接近方向を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0020】
また、請求項6に記載の運転支援方法によれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【0021】
更に、請求項7に記載のコンピュータプログラムによれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮してコンピュータに他車両の案内を行わせることにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る運転支援装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を備えた複数の車両2によって構成される車車間通信システム3の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車車間通信システム3の概略構成図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る車車間通信システム3は、駐車場に位置する複数の車両2によって構成され、各車両2に設置されたナビゲーション装置1が備える通信装置4によって複数の車両2の間で相互に情報通信が可能となっている。
【0024】
ここで、通信装置4は、例えばミリ波帯の電波による無線方式で情報を通信する通信装置である。そして、自車両位置に対して予め定められた無線通信可能範囲(例えば、自車両位置を中心とした半径2kmまでの範囲)に位置する他車両(駐車車両、後続車両、前方車両、対向車両等)との間で、無線による情報の通信を行うことが可能となっている。
また、通信装置4によって車両間で送受信される情報としては、後述するように進行方向前方にある交差点の通過形態やその交差点への進入のタイミング等に関する情報がある。尚、交差点の通過形態とは、車両の交差点への進入方向、並びに交差点からの退出方向を少なくとも含む。
【0025】
尚、車車間通信システム3における車両2の間の通信では、直接に車両2の間で情報を送受信することの他に、路上機(図示せず)などの通信施設を介して情報を送受信することも可能である。
【0026】
次に、上記車車間通信システム3を構成する車両2に設置されたナビゲーション装置1の概略構成について図2及び図3を用いて説明する。図2は本実施形態に係るナビゲーション装置1を搭載した車両2の外観図、図3は本実施形態に係るナビゲーション装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、前記した通信装置4に加えて、自車の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(自車両通過形態取得手段、他車両通過形態取得手段、自車両進入タイミング取得手段、他車両進入タイミング取得手段、案内手段、接触判定手段、比較手段)13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16A〜16Dと、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、から構成されている。また、ナビゲーションECU13にはCAN(Controller Area Network)等の車内LANを介してウィンカーランプ制御ECU18が接続される。
【0028】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、地磁気センサ22、車速センサ23、ステアリングセンサ24、ジャイロセンサ25等からなり、現在の自車の位置、方位、自車の走行速度等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ23は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0029】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0030】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ33、ノード点に関するノードデータ34、施設に関する施設データ35、経路を探索するための探索データ、各交差点に関する交差点データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。
【0031】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、公知のダイクストラ法を用いて目的地への案内経路を探索する経路探索処理、設定された案内経路に従って走行を案内する走行案内処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、ナビゲーション装置1の備える各種装置の制御用のプログラムを記録するROM43、ROM43から読み出したプログラムのほか、運転支援処理プログラム(図5)や音像定位パターン選択テーブル(図6)等を記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0032】
操作部14は、案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、操作部14は案内開始地点としての出発地の入力にも用いられる場合がある。
【0033】
また、液晶ディスプレイ15には、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0034】
また、スピーカ16A〜16Dは、具体的にナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスを出力する。ここで、出力される音声ガイダンスとしては、例えば、「300m先の○○交差点を右方向です。」等がある。また、特に本実施形態に係るナビゲーション装置1では、自車両が交差点を通過する際に自車両と接触する虞のある他車両がある場合には、所定の案内音声を出力することにより交差点に進入する他車両を案内する。
【0035】
また、図2及び図4に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1を備える車両の車両内には、運転席45(即ち、運転席45に着座する運転者46)に対してそれぞれ異なる方位に4つのスピーカ16A〜16Dが配置される。図4は運転席45とスピーカ16A〜16Dとの位置関係を示した模式図である。
【0036】
ここで、右前スピーカ16Aは、車両2の室内のセンターコンソールの右側に備え付けられ、運転席45に対して右前方に位置する。また、右後スピーカ16Bは、車両2の室内の右後方のバックピラー付近に備え付けられ、運転席45に対して右後方に位置する。また、左前スピーカ16Cは、車両2の室内のセンターコンソールの左側に備え付けられ、運転席45に対して左前方に位置する。また、左後スピーカ16Dは、車両2の室内の左後方のバックピラー付近に備え付けられ、運転席45に対して左後方に位置する。そして、ナビゲーションECU13は、後述のように運転席45からの方位がそれぞれ上記のように異なる各スピーカ16A〜16Dの出力を制御することにより、運転席45に対して異なる方位に上述した案内音声に関する音像を定位させる。
【0037】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB31の更新等が行われる。
【0038】
また、通信装置4は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為にも用いられる。
【0039】
また、ウィンカーランプ制御ECU18は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、ウィンカーランプ51A〜54D(図2参照)の点灯制御を行う電子制御ユニットである。そして、ナビゲーションECU13はウィンカーランプ制御ECU18から送信される制御信号に基づいて現在のウィンカーランプ51A〜51Dの点灯状態を検出する。
【0040】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する運転支援処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る運転支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、運転支援処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、交差点を通過する際に他車両の案内を行うプログラムである。尚、以下の図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0041】
先ず、運転支援処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41はナビ情報を取得する。ここで、前記S1で取得されるナビ情報としては、例えば自車両の現在位置や自車方位に関する現在地情報、自車両が現在走行する道路の車線数、幅員、道路種別に関する道路情報等がある。尚、自車の現在位置や自車方位は、現在位置検出部11の検出結果に基づいて取得される。また、取得した自車の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。一方、道路情報は、自車両の現在位置に基づいて地図情報DB31から取得される。
【0042】
次に、S2においてCPU41は、前記S1で取得した現在地情報と地図情報DB31に記憶された地図情報に基づいて、自車両の進行方向前方の所定距離(例えば100m)以内に交差点があるか否か判定する。そして、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。一方、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点が無いと判定された場合(S2:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了する。
【0043】
S3においてCPU41は、自車両の進行方向前方にある交差点に関する情報を地図情報DB31から取得する。具体的には、交差点に接続する各道路の車線数、幅員等に関する情報である。
【0044】
続いて、S4においてCPU41は、自車両の進行方向前方にある交差点の通過形態と、その交差点への進入のタイミングを取得する。
【0045】
以下に、先ず前記S4における自車両の交差点の通過形態の取得方法について詳細に説明する。自車両の交差点の通過形態は下記の(1)又は(2)のいずれかの方法により取得される。
(1)ナビゲーション装置1において案内経路が設定されている場合には、設定されている案内経路に従って自車両が走行すると仮定し、交差点の通過形態を特定する。尚、案内経路は、ナビゲーション装置1によって出発地(例えば自車の現在位置)からユーザに選択された目的地までの経路探索処理の結果に基づいて設定される。また、経路探索処理は、地図情報DB31に記憶されたリンクデータやノードデータ、交通情報等が用いられ、公知のダイクストラ法等により行われる。
(2)案内経路が設定されていない場合には、自車両の現在位置、方位から自車両が現在走行する道路や交差点への進入方向を特定する。また、ウィンカーランプ制御ECU18から送信される信号に基づいてウィンカーランプ51A〜51Dの点灯状態を取得し、自車両が直進、右折、左折のいずれの態様により交差点を通過するのかを特定する。更に、交差点に接続する道路の車線情報を用いることによって交差点の通過形態をより具体的に特定する。
【0046】
次に、前記S4における自車両の交差点への進入のタイミングの取得方法について詳細に説明する。自車両の交差点への進入のタイミングは下記の(1)〜(3)の処理を行うことにより取得される。
(1)車速センサ23により自車両の車速を取得する。
(2)次に、GPS21により検出した自車位置と、地図情報に基づいて自車両の現在位置から交差点までの距離を算出する。
(3)自車両の車速と自車両の現在位置から交差点までの距離とに基づいて、交差点に進入するまでの所要時間を算出する。
尚、上記S4が自車両通過形態取得手段及び自車両進入タイミング取得手段の処理に相当する。
【0047】
次に、S5においてCPU41は、自車周辺の車両との間で前記した車車間通信システム3により車車間通信を行うことにより、自車の進行方向前方にある交差点から所定距離(例えば300m)以内に、その交差点に接近する他車両があるか否か判定する。具体的には、他車両から送信された他車両の現在位置と方位とに基づいてCPU41が判定する。
【0048】
そして、交差点へと所定距離以内に接近する他車両があると判定された場合(S5:YES)には、S6へと移行する。一方、交差点へと所定距離以内に接近する他車両が無いと判定された場合(S5:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了する。
【0049】
S6においてCPU41は、前記S5において交差点に所定距離以内に接近していると判定された他車両の交差点の通過形態と、その交差点への進入のタイミングを取得する。
【0050】
以下に、先ず前記S6における他車両の交差点の通過形態の取得方法について詳細に説明する。他車両の交差点の通過形態は下記の(1)又は(2)のいずれかの方法により取得される。
(1)他車両の備えるナビゲーション装置において設定されている案内経路を車車間通信により取得する。そして、案内経路に従って他車両が走行すると仮定し、交差点の通過形態を特定する。
(2)他車両の現在位置、方位、ウィンカーランプの点灯状態について車車間通信により取得する。そして、他車両の現在位置、方位から他車両が現在走行する道路や交差点への進入方向を特定する。また、ウィンカーランプの点灯状態から他車両が直進、右折、左折のいずれの態様により交差点を通過するのかを特定する。更に、交差点に接続する道路の車線情報を用いることによって交差点の通過形態をより具体的に特定する。
また、前記S6で取得した他車の通過形態は、自車位置と地図情報に基づいて自車両から見た交差点における他車両の通過形態へと変更する。
【0051】
次に、前記S6における他車両の交差点への進入のタイミングの取得方法について詳細に説明する。他車両の交差点への進入のタイミングは下記の(1)〜(3)の処理を行うことにより取得される。
(1)他車両の現在位置、方位、車速について車車間通信により取得する。
(2)次に、他車両の現在位置と、地図情報に基づいて他車両の現在位置から交差点までの距離を算出する。
(3)他車両の車速と他車両の現在位置から交差点までの距離とに基づいて、交差点に進入するまでの所要時間を算出する。
尚、上記S6が他車両通過形態取得手段及び他車両進入タイミング取得手段の処理に相当する。
【0052】
その後、S7においてCPU41は、前記S4で取得した交差点における自車両の通過形態と前記S6で取得した自車両から見た交差点における他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が正面衝突、出会い頭衝突、追突衝突等による接触の虞があるか否か判定する。具体的には、ROM43又はフラッシュメモリ44に記憶されている音像定位パターン選択テーブルを参照し、交差点における自車両の通過形態と交差点における他車両の通過形態との組合せが、音像パターンが設定されている組合せである場合に、自車両と他車両が接触の虞があると判定する。一方、交差点における自車両の通過形態と交差点における他車両の通過形態との組合せが、音像パターンが設定されていない組合せである場合に、自車両と他車両が接触の虞がないと判定する。
【0053】
ここで、前記S7において自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合と、自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合についてそれぞれ具体例を挙げて説明する。尚、図6は音像定位パターン選択テーブルの一例を示した図である。また、図6では自車両が右折することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルを示す。
例えば、図7には自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合の一例を示す。図7に示す例では、自車両61と他車両62が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点63へと接近する場合であって、自車両61の交差点63の通過形態が『右折して交差点を通過』であり、他車両62の交差点63の通過形態が『自車両の左方向から進入し、左折して自車両の前方へ通過』である。そして、図7に示す各車両の通過形態の組合せは全ての進入タイミングにおいて図6に示す音像パターン選択テーブルで音像パターンが設定されていない組合せである。
一方、図8には自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合の一例を示す。図8に示す例では、図7と同じく自車両61と他車両62が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点63へと接近する場合であって、自車両61の交差点63の通過形態が『右折して交差点を通過』であり、他車両62の交差点63の通過形態が『自車両の左方向から進入し、自車両の右方向へと直進して通過』である。そして、図8に示す各車両の通過形態の組合せは全ての進入タイミングにおいて図6に示す音像パターン選択テーブルで音像パターンが設定されている組合せである。
【0054】
そして、前記S7の判定の結果、自車両と他車両が接触の虞があると判定された場合(S7:YES)には、S8へと移行する。一方、前記S7の判定の結果、自車両と他車両が接触の虞がないと判定された場合(S7:NO)には、他車両についての案内を行うことなく当該運転支援処理プログラムを終了する。尚、上記S7が接触判定手段の処理に相当する。
【0055】
S8においてCPU41は、前記S4で取得した自車両の交差点の通過形態及びその交差点への進入のタイミングと、前記S6で取得した他車両の交差点の通過形態及びその交差点への進入のタイミングとに基づいて、他車両を案内する案内音声の音像を定位させる定位パターン(即ち、音像を定位させる方向)を選択する。より具体的には、自車両の交差点への進入のタイミングと他車両の交差点への進入のタイミングとを比較し、その比較結果と各車両の通過形態と上述の音像定位パターン選択テーブルとを用いて選択する。また、上記S8が比較手段の処理に相当する。
【0056】
以下に、上記S8の処理について具体例を挙げて説明する。
図6に示すように音像定位パターン選択テーブルは、自車両の交差点の通過形態と、自車両から見た他車両の交差点の通過形態と、自車両の交差点への進入のタイミングと他車両の交差点への進入のタイミングとの比較結果と、それらの各条件の組合せに対応する音像の定位パターンとから構成されている。
例えば、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『他車両が自車両よりも速いタイミングで交差点に進入』する場合には、先ず運転席45の『左方向』に音像を定位させ、その後に運転席45の『右方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
また、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『他車両と自車両とが同じタイミングで交差点に進入』する場合には、先ず運転席45の『左方向』に音像を定位させ、その後に運転席45の『全方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
また、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『自車両が他車両よりも速いタイミングで交差点に進入』する場合には、運転席45の『左方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
他の条件についても同様にして、図6に示すように各条件の組合せに対して音像を定位させるパターンが設定されている。尚、空白の欄については前記S7において自車両と他車両とが接触する虞が無いと判定される条件の組合せである。
【0057】
ここで、図6に示すように音像定位パターン選択テーブルは、以下の(A)〜(C)の条件を満たすように構成されている。
(A)他車両が自車両よりも早いタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンが選択される。
(B)他車両が自車両と同一のタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンが選択される。
(C)自車両が他車両よりも早いタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンが選択される。
尚、説明は省略するが自車両が左折することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルや、自車両が直進することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルについても、上記(A)〜(C)の条件を満たすように構成されている。
【0058】
続いて、S9においてCPU41は、各スピーカ16A〜16Dを制御することにより、前記S8で選択された音像の定位パターンに基づいて運転席の所定方向に警告音の音像を定位させる。
【0059】
例えば、図9では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、他車両72が自車両71よりも早いタイミングで交差点73に進入する場合における前記S9の案内音声の定位処理を示す。
図9に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入から退出までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向→右方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16Aから案内音声を出力し、運転席45の右方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の右方向の音像の定位」とを所定回数(2回)繰り返し実行する。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入する前に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0060】
また、図10では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、自車両71と他車両72とが同一のタイミングで交差点73に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図10に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンである『左方向→全方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16A〜16Dから案内音声を出力し、運転席45の全方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の全方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入するのと同時に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0061】
また、図11では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、自車両71が他車両72よりも早いタイミングで交差点73に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図11に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向』が選択される。そして、前記S9でスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。そして、自車両が交差点を退出するまで継続して音像を定位させる。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入した後に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0062】
一方、図12では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、他車両82が自車両81よりも早いタイミングで交差点83に進入する場合における前記S9の案内音声の定位処理を示す。
図12に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入から退出までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向→後方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16Bから案内音声を出力し、運転席45の背後方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の背後方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入する前に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。
【0063】
また、図13では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、自車両81と他車両82とが同一のタイミングで交差点83に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図13に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンである『左方向→全方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16A〜16Dから案内音声を出力し、運転席45の全方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の全方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入するのと同時に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。
【0064】
また、図14では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、自車両81が他車両82よりも早いタイミングで交差点83に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図14に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向』が選択される。そして、前記S9でスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。そして、自車両が交差点を退出するまで継続して音像を定位させる。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入した後に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。尚、上記S9が案内手段の処理に相当する。
【0065】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1を用いた運転支援方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、自車両が交差点に所定距離まで接近した場合であって、その交差点に他車両が接近する場合には、自車両及び他車両の交差点の通過形態と交差点への進入タイミングをそれぞれ取得し(S4、S6)、取得した各情報と音像定位パターン選択テーブルとに基づいて他車両を案内する案内音声を定位させる方向を選択し(S8)、選択された方向に音像を定位させるようにスピーカ16A〜16Dを制御する(S9)ので、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、現在の状況に適合した適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。
また、自車両と接触の虞があると判定された他車両についてのみ案内対象とするので、不要な案内を行うことによって、運転者の注意力を低下させることがない。
また、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両より他車両が先に交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、他車両の自車両に対する位置変化を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
また、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両と他車両が同一のタイミングで交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、自車両と同一のタイミングで交差点に進入する他車両の自車に対する接近方向を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0066】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では車車間通信により、他車両の交差点の通過形態や交差点の進入のタイミングを取得することとしているが、例えば、車両に設置されたカメラで自車両の周辺環境を撮像し、撮像された撮像画像に基づいて他車両の交差点の通過形態や交差点の進入のタイミングを取得することとしても良い。
【0067】
また、車内に設置するスピーカの数は4個に限られることなく、2個以上であれば本願発明を適用することが可能である。また、複数のスピーカの出力を制御することにより仮想音源を生成するようにしても良い。それにより、スピーカの配置によって制限されること無く任意の方向に案内音声を定位させることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では警告音を定位させる方向により他車両の通過形態を案内しているが、他車両の通過形態を具体的に案内する案内音声を出力することとしても良い。
例えば、図9に示す状況では「自車の交差点進入前に他車両が左方向から右方向へと通過します。」との音声を出力することが望ましい。また、図10に示す状況では「自車の交差点進入と同時に他車両が左方向から交差点に進入します。」との音声を出力することが望ましい。また、図11に示す状況では「自車の交差点進入後に他車両が左方向から交差点に進入します。」との音声を出力することが望ましい。
【0069】
また、図6に示す音像定位パターン選択テーブルを、交差点に接続する道路の車線数や道路幅毎に備える構成としても良い。尚、その場合には、図6は交差点に接続する道路が片側一車線の場合に用いられるテーブルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態に係る車車間通信システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るナビゲーション装置を搭載した車両の外観図である。
【図3】本実施形態に係るナビゲーション装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図4】運転席とスピーカとの位置関係を示した模式図である。
【図5】本実施形態に係る運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図6】音像定位パターン選択テーブルを示す図である。
【図7】自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合の一例を示す。
【図8】自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合の一例を示す。
【図9】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図10】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図11】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図12】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図13】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図14】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
16A〜16D スピーカ
41 CPU
42 RAM
43 ROM
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行の案内を行う運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーションシステムの普及にともなって、車両の周辺の状況を車室内の表示装置に表示したり、障害物の接近を音で警告する運転支援システムを搭載する車両が増加している。このようなシステムによれば、運転者の死角方向から接近する障害物等の運転中の運転者が把握し難い障害物を運転者に事前に把握させ、安全に走行させることが可能となる。
【0003】
例えば、特開2006−11516号公報には、車両の周囲環境をカメラで撮像し、撮像した画像に対して所定の画像処理を施すことによって障害物を検出し、検出した障害物の位置を音声によって案内する技術が記載されている。
また、このような運転支援システムを用いることにより、特に車両が交差点を通過する際において交差点に進入する他車両を案内することが行われていた。即ち、交差点においては、複数の方向から車両が交差点へと進入する。従って、運転者は交差点を通過する場合に他車両が進入する可能性のある全ての方向を視認し、他車両に対して注意を払う必要があるが、他車両の進入に気付くのが遅れてしまう場合もあった。また、交差点では死角が形成されていることも多いので、死角方向から他車両が進入する場合には、運転者が他車両の進入に気付かない場合もあった。そこで、交差点を通過する際に自車周辺の他車両を案内することにより、他車両の接近を運転者に把握させ、他車両との接触を回避させることが可能となる。
【特許文献1】特開2006−11516号公報(第11頁〜第12頁、図11、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、運転者に対して検出した障害物の方向に音像を定位させる。しかし、自車両や他車両の交差点の通過形態や進入のタイミングについては考慮されていなかった。
【0005】
ここで、交差点の通過形態によっては、交差点へと同じタイミングで進入する場合であっても、自車両と接触する虞がない他車両も存在する。例えば、図7に示すように自車両が交差点を右折して通過する場合であって、且つ自車両の左方向から交差点に進入した他車両が左折して通過する場合には、自車両と他車両とは接触する虞が無い。しかしながら、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、そのような他車両についても通過形態に関わらず一律に案内を行っていた。従って、不要な案内が行われることによって、逆に運転者の注意力を低下させる原因となっていた。
【0006】
また、自車両と他車両がともに交差点を通過する状況では、(a)自車両より他車両が先に交差点に進入する場合、(b)自車両と他車両が同時に交差点に進入する場合、(c)他車両が自車両より先に交差点に進入する場合があり、それぞれの場合において自車両の運転者は注意すべき内容が異なる。しかしながら、前記した特許文献1に記載された運転支援装置では、進入タイミングに関わらず一律に同じ内容の案内を行っていた。
従って、交差点を車両が通過する場合においては、特許文献1に記載された運転支援装置のように常に同一内容で他車両の案内を行うのではなく、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが望まれていた。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることを可能とした運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る運転支援装置(1)は、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得手段(13)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得手段(13)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得手段(13)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得手段(13)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
ここで、「交差点の通過形態」とは、車両の交差点への進入方向、並びに交差点からの退出方向を少なくとも含む。
【0009】
また、請求項2に係る運転支援装置(1)は、請求項1に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、前記交差点における自車両の通過形態と他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が接触の虞があるか否か判定する接触判定手段(13)を備え、前記接触判定手段によって自車両と他車両が接触の虞があると判定した場合に案内を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る運転支援装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、他車両の位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る運転支援装置(1)は、請求項3に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段(13)を備え、前記比較手段によって他車両が自車両よりも早いタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る運転支援装置(1)は、請求項3に記載の運転支援装置であって、前記案内手段(13)は、自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段(13)を備え、前記比較手段によって他車両が自車両と同一のタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る運転支援方法は、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得ステップ(S1)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得ステップ(S1)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得ステップ(S1)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得ステップ(S1)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内ステップ(S9)と、を有することを特徴とする。
【0014】
更に、請求項7に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得機能(S1)と、前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得機能(S1)と、自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得機能(S1)と、他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得機能(S1)と、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内機能(S9)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両と他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【0016】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、自車両と接触の虞があると判定された他車両についてのみ案内対象とするので、不要な案内を行うことによって、運転者の注意力を低下させることがない。
【0017】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、交差点における自車両と他車両の通過形態と進入のタイミングに応じて他車両の位置する方向に音像を定位させるので、スピーカからの音出力に応じて他車両の位置する方向を運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0018】
また、請求項4に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両より他車両が先に交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、交差点における他車両の自車両に対する位置変化を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0019】
また、請求項5に記載の運転支援装置によれば、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両と他車両が同一のタイミングで交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、自車両と同一のタイミングで交差点に進入する他車両の自車に対する接近方向を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0020】
また、請求項6に記載の運転支援方法によれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮して他車両の案内を行うことにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【0021】
更に、請求項7に記載のコンピュータプログラムによれば、自車両が交差点を通過する場合に、自車両と他車両の交差点の通過形態と進入のタイミングをそれぞれ考慮してコンピュータに他車両の案内を行わせることにより、適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。例えば、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、自車両や他車両の進入のタイミングを考慮して案内内容を変えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る運転支援装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を備えた複数の車両2によって構成される車車間通信システム3の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車車間通信システム3の概略構成図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る車車間通信システム3は、駐車場に位置する複数の車両2によって構成され、各車両2に設置されたナビゲーション装置1が備える通信装置4によって複数の車両2の間で相互に情報通信が可能となっている。
【0024】
ここで、通信装置4は、例えばミリ波帯の電波による無線方式で情報を通信する通信装置である。そして、自車両位置に対して予め定められた無線通信可能範囲(例えば、自車両位置を中心とした半径2kmまでの範囲)に位置する他車両(駐車車両、後続車両、前方車両、対向車両等)との間で、無線による情報の通信を行うことが可能となっている。
また、通信装置4によって車両間で送受信される情報としては、後述するように進行方向前方にある交差点の通過形態やその交差点への進入のタイミング等に関する情報がある。尚、交差点の通過形態とは、車両の交差点への進入方向、並びに交差点からの退出方向を少なくとも含む。
【0025】
尚、車車間通信システム3における車両2の間の通信では、直接に車両2の間で情報を送受信することの他に、路上機(図示せず)などの通信施設を介して情報を送受信することも可能である。
【0026】
次に、上記車車間通信システム3を構成する車両2に設置されたナビゲーション装置1の概略構成について図2及び図3を用いて説明する。図2は本実施形態に係るナビゲーション装置1を搭載した車両2の外観図、図3は本実施形態に係るナビゲーション装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、前記した通信装置4に加えて、自車の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(自車両通過形態取得手段、他車両通過形態取得手段、自車両進入タイミング取得手段、他車両進入タイミング取得手段、案内手段、接触判定手段、比較手段)13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16A〜16Dと、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、から構成されている。また、ナビゲーションECU13にはCAN(Controller Area Network)等の車内LANを介してウィンカーランプ制御ECU18が接続される。
【0028】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、地磁気センサ22、車速センサ23、ステアリングセンサ24、ジャイロセンサ25等からなり、現在の自車の位置、方位、自車の走行速度等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ23は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0029】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0030】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ33、ノード点に関するノードデータ34、施設に関する施設データ35、経路を探索するための探索データ、各交差点に関する交差点データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。
【0031】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、公知のダイクストラ法を用いて目的地への案内経路を探索する経路探索処理、設定された案内経路に従って走行を案内する走行案内処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、ナビゲーション装置1の備える各種装置の制御用のプログラムを記録するROM43、ROM43から読み出したプログラムのほか、運転支援処理プログラム(図5)や音像定位パターン選択テーブル(図6)等を記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0032】
操作部14は、案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、操作部14は案内開始地点としての出発地の入力にも用いられる場合がある。
【0033】
また、液晶ディスプレイ15には、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0034】
また、スピーカ16A〜16Dは、具体的にナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスを出力する。ここで、出力される音声ガイダンスとしては、例えば、「300m先の○○交差点を右方向です。」等がある。また、特に本実施形態に係るナビゲーション装置1では、自車両が交差点を通過する際に自車両と接触する虞のある他車両がある場合には、所定の案内音声を出力することにより交差点に進入する他車両を案内する。
【0035】
また、図2及び図4に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1を備える車両の車両内には、運転席45(即ち、運転席45に着座する運転者46)に対してそれぞれ異なる方位に4つのスピーカ16A〜16Dが配置される。図4は運転席45とスピーカ16A〜16Dとの位置関係を示した模式図である。
【0036】
ここで、右前スピーカ16Aは、車両2の室内のセンターコンソールの右側に備え付けられ、運転席45に対して右前方に位置する。また、右後スピーカ16Bは、車両2の室内の右後方のバックピラー付近に備え付けられ、運転席45に対して右後方に位置する。また、左前スピーカ16Cは、車両2の室内のセンターコンソールの左側に備え付けられ、運転席45に対して左前方に位置する。また、左後スピーカ16Dは、車両2の室内の左後方のバックピラー付近に備え付けられ、運転席45に対して左後方に位置する。そして、ナビゲーションECU13は、後述のように運転席45からの方位がそれぞれ上記のように異なる各スピーカ16A〜16Dの出力を制御することにより、運転席45に対して異なる方位に上述した案内音声に関する音像を定位させる。
【0037】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB31の更新等が行われる。
【0038】
また、通信装置4は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為にも用いられる。
【0039】
また、ウィンカーランプ制御ECU18は図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、ウィンカーランプ51A〜54D(図2参照)の点灯制御を行う電子制御ユニットである。そして、ナビゲーションECU13はウィンカーランプ制御ECU18から送信される制御信号に基づいて現在のウィンカーランプ51A〜51Dの点灯状態を検出する。
【0040】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する運転支援処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る運転支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、運転支援処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、交差点を通過する際に他車両の案内を行うプログラムである。尚、以下の図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0041】
先ず、運転支援処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41はナビ情報を取得する。ここで、前記S1で取得されるナビ情報としては、例えば自車両の現在位置や自車方位に関する現在地情報、自車両が現在走行する道路の車線数、幅員、道路種別に関する道路情報等がある。尚、自車の現在位置や自車方位は、現在位置検出部11の検出結果に基づいて取得される。また、取得した自車の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。一方、道路情報は、自車両の現在位置に基づいて地図情報DB31から取得される。
【0042】
次に、S2においてCPU41は、前記S1で取得した現在地情報と地図情報DB31に記憶された地図情報に基づいて、自車両の進行方向前方の所定距離(例えば100m)以内に交差点があるか否か判定する。そして、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点があると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。一方、自車両の進行方向前方の所定距離以内に交差点が無いと判定された場合(S2:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了する。
【0043】
S3においてCPU41は、自車両の進行方向前方にある交差点に関する情報を地図情報DB31から取得する。具体的には、交差点に接続する各道路の車線数、幅員等に関する情報である。
【0044】
続いて、S4においてCPU41は、自車両の進行方向前方にある交差点の通過形態と、その交差点への進入のタイミングを取得する。
【0045】
以下に、先ず前記S4における自車両の交差点の通過形態の取得方法について詳細に説明する。自車両の交差点の通過形態は下記の(1)又は(2)のいずれかの方法により取得される。
(1)ナビゲーション装置1において案内経路が設定されている場合には、設定されている案内経路に従って自車両が走行すると仮定し、交差点の通過形態を特定する。尚、案内経路は、ナビゲーション装置1によって出発地(例えば自車の現在位置)からユーザに選択された目的地までの経路探索処理の結果に基づいて設定される。また、経路探索処理は、地図情報DB31に記憶されたリンクデータやノードデータ、交通情報等が用いられ、公知のダイクストラ法等により行われる。
(2)案内経路が設定されていない場合には、自車両の現在位置、方位から自車両が現在走行する道路や交差点への進入方向を特定する。また、ウィンカーランプ制御ECU18から送信される信号に基づいてウィンカーランプ51A〜51Dの点灯状態を取得し、自車両が直進、右折、左折のいずれの態様により交差点を通過するのかを特定する。更に、交差点に接続する道路の車線情報を用いることによって交差点の通過形態をより具体的に特定する。
【0046】
次に、前記S4における自車両の交差点への進入のタイミングの取得方法について詳細に説明する。自車両の交差点への進入のタイミングは下記の(1)〜(3)の処理を行うことにより取得される。
(1)車速センサ23により自車両の車速を取得する。
(2)次に、GPS21により検出した自車位置と、地図情報に基づいて自車両の現在位置から交差点までの距離を算出する。
(3)自車両の車速と自車両の現在位置から交差点までの距離とに基づいて、交差点に進入するまでの所要時間を算出する。
尚、上記S4が自車両通過形態取得手段及び自車両進入タイミング取得手段の処理に相当する。
【0047】
次に、S5においてCPU41は、自車周辺の車両との間で前記した車車間通信システム3により車車間通信を行うことにより、自車の進行方向前方にある交差点から所定距離(例えば300m)以内に、その交差点に接近する他車両があるか否か判定する。具体的には、他車両から送信された他車両の現在位置と方位とに基づいてCPU41が判定する。
【0048】
そして、交差点へと所定距離以内に接近する他車両があると判定された場合(S5:YES)には、S6へと移行する。一方、交差点へと所定距離以内に接近する他車両が無いと判定された場合(S5:NO)には、当該運転支援処理プログラムを終了する。
【0049】
S6においてCPU41は、前記S5において交差点に所定距離以内に接近していると判定された他車両の交差点の通過形態と、その交差点への進入のタイミングを取得する。
【0050】
以下に、先ず前記S6における他車両の交差点の通過形態の取得方法について詳細に説明する。他車両の交差点の通過形態は下記の(1)又は(2)のいずれかの方法により取得される。
(1)他車両の備えるナビゲーション装置において設定されている案内経路を車車間通信により取得する。そして、案内経路に従って他車両が走行すると仮定し、交差点の通過形態を特定する。
(2)他車両の現在位置、方位、ウィンカーランプの点灯状態について車車間通信により取得する。そして、他車両の現在位置、方位から他車両が現在走行する道路や交差点への進入方向を特定する。また、ウィンカーランプの点灯状態から他車両が直進、右折、左折のいずれの態様により交差点を通過するのかを特定する。更に、交差点に接続する道路の車線情報を用いることによって交差点の通過形態をより具体的に特定する。
また、前記S6で取得した他車の通過形態は、自車位置と地図情報に基づいて自車両から見た交差点における他車両の通過形態へと変更する。
【0051】
次に、前記S6における他車両の交差点への進入のタイミングの取得方法について詳細に説明する。他車両の交差点への進入のタイミングは下記の(1)〜(3)の処理を行うことにより取得される。
(1)他車両の現在位置、方位、車速について車車間通信により取得する。
(2)次に、他車両の現在位置と、地図情報に基づいて他車両の現在位置から交差点までの距離を算出する。
(3)他車両の車速と他車両の現在位置から交差点までの距離とに基づいて、交差点に進入するまでの所要時間を算出する。
尚、上記S6が他車両通過形態取得手段及び他車両進入タイミング取得手段の処理に相当する。
【0052】
その後、S7においてCPU41は、前記S4で取得した交差点における自車両の通過形態と前記S6で取得した自車両から見た交差点における他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が正面衝突、出会い頭衝突、追突衝突等による接触の虞があるか否か判定する。具体的には、ROM43又はフラッシュメモリ44に記憶されている音像定位パターン選択テーブルを参照し、交差点における自車両の通過形態と交差点における他車両の通過形態との組合せが、音像パターンが設定されている組合せである場合に、自車両と他車両が接触の虞があると判定する。一方、交差点における自車両の通過形態と交差点における他車両の通過形態との組合せが、音像パターンが設定されていない組合せである場合に、自車両と他車両が接触の虞がないと判定する。
【0053】
ここで、前記S7において自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合と、自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合についてそれぞれ具体例を挙げて説明する。尚、図6は音像定位パターン選択テーブルの一例を示した図である。また、図6では自車両が右折することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルを示す。
例えば、図7には自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合の一例を示す。図7に示す例では、自車両61と他車両62が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点63へと接近する場合であって、自車両61の交差点63の通過形態が『右折して交差点を通過』であり、他車両62の交差点63の通過形態が『自車両の左方向から進入し、左折して自車両の前方へ通過』である。そして、図7に示す各車両の通過形態の組合せは全ての進入タイミングにおいて図6に示す音像パターン選択テーブルで音像パターンが設定されていない組合せである。
一方、図8には自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合の一例を示す。図8に示す例では、図7と同じく自車両61と他車両62が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点63へと接近する場合であって、自車両61の交差点63の通過形態が『右折して交差点を通過』であり、他車両62の交差点63の通過形態が『自車両の左方向から進入し、自車両の右方向へと直進して通過』である。そして、図8に示す各車両の通過形態の組合せは全ての進入タイミングにおいて図6に示す音像パターン選択テーブルで音像パターンが設定されている組合せである。
【0054】
そして、前記S7の判定の結果、自車両と他車両が接触の虞があると判定された場合(S7:YES)には、S8へと移行する。一方、前記S7の判定の結果、自車両と他車両が接触の虞がないと判定された場合(S7:NO)には、他車両についての案内を行うことなく当該運転支援処理プログラムを終了する。尚、上記S7が接触判定手段の処理に相当する。
【0055】
S8においてCPU41は、前記S4で取得した自車両の交差点の通過形態及びその交差点への進入のタイミングと、前記S6で取得した他車両の交差点の通過形態及びその交差点への進入のタイミングとに基づいて、他車両を案内する案内音声の音像を定位させる定位パターン(即ち、音像を定位させる方向)を選択する。より具体的には、自車両の交差点への進入のタイミングと他車両の交差点への進入のタイミングとを比較し、その比較結果と各車両の通過形態と上述の音像定位パターン選択テーブルとを用いて選択する。また、上記S8が比較手段の処理に相当する。
【0056】
以下に、上記S8の処理について具体例を挙げて説明する。
図6に示すように音像定位パターン選択テーブルは、自車両の交差点の通過形態と、自車両から見た他車両の交差点の通過形態と、自車両の交差点への進入のタイミングと他車両の交差点への進入のタイミングとの比較結果と、それらの各条件の組合せに対応する音像の定位パターンとから構成されている。
例えば、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『他車両が自車両よりも速いタイミングで交差点に進入』する場合には、先ず運転席45の『左方向』に音像を定位させ、その後に運転席45の『右方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
また、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『他車両と自車両とが同じタイミングで交差点に進入』する場合には、先ず運転席45の『左方向』に音像を定位させ、その後に運転席45の『全方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
また、自車両の交差点の通過形態が『右折して交差点を通過』であって、他車両の交差点の通過形態が『自車両の左方向から進入し、直進して交差点を通過して自車両の右方向へと退出』であって、『自車両が他車両よりも速いタイミングで交差点に進入』する場合には、運転席45の『左方向』に音像を定位させるパターンが選択される。
他の条件についても同様にして、図6に示すように各条件の組合せに対して音像を定位させるパターンが設定されている。尚、空白の欄については前記S7において自車両と他車両とが接触する虞が無いと判定される条件の組合せである。
【0057】
ここで、図6に示すように音像定位パターン選択テーブルは、以下の(A)〜(C)の条件を満たすように構成されている。
(A)他車両が自車両よりも早いタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンが選択される。
(B)他車両が自車両と同一のタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンが選択される。
(C)自車両が他車両よりも早いタイミングで交差点に進入すると判定された場合には、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンが選択される。
尚、説明は省略するが自車両が左折することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルや、自車両が直進することにより交差点を通過する場合において用いられる音像定位パターン選択テーブルについても、上記(A)〜(C)の条件を満たすように構成されている。
【0058】
続いて、S9においてCPU41は、各スピーカ16A〜16Dを制御することにより、前記S8で選択された音像の定位パターンに基づいて運転席の所定方向に警告音の音像を定位させる。
【0059】
例えば、図9では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、他車両72が自車両71よりも早いタイミングで交差点73に進入する場合における前記S9の案内音声の定位処理を示す。
図9に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入から退出までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向→右方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16Aから案内音声を出力し、運転席45の右方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の右方向の音像の定位」とを所定回数(2回)繰り返し実行する。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入する前に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0060】
また、図10では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、自車両71と他車両72とが同一のタイミングで交差点73に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図10に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンである『左方向→全方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16A〜16Dから案内音声を出力し、運転席45の全方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の全方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入するのと同時に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0061】
また、図11では自車両71と他車両72が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点73へと接近する場合であって、自車両71の交差点73の通過形態が『右折して通過』であり、他車両72の交差点73の通過形態が『自車両の左方向から右方向へと直進して通過』であり、更に、自車両71が他車両72よりも早いタイミングで交差点73に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図11に示す状況では、前記S8で他車両72の交差点73の進入までの自車両71に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向』が選択される。そして、前記S9でスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。そして、自車両が交差点を退出するまで継続して音像を定位させる。それにより、自車両71の運転者46は、自車両71が交差点73に進入した後に、他車両72が交差点73を左方向から右方向へと通過することを確実に認識することが可能となる。
【0062】
一方、図12では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、他車両82が自車両81よりも早いタイミングで交差点83に進入する場合における前記S9の案内音声の定位処理を示す。
図12に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入から退出までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向→後方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16Bから案内音声を出力し、運転席45の背後方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の背後方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入する前に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。
【0063】
また、図13では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、自車両81と他車両82とが同一のタイミングで交差点83に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図13に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるパターンである『左方向→全方向』が選択される。そして、前記S9で先ずスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。その後、所定時間経過後(例えば、1sec後)にスピーカ16A〜16Dから案内音声を出力し、運転席45の全方向に音像を定位させる。そして、上記「運転席45の左方向の音像の定位」と「運転席45の全方向の音像の定位」とを自車両が交差点を退出するまで所定間隔で繰り返し実行する。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入するのと同時に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。
【0064】
また、図14では自車両81と他車両82が片側一車線の道路がそれぞれ接続する交差点83へと接近する場合であって、自車両81の交差点83の通過形態が『右折して通過』であり、他車両82の交差点83の通過形態が『自車両の左方向から背後方向へと右折して通過』であり、更に、自車両81が他車両82よりも早いタイミングで交差点83に進入する場合における案内音声の定位処理を示す。
図14に示す状況では、前記S8で他車両82の交差点83の進入までの自車両81に対する位置を示す方向に音像を定位させるパターンである『左方向』が選択される。そして、前記S9でスピーカ16Cから案内音声を出力し、運転席45の左方向に音像を定位させる。そして、自車両が交差点を退出するまで継続して音像を定位させる。それにより、自車両81の運転者46は、自車両81が交差点83に進入した後に、他車両82が交差点83を左方向から背後方向へと右折して通過することを確実に認識することが可能となる。尚、上記S9が案内手段の処理に相当する。
【0065】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1を用いた運転支援方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、自車両が交差点に所定距離まで接近した場合であって、その交差点に他車両が接近する場合には、自車両及び他車両の交差点の通過形態と交差点への進入タイミングをそれぞれ取得し(S4、S6)、取得した各情報と音像定位パターン選択テーブルとに基づいて他車両を案内する案内音声を定位させる方向を選択し(S8)、選択された方向に音像を定位させるようにスピーカ16A〜16Dを制御する(S9)ので、自車両と他車両とが接触する虞が無い状況下において不要な案内が行われることがない。また、現在の状況に適合した適切な案内を運転者に行うことができ、より安全に走行させることが可能となる。
また、自車両と接触の虞があると判定された他車両についてのみ案内対象とするので、不要な案内を行うことによって、運転者の注意力を低下させることがない。
また、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両より他車両が先に交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、他車両の自車両に対する位置変化を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
また、自車両が交差点を通過する場合であって、自車両と他車両が同一のタイミングで交差点に進入する場合に、他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させるので、自車両と他車両の相対的な位置関係に応じた適切な案内を行うことが可能となる。そして、自車両と同一のタイミングで交差点に進入する他車両の自車に対する接近方向を予め運転者に容易に把握させることが可能となる。
【0066】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では車車間通信により、他車両の交差点の通過形態や交差点の進入のタイミングを取得することとしているが、例えば、車両に設置されたカメラで自車両の周辺環境を撮像し、撮像された撮像画像に基づいて他車両の交差点の通過形態や交差点の進入のタイミングを取得することとしても良い。
【0067】
また、車内に設置するスピーカの数は4個に限られることなく、2個以上であれば本願発明を適用することが可能である。また、複数のスピーカの出力を制御することにより仮想音源を生成するようにしても良い。それにより、スピーカの配置によって制限されること無く任意の方向に案内音声を定位させることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では警告音を定位させる方向により他車両の通過形態を案内しているが、他車両の通過形態を具体的に案内する案内音声を出力することとしても良い。
例えば、図9に示す状況では「自車の交差点進入前に他車両が左方向から右方向へと通過します。」との音声を出力することが望ましい。また、図10に示す状況では「自車の交差点進入と同時に他車両が左方向から交差点に進入します。」との音声を出力することが望ましい。また、図11に示す状況では「自車の交差点進入後に他車両が左方向から交差点に進入します。」との音声を出力することが望ましい。
【0069】
また、図6に示す音像定位パターン選択テーブルを、交差点に接続する道路の車線数や道路幅毎に備える構成としても良い。尚、その場合には、図6は交差点に接続する道路が片側一車線の場合に用いられるテーブルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態に係る車車間通信システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るナビゲーション装置を搭載した車両の外観図である。
【図3】本実施形態に係るナビゲーション装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図4】運転席とスピーカとの位置関係を示した模式図である。
【図5】本実施形態に係る運転支援処理プログラムのフローチャートである。
【図6】音像定位パターン選択テーブルを示す図である。
【図7】自車両と他車両が接触の虞がないと判定される場合の一例を示す。
【図8】自車両と他車両が接触の虞があると判定される場合の一例を示す。
【図9】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図10】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図11】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図12】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図13】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【図14】案内音声の定位処理の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
16A〜16D スピーカ
41 CPU
42 RAM
43 ROM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得手段と、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得手段と、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得手段と、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得手段と、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記案内手段は、
前記交差点における自車両の通過形態と他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が接触の虞があるか否か判定する接触判定手段を備え、
前記接触判定手段によって自車両と他車両が接触の虞があると判定した場合に案内を行うことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、他車両の位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記案内手段は、
自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段を備え、
前記比較手段によって他車両が自車両よりも早いタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記案内手段は、
自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段を備え、
前記比較手段によって他車両が自車両と同一のタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項6】
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得ステップと、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得ステップと、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得ステップと、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得ステップと、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内ステップと、を有することを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
コンピュータに搭載され、
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得機能と、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得機能と、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得機能と、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得機能と、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得手段と、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得手段と、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得手段と、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得手段と、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記案内手段は、
前記交差点における自車両の通過形態と他車両の通過形態とに基づいて、自車両と他車両が接触の虞があるか否か判定する接触判定手段を備え、
前記接触判定手段によって自車両と他車両が接触の虞があると判定した場合に案内を行うことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、他車両の位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記案内手段は、
自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段を備え、
前記比較手段によって他車両が自車両よりも早いタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入から退出までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記案内手段は、
自車両の前記交差点への進入のタイミングと他車両の前記交差点への進入のタイミングとを比較する比較手段を備え、
前記比較手段によって他車両が自車両と同一のタイミングで前記交差点に進入すると判定された場合に、他車両の前記交差点の通過形態に基づいて他車両の交差点の進入までの自車両に対する位置を示す方向に音像を定位させた後に、複数の方向に同時に音像を定位させることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項6】
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得ステップと、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得ステップと、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得ステップと、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得ステップと、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内ステップと、を有することを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
コンピュータに搭載され、
進行方向前方にある交差点における自車両の通過形態を取得する自車両通過形態取得機能と、
前記交差点における他車両の通過形態を取得する他車両通過形態取得機能と、
自車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する自車両進入タイミング取得機能と、
他車両の前記交差点への進入のタイミングを取得する他車両進入タイミング取得機能と、
前記交差点における自車両の通過形態及び進入のタイミングと前記交差点における他車両の通過形態及び進入のタイミングとに基づいて、前記交差点における他車両の案内を行う案内機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−245340(P2009−245340A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93336(P2008−93336)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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