説明

遠心力を動力源としたアクチュエータ

【課題】 回転するシャフトに取付けられて回転に伴って発生する遠心力を動力源として外側ピストンを突出することが出来るアクチュエータの提供。
【解決手段】 アクチュエータ2が回転することでシリンダー3内の作動油7に遠心力が働くならば、該遠心力の大きさに応じてピストン5に突出力が働いて作動油7は内側シリンダー部4aから外側シリンダー部4bへ流れ、外側ピストン部6bは突出すること出来る。アクチュエータ2はシャフト1に取付けられて回転し、回転速度が低くて遠心力が小さい場合にはアクチュエータ2の先の反力、又は該アクチュエータ2に取付けたリターンスプリング9のバネ力の作用で外側ピストン部6bは後退する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転軸に取付けられ、回転軸の回転に伴って発生する遠心力を動力源として作動することが出来るアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとは、入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構のことであり、物体を動かしたり、制御したりする機械的あるいは油圧又は空圧的装置のことで、利用する動力源(入力するエネルギー)によりさまざまなものが開発・利用されている。一般には伸縮や屈伸といった単純な運動をするように構成した機構が多い。また、アクチュエータを利用してVベルト式無段変速機のムーバブルドライブフェースを動かすことも可能である。
【0003】
図8は従来のVベルト式無段変速機を示しているが、ドライブプーリは、ドライブシャフト(イ)の先端部に固設された固定フェース(ロ)と、この固定フェース(ロ)に対向してムーバブルドライブフェース(ハ)が上記ドライブシャフト(イ)に取付けられ、該ムーバブルドライブフェース(ハ)はドライブシャフト(イ)に沿って移動することが出来る。
【0004】
そして、ドライブプーリはドライブシャフト(イ)にプレッシャプレート(ニ)を取付け、該プレッシャプレート(ニ)と上記ムーバブルドライブフェース(ハ)との間にローラウエイト(ホ)を挟持している。ムーバブルドライブフェース(ハ)の背面(ヘ)は滑らかな曲面を成し、またプレッシャプレート(ニ)の外周部はムーバブルドライブフェース(ハ)側へ屈曲している。その為に、ムーバブルドライブフェース(ハ)の背面(ヘ)とプレッシャプレート(ニ)間距離は外径側ほど小さく成っている。
【0005】
ところで、このVベルト式無段変速機では、ドライブプーリの回転に伴って大きな遠心力が発生すると、ローラウエイト(ホ)は外径方向へ移動し、ムーバブルドライブフェース(ハ)がドライブシャフト(イ)に沿って右方向へ移動する。その結果、固定フェース(ロ)とムーバブルドライブフェース(ハ)との間隔が小さくなり、これによりVベルト(ト)の実質的な巻き掛け半径が拡大して変速が行なわれる。ドライブシャフト(イ)の駆動力は、上記ドライブプーリからVベルト(ト)を介してドリブンプーリ側へ伝達される。
【0006】
特開2007−127255号に係る「鞍乗型車両」に搭載されているVベルト式無段変速機は、上記図8に相当するものであり、プライマリシーブ軸の回転速度が上昇すると、ローラウエイトが遠心力を受けて径方向外側に移動し、可動シーブ半体(ムーバブルドライブフェース)をスライドさせて変速することが出来るように構成している。
【0007】
特開2003−184972号に係る「車載用Vベルト式無断変速機」も遠心力を利用したものであり、駆動側プーリは、駆動軸に固着された固定シーブと、駆動軸芯方向に移動可能な可動シーブを備え、可動シーブはリターンばねにより両シーブ間を広げる方向に付勢されると共に、フライウエイト機構により駆動軸回転の増加に応じて両シーブ間を閉じる方向に移動することが出来る。
【特許文献1】特開2007−127255号に係る「鞍乗型車両」
【特許文献2】特開2003−184972号に係る「車載用Vベルト式無断変速機」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、ドライブシャフトの回転速度上昇に伴う遠心力を利用して変速することが出来るVベルト式無段変速機は知られている。ところで、ローラウエイトが遠心力によって外方向へ移動することで変速することは可能であるが、ローラウエイトとムーバブルドライブフェース及びプレッシャプレートとの間に摩擦が発生し、この摩擦力によってムーバブルドライブフェースの移動距離が変化する。すなわち、ドライブシャフトの回転に伴って発生する遠心力が摩擦に左右されて正確な変速が出来難い。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、固体としてのウエイトを用いることなく、作動油に働く遠心力を利用して変速することが出来るアクチュエータを提供する。ただし、本発明のアクチュエータの用途をVベルト式無段変速に限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアクチュエータは回転することが出来るシャフト(軸)に取付けられ、アクチュエータのボディにはシリンダーが形成され、このシリンダーにピストンが嵌ってシャフトの軸方向に移動可能としている。該シリンダーには作動油が満たされ、シャフトと共にボディが回転するならば、作動油に働く遠心力に基づいてピストンが移動するように構成している。
【0010】
ところで、ピストンは径の大きな外側ピストン部と径の小さい内側ピストン部を有し、内・外ピストン部の断面積は同一と成るようにしている。そして、このピストンがシリンダーに嵌ることで、該シリンダーは内側シリンダー部と外側シリンダー部に分離され、両シリンダー部はピストンに設けた油路を介して繋がっている。
【0011】
そこで、ボディがシャフトと共に回転するならば、発生する遠心油圧の差の作用でピストンを突出させる力が発生して、内側シリンダー部内の作動油は油路を流れて外側シリンダー部へ入り、その結果、ピストンは押圧されて移動し、外側ピストン部は突出することが出来る。シャフトの回転速度に応じて発生する遠心力は異なるが、外側シリンダー部内へ作動油が流れ込むことでピストンは軸方向に移動し、該ピストンが突出する動力を取出すことが出来るように構成している。
【0012】
そして、内・外シリンダー部を繋ぐ油路に任意の条件で作動するバルブを取付けることが出来、該バルブを作動してアクチュエータのON/OFFを可能とする。すなわち、バルブの開閉によって回転に伴う遠心力のみに左右されることなくアクチュエータの動作を制御する。ここで、バルブの構造は特に限定せず、例えば遠心力を利用して開閉するバルブ機構、又はソレノイドを用いて開閉するバルブ機構などがある。また、シリンダーに満たされる作動油の種類は限定しない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアクチュエータは、ボディに形成したシリンダーにピストンを嵌めて構成したものであり、すなわち、ピストンに対向したシリンダー外側ピストン部と内側ピストン部を有し、両ピストン部の断面積を同一にすると共に油路を設けることで、同一体積の作動油が外側シリンダー部と内側シリンダー部の間を行き来してピストンの移動が可能となる。
【0014】
そこで、アクチュエータが回転することでシリンダー内の作動油に遠心力が働くならば、該遠心力の大きさに応じてピストンに突出力が働いて作動油は内側シリンダー部から外側シリンダー部へ流れ、外側ピストン部は突出すること出来る。すなわち、アクチュエータはシャフトに取付けられて回転し、回転速度が低くて遠心力が小さい場合にはアクチュエータの先の反力、又は該アクチュエータに取付けたリターンスプリングのバネ力の作用で外側ピストン部は後退する。
そこで、両シリンダー部間はピストンに形成した油路を介して連通しており、作動油はこの油路を流れて内・外シリンダー部を出入りすることが出来る。さらに該油路にバルブを設けることで作動油の流れを制御することも可能としている。
【0015】
従って、シャフトの回転速度が所定の領域を超え、大きな遠心力により作動油が外側シリンダー部へ流れようとしても、このバルブで油路内の作動油の流れを阻止することも可能である。そして、作動油の比重を大きくするならば質量が増加し、同じ回転速度であっても遠心力は大きくなり、逆に作動油の比重を小さくするならば質量が減少し、同じ回転速度であっても遠心力は小さくなる。すなわち、使用する作動油の比重によって遠心力の調整が出来る。さらに、本発明のアクチュエータはシャフトの回転に伴う遠心力を動力源として作動することが出来、ポンプでの油圧の供給は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る遠心力を動力源としたアクチュエータの実施例で、(a)はアクチュエータが停止している場合、(b)はアクチュエータが作動している場合。
【図2】本発明に係る遠心力を動力源としたアクチュエータの油路を示す実施例で、(a)は油路が閉じている場合、(b)は油路が開いている場合。
【図3】油路に設けたバルブで作動油の流れを制御した場合のシャフトの回転速度と出力の関係を表すグラフ。
【図4】シャフトの回転とバルブ内の重りの移動距離を示すグラフで、(a)はスプリングを内蔵している場合、(b)はスプリングと両端にマグネットを配置している場合。
【図5】(a)2つのアクチュエータを直列配置した場合、(b)2つのアクチュエータを並列配置した場合。
【図6】本発明のアクチュエータをVベルト式無断変速機に適用した具体例。
【図7】本発明のアクチュエータを2速変速機に適用した具体例。
【図8】遠心力を利用した従来のVベルト式無段変速機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)は本発明に係る遠心力を動力源としたアクチュエータを示す実施例であり、同図の1はシャフト、2はアクチュエータを表し、該アクチュエータ2はシャフト1に取着されている。従って、シャフト1が回転するならば、アクチュエータ2は回転し、回転に伴う遠心力が働き、該アクチュエータ2のピストン5が作動するように構成している。
【0018】
前記図8にて説明した無段変速機ではローラウエイト(ホ)が遠心力の働きで外方向へ移動し、ムーバブルドライブフェース(ハ)がドライブシャフト(イ)の先端側へ移動するように構成しているが、本発明では固体から成るウエイトは備えておらず、その代わりに作動油が使用されている。同図の3はシリンダー、4aは内側シリンダー部、4bは外側シリンダー部を表し、シリンダー3にはピストン5が嵌り、該シリンダー3に嵌るピストン5によって内側シリンダー部4aと外側シリンダー部4bに分離されている。
【0019】
そして、内側シリンダー部4a及び外側シリンダー部4bには作動油7が満たされていて、両シリンダー部4a,4bは油路8にて繋がれている。また、内側シリンダー部4aにはリターンスプリング9が取付けられており、ピストン5を後退させるようにバネ力が付勢されている。ここで、上記リターンスプリング9は内側シリンダー部4aに取付けられて、内側ピストン部6aの先端を押圧するように配置されているが、該リターンスプリング9の取付け位置は限定しない。図1(a)はシャフト1の回転速度が低く又は停止している場合であり、この場合にはアクチュエータ2は停止し、その為にシリンダー3に嵌っているピストン5は後退している。
【0020】
図1(b)はシャフト1の回転速度が高くなって、アクチュエータ2が作動している場合であり、アクチュエータ2が回転することでシリンダー3内の作動油7に遠心力が働き、該遠心力の大きさに応じてピストン5に突出力が働いて作動油7は内側シリンダー部4aから外側シリンダー部4bへ流れ、外側ピストン部6bは突出すること出来る。
【0021】
ところで、内側シリンダー部4aと外側シリンダー部4bはシャフト1と同心を成して形成され、その断面積は同一としていることで、シリンダー3に嵌ってピストン5は前進移動することが出来る。内側シリンダー部4aの作動油7は油路8を通過して外側シリンダー部4bへ同一体積分が流れ込むことで、内側ピストン部6aの移動距離と外側ピストン部6bの移動距離は等しくなる。
【0022】
ところで、図2に示すように油路8にはバルブ10が設けられ、このバルブ10が作動することで油路8はON−OFFに変換される。バルブ10には重り11とスプリング12と逆止弁38が備わっており、シャフト1の回転速度が高くなってアクチュエータ2に遠心力が働くならば、バルブ10の重り11は遠心力でスプリング12を圧縮して外側へ移動し、その結果、油路8が開く。そして、内側シリンダー部4aの作動油7は油路8を流れて外側シリンダー部4bに入り、ピストン5は移動して外側ピストン部6bは突出することが出来る。
【0023】
同図ではバルブ10の拡大図を示しているが、油路8は内径側の油路39aと外径側の油路39bから成り、内側シリンダー部4aの作動油7は遠心力の働きで油路39aを流れて外側シリンダー部4bへ流入する。遠心力が低下しリターンスプリング9の荷重が優勢に成った場合、外側シリンダー部4bの作動油7は油路39bを通過して内側シリンダー部4aへ流入することが出来る。そして、外径側の油路39bに逆止弁38を設けていて、外側シリンダー部4bから内側シリンダー部4aへの作動油7の流れは許容するが、逆に内側シリンダー部4aから外側シリンダー部4bへの作動油の流れは阻止される。
すなわち、上記逆支弁38は遠心力が低下して重り11が降下し、油路39aが塞がった場合に、油路39bを作動油7が流れて外側ピストン部6bを後退させ、油路39aが開くまで外側シリンダー4bを止める働きを行なう。
【0024】
図3は回転速度とピストン5の押圧力Fとの関係を示すグラフであり、回転速度Nがnを超えることでバルブ10が開いて作動油7は油路8を流れ、ピストン5の出力はF−F−Fとなる。ここで、Fは外側ピストン部6bの後端面に作用する力、Fは内側ピストン部6aの先端面に作用する力、Fはリターンスプリング9の力を表し、FとF+Fの差が外側ピストン部6bの突出力として発生する。
【0025】
バルブ10が一旦開いて作動油7が流れるならば、シャフト1の回転速度の上昇に伴い遠心力は増大し、その結果、ピストン5の出力は次第に上昇する。本発明ではバルブ10を制御することで、実線に示すようにピストン5の出力をそれ以上大きくしないようにすることが出来る。
【0026】
図4はバルブ10の動作を示すグラフであり、回転速度と重り11の移動距離を表している。(a)の場合は、回転速度の上昇に伴って重り11は遠心力の作用でスプリング12を圧縮して外側へ移動し、距離Xに達すると油路8は開くことが出来る。(b)の場合は、バルブ10の両端にマグネット13a,13bを取付けた場合であり、回転速度が高くなってもマグネット13aに引かれて重り11はそれ程移動しない。
【0027】
しかし、ある回転速度に達するならば、遠心力が大きくなってマグネット13aの吸引力から重り11が離れ、スプリング12を圧縮して外方向へ瞬時に移動し、油路8は開かれる。その後は回転速度の上昇に伴う遠心力の増大によってスプリング12をさらに圧縮して重り11は外側へ移動する。そして、外側へ移動した重り11は外側に配置しているマグネット13bに引かれ、回転速度が低下する場合には、マグネット13bに引かれることで、所定の回転速度に低下するまでは重り11は内側へ移動しない。
【0028】
しかし、回転速度が所定の領域を超えて低くなるならば、遠心力が小さくなると共にスプリング12のバネ力の作用で重り11は瞬時に内側へ移動することになり、その後、回転速度はゼロになる。このように、バルブ10の両端にマグネット13aとマグネット13bを配置することで、油路8のON−OFFの切り替え動作にヒステリシスが形成される。このようにバルブ10の開閉動作にヒステリシス経路を形成することで、油路8が開いてアクチュエータ2が作動する回転速度と、油路8が閉じてアクチュエータ2が停止する回転速度を違わせることが可能となる。
【0029】
図5はアクチュエータ2を示す他の実施例であり、(a)は対を成す2つのアクチュエータ2a,2bが直列配置した場合、(b)は対を成す2つのアクチュエータ2a,2bは並列配置されている場合をそれぞれ表している。
(a)に示す直列配置したアクチュエータ2aはシリンダー3aを有し、シリンダー3aにはピストン5aが嵌っている。そして、ピストン5aは内側ピストン部6aaと外側ピストン部6abを有し、上記シリンダー3aは内側シリンダー部4aaと外側シリンダー部4abとに分かれている。内側シリンダー部4aaと外側シリンダー部4abの作動油はピストン5aに設けた油路8aを通過して出入りすることが出来る。
【0030】
アクチュエータ2bはシリンダー3bを有し、シリンダー3bにはピストン5bが嵌っている。そして、ピストン5bは内側ピストン部6baと外側ピストン部6bbを有し、上記シリンダー3bは内側シリンダー部4baと外側シリンダー部4bbとに分かれている。内側シリンダー部4baと外側シリンダー部4bbの作動油はピストン5bに設けた油路8bを通過して出入りすることが出来る。ところで、シャフト1が回転して作動油に遠心力が働くならば、内側シリンダー部4aa,4baの作動油は外側シリンダー部4ab,4bbへ流れてピストン5a,5bは前進移動して外側ピストン部6ab,6bbは突出することが出来る。
【0031】
(b)に示す並列配置しているアクチュエータ2aの場合、該アクチュエータ2aはシリンダー3aを有し、シリンダー3aにはピストン5aが嵌っている。そして、ピストン5aは内側ピストン部6aaと外側ピストン部6abを有し、上記シリンダー3aは内側シリンダー部4aaと外側シリンダー部4abとに分かれている。内側シリンダー部4aaと外側シリンダー部4abの作動油はピストン5aに設けた油路8aを通過して出入りすることが出来る。
【0032】
そして、アクチュエータ2bはシリンダー3bを有し、シリンダー3bにはピストン5bが嵌っている。ピストン5bは内側ピストン部6baと外側ピストン部6bbを有し、上記シリンダー3bは内側シリンダー部4baと外側シリンダー部4bbとに分かれている。内側シリンダー部4baと外側シリンダー部4bbの作動油はピストン5bに設けた油路8bを通過して出入りすることが出来る。ところで、シャフト1が回転して作動油に遠心力が働くならば、内側シリンダー部4aa,4baの作動油は外側シリンダー部4ab,4bbへ流れてピストン5a,5bは前進移動して外側ピストン部6ab,6bbは突出することが出来る。勿論、このアクチュエータ2a,2bの油路8にもバルブ10を取付けることは可能である。
【0033】
図6は本発明に係る遠心力を動力源としたアクチュエータ2の適用例を示している。入力側のドライブプーリ14はドライブシャフト15の先端部に固設された固定フェース16と、この固定フェース16に対向してムーバブルドライブフェース17がドライブシャフト15に取付けられ、該ムーバブルドライブフェース17はドライブシャフト15に沿って移動することが出来る。
【0034】
ところで、ドライブシャフト15と同心を成してシリンダー18が設けられ、該シリンダー18にはピストン20が嵌っている。該ピストン20は内側ピストン部21aと外側ピストン部21bから成り、シリンダー18は該ピストン20にて内側シリンダー部19aと外側シリンダー部19bに分離されている。内側シリンダー部19a及び外側シリンダー部19bには作動油7が満たされており、ドライブシャフト15が回転するならば、内側シリンダー部19aの作動油7は遠心力の働きで外側シリンダー部19bへ流れ込み、その結果、リターンスプリング37のバネ力に打ち勝ってピストン20が右方向へ移動し、外側ピストン部21bを突出させる。
【0035】
外側ピストン21bの先端は上記ムーバブルドライブフェース17の背面に当接して押圧し、該ムーバブルドライブフェース17をドライブシャフト15に沿って固定フェース16側へ移動させる。その結果、ドライブプーリ14に巻き掛けられているVベルト22の巻き掛け半径は拡大し、逆にドリブンプーリ23での巻き掛け半径が小さくなって変速する。ドリブンプーリ23ではムーバブルドリブンフェース24を有し、コイルバネ25のバネ力を付勢している。
【0036】
そして、ドライブシャフト15の回転速度が低くなるならば、作動油7に働く遠心力が低下し、リターンスプリング37のバネ力によって外側シリンダー部19bから内側シリンダー部19aへ作動油7が流れてピストン20は後退し、同時に外側ピストン部21bに押圧されているムーバブルドライブフェース17は後退することが出来る。
【0037】
図7は2速変速機に本発明のアクチュエータを適用した具体例を示している。入力軸26と出力軸27は平行に配置され、入力軸26には低速用ギヤ34と高速用ギヤ28が取着され、ギヤ34はワンウエイクラッチ36を介して出力軸27と繋がったギヤ35と噛み合っており、そしてギヤ28は中間軸29に取着したギヤ30と噛み合っている。
【0038】
従って、低速回転の場合にはクラッチ31が作動しない為に、ギヤ28の回転は出力軸27へ伝達されず、ギヤ34と噛み合っているギヤ35が回転し、ワンウエイクラッチ36を介して出力軸が回転するようになる。一方、高速回転の場合には入力軸26の動力はギヤ28,30を介して中間軸29へ伝えることが出来る。そして、中間軸29にはクラッチ31が取付けられ、このクラッチ31は本発明のアクチュエータ2が働いて作動し、出力軸27へ動力が伝達されて高速ギヤに切り替わる。
【0039】
中間軸29と同心を成してシリンダー18が設けられ、該シリンダー18にはピストン20が嵌っている。そして、シリンダー18には作動油7が満たされており、中間軸29が回転するならば、シリンダー18の作動油7は遠心力の働きで外側へ流れ込み、ピストン20を突出させる。すなわち、アクチュエータが回転することでシリンダー18内の作動油7に遠心力が働き、該遠心力の大きさに応じてピストン20に突出力が働いて作動油7は内側シリンダー部から外側シリンダー部へ流れ、リターンスプリングのバネ力に打ち勝って外側ピストン部21bは突出すること出来る。
【0040】
ピストン20が突出することでクラッチ31が働き、出力軸27に取着されているドラム32のディスク33が挟まれて中間軸29の動力が出力軸27へ伝達される。一方、入力軸26にはギヤ34が取着され、このギヤ34は出力軸27に取付けられているギヤ35と直接噛み合っている。従って、入力軸26の回転と共にギヤ34が回転し、このギヤ34と噛み合っているギヤ35も回転するが、ワンウエイクラッチ36を出力軸27に設けていることでギヤ35は空転する。
【符号の説明】
【0041】
1 シャフト
2 アクチュエータ
3 シリンダー
4 シリンダー部
5 ピストン
6 ピストン部
7 作動油
8 油路
9 リターンスプリング
10 バルブ
11 重り
12 スプリング
13 マグネット
14 ドライブプーリ
15 ドライブシャフト
16 固定フェース
17 ムーバブルドライブフェース
18 シリンダー
19 シリンダー部
20 ピストン
21 ピストン部
22 Vベルト
23 ドリブンプーリ
24 ムーバブルドリブンフェース
25 コイルバネ
26 入力軸
27 出力軸
28 ギヤ
29 中間軸
30 ギヤ
31 クラッチ
32 ドラム
33 ディスク
34 ギヤ
35 ギヤ
36 ワンウエイクラッチ
37 リターンスプリング
38 逆止弁
39 油路






【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するシャフトに取付けられて回転に伴って発生する遠心力を動力源としてピストンを突出することが出来るアクチュエータにおいて、該シャフトと同心を成すシリンダーを有し、シリンダーにはピストンが嵌り、該シリンダーはピストンによって外側シリンダー部と内側シリンダー部とに分離され、しかもピストンは内側ピストン部と外側ピストン部を形成すると共に両ピストン部の間には油路を設けてシリンダー内に満たした作動油を内側シリンダー部と外側シリンダー部で出入り可能とし、回転速度が高くなることで発生する遠心力で内側シリンダー部の作動油が外側シリンダー部へ流れ込んでピストンを移動して外側ピストン部を突出するようにしたことを特徴とする遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項2】
回転速度が低下すると内側シリンダー部に設けたリターンスプリングのバネ力にてピストンを後退移動させ、同時に外側ピストン部も後退するようにした請求項1記載の遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項3】
上記油路にバルブを設けた請求項1、又は請求項2記載の遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項4】
上記バルブに重りとバネと逆止弁を取付けた請求項3記載の遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項5】
上記バルブの内径側と外径側にマグネットを取付けた請求項4記載の遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項6】
Vベルト式無段変速機のドライブシャフトにアクチュエータを取付け、外側ピストン部の先端をムーバブルドライブフェースの背面に当接して該ムーバブルドライブフェースをドライブシャフトに沿って移動可能とした請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載の遠心力を動力源としたアクチュエータ。
【請求項7】
入力軸と出力軸は所定の間隔をおいて平行に配置され、低速回転の場合には入力軸から出力軸へギヤ機構を介して回転トルクが伝達され、高速回転の場合には出力軸と同軸を成して配置した中間軸、及び該中間軸と出力軸との間に設けたクラッチ、及びギヤ機構を介して回転トルクを伝達する変速機であって、上記中間軸にアクチュエータを取付け、外側ピストン部を突出してクラッチが係合するようにした請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載の遠心力を利用したアクチュエータ。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251650(P2012−251650A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127053(P2011−127053)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(594079143)アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】