説明

配線基板及びその製造方法

【課題】 Pb含有率の低いSn系高温半田を用いているにも拘わらず、Cu系のパッド表面を均一に被覆することができる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 開口部18h内に金属パッド17の本体層17mが露出するようにソルダーレジスト層18を形成し、該露出した本体層17mの表面をSn系予備メッキ層91にて被覆する予備メッキ工程と、Sn系予備メッキ層91上に、含有される半田粉末がSn系高温半田からなる半田ペースト87pを、Sn系予備メッキ層91よりも厚く塗布する半田ペースト87p塗布工程と、本体層17m上のSn系予備メッキ層91の表面を覆う半田ペースト87pの塗付層を、Sn系高温半田の液相線温度よりも高温に加熱することにより、Sn系予備メッキ層91とともに溶融させ、本体層17m表面にて濡れ拡がらせることによりSn系半田被覆層87を形成する半田溶融工程と、をこの順序にて実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は配線基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−112514号公報
【非特許文献1】「高信頼性Sn−Ag系鉛フリーはんだの開発」 豊田中央研究所R&Dレビュー Vol.35 No.2 (2000) 39頁
【0003】
BGA(Ball Grid Array:ボール グリッド アレイ) 接続を前提としたオーガニックパッケージにおいては、BGAをなす半田接続部は半田ボールにて形成される。通常、基板上に形成されたCu系パッドに半田ボールを載置し、リフロー処理してBGAの半田接続部を形成する。半田ボールの材質は、従来、Pb含有率の高い高温半田が使用されてきた。高温半田はリフロー温度が高く、Cu系パッドとの濡れ性も共晶半田等と比較すれば悪いので、接続不良を招きやすかった。特許文献1には、Cu系パッド上にペーストを塗布して半田濡れ性を改善しようとする常套的な技術も開示されているが、効果が十分とは思われない。他方、Cu系パッド上に共晶半田ペーストを塗付し、これを溶融して補助接続用の半田層をCu系パッド上に予め形成しておくことが考えられる。濡れ性の良好な共晶半田層を予めパッド上に形成しておくことで、半田ボールの接続強度を高めることが期待できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最近では、環境汚染の問題から、従来のSn−Pb共晶半田に代えて、Pbを含有しない、いわゆるPbフリー半田が使用されるようになってきた。Pbフリー半田はリフロー温度が高く、Cu系パッドとの濡れ性に劣るため、接続補助用の半田層を溶融形成しようとしてもパッド表面上にうまく濡れ広がらず、露出面が多く残留して、接続補助用としての機能が不十分となる問題がある。また、濡れ広がらずにまとまったPbフリー半田がパッド上で高く盛り上がるので、半田ボールを載置・実装する際に、パッド上でボールのが安定しなくなり、位置決め精度に支障を来たす問題も生じやすくなる。特にパッド上の露出面を減少させるため半田ペーストの塗布量を増加させると、当該不具合はますます生じやすくなる。
【0005】
本発明の課題は、Pb含有率の低いSn系高温半田を用いているにも拘わらず、Cu系のパッド表面を均一に被覆することができる配線基板の製造方法と、それによって製造可能な配線基板とを提供することにある。
【発明を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の配線基板は、
高分子材料からなる誘電体層と導体層とが交互に積層された配線積層部と、該配線積層部の前記誘電体層にて形成された主表面上に配置される複数の金属パッドと、配線積層部の前記主表面上に配置され、金属パッドを露出させるための開口部が形成されたソルダーレジスト層とを備え、
金属パッドは、Cuメッキ層からなる本体層と、Snを主成分とする液相線温度が185℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率81%以上にて当該本体層と接する形で覆うとともに、前記開口部の中央位置で厚さ最大となり、前記開口部の内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、前記中央位置での厚さhが前記開口部の深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態を有したSn系半田被覆層とを有してなる配線基板の製造方法であって、
開口部内に金属パッドの本体層が露出するようにソルダーレジスト層を形成し、該露出した本体層の表面をSn系予備メッキ層にて被覆する予備メッキ工程と、
Sn系予備メッキ層上に、含有される半田粉末がSn系高温半田からなる半田ペーストを、Sn系予備メッキ層よりも厚く塗布する半田ペースト塗布工程と、
本体層上のSn系予備メッキ層の表面を覆う半田ペーストの塗付層を、Sn系高温半田の液相線温度よりも高温に加熱することにより、Sn系予備メッキ層とともに溶融させ、本体層表面にて濡れ拡がらせることによりSn系半田被覆層を形成する半田溶融工程と、をこの順序にて実施することを特徴とする。
【0007】
一般に多用されているSn−Pb共晶半田は、Sn−38質量%Pbの共晶組成を有し、融点は183℃である。この組成からPbリッチ側にシフトしても、Snリッチ側にシフトしても合金の融点(液相線)は上昇する。単体のSn金属は、共晶半田から単純に全てのPbを削減したものに相当するが、融点が232℃である。本発明で採用するSn系高温半田において「Snを主成分とする」とは、Snが共晶半田における62質量%以上に含有されていることをいう。そして、その半田の融点を185℃以上に設定することは、Sn−Pb共晶半田からPb含有率を減少させたSn合金により半田を構成することを意味する(融点の上限は、Sn単体の232℃ということにある)。環境保護の観点からは、上記高温半田部材を構成するSn合金は、Pb含有率が5質量%以下であること(より望ましくは1質量%以下であること、さらに望ましくは、不可避的不純物レベルのものを除き、Pbが可及的に含有されていないこと)がよい、ということになる。
【0008】
上記本発明の配線基板の製造方法によると、ソルダーレジスト層に露出したCuメッキ層からなるパッドの本体層表面に、上記Sn系高温半田によりSn系半田被覆層を形成する。この際、Sn系高温半田からなる半田ペーストをパッドの本体層表面に直接塗布するのではなく、これに先立ってSn系予備メッキ層を本体層表面に薄く形成し、その上に半田ペーストを塗布して溶融させる。これにより、Cuに対する濡れがそれ程良好でないSn系高温半田を、本体層をなすCuメッキ層上にて均一に濡れ拡がらせることができ、ひいては半田ペーストの塗布量を少なくしても、パッドの表面を高い被覆率で均一に覆うことができる。
【0009】
その結果、従来不可能であった下記の本発明の配線基板の構造が初めて実現できるようになる。すなわち、該配線基板は、高分子材料からなる誘電体層と導体層とが交互に積層された配線積層部と、該配線積層部の誘電体層にて形成された主表面上に配置される複数の金属パッドと、配線積層部の主表面上に配置され、金属パッドを露出させるための開口部が形成されたソルダーレジスト層とを備え、
金属パッドは、Cuメッキ層からなる本体層と、液相線温度が185℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の開口部内に位置する本体層の表面を、面積被覆率81%以上にて当該本体層と接する形で覆うとともに、開口部の中央位置で厚さ最大となり、開口部の内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、中央位置での厚さhが開口部の深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態を有したSn系半田被覆層とを有してなることを特徴とする。
【0010】
すなわち、Cuとの濡れ性に劣るSn系高温半田を用いているにも拘わらず、Cuメッキ層からなる本体層の表面を、面積被覆率81%以上にて、開口部の中央位置で厚さ最大となり、開口部の内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、中央位置での厚さhが開口部の深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態のSn系半田被覆層、つまり、溶融金属をパッドの本体層上にて均一に濡れ拡がらせて得られる形状のSn系半田被覆層を適度な厚さにて形成することが、初めて可能となる。
【0011】
具体的には、以下のような効果を奏することができる。
(1)パッド表面が、Pb含有量が削減されたSn系半田被覆層で覆われるので環境対策上有効であり、かつ、Cuとの濡れ性に劣るSn系高温半田でも、パッド表面を均一に覆うSn系半田被覆層の形成が可能となったことで、その普及も促進することができる。
(2)金属パッドは、配線基板の裏面側に複数個が格子状ないし千鳥状に配列し、接続先となる基板の端子と接続するための半田ボール部材が各々結合されるボールグリッドアレイパッドを形成するものとして形成することができる。この場合、Sn系半田被覆層は、Pb含有量が削減されているにも拘わらず、パッド表面からは不完全半田被覆による露出面が大幅に減少し、半田ボール部材の接続強度を高めることができるとともに、そのばらつきも顕著に改善される。
(3)Sn系高温半田の濡れ広がりが良好なので、Sn系半田被覆層の厚さを増やさなくともパッド表面を均一に被覆できるので、該Sn系半田被覆層の中央位置での厚さhをソルダーレジスト層の開口部の深さHよりも小さくすることができる。これは、半田ボール部材をソルダーレジスト層の開口部に載置するときの位置決め安定性を大幅に向上させる。
(4)金属パッドは、配線基板の表面側に形成された光学位置決め用のマーキングパッドとすることもできるが、この場合、パッド表面か反射率の良好なSn系半田被覆層にて均一に覆われることで、その光学的な検出精度を高めることができる。
【0012】
Sn系半田被覆層は、Snを主成分とする液相線温度が190℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率90%以上にて当該本体層と接する形で覆うものとすることが望ましく、特には、Snを主成分とする液相線温度が200℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率95%以上にて当該本体層と接する形で覆うものとすることが望ましい。液相線温度が200℃以上のSn系高温半田であれば、Pbの含有量をさらに大幅に現ずることが可能となる。例えば、非特許文献1の表1に列挙されている各種組成のPbフリー半田においても、融点(液相線温度)Tsは全て200℃以上である。また、Sn系半田被覆層は、本体層の表面を、面積被覆率90%以上、望ましくは95%以上にて当該本体層と接する形で覆うものとすることで、前述の(1)〜(4)の効果がさらに高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図3は本発明の一実施形態に係る半導体部品付き配線基板1の断面構造を模式的に示すものである。配線基板1は、耐熱性樹脂板(例えばビスマレイミド−トリアジン樹脂板)や、繊維強化樹脂板(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂)等で構成された板状コア2の両表面に、所定のパターンに配線金属層をなすコア導体層M1,M11がそれぞれ形成される。これらコア導体層M1,M11は板状コア2の表面の大部分を被覆する面導体パターンとして形成され、電源層又は接地層として用いられるものである。他方、板状コア2には、ドリル等により穿設されたスルーホール12が形成され、その内壁面にはコア導体層M1,M11を互いに導通させるスルーホール導体30が形成されている。また、スルーホール12は、エポキシ樹脂等の樹脂製穴埋め材31により充填されている。
【0014】
また、コア導体層M1,M11の上層には、感光性樹脂組成物6にて構成された第一ビア層(ビルドアップ層:誘電体層)V1,V11がそれぞれ形成されている。さらに、その表面にはそれぞれ金属配線7を有する第一導体層M2,M12がCuメッキにより形成されている。なお、コア導体層M1,M11と第一導体層M2,M12とは、それぞれビア34により層間接続がなされている。同様に、第一導体層M2,M12の上層には、感光性樹脂組成物6を用いた第二ビア層(ビルドアップ層:誘電体層)V2,V12がそれぞれ形成されている。その表面には、金属端子パッド8,18を有する第二導体層M3,M13が形成されている。これら第一導体層M2,M12と第二導体層M3,M13とは、それぞれビア34により層間接続がなされている。ビア34は、図3に示すように、ビアホール34hとその内周面に設けられたビア導体34sと、底面側にてビア導体34sと導通するように設けられたビアパッド34pと、ビアパッド34pと反対側にてビア導体34hの開口周縁から外向きに張り出すビアパッド34lとを有している。
【0015】
板状コア2の第一主表面MP1においては、コア導体層M1、第一ビア層V1、第一導体層M2及び第二ビア層V2が第一の配線積層部L1を形成している。また、板状コア2の第二主表面MP2においては、コア導体層M11、第一ビア層V11、第一導体層M12及び第二ビア層V12が第二の配線積層部L2を形成している。いずれも、第一主表面が誘電体層6にて形成されるように、誘電体層と導体層とが交互に積層されたものであり、該第一主表面CP上には、複数の金属端子パッド10ないし17がそれぞれ形成されている。第一配線積層部L1側の金属端子パッド10は、集積回路部品などをフリップチップ接続するためのパッドである半田パッドを構成する。
【0016】
また、第二配線積層部L2側の金属端子パッド17は、配線基板自体をマザーボード等にボールグリッドアレイ(BGA)により接続するための裏面パッドとして利用されるものである。図2に示すように、第二導体層M13内の第二側パッド17も、格子状に配列形成されている。そして、各第二導体層M3,M13上には、それぞれ、感光性樹脂組成物よりなるソルダーレジスト層8,18(SR1,SR11)が形成されている。いずれも第一側パッド10あるいは第二側パッド17を露出させるために、各パッドに一対一に対応する形で開口部8h,18hが形成されている。
【0017】
ビア層V1,V11,V2,V12、及びソルダーレジスト層8,18は例えば以下のようにして製造されたものである。すなわち、感光性樹脂組成物ワニスをフィルム化した感光性接着フィルムをラミネート(貼り合わせ)し、ビアホール34hに対応したパターンを有する透明マスク(例えばガラスマスクである)を重ねて露光する。ビアホール34h以外のフィルム部分は、この露光により硬化する一方、ビアホール34h部分は未硬化のまま残留するので、これを溶剤に溶かして除去すれば、所期のパターンにてビアホール34hを簡単に形成することができる(いわゆるフォトビアプロセス)。
【0018】
図3において第二側パッド17は、本発明の適用対象となる金属パッドである(以下、金属パッド17とも記載する)。金属パッド17は、図2に示すごとく格子状(ないし千鳥状)に配列し、図3に示すように、半田ボール部材97が各々結合される。図4は、その詳細を上下反転して示すものであり、金属パッド17は、Cuメッキ層からなる本体層17mと、液相線温度が185℃以上232℃未満(望ましくは190℃以上232℃未満、より望ましくは195℃以上232℃未満、さらに望ましくは200℃以上232℃未満)のSn系高温半田からなるSn系半田被覆層87とを有してなる。Sn系半田被覆層87は、ソルダーレジスト層18の開口部18h内に位置する本体層17mの表面を、面積被覆率81%以上(望ましくは85%以上、より望ましくは90%以上、さらに望ましくは95%以上:面積被覆率は高ければ高いほどよい)にて当該本体層17mと接する形で覆うとともに、開口部18hの中央位置で厚さ最大となり、開口部18hの内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、中央位置での厚さhが開口部18hの深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態を有してなる。なお、半田ボール部材97の材質もSn系高温半田である。
【0019】
Sn系半田被覆層87を構成するSn系高温半田について詳しく説明する。単体のSn金属は、共晶半田から単純に全てのPbを削減したものに相当するが、融点が232℃と共晶半田の融点よりも50℃近くも高く、そのままでは代替半田としての採用は難しい。この場合、採用可能なSn系高温半田については、Snを主成分(前述のごとく、共晶半田における62質量%以上の含有率をいう)として、共晶形成成分の主体はPb以外の元素から模索する。Sn−Pb共晶半田からPb含有率を大幅に下げたSn合金により半田部材を構成しようとした場合、半田の融点は185℃(特には200℃)を超える高温半田となることが不可避となる(上限は、Sn単体の232℃である)。環境保護の観点からは、Sn系高温半田は、Pb含有率が5質量%以下であること(より望ましくは1質量%以下であること、さらに望ましくは、不可避的不純物レベルのものを除き、Pbが可及的に含有されていないこと)がよい。
【0020】
Sn系高温半田においてSnに添加する副成分は、融点低下効果がなるべく大きいことに加え、価格が安価であるか、多少高価であっても添加量が少なくて済むこと、半田付け性や流れ性が良好であること、耐食性に優れていること、などが条件となる。しかし、これらをバランスよく具備した副成分の種類は案外限られており、Zn、Bi、Ag及びCuなど数元素に過ぎない。Sn−Zn系は15質量%Zn付近に共晶点を有し、該組成で195℃程度まで融点が下がる。しかし、Znは耐食性に難点があり、通常は7〜10質量%前後の添加量が留められるが、該組成付近の二元系では215℃前後までしか融点が下がらない。そこで、1〜5質量%のBiを添加して融点調整を行なうが、最終的に200℃未満の融点を得ることは難しい。さらに、Biは高価であり、戦略物質でもあるため供給の安定性にも難がある。
【0021】
一方、AgやCuは、単独ではSnよりもはるかに高融点であるが、Sn−Ag系については5質量%Ag付近の、Sn−Cu系については2質量%Cu付近の、いずれもSnリッチ側に共晶点が存在する。また、Ag−Cu系も共晶系であり、Sn−Ag−Cuの三元共晶を利用することでさらに融点を下げることができる。しかし、Sn−Ag系もSn−Cu系も、いずれも二元共晶温度は220℃前後であり、3元共晶系を採用しても200℃以下に融点を下げることは不可能である。
【0022】
Sn系半田被覆層87は、低融点化の観点から、Snの含有量が94質量%以上99質量%以下であり、共晶形成副成分としてAg及びCuの一方又は双方を合計で1質量%以上6質量%にて含有するSn系高温半田を用いることが望ましい。例えば、Sn−Ag系合金の場合、低融点化の観点からの推奨組成は、Snに対しAg含有率が3質量%以上6質量%以下である。同様に、Sn−Cu系合金の場合、Snに対しCu含有率が1質量%以上3質量%以下である。さらに、Sn−Ag−Cu合金の場合は、Ag+Cuが3質量%以上6質量%以下であり、Cu/(Ag+Cu)が質量比にて0.1以上0.5以下である。いずれの場合においても、半田の融点は200℃以上となる。
【0023】
本発明においては、上記のようなSn系高温半田を用いて、ソルダーレジスト層18に露出したCuメッキ層からなるパッドの本体層17mの表面に、上記Sn系高温半田によりSn系半田被覆層87を形成する必要がある。図5に示すように、Cuメッキ層からなる本体層17mの表面上に直接半田ペーストを塗布してリフローすることによりSn系半田被覆層87を溶融形成しようとしても、Sn系高温半田はリフロー温度が高く、Cuとの濡れ性に劣るためうまく濡れ広がらない。その結果、露出面17eが多く残留して半田ボール97の接続強度が低下したり、強度がばらついたりする不具合につながる。また、濡れ広がらずにまとまった半田87’が本体層17m上で高く盛り上がるので、半田ボール97を載置・実装する際に、パッド上でボール97が安定しなくなり、位置決め精度に支障を来たす問題も生じやすくなる。
【0024】
そこで、本発明においては、図6に示すような工程を採用する。まず、工程1に示すように、開口部18h内に金属パッド17の本体層17mが露出するようにソルダーレジスト層18を形成し、該露出した本体層17mの表面を、無電解Snメッキ又は電解Snメッキにより、Sn系予備メッキ層91にて被覆する(予備メッキ工程)。次に、Sn系予備メッキ層91上に、含有される半田粉末がSn系高温半田からなる半田ペースト87pを、Sn系予備メッキ層91よりも厚く塗布する(半田ペースト87p塗布工程)。そして、本体層17m上のSn系予備メッキ層91の表面を覆う半田ペースト87pの塗付層を、Sn系高温半田の液相線温度よりも高温に加熱することにより、Sn系予備メッキ層91とともに溶融させ、本体層17m表面にて濡れ拡がらせることによりSn系半田被覆層87を形成する(半田溶融工程)。
【0025】
すなわち、Sn系高温半田からなる半田ペースト87pをパッドの本体層17m表面に直接塗布するのではなく、これに先立ってSn系予備メッキ層91を本体層17m表面に薄く形成し、その上に半田ペースト87pを塗布して溶融させる。これにより、Cuに対する濡れがそれ程良好でないSn系高温半田を、本体層17mをなすCuメッキ層上にて均一に濡れ拡がらせることができ、ひいては半田ペースト87pの塗布量を少なくしても、パッドの表面を高い被覆率で均一に覆うことができる。
【0026】
その結果、Sn系半田被覆層87は、Pb含有量が削減されているにも拘わらず、パッド表面からは不完全半田被覆による露出面が大幅に減少し、半田ボール部材の接続強度を高めることができるとともに、そのばらつきも顕著に改善される。また、Sn系高温半田の濡れ広がりが良好なので、Sn系半田被覆層87の厚さを増やさなくともパッド表面を均一に被覆できるので、該Sn系半田被覆層87の中央位置での厚さhをソルダーレジスト層18の開口部18hの深さHよりも小さくすることができる。これは、半田ボール部材をソルダーレジスト層18の開口部18hに載置するときの位置決め安定性を大幅に向上させる。
【0027】
上記の方法の採用により、開口部18h内にて本体層17mの表面をSn系半田被覆層87により、h<Hを充足させつつ面積率95%以上で覆うことは極めて容易であり、場合により98%以上、あるいはほとんど100%に近い被覆状態を得ることも可能である。この状態が、図5に示すごとき、従来方法による被覆状態(例えば80%以下)と比較して良好であり、半田ボール97を接続した場合の信頼性や位置決め精度において優れていることは、説明するまでもない。
【0028】
Sn系予備メッキ層91は、0.9μm以上5μm以下の厚さにて形成するのがよい。Sn系予備メッキ層91の厚さが0.9μm未満になると、本体層17mの表面をSn系予備メッキ層91により均一に覆うことが困難となり、ひいてはSn系半田被覆層87による被覆率も十分に確保できなくなる場合がある。他方、Sn系予備メッキ層91の厚さが5μm以上となることは、メッキ工程の長時間化を招き、製造能率の低下を来たす。
【0029】
Sn系予備メッキ層91は、Sn系半田被覆層87の濡れ広がり性を十分に向上させるためには、Snの含有率が95質量%以上の組成を有するものとして形成することが望ましい。この場合、Sn系予備メッキ層91は、副成分としてAuを含有するものを使用することが、Cuメッキ層からなる本体層17mとSn系予備メッキ層91との親和性を高め、Sn系半田被覆層87の濡れ広がり性をより良好なものとする観点において有利である。Sn系予備メッキ層91のAuの含有率は0.1質量%未満では効果に乏しく、5質量%を超えるとAu−Sn系金属間化合物の形成量が増加して、半田ボール97の接続強度低下につながる。
【0030】
BGA用のパッドの場合、金属パッド17の表面の開口部18h内に位置する領域の直径は200μm以上600μm以下設定されるのが通常である。この場合、Sn系半田被覆層87の中央位置での厚さは10μm以上20μm以下に形成するのが適当である。半田ペースト87pの塗付層は、最終的に得られるSn系半田被覆層87の中央位置での厚さが10μm以上20μm以下となるように、その塗布厚さを調整することとなる。Sn系半田被覆層87の中央位置での厚さを10μm未満に設定しようとすると、金属パッド17の表面をSn系半田被覆層87で均一に被覆することが困難となる。また、Sn系半田被覆層87の中央位置での厚さhが20μmを超えると、BGA用パッドに通常使用されるソルダーレジスト層18の開口深さH(10μm以上35μm以下に設定されるのが通常である)対して、前記厚さhを小さく設定することが困難となり、半田ボール97の位置決め精度に支障を来たす場合がある。厚さhは、開口深さHの半分以下とすることがなお望ましい。
【0031】
半田ペーストの塗布及び溶融により形成されるSn系半田被覆層87は、本発明の製法の採用により、略球面状の表面形態を有するものとして形成できる。この場合、本体層17mの表面を底面とし、表面の曲率半径が260μm以上4000μm以下の球セグメント状の形態に形成することが望ましい。表面の曲率半径を、4000μmを超える値に設定しようとすると、Sn系半田被覆層87が薄くなりすぎ、金属パッド17の表面をSn系半田被覆層87で均一に被覆することが困難となる。また、表面の曲率半径が260μm未満になると、Sn系半田被覆層87の中央位置での厚さhが大きくなりすぎ、半田ボール97の位置決め精度に支障を来たす場合がある。
【0032】
なお、金属パッド17と同様のパッド構造を、配線基板のフリップチップ接続側に形成し、これを配線基板の表面側に形成された光学位置決め用のマーキングパッドとすることもできる。この場合、パッドに半田ボールは接続されないが、パッド表面か反射率の良好なSn系半田被覆層にて均一に覆われることで、その光学的な検出精度を高めることができる。
【0033】
図7は、開口径250μm、開口深さHが25μmのソルダーレジスト層開口部に対し、Cuメッキ層からなる本体層上に、Sn系予備メッキ層として、Sn−1質量%Auの組成を有したSnメッキ層を無電解メッキにより厚さ約1μmにて形成し、さらに、Sn−Ag−Cu半田(組成:Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu)のペーストを厚さ40μmにて塗布し、252℃にてリフローして得られたSn系半田被覆層の断面光学顕微鏡観察画像である。開口内の本体層の表面は略100%Sn系半田被覆層で被覆され、中央位置での層の厚さhは約10μmである。他方、図8は、比較例として、Sn系予備メッキ層の形成を省略して形成したSn系半田被覆層の断面光学顕微鏡観察画像である。開口内の本体層の表面被覆率は70%と小さく、中央位置での層の厚さhは約35μmであり、開口深さHと略同程度にまでSn系半田被覆層が盛り上がっていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】配線基板の一実施形態を示す平面図。
【図2】同じく裏面図。
【図3】本発明に係る配線基板の断面構造の一例を示す図。
【図4】BGAパッド側の構造を模式的に示す拡大断面図。
【図5】図4に対する比較例の構造を模式的に示す拡大断面図。
【図6】本発明の基板製造方法の概略を示す工程説明図。
【図7】本発明によるBGAパッド側の構造の実例を示す断面の光学顕微鏡観察画像。
【図8】比較例によるBGAパッド側の構造の実例を示す断面の光学顕微鏡観察画像。
【符号の説明】
【0035】
1 配線基板
17 金属パッド
17m 本体層
18 ソルダーレジスト層
18h 開口部
87 Sn系半田被覆層
87p 半田ペースト
91 Sn系予備メッキ層
97 半田ボール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなる誘電体層と導体層とが交互に積層された配線積層部と、該配線積層部の前記誘電体層にて形成された主表面上に配置される複数の金属パッドと、前記配線積層部の前記主表面上に配置され、前記金属パッドを露出させるための開口部が形成されたソルダーレジスト層とを備え、
前記金属パッドは、Cuメッキ層からなる本体層と、Snを主成分とする液相線温度が185℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率81%以上にて当該本体層と接する形で覆うとともに、前記開口部の中央位置で厚さ最大となり、前記開口部の内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、前記中央位置での厚さhが前記開口部の深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態を有したSn系半田被覆層とを有してなる配線基板の製造方法であって、
前記開口部内に前記金属パッドの前記本体層が露出するように前記ソルダーレジスト層を形成し、該露出した前記本体層の表面をSn系予備メッキ層にて被覆する予備メッキ工程と、
前記Sn系予備メッキ層上に、含有される半田粉末が前記Sn系高温半田からなる半田ペーストを、前記Sn系予備メッキ層よりも厚く塗布する半田ペースト塗布工程と、
前記本体層上の前記Sn系予備メッキ層の表面を覆う前記半田ペーストの塗付層を、前記Sn系高温半田の液相線温度よりも高温に加熱することにより、前記Sn系予備メッキ層とともに溶融させ、前記本体層表面にて濡れ拡がらせることにより前記Sn系半田被覆層を形成する半田溶融工程と、
をこの順序にて実施することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記Sn系半田被覆層は、Snを主成分とする液相線温度が200℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率95%以上にて当該本体層と接する形で覆う請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記Sn系予備メッキ層を0.9μm以上1.8μm以下の厚さにて形成する請求項1又は請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記Sn系予備メッキ層は、Snの含有率が95質量%以上の組成を有するものとして形成する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記Sn系予備メッキ層は、副成分としてAuを含有するものが使用される請求項4記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記Sn系予備メッキ層のAuの含有率が0.1質量%以上5質量%以下である請求項5記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記半田ペーストの塗付層は、最終的に得られる前記Sn系半田被覆層の前記中央位置での厚さが10μm以上20μm以下となるように、その塗布厚さが調整される請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
高分子材料からなる誘電体層と導体層とが交互に積層された配線積層部と、該配線積層部の前記誘電体層にて形成された主表面上に配置される複数の金属パッドと、前記配線積層部の前記主表面上に配置され、前記金属パッドを露出させるための開口部が形成されたソルダーレジスト層とを備え、
前記金属パッドは、Cuメッキ層からなる本体層と、Snを主成分とする液相線温度が185℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率81%以上にて当該本体層と接する形で覆うとともに、前記開口部の中央位置で厚さ最大となり、前記開口部の内周縁位置にて厚さ最小となるとともに、前記中央位置での厚さhが前記開口部の深さHよりも小さくなる凸湾曲面状の表面形態を有したSn系半田被覆層とを有してなることを特徴とする配線基板。
【請求項9】
前記Sn系半田被覆層は、Snを主成分とする液相線温度が200℃以上232℃未満のSn系高温半田からなり、ソルダーレジスト層の前記開口部内に位置する前記本体層の表面を、面積被覆率95%以上にて当該本体層と接する形で覆う請求項8記載の配線基板。
【請求項10】
前記Sn系半田被覆層は、Snの含有量が94質量%以上99質量%以下であり、共晶形成副成分としてAg及びCuの一方又は双方を合計で1質量%以上6質量%にて含有するSn系高温半田からなる請求項8又は請求項9に記載の配線基板。
【請求項11】
前記Sn系半田被覆層の前記中央位置での厚さが10μm以上20μm以下であり、前記金属パッドの表面の前記開口部内に位置する領域の直径が200μm以上600μm以下である請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記Sn系半田被覆層は、前記本体層の表面を底面とし、表面の曲率半径が260μm以上4000μm以下の球セグメント状の形態をなす請求項11記載の配線基板。
【請求項13】
前記金属パッドは、配線基板の裏面側に複数個が格子状ないし千鳥状に配列し、接続先となる基板の端子と接続するための半田ボール部材が各々結合されるボールグリッドアレイパッドを形成する請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−173143(P2006−173143A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358708(P2004−358708)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】