説明

開閉弁及び浴槽水管理システム

【課題】複数浴槽の水位管理の容易性を維持しつつ、簡易な構成により個別に浴槽水の排出を行うことができる浴槽水管理システムを得る。
【解決手段】複数の浴槽を連通管59で接続することにより、各浴槽の水位が常には同レベルとなる。この連通管59には浴槽毎に開閉弁71を接続する。開閉弁71の弁体91は常には板面が上下方向を向いている。この状態で、上方へ向けた湯の急速な流れが発生すると受圧体94がその流れを受け、弁体91が横方向に向くように回転しその後上昇して弁座体95のシールリング97に当接される。これにより、例えば圧力P1を発生させる浴槽側のみ浴槽水の排出を行うと、開閉弁71が閉状態となり、圧力P2を発生させる浴槽側の浴槽水の水位低下を招くことがない。その後、圧力P1を発生させる浴槽側に浴槽水を補給すると、弁体91は自重によって下方へ自動復帰して開閉弁71が開状態となり、各浴槽が連通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数浴槽の浴槽水の少なくとも水位を管理するための浴槽水管理システム及びその浴槽水管理システムに適した開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の浴槽を備えた浴場では、各浴槽の下面間に連通管を接続することにより、それら浴槽の水位管理を容易なものとしている。すなわち、所定の浴槽において他の浴槽よりも水位が下がる状況が発生すると、水位差による浴槽水の圧力差に基づき、高水位の浴槽から低水位の浴槽へと連通管を介して浴槽水が流入する。このようにして、連通管で接続された浴槽はいずれも同一水位を保つようになる。したがって、連通管に水位計測器を接続しておけば、各浴槽の水位を個別に確認することなく、水位計測器から全体の浴槽の水位を知ることができる。
【0003】
上記のように連通管が設けられていることによって、各浴槽のうち何れかの浴槽について浴槽水を排出すると、全ての各浴槽の浴槽水が排出される結果となる。このように全ての浴槽において浴槽水が同時に排出されることは、全ての浴槽について清掃を行う場合には問題ないが、1の浴槽のみを清掃したい場合には湯が無駄になり好ましくない。
【0004】
この問題を解決するために、例えば連通管に電磁切換弁を介在させることが考えられる(例えば特許文献1参照)。この構成であれば、連通管の連通状態を前記切換弁によって遮断させることにより、浴槽単位で排水作業を行い得る。
【0005】
しかしながら、電磁切換弁を連通管に設ける場合には、ソレノイド等の駆動源やその制御システムの新規構築が必要となり、コスト面で不利になる。また、故障に対しての修復作業も大変であるといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−325367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数浴槽の水位管理の容易性を維持しつつ、簡易な構成により個別に浴槽水の排出を行うことができる浴槽水管理システムを提供することを目的としている。また、かかる浴槽水管理システムの構築に適した開閉弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.流体を流通させる流路が形成された弁本体(胴体72)内に弁座(弁座体95)及び弁体(弁体91)を設け、前記弁座から前記弁体が離間することにより前記流路が開放され、前記弁座に前記弁体が当接されることにより前記流路を遮断する開閉弁において、
前記弁座の下方位置に弁体を配置し、
前記弁体に、該弁体に交差するとともに該弁体の受圧面よりも受圧面積が小さく形成された受圧体(受圧体94)を設け、
前記受圧体が前記流路を流通する流体の上方への流れを受けることにより、前記弁体が前記弁座と交差する第1位置(図2の位置)から回転して前記弁座と向き合う第2位置(図3の位置)に案内され、さらに前記弁体が前記流体の上方への流れを受けることにより、前記第2位置から前記弁座に当接されて前記流路を遮断する第3位置(図4の位置)まで平行移動するよう上方へ案内されるガイド機構(ガイド部材81、軸体86及びストッパ92,93)によって、前記弁体を支持したことを特徴とする開閉弁。
【0009】
手段1によれば、下方から上方へ向けた流体の急速な流れによって流路が遮断され、弁体の自重によって流路を開放した状態に復帰される。これにより、電気的又は手動によって弁を操作する必要がなく、コスト面やメンテナンス面で有利である。また、ガイド機構によって、弁体は弁座と交差する第1位置に保持されるため、通常時に流路断面積を絞り過ぎてしまう不具合がなく、円滑な流体の流通を保証することができる。
【0010】
さらに、弁体には第1位置にある場合において流体の流れ方向と交差する方向に延びる受圧体を設けているため、下方から上方へ向けた流体の急激な流れを受圧体が受けることによって弁体に回転動作を付与することができる。そして、この受圧体は、弁体よりも受圧面積が小さく形成されているため、流路開放状態では受圧体の存在によっても流路断面積を絞る作用が小さくて済み、また流体の上方への急速な流れに追従して弁体を流路遮断状態とする第3位置にガイドすることができる。したがって、単に弁体をスライド移動させるものよりも有利である。
【0011】
手段2.前記ガイド機構は、前記弁本体内に設けられたガイド部材(ガイド部材81)と、前記弁体に設けられて前記ガイド部材に案内される軸体(軸体86)とを備え、
前記ガイド部材は、前記軸体を回転方向にガイドする第1ガイド部(回転ガイド孔85)と、その回転ガイド部に連続して上方に延び、前記軸体を上下方向にガイドする第2ガイド部(直線ガイド孔84)とを備え、
前記第1ガイド部において前記弁体が前記第1位置と前記第2位置との間で回転可能に案内され、前記第1ガイド部において前記弁体が前記第2位置に配置された場合に限り、前記第2ガイド部において前記弁体が前記第3位置に向け案内されるように構成した上記手段1記載の開閉弁。
【0012】
手段2によれば、簡単な構成により、ガイド機構を構築することができる。なお、ガイド部材を一対設け、軸体の両端部をガイド部材によってそれぞれ案内させることが好ましい。
【0013】
手段3.前記弁体は、前記第2位置に配置されている状態で前記弁体にかかる重力によって前記第1位置に回転復帰させるべく、前記第2位置から前記第1位置に回転する側へ力が作用する重量アンバランスを発生させるアンバランス手段(弁体91の直線状カット部位、受圧体94の位置関係)を備えた上記手段1又は2記載の開閉弁。
【0014】
手段3によれば、第3位置から第2位置への降下は弁体の自重で行われるが、さらに第2位置から第1位置への回転復帰を重量アンバランスによって行うことができ、積極的に動作させる部材を設けなくとも簡易な構成により上下へのスライド及び回転動作を実現することができる。
【0015】
手段4.複数の浴槽(第1浴槽11、第2浴槽12)間に接続され、これら各浴槽の水位を同レベルに維持する連通管(連通管59)を備えた浴槽水管理システムにおいて、
前記各浴槽には、浴槽に溜められた浴槽水を個別に排出するための排出機構(排出機構45)を接続し、
前記連通管には各浴槽毎に上記手段1乃至手段3のいずれかに記載の開閉弁(開閉弁71)をそれぞれ設けたことを特徴とする浴槽水管理システム。
【0016】
手段4によれば、浴槽間が連通管によって接続されているため、各浴槽は大気圧の作用によって同レベルに維持される。したがって、浴槽の水位を現場にて直接目視しなくても各浴槽の水位を把握し管理することができる。
【0017】
また、連通管によって単に接続されている浴槽では個別に浴槽水を排出する排出機構を備えていても、全ての浴槽が連通管を通じて連通されているため、特定の浴槽だけについて浴槽水を排出することはできない。この点、本手段においては、各浴槽に対応して上記手段1乃至3のいずれかに記載された開閉弁が介在されている。これにより、特定の浴槽について排出機構によって浴槽水を排出すると、連通管には特定の浴槽に向けた急速な浴槽水の流れが生じる。これを受圧体が受けて、弁体を第1位置から第2位置へ更には第3位置へと移動させることとなり、自動的に特定の浴槽と他の浴槽との連通状態が遮断される。したがって、作業者は特定の浴槽について浴槽水の排出作業を行うだけでよく、特に他の浴槽との連通・遮断を意識しなくても済む。なお、特定の浴槽について清掃等の後に再度浴槽水を溜めることにより、やがて開閉弁の弁体が自重により開放される。
【0018】
手段5.前記連通管には、該連通管内を流通する浴槽水を取り込んで前記各浴槽の水位を計測する水位計測手段(水位計測器62)を接続した上記手段4記載の浴槽水管理システム。
【0019】
手段5によれば、水位計測手段によって各浴槽の水位レベルを把握できる。ここで、予定水位の範囲を定めておいてこの上限値や下限値をセンサ等で検知するようにしておき、この検知結果を制御装置に付与するようにしておけば、水位の自動管理も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、一対の浴槽の浴槽水を管理する浴槽水管理システムを示す概略図である。
【0021】
第1浴槽11と第2浴槽12は、例えば互いに同一形状及び同一大きさに形成されており、同じ高さ位置に設置されている。なお、各浴槽11,12はそれぞれの許容水位、すなわちこれ以上の水位となると浴槽から浴槽水が溢れる最高水位がほぼ同一高さ位置とされていればよく、両浴槽11,12の形状や大きさは同一である必要はない。
【0022】
まず、各浴槽11,12に適温湯を供給する給湯機構13について説明する。
【0023】
給湯機構13は、給湯管14及び給水管15を有している。給湯管14及び給水管15は、調整バルブ16,17を介して混合器18に接続されている。そして、調整バルブ16,17の開度によって混合器18に供給される湯量と水量の比率が調整され、混合器18における湯と水との混合作用によって所望する温度の湯が生成される。
【0024】
混合器18の下流側にはモータバルブ19が接続され、さらにその下流側が第1給湯管20と第2給湯管21とに分岐されている。そして、モータバルブ19が開状態に切り換えられることで混合器18から両給湯管20,21に湯が供給される。また、モータバルブ19の開度によって両給湯管20,21に供給される湯量が調整される。
【0025】
第1浴槽12の上方には、装飾を施された第1装飾注湯口22が配設されている。第1給湯管20の先端は第1装飾注湯口22に接続されており、第1給湯管20を流通する湯は第1装飾注湯口22を介して第1浴槽12内に至るようになっている。第1給湯管20には第1切換バルブ23が接続されており、第1切換バルブ23を開くことにより第1浴槽11への給湯が許可され、第1切換バルブ23を閉じることにより第1浴槽11への給湯が阻止されるようになっている。同様にして、第2給湯管21は第2浴槽12の上方に配置された第2装飾注湯口24に接続され、第2給湯管21には第2切換バルブ25が接続されている。なお、図示しないが両給湯管20,21には各装飾注湯口22,24からの湯の逆流を防止する逆止弁が介在されている。
【0026】
次いで、各浴槽11,12内の湯を浄化するための濾過機構27について説明する。
【0027】
第1浴槽11の底部及び側部には、それぞれ第1取出口28が形成されている。第1取出口28には、第1浴槽11内の湯を取出して濾過装置29に流入させるための第1取出管31が接続されている。第1取出管31には取出バルブ32が接続されている。したがって、取出バルブ32が開状態とされることにより、第1浴槽11と濾過装置29とが連通される。同様に、第2浴槽12の底部及び側部には、それぞれ第2取出口33が形成されている。第2取出口33には、第2浴槽12内の湯を取出して濾過装置29に流入させるための第2取出管34が接続されている。第2取出管34には取出バルブ35が接続されている。したがって、取出バルブ35が開状態とされることにより、第2浴槽12と濾過装置29とが連通される。
【0028】
両取出管31,34は、取出バルブ32,35よりも下流側において合流しており、合流後の配管にポンプ36が接続されている。したがって、ポンプ36の駆動によって各浴槽11,12内の湯が積極的に取出され、濾過装置29の入口側へと流入する。濾過装置29は、フィルタその他の浄化手段を内蔵しており、取り込んだ湯からゴミや髪の毛などを除去したり、細菌や臭いや濁りなどを分解または吸着除去することにより、透明で衛生上の問題のない湯を得る。
【0029】
濾過装置29の出口側は中途で第1戻し管37と第2戻し管38とに分岐されている。第1戻し管37は、第1浴槽11の側部に設けられた第1戻し口39と前記第1装飾注湯口22とにそれぞれ接続され、これらにより濾過後の湯が第1浴槽11に戻される。また、第2戻し管38は、第2浴槽12の側部に設けられた第2戻し口41と前記第2装飾注湯口24とにそれぞれ接続され、これらにより濾過後の湯が第2浴槽12に戻される。
【0030】
このように、濾過機構27では、各浴槽11,12から汚れた湯を一旦取出し、浄化した後の清浄な湯を各浴槽11,12に戻すという、湯の浄化及び循環機能がある。
【0031】
なお、各戻し管37,38にはそれぞれ戻しバルブ42,43が接続されている。取出バルブ32,35及び戻しバルブ42,43は、常には開状態とされているが、これら各バルブを閉じることにより、各浴槽11,12の湯をそのままにして濾過装置29のフィルタ交換などの一時的なメンテナンスを行うことができる。
【0032】
次いで、各浴槽11,12内の湯を排出するための排出機構45について説明する。排出機構45は各浴槽11,12単位で設けられている。
【0033】
各浴槽11,12の底部には、それぞれ排出口46,47が形成されており、排出口46,47には排出管48,49がそれぞれ接続されている。各排出管48,49には、排出バルブ51,52が接続されている。排出バルブ51,52は常には閉じている。そして、排出バルブ51,52を開状態に切り換えることにより、浴槽11,12内の湯が排出される。なお、排出管48,49の排出バルブ51,52よりも下流側にはトラップ53,54が設けられており、臭気が逆流するのを遮断している。
【0034】
次いで、各浴槽11,12の湯の水位を管理するための水位管理機構56について説明する。
【0035】
各浴槽11,12の底部には連通口57,58が形成されており、両連通口57,58には両者間を繋ぐ連通管59が接続されている。これにより、第1浴槽11と第2浴槽12とが連通されている。したがって、第1浴槽11に満たされた湯からの圧力P1と、第2浴槽12に満たされた湯からの圧力P2との圧力差が生じると、その圧力差がなくなるように連通管59を介して両浴槽11,12間で湯が行き来する。これにより、両浴槽11,12において浴槽水W1,W2の水位が同一高さとなる。
【0036】
連通管59の中間位置には、計測管61が分岐接続されている。計測管61の先端には両浴槽11,12の水位を測定する水位計測器62が接続されている。水位計測器62は上下に延びるようにかつ各浴槽11,12の水位変化を計測できる高さ位置に配置されている。すなわち、水位計測器62に入り込む湯は各浴槽11,12の水位と同一水位を維持するものであり、これにより、直接浴槽11,12を確認せずとも浴槽11,12の水位を知ることができるようになっている。そして、水位計測器62の有する低水位センサによって水位が第1閾値以下になったと判定される場合には、図示しない制御装置によってモータバルブ19を開放し、各浴槽11,12に湯が補給される。一方、水位計測器62の有する高水位センサによって水位が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になったと判定される場合には、前記制御装置によってモータバルブ19を閉じ、各浴槽11,12への湯の補給が中断される。このようにして、各浴槽11,12の水位が自動調整される。
【0037】
なお、計測管61には計測用バルブ63が接続されており、常には開状態となっている。そして、水位計測器62のメンテナンス時には計測用バルブ63を閉じればよい。また、水位計測器62に、湯の清浄レベルを計測する機能を付加すれば、清浄レベルが低下した場合に濾過機構27のポンプ36を作動させ、濾過を自動的に行うようにすることができる。また、連通管59には、連通管59内の湯を排出するための点検用バルブ64,65が接続されているが、これら点検用バルブ64,65は常には閉状態となっており、連通管59のメンテナンス時やレジオネラ菌対策の連通管59洗浄時等には開放される。
【0038】
上記の如く構成された浴槽水管理システムでは、排出バルブ51,52が閉塞された状態で、給湯機構13によって浴槽11,12に給湯されることにより、浴槽水W1,W2で満たされる。この場合、両浴槽11,12間は連通管59によって連通されているため、両浴槽11,12の水位が同じ高さとなる。つまり、第1浴槽11と第2浴槽12とが連通管59で連通されていることにより、浴槽水W1からの圧力P1と浴槽水W2からの圧力P2との均衡が常に保たれる。したがって、第1浴槽11と第2浴槽12とが同水位の状態から、入浴者の出入等によって、例えば第1浴槽11の水位が低下すると、圧力P1が圧力P2よりも小さくなる。すると、第2浴槽12の浴槽水W2が連通管59を介して第1浴槽11に流れ込む。そして、再び第1浴槽11と第2浴槽12とが同水位となったところで、圧力P1と圧力P2との均衡が保たれ、第1浴槽11と第2浴槽12との間で浴槽水の流れがなくなる。また、この場合の浴槽水の流れは極端に低速となる。若干の水位差が生じたときに、即座にその水位差が埋め合わされるためである。
【0039】
また、連通管59に接続された水位計測器62によって、個別に各浴槽11,12の水位を確認することなく、両浴槽11,12の水位を知ることができる。そして、浴槽11,12の水位が所定の水位を下回ると、水位計測器62に設けられた低水位センサによってそれが検知され、制御装置によってモータバルブ19が開状態に切り換えられ、浴槽11,12に湯が補給される。つまり、上記の如く浴槽水管理システムを構成することにより、浴槽11,12の水位管理を容易なものとすることができる。
【0040】
また、浴槽水W1,W2の排出を行う場合には、両浴槽11,12の排出バルブ51,52を開状態に切り換えればよい。これにより、排出管48,49を介して浴槽水W1,W2が外部へ排出される。この場合、一方の排出バルブ51又は52のみを開状態としても結果は同様である。すなわち、一方の排出バルブ51又は52のみを開状態とすると、それに対応した浴槽11又は12の浴槽水が排出されるが、その浴槽11又は12の水位低下に伴って他方の浴槽12又は11から浴槽水が連通管59を介して流れ込み、最終的には両浴槽11,12の浴槽水全てが排出される。
【0041】
したがって、上記浴槽水管理システムでは、一方の浴槽11又は12についてのみ浴槽水を排出することはできない。その結果、一方の浴槽11又は12に汚物が入った場合など、一方の浴槽11又は12についてのみ排水を行おうとしても、不可能である。
【0042】
この点、本実施の形態では、一方の浴槽11又は12についてのみ浴槽水を排出し、他方の浴槽12又は11の浴槽水はそのまま残すことができるように、連通管59の所定位置において開閉弁71が設けられている。
【0043】
そこで、開閉弁71の詳細につき、図2乃至図6に基づいて説明する。
【0044】
なお、図2は開閉弁71の縦断面図、図3(a)は図2のA−A線断面図、図3(b)は図2のB−B線断面図、図4は開閉弁71の要部分解斜視図、図5,6は開閉弁71の動作を説明するための縦断面図である。
【0045】
開閉弁71は、各浴槽11,12に対応して1個ずつ設けられている。より詳細には、連通管59の両端部である各浴槽11,12との接続部位(連通口57,58)の近傍位置が上下方向(鉛直方向)に延びており、その連通管59の上下方向に延びる部位が分断されて、その分断位置に開閉弁71がそれぞれ介在されている。
【0046】
開閉弁71は、上下に延びる円筒状の胴体72を備えている。胴体72は連通管59と同一径となっている。胴体72の上下両端には外周側へ延びるフランジ73が一体形成されている。フランジ73にはリング状の取付金具74が溶接されている。取付金具74には周方向等間隔に複数のボルト挿通孔75が形成されている。連通管59の開閉弁71と向き合う端部も同様の構成となっている。そして、ボルト挿通孔75にボルト76を通しナット77によって締め付けることにより、分断された連通管59間に開閉弁71が接続されている。なお、フランジ73とそれに向き合う連通管59のフランジとの間には図示しないパッキンが介在されていて水密に保持されている。
【0047】
胴体72の内周面には互いに対向するように一対のガイド部材81が設けられている。ガイド部材81は、上下に延びる長方形状の金属板の幅方向両端を、前面板部82を残して後方へ折り曲げて形成されている。そして、その後方への折り曲げ部83の開放端(後端)を胴体72の内周面に溶接することにより、ガイド部材81が固定されている。これにより、胴体72の内周面とガイド部材81の前面板部82との間には少なくとも折り曲げ部83の奥行き分だけの空間が確保されている。
【0048】
ガイド部材81の前面板部82には、上下方向へ直線状に延びかつ上方側が開放された直線ガイド孔84が形成されている。直線ガイド孔84は幅が同一幅となっている。直線ガイド孔84の下端部には、直線ガイド孔84の幅よりも大きな直径とされた円形状の回転ガイド孔85が形成されている。回転ガイド孔85は直線ガイド孔84に連続して形成されており、また回転ガイド孔85の中心位置は、直線ガイド孔84の幅方向中心位置よりも一方に偏倚するように配置されている。より詳細には、直線ガイド孔85の幅方向一方が回転ガイド孔85の接線となるように、直線ガイド孔84に対して回転ガイド孔85が幅方向にずらされた位置関係になっている。
【0049】
軸体86は、両ガイド部材81に案内されている。すなわち、軸体86の長さは、胴体72内周面の直径よりも若干短くかつ両ガイド部材81の前面板部82間の長さよりも長く形成されている。そして、軸体86の両端部が両ガイド部材81のガイド孔84,85に挿入されている。これにより、軸体86は両ガイド部材81の直線ガイド孔84や回転ガイド孔85に案内可能な状態で支持されている。
【0050】
軸体86はその断面形状が円弧状部位87とそれに連続する直線状部位88とからなる略D字形状をなすように形成されている。円弧状部位87の曲率半径は回転ガイド孔85の曲率半径よりも若干小さくなっており、これにより、軸体86は回転ガイド孔84内で回転方向にガイドされる。また、円弧状部位87の直径は直線ガイド孔84の幅よりも大きくなっており、これにより、円弧状部位87が回転ガイド孔85内において直線ガイド孔84と対峙している状態では軸体86は直線ガイド孔84側への移動が阻止される。さらに、直線状部位88と垂直となる円弧状部位87の最大長さ、すなわち円弧状部位87の直線状部位88からの突出量は、直線ガイド孔84の幅よりも若干小さくなっており、これにより、直線ガイド孔84の延びる方向である上下方向と直線状部位88とが一致した場合には軸体86は直線ガイド孔84側への移動が許容される。なお、軸体86が直線ガイド孔84内にある場合、直線状部位88が直線ガイド孔84と対峙しており、その軸体86の回転が阻止される。
【0051】
以上のとおり、軸体86は、回転ガイド孔85によって回転可能に支持される。また、回転ガイド孔85内において直線状部位88が上下方向に配置された状態では、軸体86は、直線ガイド孔84へスライド移動可能な状態となる。さらに、直線ガイド孔84内では、軸体86は、直線ガイド孔84に沿って上下方向へスライド可能に、かつ回転不能に支持される。
【0052】
軸体86には、その両端部に、回転ガイド孔85よりも大径の円板部89が設けられている。円板部89は、両ガイド部材81の前面板部82の背面側に配置されている。これにより、ガイド部材81から軸体86が抜け落ちるのを防止している。
【0053】
軸体86には、円板状の弁体91が溶接によって固定されている。より詳細には、弁体91の中心位置を軸体86が通るように、かつ軸体86の直線状部位88が下方を向いている状態で弁板91の板面が上下方向を向くような位置関係となっている。また、この状態における弁体91の上端部分は水平方向かつ直線状にカットされており、軸体86を挟んでカットされた側の重量が軽くなっている。この直線状のカット部位により、本実施形態における弁体91の重量アンバランスを生成するアンバランス手段が構成されている。
【0054】
両ガイド部材81の前面板部82には、それぞれ円柱状の第1ストッパ92及び第2ストッパ93がそれぞれ設けられている。第1ストッパ92は回転ガイド孔85の直下位置に配置されている。また、第2ストッパ93は回転ガイド孔85とほぼ同一高さ位置にかつ、直線ガイド孔84に対する回転ガイド85の偏倚側とは反対側に当該回転ガイド孔85から離間して配置されている。したがって、軸体86が回転ガイド孔85内に配置されている状況下で、弁体91の板面が上下方向を向いた回転位置において弁体91が第1ストッパ92に当接され、弁体91の板面が横方向を向いた回転位置において弁体91が第2ストッパ93に当接される。その結果、弁体91は、板面が上下方向を向いた第1位置(図4参照)と、そこからほぼ90度回転して板面が横方向を向いた第2位置(図5参照)との間で回転可能となる。なお、弁体91が第2位置に配置されると、上記したように軸体86が直線ガイド孔84に沿って上方へ移動できる状態、すなわち弁体91が板面を横方向にした状態で上方へ移動できる状態となる。
【0055】
弁体91における軸体が設けられた板面とは反対側の板面には、受圧体94が設けられている。受圧体94は弁体91の直径よりも幅狭の矩形板状に形成されている。そして、その基端部は弁体91の中心位置を通過するようにかつ軸体86と平行となるように、弁体91に溶接固定されている。また、弁体91の板面が上下方向を向いた第1位置にある場合には受圧体94の板面が横方向に延びるように、また弁体91の板面が横方向を向いた第2位置にある場合には受圧体94の板面が上下方向に延びるように、弁体91に対してほぼ直交して受圧体94が配置されている。この受圧体94もまた、弁体91の直線状のカット部位とともに、本実施形態における弁体91の重量アンバランスを生成するアンバランス手段を構成している。
【0056】
胴体72の内周面において、ガイド部材81の上端位置より若干上方となる位置には弁座体95が溶接によって固定されている。弁座体95は、平面視で弁体91と相似形をなしかつ弁体91外周縁よりも小さな開口96が形成されている。弁座体95の開口96周縁部分は下方に折り曲げられており、その折り曲げ部位の外周壁に沿ってシールリング96が接着により固定されている。したがって、弁体91がその板面を横方向に向けた状態で直線ガイド孔84に沿って上昇すると、最終的には弁体91における受圧体94側の板面の周縁部位が弁座体95のシールリング96に当接した第3位置(図6参照)に配置される。
【0057】
なお、開閉弁71の製造時には、まず胴体72の内周面にガイド部材81を溶接し、そのガイド部材81の直線ガイド孔84の上方開口から軸体86を挿入する。その後、弁座体95を胴体72の内周面に溶接することにより、直線ガイド孔84の上方開口から軸体86が抜け落ちることがない。
【0058】
さて、このように構成された開閉弁71の作用及びこれが組み込まれた浴槽水管理システムの作用について説明する。
【0059】
まず、第1浴槽11に対応して設けられた開閉弁71に着目して作用を説明すると、第1浴槽11側の開閉弁71には、上方より第1浴槽11の浴槽水W1からの圧力P1が作用し、下方より第2浴槽W2からの圧力P2が作用する。
【0060】
浴槽11,12がそれぞれ同一水位の浴槽水W1,W2で満たされている状態では、両圧力P1,P2は同一であるため、開閉弁71に上下から与えられる圧力は相殺される。その結果、開閉弁71の弁体91には自重のみが作用する。ここで、開閉弁71の弁体91は、略円板状に形成されるとともにその中心を通る軸体86で支持され、かつ軸体86を挟んだ一方が直線状にカットされた形状となっているため、軸体86を挟んでそのカット部位を含んだ側の方が軽くなっている。また、受圧体94が弁体91の一方に設けられていることにより重量アンバランスが強調されている。これにより、弁体91は図2に示すようにカット部位を含んだ側が上側となりかつ板面が上下方向に延びた第1位置に配置される。
【0061】
この状態で、第1浴槽11又は第2浴槽12において、人の出入などによって水位に若干の変化があっても、その変化は連通管59を通じて即座に吸収する。若干の水位変化があると、圧力P1と圧力P2とで圧力差が生じ、その圧力差がなくなるように連通管59を湯が流通するためである。したがって、このような水位変化では、連通管59の湯の流れは非常に遅く、しかも圧力差(P1−P2)も小さいため、連通管59に生じる湯の流れが受圧体94に作用しても、弁体91は図2に示される第1位置に保持される。
【0062】
また、弁体91が第1位置に配置されている状況では、湯の流れ方向である上下方向に弁体91が沿った状態となるため、殆ど流路断面積を狭くすることがない。一方、受圧体94は湯の流れ方向に直交する方向へ延びているが、受圧体94は弁体91に比して受圧面積が小さいため流路断面積の絞り作用が小さい。その結果、第1浴槽11と第2浴槽12とは十分な流路断面積を保持した状態で連通されている。
【0063】
このような水位管理がなされている状況下で、第1浴槽11に汚物が混入し第1浴槽11のみ清掃すべき事情が生じた場合、第1浴槽11の浴槽水W1のみを外部へ排出する。この場合、作業者は、第1浴槽11側の排出バルブ51を開状態に切り換えるだけでよい。なお、この作業は、排出バルブ51が手動式であれば手動で行われるし、電磁バルブのように電気的に制御されているものであればスイッチ操作によって行われる。なお、第1浴槽11の浴槽水W1を排出する場合には、濾過機構27の動作を一時的に停止させる。具体的には少なくともバルブ32,42を閉状態とする。濾過機構27は第1浴槽11と第2浴槽12とで共有しているためである。
【0064】
さて、第1浴槽11が浴槽水W1で満たされている場合に排出バルブ51を開状態に切り換えると、浴槽水W1は排出口46及び排出管48を介して排出される。排出口46及び排出管48は湯の排出効率を高めるべく一般に大口径となっている。これにより、浴槽水W1は勢いよく排出される。この状況では、第1浴槽11における水位低下が著しく、第1浴槽11の浴槽水W1から作用する圧力P1が急激に低下する。
【0065】
すると、連通管59内では、第2浴槽12から第1浴槽11に向けて急激な湯の流れが発生する。この急激な湯の流れ、換言すれば、第1浴槽11と第2浴槽12との急激な圧力変化(P1−P2)が受圧体94に作用し、受圧体94には上方へ持ち上げられる大きな力が作用する。受圧体94は弁体91に固定され、弁体91は第1位置においては軸体86によって回転方向へのみ移動が許容されているだけであるから、上方への力の作用によって、受圧体94は図2の時計方向へ回転する。その回転途中では、弁体81が水平方向に近づくため、弁体91の軸体86取付け側の板面に圧力ないし流速が作用し、弁体91がやがてその板面を水平方向とする状況となる。この状態では図5に示すように、弁体91が第2ストッパ93に当接されて、弁体91の板面が水平方向を向いた第2位置となる。なお、弁体91の第2位置における第2ストッパ93と当接される側が直線状にカットされていることから、この側の受圧面積が軸体86を挟んだ反対側のそれよりも小さくなるため、第1位置から第2位置への回転が円滑に行われる。
【0066】
さらに、弁体91の下面には、第2浴槽12から第1浴槽11に向けて急激な湯の流れが作用し続け、この弁体91の受圧面積が流路の大半を覆うような大きなもであることも相俟って、板面を水平方向に保ったまま自重に抗して上方へと水平移動する。なお、板面が水平を保つのは、軸体86の直線状部位88が直線ガイド孔84に沿った状態となるためである。すると、図6に示すように、弁体91の上面が弁座体95、より詳しくはシールリング97に当接され、弁座体95内周側の開口96を閉鎖した第3位置に配置される。これにより、連通管59内における湯の流通が阻止される。この状態では、第1浴槽11においてさらに湯が排出されていき、圧力差(P1−P2)が益々高まるばかりであるため、弁体91は図6に示す流路遮断状態を強固に維持する結果となる。
【0067】
やがて第1浴槽11に満たされた浴槽水W1が全て排出されると、第1浴槽11側からの圧力P1は最低となる。この状況でもやはり弁体91は流路遮断状態を維持する。そして、作業者が第1浴槽11から汚物を取り除き清掃作業を行った後に、排出バルブ51を閉じ、給湯機構13によって湯を第1浴槽11に湯を補給すると、第1浴槽11には徐々に浴槽水W1が満たされていく。
【0068】
湯の補給によって第1浴槽11の水位が徐々に上昇し、やがて第1浴槽11の水位が第2浴槽12の水位に近づくと、圧力差(P1−P2)に基づいて弁体91に作用する力では弁体91の自重を支えきれなくなる。こうなると、弁体91が自重によって降下を開始し、弁体91による流路遮断状態が解消される。これにより、連通管59における第1浴槽11と第2浴槽12との湯の流通が開始され、やがて第1浴槽11と第2浴槽12とが同一水位となる。
【0069】
弁体91は、さらに降下していき、図5に示す第2位置に復帰する。この状態では、弁体91の一方(図の右側)が直線状にカットされていることにより、右側よりも左側の方が重くなった重量アンバランスの状態となっている。したがって、この重量アンバランスによって、弁体91は反時計方向に回転しはじめる。そして、回転しはじめると、受圧体94が第2位置よりも左側に傾くため、これが重量アンバランスを強調する結果となり、やがて図2に示すように第1ストッパ92に当接した第1位置へと円滑に自動復帰する。
【0070】
なお、第2浴槽12側の排出バルブ52のみを開状態に切り換えた場合には、第2浴槽12に対応して設けられた開閉弁71が以上説明したとおりの動作を行う。このとき、第1浴槽11側の開閉弁71には上方から下方へ向けて湯の急速な流れが生じ、これを受圧体94が受けて弁体91を反時計方向へ回転させる力が作用することになる。ただし、弁体91は第1位置において反時計方向への回転を阻止する第1ストッパ92が設けられているため、弁体91がそれ以上回転することはなく、図2に示される第1位置に保持される。
【0071】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0072】
第1浴槽11と第2浴槽12との底部間を連通管59によって連通させた。これにより、第1浴槽11と第2浴槽12とを常には同一水位に保持することができる。また、両浴槽11,12において若干の水位変化が生じても即座に水位差を埋め合わせることができる。さらに、連通管59に接続された水位計測器62によって、個別に各浴槽11,12の水位を確認することなく、両浴槽11,12の水位を知ることができ、両浴槽11,12の水位管理を容易なものとすることができる。
【0073】
連通管59には、各浴槽11,12に対応して開閉弁71を設けた。これにより、一方の浴槽、例えば第1浴槽11の浴槽水W1のみを排出する場合には、第1浴槽11に対応して設けた開閉弁71が連通管59の流路を閉鎖するため、第2浴槽12の浴槽水W2を無駄に排出することがなく、湯の無駄を極力排除することができる。
【0074】
開閉弁71を、連通管59を流通する湯の急速な流れないしは圧力差によって流路を遮断し、弁体91の自重によって流路を開放した状態に復帰するように構成した。これにより、連通管59の連通遮断のために電磁切換弁などの電気的構成を設ける必要がなく、コスト面やメンテナンス面で有利である。さらには、手動切換すらも不要であることから、一方の浴槽11又は12の湯を排出する場合には単に対応する浴槽11又は12の排出バルブ51,52を開放するだけでよく、作業者による連通管59の切り換え忘れ等の懸念もない。
【0075】
開閉弁71は常には弁体91の板面を湯の流れ方向である上下方向に向けた第1位置に保持されている。これにより、連通管59の流路断面積を絞ってしまう不具合がなく、円滑な湯の流通を保証することができる。
【0076】
開閉弁71の弁体91には第1位置にある場合において湯の流れ方向と直交する方向に延びる受圧体94を設けた。そして、一方の浴槽11又は12の湯が排出されると、その急速な流れ又は圧力変化を受圧体94が受け、弁体91を回転させた第2位置、更には流路を遮断した第3位置に至らしめる。そして、この受圧体94は、弁体91よりも板面の面積が小さく形成されている。これにより、連通管59の流路開放状態では受圧体94の存在によっても流路断面積を絞る作用が小さくて済み、また急速な湯の流れに追従して弁体91を流路遮断状態とする第3位置に切り換えることができる。したがって、単に弁体91をスライド移動させるものよりも有利である。
【0077】
開閉弁71の弁体91を第1位置に復帰させるために、弁体91の一部をカットした形状として重量アンバランスを利用した。これにより、第3位置から第2位置への降下を弁体91の自重で行うとともに、第2位置から第1位置への回転復帰を重量アンバランスによって行うことができ、簡易な構成により上下へのスライド及び回転動作を実現することができる。また、第2位置から第1位置への回転を開始すると、受圧体94が第1位置側へ傾くため、重量アンバランスがより強調されて第1位置側へ円滑に回転させることができる。また、回転及びスライドのガイドを、ガイド部材81の各ガイド孔84,85及び軸体86の形状によって実現しているので、さらに構成の簡素化が図られる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、第1実施形態との相違点のみを、図7に基づいて説明する。
【0079】
第1実施形態では、弁座体95を胴体72の内周面に溶接によって固定していた。これに対し、第2実施形態の開閉弁101では、弁座体102を胴体72内周面に溶接することなく構成している。
【0080】
すなわち、胴体72の内周面のうち上端縁には複数の板状の載置板103が溶接固定されている。図示では載置板103は左右2つが示されているが、3以上であってもよい。そして、載置板103には上下方向に貫通するネジ孔(図示略)が形成されている。そして、平面視で各載置板103と、第2位置(すなわち板面が水平方向)となった弁体91とが重ならない程度に、各載置板103が胴体72の内周面寄りに小さく形成されている。そして、弁座体102はその外形がフランジ73の外周縁まで延びるように形成されており、弁座体102が前記載置板103とともにビス104止めされている。
【0081】
以上のようにして開閉弁101を構成することにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
さらには、ビス104を外すことにより、弁座体102を開閉弁101から取り外すことができる。弁座体102を開閉弁101から取り外すことで、劣化したシールリング96を交換することができる。また、弁座体102を取り外すことができる点、及び平面視で各載置板103と弁体91とが重ならない位置関係にある点により、弁座体102を取り外した状態では、ガイド部材81における直線ガイド孔84の上部開放端から弁体91を取り外すことができるため、弁体91のメンテナンスも行うことができる。これらにより、第1実施形態における開閉弁71よりも開閉弁101のメンテナンス性が向上する利点がある。
【0083】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、第1実施形態との相違点のみを、図8に基づいて説明する。
【0084】
第1実施形態では、弁体91の一部を直線状にカットした形状とし、軸体86を挟んだ両側の重量アンバランスを作り出していた。これに対し、第3実施形態の開閉弁111では、弁体112を円板状に形成しており、弁体112それ自体での重量アンバランスは存在しない。
【0085】
また、第1実施形態では、受圧体94を弁体91の中心を通るように固定していた。これに対し、第3実施形態の開閉弁111では、弁体112が図示されている第1位置、すなわち弁体112の板面が上下方向を向いている状態で、弁体112の中心よりも下方に偏倚した位置に受圧体113が設けられている。
【0086】
以上のようにして開閉弁101を構成することにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
さらには、弁体112を単純な円板状に形成するだけでよいため、弁体112の製作が容易になる。これに伴い、弁座体95も単純なリング板状に形成すればよいため、弁座体95の製作も容易になる。さらには、弁体112に対する弁座体95の方向性もなくなるため、組付け時(溶接時)の作業性も向上する。
【0088】
また、受圧体113を弁体112の中心から偏倚させて取り付けることにより、弁体112全体としての重量アンバランスを生成している。すなわち、受圧体113が本実施形態におけるアンバランス手段を構成している。これにより、第2位置から第1位置への回転復帰をこの重量アンバランスを利用して行うことができる。
【0089】
(他の実施形態)
上述した第1乃至第3の各実施形態に限らず、例えば以下に示す各実施形態とすることもできる。
【0090】
・上記各実施形態では、弁体91,112をD字板状や円板状に形成したが、楕円板状や多角形板状にする等、他の形状としてもよい。
【0091】
・上記各実施形態では、開閉弁71,101,111の弁体91,112が第1位置にある場合において、軸体86の直線状部位88が下向きとなるようにしていたが、直線状部位86が上向きとなるように弁体91,112に固定してもよい。また、軸体86は必ずしも断面D字状とする必要はなく、弁体91,112が回転動作を行った後に上昇動作を行うようにガイドされる形状であればよい。
【0092】
・上記各実施形態では、受圧体94,113を矩形板状に形成したが、半円状に形成するなど他の形状としてもよい。また、受圧体を複数枚設けてもよいが、この場合には各受圧体の受圧面積を小さくすることが好ましい。
【0093】
・上記各実施形態では、弁座体95,102にゴム製のシールリング97を設けて流路遮断時に湯の流通を完全に遮断するようにしていたが、メタルシールなど他のシール手段を設けるようにしてもよい。
【0094】
・上記各実施形態では、弁体91,112の重量アンバランスを生成するために、弁体91の一部をカットし、または受圧体113を偏倚した位置に取り付けたが、これら以外にも、弁体91,112の軸体86を挟んだ一方(第1位置における下方)に重りを取り付けることによって重量アンバランスを生成することができる。
【0095】
・上記各実施形態では、一対の浴槽11,12を連通管59で接続したが、3以上の浴槽に連通管を接続して各浴槽を連通させても良い。この場合には、浴槽の数にあわせて連通管を中途で分岐させればよく、各浴槽に対応してそれぞれ開閉弁71,101,111を介在させることにより、上記各実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0096】
・上記各実施形態では、開閉弁71,101,111を浴槽11,12の浴槽水管理のための浴槽水管理システムに適用した場合について説明したが、開閉弁71,101,111は、その他の用途に用いることが可能である。例えば、魚などを入れるための複数の水槽を連通する連通管に接続することができる。また、複数のタンク間に設けることも可能である。これらの場合においても、上記各実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態の浴槽水管理システムを示す概略図。
【図2】第1実施形態の連通管の一部及び開閉弁(開閉弁は開状態)を示す縦断面図。
【図3】(a)は図2のA−A線断面図、(b)は図2のB−B線断面図。
【図4】開閉弁の要部分解斜視図。
【図5】開閉弁の動作途中の状態を示す縦断面図。
【図6】開閉弁の閉状態を示す縦断面図。
【図7】第2実施形態の開閉弁を示す縦断面図。
【図8】第3実施形態の開閉弁を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0098】
11,12…浴槽、13…給湯機構、27…濾過機構、45…排出機構、51,52…排出バルブ、56…水位管理機構、57,58…連通口、59…連通管、62…水位計測手段としての水位計測器、71…開閉弁、72…弁本体を構成する胴体、81…ガイド機構を構成するガイド部材、84…第2ガイド部としての直線ガイド孔、85…第1ガイド部としての回転ガイド孔、86…ガイド機構を構成する軸体、87…円弧状部位、88…直線状部位、89…円板部、91…弁体、92,93…ガイド機構を構成するストッパ、94…アンバランス手段を兼ねた受圧体、95…弁座としての弁座体、96…開口、97…シールリング、101…開閉弁、102…弁座としての弁座体、103…載置板、104…取付部材としてのビス、111…開閉弁、112…弁体、113…アンバランス手段を兼ねた受圧体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させる流路が形成された弁本体内に弁座及び弁体を設け、前記弁座から前記弁体が離間することにより前記流路が開放され、前記弁座に前記弁体が当接されることにより前記流路を遮断する開閉弁において、
前記弁座の下方位置に弁体を配置し、
前記弁体に、該弁体に交差するとともに該弁体の受圧面よりも受圧面積が小さく形成された受圧体を設け、
前記受圧体が前記流路を流通する流体の上方への流れを受けることにより、前記弁体が前記弁座と交差する第1位置から回転して前記弁座と向き合う第2位置に案内され、さらに前記弁体が前記流体の上方への流れを受けることにより、前記第2位置から前記弁座に当接されて前記流路を遮断する第3位置まで平行移動するよう上方へ案内されるガイド機構によって、前記弁体を支持したことを特徴とする開閉弁。
【請求項2】
前記ガイド機構は、前記弁本体内に設けられたガイド部材と、前記弁体に設けられて前記ガイド部材に案内される軸体とを備え、
前記ガイド部材は、前記軸体を回転方向にガイドする第1ガイド部と、その回転ガイド部に連続して上方に延び、前記軸体を上下方向にガイドする第2ガイド部とを備え、
前記第1ガイド部において前記弁体が前記第1位置と前記第2位置との間で回転可能に案内され、前記第1ガイド部において前記弁体が前記第2位置に配置された場合に限り、前記第2ガイド部において前記弁体が前記第3位置に向け案内されるように構成した請求項1記載の開閉弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記第2位置に配置されている状態で前記弁体にかかる重力によって前記第1位置に回転復帰させるべく、前記第2位置から前記第1位置に回転する側へ力が作用する重量アンバランスを発生させるアンバランス手段を備えた請求項1又は2記載の開閉弁。
【請求項4】
複数の浴槽間に接続され、これら各浴槽の水位を同レベルに維持する連通管を備えた浴槽水管理システムにおいて、
前記各浴槽には、浴槽に溜められた浴槽水を個別に排出するための排出機構を接続し、
前記連通管には各浴槽毎に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の開閉弁をそれぞれ設けたことを特徴とする浴槽水管理システム。
【請求項5】
前記連通管には、該連通管内を流通する浴槽水を取り込んで前記各浴槽の水位を計測する水位計測手段を接続した請求項4記載の浴槽水管理システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させる流路が形成された弁本体内に弁座及び弁体を設け、前記弁座から前記弁体が離間することにより前記流路が開放され、前記弁座に前記弁体が当接されることにより前記流路を遮断する開閉弁において、
前記弁座の下方位置に弁体を配置し、
前記弁体に、該弁体に交差するとともに該弁体の受圧面よりも受圧面積が小さく形成された受圧体を設け、
前記受圧体が前記流路を流通する流体の上方への流れを受けることにより、前記弁体が前記弁座と交差する方向に延びる第1位置から回転して前記弁座と向き合う第2位置に案内され、さらに前記弁体が前記流体の上方への流れを受けることにより、前記第2位置から前記弁座に当接されて前記流路を遮断する第3位置まで平行移動するよう上方へ案内されるガイド機構によって、前記弁体を支持し、
前記ガイド機構は、前記弁本体内に設けられたガイド部材と、前記弁体に設けられて前記ガイド部材に案内される軸体とを備え、
前記ガイド部材は、前記軸体を回転方向にガイドする第1ガイド部と、その回転ガイド部に連続して上方に延び、前記軸体を上下方向にガイドする第2ガイド部とを備え、
前記第1ガイド部において前記弁体が前記第1位置と前記第2位置との間で回転可能に案内され、前記第1ガイド部において前記弁体が前記第2位置に配置された場合に限り、前記第2ガイド部において前記弁体が前記第3位置に向け案内されるように構成したことを特徴とする開閉弁。
【請求項2】
前記ガイド部材を一対設け、前記軸体の両端部をこれらガイド部材によってそれぞれ案内するように構成した請求項1記載の開閉弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記第2位置に配置されている状態で前記弁体にかかる重力によって前記第1位置に回転復帰させるべく、前記第2位置から前記第1位置に回転する側へ力が作用する重量アンバランスを発生させるアンバランス手段を備えた請求項1又は2記載の開閉弁。
【請求項4】
複数の浴槽間に接続され、これら各浴槽の水位を同レベルに維持する連通管を備えた浴槽水管理システムにおいて、
前記各浴槽には、浴槽に溜められた浴槽水を個別に排出するための排出機構を接続し、
前記連通管には各浴槽毎に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の開閉弁をそれぞれ設けたことを特徴とする浴槽水管理システム。
【請求項5】
前記連通管には、該連通管内を流通する浴槽水を取り込んで前記各浴槽の水位を計測する水位計測手段を接続した請求項4記載の浴槽水管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−320450(P2006−320450A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144930(P2005−144930)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【特許番号】特許第3792247号(P3792247)
【特許公報発行日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(305015888)
【Fターム(参考)】