説明

酸感応性化合物及びフォトレジスト用樹脂組成物

【課題】耐エッチング液性が高く、光照射により可溶化できるフォトレジスト用樹脂組成物により微細なパターンを形成する。
【解決手段】フォトレジスト用樹脂組成物は、下記式で表される酸感応性化合物の単位(アダマンタン骨格など)を有する重合体と、光酸発生剤とで構成されている。


(式中、Rはアルキル基又はシクロアルキル基、Rは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、酸素含有基、アミノ基、又はN−置換アミノ基、環Zはアダマンタン環、nは1以上の整数を示す。式(1)において、R又はRは隣接する炭素原子とともに脂環式炭化水素環を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン誘導体などの酸感応性化合物、およびこの酸感応性化合物を用いたフォトレジスト用樹脂組成物に関する。特に、紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザーなどを含む)などを用いてパターン(半導体の微細加工など)を形成するのに適したフォトレジスト用樹脂組成物およびそのための酸感応性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の形成には、基板にレジスト薄膜を形成し、パターン露光により潜像を形成した後、現像によりレジストパターンを形成し、このパターンをマスクとしてドライエッチングし、レジストを除去することにより所定のパターンを形成するリソグラフィ技術が利用されている。
【0003】
半導体の製造用レジストとして、アルカリ可溶性ノボラック樹脂とジアゾナフトキノン誘導体とを含有する感光性樹脂組成物が知られている。この樹脂組成物は、光照射によりジアゾナフトキノン基が分解してカルボキシル基を生成し、アルカリ不溶性からアルカリ可溶性となることを利用して、ポジ型レジストとして利用されている。また、光照射により不溶化するレジストとして、アジド類による光架橋や、光重合開始剤による光重合を利用したネガ型レジストも知られている。
【0004】
一方、リソグラフィ技術においては、パターンの微細化により、g線,i線などの紫外光線から、より短波長の露光源、例えば、遠紫外線、真空紫外線、エキシマレーザー光線、電子線、X線などの放射線が利用されている。
【0005】
しかし、これらのレジストは、樹脂が芳香環を含んでいるため200nm以下の波長に対しては不透明な場合があり、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたフォトレジストの組成物としては適当でない。
【0006】
短波長の露光源(ArFエキシマレーザーなど)に適したフォトレジストとして、特開平9−73173号公報(特許文献1)には、アダマンタン,ノルボルナンなどの脂環式炭化水素基で保護され、かつ酸により脱離してアルカリ可溶性となる構造単位を有する重合体と、酸発生剤とで構成されたレジスト材料が開示されている。この文献には、前記重合体として、(i)2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートの共重合体、(ii)2−(1−アダマンチル)プロピル(メタ)アクリレートの共重合体などが例示されている。この重合体は、環内に二重結合を有していないため、上記ArFエキシマレーザー光に対して透明であり、半導体の微細加工において、プラズマガスによるドライエッチング耐性が向上する。
【0007】
しかし、前記重合体と酸発生剤とで構成されたレジストを用いてパターンを形成すると、パターンの微細化に伴ってクラックやパターンの剥離が生じ易くなり、安定して微細パターンを形成できない場合がある。
【特許文献1】特開平9−73173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、脂環族炭化水素基(アダマンタン骨格など)を有し、光照射によりアルカリ可溶性重合体を生成でき、微細なパターンを形成するのに有用な酸感応性化合物、およびそれを用いたフォトレジスト用樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、感度および耐エッチング性(特に耐ドライエッチング性)が高く、微細なレジストパターンを安定かつ高い精度で形成するのに有用な酸感応性化合物、およびそれを用いたフォトレジスト用樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、基板に対する密着性が高く、高い精度で微細なレジストパターンを安定して形成するのに有用な酸感応性化合物、およびそれを用いたフォトレジスト用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、脂環式炭化水素基とともに特定の構造を有する酸感応性化合物の単位を含む重合体と、光酸発生剤とを組み合わせると、光照射に伴って酸発生剤から生成する酸により重合体から前記脂環式炭化水素基が安定かつ効率よく脱離して、水又はアルカリ現像できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の酸感応性化合物は、下記式(1)又は(2)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rはアルキル基又はシクロアルキル基、Rは、水素原子,アルキル基又はシクロアルキル基、Rは水素原子又はメチル基,Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、酸素含有基、アミノ基又はN−置換アミノ基、nは1以上の整数を示す。環Zは単環又は多環式脂環族炭化水素環を示す。式(1)において、RおよびRは隣接する炭素原子とともに脂環式炭化水素環を形成してもよい。)
この酸感応性化合物において、環Zはアダマンタン環である。R及びRがC1−4アルキル基であり、Rが水素原子であってもよい。Rが直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基、Rが水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基であってもよい。前記式(1)で表される化合物において、Rが水素原子であり、Rが、直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基であってもよい。少なくとも1つのRは、ハロゲン原子、アルキル基、酸素含有基、アミノ基又はN−置換アミノ基であってもよい。
【0015】
また、環Zは、2〜4の環を含む架橋環式炭化水素環であってもよい。このような化合物には、例えば、下記式(1a)又は(2a)で表されるアダマンタン誘導体、あるいは下記式(2d)又は(2e)で表される化合物が含まれる。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R、R、R、Rは前記に同じ。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、RおよびRは前記に同じ。)
本発明の重合体は、前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物の単位を含む重合体であって、前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物の単独又は共重合体、もしくは前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物と共重合性単量体との共重合体である。
【0020】
前記共重合性単量体は、(メタ)アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、ラクトン骨格を有する単量体、及び脂環式炭化水素環を有する単量体から選択された少なくとも一種であってもよい。前記共重合体における酸感応性化合物(1)又は(2)の割合は、15〜90重量%であってもよい。
【0021】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、少なくとも下記式(11)又は(12)で表される単位を有する重合体と光酸発生剤とで構成できる。
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R、R、R、R、環Zおよびnは前記に同じ。)
この重合体において、環Zは、2〜4の環を含む架橋環式炭化水素環(例えば、アダマンタン環など)であってもよい。
【0024】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物の単位を含む重合体と光酸発生剤とで構成できる。
【0025】
本発明には、基材に形成された前記フォトレジスト用樹脂組成物の塗膜に、所定のパターンで露光し、現像してパターンを形成する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の酸感応性化合物は、脂環族炭化水素基(アダマンタン骨格など)を有し、かつ光照射によりアルカリ可溶性となるので、フォトレジストとして微細なパターンを形成するのに有用である。また、感度および耐エッチング性(特に耐ドライエッチング性)が高く、微細なレジストパターンを安定かつ高い精度で形成できる。さらには、基板に対する密着性,レジスト液の安定性を向上させることもでき、高い精度で微細なレジストパターンを安定して形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
前記式(1)(2)(1a)(2a)(11)(12)において、RおよびRで表されるアルキル基には、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれ、例えば、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル基などのC1−10アルキル基(好ましくはC1−6アルキル基、特にC1−4アルキル基)などが例示できる。
【0028】
分岐鎖状アルキル基は、第3炭素原子を有するアルキル基であってもよい。第3炭素原子を有する分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル,イソブチル、1−メチルエチル,イソペンチル,1−メチルプロピル(s−ブチル),1−メチルブチル(s−ペンチル),s−ヘキシル,1−エチルエチル,1−エチルブチル基などの1−C1−4アルキル−C1−6アルキル基が例示できる。好ましい分枝鎖状アルキル基には、Rがα−位置にメチン炭素原子を有するアルキル基、特に1−C1−2アルキル−C1−4アルキル基(イソプロピル,s−ブチル基など)が含まれる。なお、前記式(1)(2)(1a)(2a)(11)(12)において、環Zが置換基を有しない場合、Rで表されるアルキル基は第3炭素原子を有する分岐鎖状アルキル基である。
【0029】
シクロアルキル基としては、C3−15シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル,シクロブチル,シクロペンチル,シクロヘキシル,シクロヘキシル,シクロオクチル,シクロデシル基などの単環式C3−10シクロアルキル基、パーヒドロナフチル(デカリル),アダマンチル,メチルアダマンチル,ジメチルアダマンチル基などの多環式C6−15シクロアルキル基などが例示できる。
【0030】
前記式(1)(2)(1a)(2a)(2d)(2e)(11)(12)において、Rは水素原子又はメチル基であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を構成する。
【0031】
とRは隣接する炭素原子とともに脂環式炭化水素環を形成してもよい。脂環式炭化水素環としては、前記シクロアルキル基に対応する炭化水素環が例示できる。
【0032】
環Zには、種々の脂環族炭化水素環、例えば、単環式炭化水素環、多環式炭化水素環(スピロ炭化水素環,環集合炭化水素環,縮合環式炭化水素環や架橋環式炭化水素環)が含まれる。単環式炭化水素環には、例えば、シクロヘプタン,シクロヘキサン,シクロペンタン,シクロオクタンなどのC4−10シクロアルカン環が含まれ、スピロ炭化水素環には、例えば、スピロ[4.4]ノナン,スピロ[4.5]デカン,スピロビシクロヘキサンなどのC8−16炭化水素環などが含まれる。環集合炭化水素環としては、例えば、ビシクロヘキサン,ビパーヒドロナフタレン環などのC5−12シクロアルカン環を有する炭化水素環が例示でき、縮合環式炭化水素環には、例えば、パーヒドロナフタレン環(デカリン環)、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環,パーヒドロアセナフテン環,パーヒドロフルオレン環,パーヒドロインデン環,パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が縮合した縮合環が例示できる。
【0033】
好ましい環Zは架橋環式炭化水素環であり、架橋環式炭化水素環には、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナンなどの2環式炭化水素類;ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン,トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンなどの3環式炭化水素類;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレンなどの4環式炭化水素類など]、ジエン類の二量体の水素添加物[例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロペプタジエンなどのシクロアルカジエンの二量体の水素添加物(例えば、パーヒドロ−4,7−メタノインデンなど),ブタジエンの二量体(ビニルシクロヘキセン)やその水素添加物,ブタジエンとシクロペンタジエンとの二量体(ビニルノルボルネン)やその水素添加物など]などが含まれる。好ましい架橋環式炭化水素環は、通常、ボルナン、ノルボルナンやアダマンタン骨格を有している。
【0034】
好ましい環Zは、2〜4の環を含む架橋環式炭化水素環である。
【0035】
これらの環Z(単環又は多環式脂環族炭化水素環)は、通常置換基Rを有する。環Zは、複数の置換基Rを有していてもよく、この場合、少なくとも1つのRが下記の官能基であればよく、他の置換基Rは、水素原子であってもよい。なお、前記Rは同時に水素原子ではなく、nによって異なっていてもよい。
【0036】
置換基Rとしては、水素原子、ハロゲン原子(臭素、塩素、フッ素原子など)、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基などのC1−4アルキル基)、酸素含有基、アミノ基、N−置換アミノ基であり、酸素含有基としては、例えば、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ,エトキシ,t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,ブトキシカルボニル,t−ブトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基)、シクロアルキルオキシカルボニル基(シクロプロピルオキシカルボニル,シクロブチルオキシカルボニル,シクロペンチルオキシカルボニル,シクロヘキシルオキシカルボニル,シクロヘプチルオキシカルボニル,シクロオクチルオキシカルボニル基などのC3−10シクロアルキルオキシカルボニル基など),アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル,フェネチルオキシカルボニル,トリチルオキシカルボニル基など)、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基(N−C1−4アルキルカルバモイル基など)、ニトロ基などが例示できる。
【0037】
好ましい置換基Rには、例えば、ヒドロキシル基,アルコキシ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,ヒドロキシメチル基などが含まれる。さらに好ましい置換基Rとしては、ヒドロキシル基,カルボキシル基,ヒドロキシメチル基(特に、ヒドロキシル基又はカルボキシル基)が挙げられる。
【0038】
これらの置換基Rは保護基で保護されていてもよく、保護基は酸により脱離可能な保護基、すなわち露光前に重合体が溶解するのを阻止するための溶解阻止修飾基として機能する保護基であってもよい。
【0039】
ヒドロキシル基およびヒドロキシメチル基の保護基としては、例えば、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,t−ブトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基)、ベンジルオキシ基などが例示できる。
【0040】
カルボキシル基の保護基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ,エトキシ,t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基,p−メトキシベンジルオキシ,ジフェニルメチルオキシ,ベンズヒドリルオキシ基など),N−ヒドロキシスクシンイミド基などが利用できる。
【0041】
なお、これらの置換基Rが、酸素含有基であることで、レジストと基板との密着性を改善できる。
【0042】
nは1以上の整数(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4(例えば、2〜3)、特に2〜4の整数を示す。
【0043】
前記化合物において、好ましい置換基とその組み合わせは次の通りである。
【0044】
(i)環Zを構成する少なくとも1つの環において、置換基Rが、酸素含有基、例えば、ヒドロキシル基,アルコキシ基、カルボキシル基,アルコキシカルボニル基、およびヒドロキシメチル基から選択された少なくとも一種の置換基である化合物。
【0045】
(ii)前記式(1)において、Rが水素原子,直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基(特に水素原子)であり、Rが水素原子,直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基である化合物
(iii)前記式(1)(2)(1a)(2a)(11)(12)において、Rが1−メチル−C1−4アルキル基である化合物
このような酸感応性化合物には、下記式で表される(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0046】
【化5】

【0047】
(式中、R1aはC1−3アルキル基,Rは水素原子又はメチル基,環Zは置換基Rを有する架橋環式脂環族炭化水素環を示す。Rは前記に同じ。)
なお、前記式(1)(2)(1a)(2a)(11)(12)において、環Zが置換基を有しない場合、Rは第3炭素原子を有する分岐鎖状アルキル基である。
【0048】
本発明の酸感応性化合物(1)(2)は、例えば、下記反応工程式に従って調製できる。
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、Xはハロゲン原子、R2aは前記R又はハロゲン原子を示し、Rはハロゲン原子,ヒドロキシル基,アルコキシ基,アルケニルオキシ基,又はアルキニルオキシ基を示す。R、R、R、R、環Zは前記に同じ)
ハロゲン原子には、塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子などが含まれ、アルコキシ基には、C1−10アルコキシ基(例えば、メトキシ,エトキシ,t−ブトキシ基など)が含まれる。アルケニルオキシ基には、C2−10アルケニルオキシ基(ビニルオキシ、アリルオキシ、1−プロペニルオキシ、イソプロペニルオキシ、1−ブテニルオキシ、2−ブテニルオキシ、3−ブテニルオキシ、2−ペンテニルオキシ基など)などが含まれ、アルキニルオキシ基には、C2−10アルキニルオキシ基(エチニルオキシ、プロピニルオキシ基など)などが含まれる。
【0051】
前記反応工程式において、代表的なカルボニル化合物(1b)を例示すると、例えば、単環式化合物(シクロヘキシル−1−エタノンなどのシクロアルキル−1−C2−6アルカノンなど)、スピロ環式化合物(スピロ[4.5]デカン−8−イル−1−エタノン,スピロビシクロヘキサン−9−イル−1−エタノンなど)、環集合化合物(ビシクロヘキサン−4−イル−1−エタノンなどのビシクロアルキル−1−C2−6アルカノンなど)、縮合環化合物(パーヒドロナフチル−1−エタノン、パーヒドロフェナントレニル−1−エタノンなど)、架橋環式化合物(ボルナン−2−イル−1−エタノン、ボルナン−3−イル−1−エタノン、ノルボルナン−2−イル−1−エタノンなどの2環式化合物、アダマンタン−1−イル−エタン−1−オン,アダマンタン−1−イル−プロパン−1−オン,アダマンタン−1−イル−ブタン−1−オン,メチルアダマンタン−1−イル−エタン−1−オンなどのアダマンチル−1−C2−6アルカノンなどの3環式化合物など),ジエン類の二量体の水素添加物からの誘導体(パーヒドロ−4,7−メタノインデン−1−イル−1−エタノンなどのパーヒドロ−4,7−メタノインデニル−1−C2−6アルカノン)などが例示できる。
【0052】
2aがハロゲン原子であるカルボニル化合物(1b)、すなわち酸ハライドとしては、例えば、単環式化合物(シクロヘキサンカルボン酸ハライドなど)、スピロ環式化合物(スピロ[4.5]デカン−8−カルボン酸ハライドなど)、環集合化合物(ビシクロヘキサン−4−カルボン酸ハライドなど)、縮合環化合物(パーヒドロナフタレン−1−カルボン酸ハライド、パーヒドロフェナントレン−1−カルボン酸ハライドなど)、架橋環式化合物(ボルナン−2−カルボン酸ハライド、ノルボルナン−2−カルボン酸ハライドなどの2環式化合物、アダマンタン−1−カルボン酸ハライドなどの3環式化合物など),ジエン類の二量体の水素添加物からの誘導体(パーヒドロ−4,7−メタノインデン−1−カルボン酸ハライドなど)などが例示できる。
【0053】
カルボニル化合物(2b)としては、例えば、単環式ケトン(シクロヘキサノン,メチルシクロヘキサノンなどのシクロアルカノンなど)、スピロ環式ケトン(スピロ[4.5]デカン−8−オン,スピロビシクロヘキサン−9−オンなど)、環集合式ケトン(ビシクロヘキサン−4−オンなどのビシクロアルカノンなど)、縮合環化合物(パーヒドロナフタレン−1−オン、パーヒドロナフタレン−2−オン、パーヒドロフェナントレン−1−オンなど)、架橋環式化合物(ボルナン−2−オン、ボルナン−3−オン、ノルボルナン−2−オンなどの2環式化合物、アダマンタノン,メチルアダマンタノン,ジメチルアダマンタノンなどの3環式化合物など),ジエン類の二量体の水素添加物からの誘導体(パーヒドロ−4,7−メタノインデン−1−オンなど)などが例示できる。
【0054】
前記反応工程式において、カルボニル化合物(1b)(2b)と試薬RMgX(3)との反応は、慣用のグリニャール反応に準じて行うことができる。グリニャール試薬RMgX(3)の使用量は、例えば、前記カルボニル化合物(1b)(2b)1モルに対して、0.8〜3モル(例えば、1〜2.5モル)、好ましくは1〜2モル、さらに好ましくは1〜1.5モル程度である。なお、R2aがハロゲン原子であるカルボニル化合物(1b)を用いる場合、カルボニル化合物(1b)1モルに対してグリニャール試薬RMgX(3)2モルを反応させることにより、RがRである化合物(1c)を生成させることができる。
【0055】
反応は、反応に不活性な溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサン,シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフランなど)などの存在下で行うことができる。反応温度は、例えば、0〜100℃、好ましくは10〜50℃程度の範囲から適当に選択できる。
【0056】
還元剤によるカルボニル化合物(1b)(R2aがRであるカルボニル化合物)の還元反応は、慣用の方法、例えば、還元剤として水素を用いる接触水素添加法、水素化還元剤を用いる還元法などにより行うことができる。
【0057】
接触水素添加法では、触媒として、例えば、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅などの金属単体や、これらの金属元素を含む化合物(例えば、酸化白金、パラジウム黒、パラジウム炭素、亜クロム酸銅など)を用いることができる。触媒の使用量は、基質1モルに対して、通常、0.02〜1モル程度である場合が多い。また、接触水素添加法では、反応温度は、例えば、−20℃〜100℃(例えば、0〜70℃)程度であってもよい。水素圧は、通常、1〜10気圧である場合が多い。
【0058】
水素化還元剤を用いる還元法において、水素化還元剤としては、例えば、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ジボランなどが挙げられる。水素化還元剤の使用量は、基質1モルに対して、通常、1モル以上(例えば、1〜10モル程度)である場合が多い。水素化還元剤を用いる還元法において、反応温度は、通常、0〜200℃(例えば、0〜170℃)程度である場合が多い。
【0059】
前記還元反応(接触水素添加法、水素化還元剤を用いる方法)は、還元反応に不活性な溶媒(例えば、炭化水素類、カルボン酸、エーテル類、エステル類、アミド類など)の存在下で行ってもよい。
【0060】
反応により生成したヒドロキシ化合物(1c)(2c)は必要により単離して(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)とのエステル化反応に供することにより、酸感応性化合物(1)(2)を生成させることができる。
【0061】
(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)としては、(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸、脱離基を有する反応性誘導体[例えば、酸ハライド(メタ)アクリル酸クロライド,(メタ)アクリル酸ブロマイドなど),(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸t−ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなど)、(メタ)アクリル酸アルケニルエステル((メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ペンテニルなどの(メタ)アクリル酸C2−10アルケニルエステルなど)、(メタ)アクリル酸アルキニルエステル((メタ)アクリル酸エチニル、(メタ)アクリル酸プロピニルなどの(メタ)アクリル酸C2−10アルキニルエステルなど)]などが例示できる。
【0062】
好ましい化合物(5)には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ハライド,(メタ)アクリル酸C1−6低級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸C2−6アルケニルエステル、(メタ)アクリル酸C2−6アルキニルエステルが含まれる。特に、(メタ)アクリル酸ハライド,(メタ)アクリル酸C2−6アルケニルエステルを用いると、付加重合などの副反応を抑制しつつ、脱離基の交換反応により、高い選択率および収率で対応する酸感応性化合物を生成させることができる。
【0063】
前記エステル化反応は、慣用の方法、例えば、適当な触媒(酸触媒など)の存在下で行ってもよい。なお、(メタ)アクリル酸ハライドを用いると、酸感応性化合物がハロゲン成分で汚染される場合がある。そのため、エステル化反応は、(メタ)アクリル酸を用いるエステル化反応、エステル交換反応を利用するのが好ましい。このようなエステル化反応やエステル交換反応においては、慣用のエステル化触媒(例えば、硫酸などの非ハロゲン系無機酸,塩酸,p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸,酸性イオン交換樹脂などのプロトン酸,三フッ化ホウ素などのルイス酸,酵素など)、エステル交換触媒(例えば、上記エステル化触媒、ナトリウムアルコキシドなどのアルカリ金属アコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタン酸エステルなど)が利用できる。
【0064】
反応効率を高め、高い収率で酸感応性化合物を得るため、前記ヒドロキシ化合物(1c)(2c)と(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)とのエステル化反応(エステル交換反応などの脱離基交換反応を含む)は、周期表3族元素化合物で構成された触媒の存在下で行うのが有利である。このような触媒を用いる反応では、アミン塩酸塩などの生成を抑制できるとともに、(メタ)アクリル酸C1−4低級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸C2−4アルケニルエステルを用いると、ハロゲン成分により目的化合物が汚染することがない。さらに、(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)として低沸点化合物(上記エステルなど)が使用できるので、反応後の処理も容易であり、単離収率を大きく改善できる。
【0065】
周期表3族化合物で構成された触媒において、周期表3族元素には、例えば、希土類元素[例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド系列元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)]、アクチノイド系列元素(例えば、アクチニウムなど)などが含まれる。好ましい周期表3族元素には、希土類元素、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド系列元素(サマリウム、ガドリニウム、イッテリビウムなど)が含まれる。
【0066】
周期表3族元素の原子価は特に制限されず、2価〜4価程度、特に2価又は3価である場合が多い。前記周期表3族元素化合物は、触媒活性能を有する限り特に制限されず、金属単体、無機化合物(ハロゲン化物,酸化物,複酸化物、リン化合物,窒素化合物など)や有機化合物(有機酸など)との化合物や錯体であってもよく、通常、前記元素を含む水酸化物または酸素酸塩、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物(錯体)などである場合が多い。錯体はメタロセン化合物のようなπ錯体であってもよい。さらに、周期表3族元素化合物は他の金属との複合金属化合物であってもよい。これらの触媒は一種又は二種以上使用できる。
【0067】
以下に、サマリウム化合物を例にとって触媒成分を具体的に説明するが、サマリウム化合物に対応する他の周期表3族元素化合物も有効に使用できる。
【0068】
水酸化物には、例えば、水酸化サマリウム(II),水酸化サマリウム(III)などが含まれ、金属酸化物には、例えば、酸化サマリウム(II),酸化サマリウム(III)などが含まれる。
【0069】
有機酸塩としては、例えば、有機カルボン酸(モノカルボン酸、多価カルボン酸)、オキシカルボン酸、チオシアン酸、スルホン酸(アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アリールスルホン酸など)などの有機酸との塩が例示され、無機酸塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩,リン酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩など挙げられる。有機酸塩又は無機酸塩としては、例えば、酢酸サマリウム,トリクロロ酢酸サマリウム,トリフルオロ酢酸サマリウム,トリフルオロメタンスルホン酸サマリウム(すなわち、サマリウムトリフラート),硝酸サマリウム,硫酸サマリウム,リン酸サマリウム,炭酸サマリウムなどが例示できる。
【0070】
ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物などが例示できる。
【0071】
錯体を形成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル、C1−4アルキル置換シクロペンタジエニル(ペンタメチルシクロペンタジエニルなどのC1−2アルキル置換シクロペンタジエニルなど)、ジシクロペンタジエニル、C1−4アルキル置換ジシクロペンタジエニル(ペンタメチルジシクロペンタジエニルなどのC1−2アルキル置換ジシクロペンタジエニルなど)、ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、HO(アコ)、ホスフィンなどのリン化合物、NH(アンミン)、NO、NO(ニトロ)、NO(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子は一種又は二種以上配位していてもよい。
【0072】
前記錯体のうち、サマロセン型錯体としては、ジアセチルアセトナトサマリウム(II),トリアセチルアセトナトサマリウム(III)、ジシクロペンタジエニルサマリウム(II)、トリシクロペンタジエニルサマリウム(III)、ジペンタメチルシクロペンタジエニルサマリウム(II),トリペンタメチルシクロペンタジエニルサマリウム(III)などが例示できる。
【0073】
なお、周期表3族元素化合物[電子供与性の高いペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を有する2価のサマロセン型錯体[(CMeSm;(PMSm)],サマリウムのハロゲン化合物、アルコキシド、ヒドロキシドなどのサマリウム化合物など]を触媒として用いると、平衡反応として不利なエステル化反応においても、副反応を抑制しつつルイス酸触媒やプロトン酸触媒よりも高い反応効率でエステル化が進行する。そのため、触媒は、エステル交換反応などの脱離基交換反応を利用して、前記酸感応性化合物(1)(2)を生成させる上で有用である。
【0074】
前記周期表3族化合物で構成された触媒は、均一系であってもよく、不均一系であってもよい。また、触媒は、担体に周期表3族化合物で構成された触媒成分が担持された固体触媒であってもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。触媒成分の担持量は、担体100重量部に対して、周期表3族化合物0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
【0075】
前記触媒(周期表3族元素化合物が構成される触媒など)の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、前記ヒドロキシ化合物(1c)(2c)に対して0.1モル%〜1当量、好ましくは0.5〜50モル%、さらに好ましくは1〜25モル%(例えば、5〜20モル%)程度の範囲から適当に選択できる。
【0076】
前記エステル化反応(特に周期表3族化合物を触媒とする反応)は、オキシムの存在下で行ってもよい。オキシムはアルドキシム、ケトキシムのいずれであってもよく、オキシムとしては、例えば、2−ヘキサノンオキシムなどの脂肪族オキシム、シクロヘキサノンオキシムなどの脂環族オキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、ベンジルジオキシムなどの芳香族オキシムなどが例示できる。
【0077】
オキシムの使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、前記ヒドロキシ化合物(1c)(2c)に対して0.1モル%〜1当量、好ましくは1〜50モル%、さらに好ましくは5〜40モル%(例えば、5〜30モル%)程度の範囲から適当に選択できる。
【0078】
ヒドロキシ化合物(1c)(2c)と(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)との使用割合は、ヒドロキシ化合物(1c)(2c)1当量(すなわち、ヒドロキシル基当たりのヒドロキシ化合物の重量)に対して(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)0.5〜5モル、好ましくは0.8〜5モル、特に1モル以上(例えば、1〜3モル、特に1〜1.5モル)程度である。なお、前記エステル化反応は平衡反応であるため、(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)の使用量が多い程、反応を進行させる上で有利であるが、前記周期表3族化合物を触媒とすると、触媒活性が極めて高いため、(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)を大過剰量で使用する必要はない。特に、反応平衡の点から極めて不利な組合わせの反応において、(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)としてビニル性脱離基を有する前記アルケニルエステル(ビニルエステルなど)を用いる場合には、むしろ、ヒドロキシ化合物(1c)(2c)の脱離基1当量に対して化合物(1c)を1モル以下の量(例えば、0.4〜1モル、好ましくは0.5〜1モル)で使用しても、反応が速やかに完結し好成績が得られる場合が多い。
【0079】
前記触媒を用いる方法では、反応熱の高い(メタ)アクリル酸クロライドなどの酸ハライドを用いる方法に比べて、反応熱が小さいため、溶媒量が少なくても円滑に反応を進行させ、高い収率で目的化合物を生成させることができる。
【0080】
前記エステル化反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は非存在下で行なうことができ、反応溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、アミド類、N−メチルピロリドン、ニトリル類などの非プロトン性極性溶媒、およびこれらの混合溶媒などが例示できる。反応溶媒としては、(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)を用いてもよい。
【0081】
なお、親水性の高いヒドロキシ化合物(1c)(2c)を用いる場合、溶媒としては、親水性溶媒(アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン,ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、非プロトン性極性溶媒)、又は親水性溶媒と疎水性溶媒(脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素類)との混合溶媒を使用してもよい。
【0082】
なお、前記反応が平衡反応であるため、反応を促進するためには、脱離成分などの反応阻害成分を反応系外へ速やかに除去するのが有利である。脱離成分を除去するためには、高沸点溶媒(例えば、沸点50〜120℃、特に60〜115℃程度の有機溶媒)又は共沸性溶媒(例えば、前記炭化水素類など)を用いるのが有利である。
【0083】
エステル化反応温度は、例えば、0〜150℃、好ましくは25〜120℃程度の範囲から選択できる。なお、前記周期表3族元素化合物で構成された触媒を用いると、温和な条件であっても高い効率で酸感応性化合物が生成し、反応温度は、例えば、0〜150℃、好ましくは10〜100℃、好ましくは20〜80℃程度であってもよい。特に、前記(メタ)アクリル酸又はその誘導体(5)として前記アルケニルエステルなどを用いると、20〜50℃程度の温和な条件でも反応を円滑に進行させることができる。反応は常圧、減圧又は加圧下で行なうことができる。また、反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行なうことができる。
【0084】
これらの酸感応性化合物(1)(2)は、反応終了後、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0085】
[フォトレジスト用樹脂組成物]
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物の特色は、少なくとも前記式(11)又は(12)で表される単位(アダマンタン骨格を有する単位など)を有する重合体と、光酸発生剤とを組合わせ、光照射により前記重合体を可溶化する点にある。すなわち、バルキーで疎水性の高い環Zにエステル結合が隣接しており、光照射により生成した酸により、エステル結合が安定かつ効率よく脱離するためか、感度が高く、しかも高い耐エッチング性などを維持しつつ微細なレジストパターンを高い精度で安定に形成できる。
【0086】
さらに、本発明の酸感応性化合物(1)(2)の単位を含む重合体は、フォトレジストの有機溶媒に対する溶解性が高いので、重合体の析出などを防止でき、フォトレジスト溶液の安定性を向上できる。また、基板との密着性も高く、レジストパターンを精度よく形成できる。しかも、露光した後、ドライエッチングなどの現像手段による洗浄又は除去性が高く、高い感度でパターンを形成できる。
【0087】
特に、前記環Zの置換基Rが、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコシカルボニル基、ヒドロキシメチル基やこれらから誘導される基など)を有する場合には、前記特性を大きく改善できる。また、環Zが脂環式炭化水素環である場合には、ドライエッチング耐性に優れており、特に、多環式炭化水素環の場合には、現像剤に対する膨潤性が小さく、回路パターンを精度よく形成できる。
【0088】
前記重合体は、前記式(1)(2)で表される酸感応性化合物の単独又は共重合体であってもよく、前記式(1)(2)で表される酸感応性化合物と共重合性単量体との共重合体であってもよい。
【0089】
共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸s−ブチル,(メタ)アクリル酸t−ブチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル,(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル,(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−6アルキルエステル,(メタ)アクリル酸グリシジル,(メタ)アクリロニトリル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸フェニルなど),スチレン系単量体(スチレン,α−メチルスチレン,ビニルトルエンなど)、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニル,プロピオン酸ビニルなど),カルボキシル基含有単量体((メタ)アクリル酸,無水マレイン酸,イタコン酸,マレイン酸モノエステルなど),スルホン酸基含有単量体(スチレンスルホン酸など)ラクトン骨格を有する単量体、脂環式炭化水素環を有する単量体などが例示できる。
【0090】
ラクトン骨格を有する単量体としては、例えば、下記式
【0091】
【化7】

【0092】
(式中、Rは水素原子又はメチル基,Rは水素原子又はC1−4アルキル基、pは2〜15程度の整数を示す。p1およびp2は、それぞれ0〜8程度の整数を示し、p1+p2=1〜14程度である)
で表される(メタ)アクリル系単量体、この単量体に対応するアリル単量体などが例示できる。
【0093】
で表されるC1−4アルキル基としては、メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,ブチル,イソブチル,t−ブチル基などが例示できる。Rは、通常、水素原子又はメチル基である。pは、通常、3〜10、特に3〜6程度である。また、p1およびp2は、通常、それぞれ0〜8の整数であり、p1+p2=2〜9(好ましくは2〜5)程度である。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基やアリルオキシ基およびRの個数及び置換位置は特に制限されず、ラクトン環の適当な位置に置換していればよい。
【0094】
脂環式炭化水素環を有する単量体としては、例えば、単環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート、多環式炭化水素環(スピロ炭化水素環,環集合炭化水素環,縮合環式炭化水素環や架橋環式炭化水素環)を有する(メタ)アクリレートが例示できる。単環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート,シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレートなどのC4−10シクロアルキル(メタ)アクリレートなどが例示できる。スピロ炭化水素環を有する(メタ)アクリレートには、スピロ[4,4]ノニル(メタ)アクリレート、スピロ[4,5]デカニル(メタ)アクリレート、スピロビシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのスピロC8−16炭化水素環を有する(メタ)アクリレートが含まれる。環集合炭化水素環を有する(メタ)アクリレートとしては、ビシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5−12シクロアルカン環を有する環集合炭化水素環を有する(メタ)アクリレートが例示でき、縮合環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートには、例えば、パーヒドロナフチル(メタ)アクリレート、パーヒドロアントリル(メタ)アクリレートなどの5〜8員シクロアルカン環が縮合した縮合環を有する(メタ)アクリレートが例示できる。
【0095】
架橋脂環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの2環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート;ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート(トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカニル(メタ)アクリレート)、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[4.3.1.12.5]ウンデカニル、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの3環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレート;テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレンなどの4環式炭化水素環を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0096】
これらの共重合性単量体は種々の置換基(例えば、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、ニトロ基などの極性基)を有していてもよい。また、共重合性単量体は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0097】
共重合体における酸感応性化合物(1)(2)の割合は、例えば、10〜100重量%(例えば、15〜90重量%)、好ましくは25〜100重量%(例えば、30〜75重量%)、さらに好ましくは30〜100重量%(例えば、35〜70重量%)程度である。
【0098】
光酸発生剤としては、露光により効率よく酸(プロトン酸やルイス酸)を生成する慣用の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、スルホン酸エステル[1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタン、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホンなど)、ベンゾイントシレートなど]やルイス酸塩(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン(Ph)SbF、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(Ph)PF、トリフェニルスルホニウム メタンスルホニル(Ph)CHSO、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェートなど)などが使用できる。なお、Phはフェニル基を示す。
【0099】
これらの光酸発生剤は単独で又は二種以上組合わせて使用できる。
【0100】
前記光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度や酸感応性化合物の使用量などに応じて選択でき、例えば、前記重合体100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度の範囲から選択できる。
【0101】
フォトレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(ノボラック樹脂,フェノール樹脂,カルボキシル基含有樹脂など)などのアルカリ可溶成分、着色剤(染料)、有機溶媒などを含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、炭化水素類,ハロゲン化炭化水素類,アルコール類,エステル類,ケトン類,エーテル類,セロソルブ類(メチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブなど),カルビトール類,グリコールエーテルエステル類(モノ又はポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルエステル類、例えば、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなど)およびこれらの混合溶媒が使用できる。なお、前記酸感応性化合物(環Zが置換基Rを有する化合物)の単位を含む重合体は、フォトレジストを構成する有機溶媒に対する溶解性が高いという特色がある。
【0102】
さらに、フォトレジスト用樹脂組成物は、フィルターなどの慣用の分離精製手段により夾雑物を除去してもよい。
【0103】
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、前記重合体と光酸発生剤とを混合することにより調製でき、このフォトレジスト用樹脂組成物は、基材又は基板に塗布し、乾燥した後、基材に形成された塗膜(レジスト膜)に、所定のパターンで露光し、現像することにより露光パターンに対応するパターンを形成でき、光線に対する感度およびパターンの高解像度が高い。通常、所定のマスクを介して、塗膜に光線を露光して潜像パターンを形成した後,現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
【0104】
基材又は基板は、フォトレジスト用樹脂組成物の用途に応じて選択でき、シリコンウェハー,金属,プラスチック,ガラス,セラミックスなどであってもよい。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、用途に応じた慣用の方法、例えば、スピンコーティング,ロールコーティングなどの方法が採用できる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗膜の厚みは、例えば、0.1〜20μm程度の範囲から適当に選択できる。
【0105】
露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線,X線などが利用でき、半導体製造用レジストでは、通常、g線,i線、エキシマーレーザー(例えば、XeCl,KrF,KrCl,ArF,ArClなど)などが利用できる。
【0106】
露光エネルギーは、例えば、1〜1000mJ/cm、好ましくは10〜500mJ/cm程度の範囲から選択できる。
【0107】
光照射により酸発生剤から酸が生成し、生成した酸により環Zを含む基(通常、環Zを含むアルコールとして)が脱離し、可溶化に寄与するカルボキシル基が生成する。そのため、水現像液やアルカリ現像液により現像し、所定のパターンを形成できる。特に、本発明のフォトレジスト用樹脂組成物はアダマンタン骨格などの環Zを有しているので、エッチング(特にドライエッチング)に対する耐性が高く、微細な回路パターンを高い精度で形成できる。なお、環Zを含む基の脱離は、露光とその後のベーキング(Post Exposure Baking, PEB)により促進させてもよい。
【0108】
[官能基の導入]
酸感応性化合物(1)(2) や重合体の単位(11)(12)は、前記のように置換基Rを有している。置換基Rは、前記反応工程のうち適当な工程又は反応終了後に導入できる。例えば、ヒドロキシル基は、慣用の酸化方法、例えば、硝酸やクロム酸を用いる酸化方法、触媒としてコバルト塩を用いる酸素酸化方法、生化学的酸化方法などにより得ることができ、ハロゲン原子(例えば、臭素原子など)を導入し、硝酸銀や硫酸銀などの無機塩を用いて加水分解してヒドロキシル基を導入する方法により得ることもできる。好ましい方法では、特開平9−327626号公報などに記載されている酸化触媒を用いる方法が含まれる。この酸化方法では、特定のイミド化合物で構成された酸化触媒、又は上記イミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒の存在下、前記式(1a)(2a)(1b)(2b)(1c)(2c) で表される基質化合物や重合体の単位(11)(12)を酸素酸化することによりヒドロキシル基を導入できる。
【0109】
前記イミド化合物としては、N−ヒドロキシイミド基を有する化合物(1〜3程度のN−ヒドロキシイミド基を有する脂肪族、脂環族、芳香族化合物など)が含まれ、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。好ましい化合物は、脂環族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
【0110】
このようなイミド化合物は、酸化活性が高く、温和な条件であっても、酸化反応を触媒的に促進できる。さらに、前記イミド化合物と助触媒との共存下で基質を酸化すると、高い効率でヒドロキシル基を導入できる。
【0111】
助触媒には、金属化合物、例えば、周期表2A族元素、遷移金属元素(例えば、周期表3A族元素、周期表4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素)や、周期表3B族元素(ホウ素B、アルミニウムAlなど)を含む化合物が含まれる。
【0112】
好ましい助触媒には、Ti,Zrなどの4A族元素、Vなどの5A族元素、Cr、Mo、Wなどの6A族元素、Mn,Tc,Reなどの7A族元素、Fe、Ru、Co、Rh、Niなどの8族元素、Cuなどの1B族元素を含む化合物が含まれる。
【0113】
助触媒は、金属単体、水酸化物などであってもよいが、通常、前記元素を含む金属酸化物(複酸化物または酸素酸塩)、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物(錯体)やポリ酸(ヘテロポリ酸、イソポリ酸)又はその塩などである場合が多い。
【0114】
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物および前記助触媒で構成される酸化触媒系は、均一系であってもよく、不均一系であってもよい。また、前記酸化触媒又は酸化触媒系は、担体に触媒成分が担持された固体触媒であってもよい。
【0115】
イミド化合物に対する助触媒の割合は、例えば、イミド化合物1モルに対して、助触媒0.001〜10モル程度の範囲から選択でき、酸化触媒系の高い活性を維持するためには、助触媒の割合は、イミド化合物1モルに対して、有効量以上であって0.1モル以下(例えば、0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.08モル、さらに好ましくは0.01〜0.07モル程度)であるのが好ましい。
【0116】
前記イミド化合物の使用量は、例えば、基質1モルに対して0.001〜1モル(0.01〜100モル%)、好ましくは0.001〜0.5モル(0.1〜50モル%)、さらに好ましくは0.01〜0.30モル程度である。
【0117】
また、助触媒の使用量は、例えば、基質1モルに対して0.0001モル(0.1モル%)〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.0005〜0.1モル(例えば、0.005〜0.1モル)程度である場合が多い。
【0118】
酸化反応において、酸素は、活性酸素であってもよいが、分子状酸素を利用するのが経済的に有利である。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0119】
酸素の使用量は、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多く、特に空気や酸素などの分子状酸素を含有する雰囲気下で反応させるのが有利である。
【0120】
酸化方法は、通常、反応に不活性な有機溶媒中で行なわれる。有機溶媒としては、例えば、酢酸などの有機カルボン酸やオキシカルボン酸、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、酢酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、これらの混合溶媒など挙げられる。
【0121】
反応をプロトン酸の存在下で行なうと、酸化反応を円滑に行なうことができ、高い選択率および収率で目的化合物を得ることができる。このプロトン酸は、前記のように溶媒として用いてもよい。プロトン酸としては、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機カルボン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などのオキシカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸など)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)が含まれる。
【0122】
前記酸化触媒又は酸化触媒系を用いる酸化方法は、比較的温和な条件であっても酸化反応が円滑に進行するという特色がある。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは30〜150℃程度であり、通常、50〜120℃程度で反応する場合が多い。反応は、常圧または加圧下で行なうことができる。
【0123】
前記酸化反応において、強酸の存在下で酸化すると、オキソ基を効率よく導入できる。強酸には、前記硫酸やスルホン酸,超強酸などが含まれる。
【0124】
カルボキシル基の導入には、種々の反応が利用できるが、酸素に代えて一酸化炭素及び酸素を用いる以外、前記イミド化合物(又はイミド化合物と助触媒)を触媒とする酸化反応と同様の方法(カルボキシル化方法)を用いるのが有利である。カルボキシル化反応で使用される一酸化炭素や酸素は、純粋な一酸化炭素や酸素であってもよく、前記酸化反応と同様に、不活性ガスで希釈して使用してもよい。また、酸素源として空気も使用できる。
【0125】
一酸化炭素の使用量は、基質1モルに対して1モル以上(例えば、1〜1000モル)の範囲から選択でき、好ましくは過剰モルであり、例えば、1.5〜100モル(例えば、2〜50モル)、さらに好ましくは2〜30モル(例えば、5〜25モル)程度である。
【0126】
酸素の使用量は、例えば、基質1モルに対して0.5モル以上(例えば、0.5〜100モル)、好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは0.5〜25モル程度の範囲から選択できる。
【0127】
なお、酸素に対して一酸化炭素を多く用いる方が有利である。COとOとの割合は、通常、CO/O=1/99〜99/1(モル%)[例えば、10/90〜99/1(モル%)]、好ましくは30/70〜98/2(モル%)、さらに好ましくは50/50〜95/5(モル%)、特に60/40〜90/10(モル%)程度である。
【0128】
ヒドロキシメチル基は、カルボキシル基が導入された基質を、水素や水素化還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム−ルイス酸、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリアルコキシアルミニウムリチウム、ジボランなど)を用いて還元することにより得ることができる。
【0129】
ニトロ基は、慣用の方法、例えば、ニトロ化剤(例えば、硫酸と硝酸との混酸、硝酸、硝酸及び有機酸(例えば、酢酸などのカルボン酸)、硝酸塩及び硫酸、五酸化二窒素など)を用いる方法などにより行うことができる。
【0130】
好ましいニトロ化方法としては、例えば、前記イミド化合物(又はイミド化合物と助触媒)の存在下又は非存在下、基質と窒素酸化物とを接触させるニトロ化方法が挙げられる。
【0131】
前記窒素酸化物は、式 Nで表すことができる。
(式中、xは1又は2の整数、yは1〜6の整数を示す)
前記式で表される化合物において、xが1である場合、yは通常1〜3の整数であり、xが2である場合、yは通常1〜6の整数である。
【0132】
このような窒素酸化物には、例えば、NO,NO,N,NO,N,N,NO,Nなどが例示できる。これらの窒素酸化物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0133】
好ましい窒素酸化物には、(i)酸化二窒素(NO)及び一酸化窒素(NO)から選択された少なくとも一種の窒素化合物と酸素との反応により生成する窒素酸化物(特にN)又はNを主成分として含む窒素酸化物、(ii)二酸化窒素(NO)又はNOを主成分として含む窒素酸化物が含まれる。
【0134】
窒素酸化物Nは、NO及び/又はNOと酸素との反応で容易に得ることができる。より具体的には、反応器内に一酸化窒素と酸素とを導入して、青色の液体Nを生成させることにより調製できる。そのため、Nを予め生成させることなく、NO及び/又はNOと酸素とを反応系に導入することによりニトロ化反応を行ってもよい。
【0135】
なお、酸素は純粋な酸素であってもよく、不活性ガス(二酸化炭素,窒素,ヘリウム,アルゴンなど)で希釈して使用してもよい。また、酸素源は空気であってもよい。
【0136】
他の態様において、窒素酸化物のうち二酸化窒素(NO)を用いると、酸素の非共存下でもニトロ化反応が円滑に進行する。そのため、NOを用いる反応系では、酸素は必ずしも必要ではないが、NOは酸素との共存下で使用してもよい。
【0137】
前記イミド化合物(又はイミド化合物と助触媒)を触媒とする酸化方法において、酸素に代えて窒素酸化物(又は窒素酸化物と酸素)を用いる以外、上記酸化方法と同様にしてニトロ化する方法を用いるのが有利である。
【0138】
窒素酸化物の使用量は、ニトロ基の導入量に応じて選択でき、例えば、基質1モルに対して1〜50モル、好ましくは1.5〜30モル程度の範囲から選択でき、通常、2〜25モル程度である。
【0139】
前記イミド化合物で構成された触媒を用いると、ニトロ化反応は、比較的温和な条件であっても円滑に進行する。反応温度は、イミド化合物や基質の種類などに応じて、例えば、0〜150℃、好ましくは25〜125℃、さらに好ましくは30〜100℃程度の範囲から選択できる。ニトロ化反応は、常圧又は加圧下で行うことができる。
【0140】
基質に導入されたニトロ基は還元反応に供することによりアミノ基に変換できる。還元反応は、慣用の方法、例えば、前記反応工程式においてカルボニル化合物(1b)からヒドロキシ化合物(1c)を生成させる還元反応と同様にして行うことができる。
【0141】
なお、基質に導入されたヒドロキシル基は、慣用の方法でアルコキシ基に変換でき、カルボキシル基は慣用のエステル化反応,アミド化反応などを利用してアルコキシカルボニル基,カルバモイル基、N−置換カルバモイル基に変換できる。さらに、アミノ基はアルキル化剤,アシル化剤などを用いてN−置換アミノ基に変換できる。
【0142】
塩基性基、酸性基を有する化合物や重合体は、塩を形成してもよい。例えば、カルボキシル基含有基質は、有機塩基,無機塩基との反応により塩を形成することができる。アミノ基含有基質は、無機酸,有機酸との反応により塩を形成することができる。
【0143】
なお、酸化反応などの反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれの方式でも行うことができる。反応終了後、反応生成物は、慣用の方法により、容易に分離精製できる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、種々の用途、例えば、回路形成材料(半導体製造用レジスト、プリント配線板など)、画像形成材料(印刷版材,レリーフ像など)などに利用できる。
【実施例】
【0145】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0146】
実施例1
(1)ヒドロキシル化
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オン 1モルの無水テトラヒドロフラン溶液に、イソプロピルマグネシウムヨード(iso−CMgI)1.2モルの無水ジエチルエーテル溶液を滴下し、10℃で6時間撹拌し、1−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンを得た。
【0147】
(2)エステル化
得られた1−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン1.00ミリモル、ヨウ化サマリウム(SmI2) 0.10ミリモル、アクリル酸イソプロペニル 1.1ミリモル、ジオキサン(2mL)の混合溶液を50℃で6時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、反応混合液中には、下記式で表される1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(収率90%)が生成していた。
【0148】
マススペクトルデータ [M]276,261,218,147,135。
【0149】
【化8】

【0150】
(3)重合
得られた1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン50重量%とメタクリル酸メチル10重量%とアクリル酸ブチル20重量%とメタクリル酸20重量%の単量体混合物100重量部を、重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド)5重量部を用いて有機溶媒(トルエン)中で重合し、混合液にメタノールで添加して重合体を沈殿させた。トルエンに溶解させてメタノールで沈殿させる操作を繰り返して精製し、重量平均分子量約1.5×10(GPCによるポリスチレン換算分子量)の共重合体を得た。
【0151】
実施例2
(1)ヒドロキシル化
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、下記式で表される1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(収率78%)が得られた。
【0152】
ヒドロキシル基含有化合物のマススペクトルデータ [M]292,277,233,162,145,133。
【0153】
【化9】

【0154】
(2)重合
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンを用いる以外、実施例1のステップ(3)と同様にして共重合体を得た。
【0155】
実施例3
(1)カルボキシル基の導入
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オン(1−アセチルアダマンタン) 10ミリモル、NHPI 1ミリモル、Co(AA) 0.005ミリモルを酢酸25ml中に仕込み、混合ガス(2Lの一酸化炭素と、0.5Lの酸素との混合ガス;圧力:5kg/cm)を封入したガスパックを反応器へ接続し、60℃で6時間撹拌したところ、転化率78%で、1−カルボキシアダマンタン−3−イル−エタン−1−オン(収率62%)を得た。
【0156】
(2)ヒドロキシル化
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オンに代えて、1−カルボキシアダマンタン−3−イル−エタン−1−オンを用いる以外、実施例1のステップ(1)と同様にして、1−カルボキシ−3−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン(収率60%)が得られた。
【0157】
(3)(4)エステル化および重合
1−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−カルボキシ−3−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンを用いる以外、実施例1のステップ(2)(3)と同様にして、カルボキシル基含有化合物として、下記式で表される1−カルボキシ−3−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタン[1−カルボキシ−3−(2−アクリロイルオキシ−3−メチル−2−イル)アダマンタンと同義](収率82%)および共重合体を得た。
【0158】
カルボキシル基含有化合物のマススペクトルデータ [M]320,305,262,191,146,134。
【0159】
【化10】

【0160】
実施例4
(1)ヒドロキシル化
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オンに代えて、アダマンタノンを用いる以外、実施例1のステップ(1)と同様にして、転化率76%で2−イソプロピル−2−ヒドロキシアダマンタン(収率61%)を得た。
【0161】
(2)(3)エステル化および重合
1−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、2−イソプロピル−2−ヒドロキシアダマンタンを用いる以外、実施例1のステップ(2)(3)と同様にして、ヒドロキシル基含有化合物として、下記式で表される2−イソプロピル−2−アクリロイルオキシアダマンタン(収率78%)および共重合体を得た。
【0162】
ヒドロキシル基含有化合物のマススペクトルデータ [M]248,233,218,205,183,139。
【0163】
【化11】

【0164】
実施例5
(1)ヒドロキシル化
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、2−イソプロピル−2−アクリロイルオキシアダマンタンを用いる以外、実施例2のヒドロキシル化ステップ(2)と同様にして、下記式で表される1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−4−アクリロイルオキシアダマンタン(収率56%)を得た。
【0165】
ヒドロキシル基含有化合物のマススペクトルデータ [M]264,246,231,216,203,176,132。
【0166】
【化12】

【0167】
(3)重合
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−4−アクリロイルオキシアダマンタンを用いる以外、実施例1のステップ(3)と同様にして共重合体を得た。
【0168】
実施例6
(1)カルボキシル基の導入
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オンに代えて、アダマンタノンを用いる以外、実施例3のカルボキシル化ステップ(1)と同様にして、1−カルボキシアダマンタン−4−オンを得た。
【0169】
アダマンタン−1−イル−エタン−1−オンに代えて、1−カルボキシアダマンタン−4−オンを用いる以外、実施例1のステップ(1)と同様にして、1−カルボキシ−4−ヒドロキシ−4−イソプロピルアダマンタン(収率58%)が得られた。
【0170】
(2)(3)エステル化および重合
1−(1−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−カルボキシ−4−ヒドロキシ−4−イソプロピルアダマンタンを用いる以外、実施例1のステップ(2)(3)と同様にして、カルボキシル基含有化合物として、下記式で表される1−カルボキシ−4−アクリロイルオキシ−4−イソプロピルアダマンタン(収率81%)および共合体を得た。
【0171】
カルボキシル基含有化合物のマススペクトルデータ [M]292,221,206,191,178,133
【0172】
【化13】

【0173】
実施例7
(1)ヒドロキシル化
1−アセチルアダマンタン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−アセチルアダマンタン(収率80%)が得られた。
【0174】
(2)還元
1−ヒドロキシ−3−アセチルアダマンタン 2ミリモル、水素化ホウ素ナトリウムNaBH 2.4ミリモル、テトラヒドロフラン25mlの混合物を室温で3時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシエチル)アダマンタン(収率95%)が得られた。
【0175】
(3)エステル化および重合
1−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシエチル)アダマンタン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシエチル)アダマンタン(収率78%)が得られた。
【0176】
【化14】

【0177】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシエチル)アダマンタンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0178】
実施例8
(1)ヒドロキシル化
アダマンタンカルボン酸クロライド 1モルの無水テトラヒドロフラン溶液に、エチルマグネシウムヨード(CMgI)2.2モルの無水ジエチルエーテル溶液を滴下し、室温で6時間撹拌し、1−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率95%)を得た。
【0179】
マススペクトルデータ [M]222,204,193,175,161,147,135。
【0180】
1−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率80%)が得られた。
【0181】
(2)エステル化および重合
1−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される1−ヒドロキシ−3−(3−アクリロイルオキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率45%)が得られた。
【0182】
【化15】

【0183】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−3−(3−アクリロイルオキシペンタ−3−イル)アダマンタンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0184】
実施例9
(1)ヒドロキシル化
アダマンタンカルボン酸クロライド 1モルの無水テトラヒドロフラン溶液に、エチルマグネシウムヨード(CMgI)1.1モルの無水ジエチルエーテル溶液を滴下し、室温で6時間撹拌し、1−(1−ヒドロキシプロピル)アダマンタン(収率80%)を得た。
【0185】
マススペクトルデータ [M]194,176,165,147,135。
【0186】
1−(1−ヒドロキシプロピル)アダマンタン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−(1−オキソプロピル)アダマンタン(収率80%)が得られた。
【0187】
1−ヒドロキシ−3−(1−オキソプロピル)アダマンタン 2ミリモル、水素化ホウ素ナトリウムNaBH 2.4ミリモル、テトラヒドロフラン25mlの混合物を室温で3時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシプロピル)アダマンタン(収率95%)が得られた。
【0188】
(2)エステル化および重合
1−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシプロピル)アダマンタン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン(収率75%)が得られた。
【0189】
【化16】

【0190】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−3−(1−アクリロイルオキシプロピル)アダマンタンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0191】
実施例10
(1)ヒドロキシル化
アダマンタン−1−カルボン酸 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−カルボキシアダマンタン(収率80%)が得られた。
【0192】
(2)還元
1−ヒドロキシ−3−カルボキシアダマンタン 2ミリモル、水素化ホウ素ナトリウムNaBH 6ミリモル、テトラヒドロフラン25mlの混合物を室温で6時間撹拌したところ、1−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルアダマンタン(収率90%)が得られた。
【0193】
(3)エステル化および重合
1−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルアダマンタン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される1−ヒドロキシ−3−(アクリロイルオキシメチル)アダマンタン(収率90%)が得られた。
【0194】
【化17】

【0195】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1−ヒドロキシ−3−(アクリロイルオキシメチル)アダマンタンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0196】
実施例11
(1)ヒドロキシル化
デカリン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、9,10−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.4.0]デカン(収率70%)が得られた。
【0197】
(2)エステル化および重合
9,10−ジヒドロキシ−ビシクロ[4.4.0]デカン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される9−ヒドロキシ−10−アクリロイルオキシ−ビシクロ[4.4.0]デカン(収率90%)が得られた。
【0198】
【化18】

【0199】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、9−ヒドロキシ−10−アクリロイルオキシ−ビシクロ[4.4.0]デカンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0200】
実施例12
(1)ヒドロキシル化
トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA) 0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、2,6−ジヒドロキシ−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン(収率70%)が得られた。
【0201】
(2)エステル化および重合
2,6−ジヒドロキシ−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン 1ミリモル、アクリル酸クロライド1.2モル、トリエチルアミン1.2モル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される2−ヒドロキシ−6−アクリロイルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン(収率70%)が得られた。
【0202】
【化19】

【0203】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、2−ヒドロキシ−6−アクリロイルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0204】
実施例13
(1)ヒドロキシル化
アダマンタンカルボン酸クロライド 1モルの無水テトラヒドロフラン溶液に、エチルマグネシウムヨード(CMgI)2.2モルの無水ジエチルエーテル溶液を滴下し、室温で6時間撹拌し、1−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率95%)を得た。
【0205】
マススペクトルデータ [M]222,204,193,175,161,147,135。
【0206】
1−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン 10ミリモル、NHPI 2ミリモル、コバルトアセチルアセトナトCo(AA)0.1ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、85℃で10時間撹拌したところ、1,3−ジヒドロキシ−5−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率50%)が得られた。
【0207】
(2)エステル化および重合
1,3−ジヒドロキシ−5−(3−ヒドロキシペンタ−3−イル)アダマンタン 1ミリモル、アクリル酸クロライド0.5ミリモル、トリエチルアミン0.5ミリモル、ジオキサン10mlの混合液を40℃で3時間撹拌したところ、下記式で表される1,3−ジヒドロキシ−5−(3−アクリロイルオキシペンタ−3−イル)アダマンタン(収率80%;アクリル酸クロライド基準)が得られた。
【0208】
【化20】

【0209】
1−(1−アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンに代えて、1,3−ジヒドロキシ−5−(3−アクリロイルオキシペンタ−3−イル)アダマンタンを用いる以外、実施例1の重合ステップと同様にして共重合体を得た。
【0210】
[フォトレジスト用樹脂組成物]
得られた重合体100重量部と、トルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン15重量部と、溶媒トルエンとを混合し、フォトレジスト用樹脂組成物を調製した。このフォトレジスト用樹脂組成物をシリコンウエハーにスピンコーティングにより塗布し、厚み1.0μmの感光層を形成した。ホットプレート上で60℃で100秒間プリベークした後、KrFエキシマステッパを用い、照射量100mJ/cmで露光した後、温度100℃て60秒間ベークした。次いで、アルカリ水溶液(東京応化(株)製,NMD−3)を用いて60秒間現像し、純水でリンスしたところ、所定のパターン(それぞれ0.3μmのライン・アンド・スペースパターン)が形成できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)
【化1】

(式中、Rはアルキル基又はシクロアルキル基、Rは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、酸素含有基、アミノ基又はN−置換アミノ基、nは1以上の整数を示す。前記酸素含有基は、オキソ基、ヒドロキシル基,アルコキシ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基,シクロアルキルオキシカルボニル基,アリールオキシカルボニル基,アラルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基、及びニトロ基から選択された少なくとも一種の置換基である。環Zはアダマンタン環を示す。式(1)において、R又はRは隣接する炭素原子とともに脂環式炭化水素環を形成してもよい。)
で表される酸感応性化合物。
【請求項2】
及びRがC1−4アルキル基であり、Rが水素原子である請求項1記載の酸感応化合物。
【請求項3】
が直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基、Rが水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基である請求項1記載の酸感応性化合物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物において、Rが水素原子であり、Rが、直鎖状又は分枝鎖状C1−4アルキル基である請求項1記載の酸感応性化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのRが、ハロゲン原子、アルキル基、酸素含有基、アミノ基又はN−置換アミノ基である請求項1記載の酸官能性化合物。
【請求項6】
下記式(1)又は(2)
【化2】

(式中、R、R、R、R、環Zおよびnは請求項1と同義である。)
で表される酸感応性化合物の単位を含む重合体であって、前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物の単独又は共重合体、もしくは前記式(1)又は(2)で表される酸感応性化合物と共重合性単量体との共重合体である重合体。
【請求項7】
共重合性単量体が、(メタ)アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、ラクトン骨格を有する単量体、及び脂環式炭化水素環を有する単量体から選択された少なくとも一種である請求項6記載の重合体。
【請求項8】
共重合体における酸感応性化合物(1)又は(2)の割合が、15〜90重量%である請求項6記載の重合体。
【請求項9】
請求項6記載の重合体と光酸発生剤とで構成されているフォトレジスト用樹脂組成物。
【請求項10】
重合体100重量部に対して、光酸発生剤0.1〜30重量部を含む請求項9記載のフォトレジスト用樹脂組成物。
【請求項11】
基材に形成された請求項9記載のフォトレジスト用樹脂組成物の塗膜に、所定のパターンで露光し、現像してパターンを形成する方法。

【公開番号】特開2009−114453(P2009−114453A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320062(P2008−320062)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【分割の表示】特願平11−135623の分割
【原出願日】平成11年5月17日(1999.5.17)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】