説明

防振装置、及び、防振装置用ブラケット

【課題】エンジン側に連結される部材との当接による変形を抑制可能でかつエンジン側からの液体の侵入を抑制可能な防振装置用ブラケットを提供すること。
【解決手段】エンジンブラケット90に連結される内側取付部材14と、車体に連結される外側取付部材16と、内側取付部材14と外側取付部材16を連結する弾性体18とを有する防振装置本体12を車体に支持する防振装置用ブラケット70が、車体に連結され防振装置本体12を収容すると共に外側取付部材16が固定されブラケット90の延出側に対して反対側の側部が開放されたケース74と、ケース74の上部を構成しケース74外方でブラケット90に連結される内側取付部材14が貫通する貫通孔80が形成されケース74外側にブラケット90に対向する上面78Aが形成されケース74内側に内側取付部材14の延出部22に対向する下面78Bが形成された上板部78と、を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業機械、自動車のエンジンマウントとして用いられ、エンジンからの振動を吸収して車体への振動伝達を抑制する防振装置、及び、この防振装置に用いられる防振装置用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の振動発生部となるエンジンと振動受部となる車体との間にはエンジンマウントとしての防振装置が配設されており、この防振装置はエンジンが発生する振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する。このような防振装置としては、例えば、防振装置の内部に弾性体及び一対の液室を設けると共に、オリフィスとなる制限通路でこれらの液室を互いに連通した液体封入式のものが知られている。液体封入式の防振装置によれば、搭載されたエンジンが作動して振動が発生した場合には、弾性体の制振機能及び、一対の液室間を連通するオリフィス内の液体の粘性抵抗等で振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、防振装置とエンジンを連結するエンジンブラケット(連結部材)の一部を変位規制部材で取り囲み、エンジンブラケットに取付けられたストッパゴムと変位規制部材との当接により、エンジンブラケットを介してエンジンの車体に対する車両上下方向(防振装置の主振動入力方向)、車両前後方向、及び車両幅方向の変位を規制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−128410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、変位規制部材のエンジン側に開口した開口部からエンジンブラケットがエンジンに向かって延出している。このため、変位規制部材をエンジン側に延長して増やせるストッパゴムと変位規制部材との当接面積には、制限がある。そのため、エンジン側からの入力によっては変位規制部材に変形が生じる虞がある。
また、例えば、吸気口などを介してエンジンルーム内に雨水などが侵入した場合、変位規制部材の開口部がエンジン側に開口していることから、雨水が変位規制部材の開口部を通って防振装置側に入り込み、防振装置を構成する金属部品に錆が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、エンジン側に連結される部材との当接による変形を抑制可能で、かつ、エンジン側からの液体の侵入を抑制可能な防振装置用ブラケット、及びこの防振装置用ブラケットを用いた防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の防振装置用ブラケットは、エンジンに向かって延出し該エンジンに連結される連結部材に連結される内側取付部材と、車体に連結される外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体とを有する防振装置本体を、車体に支持する防振装置用ブラケットであって、前記車体に連結され、前記防振装置本体を収容すると共に前記外側取付部材が固定され、前記連結部材の延出側に対して反対側の側部が開放されたケースと、前記ケースの上部又は下部を構成し、前記ケース外方で前記連結部材に連結される前記内側取付部材が貫通する貫通孔が形成され、前記ケース外側に前記連結部材に対向する第1変位規制面が形成され、前記ケース内側に前記内側取付部材の一部に対向する第2変位規制面が形成された変位規制部と、を有している。
【0008】
請求項1の防振装置用ブラケットによれば、変位規制部に、連結部材に対向する第1変位規制面が形成されると共に内側取付部材の一部に対向する第2変位規制面が形成されていることから、車体に連結された外側取付部材に対してエンジン側に連結される連結部材及び内側取付部材の主振動入力方向の移動が規制される。これにより、車体に対するエンジンの主振動入力方向の変位が規制される。
【0009】
また、上記防振装置用ブラケットでは、ケースの連結部材の延出側に対して反対側(以下、連結部材の反延出側と記載)の側部が開放されていることから、ケースの開放部分の延長線上にエンジンが配置されない。このため、上記防振装置用ブラケットは、例えば、ケースの連結部材の延出側の側部が開放されて開放部分の延長線上にエンジンが配置されているものと比べて、ケースを開放部分側(連結部材の反延出側)へより延長することができる。このようなケースの延長にともないケースの上部又は下部を構成する変位規制部も連結部材の反延出側へ延長されるため、第1変位規制面や第2変位規制面の面積も増加する。これにより、連結部材と第1変位規制面との当接面積が増加し、内側取付部材の一部と第2変位規制面との当接面積が増加する。このように当接面積が増えることにより、エンジン側に連結される部材(連結部材及ぶ内側取付部材)との当接による変位規制部への入力を分散させることができ、変位規制部、すなわち、防振装置用ブラケットの変形を抑制することができる。
【0010】
また、上記防振装置用ブラケットでは、ケースの連結部材の反延出側の側部が開放されていることから、例えば、ケースの連結部材の延出側の側部が開放されているものと比べて、エンジンルーム内に侵入した雨水(液体)などの水分がエンジン側(外部)からケース内に侵入するのが抑制される。
【0011】
以上、請求項1の防振装置用ブラケットによれば、エンジン側に連結される部材との当接による変形を抑制することができ、かつ、エンジン側からの液体の侵入を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の防振装置用ブラケットは、請求項1に記載の防振装置用ブラケットにおいて、前記ケースの開放部分には、前記ケースの外側へ張り出すフランジ部が形成されている。
【0013】
請求項2の防振装置用ブラケットでは、ケースの開放部分に該ケースの外側へ張り出すフランジ部が形成されていることから、ケースの開放部分の剛性が向上する。
【0014】
請求項3に記載の防振装置用ブラケットは、請求項2に記載の防振装置用ブラケットにおいて、前記主振動入力方向から見て、前記ケースの開放部分は、該開放部分から前記内側取付部材の一部が出っ張るように形成されている。
【0015】
請求項3の防振装置用ブラケットでは、主振動入力方向から見て、ケースの開放部分が、該開放部分から内側取付部材の一部が出っ張るように形成されている。このため、内側取付部材が外側取付部材に対して主振動入力方向に対して直交する方向に変位した際に、該内側取付部材の一部がケースの開放部分に当接する。ここで、ケースの開放部分は、フランジ部によって剛性が向上していることから、内側取付部材との当接によるケース、すなわち、防振装置用ブラケットの変形が抑制される。
【0016】
請求項4に記載の防振装置用ブラケットは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットにおいて、前記第2変位規制面は、前記連結部材の延出側に対して反対方向へ延びる平坦面である。
【0017】
請求項4の防振装置用ブラケットでは、第2変位規制面は、前記連結部材の延出側に対して反対方向へ延びる平坦面であることから、内側取付部材との当接面積をより確保でき、当接による変位規制部への入力を効果的に分散させることができる。
【0018】
請求項5の防振装置は、エンジンに向かって延出し該エンジンに連結される連結部材に連結される内側取付部材と、車体に連結される外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体とを有する防振装置本体と、前記防振装置本体を前記車体に支持する請求項1〜4のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットと、を有している。
【0019】
請求項5の防振装置では、請求項1〜4のいずれか1項記載の防振装置用ブラケットを用いることから、エンジン側に連結される部材との当接による防振装置用ブラケットの変形が抑制され、かつ、防振装置用ブラケットへのエンジン側からの液体の侵入が抑制される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の防振装置用ブラケットによれば、エンジン側に連結される部材との当接による変形を抑制することができ、かつ、エンジン側からの液体の侵入を抑制することができる。
本発明の防振装置によれば、エンジン側に連結される部材との当接による防振装置用ブラケットの変形を抑制することができ、かつ、防振装置用ブラケットへのエンジン側からの液体の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の防振装置の斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】第1実施形態の防振装置の平面図である。
【図4】第1実施形態の防振装置をエンジン側から見た側面図である。
【図5】第1実施形態の防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図6】第1実施形態の防振装置用ブラケットの上面図である。
【図7】第2実施形態の防振装置の構成を示す側断面図である。
【図8】第2実施形態の防振装置の変形例の構成を示す側断面図である。
【図9】その他の実施形態の防振装置用ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る防振装置及び防振装置用ブラケットについて図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1〜6には本発明の第1実施形態に係る防振装置及び防振装置用ブラケットが示されている。この防振装置10は、自動車のエンジン(図示省略)を車体(図示省略)へ支持するエンジンマウントとして適用されるものである。図中の符号Sは装置の軸心を示し、この軸心に沿った方向を装置の軸方向Sとしている。また、本実施形態では、図中の符号U、Dがそれぞれ装置の上下方向を示し、図中の符号FRは装置の上下方向に対して直交する第1方向を示し、図中の符号Wは装置の上下方向及び第1方向に対して直交する第2方向を示している。
なお、本実施形態の防振装置10は、第1方向が車両前後方向、第2方向が車両幅方向となるように車両に搭載されるため、以下では、第1方向を車両前後方向、第2方向を車両幅方向と読み替えて説明する。
【0023】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の防振装置10は、防振装置本体12、及びこの防振装置本体12を車体へ支持する防振装置用ブラケット70を有している。
【0024】
図2に示されるように、防振装置本体12は、金属材料で形成された内側取付部材14と、この内側取付部材14の外周側に略同軸的に配置された薄肉円筒状の金属材料で形成された外側取付部材16と、内側取付部材14と外側取付部材16との間に配置された吸振主体となるゴム製の弾性体18とを備えている。
【0025】
内側取付部材14には、その上端側にロッド状に形成された筒部20が設けられると共に、この筒部20の下端部から外周側へ延出する肉厚円板状の延出部22が一体的に設けられている。この延出部22は、図3に示すように、車両前後方向の外周面22Aが車両幅方向に沿う平坦面とされ、車両幅方向の外周面22Bが外側へ凸となる略円弧曲面とされている。
【0026】
一方、図2に示すように、筒部20には、その上端面から軸心Sに沿って穿設されたねじ穴24が形成されており、このねじ穴24にはボルト26がねじ込まれている。このボルト26を介して内側取付部材14はエンジンに向かって延出する連結部材の一例としてのエンジンブラケット90に連結されて上記エンジンに連結される。
【0027】
外側取付部材16は、上端側が大径部28とされ、下端側が大径部28よりも径が小さい小径部30とされている。大径部28は、後述する防振装置用ブラケット70のケース74に接合された円環状の固定リング72に嵌入されて固定されている。一方、小径部30は、下端部に下方へ向って直径がテーパ状に縮小するかしめ部32が形成されている。
【0028】
弾性体18は、内側取付部材14と外側取付部材16との間に配置されると共に各々に加硫接着されて、内側取付部材14と外側取付部材16を弾性的に連結している。また、内側取付部材14の延出部22には、上面22Cから外周面22A、22Bにかけてゴム製のストッパゴム34が加硫接着されている。このストッパゴム34は、弾性体18と一体的に形成されている。また、ストッパゴム34は、延出部22の外周面22Aを覆う厚肉の前後ストッパゴム部34Aと、外周面22Bを覆う厚肉の幅方向ストッパゴム部(図示省略)と、延出部22の上面22Cを覆う厚肉の上方ストッパゴム部34Cと、を含んで構成されている。
【0029】
弾性体18には、下端部から下方へ延出する薄膜状の被覆部36が一体的に形成されており、この被覆部36は、外側取付部材16の内周面に加硫接着されて外側取付部材16の内周面を覆っている。
【0030】
また、弾性体18には、下端部に外側取付部材16の内周側へ延出する段差部38が形成されている。外側取付部材16内には、段差部38の下部側に全体として略肉厚円板状に形成されたダイヤフラムリング40、このダイヤフラムリング40上に配置された略ハット状のメンブラン押さえ部材42、及びこのメンブラン押さえ部材42上に配置された円盤状のオリフィス構成部材44が挿入され、オリフィス構成部材44の上面における外周部は弾性体18の段差部38に当接している。
【0031】
これらのダイヤフラムリング40、メンブラン押さえ部材42、及びオリフィス構成部材44が内周側に挿入された外側取付部材16は、かしめ部32が内周側へかしめられる。これにより、ダイヤフラムリング40、メンブラン押さえ部材42、及びオリフィス構成部材44が外側取付部材16内における弾性体18の段差部38とかしめ部32との間に固定される。
【0032】
また、ダイヤフラムリング40の内周面には、上方へ向って凸状のカップ状に形成されたゴム製のダイヤフラム46の外周部が全周に亘って加硫接着されている。
【0033】
防振装置本体12内には、外側取付部材16、弾性体18及びダイヤフラム46により外部から密閉された液室空間が形成されており、この液室空間は、オリフィス構成部材44により弾性体18を隔壁の一部とする主液室48と、ダイヤフラム46を隔壁の一部とする副液室50とに区画されている。
【0034】
防振装置本体12では、副液室50の隔壁の一部を形成するダイヤフラム46の外側の空間が外部と連通しており、これにより、ダイヤフラム46は、副液室50内の液量変化に応じて副液室50の内容積を拡縮するように弾性変形可能とされている。また主液室48は、その内容積が弾性体18の弾性変形に伴って拡縮する。
【0035】
またオリフィス構成部材44には、外周面に周方向へ延在する凹状の上段溝部52及び下段溝部54が設けられており、これらの溝部52、54は、その一端部同士が接続穴(図示省略)を通して互いに連通している。またオリフィス構成部材44には、上段溝部52の他端部から内周側(軸心S側)へ向って第1連通口(図示省略)が穿設されると共に、下段溝部54の他端部から内周側へ向って第2連通口(図示省略)が穿設されている。ここで、溝部52、54は、その外周側が被覆部36を介して外側取付部材16の内周面へ圧接して閉止されることにより、主液室48と副液室50とを互いに連通させる制限通路であるオリフィス56を構成している。
【0036】
ここで、主液室48、副液室50及びオリフィス56内には、水、エチレングリコール、シリコーンオイル、プロピレングリコールおよびそれらの溶液、混合液等の液体が充填されており、この液体はオリフィス56を通して主液室48と副液室50との間で流通可能とされている。このオリフィス56は、その路長及び断面積がシェイク振動の振幅及び周波数に適合するように設定(チューニング)されている。
【0037】
オリフィス構成部材44には、中央部に断面円形状の貫通孔58が形成されている。この貫通孔58は、上端側が小径部58Aとされ、下端側が小径部58Aよりも大径な大径部58Bとされている。この大径部58Bには、前述のメンブラン押さえ部材42の筒部42Aが挿入されている。このメンブラン押さえ部材42の筒部42Aの下端部から外周側へ張り出したフランジ部42Bは、オリフィス構成部材44の下端部とダイヤフラム46を介してダイヤフラム46の上端部とで挟持されている。
【0038】
また、オリフィス構成部材44の小径部58Aと大径部58Bとの間の段差部58Cと、メンブラン押さえ部材42の筒部42Aの上部を塞ぐ天板部42Cの外縁部との間には、両者に挟持されたゴムを素材とした略円板状のメンブラン62の縁部が挟持されている。
【0039】
メンブラン押さえ部材42の天板部42Cには、開口部66が複数個穿設されている。これらの開口部66を通して天板部42Cとメンブラン62との間に形成された収納室68は副液室50と互いに連通している。
【0040】
(防振装置用ブラケット)
図1、図2、図4に示すように、防振装置用ブラケット70は、防振装置本体12の少なくとも一部を収容するケース74、及びこのケース74を車体へ固定するための脚部86及びステイ部材88を有している。なお、図2では、脚部86の図示を省略している。
【0041】
図2及び図5に示すように、ケース74は、エンジンブラケット90の延出側(以下では、適宜エンジン側と記載。)に対して反対側(以下では、適宜反エンジン側と記載。)の側部が開放されている。なお、本実施形態では、ケース74の下部も開放されている。このケース74は、変位規制部の一例としての上板部78と、防振装置本体12の外周を囲む側板部82と、上述のケース74の開放部76と、を含んで構成されている。
【0042】
上板部78は、防振装置本体12の主振動入力方向(軸方向Sと同じ方向)に対し直交している。また、上板部78は、平坦な上面78Aがエンジンブラケット90の平坦な下面90Aに対向し、下面78Bが内側取付部材14の延出部22の上面22Cに対向している。なお、上面78Aは第1変位規制面の一例であり平坦面である、下面78Bは第2変位規制面の一例であり平坦面である。
【0043】
また、上板部78には、上面78Aよりも外方(図2では上方)でエンジンブラケット90に連結される内側取付部材14の筒部20が貫通する貫通孔80が形成されている。図3及び図5に示すように、本実施形態の貫通孔80は、車両前後方向の長さが長い長穴とされている。また、図3に示すように、貫通孔80の車両前後方向の長さは、延出部22の車両前後方向の長さよりも長くなっている。なお、図3では、ストッパゴム34の図示を省略している。
【0044】
図1及び図2に示すように、上板部78の上面78Aには、板状に形成したバウンドストッパゴム92が載置されている。このバウンドストッパゴム92を介してエンジンブラケット90の下面90Aと上板部78の上面78Aとが当接するようになっている。
なお、図6に示す二点鎖線の斜線部S1は、エンジンブラケット90によって上板部78が受ける荷重(主振動方向の入力)の分布を示し、図3に示す二点鎖線の斜線部S2は、延出部22によって上板部78が受ける荷重(主振動方向の入力)の分布を示している。
【0045】
側板部82は、上板部78と一体形成されている。この側板部82は、貫通孔80を中心にしてエンジン側が該エンジン側へ凸となるように湾曲している。なお、主振動入力方向から見て、側板部82は、略C型形状とされている。
【0046】
また、図2に示すように、側板部82の開放された下部には、前述の固定リング72が嵌入されて接合されている。これにより、側板部82に固定リング72を介して外側取付部材16が固定されている。
【0047】
また、側板部82の車両前後方向に対向する一対の前後板部84には、上部内面に内側取付部材14の前後ストッパゴム部34Aが当接する車両幅方向に沿って延びる平坦なストッパ面84Aが形成されている。また、一対の前後板部84には、下部外面に下方に延びる前述の脚部86が接合されている。これらの脚部86は、先端側にそれぞれ連結穴86Aが穿設され、連結穴86Aを挿通するボルト(図示省略)により車体側へ締結固定される。また、固定リング72のケース74から露出した部分の外周面には、車体の例えば、タイヤハウスへ向かって延びるステイ部材88が固定されている。このステイ部材88は先端側に連結穴88Aが穿設され、連結穴88Aを挿通するボルト(図示省略)により車体のタイヤハウスへ締結固定されるようになっている。
【0048】
また、図3及び図5に示すように、ケース74の開放部76には、該ケース74の外側に張り出すフランジ部89が形成されている。本実施形態のフランジ部89は、側板部82の開放部76を構成する端部をケース74の外側へ折り返し、上板部78の開放部76を構成する端部をケース74の外側へ折返し、これらの折返し部分を一体化して構成されている。
【0049】
図3に示すように、主振動入力方向から見て、ケースの開放部76は、この開放部76から内側取付部材14の延出部22が出っ張るように形成されている。
【0050】
また、本実施形態では、ケース74及びフランジ部89が、金属材料を一体に絞り加工して形成されている。
【0051】
次に、上記のように構成された本発明の第1実施形態に係る防振装置用ブラケット70、及び防振装置10の作用について説明する。
【0052】
防振装置10では、防振装置用ブラケット70の上板部78に、エンジンブラケット90に対向する上面78Aが形成されると共に内側取付部材14の延出部22の上面22Cに対向する下面78Bが形成されていることから、車体に連結された外側取付部材16に対してエンジン側に連結されるエンジンブラケット90及び内側取付部材14の主振動入力方向の移動が、各々バウンドストッパゴム92、ストッパゴム34を介した当接により規制される。これにより、車体に対するエンジンの主振動入力方向の変位が規制される。
【0053】
また、防振装置用ブラケット70では、ケース74のエンジンブラケット90の反延出側(反エンジン側)の側部が開放されて開放部76とされていることから、ケース74の開放部76の延長線上にエンジンが配置されない。このため、上記防振装置用ブラケット70は、例えば、ケース74のエンジンブラケット90の延出側の側部が開放されて開放部の延長線上にエンジンが配置されているものと比べて、ケース74を開放部76側(反エンジン側)へより延長(例えば、図3の符号Yの長さを延長)することができる。このようなケース74の延長にともないケース74の上部を構成する上板部78も反エンジン側へ延長されるため、上面78Aや下面78Bの面積も増加する。これにより、エンジンブラケット90の下面90Aと平坦な上面78Aとのバウンドストッパゴム92を介した当接面積が増加し、内側取付部材14の延出部22の上面22Cと平坦な下面78Bとのストッパゴム34を介した当接面積が増加する。このように当接面積が増えることにより、エンジン側に連結されるエンジンブラケット90及ぶ内側取付部材14との当接による上板部78への入力を分散させることができ、上板部78、すなわち、防振装置用ブラケット70の変形を抑制することができる。
【0054】
さらに、ケース74の延長にともない側板部82の前後板部84も反エンジン側へ延長されるため、ストッパ面84Aが延長され、ストッパ面84Aと延出部22の外周面22Aとのストッパゴム34を介した当接面積が増加する。これにより、延出部22との当接による前後板部84への入力を分散させることができ、前後板部84、すなわち、防振装置用ブラケット70の変形を抑制することができる。
【0055】
また、上記防振装置用ブラケット70では、ケース74の反エンジン側の側部が開放されて開放部76が形成されていることから、例えば、ケース74のエンジン側の側部が開放されて開放部が形成されているものと比べて、エンジンルーム内に侵入した雨水(液体)などの水分がエンジン側(外部)からケース74内に侵入するのが抑制される。これにより、防振装置本体12を構成する金属部品の錆の発生が抑制される。
【0056】
以上のことから、防振装置用ブラケット70は、エンジン側に連結されるエンジンブラケット90及び内側取付部材14との当接による変形を抑制することができ、かつ、エンジン側からの液体の侵入を抑制することができる。
また、このような防振装置用ブラケット70を用いるため、防振装置10は、耐久性が向上する。そして、防振装置10で用いられるストッパゴム34及びバウンドストッパゴム92は、当接時に受ける入力が上記当接面積の増加により分散されるため、寿命が延びる。
【0057】
また、ケース74の側板部82を、エンジン側が該エンジン側へ凸となるように湾曲させていることから、主振動入力方向の剛性が向上する。
さらに、ケース74の開放部76に該ケース74の外側へ張り出すフランジ部89が形成されていることから、ケース74の開放部76の剛性が向上する。
【0058】
また、図3に示すように、防振装置用ブラケット70では、主振動方向から見て、ケース74の開放部76が、該開放部76から内側取付部材14の延出部22が出っ張るように形成されている。このため、内側取付部材14が外側取付部材16に対して主振動入力方向に対して直交する方向、ここでは、車両前後方向に変位した際に、該延出部22がストッパゴム34を介してストッパ面84A及びケース74の開放部76に当接する。ここで、ケース74の開放部76は、フランジ部89によって剛性が向上していることから、内側取付部材14との当接によるケース74、すなわち、防振装置用ブラケット70の変形が抑制される。
【0059】
そして、防振装置用ブラケット70では、ケース74及びフランジ部89が、金属材料を一体に絞り加工して形成されていることから、例えば、ケース74が金属材料を一体に絞り加工して形成されていないものと比べて、防振装置用ブラケット70の強度が向上する。
【0060】
[その他の実施形態]
第1実施形態の防振装置用ブラケット70では、図3に示すように、ケース74の側板部82の下部に防振装置本体12が嵌入された固定リング72が固定されているが、本発明はこの構成に限定されず、図7に示す防振装置用ブラケット110のように、防振装置本体12が嵌入された環状の固定リング114の上端部に外周側へ張り出すフランジ部114Aを形成し、このフランジ部114Aを挟み込むようにケース111の側板部112の下端部112Aを折り返して側板部112と固定リング114とを連結固定する構成としてもよい。
また、図8に示す防振装置用ブラケット120のように、ケース121の側板部122の下端部を外周側へ折り返してフランジ部122Aを形成し、防振装置本体12が嵌入された環状の固定リング124の上端部124Aを、上記フランジ部122Aを挟み込むように折り返して側板部122と固定リング124とを連結固定する構成としてもよい。
【0061】
第1実施形態の防振装置用ブラケット70では、図1に示すように、ケース74に一対の脚部86が接合される構成とされているが、本発明はこの構成に限定されず、図9に示す防振装置用ブラケット130のように、ケース131の側板部132の下端部をケース131の外側へ折り返し、この折返し部分に連結穴134を形成してボルトを用いてケース131と車体とを連結固定する構成としてもよい。
また、前述の防振装置用ブラケット70、110、120、130を上下逆にして取付けても構わない。
【0062】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
10 防振装置
12 防振装置本体
14 内側取付部材
16 外側取付部材
18 弾性体
22 延出部(内側取付部材の一部)
70 防振装置用ブラケット
74 ケース
75 開放部(ケースの開放部分)
78 上板部(変位規制部)
78A 上面(第1変位規制面)
78B 下面(第2変位規制面)
80 貫通孔
89 フランジ部
90 エンジンブラケット(連結部材)
110 防振装置用ブラケット
111 ケース
120 防振装置用ブラケット
121 ケース
130 防振装置用ブラケット
131 ケース
FR 車両前後方向
W 車両幅方向
U、D 上下方向
S 軸方向(主振動入力方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに向かって延出し該エンジンに連結される連結部材に連結される内側取付部材と、車体に連結される外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体とを有する防振装置本体を、車体に支持する防振装置用ブラケットであって、
前記車体に連結され、前記防振装置本体を収容すると共に前記外側取付部材が固定され、前記連結部材の延出側に対して反対側の側部が開放されたケースと、
前記ケースの上部又は下部を構成し、前記ケース外方で前記連結部材に連結される前記内側取付部材が貫通する貫通孔が形成され、前記ケース外側に前記連結部材に対向する第1変位規制面が形成され、前記ケース内側に前記内側取付部材の一部に対向する第2変位規制面が形成された変位規制部と、
を有する防振装置用ブラケット。
【請求項2】
前記ケースの開放部分には、前記ケースの外側へ張り出すフランジ部が形成されている請求項1に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項3】
前記主振動入力方向から見て、前記ケースの開放部分は、該開放部分から前記内側取付部材の一部が出っ張るように形成されている請求項2に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項4】
前記第2変位規制面は、前記連結部材の延出側に対して反対方向へ延びる平坦面である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項5】
エンジンに向かって延出し該エンジンに連結される連結部材に連結される内側取付部材と、車体に連結される外側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材との間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体とを有する防振装置本体と、
前記防振装置本体を前記車体に支持する請求項1〜4のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットと、
を有する防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172734(P2012−172734A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33831(P2011−33831)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】