説明

集積デバイスおよび集積デバイスの製造方法

【課題】基板上に搭載される部品を加熱することなく精度良く簡単に実装できること。
【解決手段】集積デバイスは、光素子であるLD121,波長変換素子122と、電気素子であるドライバIC123とを基板100上に混載して実装する。光素子と電気素子とは、基板100上に形成された金属材料からなる接合部110,111,112に表面活性化接合により接合される。この接合部110,111,112にはマイクロバンプが形成され、原子間の凝着力を利用して常温で接合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子と電気素子が同一の基板上に搭載された集積デバイスおよび集積デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ素子などの光素子とICなどの電気素子が、同一基板上に混載されたモジュールが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1に記載のモジュールは、光素子と、光素子を制御する電気素子が、シリコン等からなる基板上に実装されたものである。基板上には、光素子と光結合し、光を外部に導出する光導波路が形成されたものもある。
【0003】
また、特許文献1に記載のモジュールでは、光素子および電気素子は、基板に対してフリップチップ実装により実装される。すなわち、光素子および電気素子の下面にバンプを形成し、このバンプを基板の電極等に接触させ加圧加熱して金属接合することにより実装がおこなわれる。
【0004】
また上記とは別に、レーザ素子などの光素子を、表面活性化接合法により基板に対して接合する技術が知られている(例えば、下記特許文献2参照。)。表面活性化接合法を簡単に説明すると、物質表面を覆っている酸化膜・コンタミなどの不活性層をプラズマ処理などで取り除いて活性化し、表面エネルギーの高い原子同士を接触させることで、原子間の凝着力を利用して低温で接合する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−72206号公報
【特許文献2】特開2005−311298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記構成の集積デバイスでは、高機能な集積デバイスを得るために異なる材料からなる機能素子を混載する際に、光導波路を形成した搭載基板の熱履歴による変形の蓄積に起因する光軸ずれ等のため、基板上に搭載される光素子と、基板上に形成される光導波路とを正しく光結合させることができなかった。特に混載する光素子や電子素子の数が増えて工程数が増えるにつれて、搭載基板の熱履歴による変形の蓄積が多くなり、基板上に搭載される光素子と、基板上に形成される光導波路とを正しく光結合させることができなかった。すなわち、光素子と光導波路とを正しく光結合させるためには、光素子と光導波路とをサブミクロンの精度で位置あわせする必要があるが、これがおこなえなかった。
【0007】
特許文献1に記載のように、光素子および電気素子をフリップチップ実装により実装した場合、光素子、電気素子および基板が加熱されるため、各部材の熱膨張係数の違いにより各部材同士が位置ずれを起こしてしまう問題がある。
【0008】
また、電気素子をフリップチップ実装した後に、光素子を特許文献2に記載のように表面活性化接合させる場合も、電気素子の実装時に基板が加熱されることにより基板に反りが発生し、光素子を表面活性化接合させるときの位置精度に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。
【0009】
このほか、電気素子をフロー方式、リフロー方式などにより基板に対して半田実装する場合も、電気素子および基板が加熱されるため、同様の問題が生じる。このように、従来の集積デバイスでは、基板上に光素子、電気素子を搭載してもそれぞれの位置精度を向上できなかった。同様に、基板上に搭載される光素子と、基板上に形成される光導波路とを正しく光結合させることができなかった。
【0010】
本発明は、上述の従来技術による問題点を解消するため、基板上に搭載される部品を加熱することなく精度良く簡単に実装できる集積デバイスおよび集積デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる集積デバイスは、光素子と電気素子とが基板上に実装された集積デバイスにおいて、前記光素子と前記電気素子とは、前記基板上に形成された金属材料からなる接合部に表面活性化接合技術で接合されたことを特徴とする。
【0012】
上記の構成により、互いに熱膨張係数が異なる材質からなる光素子と前記電気素子とを、同一の基板上の接合部に精度よく簡単に実装できるようになる。
【0013】
また、前記接合部は、マイクロバンプ構造を有することを特徴とする。
【0014】
上記の構成により、接合部に形成されたマイクロバンプを設けたので、光素子および電気素子の電極に、表面活性化接合技術で容易に接合できるようになる。
【0015】
また、前記金属材料はAuであることを特徴とする。
【0016】
上記の構成により、マイクロバンプが塑性変形しやすい材質であり、接合を容易にする。
【0017】
また、前記光素子として、レーザ素子が前記接合部に接合されたことを特徴とする。
【0018】
また、前記光素子として、波長変換素子が前記接合部に接合されたことを特徴とする。
【0019】
また、前記光素子として、受光素子が前記接合部に接合されたことを特徴とする。
【0020】
上記の構成により、異なる材質からなり、熱膨張係数が異なる素子であっても、搭載の順番を問わず、互いに影響を及ぼすことなく同一の基板上に搭載できるようになる。
【0021】
また、前記基板は、シリコン基板であることを特徴とする。
【0022】
また、前記シリコン基板内に、集積回路が内蔵されたことを特徴とする。
【0023】
上記の構成により、シリコン基板は、CMOS−LSIの形成工程を経て平坦化することができ、光配線・回路となる導波路を形成できる。また、電気配線、ロジックLSIや温度センサ等の集積回路を内蔵することができる。
【0024】
また、本発明にかかる集積デバイスの製造方法は、光素子と電気素子とが基板上に実装された集積デバイスの製造方法において、前記基板上に金属材料からなる接合部を形成する接合部形成工程と、前記光素子と前記電気素子とを、前記接合部に表面活性化接合により接合する接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
上記の構成により、互いに熱膨張係数が異なる材質からなる光素子と前記電気素子とを、同一の基板上の接合部に精度よく簡単に実装できるようになる。
【0026】
また、前記接合部形成工程において、前記マイクロバンプ構造を有する前記接合部を形成し、前記接合工程において、前記マイクロバンプ構造に対して前記光素子と前記電気素子とを接合することを特徴とする。
【0027】
上記の構成により、光素子と電気素子では、互いの熱膨張係数が異なるが、搭載の順番を問わず、互いに影響を及ぼすことなく同一の基板上に搭載できるようになる。
【0028】
また、前記接合部形成工程において、Auからなる前記接合部を形成することを特徴とする。
【0029】
上記の構成により、マイクロバンプが塑性変形しやすい材質であり、接合を容易にする。
【0030】
また、前記接合部形成工程が、前記基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜上に第1のレジストを形成する第1のレジスト形成工程と、前記第1のレジストが形成された金属膜をエッチングして、配線パターンおよび前記接合部となる金属パターンを形成する第1のエッチング工程と、前記金属パターン上に第2のレジストを形成する第2のレジスト形成工程と、前記第2のレジストが形成された金属パターンをハーフエッチングして、接合用マイクロバンプを形成する第2のエッチング工程と、を有することを特徴とする。
【0031】
上記の構成により、基板上に必要な金属膜である配線パターンと接合部、および接合部のマイクロバンプを効率的に製造することができる。
【0032】
また、前記接合工程において、前記光素子として、レーザ素子を前記接合部に接合することを特徴とする。
【0033】
また、前記接合工程において、前記光素子として、波長変換素子を前記接合部に接合することを特徴とする。
【0034】
また、前記接合工程において、前記光素子として、受光素子を前記接合部に接合することを特徴とする。
【0035】
また、前記基板としてシリコン基板を用いることを特徴とする。
【0036】
また、前記シリコン基板内に集積回路を形成する集積回路形成工程と、前記集積回路が形成された前記シリコン基板を平坦化する平坦化工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
上記の構成により、シリコン基板は、CMOS−LSIの形成工程を経て平坦化することができ、光配線・回路となる導波路を形成できる。また、電気配線、ロジックLSIや温度センサ等の集積回路を内蔵することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、異なる材質からなり、熱膨張係数が異なる素子であっても、搭載の順番を問わず、互いに影響を及ぼすことなく同一の基板上に搭載できるようになる。これにより、光素子と電気素子とを基板上に精度良く簡単に実装できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態にかかる集積デバイスを示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる集積デバイスを示す平面図である。
【図3】接合部のマイクロバンプ製造工程の一例を示す工程図である。
【図4】電極上に形成されたマイクロバンプを示す斜視図である。
【図5】基板の導波路形成工程の一例を示す工程図である。
【図6】表面活性化接合を用いた部品実装の状態を示す図である。
【図7】基板の導波路形成工程の一例を示す工程図である。
【図8】接合部のマイクロバンプ製造工程の一例を示す工程図である。
【図9】接合箇所の補強の工程を示す工程図である。
【図10】接合箇所の補強状態を示す斜視図である。
【図11】基板上に形成される導波路の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる集積デバイスおよび集積デバイスの製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0041】
(実施の形態)
(集積デバイスの構成)
本発明の集積デバイスは、シリコン基板(Siプラットフォーム)上に光素子であるレーザ発光素子(LD)や導波路、LD駆動回路、受光素子および電子情報処理をおこなうSi等からなるLSIを混載することで、ハイブリッド型の光・電子集積回路を実現するものである。このシリコン基板として、好ましくは、電気配線、ロジックLSIや温度センサを内蔵し、更に、平坦化し光配線・回路となる導波路を形成したものを用いる。
【0042】
このSiプラットフォーム上に、例えば、ピコプロジェクター装置のエンジンを基本とした機能を搭載する場合、光素子としては、LDや、必要に応じて光の波長変換をおこなうニオブ酸リチウム(PPLN,LiNbO)の導波路を有する波長変換素子、出力補正をおこなうためのPDを搭載し、このほかに、電気素子としてLD駆動回路、画像プロセシング用のLSI、通信用LSIなどのパッケージ部品を混載する。
【0043】
そして、この混載により搭載する各デバイスの材料が異なる場合、一般に熱膨張係数や熱伝導率が大きく異なるが、本発明では、基板上に形成された金属製の電極にマイクロバンプを形成し、表面活性化接合法により光および電子機能素子を実装する。これにより、各素子を従来技術と比較して低温(例えば、常温)で基板上に接合することが可能となるため、異なる材料のデバイスを混載した場合、および搭載の順番を問わず、接合界面での剥がれやクラックの発生を防止する。
【0044】
図1は、実施の形態にかかる集積デバイスを示す斜視図である。Si材質の平板状の基板100上には、各種部品が混載される。この図の例では、複数のLD121、LD121から出射される光を波長変換する波長変換素子122、LD121および波長変換素子122のドライバIC123等が搭載される。
【0045】
LD121は、GaAs,GaN等の材質からなり、光の3原色R,G,Bに対応して3個のLDが配置されている。波長変換素子122は、R,G,Bの系統にそれぞれ配置され、R,G,Bの光に変換する。例えばRの系統だけは波長変換素子122を配置せず、LD121のR成分の光を直接出射する構成にもできる。
【0046】
このほか、基板100上には、所定の平坦化工程を経た後、波長変換素子122から出力される光をポート105まで導く光回路を構成する導波路104が形成される。基板100内部には、不図示であるが、あらかじめ、CPU、メモリ等のCMOSLSI(集積回路)、電気配線・温度センサ等が内蔵される。基板100上には、ドライバIC、ビデオプロセッサ、MEMSドライバ等の電力消費で発熱する部品を配置し、基板100内部には、論理素子を配置する構成が望ましい。この基板100の下面には、放熱用のヒートシンクが設けられる。
【0047】
図2は、実施の形態にかかる集積デバイスを示す平面図である。図1の構成から部品を取り除いた状態である。LD搭載領域101には、光の3原色R,G,Bに対応して3個のLD搭載領域101a〜101cが形成される。波長変換素子搭載領域102は、R,G,Bの系統にそれぞれ波長変換素子搭載領域102a〜102cが形成される。
【0048】
ドライバIC103搭載領域には、ドライバICの電極位置に対応する複数の接合部110が形成されている。この接合部110は、ドライバICの電極に接合し、配線パターン120を介してLD搭載領域101および波長変換素子搭載領域102に導出されている。また、LD搭載領域101および波長変換素子搭載領域102にも同様に、LD、波長変換素子の電極位置に対応する接合部111,112が形成されている。これらLD搭載領域101、波長変換素子搭載領域102、ドライバIC搭載領域103には、LD、波長変換素子、およびドライバICが常温でおこなう表面活性化接合法(詳細は後述する)により搭載される。
【0049】
(製造工程例1−接合部のマイクロバンプ形成例)
図3は、接合部のマイクロバンプ製造工程の一例を示す工程図である。この図3は、図2のA−A線断面図であり、基板100上には、LD搭載領域101、波長変換素子搭載領域102、配線パターン120が設けられる。
【0050】
まず、工程(a)に示すように、CMOS−LSIの形成工程を経て平坦化されたSiの基板100上に材質が金のAu膜301を形成する。次に工程(b)では、電極として残したい部分にレジスト膜302を形成する。この電極とは、上記接合部110,111,112である。図示の例では、図2に示した接合部111,112と、配線パターン120に相当する。
【0051】
次に、工程(c)に示すように、エッチングをおこない、レジスト膜302で覆われていない部分のAu膜301を除去し、電極を形成する。そして、工程(d)に示すように、電極のうち、部品を実装する接合部111,112にマイクロバンプ用のレジスト膜303を形成する。また、配線パターン120として残す部分には、レジスト膜303をAu膜301の全面に形成する。
【0052】
最後に、工程(e)では、ハーフエッチングにより、レジスト膜303間の接合部111,112上に所定深さの溝301aを形成する。これにより、レジスト膜303を取り除いた後には、接合部111,112上にマイクロバンプ301bが形成される。なお、接合部111,112は、マイクロバンプ301bを形成した後においても、マイクロバンプ301b下部がAu膜301で繋がっているため、全体が電極として導通可能な状態である。また、配線パターン120の部分は、マイクロバンプが形成されず、平坦なパターンのままである。
【0053】
上記工程(d)におけるレジスト膜303は、例えば、平面でみて複数個の円形状に形成する。これにより、工程(e)では、接合部111,112上に円形のマイクロバンプ301bが複数形成される。図4は、電極上に形成されたマイクロバンプを示す斜視図である。このマイクロバンプ301bは、例えば直径がΦ8μm、高さ2μm程度で形成できる。上記工程によれば、基板100上に必要な金属膜である配線パターン120と、接合部111,112、および接合部111,112のマイクロバンプ301bを効率的に製造することができる。
【0054】
(基板上の導波路形成工程)
図5は、基板の導波路形成工程の一例を示す工程図である。図3に示したマイクロバンプ形成後の工程を示してある。工程(a)は、図3の工程(e)の後にレジスト膜303を取り除いた状態であり、接合部111,112上にマイクロバンプ301bが形成されている。次に、工程(b)に示すように、基板100の全面にプラズマCVD等によりシリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502を形成する。
【0055】
この後、工程(c)に示すように、導波路104を形成する箇所にレジスト膜503を形成する。そして、工程(d)に示すように、エッチングをおこない、導波路104部分以外のシリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502を除去する。最後に、レジスト膜503を取り除くことにより、工程(e)に示すように、シリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502による導波路104の設置が完了する。
【0056】
(表面活性化接合による部品実装工程について)
表面活性化接合技術は、物質表面を覆っている酸化膜、塵(コンタミ)などの不活性層をプラズマ処理などで取り除いて活性化し、表面エネルギーの高い原子同士を接触させることで原子間の凝着力を利用して接合する技術である。但し、この技術でもフラットな接合面同士での接合では、加熱をある程度(100〜150℃)かけないと接合ができない。本願発明では、接合温度をより低くすべく、接合面の片側、すなわち上述した基板100の接合部111,112等に塑性変形しやすいAuの材質からなるマイクロバンプ301bを形成することにより、常温での接合を可能とした。
【0057】
ここで、表面活性化接合の原理を説明する。実在表面(接合部111,112等)上には、酸化膜、コンタミが存在している。このため、プラズマ洗浄やイオンビームによるスパッタエッチングをおこない、接合部111,112の表面を活性化させ、接合部111,112が結合手を持った原子が露出している活性状態にする。これにより、接合の対象である、ドライバICや波長変換素子の電極を接合部111,112に接触させるだけで原子間接合させることができる。
【0058】
上記の表面活性化接合技術を用いて、基板100上に部品を常温接合することができる。この表面活性化接合によれば、無加熱接合であるため、下記の各利点を有する。
1.熱膨張係数差の残留応力による部品破壊が発生しない。
2.部品に対する熱ストレスがなく部品の機能劣化が生じない。
3.無加熱および固相接合であるため、実装時の位置ずれが生じない。
4.他部品への熱影響が生じない。
5.原子の直接接合であるため、接合層の経時劣化が生じない。
【0059】
上述した基板100上に混載する部品を構成する材料の熱膨張係数の例を挙げる。熱膨張係数は一般に温度の関数であるがここでは、簡易的な比較のために室温近傍での値を示す。
・LD121材料
GaAs:5.7×10−6/K
GaN :5.6×10−6/K
・波長変換素子122材料
LiNbO3:X、Y軸方向の熱膨張率 1.54×10−5−5/K
Z軸方向の熱膨張率 0.75×10−5−5/K
・電子情報処理用LSI、LDドライバ(ドライバIC123)およびSiプラットフォーム
Si:4.2×10−6−6/K
【0060】
図6は、表面活性化接合を用いた部品実装の状態を示す図である。基板100上には、接合部111,112が形成され、これら接合部111,112上には、上述した工程を経てマイクロバンプ301bが複数形成されている。この状態で上述した表面活性化接合により、LD121と、波長変換素子122を接合させる。(a)に示すように、基板100の接合部111,112、および部品であるLD121,波長変換素子122の電極は、アルゴンプラズマにより洗浄し、それぞれの表面を活性化させる。そして、(b)に示すように、接合部111には、LD121の電極701を位置させ、接合部112には、波長変換素子122の電極702を位置させ、互いに接触・加圧させるだけで常温にて接合でき、部品実装が可能となる。
【0061】
(製造工程例2−基板上の導波路形成工程)
この工程例では、先に導波路を形成してからマイクロバンプを形成する。図7は、基板の導波路形成工程の一例を示す工程図である。製造工程例1と同様の符号を付して説明する。まず、工程(a)に示すように、基板100の全面にプラズマCVD等によりシリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502を形成する。
【0062】
この後、工程(b)に示すように、導波路104を形成する箇所にレジスト膜503を形成する。そして、工程(c)に示すように、エッチングをおこない、導波路104部分以外のシリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502を除去する。この後、工程(d)に示すように、レジスト膜503を取り除くことにより、シリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502による導波路104の設置が完了する。そして、工程(e)に示すように、Siの基板100上にAu膜301を形成する。
【0063】
(接合部のマイクロバンプ形成例)
図8は、接合部のマイクロバンプ製造工程の一例を示す工程図である。図7(e)の工程後におこなう工程を説明する。まず、工程(a)では、電極として残したい部分にレジスト膜302を形成する。この電極とは、上記接合部110,111,112である。図示の例では、図2に示した接合部111,112と、配線パターン120に相当する。
【0064】
次に、工程(b)に示すように、エッチングをおこない、レジスト膜302で覆われていない部分のAu膜301を除去し、電極を形成する。この際、シリコン酸化膜501およびシリコン窒化膜502による導波路104は残る。そして、工程(c)に示すように、電極のうち、部品を実装する接合部111,112にマイクロバンプ用のレジスト膜303を形成する。また、配線パターン120として残す部分には、レジスト膜303をAu膜301の全面に形成する。
【0065】
この後、工程(d)では、ハーフエッチングにより、レジスト膜303間の接合部111,112上に所定深さの溝301aを形成する。これにより、工程(e)に示すように、レジスト膜303を取り除いた後には、接合部111,112上にマイクロバンプ301bが形成される。なお、接合部111,112は、マイクロバンプ301bを形成した後においても、マイクロバンプ301b下部がAu膜301で繋がっているため、全体が電極として導通可能な状態である。また、配線パターン120の部分は、マイクロバンプが形成されず、平坦なパターンのままである。
【0066】
上述の製造工程例1,2では、いずれも図2をA−A線断面で切断した箇所の基板100上にマイクロバンプ301bを形成する例を説明したため、LD121および波長変換素子122の接合部111,112にマイクロバンプ301bが形成される構成としたが、接合部110、すなわち、ドライバIC123が搭載される電極にも同様に形成することができる。
【0067】
(接合箇所の補強について)
上述した表面活性化接合により接合された接合部は、樹脂の塗布により接合状態を補強することができる。図9は、接合箇所の補強の工程を示す工程図である。図には、波長変換素子122部分を側面から見た図を示している。
【0068】
図9の工程(a)に示すように、接合部112に、波長変換素子122の電極702を位置させ、互いに接触させ接合した後、工程(b)に示すように、ディスペンサー1001等により波長変換素子122の電極702と、基板100上の接合部112の部分を中心として、樹脂(例えばUV樹脂)を塗布する。そして、工程(c)に示すように、波長変換素子122側面から接合部112,電極702を挟んで基板100上面との間に渡って樹脂フィレット1002が形成される。これにより、基板100上に搭載された波長変換素子122をより強固に接合させることができる。この図では、波長変換素子122の接合補強について説明したが、図10の斜視図に示すように、基板100上に搭載される部品であれば、上述したLD121、ドライバIC123等、他の部品に対しても同様に接合補強することができる。
【0069】
(導波路を用いた合波の構成)
図11は、基板上に形成される導波路の構成を示す平面図である。図11の記載は、便宜上図2に示す寸法を変更してある。図11において、基板100上には、LD121(121a〜121c)、90度ベンド部を兼ねた90°ピッチコンバータ1201(1201a〜1201c)、多波長合波器1202、検出器1203(1203a,1203b),制御部1204等が配置されてなる。多波長合波器1202は、導波路型方向性結合器1210a,1210bからなる。例えば、LD121aは、AlInGaP(赤色;R),LD121bがInGaN(青色;B)の半導体レーザを用いる。また、LD121cは、直接発光型の緑色(G)のLDを用いても良いが、図示の例では、GaAs(近赤外、例えば1064nm)のLDとし、波長変換素子122を配置している。
【0070】
図2に示したように、LD121a〜121c実装間隔に比して、多波長合波器1202の導波路型方向性結合器1210a,1210bの間隔は非常に狭い。このため、LD121側の導波路のピッチ間隔と、多波長合波器1202側のピッチ間隔を整合するために、90度ベンド部を兼ねた90°ピッチコンバータ1201(1201a〜1201c)をLD121の接続用導波路と多波長合波器1202の入力との間の角部分に設ける。この90°ピッチコンバータ1201(1201a〜1201c)により光の進行方向を90°変更する。90°ピッチコンバータ1201としては、内側に共振エリアを設けた方式のほか、共振エリアを設けない単純な90°エルボー型の導波路も用いることができる。
【0071】
多波長合波器1202における合波について説明する。導波路型方向性結合器1210では、2本の導波路を結合長の長さにわたって平行に近接して配置させる。そして、2つの入力ポートから波長を異にする少なくとも2つの複数の入射波を入射させることにより、複数の入射波のうちから波長選択性によって選択される複数の入射波を合波し、合波した光波を1つの出力ポートから出射させる。残りの出力ポートからは、合波されなかった波長の光波が出射される。
【0072】
具体的には、図11に示すように、3つのLD121に接続された3本の導波路のなかで隣接するR,B2本の導波路間に第1段目の導波路型方向性結合器1210aを結合長L1で形成している。次に、R,Bを結合した導波路と、残りのGの導波路との間に第2段目の導波路型方向性結合器1210bを結合長L2で形成する。各導波路からそれぞれ異なる波長の光R,G,Bを入射する。LD121aから入射したR(波長λ1)の光と、LD121bから入射したB(波長λ2)の光は、導波路型方向性結合器1210aの結合長L1を有して合波(結合)される。この後、合波されたR,Bの光とGの光が導波路型方向性結合器1210bの結合長L2を有して合波(結合)される。合波されたRGBの光は、ポート105から出力される。
【0073】
また、図示の例では、青色(B)の光出力をモニタするための検出器(PD)1203aを導波路型方向性結合器1210aの他方の出力ポートに接続し、緑色(G)の光出力をモニタするための検出器1203bを導波路型方向性結合器1210bの他方の出力ポートに接続する。また、赤色(R)光の出力をモニタするための検出器1203cをLD121aのバック光側に配置している。
【0074】
上記の多波長合波器1202によれば、導波路型方向性結合器1210を単に多段接続するという簡易な構成であり、各段の導波路型方向性結合器1210によって波長の異なる光波を順次結合していくことによって複数の入射波を段階的に合波する。この構成によれば、プリズム等の空間光学系の素子を用いることなく複数の波長の異なる光波を合波することができ、部品点数の増加を抑制し、小型化することが可能となる。
【0075】
以上説明した集積デバイスによれば、電極にマイクロバンプを形成し、表面活性化接合法を用いることにより、光配線となる導波路を形成した同一の平坦化基板上に、材質の異なる部品である光素子と電気素子の全てを低温で簡単に搭載することができるようになる。
【0076】
これにより、この発明によれば、基板の歪みを抑えることができ、また、上述した光素子と電気素子のような熱膨張係数の差が大きい部品であっても熱履歴を気にすることなく、同一の基板上に高精度に実装できるようになる。同一の基板上に機能が異なる光素子や電気素子を混載できることにより、この集積デバイスが有する機能を向上させることができ、集積デバイスを用いた装置の基板の数を少なくでき装置全体の小型化、低コスト化、および信頼性の向上を図ることができる。
【0077】
また、Siの基板100内部にさらに他のLSIを内蔵する構成とすれば、より機能を集積した集積デバイスの製造が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明にかかる集積デバイスは、複数の異なる部品を同一の基板に搭載する場合に有用であり、特に、材質が異なり熱膨張係数が異なる光素子や電気素子などを混載するハイブリッド型の光・電子集積回路、およびこの集積デバイスを用いたプロジェクタ・通信用モジュール・高機能照明等の装置に適している。
【符号の説明】
【0079】
100 基板
101(101a〜101c) LD搭載領域
102(102a〜102c) 波長変換素子搭載領域
103 ドライバIC搭載領域
104 導波路
105 ポート
110,111,112 接合部
120 配線パターン
121 レーザ発光素子(LD)
122 波長変換素子
123 ドライバIC
301 Au膜
301a 溝
301b マイクロバンプ
302,303,503 レジスト膜
501 シリコン酸化膜
502 シリコン窒化膜
600 コンタミ
1001 ディスペンサー
1002 樹脂フィレット
1201 90°ピッチコンバータ
1202 多波長合波器
1203(1203a〜1203c) 検出器
1204 制御部
1210(1210a,1210b) 導波路型方向性結合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子と電気素子とが基板上に実装された集積デバイスにおいて、
前記光素子と前記電気素子とは、前記基板上に形成された金属材料からなる接合部に表面活性化接合技術で接合された
ことを特徴とする集積デバイス。
【請求項2】
前記接合部は、マイクロバンプ構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項3】
前記金属材料はAuである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項4】
前記光素子として、レーザ素子が前記接合部に接合された
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の集積デバイス。
【請求項5】
前記光素子として、波長変換素子が前記接合部に接合された
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の集積デバイス。
【請求項6】
前記光素子として、受光素子が前記接合部に接合された
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の集積デバイス。
【請求項7】
前記基板はシリコン基板である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の集積デバイス。
【請求項8】
前記シリコン基板内に、集積回路が内蔵された
ことを特徴とする請求項7に記載の集積デバイス。
【請求項9】
光素子と電気素子とが基板上に実装された集積デバイスの製造方法において、
前記基板上に金属材料からなる接合部を形成する接合部形成工程と、
前記光素子と前記電気素子とを、前記接合部に表面活性化接合により接合する接合工程と、
を含むことを特徴とする集積デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記接合部形成工程において、前記マイクロバンプ構造を有する前記接合部を形成し、
前記前記接合工程において、前記マイクロバンプ構造に対して前記光素子と前記電気素子とを接合する
ことを特徴とする請求項9に記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記接合部形成工程において、Auからなる前記接合部を形成する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記接合部形成工程が、
前記基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜上に第1のレジストを形成する第1のレジスト形成工程と、
前記第1のレジストが形成された金属膜をエッチングして、配線パターンおよび前記接合部となる金属パターンを形成する第1のエッチング工程と、
前記金属パターン上に第2のレジストを形成する第2のレジスト形成工程と、
前記第2のレジストが形成された金属パターンをハーフエッチングして、接合用マイクロバンプを形成する第2のエッチング工程と、を有する
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記接合工程において、前記光素子として、レーザ素子を前記接合部に接合する
ことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記接合工程において、前記光素子として、波長変換素子を前記接合部に接合する
ことを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記接合工程において、前記光素子として、受光素子を前記接合部に接合する
ことを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記基板としてシリコン基板を用いる
ことを特徴とする請求項9〜15のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記シリコン基板内に集積回路を形成する集積回路形成工程と、
前記集積回路が形成された前記シリコン基板を平坦化する平坦化工程と、を有する
ことを特徴とする請求項9〜16のいずれか一つに記載の集積デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−109002(P2011−109002A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265055(P2009−265055)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】