説明

階調変換装置及び色変換装置

【課題】複数のプリンタヘッドのカラーマッチングをとるための色変換特性のデータや、プロジェクタの色補正の際の補正データを少なくし、特にγ補正等の階調変換処理での補正データをより少なくし、これら補正データを少ないメモリ容量で保持できる階調変換装置及び色変換装置を提供すること。
【解決手段】プロジェクタやプリンタ等の画像出力装置において、当該出力装置の各領域または各画素の階調変換特性又は色変換特性を、主成分分析法により圧縮することにより、階調変換又は色変換の補正データを少ないメモリ容量で保持でき、かつ圧縮しない場合とほぼ同等に階調変換又は色変換することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,デジタルカラー複写機,カラープリンタ、プロジェクタなどにおける階調または色信号を変換する階調変換装置及び色変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,カラー画像を扱うメディアは様々な形態で発達してきている。例えば、カラースキャナにより文字・画像を読み取り,コンピュータのディスプレイ上で編集・加工し,その結果をカラープリンタなどによりプリント出力するシステムが知られている。
【0003】
しかし,この場合,ディスプレイ上で再現される色とプリント出力される色とは色再現の方法や混色系(RGB,CMY)の違い,および色再現範囲(ガマット)の不一致により相互に異なる色となることもよく知られていることである。
【0004】
特に、プリンタなどの出力装置ではその印刷速度を上げるために複数のヘッドを並列で駆動する方式がとられており、これら複数のヘッドの出力特性を考慮して、複数の色変換特性(カラープロファイル)のデータを持つようにして、全てのヘッドでのカラーマッチングを採る方法が考えられる。
【0005】
また一方、複数のプロジェクタを用いた表示システムも開発されている。このシステムでは特開2000−253263号公報のようにプロジェクタの投影画像をそれぞれオーバーラップさせ、複数のプロジェクタの画像が繋がるように色補正を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,プリンタの場合に上述の複数のヘッドの数を多くすると、プリンタのスループット(効率)が向上する反面、大量の色変換特性(カラープロファイル)のデータを持つようにして、全てのヘッドでのカラーマッチングをとるようにしなければならなかった。このため、大量のメモリを搭載しなければならないという問題があった。
【0007】
特に、高速プリントを目標としたシステムではプリンタヘッドを図17のように副走査方向(用紙搬送方向)に複数並べて印刷するが、各ヘッドが位置ずれなく取り付けられていない場合には印字領域に色むらを生じてしまう。
【0008】
例えば、図17の例ではCMYK(シアン,マゼンタ,イエロー,黒)の4色の各ヘッドの並びが、C(シアン)ヘッドだけ異なることを示している。この場合に印字結果は図18のように、KMYヘッドの印字ドットは同じ位置に印字されるが、Cヘッドだけが異なる位置に印字されてしまう。つまり、図18ではヘッドの左側は一致しているが、ヘッドの右側に行くに従いずれが大きくなることを示しておりヘッド内で色むらが生じてしまう。
【0009】
通常、カラープリンタシステムでは色処理にカラープロファイルが利用されるが、これはヘッドがきちんと位置決めされ、印字されるドットが全て同じ位置に印字されることを前提に作成されている。なお、カラープロファイルは、それぞれのカラープリンタからどんな色が出力されるかという情報が書かれたものであり、オペレーティングシステム(OS)のカラーマネジメントシステム(CMS)という機能でカラープロファイルの設定が行えるようになっている。
【0010】
図18のような場合には、ヘッド印字幅内で各色の印字ドットの重なりが異なり、1ヘッドの印字幅の中でも印字ドット間で印字色の特性が異なることから、ヘッド内でカラープロファイルを切り替えるような処理が必要となる。例えば、ドットまたは微小領域毎にカラープロファイルを切り替えるとすれば、色むらもなくなり良好な印字が期待されるが、カラープロファイルのデータ量が莫大になる。
【0011】
カラープロファイルによる処理機能を実現するには、図19のようにCMYK変換マトリクスとγ補正部で構成したり、図20のようにCMYK変換テーブルのみで構成する場合がある。
【0012】
図19では、各ドットに対応したRGB入力データが、それぞれのドットに対応したカラープロファイル、つまりCMYK変換マトリックスにより、印字色のC、M、Y、Kに変換されてから、それぞれのドットに対応したγ補正が行われ、対応する印字ヘッドに出力され印字される。なお、各ドットの色特性の違いのほか、濃度特性も違う場合は、図19のγ補正が必要であるが、各ドットに濃度特性の違いがない場合は図20のようにRGB入力データがCMYK変換テーブルでCMYKデータに変換するだけの処理手順となる。
【0013】
一方、プロジェクタを用いた表示システムでは、図21のようにプロジェクタ単体でのRGBデータの色補正はマトリクス補正とRGB各色に対するγ補正により行われる。プロジェクタのγ特性はDLPプロジェクタ(DLPはDigital Light Processingの略)では画面内でほとんど均一であるが、LCDプロジェクタ(LCDはLiquid Crystal Displayの略)では画面内でのばらつきが10%あるためγ補正は画像内で適応的に行う必要があり、この場合にはγ補正部が莫大になる。
【0014】
また、特開2001−215642号公報に示すものは、図22のように複数のプロジェクタ10r,10sを利用して高精細表示を行うものであるが、スクリーン20上でのオーバーラップ部分の輝度上昇を抑えるために光量制限手段30として遮光板を利用している。この遮光板は光束を遮ることになるため、LCDプロジェクタの場合にはこの遮光部分(図22の領域A)で急激にγ特性が変化する。この変化に対応するには画素毎、または微小領域毎に補正するγ特性を変化させる必要があり、やはりγ補正演算が膨大となる。
【0015】
本発明は上記の状況に鑑み、複数のプリンタヘッドのカラーマッチングをとるための色変換特性のデータや、プロジェクタの色補正の際の補正データを少なくし、特にγ補正等の階調変換処理での補正データをより少なくし、これら補正データを少ないメモリ容量で保持できる階調変換装置及び色変換装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、画像信号の表示または印刷を行う出力装置の階調変換特性に合わせて、入力の画像信号に対して階調の変換を行う階調変換装置において、複数の領域または画素の階調変換特性に対して、複数の領域または画素における階調変換特性の平均特性と、平均特性と各々の領域または画素での階調変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を記憶する手段と、各領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、各々の領域または画素の画像入力信号に対して、前記主成分信号と前記主成分の係数との線形結合によって階調変換特性を表現する手段とを備えていることを特徴とする。
【0017】
なお、第1の発明の階調変換装置において、前述の平均特性と、主成分信号を量子化して記憶する場合に、各々の信号の寄与率によって、量子化のビット幅を変更する手段を備え、記憶させることが好ましい。
【0018】
第2の発明は、マルチバンドの入力のカラー画像信号に対して、CIE−XYZまたはL*a*b*等のデバイスインディペンデントな色空間に変換した後、出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に合わせて、カラープロファイルの変換を行う色変換装置において、複数の領域または画素のカラープロファイル変換特性の平均特性と、平均特性と各々の領域または画素でのカラープロファイル変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を記憶する手段と、各々の領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、各々の領域または画素で出力すべきデバイスインディペンデントな色信号に対して、前記主成分信号と前記主成分の係数との線形結合によってカラープロファイル変換特性を表現する手段とを備えていることを特徴とする。
【0019】
なお、第2の発明の色変換装置において、前述の平均特性と、主成分信号を量子化して記憶する場合に、各々の信号の寄与率によって、量子化のビット幅を変更する手段を備え、記憶させることが好ましい。
【0020】
第3の発明は、画像信号の表示または印刷を行う出力装置の階調変換特性に合わせて、入力の画像信号に対して階調の変換を行う階調変換装置において、複数の領域または画素の階調変換特性に対して、複数の領域または画素における階調変換特性の平均特性と、平均特性と各々の領域または画素での階調変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号と、各領域または画素における主成分信号の係数を算出し、さらに主成分の係数空間において、係数の分布を元にクラスタリングを行い、標本となる係数または係数ベクトルを算出する手段と、前述の平均特性と、差分特性の主成分と標本となる係数または係数ベクトルから、標本となる階調変換特性の曲線を算出する手段と、前述のクラスタリングにより、各クラスタを構成する係数の集合と標本となる係数を対応させる手段と、領域または画素における主成分の係数と標本となる階調変換特性を結びつけるようなルックアップテーブルを作成する手段とを備え、前述の標本となる階調変換特性の曲線と、各領域または画素に対応するルックアップテーブルを記憶し階調変換を行うことを特徴とする。
【0021】
第4の発明は、マルチバンドの入力のカラー画像信号に対して、CIE−XYZまたはL*a*b*等のデバイスインディペンデントな色空間に変換した後、出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に合わせて、カラープロファイルの変換を行う色変換装置において、出力装置の複数の領域または複数の画素の色出力特性に基づいて、作成したガマットマッピングの重複した領域のみを抽出し、その重複した領域に対して、複数の領域のカラープロファイル変換特性に対して、平均特性と各々の領域でのカラープロファイル変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を算出する手段と、各領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、前記出力装置の各々の領域または画素に対応したカラープロファイル変換特性を前記差分特性の主成分係数によって表現する手段とを備えていることを特徴とする。
【0022】
なお、第4の発明において、出力装置の複数の領域または複数の画素の色出力特性に基づいて、作成したガマットマッピングの重複した領域と、重複の無い領域を分割し、重複している領域に対して、主成分の係数として記憶し、重複の無い領域に関しては、個々のカラープロファイルの変換特性を記憶し、前記の出力装置の複数の領域または複数の画素に対応するカラープロファイル変換特性を、前記重複領域の主成分の係数と、前記非重複領域のカラープロファイル変換特性の合成により生成する手段を、さらに備えていることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態の階調変換装置に係るものである。図1は階調変換装置の構成を示している。この実施の形態は、プロジェクタへの応用を例として示している。
【0024】
プロジェクタは画面内の各位置で階調変換特性(一般にγ特性と呼ぶ)が異なる。ここで各位置とは、具体的には画面を構成する複数の領域または画素を意味している。画面内の各位置でγ特性が異なるために、輝度を上げていくと面内に色むらが生じる。この色むらを解消するためには、プロジェクタ自身のもつγ特性をキャンセルするように、プロジェクタの画面内の各位置での入力信号に対して階調変換(逆γ補正演算)を行う。本実施形態は、この逆γ補正演算を少ないメモリ容量で行うようにしたものである。
【0025】
画像信号生成手段101で生成された入力の画像信号101に対して、第1のレベル変換手段102にて複数の領域または画素における逆γの平均特性のレベル変換を行う一方、第2のレベル変換手段103−1,103−2,…103−Nにて前出の平均特性と各々の領域または画素での逆γの差分特性の主成分によるレベル変換を行う。なお図1中の256Byte*Nは、データ容量を表しており、主成分を256個の1バイトの整数で表した場合に第N成分までで合計256byteのデータをN個記録する必要があることを示している。
【0026】
また一方、アドレス生成手段104にて生成された各領域または画素のアドレスに対して、各領域または画素の主成分の係数a1,a2,…aNを持たせたテーブル105をメモリ手段に記憶しておく。
【0027】
そして、第2のレベル変換手段103−1,103−2,…103−Nにて各々の領域または画素での逆γの差分特性の主成分でレベル変換した信号に対して、乗算器106−1,106−2,…106−Nでテーブル105に記憶された各領域または画素に対する主成分の係数a1,a2,…aNを乗算する。なお、上述のNは主成分の数である。
【0028】
乗算器106−1,106−2,…106−Nによる乗算結果は、加算器107において各主成分の和が取られ、さらにその加算結果と第1のレベル変換手段102からの平均特性との和を加算器108で取り、階調変換された信号値Sとして出力される。
【0029】
次に、上述の第1の実施形態での、第1のレベル変換手段における逆γの平均特性と第2のレベル変換手段における逆γの差分特性の主成分の各算出方法について説明する。換言すれば、複数の領域または画素の階調変換特性に対して、複数の領域または画素における階調変換特性の平均特性と、この平均特性と各々の領域または画素での階調変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を求める。
【0030】
図2に示すように、予め、領域または画素ごとに測定して求めた階調変換特性(γ特性)をγa,γb,…とする。従来は、γ特性を離散的に求めて、その中間点に関しては、双1次補間等の方法で補完的に求めていた。この方法を用いるにしても、その格子点の数だけの曲線を記憶しておかなければならない。これに対して、本第1の実施形態では、まず全ての領域または画素のγ特性の平均の特性を算出し(図3(a)参照)、それぞれの領域a,b,…でのγ特性と平均の特性との差分特性の主成分分析を行う(図3(b)参照)。
【0031】
差分特性に関して、各領域あるいは画素を試行回数と見なし、共分散行列を求め、その行列に対して正規直交変換を行う。このようにして求めた主成分とそれぞれの差分特性を各々係数ベクトルと見なしそれらの内積を各領域または画素における主成分の係数a1,a2,…aNとする。
【0032】
差分の信号に対して主成分分析を行うのは、2つの効果がある。1つは、各γ特性に対して平均特性の寄与と主成分の寄与に分割できるために、それらの寄与率に応じて量子化のビット幅を変更できるためである。従って、平均特性と主成分信号を量子化して記憶する場合に、各々の信号の寄与率によって、量子化のビット幅を変更する手段を設け、メモリに記憶させることで記憶容量を少なくできる。例えば、輝度信号を256階調で表現する場合に、原信号に対しての第1主成分の寄与率が平均特性に対して10%程度である場合には、平均の特性を8bitで表し、第1主成分は5bitで良い、さらに高次の主成分では寄与率が下がるのでそれに応じて記憶手段としてのレジスタのビット幅を変更するようにすれば良い。もう1つは、直交変換の計算の工夫で、共分散行列から固有ベクトルを求めるに際して、仮にランク落ちがあったとしても誤差を解消することが出来るからである。
【0033】
このようにして、逆γの平均特性と逆γの差分特性の主成分を算出して記憶し、図4のように各領域または画素のγ特性はこれらの線形結合で表現する。各領域または画素に対しては各主成分の係数を求めるようにすればよい。記憶する主成分の次数に関しては、復元できるγ特性と実際の特性の誤差によって評価し、実用上問題にならない誤差になるまでの次数を採用する。
【0034】
第1の実施形態では、入力画像信号における各領域または画素のγ特性をキャンセルするような階調変換を行うために、実際にメモリ手段に記憶するのは、平均γ特性の逆変換特性と、差分信号の主成分の逆変換特性ということになる。これにより、補正に必要なメモリ容量が少なくて済むという利点を生ずる。
【0035】
図5は、図1の本実施の形態に対する変形例である。図5では、図1における第1のレベル変換手段102で画像信号に逆γの平均特性を乗算した信号を、加算器108に入力する一方、第2のレベル変換手段103−1’,103−2’,…103−N’に入力する構成としたことと、これに伴い、第2のレベル変換手段103−1’,103−2’,…103−N’を構成する主成分を記憶する各レジスタには、逆γの差分特性の主成分に平均のγ特性でレベル変換したものを記憶しておく構成としたことである。このような構成により、図1と同様な作用効果が得られる。なお図5中の(逆γの差分特性の主成分)*(平均のγ特性)は、それぞれの特性曲線がベクトル(数の配列)で表せたときの積を表している。この積はベクトルの要素毎に積を示している。すなわち逆γ特性のk番目の成分と平均のγ特性のk番目の値の積を出力特性のk番目の値とするものである。
【0036】
〔第2の実施の形態〕
図6〜図11は本発明の第2の実施の形態の色変換装置に係るものである。この実施の形態は、カラープリンタへの応用を例として示している。
【0037】
従来のカラープリンタのような出力装置では、複数のプリンタヘッドによるマルチヘッドを用いる場合に、各プリンタヘッドの色変換特性の差違をキャンセルする必要がある。図6(a)に示すように、デバイスインディペンデントなXYZ色空間で或る値を示す色Xi,Yi,Ziに対して、第1のプリンタヘッド(1)を制御する信号をC,M,Y,Kとする。第2の別のヘッド(2)では図6(b)に示すようにXi,Yi,Ziに対して制御信号をC’,M’,Y’,K’としなければならないとする。これらの発色を統一させようとすると各ヘッドごとに色変換を行うカラーマネージメントのテーブルを持っていなければならない。従って、カラープリンタは、図7に示すようにカラー信号生成手段121で生成されたカラー信号は分配器122にて複数の信号に分解され、各信号ごとの変換テーブル(1,2,…N)を通して各ヘッド(1,2,…N)に供給される構成とすることが必要があり、ヘッドの数が多くなるほど変換テーブルの数も多くなり大量のメモリを必要とする。なお、カラープロファイル変換の場合、3次元の引数(RGB)に対して4つの変数(CMYK)を与えるようなテーブルになっている。
【0038】
そこで、本第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態で図2、図3を用いて説明した主成分分析の手法と同等に全てのヘッドのカラープロファイルの平均特性を求める。なお第2の実施の形態では、γ特性あわせるかわりに各プリントヘッドの色変換特性をあわせる。例えば、まず算術平均を用いてCMYKの各インク色ごとに各プリンタヘッドの領域または画素ごとの平均特性を求める。次に、それぞれのヘッドに対して平均のカラープロファイルの差分特性を求める。各ヘッドの差分特性に対して、主成分分析を行う。次に各ヘッドの差分特性と主成分の内積から主成分の係数を算出する。
【0039】
このようにして求めた平均のカラープロファイルと、差分特性の主成分を記憶する。採用する主成分の次数に関しては上述と同様に誤差を評価して行う。
【0040】
図8及び図9は、第2の実施形態の色変換装置の構成を示している。
図8はCMYKの1個の出力特性を示す構成である。図9ではこれらの特性をCMYKの各色に割り当てた構成になっている。図9では、カラー信号生成手段201からのカラー信号(XYZ)が供給されカラープロファイルの変換を行う色変換装置をCMYKの4つのバンド分で構成し(符号200−1〜200−4にて示す)、プリンタヘッドのCMYKの4つのインクヘッド(符号203−1〜203−4にて示す)を制御する構成となっている。
【0041】
図8において、各ヘッド(例えばヘッド203−1)に対して、上述の方法で求めた主成分の係数a1,a2,…aNをテーブル204としてメモリ手段に記憶する。この場合、CMYKの各信号に関して必要な主成分の次数分だけのテーブルを持っている。XYZカラー信号201に対して、差分特性に関する第1,第2,…第Nの主成分を有する変換手段202−1,202−2,…202−Nにより差分のカラー成分を求め、各ヘッドに割り当てられた相当する色の主成分の係数a1,a2,…aNを乗算器205−1,205−2,…205−Nにて乗ずる。そして、ヘッド個々の出力特性信号から差分特性の主成分に係数a1,a2,…aNを乗じた信号の和を加算器206にて求め、さらに加算器207でカラー信号生成手段201からの平均のカラープロファイルに加算して、色変換された信号値Sを得る。なお、通常プリンタヘッドではインク色としてCMYKを用いており加法・減法混色が成立しないので、カラー信号の全ての組み合わせに対してヘッドの各色の特性を持っていなければならない。
【0042】
マルチヘッドのプリンタでは、図10(a)〜(c)に示す手順で、測色の結果から複数のガマットマッピングのデータ圧縮を行う。これについて図10及び図11を参照して説明する。
【0043】
図10では、各プリンタヘッドに対して、図10(a)のような所定の制御信号によって例えばインクの吐出を制御して、その吐出結果を測色計によって図10(b)のようにXYZ色で測定する。この関係の逆変換を行い、図10(c)に示すようにXYZ色空間からインクの吐出量を求められるようなテーブルを作成する。これを複数のヘッドについて行うとガマット境界が一致しないという不具合が生じる。これによって、彩度または輝度がガマットマッピングの周辺になるにつれて表現できない色が出てくる。そこで、図11に示すように、ガマットマッピングの重複した領域のみを抽出し、その重複した領域に対して、複数の領域のカラープロファイル変換特性に対して、平均特性と各々の領域でのカラープロファイル変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を算出することによって、出力装置の、各領域、あるいは各画素に対応したカラープロファイルを主成分の係数として記憶する。つまり、重複した領域については、主成分による圧縮が行われる。さらに、重複の無い領域に関しては、個々領域または画素に対するカラープロファイルの変換特性を非圧縮で記憶する。この様にして得られた、主成分の係数と非圧縮の色変換特性を合成して記憶させ、出力装置の複数領域または複数画素に対応するカラープロファイル変換特性とする。
【0044】
なお、本第2の実施形態では、ヘッド間で色が異なることを前提に説明をしたが、図17のような場合にはヘッド内でも色が異なることもあり、このような場合に対しても本実施形態が適用できることは当然である。
【0045】
以上述べた第1,第2の実施形態では、記憶するデータ容量が減少する利点を有しているが、乗算器を必要としており演算負荷は重いという欠点を有する。そこで、次の第3の実施形態では演算を非常に軽くする方式に関して説明する。
【0046】
〔第3の実施の形態〕
図12及び図13は本発明の第3の実施の形態の階調変換装置に係るものである。
【0047】
演算を軽くする方式としては、補正するγ特性を予め計算しておき、単に選択する方式とするものである。但し、「γ特性曲線の8ビットの入力信号に関して0〜255のレベルをN個に分割して、N次元の係数空間に展開してクラスタリングを行うことによって、所定の誤差以内に収まるような標本のγ特性曲線を求める方法」に比べて、図12に示すように、予め主成分分析を行って各サンプルの特徴曲線を主成分の係数空間によって展開する方法を用いれば、クラスタリングによる分離の効率が良い。このとき前述のように計算の精度を考慮して、平均特性と差分特性に分離してから、主成分分析を行うようにしても良い。
【0048】
まず、図12のように、主成分の係数空間でクラスタリングを行い主成分の係数の標本値を求め、この標本値から、標本となるγ特性曲線を求める。このときクラスタの大きさから誤差を評価し、実用上問題とならない程度の誤差に収まるようにクラスタリングを行う。
【0049】
図12の楕円は、そこに含まれる各点*は主成分の係数(1〜N)の値をもったN次元の値で、各点をクラスタ(楕円)で分類することによって、クラスタの代表値でそのクラスタに含まれる各点の特性を表す。すなわち、このようなクラスタリングを行わなかった場合、各点*の特性を記憶しなければならないが、クラスタリングを行うことによって各点*がどのクラスタに帰属しているかということだけを記憶しておけばよいので、メモリ容量の節約になる。各クラスタの代表値のことを「標本」と言っている。
【0050】
各クラスタを構成する係数の集合と標本となる係数が結びつけられているので、或る領域または画素における主成分の係数と標本となる階調変換特性を結びつけるようなルックアップテーブルが作成できる。
【0051】
そして、前述の標本となる階調変換特性の曲線と、各領域または画素に対応するルックアップテーブルとをそれぞれメモリ手段に記憶して、階調変換を行う。
【0052】
図13は上述した第3実施形態の階調変換装置の構成を示している。N個のγ特性を記憶したγ変換部401−1,…,4013−Nと、領域または画素における主成分の係数と標本となるγ特性を結びつけるテーブルを記憶したブロック対応γテーブル番号メモリ4003と、選択回路402とで構成されており、第1,第2実施形態のような演算回路は必要としない。第1〜第Nのγ変換部401−1,…,4013−Nに記憶されたγ特性は、上述のクラスタリングによって求めた標本のγ特性である。ブロック対応γテーブル番号メモリ4003に記憶するテーブルは、或る指定した領域または画素の主成分の係数とクラスタである標本のγ特性を対応させたルックアップテーブルになっている。このルックアップテーブルに基づき選択回路402でどのγ特性のカーブを用いるかが選択され、選択回路402から階調変換された信号値Sとして出力される。
【0053】
〔第4の実施の形態〕
図14〜図16は本発明の第4の実施の形態の色変換装置に係るものである。
【0054】
本第4の実施形態では、本発明をプリンタに応用する際のカラープロファイルの作成に関して説明する。図18に示したように、CMYKヘッドに位置ずれがある場合には最適にはヘッドのノズル毎にカラープロファイルを測定すべきであるが、処理工数が膨大になるため、所定エリア毎にプロファイルを測定するのが現実的である。
【0055】
図14に示すように例えばヘッド印字幅の1/5〜1/10程度の領域に対応したカラープロファイルを測定するのが処理工数的も有効である。そして、この図14のように各領域に対応してカラーパッチを印字する。パッチ数はプロファイルの作成方法にもよるがCMYKをそれぞれ8段階に分けるとすれば、8*8*8*8=4096パッチとなる。図14のハッチング部分が4096パッチあることを示している。なお、印字したパッチはをカメラや色度計等で撮影して、従来の方法を利用して各色の補正のための階調特性を算出する。
【0056】
また、変形例として図15のような単色のヘッドを複数並べたシステムに利用する場合について説明する。このシステムでは単一のヘッドより大きなエリアを印字できるため、高速なプリントができるというメリットを持つ。但し、ヘッドのつなぎめ付近では色変化が急激におきるため、図14で提案したカラープロファイル測定用のカラーパッチを図16のようにヘッドのつなぎ目付近でより細かくする。このようにカラープロファイル測定用パッチをヘッドのつなぎ目付近で細かくすることにより、パッチ数をあまり多くせずに高精度にカラープロファイルの測定が可能となる。なお、ヘッドが3つ以上繋がる場合等ではオーバーラップ部分の細かさはヘッドの位置ずれの大きさに応じて変化させるようにしてもよい。
【0057】
なお、印字したパッチの撮影に関しては特開2000−168109号公報のようなマルチスペクトルスキャナを利用してもよい。
【0058】
尚、以上述べた実施の形態では、デバイスインディペンデントな色空間としてCIE−XYZ表色系につき説明したが、本発明ではデバイスインディペンデントな色空間としてはCIE−L*a*b*表色系であっても良い。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、プロジェクタやプリンタなどの出力装置の複数の領域または画素ごとの階調変換特性・色変換特性を、平均特性と差分特性の主成分との線形結合で近似的に表現することで、膨大な変換特性データを圧縮し、少ない記憶容量で出力装置の出力範囲の全体における輝度、色補正が行える。出力装置の低コスト化、小型化にもつながるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の階調変換装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態での、第1のレベル変換手段における逆γの平均特性と第2のレベル変換手段における逆γの差分特性の主成分の各算出方法について説明するための図。
【図3】第1の実施形態での、第1のレベル変換手段における逆γの平均特性と第2のレベル変換手段における逆γの差分特性の主成分の各算出方法について説明するための図。
【図4】各領域または画素のγ特性をこれらの線形結合で表現するための図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例の階調変換装置の構成を示すブロック図。
【図6】複数のプリンタヘッドを有する従来のカラープリンタにおける、色変換の不具合を説明するための図。
【図7】複数のプリンタヘッドを有する従来のカラープリンタの構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第2の実施形態の色変換装置の構成を示すブロック図(CMYKの1個の出力特性を示す構成)。
【図9】本発明の第2の実施形態の色変換装置の構成を示すブロック図(図8をCMYKの各色に割り当てた構成)。
【図10】マルチヘッドのカラープリンタにおける、測色の結果からのガマットマッピング(色域圧縮)を行う手順を説明する図。
【図11】マルチヘッドのカラープリンタにおける、測色の結果からのガマットマッピング(色域圧縮)を行う手順を説明する図。
【図12】本発明の第3の実施の形態の階調変換装置に係り、予め主成分分析を行って各サンプルの特徴曲線を主成分の係数空間によって展開する方法を説明する図。
【図13】本発明の第3の実施の形態の階調変換装置構成を示すブロック図。
【図14】カラープリンタにおいて、カラープロファイルを作成する際の、カラープロファイル測定用パッチを示す図。
【図15】単色のヘッドを複数並べたシステムを示す図。
【図16】図15のシステムを有するカラープリンタにおいて、カラープロファイルを作成する際の、カラープロファイル測定用のカラーパッチを示す図。
【図17】カラープリンタに使用されるマルチヘッドのうちのCヘッドが位置ずれして取り付けられている状態を示す図
【図18】図17の印字結果を示す図。
【図19】従来のカラープリンタにおける色変換装置を示すブロック図。
【図20】他の従来例の変換装置を示すブロック図。
【図21】プロジェクタ単体による従来の表示システムにおける色変換装置を示すブロック図。
【図22】複数のプロジェクタを用いた従来の表示システムにおいて階調補正を行う際の不具合を説明する図。
【符号の説明】
102 第1のレベル変換手段(γの平均特性のレベル変換)
103−1,103−2,…103−N 第2のレベル変換手段(平均特性と各々の領域または画素での逆γの差分特性の主成分によるレベル変換)
104 テーブル(各領域または画素の主成分の係数a1,a2,…aNを持ったテーブル)
106−1,106−2,…106−N 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号の表示または印刷を行う出力装置の階調変換特性に合わせて、入力の画像信号に対して階調の変換を行う階調変換装置において、
複数の領域または画素の階調変換特性に対して、複数の領域または画素における階調変換特性の平均特性と、この平均特性と各々の領域または画素での階調変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を記憶する手段と、
各領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、
各々の領域または画素の入力画像信号に対して、前記主成分信号と前記主成分の係数との線形結合によって階調変換特性を表現する手段と
を備えていることを特徴とする階調変換装置。
【請求項2】
前述の平均特性と、主成分信号を量子化して記憶する場合に、各々の信号の寄与率によって、量子化のビット幅を変更する手段を備え、記憶させることを特徴とする請求項1記載の階調変換装置。
【請求項3】
マルチバンドの入力のカラー画像信号に対して、CIE−XYZまたはL*a*b*等のデバイスインディペンデントな色空間に変換した後、カラー画像信号の表示または印刷を行う出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に合わせて、カラープロファイルの変換を行う色変換装置において、
複数の領域または画素のカラープロファイル変換特性の平均特性と、この平均特性と各々の領域または画素でのカラープロファイル変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を記憶する手段と、
各々の領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、
各々の領域または画素で出力すべきデバイスインディペンデントな色信号に対して、前記主成分信号と前記主成分の係数との線形結合によってカラープロファイル変換特性を表現する手段と
を備えていることを特徴とする色変換装置。
【請求項4】
前述の平均特性と、主成分信号を量子化して記憶する場合に、各々の信号の寄与率によって、量子化のビット幅を変更する手段を備え、記憶させることを特徴とする請求項3記載の色変換装置。
【請求項5】
画像信号の表示または印刷を行う出力装置の階調変換特性に合わせて、入力の画像信号に対して階調の変換を行う階調変換装置において、
複数の領域または画素の階調変換特性に対して、複数の領域または画素における階調変換特性の平均特性と、この平均特性と各々の領域または画素での階調変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号と、各領域または画素における主成分信号の係数を算出し、さらに主成分の係数空間において、係数の分布を元にクラスタリングを行い、標本となる係数または係数ベクトルを算出する手段と、
前述の平均特性と、差分特性の主成分と標本となる係数または係数ベクトルから、標本となる階調変換特性の曲線を算出する手段と、
前述のクラスタリングにより、各クラスタを構成する係数の集合と標本となる係数を対応させる手段と、
領域または画素における主成分の係数と標本となる階調変換特性を結びつけるようなルックアップテーブルを作成する手段とを備え、
前述の標本となる階調変換特性の曲線と、各領域または画素に対応するルックアップテーブルを記憶し階調変換を行うことを特徴とする階調変換装置。
【請求項6】
マルチバンドの入力のカラー画像信号に対して、CIE−XYZまたはL*a*b*等のデバイスインディペンデントな色空間に変換した後、カラー画像信号の表示または印刷を行う出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に合わせて、カラープロファイルの変換を行う色変換装置において、
出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に基づいて、作成したガマットマッピングの重複した領域のみを抽出し、その重複した領域に対して、複数の領域のカラープロファイル変換特性に対して、平均特性と各々の領域でのカラープロファイル変換特性の差分特性に対する適切な次数の主成分信号を算出する手段と、
各領域または画素に対応した主成分の係数を記憶する手段と、
前記出力装置の各々の領域または画素に対応したカラープロファイル変換特性を前記差分特性の主成分係数によって表現する手段と
を備えていることを特徴とする色変換装置。
【請求項7】
前記出力装置の複数の領域または画素の色出力特性に基づいて、作成したガマットマッピングの重複した領域と、重複の無い領域を分割し、重複している領域に対して、主成分の係数として記憶し、重複の無い領域に関しては、個々のカラープロファイルの変換特性を記憶し、前記の出力装置の複数の領域または画素に対応するカラープロファイル変換特性を、前記重複領域の主成分の係数と、前記非重複領域のカラープロファイル変換特性の合成により生成する手段を
さらに備えていることを特徴とする請求項6記載の色変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2004−7274(P2004−7274A)
【公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−160559(P2002−160559)
【出願日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】