説明

配線方法、並びに、表面に配線が設けられた構造物、半導体装置、配線基板、メモリカード、電気デバイス、モジュール及び多層回路基板

【課題】配線回路の高密度化を図る。
【解決手段】複数の接続端子101a,102aが露出する半導体装置1の表面に絶縁層103を形成し、絶縁層の表面に樹脂被膜104を形成し、樹脂被膜の表面側から樹脂被膜の厚みと同じ又は厚みを超える深さの溝105を接続対象の接続端子の近傍を通過するように形成すると共に、その近傍通過部分から接続対象の接続端子に到達する連通孔106,107を形成し、溝及び連通孔の表面にメッキ触媒又はその前駆体を被着させ、樹脂被膜を溶解又は膨潤させることにより除去し、無電解メッキを行うことによりメッキ触媒又はメッキ触媒前駆体から形成されるメッキ触媒が残留する部分のみにメッキ膜を形成することにより、絶縁層の表面に位置する本体部と、この本体部から分岐して絶縁層の内部に延び、接続対象の接続端子に到達する分岐部とを有する配線108を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線方法、より詳しくは、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続するための配線方法、並びに、この配線方法により表面に配線が設けられた構造物、半導体装置、配線基板、メモリカード、電気デバイス、モジュール及び多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子分野における配線回路の高密度化に伴い、配線幅の細線化や配線間隔の狭化が進んでいる。しかし、配線間隔が狭くなるほど、隣接する配線間に短絡やマイグレーションが起こり易くなる。
【0003】
この問題に対処する技術として、特許文献1には、絶縁基材表面に膨潤性樹脂皮膜を形成し、この膨潤性樹脂皮膜の外表面から皮膜の厚み以上の深さの溝を形成し、この溝の表面及び膨潤性樹脂皮膜の表面に触媒金属を被着させ、膨潤性樹脂皮膜を膨潤させて絶縁基材表面から剥離した後、触媒金属が残留する部分のみに無電解メッキ膜を形成することが記載されている。
【0004】
この技術によれば、回路パターンの輪郭を高精度に維持することができ、短絡やマイグレーションの発生が抑制される。
【0005】
また、非特許文献1には、金線等でワイヤーボンディングされた半導体装置を封止樹脂で封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−50435号公報(段落0014)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】2010年5月12〜14日に札幌で開催された「ICEP 2010」において2010年5月12日に発表された講演「Advanced QFN Package for Low Cost and High Performance Solution/Andy Tseng, Bernd Appelt, Yi-Shao Lai, Mark Lin, Bruce Hu, JW Chen, Sunny Lee」の参考配布物
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載される技術を用い、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続する場合に、次のような不具合が起り得る。図15において、符号aは、絶縁基材bに半導体チップcが搭載された半導体装置、符号dは、半導体チップに設けられた接続端子、符号eは、絶縁基材に設けられた接続端子、符号fは、半導体チップcの接続端子d同士を接続する配線又は半導体チップcの接続端子dと絶縁基材bの接続端子eとを接続する配線である。
【0009】
特許文献1に記載される技術を用いると、配線fは、絶縁基材bの表面及び半導体チップcの表面に設けられる。ところが、絶縁基材bの表面には接続端子eが露出し、半導体チップcの表面には接続端子dが露出している。そのため、相互に接続しようとする接続対象の接続端子d,d又はd,e間上に他の接続端子d,eがあると、符号x,yで示すように、配線fを他の接続端子d,eに触れないように迂回させなければならない。このことは、配線面積の増大をもたらし、配線回路の高密度化を阻害する。
【0010】
また、金線等でワイヤーボンディングされた半導体装置を封止樹脂で封止する際には、金線は封止樹脂の圧力を受け、金線に大きな負荷が作用する。その結果、金線の短絡や切断や損傷が起き、半導体装置の生産性及び信頼性が低下する。
【0011】
そこで、本発明は、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続する場合に、配線回路の高密度化を阻害しないようにすることを目的とする。
【0012】
また、構造物を封止樹脂で封止する場合に、封止樹脂の圧力による配線の短絡や切断や損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面は、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続するための配線方法であって、複数の被接続部が露出する構造物の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程、及び、絶縁層の表面に位置する本体部と、この本体部から分岐して絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達する分岐部とを有する配線を設ける配線形成工程、を備えることを特徴とする配線方法である。
【0014】
この配線方法において、配線形成工程は、絶縁層の表面に樹脂被膜を形成する樹脂被膜形成工程、樹脂被膜の表面側から樹脂被膜の厚みと同じ又は厚みを超える深さの溝を接続対象の被接続部の近傍を通過するように形成すると共に、その近傍通過部分から接続対象の被接続部に到達する連通孔を形成する溝孔形成工程、前記溝及び前記連通孔の表面にメッキ触媒又はその前駆体を被着させる触媒被着工程、前記樹脂被膜を溶解又は膨潤させることにより除去する樹脂被膜除去工程、及び、無電解メッキを行うことにより前記メッキ触媒又は前記メッキ触媒前駆体から形成されるメッキ触媒が残留する部分のみにメッキ膜を形成するメッキ処理工程、を含むことが好ましい。
【0015】
この配線方法において、配線形成工程は、メッキ処理工程の後、電解メッキを行うことによりメッキ膜を厚膜化する電解メッキ工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
この配線方法において、樹脂被膜は蛍光性物質を含有し、配線形成工程は、樹脂被膜除去工程の後、メッキ処理工程の前に、前記蛍光性物質からの発光を用いて樹脂被膜の除去不良を検査する検査工程をさらに含むことが好ましい。
【0017】
この配線方法において、配線形成工程の後、配線の本体部が露出する絶縁層の表面にさらに絶縁層を積層する絶縁層積層工程、及び、積層した絶縁層の表面に位置する本体部と、この本体部から分岐して絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達する分岐部とを有する配線を設ける追加配線形成工程、を1回以上繰り返すことが好ましい。
【0018】
本発明の他の一局面は、複数の被接続部が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達していることを特徴とする表面に配線が設けられた構造物である。
【0019】
この構造物において、配線本体部が露出する絶縁層の表面に絶縁層が積層され、この積層された絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達している構成が、1段以上備えられていることが好ましい。
【0020】
本発明のさらに他の一局面は、絶縁基材に半導体チップが搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子及び半導体チップに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、絶縁基材の接続端子及び/又は半導体チップの接続端子に到達していることを特徴とする半導体装置である。
【0021】
本発明のさらに他の一局面は、プリント配線板に半導体装置が実装され、プリント配線板に設けられた接続端子及び半導体装置に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、プリント配線板の接続端子及び/又は半導体装置の接続端子に到達していることを特徴とする配線基板である。
【0022】
本発明のさらに他の一局面は、支持体にメモリパッケージが取り付けられ、支持体に設けられた接続端子及びメモリパッケージに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、支持体の接続端子及び/又はメモリパッケージの接続端子に到達していることを特徴とするメモリカードである。
【0023】
本発明のさらに他の一局面は、絶縁基材に受動素子が搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子及び受動素子に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、絶縁基材の接続端子及び/又は受動素子の接続端子に到達していることを特徴とする電気デバイスである。
【0024】
本発明のさらに他の一局面は、支持体に電気デバイスが取り付けられ、支持体に設けられた接続端子及び電気デバイスに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、支持体の接続端子及び/又は電気デバイスの接続端子に到達していることを特徴とするモジュールである。
【0025】
本発明のさらに他の一局面は、複数の回路基板が多段に積み重ねられた状態で結合され、回路基板に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、相互に異なる回路基板の接続端子に到達しており、前記回路基板の接続端子は、回路基板の内部回路の端部であることを特長とする多層回路基板である。
【0026】
本発明のさらに他の一局面は、絶縁基材に複数の半導体チップが多段に積み重ねられた状態で搭載され、半導体チップに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、相互に異なる半導体チップの接続端子に到達していることを特徴とする半導体装置である。
【0027】
なお、本明細書で「接続端子」とは、特に断りのない限り、設けられている部材に応じて、電気接続用の電極、パッド、バンプ、ポスト、信号入力端子、信号出力端子、信号入出力端子、取り出し電極等を意味するものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続する場合に、配線を迂回させる必要がなくなり、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線方法の工程説明図である。
【図2】図2は、図1の配線方法における配線形成工程のさらに詳細な工程説明図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る配線方法の工程説明図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態に係る配線方法の工程説明図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態に係る配線方法の工程説明図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図7】図7は、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置の部分透視斜視図である。
【図8】図8は、本発明の第7の実施形態に係る配線方法の工程説明図である。
【図9】図9は、本発明の第8の実施形態に係る配線基板の縦断面図である。
【図10】図10は、本発明の第9の実施形態に係るメモリカードの縦断面図である。
【図11】図11は、本発明の第10の実施形態に係る電気デバイスの縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の第11の実施形態に係るモジュールの縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の第12の実施形態に係る多層回路基板の部分透視斜視図である。
【図14】図14は、本発明の第13の実施形態に係る半導体装置の縦断面図である。
【図15】図15は、本発明が解決しようとする課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
図1及び図2を参照し、本発明の第1の実施形態に係る配線方法を説明する。図中、符号1は複数の被接続部が露出する構造物、符号10は半導体装置、符号100は封止樹脂で封止された半導体装置、符号101は絶縁基材、符号101aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号102は半導体チップ、符号102aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号103は絶縁層、符号104は樹脂被膜、符号105は溝、符号106,107は連通孔、符号108は配線、符号108aは配線本体部、符号108bは配線分岐部、符号108xはメッキ触媒、符号109は封止樹脂である。
【0031】
以下、工程の説明と材料の説明とを分けて説明する。
【0032】
[工程の説明]
第1実施形態に係る配線方法においては、まず、図1(A)に示すように、絶縁基材101に半導体チップ102が搭載された構造物1を準備する。半導体チップ102としては、例えば、IC、LSI、VLSI、LEDチップ等である。絶縁基材101の表面には複数の接続端子101aが設けられ、半導体チップ102の表面には複数の接続端子102aが設けられている。これらの接続端子101a,102aは構造物1の表面に露出している。
【0033】
次に、図1(B)に示すように、複数の接続端子101a,102aが露出する構造物1の表面に絶縁層103を形成する(絶縁層形成工程)。
【0034】
次に、図1(C)に示すように、絶縁層103の表面に樹脂被膜104を形成する(樹脂被膜形成工程)。
【0035】
次に、図1(D)又は図2(D)に示すように、樹脂被膜104の表面側から樹脂被膜104の厚みと同じ又は厚みを超える深さの溝(図例は樹脂被膜104の厚みと同じ深さの溝)105を接続対象の接続端子101a,102aの近傍を通過するように形成すると共に、その近傍通過部分から接続対象の接続端子102a,101aに到達する連通孔106,107を形成する(溝孔形成工程)。これらの溝105及び連通孔106,107の形成は、例えばレーザー加工等により行われる。
【0036】
次に、図2(D)に示すように、溝105及び連通孔106,107の表面にメッキ触媒108x又はその前駆体を被着させる(触媒被着工程)。
【0037】
次に、図2(D)に示すように、樹脂被膜104を溶解又は膨潤させることにより除去する(樹脂被膜除去工程)。
【0038】
次に、図2(E)又は図1(E)に示すように、無電解メッキを行うことによりメッキ触媒108x又はメッキ触媒前駆体から形成されるメッキ触媒が残留する部分のみにメッキ膜を形成する(メッキ処理工程)。これにより、絶縁層103の表面に位置する本体部108aと、この本体部108aから分岐して絶縁層103の内部に延び、接続対象の接続端子102a,101aに到達する分岐部108bとを有する配線108が設けられる(配線形成工程)。
【0039】
このような、樹脂被膜形成工程、溝孔形成工程、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程及びメッキ処理工程を含む配線形成工程によれば、配線108、特に配線本体部108aの輪郭を高精度に維持することができ、短絡やマイグレーションの発生が抑制される。
【0040】
ここにおいて、絶縁基材101に半導体チップ102が搭載され、絶縁基材101の接続端子101aと半導体チップ102の接続端子102aとが相互に配線108で接続された半導体装置(表面に配線が設けられた構造物)10が得られる。
【0041】
この半導体装置10においては、絶縁基材101の接続端子101a及び半導体チップ102の接続端子102aが露出する構造物1の表面に絶縁層103が形成され、この絶縁層103の表面に配線108の本体部108aが設けられ、この配線本体部108aから配線108の分岐部108bが分岐し、この配線分岐部108bが絶縁層103の内部に延び、絶縁基材101の接続端子101a及び半導体チップ102の接続端子102aに到達している。
【0042】
接続端子101a,102aが絶縁層103で被覆され、絶縁層103の表面に配線108の本体部108aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子101a,102a間上に他の接続端子101a,102aがあっても、配線108を他の接続端子101a,102aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線108は、接続対象でない他の接続端子101a,102aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0043】
次に、図1(F)に示すように、半導体装置10を封止樹脂109で封止する。ここにおいて、封止樹脂109で封止された半導体装置100が得られる。
【0044】
なお、状況に応じて、メッキ処理工程の後、半導体装置10を封止樹脂109で封止する前に、電解メッキを行うことによりメッキ膜を厚膜化することが好ましい(電解メッキ工程)。メッキ膜を厚膜化するのに要する時間の短縮化が図られるという利点が得られる。具体的には、例えば、電解メッキ槽において、陽極側にメッキ処理工程で形成された無電解メッキ膜と導通させ、陰極側電極との間に電流を流すことにより、無電解メッキ膜が厚膜化される。
【0045】
メッキ膜の膜厚は、特に限定されない。具体的には、例えば、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μm程度がより好ましい。
【0046】
また、状況に応じて、樹脂被膜104に蛍光性物質を含有させ、樹脂被膜除去工程の後、メッキ処理工程の前に、蛍光性物質からの発光を用いて樹脂被膜104の除去不良を検査することが好ましい(検査工程)。隣接する配線108間に、メッキ触媒108x又はその前駆体が被着した樹脂被膜104が残留した場合は、その残留部分にメッキ膜が形成されてしまい、短絡の原因となり得る。そこで、発光が検出された部分を除去することにより、その部分にメッキ膜が形成されることを抑制し、短絡の発生を未然に防止することができるという利点が得られる。
【0047】
樹脂被膜104に含有させ得る蛍光性物質は、所定の光源により光を照射することにより発光特性を示すものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、Fluoresceine、Eosine、Pyronine G等が挙げられる。
【0048】
[材料の説明]
(絶縁基材)
絶縁基材101としては、従来から半導体チップの実装に用いられているような各種有機基材や無機基材が特に限定なく用いられ得る。有機基材の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂等からなる基材が挙げられる。
【0049】
エポキシ樹脂としては、例えば回路基板の製造に用いられ得る各種有機基板を構成するエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、臭素化又はリン変性したエポキシ樹脂、窒素含有樹脂、シリコーン含有樹脂等も挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
これらの樹脂で絶縁基材101を構成する場合、樹脂を硬化させるために、硬化剤を用いることが一般的である。硬化剤としては特に限定されないが、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミノトリアジンノボラック系硬化剤、シアネート樹脂等が挙げられる。
【0051】
フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型、アラルキル型、テルペン型等が挙げられる。さらに、難燃性を付与するために、リン変性したフェノール樹脂、リン変性したシアネート樹脂等も挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
絶縁基材101の表面には、溝孔形成工程において、例えばレーザー加工等により連通孔106,107が形成される(溝105の深さが樹脂被膜104の厚みを超える場合は、溝105の一部も形成される)ことから、絶縁基材101の材料としては、100nm〜400nmの波長領域でのレーザー光の吸収率(UV吸収率)に優れる樹脂等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0053】
絶縁基材101にフィラーを含有させてもよい。フィラーとしては、無機微粒子であっても、有機微粒子であってもよく、特に限定されない。フィラーを含有させることで、レーザー加工された部分にフィラーが露出し、フィラーの凹凸による絶縁基材101とメッキ膜との密着性を向上することができる。
【0054】
無機微粒子を構成する材料としては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化チタン(TiO)等の高誘電率充填材;ハードフェライト等の磁性充填材;水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブテン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤;タルク(Mg(Si10)(OH))、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、雲母等が挙げられる。これらの無機微粒子を単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
これらの無機微粒子は、熱伝導性、比誘電率、難燃性、粒度分布、色調の自由度等が高いことから、所望の機能を選択的に発揮させる場合には、適宜配合及び粒度設計を行って、容易に高充填化を行うことができる。
【0056】
フィラーの平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。
【0057】
無機微粒子は、絶縁基材101中での分散性を高めるために、シランカップリング剤で表面処理してもよい。また、絶縁基材101は、無機微粒子の絶縁基材101中での分散性を高めるために、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、エポキシシラン系、メルカプトシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系、スチリルシラン系、メタクリロキシシラン系、アクリロキシシラン系、チタネート系等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、絶縁基材101は、無機微粒子の絶縁基材101中での分散性を高めるために、分散剤を含有してもよい。分散剤としては特に限定されない。具体的には、例えば、アルキルエーテル系、ソルビタンエステル系、アルキルポリエーテルアミン系、高分子系等の分散剤等が挙げられる。これらの分散剤は単独で用いてもよく又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
フィラーとして用い得る有機微粒子の具体例としては、例えば、ゴム微粒子等が挙げられる。
【0060】
絶縁基材101の形態としては特に限定されない。具体的には、シート、フィルム、プリプレグ、三次元形状の成形体等が挙げられる。絶縁基材101の厚みも特に限定されない。例えば、シート、フィルム、プリプレグ等の場合、10〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、20〜200μmがさらに好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0061】
絶縁基材101は、例えば、金型及び枠型等を用いて絶縁基材となる材料を入れて、加圧し、硬化させることにより、三次元形状の成形体等に形成してもよいし、シート、フィルム、プリプレグを打ち抜き、くりぬいたものを硬化させること、もしくは、加熱加圧により硬化させることにより、三次元形状の成形体等に形成してもよい。
【0062】
(絶縁層)
絶縁層103としては、樹脂等の絶縁性有機材料や、シリカ(SiO)等をはじめとするセラミックス等の絶縁性無機材料等が挙げられる。その他、絶縁基材101を構成する材料と同様の材料でもよい。
【0063】
絶縁層103の形成方法は、図1(B)に示したように、少なくとも、絶縁基材101の表面及び半導体チップ102の表面に絶縁層103が形成されるような方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、構造物1の表面に、絶縁層103を形成し得る液状材料を塗布した後、乾燥させる方法や、予め支持基材に前記液状材料を塗布した後、乾燥することにより形成された被膜を構造物1の表面に転写する方法、あるいは貼り合せる方法等が挙げられる。なお、液状材料を塗布する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、従来から知られたスピンコート法やバーコータ法、ディッピング法やスプレー法等が挙げられる。
【0064】
(樹脂被膜)
樹脂被膜104の形成方法は、図1(C)に示したように、少なくとも、絶縁層103の表面に樹脂被膜104が形成されるような方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、絶縁層103の全面に、樹脂被膜104を形成し得る液状材料を塗布した後、乾燥させる方法や、予め支持基材に前記液状材料を塗布した後、乾燥することにより形成された被膜を絶縁層103の表面に転写する方法、あるいは貼り合せる方法等が挙げられる。なお、液状材料を塗布する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、従来から知られたスピンコート法やバーコータ法、ディッピング法やスプレー法等が挙げられる。
【0065】
樹脂被膜104の厚みとしては、10μm以下、さらには5μm以下であり、0.1μm以上、さらには1μm以上であることが好ましい。厚みが厚すぎる場合は、樹脂被膜104をレーザー加工することにより部分的に除去する際に寸法精度が低下する傾向がある。また、厚みが薄すぎる場合は、均一な膜厚の被膜を形成し難くなる傾向がある。
【0066】
樹脂被膜104を形成するための材料としては、樹脂被膜除去工程において溶解除去または膨潤除去し得るような樹脂材料であれば特に限定なく用いられる。具体的には、例えば、フォトレジストの分野で用いられているレジスト樹脂や、所定の液体に対する膨潤度が高く、膨潤により剥離可能な樹脂が用いられる。
【0067】
レジスト樹脂の具体例としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂、エッチングレジスト、ポリエステル系樹脂、ロジン系樹脂が挙げられる。
【0068】
また、膨潤性樹脂としては、所定の液体に対する膨潤度が50%以上、さらには100%以上、さらには500%以上であるような膨潤性樹脂であることが好ましい。このような樹脂の具体例としては、例えば、架橋度またはゲル化度等を調整することにより所望の膨潤度になるように調整された、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマー、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマー等が挙げられる。
【0069】
樹脂被膜104について重ねて詳しく追加説明する。
【0070】
樹脂被膜104としては、樹脂被膜除去工程で除去可能なものであれば、特に限定されない。樹脂被膜104は、所定の液体で溶解又は膨潤することにより絶縁層103の表面から容易に溶解除去又は剥離除去が可能な樹脂被膜が好ましい。具体的には、例えば、有機溶剤やアルカリ溶液により容易に溶解し得る可溶型樹脂からなる被膜や、所定の液体(膨潤液)で膨潤し得る膨潤性樹脂からなる被膜等が挙げられる。なお、膨潤性樹脂被膜には、所定の液体に対して実質的に溶解せず、膨潤により絶縁層103の表面から容易に剥離するような樹脂被膜だけではなく、所定の液体に対して膨潤し、さらに少なくとも一部が溶解し、その膨潤や溶解により絶縁層103の表面から容易に剥離するような樹脂被膜や、所定の液体に対して溶解し、その溶解により絶縁層103の表面から容易に剥離するような樹脂被膜も含まれる。このような樹脂被膜を用いることにより、絶縁層103の表面から樹脂被膜104を容易かつ良好に除去できる。樹脂被膜104を除去するときに樹脂被膜104を崩壊させると、その樹脂被膜104に被着したメッキ触媒108xが飛散し、飛散したメッキ触媒108xが絶縁層103に再被着してその部分に不要なメッキが形成される問題がある。本実施形態では、絶縁層103の表面から樹脂被膜104を容易かつ良好に除去できるから、そのような問題が未然に防止できる。
【0071】
樹脂被膜104を形成するための材料としては、所定の液体で溶解又は膨潤することにより絶縁層103の表面から容易に溶解除去又は剥離除去が可能な樹脂であれば特に限定なく用いられ得る。好ましくは、所定の液体に対する膨潤度が50%以上、より好ましくは、100%以上、さらに好ましくは、500%以上であるような膨潤度の樹脂が用いられる。なお、膨潤度が低すぎる場合には、樹脂被膜が剥離し難くなる傾向がある。
【0072】
なお、樹脂被膜の膨潤度(SW)は、膨潤前重量m(b)及び膨潤後重量m(a)から、「膨潤度SW={(m(a)−m(b))/m(b)}×100(%)」の式により求められる。
【0073】
このような樹脂被膜104は、絶縁層103の表面にエラストマーのサスペンジョン又はエマルジョンを塗布した後、乾燥する方法や、支持基材にエラストマーのサスペンジョン又はエマルジョンを塗布した後、乾燥することにより形成される被膜を絶縁層103の表面に転写する方法等により容易に形成され得る。
【0074】
エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマー、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマー樹脂粒子の架橋度またはゲル化度等を調整することにより所望の膨潤度の樹脂被膜を容易に形成することができる。
【0075】
なお、このような樹脂被膜104としては、特に、膨潤度が膨潤液のpHに依存して変化するような被膜であることが好ましい。このような、被膜を用いた場合には、触媒被着工程における液性条件と、樹脂被膜除去工程における液性条件とを相異させることにより、触媒被着工程におけるpHにおいては樹脂被膜104は絶縁層103に対する高い密着力を維持しつつ、樹脂被膜除去工程におけるpHにおいては容易に樹脂被膜104を絶縁層103から剥離除去することができる。
【0076】
さらに具体的には、例えば、触媒被着工程が、例えば、pH1〜3の範囲の酸性触媒金属コロイド溶液中で処理する工程を備え、樹脂被膜除去工程が、例えば、pH12〜14の範囲のアルカリ性溶液中で樹脂被膜を膨潤させる工程を備える場合には、樹脂被膜104は、酸性触媒金属コロイド溶液に対する膨潤度が60%以下、より好ましくは、40%以下であり、アルカリ性溶液に対する膨潤度が50%以上、より好ましくは、100%以上、さらに好ましくは、500%以上であるような樹脂被膜であることが好ましい。
【0077】
このような樹脂被膜104の例としては、所定量のカルボキシル基を有するエラストマーから形成されるシートや、プリント配線板のパターニング用のドライフィルムレジスト(以下「DFR」と記す場合がある)等に用いられる光硬化性のアルカリ現像型のレジストを全面硬化して得られるシートや、熱硬化性やアルカリ現像型のシート等が挙げられる。
【0078】
カルボキシル基を有するエラストマーの具体例としては、カルボキシル基を有するモノマー単位を共重合成分として含有することにより、分子中にカルボキシル基を有する、スチレン−ブタジエン系共重合体等のジエン系エラストマーや、アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル系エラストマー、あるいはポリエステル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーによれば、サスペンジョン又はエマルジョンとして分散されたエラストマーの、酸当量、架橋度又はゲル化度等を調整することにより、所望のアルカリ膨潤度を有する樹脂被膜を形成することができる。また、樹脂被膜除去工程において用いる所定の液体に対する膨潤度をより大きくでき、前記液体に対して溶解する樹脂被膜も容易に形成することができる。エラストマー中のカルボキシル基はアルカリ水溶液に対して樹脂被膜を膨潤させて、絶縁層103の表面から樹脂被膜104を剥離する作用をする。また、酸当量とは、カルボキシル基1個当たりのポリマー分子量である。
【0079】
カルボキシル基を有するモノマー単位の具体例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、及びマレイン酸無水物等が挙げられる。
【0080】
このようなカルボキシル基を有するエラストマー中のカルボキシル基の含有割合としては、酸当量で100〜2000、好ましくは100〜800であることが好ましい。酸当量が小さ過ぎる場合(カルボキシル基の数が相対的に多過ぎる場合)には、溶媒または他の組成物との相溶性が低下することにより、無電解メッキの前処理液に対する耐性が低下する傾向がある。また、酸当量が大き過ぎる場合(カルボキシル基の数が相対的に少な過ぎる場合)には、アルカリ水溶液に対する剥離性が低下する傾向がある。
【0081】
また、エラストマーの分子量としては、1万〜100万、好ましくは2万〜50万、より好ましくは2万〜6万であることが好ましい。エラストマーの分子量が大き過ぎる場合には剥離性が低下する傾向があり、小さ過ぎる場合には粘度が低下するために樹脂被膜の厚みを均一に維持することが困難になると共に、無電解メッキの前処理液に対する耐性も低下する傾向がある。
【0082】
また、DFRとしては、例えば、所定量のカルボキシル基を含有する、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂等を樹脂成分とし、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物のシートが用いられ得る。このようなDFRの具体例としては、あえて例を挙げるとすれば、例えば、特開2000−231190号公報、特開2001−201851号公報、特開平11−212262号公報に開示されるような光重合性樹脂組成物のドライフィルムを全面硬化させて得られるシートや、アルカリ現像型のDFRとして市販されている、例えば、旭化成工業社製のUFGシリーズ等が挙げられる。
【0083】
さらに、その他の樹脂被膜104の例としては、カルボキシル基を含有する、ロジンを主成分とする樹脂(例えば、吉川化工社製の「NAZDAR229」)や、フェノールを主成分とする樹脂(例えば、LEKTRACHEM社製の「104F」)等が挙げられる。
【0084】
樹脂被膜104は、絶縁層103の表面に樹脂のサスペンジョン又はエマルジョンを従来から知られたスピンコート法やバーコーター法等の塗布方法を用いて塗布した後、乾燥する方法や、支持基材に形成されたDFRを真空ラミネーター等を用いて絶縁層103の表面に貼り合わせた後、全面硬化することにより容易に形成することができる。
【0085】
また、樹脂被膜104として、例えば、酸等量が100〜800程度のカルボキシル基を有するアクリル系樹脂からなる樹脂(カルボキシル基含有アクリル系樹脂)を主成分とする樹脂被膜もまた好ましく用いられ得る。
【0086】
さらに、上記のものの他に、樹脂被膜104として、次のようなものもまた好適である。すなわち、樹脂被膜104を構成するレジスト材料に必要な特性としては、例えば、(1)触媒被着工程で、樹脂被膜104が形成された構造物1を浸漬させる液体(メッキ触媒付け薬液)に対する耐性が高いこと、(2)樹脂被膜除去工程、例えば、樹脂被膜104が形成された構造物1をアルカリに浸漬させる工程によって、樹脂被膜104が容易に除去できること、(3)成膜性が高いこと、(4)ドライフィルム(DFR)化が容易なこと、(5)保存性が高いこと等が挙げられる。
【0087】
メッキ触媒付け薬液としては、後述するが、例えば、酸性Pd−Snコロイドキャタリストシステムの場合、全て酸性(例えばpH1〜3)水溶液である。また、アルカリ性Pdイオンキャタリストシステムの場合は、触媒付与アクチベーターが弱アルカリ(pH8〜12)であり、それ以外は酸性である。以上のことから、メッキ触媒付け薬液に対する耐性としては、pH1〜11、好ましくはpH1〜12に耐え得ることが必要である。なお、耐え得るとは、樹脂被膜104を成膜したサンプルを薬液に浸漬した際、樹脂被膜104の膨潤や溶解が充分に抑制され、レジストとしての役割を果たすことである。また、浸漬温度は、室温〜60℃、浸漬時間は、1〜10分間、樹脂被膜104の膜厚は、1〜10μm程度が一般的であるが、これらに限定されない。樹脂被膜除去工程に用いるアルカリ剥離の薬液としては、例えば、NaOH水溶液や炭酸ナトリウム水溶液が一般的である。そのpHは、11〜14であり、好ましくはpH12から14で樹脂被膜104が簡単に除去できることが望ましい。NaOH水溶液濃度は、1〜10%程度、処理温度は、室温〜50℃、処理時間は、1〜10分間で、浸漬やスプレー処理をすることが一般的であるが、これらに限定されない。絶縁層103上に樹脂被膜104を形成するため、成膜性も重要となる。はじき等がない均一性な膜形成が必要である。また、製造工程の簡素化や材料ロスの低減等のためにドライフィルム化される場合は、ハンドリング性を確保するためにフィルムの屈曲性が必要である。また絶縁層103上にドライフィルム化された樹脂被膜104をラミネーター(ロール、真空)で貼り付ける。貼り付けの温度は、室温〜160℃、圧力や時間は任意である。このように、貼り付け時に粘着性が求められる。そのために、ドライフィルム化された樹脂被膜104はゴミの付着防止も兼ねて、キャリアフィルム、カバーフィルムでサンドイッチされた3層構造にされることが一般的であるが、これらに限定されない。保存性は、室温で保存できることが好ましいが、冷蔵、冷凍での保存ができることも必要である。このように低温時にドライフィルムの組成が分離したり、屈曲性が低下して割れたりしないようにすることが必要である。
【0088】
以上のような観点から、樹脂被膜104として、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物であってもよい。この公知技術として、あえて例を挙げるとすれば、例えば、特開平7−281437号公報、特開2000−231190号公報、特開2001−201851号公報等が挙げられる。
【0089】
(a)単量体の一例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、単独、もしくは2種類以上を組み合わせても良い。(b)単量体の例としては、非酸性で分子中に重合性不飽和基を(1個)有するものが一般的であり、その限りではない。後述する触媒被着工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に1個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらには、3次元架橋できるように、重合体に用いる単量体に複数の不飽和基を持つ単量体を選定することができる。また、分子骨格にエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、ビニル基等の反応性官能基を導入することができる。
【0090】
樹脂中にカルボキシル基が含まれる場合、樹脂中に含まれるカルボキシル基の量は酸当量で100〜2000が良く、100〜800が好ましい。酸当量が低すぎると、溶媒または他の組成物との相溶性の低下やメッキ前処理液耐性が低下する。酸当量が高すぎると剥離性が低下する。また、(a)単量体の組成比率は5〜70質量%が好ましい。
【0091】
樹脂組成物は、メイン樹脂(バインダー樹脂)として前記重合体樹脂を必須成分とし、オリゴマー、モノマー、フィラーや、その他の添加剤の少なくとも1種類を添加してもよい。メイン樹脂は、熱可塑的性質を持ったリニア型のポリマーが良い。流動性、結晶性などをコントロールするためにグラフトさせて枝分かれさせることもある。分子量としては、重量平均分子量で1,000〜500,000程度であり、5,000〜50,000が好ましい。重量平均分子量が小さいと膜の屈曲性やメッキ触媒付け薬液耐性(耐酸性)が低下する。また分子量が大きいとアルカリ剥離性やドライフィルムにした場合の貼り付け性が悪くなる。さらに、メッキ触媒付け薬液耐性向上やレーザー加工時の熱変形抑制、流動制御のために架橋点を導入してもよい。
【0092】
モノマーやオリゴマーとしては、メッキ触媒付け薬液への耐性やアルカリで容易に除去できるようなものであれば何でも良い。またドライフィルム(DFR)の貼り付け性を向上させるために粘着性付与材として可塑剤的に用いることが考えられる。さらに各種耐性をあげるために架橋剤を添加することが考えられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート類がある。また酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や(メタ)アクリロニトリル、スチレンまたは重合可能なスチレン誘導体等がある。また上記の重合性不飽和基を分子中に1個有するカルボン酸または酸無水物のみの重合によっても得ることが出来る。さらに、多官能性不飽和化合物を含んでも良い。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。上記のモノマー以外に他の光重合性モノマーを2種類以上含むことも可能である。モノマーの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等がある。上記のモノマーもしくはモノマーを反応させたオリゴマーのいずれでも良い。
【0093】
フィラーは特に限定されないが、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、タルク、マイカ、ガラス、チタン酸カリウム、ワラストナイト、硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、有機フィラー等が挙げられる。また、レジストの好ましい厚みは、0.1〜10μmと薄いため、フィラーサイズも小さいものが好ましい。平均粒径が小さく、粗粒をカットしたものを用いることが良いが、分散時に砕いたり、ろ過で粗粒を除去することもできる。
【0094】
その他の添加剤として、光重合性樹脂(光重合開始剤)、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料、発色系顔料)、熱重合開始剤、エポキシやウレタンなどの架橋剤等が挙げられる。
【0095】
溝孔形成工程では、樹脂被膜104は、レーザー加工等されるため、レジスト材料(樹脂被膜104の材料)にレーザーによるアブレーション性を付与することが必要である。レーザー加工機は、例えば、炭酸ガスレーザーやエキシマレーザー、UV−YAGレーザーなどが選定される。これらのレーザー加工機は種々の固有の波長を持っており、この波長に対してUV吸収率の高い材料を選定することで、生産性を向上させることができる。そのなかでもUV−YAGレーザーは微細加工に適しており、レーザー波長は3倍高調波355nm、4倍高調波266nmであるため、レジスト材料としては、これらの波長に対して、UV吸収率が相対的に高いことが望ましい。UV吸収率が高くなるほど、樹脂被膜104の加工がきれいに仕上がり、生産性の向上が図れる。もっとも、これに限らず、UV吸収率の相対的に低いレジスト材料を選定するほうがよい場合もあり得る。UV吸収率が低くなるほど、UV光が樹脂被膜104を通過するので、その下の絶縁層103の加工にUVエネルギーを集中させることができ、例えば絶縁層103が加工し難い材料である場合等に特に好ましい結果が得られる。このように、樹脂被膜104のレーザー加工のし易さ、絶縁層103のレーザー加工のし易さ、及びこれらの関係等に応じて、レジスト材料を設計することが好ましい。
【0096】
樹脂被膜除去工程によって、図2(D)に示したように、溝105及び連通孔106,107が形成された絶縁層103の部分のみにメッキ触媒108xを残留させることができる。一方、図2(D)〜図2(D)に示したように、溝孔形成工程において溝105が形成された部分以外の樹脂被膜104の表面に被着されたメッキ触媒108xは、樹脂被膜104を除去する際に一緒に除去される。
【0097】
樹脂被膜104を膨潤除去または溶解除去させる方法としては、所定の膨潤液または溶解液に、樹脂被膜104を所定の時間浸漬する方法が挙げる。また、剥離性や溶解性を高めるために、浸漬中に超音波照射することが特に好ましい。なお、膨潤剥離の場合には、必要に応じて軽い力で引き剥がしてもよい。
【0098】
樹脂被膜104を溶解又は膨潤させる液体としては、絶縁基材101、絶縁層103、及びメッキ触媒108xを実質的に分解または溶解させることなく、樹脂被膜104が容易に溶解又は膨潤剥離されるような液体であれば特に限定なく用いられうる。具体的には、レジスト樹脂として光硬化性エポキシ樹脂を用いた場合には、有機溶剤又はアルカリ水溶液のレジスト除去剤等が用いられる。また、膨潤性樹脂として、例えばジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーを用いた場合には、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が好ましく用いられうる。
【0099】
また、樹脂皮膜104として、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物である場合、あるいは、前述のカルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されている場合には、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が好ましく用いられ得る。
【0100】
なお、触媒被着工程において上述したような酸性条件で処理するメッキプロセスを用いた場合には、樹脂皮膜104が、酸性条件下においては膨潤度が60%以下、好ましくは40%以下であり、アルカリ性条件下では膨潤度が50%以上であるような、例えば、ジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーのようなエラストマーから形成されていること、あるいは、(a)分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有するカルボン酸又は酸無水物の少なくとも1種類以上の単量体と、(b)(a)単量体と重合しうる少なくとも1種類以上の単量体と、を重合させることで得られる重合体樹脂、又はこの重合体樹脂を含む樹脂組成物から形成されていること、あるいは、前述のカルボキシル基含有アクリル系樹脂から形成されていることが好ましい。このような樹脂皮膜は、pH11〜14、好ましくはpH12〜14であるようなアルカリ水溶液、例えば、1〜10%程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液等に浸漬等することにより、容易に溶解又は膨潤し、溶解除去又は剥離除去される。なお、溶解性又は剥離性を高めるために、浸漬中に超音波照射してもよい。また、必要に応じて軽い力で引き剥がすことにより除去してもよい。
【0101】
(メッキ触媒)
メッキ触媒108xは、メッキ処理工程において無電解メッキ膜を形成したい部分のみに無電解メッキ膜を形成するために予め付与される触媒である。メッキ触媒108xとしては、無電解メッキ用の触媒として従来用いられるものであれば、特に限定なく用いられ得る。また、メッキ触媒108xに代えて、メッキ触媒の前駆体を被着させ、樹脂被膜104の除去後にメッキ触媒を生成させてもよい。メッキ触媒108xの具体例としては、例えば、金属パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)等が挙げられる。
【0102】
メッキ触媒108xを被着させる方法としては、例えば、pH1〜3の酸性条件下で処理される酸性Pd−Snコロイド溶液で処理した後、酸溶液で処理するような方法が挙げられる。より具体的には次のような方法が挙げられる。はじめに、溝孔形成工程で形成された溝105及び連通孔106,107の表面に付着している油分等を界面活性剤の溶液(クリーナー・コンディショナー)等で湯洗する。次に、必要に応じて、過硫酸ナトリウム−硫酸系のソフトエッチング剤でソフトエッチング処理する。そして、pH1〜2の硫酸水溶液や塩酸水溶液等の酸性溶液中でさらに酸洗する。次に、濃度0.1%程度の塩化第一錫水溶液等を主成分とするプリディップ液に浸漬して塩化第一錫を吸着させた後、塩化第一錫と塩化パラジウムとを含むpH1〜3の酸性Pd−Snコロイド等の酸性触媒金属コロイド溶液にさらに浸漬することによりPd及びSnを凝集させて吸着させる。そして、吸着した塩化第一錫と塩化パラジウムとの間で、酸化還元反応(SnCl+PdCl→SnCl+Pd↓)を起こさせる。これによりメッキ触媒108xである金属パラジウム(Pd)が析出する。
【0103】
なお、酸性触媒金属コロイド溶液としては、公知の酸性Pd−Snコロイドキャタリスト溶液等が使用でき、酸性触媒金属コロイド溶液を用いた市販のメッキプロセスを用いてもよい。このようなプロセスは、例えば、ローム&ハース電子材料社からシステム化されて販売されている。
【0104】
このような触媒被着工程により、図2(D)に示したように、溝105及び連通孔106,107の表面及び樹脂被膜104の表面にメッキ触媒108xが被着される。
【0105】
(無電解メッキ)
メッキ処理工程における無電解メッキの方法としては、メッキ触媒108xが被着された構造物1を、無電解メッキ液の槽に浸漬して、メッキ触媒108xが被着された部分のみに無電解メッキ膜を析出させるような方法が用いられ得る。
【0106】
無電解メッキに用いられる金属としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。これらの中では、Cuを主成分とするメッキが導電性に優れている点から好ましい。また、Niを含む場合には、耐食性や、はんだとの密着性に優れる点から好ましい。
【0107】
このようなメッキ処理工程により、図2(D)〜図2(E)に示したように、絶縁基材101の接続端子101aと半導体チップ102の接続端子102aとをつなぐ経路の表面のメッキ触媒108xが残留する部分のみに無電解メッキ膜が析出する。これにより、絶縁層103の表面に位置する配線本体部108aと、この配線本体部108aから分岐して絶縁層103の内部に延び、接続対象の接続端子102a,101aに到達する配線分岐部108bとを有する配線108が形成され、この配線108により、接続端子102a,101aが相互に接続される。
【0108】
なお、溝孔形成工程において溝105が形成されなかった部分は、樹脂被膜104によりメッキ触媒108xが被着することから保護されていたために、無電解メッキ膜は析出しない。これにより、配線間隔が狭小であっても、隣接する配線間に不要なメッキ膜が形成されず、短絡等の問題が抑制される。
【0109】
この第1実施形態で用いられる以上の各材料は以下の実施形態でも用いられるので、以下の実施形態ではこれらの材料の説明は省略する。
【0110】
<第2の実施形態>
図3を参照し、本発明の第2の実施形態に係る配線方法を説明する。図中、符号2は複数の被接続部が露出する構造物、符号20は半導体装置、符号200は封止樹脂で封止された半導体装置、符号201は絶縁基材、符号201aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号202は半導体チップ、符号202aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号203は絶縁層、符号204は樹脂被膜、符号205は溝、符号206,207は連通孔、符号208は配線、符号208aは配線本体部、符号208bは配線分岐部、符号209は封止樹脂である。
【0111】
第2実施形態に係る配線方法においては、まず、図3(A)に示すように、絶縁基材201に半導体チップ202が搭載された構造物2を準備する。絶縁基材201の表面には複数の接続端子201aが設けられ、半導体チップ202の表面には複数の接続端子202aが設けられている。これらの接続端子201a,202aは構造物2の表面に露出している。
【0112】
なお、絶縁基材201の接続端子201aは、絶縁基材201の表面から突出している。また、絶縁基材201を貫通して反対面からも突出している。
【0113】
次に、図3(B)に示すように、複数の接続端子201a,202aが露出する構造物2の表面に絶縁層203を形成する(絶縁層形成工程)。絶縁層203の表面は、絶縁基材201の接続端子201aが絶縁基材201の表面から突出していることにより、凹凸形状を呈する。
【0114】
次に、図3(C)に示すように、絶縁層203の表面に樹脂被膜204を形成する(樹脂被膜形成工程)。
【0115】
次に、図3(D)に示すように、樹脂被膜204の表面側から樹脂被膜204の厚みと同じ又は厚みを超える深さの溝(図例は樹脂被膜204の厚みと同じ深さの溝)205を接続対象の接続端子201a,202aの近傍を通過するように形成すると共に、その近傍通過部分から接続対象の接続端子202a,201aに到達する連通孔206,207を形成する(溝孔形成工程)。
【0116】
次に、第1実施形態と同様にして、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程、メッキ処理工程を行うことにより、図3(E)に示すように、絶縁層203の表面に位置する本体部208aと、この本体部208aから分岐して絶縁層203の内部に延び、接続対象の接続端子202a,201aに到達する分岐部208bとを有する配線208が設けられる(配線形成工程)。
【0117】
このような、樹脂被膜形成工程、溝孔形成工程、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程及びメッキ処理工程を含む配線形成工程によれば、配線208、特に配線本体部208aの輪郭を高精度に維持することができ、短絡やマイグレーションの発生が抑制される。
【0118】
ここにおいて、絶縁基材201に半導体チップ202が搭載され、絶縁基材201の接続端子201aと半導体チップ202の接続端子202aとが相互に配線208で接続された半導体装置(表面に配線が設けられた構造物)20が得られる。
【0119】
この半導体装置20においては、絶縁基材201の接続端子201a及び半導体チップ202の接続端子202aが露出する構造物2の表面に絶縁層203が形成され、この絶縁層203の表面に配線208の本体部208aが設けられ、この配線本体部208aから配線208の分岐部208bが分岐し、この配線分岐部208bが絶縁層203の内部に延び、絶縁基材201の接続端子201a及び半導体チップ202の接続端子202aに到達している。
【0120】
接続端子201a,202aが絶縁層203で被覆され、絶縁層203の表面に配線208の本体部208aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子201a,202a間上に他の接続端子201a,202aがあっても、配線208を他の接続端子201a,202aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線208は、接続対象でない他の接続端子201a,202aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0121】
次に、図3(F)に示すように、半導体装置20を封止樹脂209で封止する。ここにおいて、封止樹脂209で封止された半導体装置200が得られる。
【0122】
<第3の実施形態>
図4を参照し、本発明の第3の実施形態に係る配線方法を説明する。図中、符号3は複数の被接続部が露出する構造物、符号30は表面に配線が設けられた構造物、符号300は封止樹脂で封止され、表面に配線が設けられた構造物、符号301は銅板、符号301aは接続端子(被接続部)、符号302はレジスト、符号303はニッケルメッキを介した金メッキ膜、符号304はキャビティ、符号305は半導体チップ、符号305aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号306は絶縁層、符号307は樹脂被膜、符号308は配線、符号308aは配線本体部、符号308bは配線分岐部、符号309は封止樹脂である。
【0123】
第3実施形態に係る配線方法においては、まず、図4(A)に示すように、銅板301の表面及び反対面にレジスト302を配置する。
【0124】
次に、図4(B)に示すように、銅板301の表面及び反対面のレジスト302を配置した以外の部分にニッケルメッキを介した金メッキ膜303を形成する。
【0125】
次に、図4(C)に示すように、レジスト302を除去する。
【0126】
次に、図4(D)に示すように、銅板301の表面の金メッキ膜303を形成した以外の部分をハーフエッチングして凹部を形成する。ここで、凹部の1つはキャビティ304となる。
【0127】
次に、図4(E)に示すように、キャビティ304に半導体チップ305を搭載する。
【0128】
ここにおいて、複数の接続端子301a,305aが露出する構造物3が得られる。
【0129】
次に、図4(F)に示すように、複数の接続端子301a,305aが露出する構造物3の表面に絶縁層306を形成する(絶縁層形成工程)。絶縁層306の表面は、接続端子301aが突出していることにより、凹凸形状を呈する。
【0130】
次に、同じく図4(F)に示すように、絶縁層306の表面に樹脂被膜307を形成する(樹脂被膜形成工程)。
【0131】
次に、第1実施形態と同様にして、溝孔形成工程、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程、メッキ処理工程を行うことにより、図4(G)に示すように、絶縁層306の表面に位置する本体部308aと、この本体部308aから分岐して絶縁層306の内部に延び、接続対象の接続端子301a,305aに到達する分岐部308bとを有する配線308が設けられる(配線形成工程)。
【0132】
ここにおいて、接続端子301aと半導体チップ305の接続端子305aとが相互に配線308で接続され、表面に配線308が設けられた構造物30が得られる。
【0133】
この構造物30においては、複数の接続端子301a,305aが露出する構造物3の表面に絶縁層306が形成され、この絶縁層306の表面に配線308の本体部308aが設けられ、この配線本体部308aから配線308の分岐部308bが分岐し、この配線分岐部308bが絶縁層306の内部に延び、接続対象の接続端子301a及び半導体チップ305の接続端子305aに到達している。
【0134】
次に、図4(H)に示すように、構造物30を封止樹脂309で封止する。
【0135】
次に、図4(I)に示すように、接続端子301a間や接続端子301aとキャビティ304間に残存していた銅板301をエッチングして除去する(符号ア)。接続端子301a及びキャビティ304は、絶縁層306及び封止樹脂309でつながれているため、銅板301を除去してもバラバラにならない。
【0136】
ここにおいて、封止樹脂309で封止され、表面に配線308が設けられた構造物300が得られる。
【0137】
なお、キャビティ304を構成する金属の部分は、半導体チップ305の放熱板として機能する。
【0138】
また、接続端子301aは、最終的には、銅板301と両端部の金メッキ膜303とで構成される。
【0139】
<第4の実施形態>
図5を参照し、本発明の第4の実施形態に係る配線方法を説明する。ただし、第3実施形態と同じ又は相当する構成要素には第3実施形態と同じ符号を用い、第3実施形態と異なる部分のみ説明する。図中、符号302aは支持板である。
【0140】
第4実施形態に係る配線方法においては、まず、図5(A)に示すように、銅板301の表面にレジスト302を配置し、反対面に支持板302aを貼り合わせる。
【0141】
次に、図5(B)に示すように、銅板301の表面のレジスト302を配置した以外の部分にニッケルメッキを介した金メッキ膜303を形成する。
【0142】
図5(C)〜図5(H)は、第3実施形態の図4(C)〜図4(H)と同様である。
【0143】
次に、図5(I)に示すように、支持板302aを取り除いた後、接続端子301a及びキャビティ304間に残存していた銅板301をエッチングして除去する(符号イ)。
【0144】
ここにおいて、封止樹脂309で封止され、表面に配線308が設けられた構造物300が得られる。
【0145】
第3実施形態に比べて、銅板301の反対面には金メッキ膜303を形成しないから、コストが少なくて済む。
【0146】
また、図5(A)〜(H)から明らかなように、銅板301の反対面には支持板302aが終始貼り合わされた状態で残っているので、作業中ワークの支持がしっかりする。
【0147】
<第5の実施形態>
図6を参照し、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置を説明する。図中、符号400は封止樹脂409で封止された半導体装置、符号401aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号405は半導体チップ、符号405aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号406は絶縁層、符号408は配線、符号409は封止樹脂である。なお、封止樹脂409は、取り除かれたものとして描かれていない。また、配線408は、一部のみが描かれている。
【0148】
第5実施形態に係る半導体装置400は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300に準じて同様の構成を有している。すなわち、第5実施形態に係る半導体装置400は、絶縁基材に半導体チップ405が搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子401a及び半導体チップ405に設けられた接続端子405aが露出する構造物の表面に絶縁層406が形成され、この絶縁層406の表面に配線408の本体部が設けられ、この配線本体部から配線408の分岐部が分岐し、この配線分岐部が絶縁層406の内部に延び、絶縁基材の接続端子401a及び/又は半導体チップ405の接続端子405aに到達している。
【0149】
なお、絶縁層406の表面は、接続端子401aが絶縁基材の表面から突出していることにより、また絶縁基材に半導体チップ405が搭載されていることにより、凹凸形状を呈している。
【0150】
接続端子401a,405aが絶縁層406で被覆され、絶縁層406の表面に配線408の本体部が設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子401a,405a又は405a,405a間上に他の接続端子401a,405aがあっても、配線408を他の接続端子401a,405aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線408は、接続対象でない他の接続端子401a,405aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0151】
また、配線408は、絶縁層406の表面を這うように形成されている。したがって、表面に配線408が設けられた構造物(半導体装置)を金型内にインサートし、封止樹脂409で封止する際に、配線408が封止樹脂の圧力を受けて配線408に大きな負荷が作用することが回避できる。その結果、金線等でワイヤーボンディングされた半導体装置に比べて、配線408の短絡や切断や損傷が抑制され、半導体装置の生産性及び信頼性が向上する。
【0152】
なお、図例は、配線408同士が交差しないように描かれているが、状況に応じて、配線408同士が交差しても構わない場合がある(例えばパルス信号の伝送等)。
【0153】
<第6の実施形態>
図7を参照し、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置を説明する。図中、符号500は封止樹脂で封止された半導体装置、符号501aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号505は半導体チップ、符号505aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号506は絶縁層、符号508は配線、符号508aは配線本体部、符号508bは配線分岐部である。なお、封止樹脂は、取り除かれたものとして描かれていない。また、配線508は、一部のみが描かれている。
【0154】
第6実施形態に係る半導体装置500は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300に準じて同様の構成を有している。すなわち、第6実施形態に係る半導体装置500は、絶縁基材に半導体チップ505が搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子501a及び半導体チップ505に設けられた接続端子505aが露出する構造物の表面に絶縁層506が形成され、この絶縁層506の表面に配線508の本体部508aが設けられ、この配線本体部508aから配線508の分岐部508bが分岐し、この配線分岐部508bが絶縁層506の内部に延び、絶縁基材の接続端子501a及び/又は半導体チップ505の接続端子505aに到達している。
【0155】
なお、絶縁層506の表面は、接続端子501aが絶縁基材の表面から突出していることにより、また絶縁基材に半導体チップ505が搭載されていることにより、凹凸形状を呈している。
【0156】
接続端子501a,505aが絶縁層506で被覆され、絶縁層506の表面に配線508の本体部508aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子501a,505a又は505a,505a間上に他の接続端子501a,505aがあっても、配線508を他の接続端子501a,505aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線508は、接続対象でない他の接続端子501a,505aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0157】
また、配線508は、絶縁層506の表面を這うように形成されている。したがって、表面に配線508が設けられた構造物(半導体装置)を金型内にインサートし、封止樹脂で封止する際に、配線508が封止樹脂の圧力を受けて配線508に大きな負荷が作用することが回避できる。その結果、金線等でワイヤーボンディングされた半導体装置に比べて、配線508の短絡や切断や損傷が抑制され、半導体装置の生産性及び信頼性が向上する。
【0158】
なお、図例は、配線508同士が交差しないように描かれているが、状況に応じて、配線508同士が交差しても構わない場合がある(例えばパルス信号の伝送等)。
【0159】
また、図中、符号ウで示すように、配線分岐部508bは、必ずしも接続端子501a,505aに真上から垂直に到達しなくてもよく、絶縁層506の表面形状に応じて、斜め上からあるいは横から水平に到達してもよい。
【0160】
<第7の実施形態>
図8を参照し、本発明の第7の実施形態に係る配線方法を説明する。図中、符号6は複数の被接続部が露出する構造物、符号60a,60bは半導体装置、符号600は封止樹脂で封止された半導体装置、符号601は絶縁基材、符号601aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号602は半導体チップ、符号602aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号603,613は絶縁層、符号604,614は樹脂被膜、符号608,618は配線、符号608a,618aは配線本体部、符号608b,618bは配線分岐部、符号609は封止樹脂である。
【0161】
第7実施形態に係る配線方法においては、まず、図8(A)に示すように、絶縁基材601に半導体チップ602が搭載された構造物6を準備する。絶縁基材601の表面には複数の接続端子601aが設けられ、半導体チップ602の表面には複数の接続端子602aが設けられている。これらの接続端子601a,602aは構造物6の表面に露出している。
【0162】
次に、図8(B)に示すように、複数の接続端子601a,602aが露出する構造物6の表面に絶縁層603を形成する(絶縁層形成工程)。
【0163】
次に、図8(C)に示すように、絶縁層603の表面に樹脂被膜604を形成する(樹脂被膜形成工程)。
【0164】
次に、第1実施形態と同様にして、溝孔形成工程、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程、メッキ処理工程を行うことにより、図8(D)に示すように、絶縁層603の表面に位置する本体部608aと、この本体部608aから分岐して絶縁層603の内部に延び、接続対象の接続端子601a,602aに到達する分岐部608bとを有する配線608が設けられる(配線形成工程)。
【0165】
ここにおいて、絶縁基材601に半導体チップ602が搭載され、絶縁基材601の接続端子601aと半導体チップ602の接続端子602aとが相互に配線608で接続された半導体装置(表面に配線が設けられた構造物)60aが得られる。
【0166】
次に、図8(E)に示すように、配線608の本体部608aが露出する絶縁層603の表面にさらに絶縁層613を積層する(絶縁層積層工程)。
【0167】
次に、図8(F)に示すように、積層した絶縁層613の表面に樹脂被膜614を形成する(樹脂被膜形成工程)。
【0168】
次に、1段目と同様にして、溝孔形成工程、触媒被着工程、樹脂被膜除去工程、メッキ処理工程を行うことにより、図8(G)に示すように、積層した絶縁層613の表面に位置する本体部618aと、この本体部618aから分岐して絶縁層613,603の内部に延び、接続対象の接続端子601a,602aに到達する分岐部618bとを有する配線618が設けられる(追加配線形成工程)。
【0169】
ここにおいて、絶縁基材601に半導体チップ602が搭載され、絶縁基材601の接続端子601aと半導体チップ602の接続端子602aとが相互に配線608,618で接続された半導体装置(表面に配線が設けられた構造物)60bが得られる。
【0170】
この半導体装置60bにおいては、絶縁層及び配線の組が上下に2段備えられている。すなわち、1段目においては、絶縁基材601の接続端子601a及び半導体チップ602の接続端子602aが露出する構造物6の表面に絶縁層603が形成され、この絶縁層603の表面に配線608の本体部608aが設けられ、この配線本体部608aから配線608の分岐部608bが分岐し、この配線分岐部608bが絶縁層603の内部に延び、絶縁基材601の接続端子601a及び半導体チップ602の接続端子602aに到達している。2段目においては、1段目の配線本体部608aが露出する1段目の絶縁層603の表面に2段目の絶縁層613が積層され、この積層された2段目の絶縁層613の表面に2段目の配線618の本体部618aが設けられ、この2段目の配線本体部618aから配線618の分岐部618bが分岐し、この2段目の配線分岐部618bが2段目の絶縁層613及び1段目の絶縁層603の内部に延び、絶縁基材601の接続端子601a及び半導体チップ602の接続端子602aに到達している。
【0171】
次に、図8(H)に示すように、半導体装置60bを封止樹脂609で封止する。ここにおいて、封止樹脂609で封止された半導体装置600が得られる。
【0172】
この第7実施形態で得られる半導体装置60b,600においては、配線608,618同士が相互にオーバーラップして通過することができる。その結果、短絡を起こさずに配線608,618同士を交差させることができ、この観点から、配線回路の高密度化を阻害することがより一層抑制される。
【0173】
なお、この第7実施形態においては、絶縁層積層工程及び追加配線形成工程を繰り返す回数は1回であったが(2段構成)、2回以上でもよい(3段以上の構成)。
【0174】
<第8の実施形態>
図9を参照し、本発明の第8の実施形態に係る配線基板を説明する。図中、符号700は配線基板、符号701はプリント配線板、符号701aはプリント配線板の接続端子(被接続部)、符号702は半導体装置、符号702aは半導体装置の接続端子(被接続部)、符号703は絶縁層、符号708は配線、符号708aは配線本体部、符号708bは配線分岐部である。なお、配線708は、一部のみが描かれている。
【0175】
第8実施形態に係る配線基板700は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第8実施形態に係る配線基板700は、プリント配線板701に半導体装置702が実装され、プリント配線板701に設けられた接続端子701a及び半導体装置702に設けられた接続端子702aが露出する構造物の表面に絶縁層703が形成され、この絶縁層703の表面に配線708の本体部708aが設けられ、この配線本体部708aから配線708の分岐部708bが分岐し、この配線分岐部708bが絶縁層703の内部に延び、プリント配線板701の接続端子701a及び/又は半導体装置702の接続端子702aに到達している。
【0176】
接続端子701a,702aが絶縁層703で被覆され、絶縁層703の表面に配線708の本体部708aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子701a,702a間上に他の接続端子701a,702aがあっても、配線708を他の接続端子701a,702aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線708は、接続対象でない他の接続端子701a,702aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0177】
<第9の実施形態>
図10を参照し、本発明の第9の実施形態に係るメモリカードを説明する。図中、符号800はメモリカード、符号801は支持体、符号801aは支持体の接続端子(被接続部)、符号802はメモリパッケージ、符号802aはメモリパッケージの接続端子(被接続部)、符号803は絶縁層、符号808は配線、符号808aは配線本体部、符号808bは配線分岐部である。なお、配線808は、一部のみが描かれている。
【0178】
第9実施形態に係るメモリカード800は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第9実施形態に係るメモリカード800は、支持体801にメモリパッケージ802が取り付けられ、支持体801に設けられた接続端子801a及びメモリパッケージ802に設けられた接続端子802aが露出する構造物の表面に絶縁層803が形成され、この絶縁層803の表面に配線808の本体部808aが設けられ、この配線本体部808aから配線808の分岐部808bが分岐し、この配線分岐部808bが絶縁層803の内部に延び、支持体801の接続端子801a及び/又はメモリパッケージ802の接続端子802aに到達している。
【0179】
接続端子801a,802aが絶縁層803で被覆され、絶縁層803の表面に配線808の本体部808aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子801a,802a間上に他の接続端子801a,802aがあっても、配線808を他の接続端子801a,802aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線808は、接続対象でない他の接続端子801a,802aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0180】
<第10の実施形態>
図11を参照し、本発明の第10の実施形態に係る電気デバイスを説明する。図中、符号900は電気デバイス、符号901は絶縁基材、符号901aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号902は受動素子、符号902aは受動素子の接続端子(被接続部)、符号903は絶縁層、符号908は配線、符号908aは配線本体部、符号908bは配線分岐部である。なお、配線908は、一部のみが描かれている。
【0181】
第10実施形態に係る電気デバイス900は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第10実施形態に係る電気デバイス900は、絶縁基材901に受動素子902が搭載され、絶縁基材901に設けられた接続端子901a及び受動素子902に設けられた接続端子902aが露出する構造物の表面に絶縁層903が形成され、この絶縁層903の表面に配線908の本体部908aが設けられ、この配線本体部908aから配線908の分岐部908bが分岐し、この配線分岐部908bが絶縁層903の内部に延び、絶縁基材901の接続端子901a及び/又は受動素子902の接続端子902aに到達している。
【0182】
接続端子901a,902aが絶縁層903で被覆され、絶縁層903の表面に配線908の本体部908aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子901a,902a間上に他の接続端子901a,902aがあっても、配線908を他の接続端子901a,902aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線908は、接続対象でない他の接続端子901a,902aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0183】
<第11の実施形態>
図12を参照し、本発明の第11の実施形態に係るモジュールを説明する。図中、符号1000はモジュール、符号1001は支持体、符号1001aは支持体の接続端子(被接続部)、符号1002は電気デバイス、符号1002aは電気デバイスの接続端子(被接続部)、符号1003は絶縁層、符号1008は配線、符号1008aは配線本体部、符号1008bは配線分岐部である。なお、配線1008は、一部のみが描かれている。
【0184】
第11実施形態に係るモジュール1000は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第11実施形態に係るモジュール1000は、支持体1001に電気デバイス1002が取り付けられ、支持体1001に設けられた接続端子1001a及び電気デバイス1002に設けられた接続端子1002aが露出する構造物の表面に絶縁層1003が形成され、この絶縁層1003の表面に配線1008の本体部1008aが設けられ、この配線本体部1008aから配線1008の分岐部1008bが分岐し、この配線分岐部1008bが絶縁層1003の内部に延び、支持体1001の接続端子1001a及び/又は電気デバイス1002の接続端子1002aに到達している。
【0185】
接続端子1001a,1002aが絶縁層1003で被覆され、絶縁層1003の表面に配線1008の本体部1008aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子1001a,1002a間上に他の接続端子1001a,1002aがあっても、配線1008を他の接続端子1001a,1002aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線1008は、接続対象でない他の接続端子1001a,1002aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0186】
<第12の実施形態>
図13を参照し、本発明の第12の実施形態に係る多層回路基板を説明する。図中、符号1100は多層回路基板、符号1101は最下層の回路基板、符号1101aは最下層の回路基板の接続端子(被接続部)、符号1102は第2層目以上の回路基板、符号1102aは第2層目以上の回路基板の接続端子(被接続部)、符号1102bは第2層目以上の回路基板の内部回路、符号1103は絶縁層、符号1108は配線、符号1108aは配線本体部、符号1108bは配線分岐部である。なお、配線1108は、一部のみが描かれている。
【0187】
第12実施形態に係る多層回路基板1100は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第12実施形態に係る多層回路基板1100は、複数の回路基板1101,1102が多段に積み重ねられた状態で結合され、回路基板1101,1102に設けられた接続端子1101a,1102aが露出する構造物の表面に絶縁層1103が形成され、この絶縁層1103の表面に配線1108の本体部1108aが設けられ、この配線本体部1108aから配線1108の分岐部1108bが分岐し、この配線分岐部1108bが絶縁層1103の内部に延び、相互に異なる回路基板1102の接続端子1102aに到達しており、前記回路基板1102の接続端子1102aは、回路基板1102の内部回路1102bの端部である。
【0188】
接続端子1101a,1102aが絶縁層1103で被覆され、絶縁層1103の表面に配線1108の本体部1108aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子1101a,1102a間上に他の接続端子1101a,1102aがあっても、配線1108を他の接続端子1101a,1102aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線1108は、接続対象でない他の接続端子1101a,1102aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0189】
このような構成の多層回路基板1100によれば、配線1108は、層間接続のための外部配線として機能することになる。つまり、多層回路基板1100における層間接続の技法として、従来、層間接続用孔としてのビアホールを形成することが知られている。ところが、ビアホールを多層回路基板1100の内部回路上に配置するので、そのビアホールの配置分だけ内部回路の配線有効面積が減少するという問題があった。この第12実施形態に係る多層回路基板1100においては、多層回路基板1100の側面の縦壁を通過する配線1108が多層回路基板1100の層間接続をするので、この問題が回避できることになる。また、多層回路基板1100の縦壁に層間接続のための外部の配線1108を容易に設けることが可能となる。
【0190】
なお、図13に例示したように、多層回路基板1100の側面の縦壁を通過する配線108は、各層の内部回路1102bと接続するために、迂回してもよいし、縦壁を斜めに通過してもよいし、所定の層の内部回路とは接続しないように通過してもよい。
【0191】
また、符号1101は、多層回路基板とは別の独立した基板でもよい。
【0192】
<第13の実施形態>
図14を参照し、本発明の第13の実施形態に係る半導体装置を説明する。図中、符号1200は半導体装置(スタックチップパッケージ)、符号1201は絶縁基材、符号1201aは絶縁基材の接続端子(被接続部)、符号1202は半導体チップ、符号1202aは半導体チップの接続端子(被接続部)、符号1203は絶縁層、符号1208は配線、符号1208aは配線本体部、符号1208bは配線分岐部、符号1209は封止樹脂である。なお、配線1208は、一部のみが描かれている。
【0193】
第13実施形態に係る半導体装置(スタックチップパッケージ)1200は、第1実施形態又は第2実施形態で得られる半導体装置100,200、第3実施形態又は第4実施形態で得られる構造物300、第5実施形態又は第6実施形態で得られる半導体装置400,500に準じて同様の構成を有している。すなわち、第13実施形態に係る半導体装置1200は、絶縁基材1201に複数の半導体チップ1202が多段に積み重ねられた状態で結合され、半導体チップ1202に設けられた接続端子1202aが露出する構造物の表面に絶縁層1203が形成され、この絶縁層1203の表面に配線1208の本体部1208aが設けられ、この配線本体部1208aから配線1208の分岐部1208bが分岐し、この配線分岐部1208bが絶縁層1203の内部に延び、相互に異なる半導体チップ1202の接続端子1202aに到達している。
【0194】
図14は、さらに、配線1208が絶縁基材1201の接続端子1201aにも接続している例を示している。
【0195】
接続端子1201a,1202aが絶縁層1203で被覆され、絶縁層1203の表面に配線1208の本体部1208aが設けられるので、相互に接続しようとする接続対象の接続端子1201a,1202a間上に他の接続端子1201a,1202aがあっても、配線1208を他の接続端子1201a,1202aに触れないように迂回させる必要がなくなる。配線1208は、接続対象でない他の接続端子1201a,1202aの上を乗り越え、オーバーラップして通過することができる。その結果、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0196】
この第13実施形態においては、半導体装置1200は、マルチチップモジュールのうちでもさらなるコンパクト化・高密度化が図られるスタックチップパッケージである。そして、スタックチップパッケージ1200の表面、すなわち上面や棚面や側面の縦壁等に、チップ間接続のための外部の配線1208が形成されている。
【0197】
このような構成のスタックチップパッケージ1200によれば、配線1208は、従来のスルーシリコンビアの技法や多段ワイヤーボンディングの技法に代わる、チップ間接続のための外部配線として機能することになる。つまり、複数の半導体チップ1202が多段に積み重ねられたスタックチップパッケージ1200におけるチップ間接続の技法として、従来、スルーシリコンビアの技法や多段ワイヤーボンディングの技法が知られている。ところが、スルーシリコンビアでは、ビアを半導体チップ1202の回路上に配置するので、そのビアの配置分だけチップ1202における回路の配線有効面積が減少するという問題があった。また、多段ワイヤーボンディングでは、前述のように、樹脂封止時に金線が封止樹脂の圧力を受けて生産性及び信頼性が低下すると共に、実装面積が大きくなり高密度化が図れないという問題があった。この第13実施形態に係るスタックチップパッケージ1200においては、スタックチップパッケージ1200の表面にチップ間接続のための外部の配線1208を形成し、この外部配線1208が、配線分岐部1208bを介して、スタックチップパッケージ1200を構成する複数のチップ同士の接続をするので、これらの問題が回避できるという利点を有する。
【0198】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本実施形態によれば、構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続する場合に、配線を迂回させる必要がなくなり、配線回路の高密度化を阻害することが抑制される。
【0199】
本実施形態のその他の作用効果については、前記第1〜13実施形態において説明した。
【0200】
なお、本実施形態では、溝孔形成工程において、溝は、樹脂被膜の厚みと同じ深さであったが、これに代えて、樹脂被膜の厚みを超える深さの溝でもよい。その場合は、メッキ処理工程により得られる配線の本体部は、その一部又は全部が絶縁層に埋め込まれることとなる。その結果、構造物に対する配線の接着強度が向上し、配線の脱落やズレが抑制される。
【符号の説明】
【0201】
1 構造物
101 絶縁基材
101a,102a 被接続部(接続端子)
102 半導体チップ
103 絶縁層
104 樹脂被膜
108 配線
108a 配線本体部
108b 配線分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に露出する複数の被接続部を相互に配線で接続するための配線方法であって、
複数の被接続部が露出する構造物の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成工程、及び、
絶縁層の表面に位置する本体部と、この本体部から分岐して絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達する分岐部とを有する配線を設ける配線形成工程、
を備えることを特徴とする配線方法。
【請求項2】
配線形成工程は、
絶縁層の表面に樹脂被膜を形成する樹脂被膜形成工程、
樹脂被膜の表面側から樹脂被膜の厚みと同じ又は厚みを超える深さの溝を接続対象の被接続部の近傍を通過するように形成すると共に、その近傍通過部分から接続対象の被接続部に到達する連通孔を形成する溝孔形成工程、
前記溝及び前記連通孔の表面にメッキ触媒又はその前駆体を被着させる触媒被着工程、
前記樹脂被膜を溶解又は膨潤させることにより除去する樹脂被膜除去工程、及び、
無電解メッキを行うことにより前記メッキ触媒又は前記メッキ触媒前駆体から形成されるメッキ触媒が残留する部分のみにメッキ膜を形成するメッキ処理工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線方法。
【請求項3】
配線形成工程は、
メッキ処理工程の後、電解メッキを行うことによりメッキ膜を厚膜化する電解メッキ工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の配線方法。
【請求項4】
樹脂被膜は蛍光性物質を含有し、
配線形成工程は、
樹脂被膜除去工程の後、メッキ処理工程の前に、前記蛍光性物質からの発光を用いて樹脂被膜の除去不良を検査する検査工程をさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の配線方法。
【請求項5】
配線形成工程の後、
配線の本体部が露出する絶縁層の表面にさらに絶縁層を積層する絶縁層積層工程、及び、
積層した絶縁層の表面に位置する本体部と、この本体部から分岐して絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達する分岐部とを有する配線を設ける追加配線形成工程、
を1回以上繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の配線方法。
【請求項6】
複数の被接続部が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達していることを特徴とする表面に配線が設けられた構造物。
【請求項7】
配線本体部が露出する絶縁層の表面に絶縁層が積層され、
この積層された絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、接続対象の被接続部に到達している構成が、
1段以上備えられていることを特徴とする請求項6に記載の表面に配線が設けられた構造物。
【請求項8】
絶縁基材に半導体チップが搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子及び半導体チップに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、絶縁基材の接続端子及び/又は半導体チップの接続端子に到達していることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
プリント配線板に半導体装置が実装され、プリント配線板に設けられた接続端子及び半導体装置に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、プリント配線板の接続端子及び/又は半導体装置の接続端子に到達していることを特徴とする配線基板。
【請求項10】
支持体にメモリパッケージが取り付けられ、支持体に設けられた接続端子及びメモリパッケージに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、支持体の接続端子及び/又はメモリパッケージの接続端子に到達していることを特徴とするメモリカード。
【請求項11】
絶縁基材に受動素子が搭載され、絶縁基材に設けられた接続端子及び受動素子に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、絶縁基材の接続端子及び/又は受動素子の接続端子に到達していることを特徴とする電気デバイス。
【請求項12】
支持体に電気デバイスが取り付けられ、支持体に設けられた接続端子及び電気デバイスに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、支持体の接続端子及び/又は電気デバイスの接続端子に到達していることを特徴とするモジュール。
【請求項13】
複数の回路基板が多段に積み重ねられた状態で結合され、回路基板に設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、相互に異なる回路基板の接続端子に到達しており、
前記回路基板の接続端子は、回路基板の内部回路の端部であることを特長とする多層回路基板。
【請求項14】
絶縁基材に複数の半導体チップが多段に積み重ねられた状態で搭載され、半導体チップに設けられた接続端子が露出する構造物の表面に絶縁層が形成され、
この絶縁層の表面に配線の本体部が設けられ、
この配線本体部から配線の分岐部が分岐し、
この配線分岐部が絶縁層の内部に延び、相互に異なる半導体チップの接続端子に到達していることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−243790(P2011−243790A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115250(P2010−115250)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】