金属酸化物層または膜を成膜するための前駆体
MOCVDで使用するための希土類金属前駆体であって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する。また、前駆体の製造方法と前駆体を使用した金属酸化膜の成膜方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物層または膜を成膜するための前駆体、前記前駆体の製造方法、前記前駆体を使用した金属酸化物層または膜の成膜方法に関する。特に、本発明は、化学気相成長法による酸化プラセオジムやその他のランタニド(希土類)金属酸化物を成長させるための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類酸化物M2O3(M=Pr,La,Gd,Nd)は、大きなバンドギャップ(例えば、Pr2O3では3.9eV、Gd2O3では5.6eV)を有するために優れた絶縁体である。また、高い誘電率(Gd2O3:K=16,La203:K=27,Pr2O3:K=26〜30)を有し、ZrO2やHfO2よりも高いシリコン上での熱力学的安定性を有するため、high−K(高誘電率)誘電体用途において非常に魅力的な材料である。希土類酸化物(Pr2O3,Gd2O3など)の別の魅力的な特徴はシリコンとの比較的高い格子整合であり、それによってエピタキシャル成長が可能となり、多結晶膜における粒界に関する問題を解決することができる。
【0003】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)はこれらの材料を成膜するために魅力的な技術であり、大面積成長、優れた組成制御と膜の均一性、そしてマイクロエレクトロニクス用途において特に重要である2μm未満のデバイス寸法での優れた等角段差被覆性(step coverage)を提供できる可能性を有する。
【0004】
MOCVDの成功に不可欠な要件は、気相輸送に適した物理的性質と成膜に適した反応性とを有する前駆体が入手できることである。蒸発と分解との間に十分な温度窓領域が存在することが必要であるとともに、ほとんどのエレクトロニクス用途では、下層のシリコン回路や金属配線の劣化を防止するために酸化物の成膜温度は500℃までに制限されている。
【0005】
Pr2O3薄膜は、分子線エピタクシー(MBE)やパルスレーザー成膜などの物理気相成長法によって成膜されてきた。有機金属化学気相成長法(MOCVD)は、大面積成長、優れた組成制御、高い膜密度、優れた等角段差被覆性など、これらの技術に対して多くの潜在的な利点を有するが、酸化プラセオジムのMOCVDに関しては適当な前駆体がないためにほとんど報告されていない。
【0006】
最近、Pr(thd)3(thd=2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナート)を使用した種々の酸化プラセオジム(PrO2,Pr6O11,Pr2O3)のMOCVDが報告されている(R.Lo Nigro,R.G.Toro,G.Malandrino,V.Raineri,I.L.Fragala,Proceedings of EURO CVD 14,2003年4月27日〜5月2日、フランス、パリ(M.D.Allendorf,F.Maury,F.Teyssandier編)、Electrochem.Soc.Proc.2003,2003−08,915)。
【0007】
しかし、使用される成膜温度(750℃)はマイクロエレクトロニクス用途で通常必要とされる低い成膜温度と相いれず、高い成長温度はドーパント拡散の増加といった問題を引き起こすことがある。
【0008】
また、[Pr(thd)3]を使用する場合には酸化Pr膜に酸化膜における一般的な汚染物質である炭素が残留することがあり、上記研究者は金属β−ジケトン酸塩[Pr(hfa)3(diglyme)](hfa=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナート、ジグリム=CH3O(CH2CH2O)2CH3)も調査しているが、望ましくない酸化フッ化物相PrOFが生成した。
【0009】
金属アルコキシドは酸化物のMOCVDにおいて広く使用されており、より熱的に安定な金属ジケトナト前駆体よりも成長温度を通常は低くすることができる。MOCVDにおける希土類アルコキシド前駆体の使用は文献には報告されていない。これは、正に強く荷電したランタニド(III)イオンの大きなイオン半径によって架橋分子間金属−酸素結合が形成され、単純なアルコキシド錯体の大部分がポリマーまたはオリゴマーとなり、MOCVD用途に不適当な低い揮発性を有することになるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、化学気相成長法での使用に適し、安定しているとともに揮発性を有する希土類金属酸化物前駆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚いたことに、供与性(donor functionalised)アルコキシ配位子である1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe;mmp]がプラセオジウムアルコキシド錯体におけるオリゴマー化を防止し、錯体の雰囲気安定性を向上させることに効果的であることが分かった。
【0012】
したがって、本発明は、MOCVDに使用するための希土類金属前駆体であって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有することを特徴とする前駆体を提供する。
【0013】
本発明に係る好ましい前駆体は、一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属、特にプラセオジウムを示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は水素または任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される。
【0014】
OCR1(R2)(CH2)nX(n=1)で表される好ましい配位子は1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート(mmp)[OCMe2CH2OMe]であるが、その他の供与性アルコキシド配位子を使用することもできる。その他の配位子としては、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2が挙げられる。
【0015】
また、本発明は、MOCVDで使用するための希土類金属前駆体の第1の製造方法であって、mmpHなどのHOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1、R2、Xは上述の定義と同様である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミドM(NR2)3またはシリルアミドM(N(SiR3)2)3前駆体、特にプラセオジウムシリルアミド前駆体Pr{N(SiMe3)2}3(式中、RはMe、Et、Priなどのアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを特徴とする方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、式M[OCR1(R2)CH2X]3で表されるLn(mmp)3などのランタニド・希土類元素錯体の別の合成方法は、Ln(NO3)3(tetraglyme)と適当なモル当量のNa(mmp)などのNa(M[OCR1(R2)CH2X]3をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させる。同様な方法はSc(mmp)3及びY(mmp)3の調製にも使用することができる。
【0017】
本発明に係る前駆体は、前駆体を有機金属バブラーに入れる従来のMOCVDまたは前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させる液体注入MOCVDによって単一または混合酸化物層または膜を成膜するために使用することができる。適当な溶媒としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルが挙げられる。ジグリム、CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグリム、CH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグリム、CH3O(CH2CH2O)4CH3などの多座エーテル、1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、HOCMe2CH2OMe(mmpH)などの供与性アルコール等の添加剤を溶媒に添加してもよく、その場合には、本発明の前駆体、特にLn(mmp)3(Ln=La,Pr,Nd,Gdなどのランタニド)の空気及び水分に対する反応性が減少し、前駆体溶液の蒸発特性が向上する。溶媒に添加される添加剤の量は、通常は前駆体1モル当量に対して3モル当量である。添加剤の量が少ないと効果が減少する。なお、3モル当量を超える量の添加剤を使用することもできる。
【0018】
前駆体は、原子層成長法(ALD)などの他の化学気相成長法による酸化プラセオジウム膜の成膜における使用にも適している。
【0019】
M[OCR1(R2)(CH2)nX]3で表される前駆体は、単純なM(OR)3錯体よりも制御された加水分解反応が行われるゾルゲル成長法や有機金属分解法などの非気相成長法を使用する希土類酸化膜の成膜にも適している。
【0020】
本発明に係るMOCVD、ALDまたはゾル−ゲル法で使用するための他の揮発性希土類前駆体は、La、Ce、Gd、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどのランタニド(希土類)元素や、Sc及びYを含むIIIB族元素を含むことができる。
【0021】
本発明に係る前駆体は、ランタニドシリケート(LnSixOy)のMOCVDに適当なケイ素前駆体、金属(M)が周期表の他の族であるプラセオジウムまたは他の希土類金属を含むPrxMyOzなどの多成分酸化物のMOCVDに適当な共前駆体と組み合わせて使用することもできる。
【0022】
以下の実施例と図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
実施例 1
Pr(mmp)3の調製
mmpH(0.487cm3,4.23mmol)を、[Pr{N(SiMe3)2}3](0.878g,1.41mmol)のトルエン(80cm3)溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去し、緑色のオイルを得た。
【0024】
微量分析:
測定値 C:38.0,H:6.60%.
計算値(C15H33O6Prとして) C:40.01,H:7.39%.
IR(υcm−1,液膜,NaCl板):
2960 vs;1496 m;1458 s;1383 m;1357
s;1274 s;1229 vs;1205 s;1171 vs;
1113vs;1086 vs;997 vs;967 vs;
943 vs;915 m;828 w;786 m;730 s;
695 m.
NMR分光法(CDC13;400MHz):(すべての共鳴が常磁性Pr3+(4f2)のためにブロードとなった。これらのブロードな共鳴の積分値は精度不足のために報告しない。):
100.5,72.5,69.7,67.0,64.0,63.7,62.4,
60.7,58.4,57.0,56.0,54.0,53.5,50.5,48.2,
47.2,42.2,40.7,19.1,18.6,18.0,17.7,15.3,
13.9,12.7,11.2,3.1,1.2,−4.7,−10.5,−11.8,
−12.5,−13.0,−15.5,−19.0,−20.5,−24.4,
−30.2,−40.1,−43.6,−45.3,−46.2,−54.0
【0025】
Pr(mmp)3は液体の性質を有するために単結晶X線回折による構造特性解析は行うことができないが、LiClの存在下では式[LiPr(mmp)3Cl]2を有する結晶錯体が単離され、オイルの化学量論がPr(mmp)3であるという証拠となった。単結晶X線回折によって上記錯体の特性解析を行った。図1にその構造を示す。
【0026】
実施例 2
Pr(mmp)3はMOCVDによる酸化プラセオジウム薄膜の成膜のために好適な前駆体であることが分かった。Pr(mmp)3の0.1Mトルエン(14cm3)溶液を使用し、酸化プラセオジウム膜を液体注入MOCVDによって成膜した。テトラグリム CH3O(CH2CH2O)4CH3を添加することによって空気・水分との反応性が低下するとともに前駆体の輸送特性が改善され、Pr(mmp)3溶液が安定化することが分かった。Pr(mmp)3のトルエン溶液を使用した液体注入MOCVDによる酸化Pr薄膜の成膜に使用した成長条件を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
X線回折分析によって膜は酸化プラセオジウムであることを確認した(図2を参照)。X線回折分析は、膜がβ−Pr6O11主相と少量成分として六方晶θ−Pr2O3相を含むことを示している。従来の報告(R.Lo Nigro,R.G.Toro,G.Malandrino,V.Raineri,I.L.Fragala,Proceedings of EURO CVD 14,2003年4月27日〜5月2日、フランス、パリ(M.D.Allendorf,F.Maury,F.Teyssandier編)、Electrochem.Soc.Proc.2003,2003−08,915)は、MOCVD成長時に使用する酸素分圧によってβ−Pr6O11相とθ−Pr2O3相の割合を制御できることを示している。
【0029】
走査電子顕微鏡観察(SEM)による膜の分析では、成長させたすべての膜が滑らかな表面と均一な断面厚みを示した。
【0030】
400℃で成長させた膜の断面を図3に示す。HfO2やZrO2などのhigh−k誘電体膜で観察される柱状成長などの特徴は全く示していない。
【0031】
膜のエネルギー分散性X線回折分析は、薄膜からのPrと下層の基板材料からのシリコンのみを示している。
【0032】
[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のオージェ電子分光法(AES)分析(表2を参照)は膜が純粋な酸化Prであることを示しており、炭素は検出されなかった。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例 3
La(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を、[La{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去して生成物を得た。
【0035】
微量分析:
測定値 C:40.0,H:7.4%.
計算値(C15H33O6Laとして)C:40.2,H:7.4%.
IR(υcm−1,液膜,NaCl):
2960 vs;1496 m;1457 s;1384 m;1357
s;1261 s;1229 vs;1172 vs;1090 vs;
1084 vs;1001 s;965 vs;944 s;914 m;
841 m;821 m;794 s;730 s;695 m.
NMR分光法 C6D6(400MHz)
主共鳴:δ(ppm):3.16 br 一重線;3.08 br 一重線(合
計 5H);2.65 一重線;1.27 一重線(6H).
その他の共鳴 3.2〜4ppm,複雑なパターン(合計約2H);1.2〜
1.8ppm,複雑なパターン(合計約4H).
【0036】
同様な調製方法を他のM(mmp)3錯体(式中M=Sc、Yなどの3B族元素またはCe、Gd、Ndなどのランタニド(希土類)元素)の合成に使用することができる。
【0037】
実施例 4
La(mmp)3はMOCVDによる酸化ランタン薄膜の成膜のために好適な前駆体であることが分かった。La(mmp)3のトルエン溶液を使用した液体注入MOCVDによる酸化La薄膜の成膜に使用した成長条件を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
450℃で成膜した膜のX線回折パターン(図4)は、25.1°、27.9°、29.7°の2θ値で測定された(100)、(002)、(101)反射に帰属する3つの主回折ピークを示している。これらのピークの強度の近似比率は、六方晶構造を有するLa2O3のランダム粉末回折パターンと一致している。観察された反射の幅は、非常に小さな粒径または膜を雰囲気に暴露したことによる酸化物の単斜晶LaO(OH)への変化のいずれかと一致している。
【0040】
LaOx膜の原子組成をオージェ電子分光法(AES)を使用して測定した。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
1.8〜2.4というO/La比は、過剰酸素を含むLa2O3である膜(La2O3の予想O:La比=1.5)のO/La比と一致している。<0.5atom%の推定検出限界ではいずれの膜でも炭素は検出されず、酸素が存在しない場合にも炭素を含有しない酸化La膜が得られた。したがって、[La(mmp)3]は「単一源(single−source)」酸化物前駆体として効果的に機能している。
【0043】
450℃で成膜した酸化ランタン膜から得た破砕サンプルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を図5に示す。自由成長面上に「塚(hillock)」形状を伴う柱状成長が認められ、微細粗面化作用をもたらしている。
【0044】
実施例 5
Nd(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を[Nd{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去して生成物を得た。
【0045】
微量分析:
実測値:C,38.8;H,6.9%.
計算値(C15H33O6Nd)として:C:39.7,H:7.33%.
IRデータ:NaCl板間の薄膜として測定(cm−1)
2963 vs;1496 m;1457 s;1384 m;1357
s;1275 s;1231 vs;1173 vs;1117 vs;
1086 vs;1010 s;968 vs;915 m;823 m;
793 a;730 s;695 m
1H NMR(CDCl3)[Nd3+(4f3)の常磁性のために共鳴がブロードとなった]:
35.1,31.7,30.9,18.8,17.4,15.8,12.6,11.5,
8.2,5.6,1.2,−9.0,−9.6,−18.2,−24.5,−25.6,
−26.0,−55.8,−57.5
【0046】
実施例 6
前駆体溶液を安定化させるための添加剤の使用
トルエン溶液中の[La(mmp)3]と[Pr(mmp)3]の1H NMRスペクトルを図6及び図7にそれぞれ示す。1H NMRデータの複雑さはこれらの化合物の構造が非常に複雑であることを示しており、特にランタンの場合にはスペクトルの複雑さは経時的に増加した。これは、溶液中にかなりの量の不可逆的分子凝集があることを示している。これは、おそらくは縮合反応によってオキソ架橋オリゴマーが形成されるためである。そのような反応はランタニドアルコキシド化学で証明されている。また、共鳴は、おそらくは金属アルコキシド錯体の溶液で一般に観察される分子間配位子交換反応のためにブロードになっている。
【0047】
意義深いことに、3モル当量の多座酸素供与配位子であるテトラグリム(CH3O(CH2CH2O)4CH3)を前駆体溶液に添加することによって1H NMRスペクトルは非常に単純になった(図8及び図9)。これは、(CH3O(CH2CH2O)4CH3)の存在が分子凝集を抑制することを明らかに示している。テトラグリムの共鳴が[Pr(mmp)3(tetraglyme)]における常磁性シフトを受けないということはテトラグリムがPrに直接結合していないことを示しており、[Ln(mmp)3(tetraglyme)]の安定した付加体は形成されないと結論付けた。
【0048】
1モル過剰の[mmpH](HOCMe2CH2OMe)をLa(mmp)3またはPr(mmp)3のトルエン溶液に添加した場合にも1H NMRスペクトルは非常に単純になり(図10及び図11)、同様な安定化効果が得られた。1H NMRスペクトルの単純さは、mmpとmmpHが迅速に交換され、配位していないmmpHが存在しないことを示している。[Ln(mmp)3]の溶液にテトラグリムまたはmmpHを添加することによって空気/水分安定性が向上し、凝集体の形成が防止されることが分かった。この安定化のメカニズムは証明されていないが、隣接分子上のmmp配位子の酸素原子からランタニド金属中心が遮断されるためであると考えられる。
【0049】
実施例 7
Gd(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を[Gd{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加して[Gd(mmp)3]を合成した。溶液を室温で10分間攪拌後、溶媒と遊離したHN(SiMe3)2を真空下で除去し、生成物を緑色のオイルとして得た。生成物はC及びHの微量元素分析によって確認した。
【0050】
実施例 8
Gd(mmp)3を使用した酸化ガドリニウムの成長
液体注入MOCVD反応器を使用し、1ミリバールの圧力で酸化ガドリニウム膜をSi(100)基板上に成膜した。膜は、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用し、300〜600℃の温度範囲で表3に示す成長条件で成膜した。また、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用して、酸素を添加しない条件で酸化ガドリニウム膜をGaAs(100)上に成膜した。
【0051】
Si(100)基板及びGaAs(100)基板上に成膜した膜は、オージェ電子分光法(AES)によって表5に示すように酸化ガドリニウムであることが確認された。
【0052】
【表5】
Gd2O3膜のX線回折データは、450℃を超える成長温度では、GdOX膜が(111)優先配向を示すC型構造を有するGd2O3として結晶化することを示した。低い成長温度では、データは非晶質の無秩序構造を示唆する回折を示さなかった。
【0053】
450℃でGaAs(100)上に成膜したGd2O3膜の回折パターンでは(222)反射が優位を占めていた。これは、強い優先配向または下層のGaAsとのヘテロエピタキシャル関係を示している。
【0054】
実施例 9
供与性添加剤の添加によるM(mmp)3(M=希土類元素)前駆体
溶液の安定化
トルエン溶液中の[La(mmp)3]と[Pr(mmp)3]の1H NMRスペクトルを図6及び図7にそれぞれ示す。3モル当量の多座酸素供与配位子であるテトラグリム(CH3O(CH2CH2O)4CH3)をM(mmp)3(M=La,Pr)前駆体溶液に添加することによって1H NMRスペクトルは非常に単純になり(図8及び図9)、前駆体溶液の空気感受性が減少した。そして、液体注入MOCVD用途での前駆体溶液の蒸発特性が大きく改善された。
【0055】
これは、(CH3O(CH2CH2O)4CH3)が分子凝集を抑制することをはっきりと示している。テトラグリム共鳴が[Pr(mmp)3][tetraglyme]における常磁性シフトを受けないということは、テトラグリムがPrに直接結合しないことを示しており、[Ln(mmp)3(tetraglyme)]の安定付加体は形成されないと結論付けた。
【0056】
1モル過剰のl−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール[HOCMe2CH2OMe](mmpH)をM(mmp)3(M=希土類元素)のトルエン溶液に添加した場合にも同様な安定化効果が得られた(図10及び図11)。[Ln(mmp)3(mmpH)]の場合には、1H NMRスペクトルの単純さは、mmpとmmpHが迅速に交換され、配位していないmmpHが存在しないことを示している。[Ln(mmp)3]の溶液にテトラグリムまたはmmpHを添加することによって、空気/水分安定性が高まり、凝集体の形成が防止されることが分かった。
【0057】
この安定化のメカニズムは証明されていないが、隣接分子上のmmp配位子の酸素原子からLn金属中心が遮断されるためであると考えられる。
【0058】
実施例 10
Nd(mmp)3を使用した酸化ネオジムの成長
液体注入MOCVD反応器を使用し、1ミリバールの圧力で酸化ネオジム膜をSi(100)基板上に成膜した。膜は、3当量のテトラグリムを添加した[Nd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用し、250〜600℃の温度範囲で表3に示す成長条件を使用して成膜した。また、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用して、酸素を添加しない条件で酸化ネオジム膜をGaAs(100)上に成膜した。
【0059】
Si(100)基板及びGaAs(100)基板上に成膜した膜は、オージェ電子分光法(AES)によって表5に示すように酸化ネオジム(Nd2O3)であることが確認された。
【0060】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は[LiPr(mmp)3Cl]2のX線結晶構造を示す。
【図2】図2は400℃及び600℃で[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のX線回折スペクトルを示す。*はθ−Pr2O3相の(101)主反射を示す。
【図3】図3は400℃で[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のSEM像を示す。
【図4】図4は450℃でLa(mmp)3から成膜した酸化ランタン膜のX線回折パターンを示す。
【図5】図5は実施例4の酸化ランタン膜から得た破砕サンプルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図6】図6はLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図7】図7はPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図8】図8は3モル当量のテトラグリムを添加したLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図9】図9は3モル当量のテトラグリムを添加したPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図10】図10は3モル当量のmmpHを添加したLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図11】図11は3モル当量のmmpHを添加したPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物層または膜を成膜するための前駆体、前記前駆体の製造方法、前記前駆体を使用した金属酸化物層または膜の成膜方法に関する。特に、本発明は、化学気相成長法による酸化プラセオジムやその他のランタニド(希土類)金属酸化物を成長させるための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類酸化物M2O3(M=Pr,La,Gd,Nd)は、大きなバンドギャップ(例えば、Pr2O3では3.9eV、Gd2O3では5.6eV)を有するために優れた絶縁体である。また、高い誘電率(Gd2O3:K=16,La203:K=27,Pr2O3:K=26〜30)を有し、ZrO2やHfO2よりも高いシリコン上での熱力学的安定性を有するため、high−K(高誘電率)誘電体用途において非常に魅力的な材料である。希土類酸化物(Pr2O3,Gd2O3など)の別の魅力的な特徴はシリコンとの比較的高い格子整合であり、それによってエピタキシャル成長が可能となり、多結晶膜における粒界に関する問題を解決することができる。
【0003】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)はこれらの材料を成膜するために魅力的な技術であり、大面積成長、優れた組成制御と膜の均一性、そしてマイクロエレクトロニクス用途において特に重要である2μm未満のデバイス寸法での優れた等角段差被覆性(step coverage)を提供できる可能性を有する。
【0004】
MOCVDの成功に不可欠な要件は、気相輸送に適した物理的性質と成膜に適した反応性とを有する前駆体が入手できることである。蒸発と分解との間に十分な温度窓領域が存在することが必要であるとともに、ほとんどのエレクトロニクス用途では、下層のシリコン回路や金属配線の劣化を防止するために酸化物の成膜温度は500℃までに制限されている。
【0005】
Pr2O3薄膜は、分子線エピタクシー(MBE)やパルスレーザー成膜などの物理気相成長法によって成膜されてきた。有機金属化学気相成長法(MOCVD)は、大面積成長、優れた組成制御、高い膜密度、優れた等角段差被覆性など、これらの技術に対して多くの潜在的な利点を有するが、酸化プラセオジムのMOCVDに関しては適当な前駆体がないためにほとんど報告されていない。
【0006】
最近、Pr(thd)3(thd=2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナート)を使用した種々の酸化プラセオジム(PrO2,Pr6O11,Pr2O3)のMOCVDが報告されている(R.Lo Nigro,R.G.Toro,G.Malandrino,V.Raineri,I.L.Fragala,Proceedings of EURO CVD 14,2003年4月27日〜5月2日、フランス、パリ(M.D.Allendorf,F.Maury,F.Teyssandier編)、Electrochem.Soc.Proc.2003,2003−08,915)。
【0007】
しかし、使用される成膜温度(750℃)はマイクロエレクトロニクス用途で通常必要とされる低い成膜温度と相いれず、高い成長温度はドーパント拡散の増加といった問題を引き起こすことがある。
【0008】
また、[Pr(thd)3]を使用する場合には酸化Pr膜に酸化膜における一般的な汚染物質である炭素が残留することがあり、上記研究者は金属β−ジケトン酸塩[Pr(hfa)3(diglyme)](hfa=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナート、ジグリム=CH3O(CH2CH2O)2CH3)も調査しているが、望ましくない酸化フッ化物相PrOFが生成した。
【0009】
金属アルコキシドは酸化物のMOCVDにおいて広く使用されており、より熱的に安定な金属ジケトナト前駆体よりも成長温度を通常は低くすることができる。MOCVDにおける希土類アルコキシド前駆体の使用は文献には報告されていない。これは、正に強く荷電したランタニド(III)イオンの大きなイオン半径によって架橋分子間金属−酸素結合が形成され、単純なアルコキシド錯体の大部分がポリマーまたはオリゴマーとなり、MOCVD用途に不適当な低い揮発性を有することになるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、化学気相成長法での使用に適し、安定しているとともに揮発性を有する希土類金属酸化物前駆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚いたことに、供与性(donor functionalised)アルコキシ配位子である1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe;mmp]がプラセオジウムアルコキシド錯体におけるオリゴマー化を防止し、錯体の雰囲気安定性を向上させることに効果的であることが分かった。
【0012】
したがって、本発明は、MOCVDに使用するための希土類金属前駆体であって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有することを特徴とする前駆体を提供する。
【0013】
本発明に係る好ましい前駆体は、一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属、特にプラセオジウムを示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は水素または任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される。
【0014】
OCR1(R2)(CH2)nX(n=1)で表される好ましい配位子は1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート(mmp)[OCMe2CH2OMe]であるが、その他の供与性アルコキシド配位子を使用することもできる。その他の配位子としては、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2が挙げられる。
【0015】
また、本発明は、MOCVDで使用するための希土類金属前駆体の第1の製造方法であって、mmpHなどのHOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1、R2、Xは上述の定義と同様である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミドM(NR2)3またはシリルアミドM(N(SiR3)2)3前駆体、特にプラセオジウムシリルアミド前駆体Pr{N(SiMe3)2}3(式中、RはMe、Et、Priなどのアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを特徴とする方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、式M[OCR1(R2)CH2X]3で表されるLn(mmp)3などのランタニド・希土類元素錯体の別の合成方法は、Ln(NO3)3(tetraglyme)と適当なモル当量のNa(mmp)などのNa(M[OCR1(R2)CH2X]3をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させる。同様な方法はSc(mmp)3及びY(mmp)3の調製にも使用することができる。
【0017】
本発明に係る前駆体は、前駆体を有機金属バブラーに入れる従来のMOCVDまたは前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させる液体注入MOCVDによって単一または混合酸化物層または膜を成膜するために使用することができる。適当な溶媒としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルが挙げられる。ジグリム、CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグリム、CH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグリム、CH3O(CH2CH2O)4CH3などの多座エーテル、1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、HOCMe2CH2OMe(mmpH)などの供与性アルコール等の添加剤を溶媒に添加してもよく、その場合には、本発明の前駆体、特にLn(mmp)3(Ln=La,Pr,Nd,Gdなどのランタニド)の空気及び水分に対する反応性が減少し、前駆体溶液の蒸発特性が向上する。溶媒に添加される添加剤の量は、通常は前駆体1モル当量に対して3モル当量である。添加剤の量が少ないと効果が減少する。なお、3モル当量を超える量の添加剤を使用することもできる。
【0018】
前駆体は、原子層成長法(ALD)などの他の化学気相成長法による酸化プラセオジウム膜の成膜における使用にも適している。
【0019】
M[OCR1(R2)(CH2)nX]3で表される前駆体は、単純なM(OR)3錯体よりも制御された加水分解反応が行われるゾルゲル成長法や有機金属分解法などの非気相成長法を使用する希土類酸化膜の成膜にも適している。
【0020】
本発明に係るMOCVD、ALDまたはゾル−ゲル法で使用するための他の揮発性希土類前駆体は、La、Ce、Gd、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどのランタニド(希土類)元素や、Sc及びYを含むIIIB族元素を含むことができる。
【0021】
本発明に係る前駆体は、ランタニドシリケート(LnSixOy)のMOCVDに適当なケイ素前駆体、金属(M)が周期表の他の族であるプラセオジウムまたは他の希土類金属を含むPrxMyOzなどの多成分酸化物のMOCVDに適当な共前駆体と組み合わせて使用することもできる。
【0022】
以下の実施例と図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
実施例 1
Pr(mmp)3の調製
mmpH(0.487cm3,4.23mmol)を、[Pr{N(SiMe3)2}3](0.878g,1.41mmol)のトルエン(80cm3)溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去し、緑色のオイルを得た。
【0024】
微量分析:
測定値 C:38.0,H:6.60%.
計算値(C15H33O6Prとして) C:40.01,H:7.39%.
IR(υcm−1,液膜,NaCl板):
2960 vs;1496 m;1458 s;1383 m;1357
s;1274 s;1229 vs;1205 s;1171 vs;
1113vs;1086 vs;997 vs;967 vs;
943 vs;915 m;828 w;786 m;730 s;
695 m.
NMR分光法(CDC13;400MHz):(すべての共鳴が常磁性Pr3+(4f2)のためにブロードとなった。これらのブロードな共鳴の積分値は精度不足のために報告しない。):
100.5,72.5,69.7,67.0,64.0,63.7,62.4,
60.7,58.4,57.0,56.0,54.0,53.5,50.5,48.2,
47.2,42.2,40.7,19.1,18.6,18.0,17.7,15.3,
13.9,12.7,11.2,3.1,1.2,−4.7,−10.5,−11.8,
−12.5,−13.0,−15.5,−19.0,−20.5,−24.4,
−30.2,−40.1,−43.6,−45.3,−46.2,−54.0
【0025】
Pr(mmp)3は液体の性質を有するために単結晶X線回折による構造特性解析は行うことができないが、LiClの存在下では式[LiPr(mmp)3Cl]2を有する結晶錯体が単離され、オイルの化学量論がPr(mmp)3であるという証拠となった。単結晶X線回折によって上記錯体の特性解析を行った。図1にその構造を示す。
【0026】
実施例 2
Pr(mmp)3はMOCVDによる酸化プラセオジウム薄膜の成膜のために好適な前駆体であることが分かった。Pr(mmp)3の0.1Mトルエン(14cm3)溶液を使用し、酸化プラセオジウム膜を液体注入MOCVDによって成膜した。テトラグリム CH3O(CH2CH2O)4CH3を添加することによって空気・水分との反応性が低下するとともに前駆体の輸送特性が改善され、Pr(mmp)3溶液が安定化することが分かった。Pr(mmp)3のトルエン溶液を使用した液体注入MOCVDによる酸化Pr薄膜の成膜に使用した成長条件を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
X線回折分析によって膜は酸化プラセオジウムであることを確認した(図2を参照)。X線回折分析は、膜がβ−Pr6O11主相と少量成分として六方晶θ−Pr2O3相を含むことを示している。従来の報告(R.Lo Nigro,R.G.Toro,G.Malandrino,V.Raineri,I.L.Fragala,Proceedings of EURO CVD 14,2003年4月27日〜5月2日、フランス、パリ(M.D.Allendorf,F.Maury,F.Teyssandier編)、Electrochem.Soc.Proc.2003,2003−08,915)は、MOCVD成長時に使用する酸素分圧によってβ−Pr6O11相とθ−Pr2O3相の割合を制御できることを示している。
【0029】
走査電子顕微鏡観察(SEM)による膜の分析では、成長させたすべての膜が滑らかな表面と均一な断面厚みを示した。
【0030】
400℃で成長させた膜の断面を図3に示す。HfO2やZrO2などのhigh−k誘電体膜で観察される柱状成長などの特徴は全く示していない。
【0031】
膜のエネルギー分散性X線回折分析は、薄膜からのPrと下層の基板材料からのシリコンのみを示している。
【0032】
[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のオージェ電子分光法(AES)分析(表2を参照)は膜が純粋な酸化Prであることを示しており、炭素は検出されなかった。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例 3
La(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を、[La{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去して生成物を得た。
【0035】
微量分析:
測定値 C:40.0,H:7.4%.
計算値(C15H33O6Laとして)C:40.2,H:7.4%.
IR(υcm−1,液膜,NaCl):
2960 vs;1496 m;1457 s;1384 m;1357
s;1261 s;1229 vs;1172 vs;1090 vs;
1084 vs;1001 s;965 vs;944 s;914 m;
841 m;821 m;794 s;730 s;695 m.
NMR分光法 C6D6(400MHz)
主共鳴:δ(ppm):3.16 br 一重線;3.08 br 一重線(合
計 5H);2.65 一重線;1.27 一重線(6H).
その他の共鳴 3.2〜4ppm,複雑なパターン(合計約2H);1.2〜
1.8ppm,複雑なパターン(合計約4H).
【0036】
同様な調製方法を他のM(mmp)3錯体(式中M=Sc、Yなどの3B族元素またはCe、Gd、Ndなどのランタニド(希土類)元素)の合成に使用することができる。
【0037】
実施例 4
La(mmp)3はMOCVDによる酸化ランタン薄膜の成膜のために好適な前駆体であることが分かった。La(mmp)3のトルエン溶液を使用した液体注入MOCVDによる酸化La薄膜の成膜に使用した成長条件を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
450℃で成膜した膜のX線回折パターン(図4)は、25.1°、27.9°、29.7°の2θ値で測定された(100)、(002)、(101)反射に帰属する3つの主回折ピークを示している。これらのピークの強度の近似比率は、六方晶構造を有するLa2O3のランダム粉末回折パターンと一致している。観察された反射の幅は、非常に小さな粒径または膜を雰囲気に暴露したことによる酸化物の単斜晶LaO(OH)への変化のいずれかと一致している。
【0040】
LaOx膜の原子組成をオージェ電子分光法(AES)を使用して測定した。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
1.8〜2.4というO/La比は、過剰酸素を含むLa2O3である膜(La2O3の予想O:La比=1.5)のO/La比と一致している。<0.5atom%の推定検出限界ではいずれの膜でも炭素は検出されず、酸素が存在しない場合にも炭素を含有しない酸化La膜が得られた。したがって、[La(mmp)3]は「単一源(single−source)」酸化物前駆体として効果的に機能している。
【0043】
450℃で成膜した酸化ランタン膜から得た破砕サンプルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を図5に示す。自由成長面上に「塚(hillock)」形状を伴う柱状成長が認められ、微細粗面化作用をもたらしている。
【0044】
実施例 5
Nd(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を[Nd{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加した。溶液を室温で10分間撹拌後、溶媒とHN(SiMe3)2を真空下で除去して生成物を得た。
【0045】
微量分析:
実測値:C,38.8;H,6.9%.
計算値(C15H33O6Nd)として:C:39.7,H:7.33%.
IRデータ:NaCl板間の薄膜として測定(cm−1)
2963 vs;1496 m;1457 s;1384 m;1357
s;1275 s;1231 vs;1173 vs;1117 vs;
1086 vs;1010 s;968 vs;915 m;823 m;
793 a;730 s;695 m
1H NMR(CDCl3)[Nd3+(4f3)の常磁性のために共鳴がブロードとなった]:
35.1,31.7,30.9,18.8,17.4,15.8,12.6,11.5,
8.2,5.6,1.2,−9.0,−9.6,−18.2,−24.5,−25.6,
−26.0,−55.8,−57.5
【0046】
実施例 6
前駆体溶液を安定化させるための添加剤の使用
トルエン溶液中の[La(mmp)3]と[Pr(mmp)3]の1H NMRスペクトルを図6及び図7にそれぞれ示す。1H NMRデータの複雑さはこれらの化合物の構造が非常に複雑であることを示しており、特にランタンの場合にはスペクトルの複雑さは経時的に増加した。これは、溶液中にかなりの量の不可逆的分子凝集があることを示している。これは、おそらくは縮合反応によってオキソ架橋オリゴマーが形成されるためである。そのような反応はランタニドアルコキシド化学で証明されている。また、共鳴は、おそらくは金属アルコキシド錯体の溶液で一般に観察される分子間配位子交換反応のためにブロードになっている。
【0047】
意義深いことに、3モル当量の多座酸素供与配位子であるテトラグリム(CH3O(CH2CH2O)4CH3)を前駆体溶液に添加することによって1H NMRスペクトルは非常に単純になった(図8及び図9)。これは、(CH3O(CH2CH2O)4CH3)の存在が分子凝集を抑制することを明らかに示している。テトラグリムの共鳴が[Pr(mmp)3(tetraglyme)]における常磁性シフトを受けないということはテトラグリムがPrに直接結合していないことを示しており、[Ln(mmp)3(tetraglyme)]の安定した付加体は形成されないと結論付けた。
【0048】
1モル過剰の[mmpH](HOCMe2CH2OMe)をLa(mmp)3またはPr(mmp)3のトルエン溶液に添加した場合にも1H NMRスペクトルは非常に単純になり(図10及び図11)、同様な安定化効果が得られた。1H NMRスペクトルの単純さは、mmpとmmpHが迅速に交換され、配位していないmmpHが存在しないことを示している。[Ln(mmp)3]の溶液にテトラグリムまたはmmpHを添加することによって空気/水分安定性が向上し、凝集体の形成が防止されることが分かった。この安定化のメカニズムは証明されていないが、隣接分子上のmmp配位子の酸素原子からランタニド金属中心が遮断されるためであると考えられる。
【0049】
実施例 7
Gd(mmp)3の調製
mmpH(3モル当量)を[Gd{N(SiMe3)2}3](1モル当量)のトルエン溶液に添加して[Gd(mmp)3]を合成した。溶液を室温で10分間攪拌後、溶媒と遊離したHN(SiMe3)2を真空下で除去し、生成物を緑色のオイルとして得た。生成物はC及びHの微量元素分析によって確認した。
【0050】
実施例 8
Gd(mmp)3を使用した酸化ガドリニウムの成長
液体注入MOCVD反応器を使用し、1ミリバールの圧力で酸化ガドリニウム膜をSi(100)基板上に成膜した。膜は、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用し、300〜600℃の温度範囲で表3に示す成長条件で成膜した。また、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用して、酸素を添加しない条件で酸化ガドリニウム膜をGaAs(100)上に成膜した。
【0051】
Si(100)基板及びGaAs(100)基板上に成膜した膜は、オージェ電子分光法(AES)によって表5に示すように酸化ガドリニウムであることが確認された。
【0052】
【表5】
Gd2O3膜のX線回折データは、450℃を超える成長温度では、GdOX膜が(111)優先配向を示すC型構造を有するGd2O3として結晶化することを示した。低い成長温度では、データは非晶質の無秩序構造を示唆する回折を示さなかった。
【0053】
450℃でGaAs(100)上に成膜したGd2O3膜の回折パターンでは(222)反射が優位を占めていた。これは、強い優先配向または下層のGaAsとのヘテロエピタキシャル関係を示している。
【0054】
実施例 9
供与性添加剤の添加によるM(mmp)3(M=希土類元素)前駆体
溶液の安定化
トルエン溶液中の[La(mmp)3]と[Pr(mmp)3]の1H NMRスペクトルを図6及び図7にそれぞれ示す。3モル当量の多座酸素供与配位子であるテトラグリム(CH3O(CH2CH2O)4CH3)をM(mmp)3(M=La,Pr)前駆体溶液に添加することによって1H NMRスペクトルは非常に単純になり(図8及び図9)、前駆体溶液の空気感受性が減少した。そして、液体注入MOCVD用途での前駆体溶液の蒸発特性が大きく改善された。
【0055】
これは、(CH3O(CH2CH2O)4CH3)が分子凝集を抑制することをはっきりと示している。テトラグリム共鳴が[Pr(mmp)3][tetraglyme]における常磁性シフトを受けないということは、テトラグリムがPrに直接結合しないことを示しており、[Ln(mmp)3(tetraglyme)]の安定付加体は形成されないと結論付けた。
【0056】
1モル過剰のl−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール[HOCMe2CH2OMe](mmpH)をM(mmp)3(M=希土類元素)のトルエン溶液に添加した場合にも同様な安定化効果が得られた(図10及び図11)。[Ln(mmp)3(mmpH)]の場合には、1H NMRスペクトルの単純さは、mmpとmmpHが迅速に交換され、配位していないmmpHが存在しないことを示している。[Ln(mmp)3]の溶液にテトラグリムまたはmmpHを添加することによって、空気/水分安定性が高まり、凝集体の形成が防止されることが分かった。
【0057】
この安定化のメカニズムは証明されていないが、隣接分子上のmmp配位子の酸素原子からLn金属中心が遮断されるためであると考えられる。
【0058】
実施例 10
Nd(mmp)3を使用した酸化ネオジムの成長
液体注入MOCVD反応器を使用し、1ミリバールの圧力で酸化ネオジム膜をSi(100)基板上に成膜した。膜は、3当量のテトラグリムを添加した[Nd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用し、250〜600℃の温度範囲で表3に示す成長条件を使用して成膜した。また、3当量のテトラグリムを添加した[Gd(mmp)3]の0.1Mトルエン溶液を使用して、酸素を添加しない条件で酸化ネオジム膜をGaAs(100)上に成膜した。
【0059】
Si(100)基板及びGaAs(100)基板上に成膜した膜は、オージェ電子分光法(AES)によって表5に示すように酸化ネオジム(Nd2O3)であることが確認された。
【0060】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は[LiPr(mmp)3Cl]2のX線結晶構造を示す。
【図2】図2は400℃及び600℃で[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のX線回折スペクトルを示す。*はθ−Pr2O3相の(101)主反射を示す。
【図3】図3は400℃で[Pr(mmp)3]から成膜した酸化Pr膜のSEM像を示す。
【図4】図4は450℃でLa(mmp)3から成膜した酸化ランタン膜のX線回折パターンを示す。
【図5】図5は実施例4の酸化ランタン膜から得た破砕サンプルの走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図6】図6はLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図7】図7はPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図8】図8は3モル当量のテトラグリムを添加したLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図9】図9は3モル当量のテトラグリムを添加したPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図10】図10は3モル当量のmmpHを添加したLa(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【図11】図11は3モル当量のmmpHを添加したPr(mmp)3のトルエン溶液の1H NMRスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体であって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有することを特徴とする前駆体。
【請求項2】
一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
Mがプラセオジウムである請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項4】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の前駆体。
【請求項5】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2から選択される請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項6】
Pr(mmp)3。
【請求項7】
La(mmp)3。
【請求項8】
Gd(mmp)3。
【請求項9】
Nd(mmp)3。
【請求項10】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体の製造方法であって、HOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミド M(NR2)3またはシリルアミド M(N(SiR3)2)3前駆体、Pr{N(SiMe3)2}3(式中、Rはアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記配位子がmmpHである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記希土類金属化合物はプラセオジウムシリルアミドである請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記希土類金属アルキルアミドまたはシリルアミドにおいて、RはMe、Et、Priから選択される請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
式M[OCR1(R2)(CH2)X]3(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されるランタニド・希土類元素錯体の製造方法であって、M(NO3)3(テトラグリム)と[OCR1(R2)CH2X]3(mmp)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記アルカリ金属塩がNa(mmp)である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
調製される前記希土類金属錯体はSc(mmp)3、Y(mmp)3、Ln(mmp)3から選択される請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を有機金属バブラーに入れることを特徴とする方法。
【請求項18】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)または液体注入MOCVDによって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪族炭化水素溶媒がヘキサン、ヘプタン、ノナンから選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が多座エーテル及び供与性アルコールから選択される添加剤を含む請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記多座エーテルがジグリム CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグリムCH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグリム CH3O(CH2CH2O)4CH3から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記供与性アルコールが1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール HOCMe2CH2OMe(mmpH)である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒に添加される添加剤の量が前記前駆体1モル当量に対して少なくとも3モル当量である請求項22、23、24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒に添加される添加剤の量が3モル当量である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記前駆体が一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項18〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
Mがプラセオジウムである請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項18〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2からなる群から選択される請求項18〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記前駆体がPr(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記前駆体がLa(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体がGd(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記前駆体がNd(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
原子層成長法(ALD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記金属酸化物膜が酸化プラセオジウム膜である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
非気相成長法によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項38】
前記成長法はゾルゲル成長法及び有機金属分解法から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
Mが、La、Ce、Gd、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc及びYを含むIIIB族元素から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項40】
多成分酸化物のMOCVDのための適切な共前駆体を使用して行われる請求項17〜37のいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体であって、一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されることを特徴とする前駆体。
【請求項2】
Mがプラセオジウムである請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
OCR1(R2)(CH2)nXで表される配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項4】
OCR1(R2)(CH2)nXで表される配位子が、OCH(Me)CH2OMe,OCEt2CH2OMe,OCH(Et)CH2OMe,OC(Pri)2CH2OMe,OCH(Pri)CH2OMe,OC(But)2CH2OMe,OCH(But)CH2OMe,OCH(But)CH2OEt,OC(But)2CH2OEt,OC(Pri)2CH2OEt,OCH(But)CH2NEt2,OC(Pri)2CH2OC2H4OMe,OC(But)(CH2OPri)2から選択される請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項5】
Pr(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項6】
La(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項7】
Gd(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項8】
Nd(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項9】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体の製造方法であって、HOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミド M(NR2)3またはシリルアミド M(N(SiR3)2)3前駆体,Pr{N(SiMe3)2}3(式中、Rはアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記配位子がmmpHである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記希土類金属化合物がプラセオジウムシリルアミドである請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記希土類金属アルキルアミドまたはシリルアミドにおいて、RがMe,Et,Priから選択される請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
式M[OCR1(R2)CH2X]3(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されるランタニド・希土類元素錯体の製造方法であって、M(NO3)3(テトラグライム)と[OCR1(R2)CH2X]3(mmp)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属塩はNa(mmp)である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
調製される前記希土類金属錯体はSc(mmp)3,Y(mmp)3,Ln(mmp)3から選択される請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を有機金属バブラーに入れることを特徴とする方法。
【請求項17】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)または液体注入MOCVDによって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルから選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂肪族炭化水素溶媒がヘキサン、ヘプタン、ノナンから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒が多座エーテル及び供与性アルコールから選択される添加剤を含む請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記多座エーテルがジグライム CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグライム CH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグライム CH3O(CH2CH2O)4CH3から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記供与性アルコールが1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール HOCMe2CH2OMe(mmpH)である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒に添加される前記添加剤の量が前記前駆体1モル当量に対して少なくとも3モル当量である請求項21,22,23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒に添加される前記添加剤の量が3モル当量である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記前駆体が一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
Mがプラセオジウムである請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe,OCEt2CH2OMe,OCH(Et)CH2OMe,OC(Pri)2CH2OMe,OCH(Pri)CH2OMe,OC(But)2CH2OMe,OCH(But)CH2OMe,OCH(But)CH2OEt,OC(But)2CH2OEt,OC(Pri)2CH2OEt,OCH(But)CH2NEt2,OC(Pri)2CH2OC2H4OMe,OC(But)(CH2OPri)2からなる群から選択される請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記前駆体がPr(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記前駆体がLa(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記前駆体がGd(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体がNd(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
原子層成長法(ALD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項35】
前記金属酸化物膜が酸化プラセオジウム膜である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
非気相成長法によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項37】
前記成長法はゾルゲル成長法及び有機金属分解法から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Mが、La,Ce,Gd,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc及びYを含むIIIB族元素から選択される請求項16〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
多成分酸化物のMOCVDのための適切な共前駆体を使用して行う請求項16〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体であって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有することを特徴とする前駆体。
【請求項2】
一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
Mがプラセオジウムである請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項4】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の前駆体。
【請求項5】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2から選択される請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項6】
Pr(mmp)3。
【請求項7】
La(mmp)3。
【請求項8】
Gd(mmp)3。
【請求項9】
Nd(mmp)3。
【請求項10】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体の製造方法であって、HOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミド M(NR2)3またはシリルアミド M(N(SiR3)2)3前駆体、Pr{N(SiMe3)2}3(式中、Rはアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記配位子がmmpHである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記希土類金属化合物はプラセオジウムシリルアミドである請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記希土類金属アルキルアミドまたはシリルアミドにおいて、RはMe、Et、Priから選択される請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
式M[OCR1(R2)(CH2)X]3(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されるランタニド・希土類元素錯体の製造方法であって、M(NO3)3(テトラグリム)と[OCR1(R2)CH2X]3(mmp)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記アルカリ金属塩がNa(mmp)である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
調製される前記希土類金属錯体はSc(mmp)3、Y(mmp)3、Ln(mmp)3から選択される請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を有機金属バブラーに入れることを特徴とする方法。
【請求項18】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)または液体注入MOCVDによって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪族炭化水素溶媒がヘキサン、ヘプタン、ノナンから選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が多座エーテル及び供与性アルコールから選択される添加剤を含む請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記多座エーテルがジグリム CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグリムCH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグリム CH3O(CH2CH2O)4CH3から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記供与性アルコールが1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール HOCMe2CH2OMe(mmpH)である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒に添加される添加剤の量が前記前駆体1モル当量に対して少なくとも3モル当量である請求項22、23、24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒に添加される添加剤の量が3モル当量である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記前駆体が一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項18〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
Mがプラセオジウムである請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項18〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe、OCEt2CH2OMe、OCH(Et)CH2OMe、OC(Pri)2CH2OMe、OCH(Pri)CH2OMe、OC(But)2CH2OMe、OCH(But)CH2OMe、OCH(But)CH2OEt、OC(But)2CH2OEt、OC(Pri)2CH2OEt、OCH(But)CH2NEt2、OC(Pri)2CH2OC2H4OMe、OC(But)(CH2OPri)2からなる群から選択される請求項18〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記前駆体がPr(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記前駆体がLa(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体がGd(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記前駆体がNd(mmp)3である請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
原子層成長法(ALD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記金属酸化物膜が酸化プラセオジウム膜である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
非気相成長法によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項38】
前記成長法はゾルゲル成長法及び有機金属分解法から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
Mが、La、Ce、Gd、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc及びYを含むIIIB族元素から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項40】
多成分酸化物のMOCVDのための適切な共前駆体を使用して行われる請求項17〜37のいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体であって、一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されることを特徴とする前駆体。
【請求項2】
Mがプラセオジウムである請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
OCR1(R2)(CH2)nXで表される配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項4】
OCR1(R2)(CH2)nXで表される配位子が、OCH(Me)CH2OMe,OCEt2CH2OMe,OCH(Et)CH2OMe,OC(Pri)2CH2OMe,OCH(Pri)CH2OMe,OC(But)2CH2OMe,OCH(But)CH2OMe,OCH(But)CH2OEt,OC(But)2CH2OEt,OC(Pri)2CH2OEt,OCH(But)CH2NEt2,OC(Pri)2CH2OC2H4OMe,OC(But)(CH2OPri)2から選択される請求項1または2に記載の前駆体。
【請求項5】
Pr(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項6】
La(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項7】
Gd(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項8】
Nd(mmp)3である請求項1に記載の前駆体。
【請求項9】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)に使用するための希土類金属前駆体の製造方法であって、HOCR1(R2)(CH2)nX(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される配位子を、対応する希土類金属アルキルアミド M(NR2)3またはシリルアミド M(N(SiR3)2)3前駆体,Pr{N(SiMe3)2}3(式中、Rはアルキル基を示す)と適切なモル比で反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記配位子がmmpHである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記希土類金属化合物がプラセオジウムシリルアミドである請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記希土類金属アルキルアミドまたはシリルアミドにおいて、RがMe,Et,Priから選択される請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
式M[OCR1(R2)CH2X]3(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表されるランタニド・希土類元素錯体の製造方法であって、M(NO3)3(テトラグライム)と[OCR1(R2)CH2X]3(mmp)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をテトラヒドロフラン溶媒中で塩交換反応させることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属塩はNa(mmp)である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
調製される前記希土類金属錯体はSc(mmp)3,Y(mmp)3,Ln(mmp)3から選択される請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を有機金属バブラーに入れることを特徴とする方法。
【請求項17】
有機金属化学気相成長法(MOCVD)または液体注入MOCVDによって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜するための方法であって、前記前駆体を適切な不活性有機溶媒に溶解し、加熱された蒸発器を使用して気相に蒸発させることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族環状エーテルから選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂肪族炭化水素溶媒がヘキサン、ヘプタン、ノナンから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒が多座エーテル及び供与性アルコールから選択される添加剤を含む請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記多座エーテルがジグライム CH3O(CH2CH2O)2CH3、トリグライム CH3O(CH2CH2O)3CH3、テトラグライム CH3O(CH2CH2O)4CH3から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記供与性アルコールが1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール HOCMe2CH2OMe(mmpH)である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒に添加される前記添加剤の量が前記前駆体1モル当量に対して少なくとも3モル当量である請求項21,22,23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒に添加される前記添加剤の量が3モル当量である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記前駆体が一般式M[OCR1(R2)(CH2)nX]3(式中、Mは希土類金属を示し、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択され、nは1〜4である)で表される請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
Mがプラセオジウムである請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記式OCR1(R2)(CH2)nXで表される前記配位子が1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノレート[OCMe2CH2OMe](mmp)である請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記配位子が、OCH(Me)CH2OMe,OCEt2CH2OMe,OCH(Et)CH2OMe,OC(Pri)2CH2OMe,OCH(Pri)CH2OMe,OC(But)2CH2OMe,OCH(But)CH2OMe,OCH(But)CH2OEt,OC(But)2CH2OEt,OC(Pri)2CH2OEt,OCH(But)CH2NEt2,OC(Pri)2CH2OC2H4OMe,OC(But)(CH2OPri)2からなる群から選択される請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記前駆体がPr(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記前駆体がLa(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記前駆体がGd(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体がNd(mmp)3である請求項17〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
原子層成長法(ALD)によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項35】
前記金属酸化物膜が酸化プラセオジウム膜である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
非気相成長法によって、一般式OCR1(R2)CH2X(式中、R1は水素またはアルキル基を示し、R2は任意に置換されたアルキル基を示し、XはOR及びNR2(式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を示す)から選択される)で表される配位子を有する希土類金属前駆体を使用して単一または混合酸化物層または膜を成膜することを特徴とする方法。
【請求項37】
前記成長法はゾルゲル成長法及び有機金属分解法から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Mが、La,Ce,Gd,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc及びYを含むIIIB族元素から選択される請求項16〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
多成分酸化物のMOCVDのための適切な共前駆体を使用して行う請求項16〜38のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−521337(P2006−521337A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505949(P2006−505949)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001047
【国際公開番号】WO2004/083479
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(398074902)エピケム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001047
【国際公開番号】WO2004/083479
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(398074902)エピケム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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