銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料及びその製造方法及び電子部材の接合方法

【課題】銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料の耐酸化性と接合性とを両立するとともに、当該焼結性接合材料を用いて作製した半導体装置等の接合部におけるイオンマイグレーションを抑制する。
【解決手段】粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、単一粒子155(一次粒子)と、単一粒子155の融合体156である二次粒子とを含む焼結性接合材料を用いる。
【解決手段】粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、単一粒子155(一次粒子)と、単一粒子155の融合体156である二次粒子とを含む焼結性接合材料を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子(例えば、粒径100nm以下)は、粒子の体積に比して表面積が大きいために化学的活性が高く、非常に低い焼結温度を有する。金属ナノ粒子は、この性質から、新しい機能性材料として注目を浴びている。例えば、金属ナノ粒子を含有するペーストは、電子機器の内部に設ける電子部材同士の接合や回路配線の形成に用いられる材料として期待されている。
【0003】
また、金属ナノ粒子の粒径が更に小さく(例えば、粒径35nm以下)になると、異種金属との低温接合性も非常に向上することが最近になって明らかになりつつある。このような電子機器の用途にこの金属ナノ粒子を用いるためには、一般に、高い熱伝導率・導電性・耐熱性(耐酸化性)を有する金属ナノ粒子が好ましい。そのため、金や銀などの貴金属ナノ粒子が用いられることが多く、中でも、比較的安価な銀がしばしば用いられる。
【0004】
しかしながら、銀は、イオンマイグレーションが発生しやすく、短絡の要因になりやすいという弱点がある。
【0005】
イオンマイグレーションの抑制に関しては、銅ナノ粒子を用いることが有効である。また、銅は、銀と同程度の熱伝導率を有し(銀:430W/m・K、銅:400W/m・K)、かつ、コスト面では銀よりもはるかに有利である。
【0006】
銅ナノ粒子の製造方法としては、例えば、非特許文献1において、CTAB(Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide)を分散剤として用いて粒径が10nm以下の銅ナノ粒子を製造する方法が報告されている。ただし、焼結熱処理前に過剰なCTABを除去するために銅ナノ粒子を洗浄する必要がある。
【0007】
しかしながら、銅ナノ粒子を洗浄すると、金属銅が酸化して酸化第一銅に変化してしまうという問題がある。金属銅が酸化第一銅に一旦酸化してしまうと、大気中での焼結が困難になる上に、水素などの還元雰囲気中でも400℃以上の加熱が必要となることから、低温焼結自体が困難になる。
【0008】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、銅粒子の表面を、メルカプト基、アミノ基、アミド基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むシリコーンオイルで被覆することにより耐酸化性を向上させた銅粉末、及びこの銅粉末を配合してなる銅ペーストまたは銅塗料が開示されている。
【0009】
特許文献3には、平均粒径0.3〜20μmの銅粉と平均粒径1〜50nmの微細銅粉の混合物と、溶剤と、銅粉表面に形成された酸化物を溶解する添加剤とを含む導電性組成物であって、大気雰囲気中における低温焼成を可能とし、銅粒子の酸化を防止するものが開示されている。
【0010】
特許文献4には、金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子と分散剤とで構成されるとともに、金属ナノ粒子が、数平均粒子径50nm以下であり、かつ粒子径100〜200nmの金属ナノ粒子を含有する無機素材用接合剤が開示されている。さらに、特許文献4には、金属ナノ粒子が銅のナノ粒子であってもよいこと、金属粉末の比表面積は、0.1〜5m2/gであることが好ましいこと、及び、分散剤の割合は、固形分換算で、金属ナノ粒子100質量部に対して、0.01〜15質量部程度の範囲から選択できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−60779号公報
【特許文献2】特開2005−60778号公報
【特許文献3】特開2007−258123号公報
【特許文献4】特開2011−094223号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Szu-Han Wu and Dong-Hwang Chen, Journal of Colloid and Interface Science 273 (2004) pp. 165-169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1や特許文献2に記載の銅粉末は、耐酸化性という点において優れていると思われるが、電子部材同士の接合用途のような狭小空間においては、焼結熱処理時にシリコーンオイルの残渣が接合箇所に残りやすく、接合強度や熱伝導性を低下させることが危惧される。
【0014】
また、特許文献3に記載の導電性組成物は、作製した銅微粉末の表面にボールミル等を用いて溶剤及び添加剤を吸着させるものであるが、粒径が100nm以下のナノ粒子に対する均一なコーティングが難しく、ナノ粒子の酸化を抑制することが困難であることが危惧される。
【0015】
特許文献4に記載の金属ナノ粒子に関しては、これを構成する金属の一種である銅の耐酸化性の観点から粒径及び比表面積を選択したものではないため、場合によっては、酸化防止剤を添加する必要がある。
【0016】
本発明は、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料の耐酸化性と接合性とを両立するとともに、当該焼結性接合材料を用いて作製した半導体装置等の接合部におけるイオンマイグレーションを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストである焼結性接合材料において、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料の耐酸化性と接合性とを両立することができ、当該焼結性接合材料を用いて作製した半導体装置等の接合部におけるイオンマイグレーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の銅ナノ粒子の製造工程を示すフローチャートである。
【図2A】実施例の銅ナノ粒子のTEM画像である。
【図2B】実施例の銅ナノ粒子の凝集状態を示す模式図である。
【図2C】実施例の銅ナノ粒子の融合状態を示す模式図である。
【図3A】実施例(試料1)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。
【図3B】実施例(試料2)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。
【図4】粒径と比表面積との関係を示すグラフである。
【図5】実施例の銅ナノ粒子の比表面積と接合強度との関係を示すグラフである。
【図6】半導体パワーモジュールに用いる配線基板及びピンフィン冷却ユニットの一例を示す模式断面図である。
【図7A】絶縁型半導体装置を示す平面図である。
【図7B】図7AのA−A断面図である。
【図8】図7Aの絶縁型半導体装置を示す斜視図である。
【図9】図8の半導体素子の設置部分を示す拡大断面図である。
【図10A】部品内蔵型の多層配線基板に用いるコンデンサを示す断面図である。
【図10B】部品内蔵型の多層配線基板に用いるLSIチップを示す断面図である。
【図10C】部品内蔵型の多層配線基板のコア層部分を示す断面図である。
【図11】部品内蔵型の多層配線基板の一例を示す断面図である。
【図12】部品内蔵型の多層配線基板の他の例を示す断面図である。
【図13】部品内蔵型の多層配線基板の他の例を示す断面図である。
【図14】積層チップの一例を示す断面図である。
【図15】実施例の接合層のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、電子部材同士の接合や回路配線の形成に用いられる焼結性接合材料に関し、特に、銅ナノ粒子を主材とする高熱伝導性の焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法に関するものである。なお、本明細書においては、半導体素子や回路基板等を「電子部材」と総称する。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法並びに当該焼結性接合材料を用いた半導体装置について説明する。
【0022】
前記焼結性接合材料は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含む。
【0023】
前記焼結性接合材料においては、銅ナノ粒子の比表面積は、3〜10m2/gであることが望ましい。銅ナノ粒子は、液又はペーストの中に分散していることが望ましい。
【0024】
前記焼結性接合材料においては、液は、水、又は水とアルコール系溶媒との混合溶液であることが望ましい。
【0025】
前記焼結性接合材料においては、銅ナノ粒子の含有量は80質量%以上であることが望ましい。
【0026】
前記焼結性接合材料は、さらに、分散安定剤を含むことが望ましい。
【0027】
前記焼結性接合材料においては、分散安定剤の含有量は、銅ナノ粒子を構成する銅100質量部に対して30質量部以下であることが望ましい。
【0028】
前記焼結性接合材料においては、分散安定剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールであることが望ましい。
【0029】
前記焼結性接合材料の製造方法は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液であって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子の比表面積は3〜10m2/gであり、銅ナノ粒子は、液の中に分散している焼結性接合材料の製造方法であって、液の中に銅化合物を溶解させて銅イオンを生成する工程の後に、銅イオンを含有する液の中に不活性ガスを流しながらアルカリ性溶液を加えて酸化第二銅コロイドを生成し、その後、酸化第二銅コロイドを含有する液の中に分散安定剤を混合した状態で還元剤を加えて銅ナノ粒子を生成する工程を含む。
【0030】
前記焼結性接合材料の製造方法においては、銅化合物は、硝酸銅水和物、銅酸化物及びカルボン酸銅塩のうちの少なくとも一種であることが望ましい。
【0031】
前記焼結性接合材料の製造方法においては、銅ナノ粒子を含む液を乾燥した後、銅ナノ粒子を分散媒に分散してペースト状とする工程を含むことが望ましい。
【0032】
前記電子部材の接合方法は、複数個の電子部材を接合する際、前記焼結性接合材料を接合部位の片面または両面に塗布する工程の後に、還元雰囲気中で100〜500℃の焼結熱処理を施す工程を含む。
【0033】
前記電子部材の接合方法においては、還元雰囲気は、低温で焼結を可能にし、かつ当該低温下であったとしても還元反応を十分に進ませ、接合強度を十分に得られるものが好ましい。より具体的には、200℃以下で還元反応が進みやすいものが好ましい。更に具体的には、水素、ギ酸、酢酸又はエタノールの雰囲気であることが、上述した理由から好ましい。
【0034】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材を接合する方向に加圧しながら焼結熱処理を施すことが望ましい。
【0035】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材は、半導体装置のチップ及び配線基板であることが望ましい。
【0036】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材は、冷却ユニットの冷却フィン及び金属支持板であることが望ましい。
【0037】
前記半導体装置は、銅又は銅合金で構成される接続用端子と、電極を有する半導体素子と、を備えた半導体装置であって、電極の表面は、ニッケルメッキ層で覆われ、接続用端子と電極との間には、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む焼結性接合材料で構成された接合層を有し、焼結性接合材料は、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含む。
【0038】
前記半導体装置においては、接合層は、多孔質構造を有し、かつ、接合強度が25MPa以上であることが望ましい。
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら焼結性接合材料の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0040】
(焼結性接合材料の製造方法)
図1は、銅ナノ粒子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
はじめに、酸化第二銅ナノ粒子(CuOナノ粒子)を製造するための溶媒として、撹拌しながら不活性ガスバブリングを30分間以上行った蒸留水を準備する。不活性ガスバブリングを行う理由は、溶媒中の溶存酸素を取り除き、反応の際に酸化第二銅以外の不純物が生成することを防止するためである。不活性ガスとしては、溶液中の銅イオンが酸化第二銅以外へ反応することを抑制するものであれば何でもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。本図に示す例においては、窒素ガスを用いた。
【0042】
なお、不活性ガスバブリングは、酸化第二銅の生成反応が完了するまで継続することが望ましい。また、バブリングの流量は、特に1mL/min〜1000mL/minの範囲が好適である。1000mL/minよりも多すぎると、反応系が不均一になり反応が均一に進まない。一方、1mL/minよりも小さいと十分に溶存酸素を除去できないためである。
【0043】
次に、5℃〜90℃に温度制御した上記の溶媒を攪拌しながら、原料となる銅化合物の粉末を溶解して銅イオンを生成させる。原料となる銅化合物としては、溶解の際、アニオンに起因する残留物を少なくできる化合物が好ましく、例えば、硝酸銅三水和物、塩化銅、水酸化銅、カルボン酸銅塩である酢酸銅などが好ましく用いられる。中でも、硝酸銅三水和物は、酸化第二銅が生成する際、不純物生成量が少なくなることから特に好ましい。さらに、硝酸銅三水和物を用いた場合、球形状のCuOが形成されやすい。針状のCuOと比較して、球形状のCuOの場合、その後の還元反応が進みやすいため、硝酸銅三水和物を用いた場合は、より好適な焼結性接合材料を得ることができる。
【0044】
銅化合物溶液の濃度としては、銅濃度が0.001〜1mol/Lとなるようにすることが好ましく、0.010mol/Lが特に好ましい。0.001mol/L未満の濃度では、希薄過ぎるため酸化第二銅の収率が低下することから好ましくない。また、1mol/L超の濃度では、均一な反応が困難となり安定した酸化第二銅ナノ粒子が生成されないため好ましくない。
【0045】
溶媒温度を5℃〜90℃とした理由は次のとおりである。
【0046】
本製造方法は、水を主体とする溶媒を用いることから、溶媒温度(反応温度)が90℃を超えると、所望のサイズや形状を有するナノ粒子を得ることができなくなる。また、溶媒温度(反応温度)が5℃未満では、目的とする酸化第二銅が生成されにくく、収率が低下することから好ましくない。更に好適な条件としては、溶媒温度(反応温度)が20℃〜90℃となる範囲である。溶媒温度(反応温度)は5℃〜90℃の範囲では、所望のサイズや形状を有するナノ粒子を得ることができるが、20℃以下では不純物が残りやすくなるためである。
【0047】
次に、アルカリ性溶液を加えることにより、酸化第二銅ナノ粒子のコロイドを生成する。添加するアルカリ性溶液は、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)などが好適に用いられる。中でも、NaOHとKOHが特に好ましい。NaOHやKOHは、不純物の含有量が少なく、反応の際に副生成物や不純物を生成しにくいからである。
【0048】
添加するアルカリ性溶液の量は、銅イオンのモル濃度[Cu2+](mol/L)に対するアルカリイオンのモル濃度[OH-](mol/L)の比([OH-]/[Cu2+])が1.5以上2.1未満となるようにすることが好ましい。「[OH-]/[Cu2+]」が2.1以上になると生成される酸化第二銅の二次粒子の形状が劣化し、その後のヒドラジンで還元した際の銅ナノ粒子の融合体が形成されにくくなり、接合強度の劣化を招く。また、「[OH-]/[Cu2+]」が1.5より小さくとなると酸化第二銅自体が生成されにくくなるため好ましくない。ここで、「1.5以上2.1未満」のように記載した場合、本明細書においては、「1.5以上かつ2.1未満」と同義であり、1.5から2.1までの範囲のうち2.1を除いた範囲を表すものとする。
【0049】
なお、反応時間に関しては特段の限定はないが、1分〜336時間(14日間)の範囲で行うことが好ましい。1分以下の場合、反応が終了しないため収率が低下する。一方、反応は遅くとも336時間以内に完了するため、それよりも長い時間は無駄になる。
【0050】
以上の工程により、CuOナノ粒子コロイド溶液が得られる。
【0051】
次に、上記の工程により作製したCuOナノ粒子を銅ナノ粒子(Cuナノ粒子)に還元する。
【0052】
この工程は、分散安定剤の存在下において還元剤であるヒドラジンを加えることにより行う。
【0053】
ここで、還元剤としては、溶液中の銅イオンを還元可能な物質であれば何でもよく、上記のヒドラジンのほか、水素化ホウ素塩、次亜リン酸塩などが挙げられる。ヒドラジンを用いることが好ましい理由は、銅化合物との反応した後に残渣が生じないこと、比較的安全性が高いこと、及び、取り扱いが容易であることが挙げられる。
【0054】
分散安定剤(分散剤)としては、焼結接合の際に影響が少ないもの(残渣の少ないもの)、具体的には、分解温度が300℃以下の分散剤が好ましい。分散剤の分解温度が300℃よりも高いものを用いると、接合層により残渣が多くできてしまい、接合強度の低下に繋がってしまうためである。より具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム(AOT)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0055】
分散剤は、ナノ粒子の分散性を向上させる程度に混ぜればよく、銅100質量部に対して分散剤30質量部以下が好適である。それよりも多く添加すると、接合層中に残渣が残りやすくなり、接合強度を低下させる要因となる。なお、分散剤の下限値は、銅100質量部に対して1質量部である。分散剤の量がそれよりも少なくなると、ナノ粒子が凝集してしまい、十分な接合強度が得られなくなってしまう。
【0056】
なお、ここでの反応時間も特段の限定はないが、1分〜336時間(14日間)の範囲で行うことが好ましい。1分以下になると反応が終了しないため収率が低下する。一方、反応は、遅くとも336時間以内に完了するため、それよりも長い時間は無駄になる。また、より速くかつ十分に反応を進ませるためには、温度条件にもよるが、12時間以上、更に好ましくは24時間以上が良い。
【0057】
以上の工程により、Cuナノ粒子コロイド溶液が得られる。
【0058】
以上のように、本製造方法においては、水を主成分とする溶媒を用いるが、極性有機溶媒を混合することにより、反応速度及び一次粒子径の制御が可能である。極性有機溶媒としては、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールや2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等)や、アルデヒド類(例えば、アセトアルデヒド等)や、ポリオール類(例えば、グリコール等)を好適に利用できる。水と極性有機溶媒との混合比は任意とすることができる。また、極性有機溶媒に加えた上で非極性有機溶媒(例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、ベンゼン等)を添加してもよい。
【0059】
上記のCuナノ粒子コロイド溶液は、焼結性接合材料としてそのまま用いてもよいが、未反応物、反応の際に生成する副生成物、アニオンなどが残留しているため、反応後に遠心洗浄を1〜10回行うことが好ましい。これにより、未反応物、反応の際に生成する副生成物、アニオンなどを取り除くことができる。洗浄液としては、上記の水若しくは極性有機溶媒又はこれらの混合物を好ましく用いることができる。
【0060】
上述のように遠心洗浄して得られた銅ナノ粒子を乾燥した後、適当な液体(分散媒)に分散してペースト状の焼結性接合材料を調合することは好ましい。このとき、焼結性接合材料中の銅ナノ粒子の含有量は、接合強度の観点から、80質量%以上とすることが好ましい。80質量%未満の場合、ペースト状にした場合に粘度が低くなり、供給性が低下するためである。また、接合強度の面からも十分な接合強度を確保することが難しくなるためである。さらに、接合強度をより向上させるという観点から、銅ナノ粒子の含有量は、90質量%以上とすることがより好ましい。分散媒としては、上記の水若しくは極性有機溶媒又はこれらの混合物(混合溶媒)を好ましく用いることができる。また、極性有機溶媒又は水と極性有機溶媒との混合物(混合溶媒)に上記の非極性有機溶媒を添加してもよい。
【0061】
なお、焼結性接合材料に含まれる分散安定剤の特定は、水、アルコールなどに焼結性接合材料を分散させ、これをGC/MSにより分析する手法が挙げられる。GC/MSを用いることにより、分散安定剤に含まれる有機物及びこれに由来する構造を有する物質が検出されるからである。
【0062】
(焼結性接合材料の性状)
本発明においては、焼結性接合材料は、粒径1〜35nmの一次粒子と、この一次粒子の融合体であって粒径が35nmより大きく1000nm以下の二次粒子とを含み、一次粒子及び二次粒子を合わせた粒子全体の比表面積が3〜10m2/gの範囲にあることが必須である。ここで、当該粒子全体の比表面積を「銅ナノ粒子の比表面積」ということにする。
【0063】
焼結性接合材料が粒径1〜35nmの一次粒子のみで構成されている場合、比表面積が大きくなり、粒子全体が酸化しやすくなってしまう。
【0064】
これに対して、一次粒子より比表面積の小さい、粒径が35nmより大きく1000nm以下の粒子を混在させることにより、一次粒子及び二次粒子を合わせた粒子全体の比表面積を小さくした場合、粒子全体としての酸化を抑制することができる。ここで、粒径を35nmより大きく1000nmとしたのは、粒径が35nm未満になると、表面の活性度が高くなり、容易に酸化しやすくなるためである。また、粒径が1000nmより大きくなると、低温における粒子同士の焼結及び接合が困難となるからである。
【0065】
本発明の焼結性接合材料において、粒径が35nmより大きく1000nm未満の粒子は、粒径1〜35nmの一次粒子が凝集し、融合したものである。これは、粒径1〜35nmの粒子が凝集し、融合することにより、粒子全体の比表面積が低下する効果が得られるからである。
【0066】
接合の対象が本発明の焼結性接合材料を構成する銅ナノ粒子と同種の銅である場合には、粒径1〜35nmの粒子が存在しなくても低温領域での接合が可能である。一方、異種金属(例えば、Au、Ag又はNi)との低温接合を行う場合には、粒径1〜35nmの粒子が必要である。粒径が1nm未満になると、表面の化学活性度が高くなり、室温においても容易に凝集するため、粒子全体の比表面積の制御が困難になる。また、粒径が粒径35nmより大きくなると、異種金属との低温での接合が困難となる。なお、焼結性接合材料を構成する粒子の形状は、真球体状である必要はなく、楕円球体状や多面体状であってもよい。
【0067】
粒径の更に好ましい範囲は、1〜20nmである。粒径の特に好ましい範囲は、1〜10nmである。これは、粒径が小さい方が、異種金属との所望の接合強度を達成する温度を更に低くすることができるからである。
【0068】
以上をまとめると、粒径1〜35nmの一次粒子は、異種金属との低温接合を達成するために必要である。一方、粒径が35nmより大きく1000nm未満の粒子は、耐酸化性を向上するために必要である。
【0069】
粒径35nm以下の銅ナノ粒子、粒径35〜1000nm未満の粒子からなる粒子融合体の観察は、電子顕微鏡(例えば、透過型電子顕微鏡)を用いて行うことができる。粒度分布は、電子顕微鏡により観察されたものから実測値を得ることが可能である。また、粒度分布は、粒度分布計等を用いることでも測定可能である。なお、粒度分布については、後述の実施例において実測データを用いて説明する。
【0070】
図2Aは、焼結性接合材料に含まれる銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)によって観察した結果を示す画像である。
【0071】
本図から、焼結性接合材料には、一次粒子である(銅ナノ粒子単体)、及び単一粒子21が結合して形成された融合粒子22(銅ナノ粒子融合体)が含まれることがわかる。
【0072】
図2Bは、銅ナノ粒子の凝集状態を示したものである。また、図2Cは、銅ナノ粒子の融合状態を示したものである。
【0073】
図2Bにおいては、単一粒子151及び単一粒子152、153の凝集体154(二次粒子)が示してある。すなわち、図2Bは、反応によって生成した銅ナノ粒子が凝集した状態であり、凝集した銅ナノ粒子の単一粒子151が融合する前の状態を示したものである。
【0074】
また、図2Cにおいては、単一粒子155(一次粒子)及び単一粒子の融合体156が示してある。すなわち、図2Cは、図2Bに示すように凝集した銅ナノ粒子が融合した後の状態を示したものである。なお、図2Cに示すとおり、融合体は、単一粒子155同士が互いに金属結合したものであり、凝集体とは異なるものである。また、融合体156は、二次粒子の一種である。
【0075】
図4は、粒径と比表面積との関係を示すグラフである。横軸に粒径をとり、縦軸に比表面積をとっている。本図においては、粒径は一定であって分布を持たない場合の理論値を示している。
【0076】
本図から、粒径が小さくなるに従って比表面積が急激に大きくなることがわかる。例えば、粒径100nmの場合、比表面積は6.7m2/gであり、粒径50nmの場合、比表面積は13.5m2/gであり、粒径35nmの場合、比表面積は19.6m2/gであり、粒径20nmの場合、比表面積は33.6m2/gである。
【0077】
一般に、物質の表面自由エネルギーは、単位面積当たりのエネルギー量であるから、粒径が小さくなり、比表面積が増加すると、単位体積当たりの表面自由エネルギーが増加し、表面の活性度が高くなる。これにより、銅ナノ粒子は異種金属とも低温接合しやすくなる。言い換えると、粒径が小さくなり、比表面積が増加するほど、より低い温度での接合が可能となる。
【0078】
図2B及び図2Cに示すように、生成した銅ナノ粒子は、凝集及び融合の過程を経て完成する。この過程において、図4に示すように、第一段階として凝集に伴う二次粒子の生成、すなわち、見かけの粒径の拡大が進行する。その後、第二段階として二次粒子を構成する一次粒子の融合が進行し、比表面積が減少する。図4においては、この過程における粒径の変化を●から△までの変化として示し、比表面積の変化を△から○までの変化として示している。
【0079】
(焼結熱処理)
焼結性接合材料に対する焼結熱処理は、還元雰囲気中において100〜500℃の温度で行うことが好ましい。また、還元雰囲気としては特段に限定されるものではないが、例えば、水素雰囲気、ギ酸雰囲気、エタノール雰囲気などが好適である。
【0080】
以下、実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0081】
(銅ナノ粒子の作製)
銅の原料化合物としては、Cu(NO3)2・3H2O粉末を用いた。溶媒としては、水を用いた。酸化第二銅ナノ粒子の析出剤としては、NaOHを用いた。容積1000mLのビーカーにて30分間の窒素バブリングを行った蒸留水784.8mLに対し、Cu(NO3)2・3H2O粉末を1.932g加え、20℃及び80℃のウォーターバス中で均一に溶解させた。その後、1.0MのNaOH水溶液を15.2mL滴下することにより、酸化第二銅ナノ粒子コロイド分散液を作製した。
【0082】
次に、上記の酸化第二銅ナノ粒子コロイド分散液を室温で24時間攪拌した後、CTAB 1.82gを水190.3mLに溶かし、これにヒドラジンを9.7mL滴下することにより銅ナノ粒子コロイド分散液を作製した。
【0083】
得られた銅ナノ粒子の遠心分離(遠心洗浄機:株式会社トミー精工、Suprema21)と洗浄作業とを3回ずつ行った。その後、銅ナノ粒子を取り出して乾燥し、0.5gの銅ナノ粒子(試料1〜2)を得た。
【0084】
表1は、試料1〜2及び後述の比較例1〜3をまとめて示したものである。
【0085】
本表に示す「反応温度」は、酸化銅ナノ粒子を生成する際の温度である。
【0086】
本表に示すように、試料1〜2の場合、比表面積は3〜10m2/gであり、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つあることがわかった。また、接合強度は、比較例1〜3よりも高く、40MPa以上であった。
【0087】
【表1】

【0088】
(銅ナノ粒子の性状)
作製した銅ナノ粒子(試料1〜2)に対し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2000FX II)を用いて得た画像から粒子サイズを測定した。
【0089】
図3Aは、実施例(試料1)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。図3Bは、実施例(試料2)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。ここで、「個数分布」は、「個数基準の粒径分布」ともいう。また、粒径の頻度を測定する際に対象とした粒子の総数は、約50個であり、それぞれの頻度を測定する粒径区間の幅は、1nmである。各粒子の粒径は、当該画像における各粒子の水平方向の最大寸法である。
【0090】
図3Aから、試料1の場合、頻度が極大となる粒径は2つあり、30nm及び61nmであることがわかる。
【0091】
また、図3Bから、試料2の場合、頻度が極大となる粒径は3つあり、30nm、40nm及び62nmであることがわかる。
【0092】
ここで、頻度が極大となる粒径を「粒径ピーク」と呼ぶことにする。
【0093】
また、X線回折装置(株式会社リガク製、RU200B)を用いて粒子の酸化状態を確認した。さらに、BET式自動比表面測定装置(株式会社マウンテック、Mascsorb model HM-1201)を用いて粒子の比表面積を測定した。
【0094】
試料1〜2及び比較例1〜3における1次粒子の性状を表1に示す。
【0095】
比較例1の銅ナノ粒子は、非特許文献1に記載の方法で作製した。比較例2の銅ナノ粒子は、Aldrich社から購入したものである。比較例3の銅粒子は、和光純薬工業株式会社から購入したものである。
【0096】
(銅ナノ粒子の比表面積に対する酸化物の生成状態)
表1に示すように、試料1〜2(反応温度20℃及び80℃で作製した粒子)においては、銅ナノ粒子のXRD回折パターンにおいて酸化銅のピークが現れなかった。一方、比較例1及び2の粒子においては、酸化銅のピークが観測された。これは、試料1〜2の粒子の比表面積は4.1〜6.5m2/gと小さく、比較例1及び2においては比表面積が11m2/g、13.45m2/gと大きかったためである。
【0097】
以上より、比表面積が11m2/g以上となると銅ナノ粒子の酸化が進行しやすくなることが判った。これは、比表面積が大きくなることで表面活性度が高くなるためと考えられる。
【実施例2】
【0098】
(焼結性接合材料の接合強度試験)
電子部材同士の接合を模擬して接合強度試験を実施した。試験方法は次のとおりである。
【0099】
測定に用いた銅試験片としては、直径10mm、厚さ5mmの下側試験片と、直径5mm、厚さ2mmの上側試験片とを用いた。下側試験片の上面に焼結性接合材料を塗布し、80℃で1時間減圧乾燥させた後、乾燥した焼結性接合材料の上に上側試験片を設置し、面圧1.2MPaの荷重を同時に加えて水素中400℃の温度で5分間の焼結熱処理を行い、接合試験片とした。
【0100】
剪断試験機(西進商事株式会社製、ボンドテスターSS-100KP、最大荷重100kg)を用いて、接合試験片に剪断応力を負荷し(剪断速度30mm/min)、破断時の最大荷重を測定した。最大荷重を接合面積で除して接合強度を求めた。
【0101】
表1に示すように、耐酸化性を抑制できた試料1〜2を用いた場合、40MPa以上の非常に高い接合強度が得られた。これは、試料1〜2においては銅ナノ粒子の酸化が抑制されるためと考えられる。なお、接合層は、図15のSEM画像に示すようなポーラス構造(多孔質構造)を有している。
【0102】
(比表面積と接合強度との関係)
試料1〜2と比較例1〜3における接合強度の結果を表1に併記し、比表面積と接合強度との関係を図5に示す。
【0103】
図5から、比表面積5〜10m2/gの範囲の接合強度が非常に高くなることがわかる。
【0104】
(異種金属に対する接合性)
Niに対する接合性を評価することで35nm以下の銅ナノ粒子を含有することの有用性を確認した。試験には直径10mm、厚さ5mmの下側試験片と、直径5mm、厚さ2mmの上側試験片の銅試験片に1μmのNiめっきが施されたものを使用した。接合条件は(焼結性接合材料の接合強度試験)の項で記載した方法と同様である。表1にこの実験結果も併記した。表1に示すように、35nm以下の粒子を含有している試料1〜2を用いた場合、25MPa以上の非常に高い接合強度が得られた。一方で比較例1~3では低強度であった。比較例1では粒子の酸化が抑制できていなかったため、比較例2では粒子が50nmと若干大きかったため、比較例3では粒子が1μmと非常に大きかったためと考えられる。以上のように異種金属との接合では粒径35nmの粒子が接合に重要であることが示された。これは異種金属との接合を達成するには表面エネルギーの大きな粒子でなければならないからである。
【実施例3】
【0105】
(冷却ユニットへの適用)
半導体パワーモジュールのピンフィン冷却ユニットのピン接続に本発明の焼結性接合材料を適用する例について説明する。
【0106】
半導体パワーモジュールは、近年、発熱量が増加傾向にあるため、動作時に発生する熱を該モジュールの外へ効率良く放散させる技術がますます重要になっている。
【0107】
図6は、半導体パワーモジュールに用いる配線基板及びピンフィン冷却ユニットの一例を示す模式断面図である。
【0108】
本図に示すように、配線基板14は、半導体チップと接続される回路配線11、モジュール内部で半導体チップと回路配線11とを電気的に絶縁するための絶縁基板12、及び絶縁基板12とピンフィン冷却ユニット111とを金属支持板101にはんだ付けするためのメタライズ層13を積層した構造を有する。また、ピンフィン冷却ユニット111は、金属支持板101に多数のピンフィン201が接合層100を介して接合された構造をしている。半導体パワーモジュールで発生した熱は、配線基板14の厚さ方向に伝達され、最終的な放熱は、金属支持板101に取り付けられたピンフィン201を介してなされる。
【0109】
ピンフィン冷却ユニット111の金属支持板101やピンフィン201は、通常、銅で構成されている。従来、金属支持板101とピンフィン201との接合は、銀ろう材を用いて800℃以上の温度で行われていた。そのため、金属支持板101やピンフィン201が軟化してしまい、機械的強度が低下して変形し易いという問題があった。
【0110】
そこで、実施例1の試料1を水に分散させた焼結性接合材料を用いて、金属支持板101とピンフィン201との接合を行った。焼結熱処理は、1.2MPaの加圧をしながら水素中400℃の温度で行った。
【0111】
その結果、銅の軟化温度よりも低い温度での接合が可能となり、銅が軟化してしまう問題を解決することができた。
【実施例4】
【0112】
(半導体装置への適用)
図7Aは、本発明を適用した絶縁型半導体装置を示す平面図であり、図7Bは、図7AのA−A断面図である。図8は、図7Aの絶縁型半導体装置を示す斜視図である。図9は、図8の半導体素子の設置部分を示す拡大断面図である。
【0113】
図7A〜9を参照しながら説明する。
【0114】
セラミックス絶縁基板303と配線層302とを含む配線基板は、はんだ層309を介して支持部材310に接合されている。配線層302は、銅配線にニッケルめっきが施されたものである。
【0115】
図9に示すように、半導体素子301のコレクタ電極307とセラミックス絶縁基板303上の配線層302とは、接合層305を介して接合されている。接合層305は、実施例1の20℃で作製した焼結性接合材料を用いて形成されたものであり、接合後は純銅層となっている。また、半導体素子301のエミッタ電極306と接続用端子401との間、及び、接続用端子401とセラミックス絶縁基板303上の配線層304との間も、接合層305によって接合されている。
【0116】
接合層305は、厚さ80μmである。コレクタ電極307の表面及びエミッタ電極306の表面には、ニッケルメッキが施されている。すなわち、コレクタ電極307の表面及びエミッタ電極306の表面は、ニッケルメッキ層で覆われている。また、接続用端子401は、Cu又はCu合金で構成されている。
【0117】
図8に示す半導体装置は、図7Bに示すように、外部端子312を有するケース311に収納され、封止材314で覆われている。配線層302と外部端子312とは、ボンディングワイヤ313によって接続されている。
【0118】
接合層305の形成においては、銅ナノ粒子を90質量%含み、かつ、水を10質量%含む焼結性接合材料を接合する部材の接合面の片面または両面に塗布し、80℃で1時間乾燥した後、1.0MPaの圧力を加えながら水素中350℃で1分間の焼結熱処理を施した。接合の際、超音波振動を加えてもよい。なお、接合層305の形成は、それぞれ個別に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0119】
なお、接合層305は、図15に示すようなポーラス構造を有している。
【実施例5】
【0120】
(多層配線基板への適用)
本実施例では、部品内蔵型の多層配線基板への適用について説明する。
【0121】
図10Aは、部品内蔵型の多層配線基板の内蔵されるコンデンサの断面図である。
【0122】
コンデンサ803は、電極としてメタライズ層802が形成され、メタライズ層802の外層に銅めっき層801が形成されている。
【0123】
図10Bは、部品内蔵型の多層配線基板の内蔵されるLSIチップの断面図である。
【0124】
LSIチップ804は、電極上にバンプ805が設けられており、バンプ805の外層に銅めっき層806が形成されている。
【0125】
図10Cは、部品内蔵型の多層配線基板のコア層部分の断面図である。
【0126】
コア807の厚さ方向の導通は、スルーホール808の表面配線809によりなされる。プリプレグ810の厚さ方向の導通は、表面に銅めっき層811を有するバンプ状の貫通電極812によりなされる。表面配線809の表面には、銅めっき層811を設けてもよい。
【0127】
図11は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の一例を示す断面図である。図12は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の他の一例を示す断面図である。図13は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の更に他の一例を示す断面図である。
【0128】
これらの図に示すコンデンサ803、LSIチップ804、貫通電極812及び表面配線809は、それぞれの接合部位である銅めっき層801、806、811を有する。銅めっき層801、806、811の表面には、本発明に係る焼結性接合材料を塗布し、乾燥した後、ギ酸雰囲気中にて焼結熱処理を施すことにより、焼結銅層813、814が形成される。それぞれの接合は、焼結銅層813、814を介してなされる。なお、接合直接関与した部位以外の焼結銅層813、814の表面は、プリプレグ810で覆われている。
【0129】
また、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板は、図12に示すように電子部品(例えば、コンデンサ803)を垂直方向に接続したり、図13に示すように水平方向に接続したりすることにより、積層配線基板の投影面積を最小にしたり、厚さを最小にしたりすることができるため、設計の自由度が高い。さらに、本発明に係る焼結性接合材料を用いて形成した焼結銅層813は、厚さが小さいことから、電気信号の遅延を抑制した接合が可能である。
【実施例6】
【0130】
(積層チップへの適用)
本実施例では、積層チップへの適用について説明する。
【0131】
図14は、本発明を適用した積層チップの一例を示す断面図である。
【0132】
半導体素子901には、絶縁層902を介して貫通電極903が形成されている。貫通電極903の一方の面には銅メタライズ層904が設けられており、これに本発明に係る焼結性接合材料を塗布・乾燥した後、水素中にて300℃の焼結熱処理を施すことにより焼結銅からなる接合層905が形成されている。この接合層905を介して複数の半導体素子が積層されている。
【0133】
貫通電極903の素材が銅ではない場合(例えば、アルミニウムの場合)、貫通電極903の表面にニッケルめっき層を形成し、その上に銅めっき層を形成することにより、本発明に係る焼結性接合材料を用いた接合が可能である。半導体素子906は、そのような二重めっきの構成によって貫通電極903の両面に銅メタライズ層907を形成したものである。銅メタライズ層907の表面に本発明に係る焼結性接合材料を用いた接合層905を形成し、この接合層905を介して積層チップとインターポーザ908の電極909とを電気的に接続している。なお、インターポーザ908との接合は、ろう付けや圧着であっても構わない。また、インターポーザ908に設けられたバンプ910と回路基板との接合に関しても、本発明を適用してもよいし、従前の接合方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0134】
11:回路配線、12:絶縁基板、13:メタライズ層、14:配線基板、100:接合層、101:金属支持板、111:ピンフィン冷却ユニット、201:ピンフィン、301:半導体素子、302、304:配線層、303:セラミックス絶縁基板、305:接合層、306:エミッタ電極、307: コレクタ電極、309:はんだ層、310:支持部材、311:ケース、312:外部端子、313:ボンディングワイヤ、314:封止材、401:接続用端子、801、806、811:銅めっき層、802:メタライズ層、803:コンデンサ、804:LSIチップ、805:バンプ、807:コア、808:スルーホール、809:表面配線、810:プリプレグ、812:貫通電極、813、814:焼結銅層、901、906:半導体素子、902:絶縁層、903:貫通電極、904、907:銅メタライズ層、905:接合層、908:インターポーザ、909:電極、910:バンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子(例えば、粒径100nm以下)は、粒子の体積に比して表面積が大きいために化学的活性が高く、非常に低い焼結温度を有する。金属ナノ粒子は、この性質から、新しい機能性材料として注目を浴びている。例えば、金属ナノ粒子を含有するペーストは、電子機器の内部に設ける電子部材同士の接合や回路配線の形成に用いられる材料として期待されている。
【0003】
また、金属ナノ粒子の粒径が更に小さく(例えば、粒径35nm以下)になると、異種金属との低温接合性も非常に向上することが最近になって明らかになりつつある。このような電子機器の用途にこの金属ナノ粒子を用いるためには、一般に、高い熱伝導率・導電性・耐熱性(耐酸化性)を有する金属ナノ粒子が好ましい。そのため、金や銀などの貴金属ナノ粒子が用いられることが多く、中でも、比較的安価な銀がしばしば用いられる。
【0004】
しかしながら、銀は、イオンマイグレーションが発生しやすく、短絡の要因になりやすいという弱点がある。
【0005】
イオンマイグレーションの抑制に関しては、銅ナノ粒子を用いることが有効である。また、銅は、銀と同程度の熱伝導率を有し(銀:430W/m・K、銅:400W/m・K)、かつ、コスト面では銀よりもはるかに有利である。
【0006】
銅ナノ粒子の製造方法としては、例えば、非特許文献1において、CTAB(Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide)を分散剤として用いて粒径が10nm以下の銅ナノ粒子を製造する方法が報告されている。ただし、焼結熱処理前に過剰なCTABを除去するために銅ナノ粒子を洗浄する必要がある。
【0007】
しかしながら、銅ナノ粒子を洗浄すると、金属銅が酸化して酸化第一銅に変化してしまうという問題がある。金属銅が酸化第一銅に一旦酸化してしまうと、大気中での焼結が困難になる上に、水素などの還元雰囲気中でも400℃以上の加熱が必要となることから、低温焼結自体が困難になる。
【0008】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、銅粒子の表面を、メルカプト基、アミノ基、アミド基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むシリコーンオイルで被覆することにより耐酸化性を向上させた銅粉末、及びこの銅粉末を配合してなる銅ペーストまたは銅塗料が開示されている。
【0009】
特許文献3には、平均粒径0.3〜20μmの銅粉と平均粒径1〜50nmの微細銅粉の混合物と、溶剤と、銅粉表面に形成された酸化物を溶解する添加剤とを含む導電性組成物であって、大気雰囲気中における低温焼成を可能とし、銅粒子の酸化を防止するものが開示されている。
【0010】
特許文献4には、金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子と分散剤とで構成されるとともに、金属ナノ粒子が、数平均粒子径50nm以下であり、かつ粒子径100〜200nmの金属ナノ粒子を含有する無機素材用接合剤が開示されている。さらに、特許文献4には、金属ナノ粒子が銅のナノ粒子であってもよいこと、金属粉末の比表面積は、0.1〜5m2/gであることが好ましいこと、及び、分散剤の割合は、固形分換算で、金属ナノ粒子100質量部に対して、0.01〜15質量部程度の範囲から選択できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−60779号公報
【特許文献2】特開2005−60778号公報
【特許文献3】特開2007−258123号公報
【特許文献4】特開2011−094223号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Szu-Han Wu and Dong-Hwang Chen, Journal of Colloid and Interface Science 273 (2004) pp. 165-169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1や特許文献2に記載の銅粉末は、耐酸化性という点において優れていると思われるが、電子部材同士の接合用途のような狭小空間においては、焼結熱処理時にシリコーンオイルの残渣が接合箇所に残りやすく、接合強度や熱伝導性を低下させることが危惧される。
【0014】
また、特許文献3に記載の導電性組成物は、作製した銅微粉末の表面にボールミル等を用いて溶剤及び添加剤を吸着させるものであるが、粒径が100nm以下のナノ粒子に対する均一なコーティングが難しく、ナノ粒子の酸化を抑制することが困難であることが危惧される。
【0015】
特許文献4に記載の金属ナノ粒子に関しては、これを構成する金属の一種である銅の耐酸化性の観点から粒径及び比表面積を選択したものではないため、場合によっては、酸化防止剤を添加する必要がある。
【0016】
本発明は、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料の耐酸化性と接合性とを両立するとともに、当該焼結性接合材料を用いて作製した半導体装置等の接合部におけるイオンマイグレーションを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストである焼結性接合材料において、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、銅ナノ粒子を用いた焼結性接合材料の耐酸化性と接合性とを両立することができ、当該焼結性接合材料を用いて作製した半導体装置等の接合部におけるイオンマイグレーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の銅ナノ粒子の製造工程を示すフローチャートである。
【図2A】実施例の銅ナノ粒子のTEM画像である。
【図2B】実施例の銅ナノ粒子の凝集状態を示す模式図である。
【図2C】実施例の銅ナノ粒子の融合状態を示す模式図である。
【図3A】実施例(試料1)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。
【図3B】実施例(試料2)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。
【図4】粒径と比表面積との関係を示すグラフである。
【図5】実施例の銅ナノ粒子の比表面積と接合強度との関係を示すグラフである。
【図6】半導体パワーモジュールに用いる配線基板及びピンフィン冷却ユニットの一例を示す模式断面図である。
【図7A】絶縁型半導体装置を示す平面図である。
【図7B】図7AのA−A断面図である。
【図8】図7Aの絶縁型半導体装置を示す斜視図である。
【図9】図8の半導体素子の設置部分を示す拡大断面図である。
【図10A】部品内蔵型の多層配線基板に用いるコンデンサを示す断面図である。
【図10B】部品内蔵型の多層配線基板に用いるLSIチップを示す断面図である。
【図10C】部品内蔵型の多層配線基板のコア層部分を示す断面図である。
【図11】部品内蔵型の多層配線基板の一例を示す断面図である。
【図12】部品内蔵型の多層配線基板の他の例を示す断面図である。
【図13】部品内蔵型の多層配線基板の他の例を示す断面図である。
【図14】積層チップの一例を示す断面図である。
【図15】実施例の接合層のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、電子部材同士の接合や回路配線の形成に用いられる焼結性接合材料に関し、特に、銅ナノ粒子を主材とする高熱伝導性の焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法に関するものである。なお、本明細書においては、半導体素子や回路基板等を「電子部材」と総称する。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る焼結性接合材料及びその製造方法及び当該焼結性接合材料を用いた電子部材の接合方法並びに当該焼結性接合材料を用いた半導体装置について説明する。
【0022】
前記焼結性接合材料は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含む。
【0023】
前記焼結性接合材料においては、銅ナノ粒子の比表面積は、3〜10m2/gであることが望ましい。銅ナノ粒子は、液又はペーストの中に分散していることが望ましい。
【0024】
前記焼結性接合材料においては、液は、水、又は水とアルコール系溶媒との混合溶液であることが望ましい。
【0025】
前記焼結性接合材料においては、銅ナノ粒子の含有量は80質量%以上であることが望ましい。
【0026】
前記焼結性接合材料は、さらに、分散安定剤を含むことが望ましい。
【0027】
前記焼結性接合材料においては、分散安定剤の含有量は、銅ナノ粒子を構成する銅100質量部に対して30質量部以下であることが望ましい。
【0028】
前記焼結性接合材料においては、分散安定剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールであることが望ましい。
【0029】
前記焼結性接合材料の製造方法は、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液であって、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子の比表面積は3〜10m2/gであり、銅ナノ粒子は、液の中に分散している焼結性接合材料の製造方法であって、液の中に銅化合物を溶解させて銅イオンを生成する工程の後に、銅イオンを含有する液の中に不活性ガスを流しながらアルカリ性溶液を加えて酸化第二銅コロイドを生成し、その後、酸化第二銅コロイドを含有する液の中に分散安定剤を混合した状態で還元剤を加えて銅ナノ粒子を生成する工程を含む。
【0030】
前記焼結性接合材料の製造方法においては、銅化合物は、硝酸銅水和物、銅酸化物及びカルボン酸銅塩のうちの少なくとも一種であることが望ましい。
【0031】
前記焼結性接合材料の製造方法においては、銅ナノ粒子を含む液を乾燥した後、銅ナノ粒子を分散媒に分散してペースト状とする工程を含むことが望ましい。
【0032】
前記電子部材の接合方法は、複数個の電子部材を接合する際、前記焼結性接合材料を接合部位の片面または両面に塗布する工程の後に、還元雰囲気中で100〜500℃の焼結熱処理を施す工程を含む。
【0033】
前記電子部材の接合方法においては、還元雰囲気は、低温で焼結を可能にし、かつ当該低温下であったとしても還元反応を十分に進ませ、接合強度を十分に得られるものが好ましい。より具体的には、200℃以下で還元反応が進みやすいものが好ましい。更に具体的には、水素、ギ酸、酢酸又はエタノールの雰囲気であることが、上述した理由から好ましい。
【0034】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材を接合する方向に加圧しながら焼結熱処理を施すことが望ましい。
【0035】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材は、半導体装置のチップ及び配線基板であることが望ましい。
【0036】
前記電子部材の接合方法においては、電子部材は、冷却ユニットの冷却フィン及び金属支持板であることが望ましい。
【0037】
前記半導体装置は、銅又は銅合金で構成される接続用端子と、電極を有する半導体素子と、を備えた半導体装置であって、電極の表面は、ニッケルメッキ層で覆われ、接続用端子と電極との間には、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む焼結性接合材料で構成された接合層を有し、焼結性接合材料は、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、銅ナノ粒子は、一次粒子と、一次粒子の融合体である二次粒子とを含む。
【0038】
前記半導体装置においては、接合層は、多孔質構造を有し、かつ、接合強度が25MPa以上であることが望ましい。
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら焼結性接合材料の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0040】
(焼結性接合材料の製造方法)
図1は、銅ナノ粒子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
はじめに、酸化第二銅ナノ粒子(CuOナノ粒子)を製造するための溶媒として、撹拌しながら不活性ガスバブリングを30分間以上行った蒸留水を準備する。不活性ガスバブリングを行う理由は、溶媒中の溶存酸素を取り除き、反応の際に酸化第二銅以外の不純物が生成することを防止するためである。不活性ガスとしては、溶液中の銅イオンが酸化第二銅以外へ反応することを抑制するものであれば何でもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。本図に示す例においては、窒素ガスを用いた。
【0042】
なお、不活性ガスバブリングは、酸化第二銅の生成反応が完了するまで継続することが望ましい。また、バブリングの流量は、特に1mL/min〜1000mL/minの範囲が好適である。1000mL/minよりも多すぎると、反応系が不均一になり反応が均一に進まない。一方、1mL/minよりも小さいと十分に溶存酸素を除去できないためである。
【0043】
次に、5℃〜90℃に温度制御した上記の溶媒を攪拌しながら、原料となる銅化合物の粉末を溶解して銅イオンを生成させる。原料となる銅化合物としては、溶解の際、アニオンに起因する残留物を少なくできる化合物が好ましく、例えば、硝酸銅三水和物、塩化銅、水酸化銅、カルボン酸銅塩である酢酸銅などが好ましく用いられる。中でも、硝酸銅三水和物は、酸化第二銅が生成する際、不純物生成量が少なくなることから特に好ましい。さらに、硝酸銅三水和物を用いた場合、球形状のCuOが形成されやすい。針状のCuOと比較して、球形状のCuOの場合、その後の還元反応が進みやすいため、硝酸銅三水和物を用いた場合は、より好適な焼結性接合材料を得ることができる。
【0044】
銅化合物溶液の濃度としては、銅濃度が0.001〜1mol/Lとなるようにすることが好ましく、0.010mol/Lが特に好ましい。0.001mol/L未満の濃度では、希薄過ぎるため酸化第二銅の収率が低下することから好ましくない。また、1mol/L超の濃度では、均一な反応が困難となり安定した酸化第二銅ナノ粒子が生成されないため好ましくない。
【0045】
溶媒温度を5℃〜90℃とした理由は次のとおりである。
【0046】
本製造方法は、水を主体とする溶媒を用いることから、溶媒温度(反応温度)が90℃を超えると、所望のサイズや形状を有するナノ粒子を得ることができなくなる。また、溶媒温度(反応温度)が5℃未満では、目的とする酸化第二銅が生成されにくく、収率が低下することから好ましくない。更に好適な条件としては、溶媒温度(反応温度)が20℃〜90℃となる範囲である。溶媒温度(反応温度)は5℃〜90℃の範囲では、所望のサイズや形状を有するナノ粒子を得ることができるが、20℃以下では不純物が残りやすくなるためである。
【0047】
次に、アルカリ性溶液を加えることにより、酸化第二銅ナノ粒子のコロイドを生成する。添加するアルカリ性溶液は、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)などが好適に用いられる。中でも、NaOHとKOHが特に好ましい。NaOHやKOHは、不純物の含有量が少なく、反応の際に副生成物や不純物を生成しにくいからである。
【0048】
添加するアルカリ性溶液の量は、銅イオンのモル濃度[Cu2+](mol/L)に対するアルカリイオンのモル濃度[OH-](mol/L)の比([OH-]/[Cu2+])が1.5以上2.1未満となるようにすることが好ましい。「[OH-]/[Cu2+]」が2.1以上になると生成される酸化第二銅の二次粒子の形状が劣化し、その後のヒドラジンで還元した際の銅ナノ粒子の融合体が形成されにくくなり、接合強度の劣化を招く。また、「[OH-]/[Cu2+]」が1.5より小さくとなると酸化第二銅自体が生成されにくくなるため好ましくない。ここで、「1.5以上2.1未満」のように記載した場合、本明細書においては、「1.5以上かつ2.1未満」と同義であり、1.5から2.1までの範囲のうち2.1を除いた範囲を表すものとする。
【0049】
なお、反応時間に関しては特段の限定はないが、1分〜336時間(14日間)の範囲で行うことが好ましい。1分以下の場合、反応が終了しないため収率が低下する。一方、反応は遅くとも336時間以内に完了するため、それよりも長い時間は無駄になる。
【0050】
以上の工程により、CuOナノ粒子コロイド溶液が得られる。
【0051】
次に、上記の工程により作製したCuOナノ粒子を銅ナノ粒子(Cuナノ粒子)に還元する。
【0052】
この工程は、分散安定剤の存在下において還元剤であるヒドラジンを加えることにより行う。
【0053】
ここで、還元剤としては、溶液中の銅イオンを還元可能な物質であれば何でもよく、上記のヒドラジンのほか、水素化ホウ素塩、次亜リン酸塩などが挙げられる。ヒドラジンを用いることが好ましい理由は、銅化合物との反応した後に残渣が生じないこと、比較的安全性が高いこと、及び、取り扱いが容易であることが挙げられる。
【0054】
分散安定剤(分散剤)としては、焼結接合の際に影響が少ないもの(残渣の少ないもの)、具体的には、分解温度が300℃以下の分散剤が好ましい。分散剤の分解温度が300℃よりも高いものを用いると、接合層により残渣が多くできてしまい、接合強度の低下に繋がってしまうためである。より具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム(AOT)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0055】
分散剤は、ナノ粒子の分散性を向上させる程度に混ぜればよく、銅100質量部に対して分散剤30質量部以下が好適である。それよりも多く添加すると、接合層中に残渣が残りやすくなり、接合強度を低下させる要因となる。なお、分散剤の下限値は、銅100質量部に対して1質量部である。分散剤の量がそれよりも少なくなると、ナノ粒子が凝集してしまい、十分な接合強度が得られなくなってしまう。
【0056】
なお、ここでの反応時間も特段の限定はないが、1分〜336時間(14日間)の範囲で行うことが好ましい。1分以下になると反応が終了しないため収率が低下する。一方、反応は、遅くとも336時間以内に完了するため、それよりも長い時間は無駄になる。また、より速くかつ十分に反応を進ませるためには、温度条件にもよるが、12時間以上、更に好ましくは24時間以上が良い。
【0057】
以上の工程により、Cuナノ粒子コロイド溶液が得られる。
【0058】
以上のように、本製造方法においては、水を主成分とする溶媒を用いるが、極性有機溶媒を混合することにより、反応速度及び一次粒子径の制御が可能である。極性有機溶媒としては、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールや2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等)や、アルデヒド類(例えば、アセトアルデヒド等)や、ポリオール類(例えば、グリコール等)を好適に利用できる。水と極性有機溶媒との混合比は任意とすることができる。また、極性有機溶媒に加えた上で非極性有機溶媒(例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、ベンゼン等)を添加してもよい。
【0059】
上記のCuナノ粒子コロイド溶液は、焼結性接合材料としてそのまま用いてもよいが、未反応物、反応の際に生成する副生成物、アニオンなどが残留しているため、反応後に遠心洗浄を1〜10回行うことが好ましい。これにより、未反応物、反応の際に生成する副生成物、アニオンなどを取り除くことができる。洗浄液としては、上記の水若しくは極性有機溶媒又はこれらの混合物を好ましく用いることができる。
【0060】
上述のように遠心洗浄して得られた銅ナノ粒子を乾燥した後、適当な液体(分散媒)に分散してペースト状の焼結性接合材料を調合することは好ましい。このとき、焼結性接合材料中の銅ナノ粒子の含有量は、接合強度の観点から、80質量%以上とすることが好ましい。80質量%未満の場合、ペースト状にした場合に粘度が低くなり、供給性が低下するためである。また、接合強度の面からも十分な接合強度を確保することが難しくなるためである。さらに、接合強度をより向上させるという観点から、銅ナノ粒子の含有量は、90質量%以上とすることがより好ましい。分散媒としては、上記の水若しくは極性有機溶媒又はこれらの混合物(混合溶媒)を好ましく用いることができる。また、極性有機溶媒又は水と極性有機溶媒との混合物(混合溶媒)に上記の非極性有機溶媒を添加してもよい。
【0061】
なお、焼結性接合材料に含まれる分散安定剤の特定は、水、アルコールなどに焼結性接合材料を分散させ、これをGC/MSにより分析する手法が挙げられる。GC/MSを用いることにより、分散安定剤に含まれる有機物及びこれに由来する構造を有する物質が検出されるからである。
【0062】
(焼結性接合材料の性状)
本発明においては、焼結性接合材料は、粒径1〜35nmの一次粒子と、この一次粒子の融合体であって粒径が35nmより大きく1000nm以下の二次粒子とを含み、一次粒子及び二次粒子を合わせた粒子全体の比表面積が3〜10m2/gの範囲にあることが必須である。ここで、当該粒子全体の比表面積を「銅ナノ粒子の比表面積」ということにする。
【0063】
焼結性接合材料が粒径1〜35nmの一次粒子のみで構成されている場合、比表面積が大きくなり、粒子全体が酸化しやすくなってしまう。
【0064】
これに対して、一次粒子より比表面積の小さい、粒径が35nmより大きく1000nm以下の粒子を混在させることにより、一次粒子及び二次粒子を合わせた粒子全体の比表面積を小さくした場合、粒子全体としての酸化を抑制することができる。ここで、粒径を35nmより大きく1000nmとしたのは、粒径が35nm未満になると、表面の活性度が高くなり、容易に酸化しやすくなるためである。また、粒径が1000nmより大きくなると、低温における粒子同士の焼結及び接合が困難となるからである。
【0065】
本発明の焼結性接合材料において、粒径が35nmより大きく1000nm未満の粒子は、粒径1〜35nmの一次粒子が凝集し、融合したものである。これは、粒径1〜35nmの粒子が凝集し、融合することにより、粒子全体の比表面積が低下する効果が得られるからである。
【0066】
接合の対象が本発明の焼結性接合材料を構成する銅ナノ粒子と同種の銅である場合には、粒径1〜35nmの粒子が存在しなくても低温領域での接合が可能である。一方、異種金属(例えば、Au、Ag又はNi)との低温接合を行う場合には、粒径1〜35nmの粒子が必要である。粒径が1nm未満になると、表面の化学活性度が高くなり、室温においても容易に凝集するため、粒子全体の比表面積の制御が困難になる。また、粒径が粒径35nmより大きくなると、異種金属との低温での接合が困難となる。なお、焼結性接合材料を構成する粒子の形状は、真球体状である必要はなく、楕円球体状や多面体状であってもよい。
【0067】
粒径の更に好ましい範囲は、1〜20nmである。粒径の特に好ましい範囲は、1〜10nmである。これは、粒径が小さい方が、異種金属との所望の接合強度を達成する温度を更に低くすることができるからである。
【0068】
以上をまとめると、粒径1〜35nmの一次粒子は、異種金属との低温接合を達成するために必要である。一方、粒径が35nmより大きく1000nm未満の粒子は、耐酸化性を向上するために必要である。
【0069】
粒径35nm以下の銅ナノ粒子、粒径35〜1000nm未満の粒子からなる粒子融合体の観察は、電子顕微鏡(例えば、透過型電子顕微鏡)を用いて行うことができる。粒度分布は、電子顕微鏡により観察されたものから実測値を得ることが可能である。また、粒度分布は、粒度分布計等を用いることでも測定可能である。なお、粒度分布については、後述の実施例において実測データを用いて説明する。
【0070】
図2Aは、焼結性接合材料に含まれる銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)によって観察した結果を示す画像である。
【0071】
本図から、焼結性接合材料には、一次粒子である(銅ナノ粒子単体)、及び単一粒子21が結合して形成された融合粒子22(銅ナノ粒子融合体)が含まれることがわかる。
【0072】
図2Bは、銅ナノ粒子の凝集状態を示したものである。また、図2Cは、銅ナノ粒子の融合状態を示したものである。
【0073】
図2Bにおいては、単一粒子151及び単一粒子152、153の凝集体154(二次粒子)が示してある。すなわち、図2Bは、反応によって生成した銅ナノ粒子が凝集した状態であり、凝集した銅ナノ粒子の単一粒子151が融合する前の状態を示したものである。
【0074】
また、図2Cにおいては、単一粒子155(一次粒子)及び単一粒子の融合体156が示してある。すなわち、図2Cは、図2Bに示すように凝集した銅ナノ粒子が融合した後の状態を示したものである。なお、図2Cに示すとおり、融合体は、単一粒子155同士が互いに金属結合したものであり、凝集体とは異なるものである。また、融合体156は、二次粒子の一種である。
【0075】
図4は、粒径と比表面積との関係を示すグラフである。横軸に粒径をとり、縦軸に比表面積をとっている。本図においては、粒径は一定であって分布を持たない場合の理論値を示している。
【0076】
本図から、粒径が小さくなるに従って比表面積が急激に大きくなることがわかる。例えば、粒径100nmの場合、比表面積は6.7m2/gであり、粒径50nmの場合、比表面積は13.5m2/gであり、粒径35nmの場合、比表面積は19.6m2/gであり、粒径20nmの場合、比表面積は33.6m2/gである。
【0077】
一般に、物質の表面自由エネルギーは、単位面積当たりのエネルギー量であるから、粒径が小さくなり、比表面積が増加すると、単位体積当たりの表面自由エネルギーが増加し、表面の活性度が高くなる。これにより、銅ナノ粒子は異種金属とも低温接合しやすくなる。言い換えると、粒径が小さくなり、比表面積が増加するほど、より低い温度での接合が可能となる。
【0078】
図2B及び図2Cに示すように、生成した銅ナノ粒子は、凝集及び融合の過程を経て完成する。この過程において、図4に示すように、第一段階として凝集に伴う二次粒子の生成、すなわち、見かけの粒径の拡大が進行する。その後、第二段階として二次粒子を構成する一次粒子の融合が進行し、比表面積が減少する。図4においては、この過程における粒径の変化を●から△までの変化として示し、比表面積の変化を△から○までの変化として示している。
【0079】
(焼結熱処理)
焼結性接合材料に対する焼結熱処理は、還元雰囲気中において100〜500℃の温度で行うことが好ましい。また、還元雰囲気としては特段に限定されるものではないが、例えば、水素雰囲気、ギ酸雰囲気、エタノール雰囲気などが好適である。
【0080】
以下、実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0081】
(銅ナノ粒子の作製)
銅の原料化合物としては、Cu(NO3)2・3H2O粉末を用いた。溶媒としては、水を用いた。酸化第二銅ナノ粒子の析出剤としては、NaOHを用いた。容積1000mLのビーカーにて30分間の窒素バブリングを行った蒸留水784.8mLに対し、Cu(NO3)2・3H2O粉末を1.932g加え、20℃及び80℃のウォーターバス中で均一に溶解させた。その後、1.0MのNaOH水溶液を15.2mL滴下することにより、酸化第二銅ナノ粒子コロイド分散液を作製した。
【0082】
次に、上記の酸化第二銅ナノ粒子コロイド分散液を室温で24時間攪拌した後、CTAB 1.82gを水190.3mLに溶かし、これにヒドラジンを9.7mL滴下することにより銅ナノ粒子コロイド分散液を作製した。
【0083】
得られた銅ナノ粒子の遠心分離(遠心洗浄機:株式会社トミー精工、Suprema21)と洗浄作業とを3回ずつ行った。その後、銅ナノ粒子を取り出して乾燥し、0.5gの銅ナノ粒子(試料1〜2)を得た。
【0084】
表1は、試料1〜2及び後述の比較例1〜3をまとめて示したものである。
【0085】
本表に示す「反応温度」は、酸化銅ナノ粒子を生成する際の温度である。
【0086】
本表に示すように、試料1〜2の場合、比表面積は3〜10m2/gであり、銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つあることがわかった。また、接合強度は、比較例1〜3よりも高く、40MPa以上であった。
【0087】
【表1】

【0088】
(銅ナノ粒子の性状)
作製した銅ナノ粒子(試料1〜2)に対し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2000FX II)を用いて得た画像から粒子サイズを測定した。
【0089】
図3Aは、実施例(試料1)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。図3Bは、実施例(試料2)の銅ナノ粒子の粒径分布(個数分布)を示すグラフである。ここで、「個数分布」は、「個数基準の粒径分布」ともいう。また、粒径の頻度を測定する際に対象とした粒子の総数は、約50個であり、それぞれの頻度を測定する粒径区間の幅は、1nmである。各粒子の粒径は、当該画像における各粒子の水平方向の最大寸法である。
【0090】
図3Aから、試料1の場合、頻度が極大となる粒径は2つあり、30nm及び61nmであることがわかる。
【0091】
また、図3Bから、試料2の場合、頻度が極大となる粒径は3つあり、30nm、40nm及び62nmであることがわかる。
【0092】
ここで、頻度が極大となる粒径を「粒径ピーク」と呼ぶことにする。
【0093】
また、X線回折装置(株式会社リガク製、RU200B)を用いて粒子の酸化状態を確認した。さらに、BET式自動比表面測定装置(株式会社マウンテック、Mascsorb model HM-1201)を用いて粒子の比表面積を測定した。
【0094】
試料1〜2及び比較例1〜3における1次粒子の性状を表1に示す。
【0095】
比較例1の銅ナノ粒子は、非特許文献1に記載の方法で作製した。比較例2の銅ナノ粒子は、Aldrich社から購入したものである。比較例3の銅粒子は、和光純薬工業株式会社から購入したものである。
【0096】
(銅ナノ粒子の比表面積に対する酸化物の生成状態)
表1に示すように、試料1〜2(反応温度20℃及び80℃で作製した粒子)においては、銅ナノ粒子のXRD回折パターンにおいて酸化銅のピークが現れなかった。一方、比較例1及び2の粒子においては、酸化銅のピークが観測された。これは、試料1〜2の粒子の比表面積は4.1〜6.5m2/gと小さく、比較例1及び2においては比表面積が11m2/g、13.45m2/gと大きかったためである。
【0097】
以上より、比表面積が11m2/g以上となると銅ナノ粒子の酸化が進行しやすくなることが判った。これは、比表面積が大きくなることで表面活性度が高くなるためと考えられる。
【実施例2】
【0098】
(焼結性接合材料の接合強度試験)
電子部材同士の接合を模擬して接合強度試験を実施した。試験方法は次のとおりである。
【0099】
測定に用いた銅試験片としては、直径10mm、厚さ5mmの下側試験片と、直径5mm、厚さ2mmの上側試験片とを用いた。下側試験片の上面に焼結性接合材料を塗布し、80℃で1時間減圧乾燥させた後、乾燥した焼結性接合材料の上に上側試験片を設置し、面圧1.2MPaの荷重を同時に加えて水素中400℃の温度で5分間の焼結熱処理を行い、接合試験片とした。
【0100】
剪断試験機(西進商事株式会社製、ボンドテスターSS-100KP、最大荷重100kg)を用いて、接合試験片に剪断応力を負荷し(剪断速度30mm/min)、破断時の最大荷重を測定した。最大荷重を接合面積で除して接合強度を求めた。
【0101】
表1に示すように、耐酸化性を抑制できた試料1〜2を用いた場合、40MPa以上の非常に高い接合強度が得られた。これは、試料1〜2においては銅ナノ粒子の酸化が抑制されるためと考えられる。なお、接合層は、図15のSEM画像に示すようなポーラス構造(多孔質構造)を有している。
【0102】
(比表面積と接合強度との関係)
試料1〜2と比較例1〜3における接合強度の結果を表1に併記し、比表面積と接合強度との関係を図5に示す。
【0103】
図5から、比表面積5〜10m2/gの範囲の接合強度が非常に高くなることがわかる。
【0104】
(異種金属に対する接合性)
Niに対する接合性を評価することで35nm以下の銅ナノ粒子を含有することの有用性を確認した。試験には直径10mm、厚さ5mmの下側試験片と、直径5mm、厚さ2mmの上側試験片の銅試験片に1μmのNiめっきが施されたものを使用した。接合条件は(焼結性接合材料の接合強度試験)の項で記載した方法と同様である。表1にこの実験結果も併記した。表1に示すように、35nm以下の粒子を含有している試料1〜2を用いた場合、25MPa以上の非常に高い接合強度が得られた。一方で比較例1~3では低強度であった。比較例1では粒子の酸化が抑制できていなかったため、比較例2では粒子が50nmと若干大きかったため、比較例3では粒子が1μmと非常に大きかったためと考えられる。以上のように異種金属との接合では粒径35nmの粒子が接合に重要であることが示された。これは異種金属との接合を達成するには表面エネルギーの大きな粒子でなければならないからである。
【実施例3】
【0105】
(冷却ユニットへの適用)
半導体パワーモジュールのピンフィン冷却ユニットのピン接続に本発明の焼結性接合材料を適用する例について説明する。
【0106】
半導体パワーモジュールは、近年、発熱量が増加傾向にあるため、動作時に発生する熱を該モジュールの外へ効率良く放散させる技術がますます重要になっている。
【0107】
図6は、半導体パワーモジュールに用いる配線基板及びピンフィン冷却ユニットの一例を示す模式断面図である。
【0108】
本図に示すように、配線基板14は、半導体チップと接続される回路配線11、モジュール内部で半導体チップと回路配線11とを電気的に絶縁するための絶縁基板12、及び絶縁基板12とピンフィン冷却ユニット111とを金属支持板101にはんだ付けするためのメタライズ層13を積層した構造を有する。また、ピンフィン冷却ユニット111は、金属支持板101に多数のピンフィン201が接合層100を介して接合された構造をしている。半導体パワーモジュールで発生した熱は、配線基板14の厚さ方向に伝達され、最終的な放熱は、金属支持板101に取り付けられたピンフィン201を介してなされる。
【0109】
ピンフィン冷却ユニット111の金属支持板101やピンフィン201は、通常、銅で構成されている。従来、金属支持板101とピンフィン201との接合は、銀ろう材を用いて800℃以上の温度で行われていた。そのため、金属支持板101やピンフィン201が軟化してしまい、機械的強度が低下して変形し易いという問題があった。
【0110】
そこで、実施例1の試料1を水に分散させた焼結性接合材料を用いて、金属支持板101とピンフィン201との接合を行った。焼結熱処理は、1.2MPaの加圧をしながら水素中400℃の温度で行った。
【0111】
その結果、銅の軟化温度よりも低い温度での接合が可能となり、銅が軟化してしまう問題を解決することができた。
【実施例4】
【0112】
(半導体装置への適用)
図7Aは、本発明を適用した絶縁型半導体装置を示す平面図であり、図7Bは、図7AのA−A断面図である。図8は、図7Aの絶縁型半導体装置を示す斜視図である。図9は、図8の半導体素子の設置部分を示す拡大断面図である。
【0113】
図7A〜9を参照しながら説明する。
【0114】
セラミックス絶縁基板303と配線層302とを含む配線基板は、はんだ層309を介して支持部材310に接合されている。配線層302は、銅配線にニッケルめっきが施されたものである。
【0115】
図9に示すように、半導体素子301のコレクタ電極307とセラミックス絶縁基板303上の配線層302とは、接合層305を介して接合されている。接合層305は、実施例1の20℃で作製した焼結性接合材料を用いて形成されたものであり、接合後は純銅層となっている。また、半導体素子301のエミッタ電極306と接続用端子401との間、及び、接続用端子401とセラミックス絶縁基板303上の配線層304との間も、接合層305によって接合されている。
【0116】
接合層305は、厚さ80μmである。コレクタ電極307の表面及びエミッタ電極306の表面には、ニッケルメッキが施されている。すなわち、コレクタ電極307の表面及びエミッタ電極306の表面は、ニッケルメッキ層で覆われている。また、接続用端子401は、Cu又はCu合金で構成されている。
【0117】
図8に示す半導体装置は、図7Bに示すように、外部端子312を有するケース311に収納され、封止材314で覆われている。配線層302と外部端子312とは、ボンディングワイヤ313によって接続されている。
【0118】
接合層305の形成においては、銅ナノ粒子を90質量%含み、かつ、水を10質量%含む焼結性接合材料を接合する部材の接合面の片面または両面に塗布し、80℃で1時間乾燥した後、1.0MPaの圧力を加えながら水素中350℃で1分間の焼結熱処理を施した。接合の際、超音波振動を加えてもよい。なお、接合層305の形成は、それぞれ個別に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0119】
なお、接合層305は、図15に示すようなポーラス構造を有している。
【実施例5】
【0120】
(多層配線基板への適用)
本実施例では、部品内蔵型の多層配線基板への適用について説明する。
【0121】
図10Aは、部品内蔵型の多層配線基板の内蔵されるコンデンサの断面図である。
【0122】
コンデンサ803は、電極としてメタライズ層802が形成され、メタライズ層802の外層に銅めっき層801が形成されている。
【0123】
図10Bは、部品内蔵型の多層配線基板の内蔵されるLSIチップの断面図である。
【0124】
LSIチップ804は、電極上にバンプ805が設けられており、バンプ805の外層に銅めっき層806が形成されている。
【0125】
図10Cは、部品内蔵型の多層配線基板のコア層部分の断面図である。
【0126】
コア807の厚さ方向の導通は、スルーホール808の表面配線809によりなされる。プリプレグ810の厚さ方向の導通は、表面に銅めっき層811を有するバンプ状の貫通電極812によりなされる。表面配線809の表面には、銅めっき層811を設けてもよい。
【0127】
図11は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の一例を示す断面図である。図12は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の他の一例を示す断面図である。図13は、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板の更に他の一例を示す断面図である。
【0128】
これらの図に示すコンデンサ803、LSIチップ804、貫通電極812及び表面配線809は、それぞれの接合部位である銅めっき層801、806、811を有する。銅めっき層801、806、811の表面には、本発明に係る焼結性接合材料を塗布し、乾燥した後、ギ酸雰囲気中にて焼結熱処理を施すことにより、焼結銅層813、814が形成される。それぞれの接合は、焼結銅層813、814を介してなされる。なお、接合直接関与した部位以外の焼結銅層813、814の表面は、プリプレグ810で覆われている。
【0129】
また、本発明を適用した部品内蔵型多層配線基板は、図12に示すように電子部品(例えば、コンデンサ803)を垂直方向に接続したり、図13に示すように水平方向に接続したりすることにより、積層配線基板の投影面積を最小にしたり、厚さを最小にしたりすることができるため、設計の自由度が高い。さらに、本発明に係る焼結性接合材料を用いて形成した焼結銅層813は、厚さが小さいことから、電気信号の遅延を抑制した接合が可能である。
【実施例6】
【0130】
(積層チップへの適用)
本実施例では、積層チップへの適用について説明する。
【0131】
図14は、本発明を適用した積層チップの一例を示す断面図である。
【0132】
半導体素子901には、絶縁層902を介して貫通電極903が形成されている。貫通電極903の一方の面には銅メタライズ層904が設けられており、これに本発明に係る焼結性接合材料を塗布・乾燥した後、水素中にて300℃の焼結熱処理を施すことにより焼結銅からなる接合層905が形成されている。この接合層905を介して複数の半導体素子が積層されている。
【0133】
貫通電極903の素材が銅ではない場合(例えば、アルミニウムの場合)、貫通電極903の表面にニッケルめっき層を形成し、その上に銅めっき層を形成することにより、本発明に係る焼結性接合材料を用いた接合が可能である。半導体素子906は、そのような二重めっきの構成によって貫通電極903の両面に銅メタライズ層907を形成したものである。銅メタライズ層907の表面に本発明に係る焼結性接合材料を用いた接合層905を形成し、この接合層905を介して積層チップとインターポーザ908の電極909とを電気的に接続している。なお、インターポーザ908との接合は、ろう付けや圧着であっても構わない。また、インターポーザ908に設けられたバンプ910と回路基板との接合に関しても、本発明を適用してもよいし、従前の接合方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0134】
11:回路配線、12:絶縁基板、13:メタライズ層、14:配線基板、100:接合層、101:金属支持板、111:ピンフィン冷却ユニット、201:ピンフィン、301:半導体素子、302、304:配線層、303:セラミックス絶縁基板、305:接合層、306:エミッタ電極、307: コレクタ電極、309:はんだ層、310:支持部材、311:ケース、312:外部端子、313:ボンディングワイヤ、314:封止材、401:接続用端子、801、806、811:銅めっき層、802:メタライズ層、803:コンデンサ、804:LSIチップ、805:バンプ、807:コア、808:スルーホール、809:表面配線、810:プリプレグ、812:貫通電極、813、814:焼結銅層、901、906:半導体素子、902:絶縁層、903:貫通電極、904、907:銅メタライズ層、905:接合層、908:インターポーザ、909:電極、910:バンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子は、一次粒子と、前記一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする焼結性接合材料。
【請求項2】
前記銅ナノ粒子の比表面積は、3〜10m2/gであることを特徴とする請求項1記載の焼結性接合材料。
【請求項3】
前記液は、水、又は水とアルコール系溶媒との混合溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結性接合材料。
【請求項4】
前記銅ナノ粒子の含有量は80質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼結性接合材料。
【請求項5】
さらに、分散安定剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼結性接合材料。
【請求項6】
前記分散安定剤の含有量は、前記銅ナノ粒子を構成する銅100質量部に対して30質量部以下であることを特徴とする請求項5記載の焼結性接合材料。
【請求項7】
前記分散安定剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項5又は6に記載の焼結性接合材料。
【請求項8】
粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液であって、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子の比表面積は3〜10m2/gであり、前記銅ナノ粒子は、前記液の中に分散している焼結性接合材料の製造方法であって、前記液の中に銅化合物を溶解させて銅イオンを生成する工程の後に、前記銅イオンを含有する液の中に不活性ガスを流しながらアルカリ性溶液を加えて酸化第二銅コロイドを生成し、その後、前記酸化第二銅コロイドを含有する液の中に分散安定剤を混合した状態で還元剤を加えて前記銅ナノ粒子を生成する工程を含むことを特徴とする焼結性接合材料の製造方法。
【請求項9】
前記銅化合物は、硝酸銅水和物、銅酸化物及びカルボン酸銅塩のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項8記載の焼結性接合材料の製造方法。
【請求項10】
前記銅ナノ粒子を含む前記液を乾燥した後、前記銅ナノ粒子を分散媒に分散してペースト状とする工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の焼結性接合材料の製造方法。
【請求項11】
複数個の電子部材を接合する際、請求項1〜7のいずれか一項に記載の焼結性接合材料を接合部位の片面または両面に塗布する工程の後に、還元雰囲気中で100〜500℃の焼結熱処理を施す工程を含むことを特徴とする電子部材の接合方法。
【請求項12】
前記還元雰囲気は、水素、ギ酸又はエタノールの雰囲気であることを特徴とする請求項11記載の電子部材の接合方法。
【請求項13】
前記電子部材を接合する方向に加圧しながら前記焼結熱処理を施すことを特徴とする請求項11又は12に記載の電子部材の接合方法。
【請求項14】
前記電子部材は、半導体装置のチップ及び配線基板であることを特徴とする請求項13記載の電子部材の接合方法。
【請求項15】
前記電子部材は、冷却ユニットの冷却フィン及び金属支持板であることを特徴とする請求項13記載の電子部材の接合方法。
【請求項16】
銅又は銅合金で構成される接続用端子と、電極を有する半導体素子と、を備えた半導体装置であって、前記電極の表面は、ニッケルメッキ層で覆われ、前記接続用端子と前記電極との間には、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む焼結性接合材料で構成された接合層を有し、前記焼結性接合材料は、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子は、一次粒子と、前記一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
前記接合層は、多孔質構造を有し、かつ、接合強度が25MPa以上であることを特徴とする請求項16記載の半導体装置。
【請求項1】
粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液又はペーストであって、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子は、一次粒子と、前記一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする焼結性接合材料。
【請求項2】
前記銅ナノ粒子の比表面積は、3〜10m2/gであることを特徴とする請求項1記載の焼結性接合材料。
【請求項3】
前記液は、水、又は水とアルコール系溶媒との混合溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結性接合材料。
【請求項4】
前記銅ナノ粒子の含有量は80質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼結性接合材料。
【請求項5】
さらに、分散安定剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼結性接合材料。
【請求項6】
前記分散安定剤の含有量は、前記銅ナノ粒子を構成する銅100質量部に対して30質量部以下であることを特徴とする請求項5記載の焼結性接合材料。
【請求項7】
前記分散安定剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ビス(2−エチルへキシル)スルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項5又は6に記載の焼結性接合材料。
【請求項8】
粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む液であって、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子の比表面積は3〜10m2/gであり、前記銅ナノ粒子は、前記液の中に分散している焼結性接合材料の製造方法であって、前記液の中に銅化合物を溶解させて銅イオンを生成する工程の後に、前記銅イオンを含有する液の中に不活性ガスを流しながらアルカリ性溶液を加えて酸化第二銅コロイドを生成し、その後、前記酸化第二銅コロイドを含有する液の中に分散安定剤を混合した状態で還元剤を加えて前記銅ナノ粒子を生成する工程を含むことを特徴とする焼結性接合材料の製造方法。
【請求項9】
前記銅化合物は、硝酸銅水和物、銅酸化物及びカルボン酸銅塩のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項8記載の焼結性接合材料の製造方法。
【請求項10】
前記銅ナノ粒子を含む前記液を乾燥した後、前記銅ナノ粒子を分散媒に分散してペースト状とする工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の焼結性接合材料の製造方法。
【請求項11】
複数個の電子部材を接合する際、請求項1〜7のいずれか一項に記載の焼結性接合材料を接合部位の片面または両面に塗布する工程の後に、還元雰囲気中で100〜500℃の焼結熱処理を施す工程を含むことを特徴とする電子部材の接合方法。
【請求項12】
前記還元雰囲気は、水素、ギ酸又はエタノールの雰囲気であることを特徴とする請求項11記載の電子部材の接合方法。
【請求項13】
前記電子部材を接合する方向に加圧しながら前記焼結熱処理を施すことを特徴とする請求項11又は12に記載の電子部材の接合方法。
【請求項14】
前記電子部材は、半導体装置のチップ及び配線基板であることを特徴とする請求項13記載の電子部材の接合方法。
【請求項15】
前記電子部材は、冷却ユニットの冷却フィン及び金属支持板であることを特徴とする請求項13記載の電子部材の接合方法。
【請求項16】
銅又は銅合金で構成される接続用端子と、電極を有する半導体素子と、を備えた半導体装置であって、前記電極の表面は、ニッケルメッキ層で覆われ、前記接続用端子と前記電極との間には、粒径1000nm以下の銅ナノ粒子を含む焼結性接合材料で構成された接合層を有し、前記焼結性接合材料は、前記銅ナノ粒子の個数基準の粒径分布の粒径ピークは、粒径が1〜35nmの区間、及び、粒径が35nmより大きく1000nm以下の区間にそれぞれ一つ以上あり、前記銅ナノ粒子は、一次粒子と、前記一次粒子の融合体である二次粒子とを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
前記接合層は、多孔質構造を有し、かつ、接合強度が25MPa以上であることを特徴とする請求項16記載の半導体装置。
【図1】


【図2A】


【図2B】


【図2C】


【図3A】


【図3B】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7A】


【図7B】


【図8】


【図9】


【図10A】


【図10B】


【図10C】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】




【図2A】


【図2B】


【図2C】


【図3A】


【図3B】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7A】


【図7B】


【図8】


【図9】


【図10A】


【図10B】


【図10C】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【公開番号】特開2013−91835(P2013−91835A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235605(P2011−235605)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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