説明

遮音採光断熱材

【課題】遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材を提供する。
【解決手段】ガラス板若しくは硬質樹脂板に貼付、又は、2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板で挟持することができる遮音採光断熱材であって、複数の樹脂フィルム、又は、複数の樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布が空気層を挟んで各々対向した構造を有する遮音採光断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物では、省エネルギーの観点から、外界との高い断熱効果を達成し冷暖房の効率を極限にまで高める試みがなされている。このような目的のために断熱性の高い壁材等が種々提案されている。
建築物の住環境等を考える場合に、採光は極めて重要である。現在の建築物においては、採光部にはガラス窓を設置するのが一般的であるが、壁材等に比べて高い断熱効果を発揮させるのは難しかった。「省エネルギー技術戦略報告書」(平成14年6月12日、経済産業省)によれば、全消費エネルギーの45%が窓等の開口部から損失しているといわれている。
【0003】
断熱性の高いガラスとしては、いわゆるペアガラスが提案されている(例えば、特許文献1等)。ペアガラスは、2枚のガラス間に隙間を設け、ガラス間を真空としたり、アルゴン等の不活性ガスを吹き込んだりしたものであり、ガラス間の空間の存在により、高い断熱効果を発揮しようとするものである。しかしながら、ペアガラスは通常のガラスに比べて重くて嵩張るという問題があった。また、ガラス間に生じる結露を防止するため、特殊な乾燥剤が必要とされていた。また、コスト面でも数万〜十数万円/mかかり、通常の住宅へ応用するのは困難であった。更に、長期間使用する間に空気が侵入して真空状態が破れたり、ガス抜けが起こったりして、性能が低下してしまうことがあるという問題もあった。
【0004】
一方、建築物に用いる壁材としては、騒音対策等の観点から、遮音性の確保も重要な課題となっている。従来から、遮音性を有する壁材としては、一般的に、コンクリート、金属等の無機系材料が用いられてきた。しかしながら、これらの材料は遮音性には優れるものの、透明性がないため、採光が妨げられてしまう。また、これらの材料は重く、施行性が悪い。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1等に開示されたペアガラス等を用いた場合には、透明性に優れ、採光を充分に確保することが可能であって、軽量で、施行性にも優れるが、遮音性に劣るという問題があった。そこで、遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材が求められていた。
【特許文献1】特開2003−026453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラス板若しくは硬質樹脂板に貼付、又は、2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板で挟持することができる遮音採光断熱材であって、複数の樹脂フィルム、又は、複数の樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布が空気層を挟んで各々対向した構造を有する遮音採光断熱材である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、複数の樹脂フィルム、又は、複数の樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布(以下、樹脂フィルム、又は、樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布を総称して、基材ともいう)が空気層を挟んで各々対向した構造を有する遮音採光断熱材は、これをガラス板若しくは硬質樹脂板に貼付、又は、2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板で挟持することにより高い遮音性能を発揮することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の遮音採光断熱材は、複数の樹脂フィルム、又は、樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布が空気層を挟んで各々対向した構造を有する。
本発明の遮音採光断熱材は、2枚の基材間に空気層が挟持された構成のもの(図1(a))であってもよいが、3枚以上の基材間に空気層が挟持された構成のもの(図1(b))が好ましい。複数の空気層を有する本発明の遮音採光断熱材は、より高い断熱効果及び遮音効果を発揮することができる。
【0010】
一般に、音の伝播を低減する方法としては、音の透過を食い止める遮音効果を利用する方法と、音の吸収を増加する吸音効果を利用する方法とが挙げられる。本発明の遮音採光断熱材は、この両方の効果を利用して音の伝播を低減することが可能である。
【0011】
上記基材は、表面に凹凸を有することが好ましい。凹凸を有することによって、本発明の遮音採光断熱材の遮音効果を高めることができる。これは、凹凸によって共鳴の発生を抑制することができるためと考えられる。
【0012】
上記凹凸を構成する材料としては、透光性を有するものであれば特に限定されないが、後述するスペーサを構成する材料と同様のものであることが好ましい。なかでも、自己接着性を有するものであることが好ましい。このような材料を用いることによって、上記基材上への設置がより簡単になり、作業性を向上させることができる。
上記凹凸の構造としては、後述する空気層間隔よりも小さい径や、高さを有するものであれば特に限定されず、例えば、点状、線状等の構造が挙げられる。
上記凹凸を設置する方法としては特に限定されず、例えば、後述するスペーサを構成する材料と同様の材料を用いて、後述する空気層間隔よりも小さい径や、高さとなるように、対峙する基材の片側にのみ設置する方法が挙げられる。
【0013】
上記基材は、表面に細孔を有することが好ましい。表面に細孔を有することによって、本発明の遮音採光断熱材の吸音効果を高めることができる。これは、細孔によって粘性摩擦が生じ、音波エネルギーを低減させることができるためと考えられる。
【0014】
上記細孔を形成する方法としては特に限定されず、例えば、断熱性に悪影響を及ぼさない範囲で、従来公知の方法により穿孔を施す方法等が挙げられる。
上記細孔は、上記基材の単位面積当たりの空隙率によっても異なるが、積極的に穿孔を形成する場合には、上記基材において10mm以下の範囲で穿孔を形成することが好ましい。10mmを超えると、得られる遮音採光断熱材の強度が不充分となることがある。
上記樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布を用いる場合には、基材自体に目あきとなる空隙が存在するため、積極的に穿孔を施すことなく細孔による効果が得られることがある。
【0015】
上記樹脂フィルムとしては、透光性に優れるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、トリ酢酸セルロース等からなるものが挙げられる。
なかでも、自消性であって建築材として適合性がよいことから、ポリカーボネート、塩化ビニルが好適である。
上記樹脂フィルムは、難燃剤等の無機充填剤を含有する樹脂組成物からなるものであってもよい。難燃剤等の無機充填剤を含有することによって、難燃性、不燃性等を向上させることができる。
【0016】
上記樹脂繊維からなる織布若しくは不織布としては、透光性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維等からなる織布若しくは不織布が挙げられる。上記樹脂繊維は、各種樹脂繊維を複合して用いてもよい。上記樹脂繊維は、表面に各種コーテイングが施されていてもよい。
上記樹脂繊維からなる織布の織り方、目あき等、又は、上記不織布の坪量、目あき等としては特に限定されず、本発明の遮音採光断熱材の可視光線透過率が20%以上となる範囲で選択して使用することができる。
上記樹脂繊維からなる織布若しくは不織布には、本発明の遮音採光断熱材の可視光線透過率が20%以上となる範囲で、両面若しくは片面に樹脂層が積層されていてもよい。
【0017】
上記ガラス繊維からなる織布若しくは不織布としては、透光性を有するものであれば特に限定されず、従来公知のガラス繊維を用いることができる。
上記ガラス繊維の繊維径、繊維長、つなぎとして用いるバインダー樹脂、坪量、目あき等としては特に限定されず、本発明の遮音採光断熱材の可視光線透過率が20%以上となる範囲で選択して使用することができる。
上記ガラス繊維からなる織布若しくは不織布には、本発明の遮音採光断熱材の可視光線透過率が20%以上となる範囲で、両面若しくは片面に樹脂層が積層されていてもよい。
【0018】
上記樹脂フィルムの厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。10μm未満であると、得られる遮音採光断熱材の強度が劣ることがあり、300μmを超えると、同じ断熱効果を得るのに必要以上に遮音採光断熱材が厚くなることがある。より好ましい下限は20μm、より好ましい上限は200μmである。
【0019】
上記樹脂繊維からなる織布若しくは不織布の坪量としては特に限定されないが、厚さが100〜300μmとなる範囲で、好ましい下限が10g/m、好ましい上限が60g/mである。坪量が10g/m未満であると、得られる遮音採光断熱材の強度が不充分となることがあり、坪量が60g/mを超えると、得られる遮音採光断熱材の透光性が悪化することがある。
【0020】
上記ガラス繊維からなる織布若しくは不織布の坪量としては特に限定されないが、厚さが150〜500μmとなる範囲で、好ましい下限が10g/m、好ましい上限が60g/mである。坪量が10g/m未満であると、得られる遮音採光断熱材の強度が不充分となるとがあり、遮音採光断熱材の製造過程において、テンションによって破断する可能性がある。坪量が60g/mを超えると、得られる遮音採光断熱材の透光性が悪化し、可視光線透過率が20%未満となることがある。
【0021】
上記基材は、上記厚さの範囲内において、それぞれの基材が同じ厚さを有するものであってもよいが、それぞれの基材が異なる厚さを有することが好ましい。異なる厚さを有することによって、遮音性をより向上させることができる。
【0022】
本発明の遮音採光断熱材において、上記基材は全て同じものであってもよいし、各々異なっていてもよい。図2に、各基材が異なる場合における、本発明の遮音採光断熱材の一例の断面を示す模式図を示した。
図2に示した遮音採光断熱材は、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムと、2枚のポリカーボネートフィルムとを、各々の基材間に空気層を挟んでポリカーボネートフィルムが最外層となるように積層した構造を有する。ポリカーボネートフィルムは、強度と耐候性とに優れることから、これ最外層とすることにより防犯性や耐候性を発揮させることができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度に優れる。
【0023】
上記空気層の厚みの好ましい下限は100μm、好ましい上限は10mmである。上記範囲内であると、特に高い断熱効果及び遮音効果が得られる。より好ましい下限は200μm、より好ましい上限は8mmである。
【0024】
本発明の遮音採光断熱材が複数の空気層を有する場合、各空気層は、上記厚さの範囲内において、それぞれ同じ厚さを有するものであってもよいが、各空気層が異なる厚さを有することが好ましい。異なる厚さを有することによって、遮音性をより向上させることが可能となる。
【0025】
上記空気層は、周辺部を封止することにより「動かない空気の層」を形成してもよい。このような構造を有することによって、高い断熱効果及び遮音効果を発揮するものである。
また、上記空気層は、他の空気層と上記基材を介して通じていてもよく、空気が空気層間を移動することができる構造を有するものであってもよい。
【0026】
上記空気層は、複数のセルに分割することも可能である。空気層が複数のセルに分割されることにより、セルを分割する材料によっては、本発明の遮音採光断熱材全体の遮音効果及び強度を高めることができる。
上記セルを分割する材料としては特に限定されず、後述するスペーサを構成する材料と同様の材料であればよく、弾性等の緩衝機能を有するものが好ましい。弾性等の緩衝機能を有する材料としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、シリコンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ポリエステル樹脂、天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等からなるものが挙げられる。
上記セルを分割する材料としては、透光性を確保する観点からは無色透明であるのが好ましいが、意匠性を付与する場合には、顔料を配合することによって着色したものを用いることが好ましい。
【0027】
また、個々のセルの独立性、気密性が高まることにより、空気層間隔が大きい場合には、より高い遮音性能及び断熱性能を発揮することもある。
空気層の各セルの大きさの好ましい下限は4cm、好ましい上限は1800cmである。4cm未満であると、得られる遮音採光断熱材の透光性及び断熱性が劣ることがあり、1800cmを超えると得られる遮音採光断熱材の強度が劣ることがある。好ましい下限は25cmであり、好ましい上限は1000cmである。
【0028】
上記空気層は、多孔質の透明粒子が充填されることが好ましい。多孔質の透明粒子が充填されることによって、遮音性能及び吸音性能を効果的に向上させることができる。
上記多孔質の透明粒子としては特に限定されないが、アエロジェル粒子が好ましい。アエロジェル粒子は、透光性に優れ、熱伝導率も小さいことから、遮音性能等に加え、断熱性能を向上させることが可能となる。
【0029】
本発明の遮音採光断熱材は、基材間にスペーサを有することが好ましい。該スペーサは、上記空気層の維持(基材間隔の維持)、空気層の周辺部の封止、空気層の分割等に用いられるものである。このようなスペーサを有することによって、制振効果を付与して、遮音性能を向上させることができる。
【0030】
上記スペーサとしては特に限定されないが、遮音採光断熱材の可視光線透過率を確保するために透明であることが好ましく、また、遮音採光断熱材の断熱性能を阻害しないために断熱性が高いものであることが好ましい。このようなスペーサとしては特に限定されないが、例えば、中空体(発泡体を含む)等が好適である。
上記スペーサは、弾性等の緩衝機能を有する材料からなるものであることが好ましい。弾性等の緩衝機能を有する材料としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、シリコンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ポリエステル樹脂、天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等からなるものが挙げられる。
上記スペーサは、透光性を確保する観点からは無色透明であるのが好ましいが、意匠性を付与する場合には、顔料を配合することによって着色したものを用いることが好ましい。
【0031】
上記スペーサは、自己接着性を有するものであることが好ましい。自己接着性を有することによって、本発明の遮音採光断熱材等を作製する工程等を簡便にすることができる。
上記自己接着性を有するスペーサとしては特に限定されず、従来公知の材料からなるものを使用することができ、例えば、保形性を有するよう温度、粘度等を調整したホットメルト接着剤等を使用することができる。
上記スペーサは、自己接着性を有しない場合、ホットメルト接着剤又は両面テープを介して、上記スペーサを上記基材に接着することができる。
【0032】
上記スペーサの形状としては特に限定されず、例えば、粒子状、線状、格子状、波状等のものが挙げられる。なかでも、線状、格子状のスペーサは、制振効果を付与して遮音性を向上させる効果が大きいため好ましい。また、上記空気層の周辺部の封止、空気層の分割のためには、格子状のものが好適である。更に、上記スペーサの形状により、本発明の遮音採光断熱材に意匠性を付与してもよい。なお、本発明の遮音採光断熱材において、上記空気層が複数ある場合には、各々の空気層を構成するスペーサは同一の形状であってもよいし、異なった形状であってもよい。例えば、隣接する空気層を構成する線状スペーサが直交するように配置することによって、全体としてスペーサが格子状となっていてもよい。
【0033】
上記スペーサが粒子状である場合、上記粒子状スペーサの単位面積当たりの個数としては特に限定されないが、1層当たりの好ましい下限は80個/mである。1層当たり80個/m未満であると、充分な制振効果が得られず、遮音性が不充分となったり、層間隔保持強度が不充分で遮音採光断熱材としての耐久性が悪化したりすることがある。好ましい上限は、粒子状のスペーサが連なると線状のスペーサと同様の構成となると考えられることから、後述する線状スペーサの場合と同様であると考えることができる。
【0034】
上記スペーサが線状又は格子状である場合、上記線状又は格子状スペーサの線幅の好ましい下限は0.3mm、好ましい上限は5mmである。0.3mm未満であると、充分な制振効果が得られず、遮音性が不充分となったり、層間隔保持強度が不充分で遮音採光断熱材としての耐久性が悪化したりすることがある。5mmを超えると、部分的な透光性及び断熱性が低下することがある。
【0035】
上記スペーサが線状又は格子状である場合、上記線状又は格子状スペーサの単位面積当たりの本数としては特に限定されないが、好ましい下限は5本/m、好ましい上限は130本/mである。5本/m未満であると、充分な制振効果が得られず、遮音性が不充分となったり、層間隔保持強度が不充分で遮音採光断熱材としての耐久性が悪化したりすることがある。130本/mを超えると、部分的な透光性及び断熱性が低下することがある。
【0036】
本発明の遮音採光断熱材は、可視光線透過率の好ましい下限が20%である。20%未満であると、充分な採光を得ることができないことがある。より好ましい下限は30%、更に好ましい下限は40%である。
【0037】
本発明の遮音採光断熱材を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、図3又は図4に記載した態様の製造装置を用いる方法が挙げられる。
【0038】
図3に記載した製造装置4は、ロール状に巻き取った基材のロールから基材を送り出す基材送り出し部41、ロール状に巻き取ったロールからスペーサを送り出すスペーサ送り出し部42、基材とスペーサとを積層する貼り合せ部43とからなる。また、図3に記載した製造装置は、更に、スペーサ送り出し部42から送り出したスペーサの両面にホットメルト接着剤を塗布する接着剤加工部44を有する。
【0039】
図3に記載した製造装置を用いて本発明の遮音採光断熱材を製造する方法では、まず、スペーサ送り出し部42からスペーサを送り出す。送り出されたスペーサは、接着剤加工部44において両面にホットメルト接着剤が塗布される。次いで、スペーサの送り出しに合わせて、基材を送り出し部41から基材を送り出す。基材とスペーサとは、貼り合わせ部43においてエアブロー等により積層され、加熱されて接着される。上記エアブローは、積層の直前まで基材やスペーサが合着するのを防ぐとともに、積層後には熱風により接着するのにも用いられる。
なお、基材とスペーサとは、積層する前に、50〜130℃程度の予熱を行うことが好ましい。予熱により基材やスペーサの歪をとることができ、積層後に収縮等が発生するのを防止することができる。
【0040】
図4は、本発明の遮音採光断熱材の製造装置の一例を示した模式図である。図4(a)は、本発明の遮音採光断熱材の製造装置の側面図を示した模式図である。図4(b)は、本発明の遮音採光断熱材の製造装置の上面図を示した模式図である。
【0041】
図4に示した製造装置を用いて本発明の遮音採光断熱材を製造する方法では、まず、基材送り出し部から無孔の基材51を送り出して、基材51の端部を固定装置により基材固定テーブル61に固定した後、テンション負荷ロールにより幅方向に一定張力を掛けながら、無孔の基材51を貼付プレスロールと基材固定テーブル61との間に挟む。次いで、無孔の基材51を貼付プレスロールにより基材固定テーブル61に押しつけて、一定間隔で位置決め孔を穿設しながら、基材固定テーブル61を一定速度で一方向に移動させる。基材固定テーブルの移動中に、調温したスペーサ樹脂組成物等を吐出口62から基材51上に吐出してスペーサ52を形成する。基材固定テーブル61が一定距離を移動したところで、基材51をカッターによって切断し、基材固定テーブル61を降下させた後、移動手段が基材固定テーブル61をその開始位置に戻す。このスペーサ52付き基材51形成工程を複数回繰り返すことによって、遮音採光断熱材5を製造することができる。ただし、最外層の基材を固定する際には、スペーサ52の形成は行わないようにする。
【0042】
本発明の遮音採光断熱材は、また、基材上に、発泡剤を含有する硬化性樹脂組成物(例えば、エポキシ系等熱硬化型硬化性樹脂組成物やウレタン系等反応型硬化性樹脂組成物等)や熱可塑性樹脂組成物を塗工した後、発泡剤を発泡させる方法によっても製造することができる。このような製造方法を用いた場合には、塗工後の発泡物が、上記スペーサとしての役割を果たす。
【0043】
本発明の遮音採光断熱材は、ガラス板若しくは硬質樹脂板に貼付、又は、2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板で挟持することにより高い遮音性能を発揮することができる。
ガラス板又は硬質樹脂板と、前記ガラス板又は硬質樹脂板に貼付された本発明の遮音採光断熱材とからなる遮音採光断熱板もまた、本発明の一つである。
本発明の遮音採光断熱材と、前記遮音採光断熱材を挟持する2枚のガラス板又は硬質樹脂板とからなる遮音採光断熱板もまた、本発明の一つである。
なお、本発明の遮音採光断熱材は、後述するガラス板又は硬質樹脂板によって挟持した場合と、上記スペーサや他の接着剤等を用いて後述するガラス板又は硬質樹脂板に固定した場合とで、得られる遮音性能等は異なることがある。
【0044】
上記ガラス板を構成するガラスとしては特に限定されず、例えば、フロートガラス、型板硝子、網入りガラス、合わせガラス、強化ガラス、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラス等が挙げられる。
上記硬質樹脂板を構成する樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0045】
ガラス板又は硬質樹脂板と、前記ガラス板又は硬質樹脂板に貼付された本発明の遮音採光断熱材とからなる本発明の遮音採光断熱板を製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の遮音採光断熱材と、ガラス板若しくは硬質樹脂板とを従来公知の方法によって固定する方法等が挙げられる。
本発明の遮音採光断熱材と、ガラス板若しくは硬質樹脂板とを固定する方法としては特に限定されず、例えば、接着固定する方法、接着固定せず枠固定する方法等が挙げられる。
【0046】
上記接着固定する方法としては特に限定されず、例えば、他の接着剤等や上記スペーサを用いて固定する方法が挙げられる。具体的には例えば、本発明の遮音採光断熱材又はガラス板若しくは硬質樹脂板に対し、従来公知の接着剤等を面状に塗布した後、本発明の遮音採光断熱材とガラス板若しくは硬質樹脂板とを貼付する方法;本発明の遮音採光断熱材又はガラス板若しくは硬質樹脂板の四辺端部のみに、一定幅に従来公知の接着剤等を塗布した後、又は、本発明の遮音採光断熱材又はガラス板若しくは硬質樹脂板の四辺端部のみに両面テープ等を貼付した後、本発明の遮音採光断熱材とガラス板若しくは硬質樹脂板とを貼付する方法;本発明の遮音採光断熱材において形成されたスペーサと同様の間隔で、上記スペーサと同様の材料をガラス板若しくは硬質樹脂板に点状、線状、格子状に固定した後、本発明の遮音採光断熱材とガラス板若しくは硬質樹脂板とを貼付する方法等が挙げられる。
上記スペーサを介して接着固定する方法を用いる場合には、上記スペーサが自己接着性を有するものであることが好ましい。このようなスペーサを用いることによって、作業性を向上させることができる。
【0047】
上記接着固定せず枠固定する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の内装用枠材等の固定枠を用いて、本発明の遮音採光断熱材とガラス板若しくは硬質樹脂板とを挟み込むことによって固定する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の遮音採光断熱材と、前記遮音採光断熱材を挟持する2枚のガラス板又は硬質樹脂板とからなる本発明の遮音採光断熱板を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上述の本発明の遮音採光断熱材と、ガラス板若しくは硬質樹脂板とを固定する方法と同様の方法を用いることができる。すなわち、上記接着固定する方法、上記接着固定せず枠固定する方法等を用いることができる。
2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板を用いて、本発明の遮音採光断熱材を挟持する場合、各ガラス板若しくは硬質樹脂板と、本発明の遮音採光断熱材とを、それぞれ同様の方法により固定してもよく、それぞれ異なる方法により固定してもよい。
【0049】
本発明の遮音採光断熱板の用途としては特に限定されず、本発明の遮音採光断熱材を、ガラス板に貼付、又は、2枚のガラス板で挟持する場合には、例えば、建築物の窓ガラス等の開口部等に好適に用いることが可能である。本発明の遮音採光断熱材を、硬質樹脂板に貼付、又は、2枚の硬質樹脂板で挟持する場合には、例えば、建築物内の間仕切り材等に好適に用いることが可能である。なかでも、間仕切り材として使用する場合には、重量規制があるところ、本発明の遮音採光断熱材は非常に軽量であることから、好適に用いることができる。このように使用することによって、本発明の遮音採光断熱板は、高い遮音性能と断熱性能とを発揮することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
ポリエステル系ホットメルト接着剤用樹脂をスペーサとして用いた。このスペーサを165℃に調温し、断面形状の直径2mm、長さ550mmの計7本の線状スペーサとして、大きさ550mm×550mm、厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムともいう)上の端部、端部から75mmの位置、端部から175mmの位置、端部から275mmの位置、端部から375mmの位置、端部から475mmの位置、更に他方の端部に塗布し、図4に示す製造装置を用いて、このスペーサが挟持されるようにして、大きさ550mm×550mm、厚み125μmの6枚のPETフィルムを積層し、遮音採光断熱材を作製した。得られた遮音採光断熱材の総厚さは約10.75mmであった。
更に、2枚のフロートガラス(550mm×550mm、厚み3mm)を用い、得られた遮音採光断熱材を挟持するようにして挟み込み、フロートガラスと得られた遮音採光断熱材とを積層して得られた積層体の周囲をブチルゴムテープ(厚み1mm、両面スーパーブチルテープno.5931、スリオンテック社製)によって封入固定し、サンプルを作製した。フロートガラスと得られた遮音採光断熱材とは、周囲のブチルゴムテープ以外は、接着固定していない状態である。
得られたサンプルの構成を表1に示す。
図5は得られたサンプルの正面図、図6は図5のA−A断面図である。図5及び図6において、7はフロートガラスである。
【0053】
(実施例2)
2枚のフロートガラス(550mm×550mm、厚み3mm)を用いた代わりに、2枚のポリカーボネート板(550mm×550mm、厚み3mm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、サンプルを作製した。
得られたサンプルの構成を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
ブチルゴムテープ(厚み1mm、両面スーパーブチルテープno.5931、スリオンテック社製)をスペーサ及び積層体の端部の封入材として用いた。1枚のフロートガラス(550mm×550mm、厚み3mm)の四辺端部に設置した10mmのスペーサを挟持するようにして、もう1枚のフロートガラスを設置し、更に周囲をブチルゴムテープでシールしてサンプルを作製した。
得られたサンプルの構成を表2に示す。
【0055】
(比較例2)
2枚のフロートガラス(550mm×550mm、厚み3mm)を用いた代わりに、2枚のポリカーボネート板(550mm×550mm、厚み3mm)を用いた以外は、比較例1と同様の方法により、サンプルを作製した。
得られたサンプルの構成を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
(評価)
実施例1、2及び比較例1、2で得られたサンプルについて、以下の評価(1)〜(3)を行った。評価(1)の結果は図7及び8に示した。評価(2)及び(3)の結果は、表3に示した。
【0059】
(1)音響透過損失の測定
JIS A 1416に準拠した方法により作製した50mの残響室にて、500〜5000Hzの周波数領域で、音響透過損失(dB)を測定した。開口部面積は550×550mmであった。
結果を図7及び8に示した。
【0060】
(2)熱貫流率の測定
発泡ポリスチレンからなり、幅300×高さ1200mmの開口部を有する簡易断熱箱を作製し、開口部と対峙した箱内部の面に、面状ヒーターを設置した。開口部に開口面積と同じサイズを有する得られたサンプルをセットし、簡易断熱箱を20℃に設定した恒温室に設置した。箱内温度を箱外温度よりも20℃高くなるように、面状ヒーターの加熱を行い、採光断熱材表面に50×50mmサイズの熱流板(英弘精機社製)を設置し、通過した熱量を、定常状態で測定した。箱内の空気温度と箱外の空気温度との差、及び、通過した熱量から、熱貫流率(W/m・K)を算出し、以下の基準で評価を行った。
なお、上述の簡易断熱箱における開口部は、垂直方向にサンプルを設置して試験を実施するため、前面部に設置した。
○:2.5(W/m・K)未満
△:2.5(W/m・K)以上、3.0(W/m・K)未満
×:3.0(W/m・K)以上
【0061】
(3)可視光線透過率の測定
分光光度計(U−4100型、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、JIS R 3106に準拠した方法により、可視光線透過率(%)を測定し、以下の基準で評価を行った。
○:20%以上
×:20%未満
【0062】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、遮音性、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である遮音採光断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の遮音採光断熱材の断面を示す模式図である。
【図2】各基材が異なる場合における、本発明の遮音採光断熱材の断面を示す模式図である。
【図3】本発明の遮音採光断熱材を製造する製造装置を示す模式図である。
【図4】本発明の遮音採光断熱材を製造する製造装置を示す模式図である。
【図5】実施例1で製造した遮音採光断熱板の正面を示す模式図である。
【図6】図5のA−A断面を示す模式図である。
【図7】音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図8】音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1a 基材
1a’ ポリカーボネートフィルム
1b 基材
1b’ ポリエチレンテレフタレートフィルム
1c 基材
1c’ ポリエチレンテレフタレートフィルム
1d’ ポリカーボネートフィルム
2 空気層
3 スペーサ
4 製造装置
41 基材送り出し部
42 スペーサ送り出し部
43 貼り合せ部
44 接着剤加工部
5 遮音採光断熱材
6 製造装置
51 基材
52 スペーサ
53 帯状部
61 基材固定テーブル
61a 位置決めピン
61b 固定手段
62 吐出口
63 幅広吐出口
7 フロートガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板若しくは硬質樹脂板に貼付、又は、2枚のガラス板若しくは硬質樹脂板で挟持することができる遮音採光断熱材であって、複数の樹脂フィルム、又は、複数の樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布が空気層を挟んで各々対向した構造を有することを特徴とする遮音採光断熱材。
【請求項2】
空気層は、複数のセルに分割されていることを特徴とする請求項1記載の遮音採光断熱材。
【請求項3】
樹脂フィルム、又は、樹脂繊維若しくはガラス繊維からなる織布若しくは不織布間にスペーサを有することを特徴とする請求項1又は2記載の遮音採光断熱材。
【請求項4】
スペーサは、中空体であることを特徴とする請求項3記載の遮音採光断熱材。
【請求項5】
ガラス板又は硬質樹脂板と、前記ガラス板又は硬質樹脂板に貼付された請求項1、2、3又は4記載の遮音採光断熱材とからなることを特徴とする遮音採光断熱板。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の遮音採光断熱材と、前記遮音採光断熱材を挟持する2枚のガラス板又は硬質樹脂板とからなることを特徴とする遮音採光断熱板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−223261(P2008−223261A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60251(P2007−60251)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】