説明

集積化フォトニック/エレクトロニック/ケミカルシステム,太陽エネルギー変換システム,集光器および光導波路

【課題】光化学システム,電気化学システム,光エネルギー変換システム,発光デバイス,集光器,光導波路などの小型・低コスト・高性能・高機能化する。
【解決手段】薄膜ソーラーセル/光合成セルが光導波路,流路と集積化された集積化フォトニック/エレクトロニック/ケミカルシステム(IPECS)は,太陽エネルギー変換システム,光化学・電気化学などケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現できた。また,2種類の半導体層をin−plane配置で接触させてpn接合発光デバイスは,低コスト化,微細化,効率の向上ができた。また,多層光導波路集光器は光エネルギー変換システムのコンパクト・高効率化ができた。また,エアクラッディング型光導波路,省資源化光導波路および多層・スカート型コア構造光導波路は,光閉じ込め効果の増大化,低コスト化,およびミラー部の光リーク・散乱の低下ができた。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は,集積化フォトニック/エレクトロニック/ケミカルシステム(IPECS),太陽エネルギー変換システム,集光器,光導波路に係り,特に,半導体薄膜を具備する薄膜ソーラーセルおよび/または薄膜光合成セルが光導波路と集積化されているようなIPECS,液体および/または気体の流路が光導波路と集積化されているようなIPECS,光デバイス,電子デバイスが搭載および/または埋め込みにより集積化されているようなIPECS,多層構造をもち,薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セル,流路,光導波路の中の少なくとも一つが異なる層に配置されているようなIPECS,半導体薄膜を含む領域に光を導波させるような導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,半導体薄膜に2種類以上の分子を配列吸着させるような色素増感型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,流路が複数の光導波路の出射端で挟まれているようなIPECS,その際,光導波路の少なくとも一つが45°ミラーを備えているようなIPECS,光導波路と流路の間に光照射により屈折率が変化するフォトリフラクティブ(PR)材料を配置し,光導波路から出射した光と流路からの光により光導波路と流路を連結する自己組織化光導波路を形成するようなIPECS,特定の分子に対する捕獲機能をもつレセプタを表面または表面近傍に配した光導波路を光回路に組み込み,光回路への入力光波長をスイープしたときの出力光パワーの変化を検知し,レセプタに捕獲された分子の存在を認識するようなIPECS,2種類の半導体層をin−plane配置で接触または近接させ,接触または近接領域近傍に半導体層よりホール・電子を注入し,接触または近接領域近傍から光を発生させるような平面型発光デバイス,ミラーまたは波長フィルタを備えた光導波路を多層に重ねてなるような多層導波路集光器,スペーサを配置した基体上に光導波路コアを移植してなるようなエアクラッディング型光導波路,光導波路コアアレイを基体上に作製し,該コアアレイ中の一部のコアを他の基体に選択的に移植するステップを含むプロセスを用いて作製するような省資源化光導波路,光導波路コアアレイ中のコアがミラーおよび/または波長フィルタおよび/または薄膜デバイスを備えているような省資源化光導波路,コアを基体に選択的に移植した後に薄膜デバイスを集積化するステップを含むプロセスを用いて作製するような省資源化光導波路,光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,屈折率の異なる2つ以上の層からなるような多層コア光導波路,光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,他のコア部分のコア幅より広いコア幅をもち,かつ該広いコア幅を持つコア部分の光伝播方向の長さが該他のコア部分のコア幅の2倍以内であるようなスカート型光導波路,多層コア・スカート型光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近にミラー用のメタル薄膜または波長フィルタ用の誘電体薄膜を形成したような多層コア・スカート型光導波路,光導波路の少なくとも一部がエアクラッディング型および/または省資源化および/または多層コア型および/またはスカート型光導波路であるような多層導波路集光器,IPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,集光器を複数領域に分割し,各領域内にソーラーセルおよび/または光合成器を配置し,ソーラーセルに連結する電極・配線および/または流路を光集光器に設けたような集積型太陽エネルギー変換システム,IPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,多層導波路集光器,エアクラッディング型光導波路,省資源化光導波路,多層コア・スカート型光導波路から選ばれた少なくとも一つを構成要素として含むような集積型太陽エネルギー変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を用いたソーラーセル,光合成セルなどの光エネルギー変換デバイスや,蓄電池などの光化学・電気化学的なプロセスを含むデバイスは,通常,個別部品として扱われており,小型・集積化・高効率化・高機能化が困難という問題がある。ソーラーセルでは,半導体への光照射は半導体面外方向から行われている。このため,高価な透明電極が必要になるという問題がある。また,光吸収効率を上げるために表面をポーラス化する場合があり,半導体としての特性を犠牲にせざるを得ないという問題がある。光合成セルにおいても,光照射はセル面外方向から行うため,ソーラーセルと類似の問題が生じる。発光デバイスでは,通常,積層構造をとっているため,透明電極が必須,発光領域の微細化が困難,光取り出し効率が不十分という問題がある。導波路集光器では,レンズのアシストが必要で構造が複雑になるという問題がある。光導波路では,コアとクラッディング領域との屈折率差が不十分で光の閉じ込めが弱くなる場合があるという問題がある。コア幅に比べてコアピッチが広いような用途の場合,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスなどの材料・プロセスが無駄になるという問題がある。また,45°ミラー・波長フィルタとして用いられるコア端ファセットにおける光リーク・散乱が生じるという問題がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一つの目的は,太陽エネルギー変換システムや光化学・電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することにある。また,本発明の他の目的は,ソーラーセルや光合成セルの光エネルギー変換効率の向上,および低コスト化を実現することにある。また,本発明の他の目的は,発光デバイスの低コスト化,発光領域の微細化,光取り出し効率の向上を実現することにある。また,本発明の他の目的は,レンズ不要のシンプル化された構造を持つ導波路集光器を実現することにある。また,本発明の他の目的は,光閉じ込めの強い光導波路を実現することにある。また,本発明の他の目的は,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストを低減した光導波路を実現することにある。また,本発明の他の目的は,光導波路45°ミラー・波長フィルタとして用いられるコア端ファセットにおける光リーク・散乱の低下を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様に係るIPECSは,半導体薄膜を具備する薄膜ソーラーセルおよび/または薄膜光合成セルが光導波路と集積化されてなることを特徴とする。これにより,太陽エネルギー変換システムやケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0005】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのIPECSは,液体および/または気体の流路が光導波路と集積化されてなることを特徴とする。これにより,太陽エネルギー変換システムやケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0006】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのIPECSは,光デバイス,電子デバイスが搭載および/または埋め込みにより集積化されていることを特徴とする。これにより,太陽エネルギー変換システムやケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0007】
本発明の第1の態様に係るもうひとつのIPECSは,IPECSが層を重ねた多層構造をもち,薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セル,流路,光導波路の中の少なくとも一つが異なる層に配置されていることを特徴とする。これにより,太陽エネルギー変換システムやケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルは,光を,半導体薄膜を含む領域に導波させることを特徴とする。これにより,光エネルギー変換効率の向上を実現することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係るもう一つの薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルは,半導体薄膜に2種類以上の分子を配列吸着させることを特徴とする。これにより,光エネルギー変換効率の向上を実現することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係るIPECSは,流路が複数の光導波路の出射端で挟まれていることを特徴とする。これにより,マイクロ分光システムなどが可能となり,ケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るもうひとつのIPECSは,上記光導波路の少なくとも一つが45°ミラーを備えていることを特徴とする。これにより,ケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係るIPECSは,光導波路と単一または複数の流路の間に,光が照射されると屈折率が変化する性質をもつPR材料を配置し,光導波路から出射した光と該流路からの光により,該光導波路と該流路の間を連結する自己組織化光導波路を形成することを特徴とする。これにより,材料センシティブSelf−Organized Lightwave Network(SOLNET)などが可能となり,IPECSの高機能化を実現することができる。
【0013】
本発明の第5の態様に係るIPECSは,特定の分子に対する捕獲機能をもつレセプタを表面または表面近傍に配した光導波路を光回路に組み込み,該光回路への入力光波長をスイープしたときの出力光パワーの変化を検知し,レセプタに捕獲された分子の存在を認識することを特徴とする。これにより,分子認識マイクロシステムなどが可能となり,IPECSの高機能化を実現することができる。
【0014】
本発明の第6の態様に係るIPECSは,2種類の半導体層をin−plane配置で接触または近接させ,接触または近接領域近傍に半導体層よりホール・電子を注入し,接触または近接領域近傍から光を発生させることを特徴とする。これにより,発光デバイスの低コスト化,発光領域の微細化,光取り出し効率の向上を実現することができる。
【0015】
本発明の第7の態様に係る集光器は,ミラーまたは波長フィルタを備えた光導波路を多層に重ねてなることを特徴とする。これにより,太陽光などの光の高効率でシンプル化された集光を実現することができる。
【0016】
本発明の第8の態様に係る光導波路は,スペーサを配置した基体上に光導波路コアを移植してなることを特徴とする。これにより,光閉じ込めの強いエアクラッディング型光導波路を実現することができる。
【0017】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,光導波路コアアレイを基体上に作製し,該コアアレイ中の一部のコアを他の基体に選択的に移植するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする。これにより,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストを低減した省資源化光導波路を実現することができる。
【0018】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,光導波路コアアレイ中のコアがミラーおよび/または波長フィルタおよび/または薄膜デバイスを備えていることを特徴とする。これにより,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストを低減した省資源化光導波路を実現することができる。
【0019】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,コアを基体に選択的に移植した後に薄膜デバイスを集積化するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする。これにより,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストを低減した省資源化光導波路を実現することができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,屈折率の異なる2つ以上の層からなることを特徴とする。これにより,コア端ファセットにおける光リーク・散乱の低下を実現することができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,他のコア部分のコア幅より広いコア幅をもち,かつ該広いコア幅を持つ部分の光伝播方向の長さが該他の部分のコア幅の2倍以内であることを特徴とする。これにより,コア端ファセットにおける光リーク・散乱の低下を実現することができる。
【0022】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,多層コア・スカート型光導波路の光導波路コアアレイを基体上に作製し,該コアアレイ中の一部のコアを他の基体に選択的に移植するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする。これにより,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストの低減,およびコア端ファセットにおける光リーク・散乱の低減を実現することができる。
【0023】
本発明の第8の態様に係るもうひとつの光導波路は,多層コア・スカート型光導波路において,コア端ファセット部および/またはその付近にミラー用のメタル薄膜または波長フィルタ用の誘電体薄膜を形成したことを特徴とする。これにより,より高効率なミラー・波長フィルタを備えた光導波路を実現することができる。
【0024】
本発明の第9の態様に係る多層導波路集光器は,光導波路の少なくとも一部がエアクラッディング型および/または省資源化および/または多層コア型および/またはスカート型光導波路であることを特徴とする。これにより,より高効率な集光器を実現することができる。
【0025】
本発明の第9の態様に係るIPECSおよび導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セルは,光導波路の少なくとも一部がエアクラッディング型および/または省資源化および/または多層コア型および/またはスカート型光導波路であることを特徴とする。これにより,より高効率なIPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セルを実現することができる。
【0026】
本発明の第10の態様に係る集積型太陽エネルギー変換システムは,集光器を複数領域に分割し,各領域内にソーラーセルおよび/または光合成器を配置し,該ソーラーセルに連結する電極・配線および/または流路を該集光器に設けたことを特徴とする。これにより,低コスト・高効率な太陽エネルギー変換を実現することができる。
【0027】
本発明の第10の態様に係るもう一つの集積型太陽エネルギー変換システムは,IPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,多層導波路集光器,エアクラッディング型光導波路,省資源化光導波路,多層コア・スカート型光導波路から選ばれた少なくとも一つを構成要素として含むことを特徴とする。これにより,低コスト・高効率な太陽エネルギー変換を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に,本実施の形態を,図面を参照して説明する。各図において,同一の符号をふされたものは同様の要素を示しており,重複した説明は省略される。以下の記載は本発明が適用可能な実施形態を説明するものであって,本発明の範囲がこの記載に限定されるものではない。説明の明確化のため,以下の記載は,適宜,省略及び簡略化がなされている。また,当業者であれば,以下の実施形態の各要素を,本発明の範囲において容易に変更,追加,変換することが可能であろう。
【0029】
[第1実施形態]
図1は本発明に先駆け考案した従来発明による太陽光エネルギー変換用のIPECSの構造例である(特許文献1)。薄膜ソーラーセル1と薄膜光合成セル2は薄膜の半導体3からなる。この例では,分光感度特性の異なる3種類の半導体A,B,Cが使用されている。それらの特性に応じて,波長フィルタ4により分光された光が照射される。光は光導波路5により波長フィルタまで導かれる。集光効率向上のためにレンズ6が使用される。これにより,半導体の消費量が格段に減らせ,低コスト化が可能となる。
【0030】
図1に示したシステムを拡張発展させたものとして,図2に,本発明の第1実施形態によるIPECSの構造例を示す。薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルが光導波路とともに集積化されている。薄膜ソーラーセルの場合,外部から入った光を,例えば,3つの波長フィルタで分波し,半導体A3a,半導体B3b,半導体C3c,に導入する。この例では,半導体Aに対しては通常通り面外方向から光を入射させている。一方,半導体B,Cに対しては,いったん45°ミラーで受けて,導波光とし,半導体層に光を入射させている。分波された光の波長は,各半導体の分光感度スペクトルに合わせてある。その結果,高変換効率で電力を取り出すことができるようになる。薄膜光合成セルの場合は,薄膜化し流路7に挿入された半導体D3dの両面から分波された光を照射する。この例ではHとOが合成され,外部に取り出される。半導体Dは,単層構造を有していてもよいし,複数種類の半導体が積層されたかまたは並んだ複数層構造を有していてもよい(非特許文献1)。
【0031】
このシステムは,平面光導波路内の2次元的な光伝播に加え,平面から出た縦方向の光伝播も使用していることから,3次元光回路をベースとしているといえる。基本的構造は,3次元集積化光インタコネクトの構造に類似している(非特許文献1)。このため,3次元集積化光インタコネクトと同様に,薄膜化した種々の光デバイス,電子デバイスをフィルムに埋め込み,これらのフィルムを積層して高機能化することができる。45°ミラーつき光導波路フィルムの作製,デバイス埋め込みには,既に知られているプロセスを用いることができる。例えば,前者については,感光性材料への垂直・斜め露光で45°ミラー付き光導波路フィルムを複製するBuilt−in Mask法(非特許文献1),インプリント法などがある。また後者については,薄膜デバイス片の多段一括選択的移植を利用したPL−Pack with SORT法(非特許文献1)などがある。フィルムには,薄膜デバイスと連結した電極・配線が形成されている。ビアによりフィルムと垂直方向の電気接続を行う。また,フィルム間電気接続は,フィルムにパッドを形成し,パッド間をメタル接合などにより接続することにより可能となる。
【0032】
[第2実施形態]
図3に,本発明の第2実施形態による導波型薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルの構造例を示す。(a)はpn接合型薄膜ソーラーセルである。電極A8aと電極B8bの間にp型半導体3eとn型半導体3fの薄膜が積層され,挿入されている。pn構造のかわりにpin構造を用いることもできる。光9を,これらの半導体薄膜積層構造内に導波させる。半導体内に光キャリアが生成し,電流・起電力が発生する。導波型のメリットとして,半導体層を,100nmオーダ(場合によってはそれ以下)にまで薄くできることが挙げられる。このため,pn接合面と電極との距離をせばめ,セル抵抗を低下させることができる。従来の面外入射方式の場合,半導体層を薄くしすぎると光吸収が不十分となり,変換効率の低下をまねく。これに対し導波型では,伝播距離で厚さの不十分さをカバーすることができるため,半導体層が薄くても十分な光吸収が可能となり,変換効率の向上が期待できる。もう一つのメリットとして,透明電極が必須でないことが挙げられる。透明電極は,金属電極に比べて高価であり,またシート抵抗が高い。これを金属電極で置き換えることにより,低コスト化とセル抵抗の低下が期待できる。ただし,この場合,半導体層の薄層化は,光導波が可能な薄さにまでしか行えない。
【0033】
図3(b)は,電解質型薄膜ソーラーセルである。対向電極8c,電解質10,半導体,電極8dのような層構成である。厚さは100nm−1mmの範囲が適当である。光を電解質/半導体層構造内に導波させると半導体内に光キャリアが生成し,電解質を通して電流・起電力が発生する。メリットは,pn接合型の場合と同様である。(c)は,半導体に色素11を吸着させた構造である。これにより,セルの分光感度を,半導体そのもの分光感度より長波長領域にまで広げることが可能になる。さらに,複数種類の分子を半導体表面に配列吸着させることにより,セルの分光感度スペクトルを大幅に広げることができる。例えば,電子受容性分子,電子供与性分子をn半導体表面に配列吸着させた場合,分子はn型半導体−電子受容性分子−電子供与性分子のような配列で吸着し,両分子を合わせた分光感度スペクトルが得られる(非特許文献1)。複数種類の分子の配列吸着による増感は,導波型セルのみならず,従来の面外入射型セルにも有効である。(d)は,相補型薄膜ソーラーセルである。(b)の構成において,一方の電極にp型半導体薄膜,他方の電極にn型半導体薄膜を積層し,両半導体の間に電解質を挿入した構成である。両電極を連結して光を導波させると,n型半導体側にプロトンと電子が,p型半導体側にOHとホールが蓄積され,充電状態となる。両電極をオーブンにすると,充電状態が保たれ,バッテリ機能が付与される。
【0034】
図3(e)は,導波型薄膜光合成セルの一例である。半導体E3gおよび半導体F3hの薄膜が積層され,その両面が電解質に接している。半導体EとしてWOx,半導体FとしてSrTiO:Cr−Taを用いた場合,光を導波させると,半導体E側でOが発生し,半導体F側でHが発生する。このとき,半導体表面にPtなどを分布させることにより,反応の活性化が図れる。n型半導体にWO,p型半導体にCrを用いてpn構造を形成した場合,光キャリアの生成にともない,一方からO,他方からHの発生が期待できる。(f)は,半導体に色素を吸着させた構造で,(c)の場合と同様の効果が得られる。(g)はp型/n型積層半導体薄膜を多層に配置した構造である。これにより,より多量のO,Hを発生させることが可能となる。(e)−(g)において,半導体Eと半導体Fを分離し,それらの間に電解質を挿入することもできる。あるいは,TiOxなどの単層膜を用い,電解質のかわりに液体やガスを導入して,光触媒反応により光合成(分解反応も合成の一種と考える)することもできる。
【0035】
上記の導波型薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルは,IPECSの一部として組み込むことができる。図2の例では,半導体B,Cを用いた薄膜ソーラーセル,半導体Dを用いた薄膜光合成セルが適用対象となる。半導体材料としては,例えば,TiOx,ZnO,WOx,CrOx,IrOx,SrTiO:Cr−Taなとの酸化物半導体,Si,Ge,CなどのIV族半導体,GaAs,AlAs,InP,GaNなどのIII−V族半導体,カーボンナノチューブ,ポリアゾメチン,ポリチオフェン,ポリオキサジアゾール,ペンタセン,フタロシアニンなどの有機材料を用いることができる。製膜法としては,スパッタリング,蒸着,Chemical Vapor Deposition(CVD),Atomic Layer Deposition(ALD),Molecular Layer Deposition(MLD),有機CVDなどがある。上記半導体の薄膜は,成長基板上に作製したのち,epitaxial lift−off(ELO)またはそれに類似の手法により基板から剥離することにより得られる(非特許文献1)。図3(a)−(d)では,薄膜の片面または両面に電極を形成する。(e)−(g)では,薄膜の片面または両面に,必要に応じてPtなどの反応活性化エージェントを分布させる。薄膜は,必要に応じて,スペーサを介して所望のギャップをもって保持される(非特許文献1)。電解質としては,ポピュラーな既存材料から選んで用いることができる。液体であっても固体であってもよい。また,先に述べたように,電解質のかわりに他の液体・気体,場合によっては固体を用いることもできる。
【0036】
色素としては,例えば,ルテニウム錯体誘導体,クマリンなどの有機色素などが使用できる。複数種類の色素を用いる多色素増感としては,一例として,ZnOのローズベンガル/クリスタルバイオレット,エオシン/マラカイトグリーンによる増感が知られている(非特許文献1)。
【0037】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態によるマイクロ分光システムの構造例を図4に示す。タイプAでは,45°ミラーつき光導波路を2つ重ね,その間に流路7を配置する。一方の光導波路5に,例えば励起光12を導波させると,45°ミラーから反射し流路に入る。流路には,液体またはガスを注入する。流路に発光性の物質が存在する場合,発光13が生じ,その一部は他方の光導波路に入り,導波する。この光をフォトディテクタ(PD)などで受けることにより,発光が検知できる。PDはマイクロシステムの外部に置いても良いし,内部に埋め込み,または搭載してもよい。PDに光が入る前に波長フィルタ4を設置し,励起光をカットして所望の波長の光を取り出すことが望ましい。この構造で,発光のかわりに光吸収を測定することもできる。タイプBのように,一方の光導波路が,45°ミラーではなく通常のコア端面を持つような構造の場合もある。いずれにおいても,3次元光回路と流路の集積システムとみなすことができる。光導波路が発光部近傍にあるため,集光効率の向上とシステムの小型化が図れる。
【0038】
図4右図に,流路を複数個設け,励起光用光導波路を複数に分岐させた場合の例を示す。この例では,流路17a,流路27b,流路37c,流路47dを設け,それそれに波長λE1,λE2,λE3,λE4の励起光を照射する。例えば,λEmの励起光を流路n7eに照射した場合,波長λLnmの発光が導波路を通って出力される。これにより,多数の物質の発光スペクトルが分光器なしで一度に測定できることになる。
【0039】
流路は,例えば,一方の光導波路のフィルム面に溝を形成し,他方の光導波路のフィルム面でカバーするなどの方法により形成できる。45°ミラーつき光導波路としては,アクリル,エポキシ,ポリイミド,シリコーンなどのポリマでできたフィルム形状のものが望ましいが,ガラス,半導体からできた光導波路,基板つき形状のものでも使用可能である。
【0040】
[第4実施形態]
図5に,本発明の第4実施形態による材料センシティブSOLNETの構造例を示す。光導波路と流路17f,流路27g,流路37hを配置し,それらの先端にレンズ14を,またそれらの間に,フォトポリマ,光硬化性材料などのPR材料15を配置する。流路1,2,3には,それぞれ,材料1 16a,材料2 16b,材料3 16cを挿入する。例えば,流路1と流路3に発光性の物質が存在している場合,PR材料が感光する波長の書き込み光17を光導波路から出射すると,これが流路1,流路3に励起光として照射され,これらの流路から発光が生じる。発光の波長がPR材料の感光波長領域内にある場合,発光と光導波路からの書き込み光とが重なってセルフフォーカスが生じ,光導波路と流路をセルファライン連結するSOLNET18が形成される。これにより,流路中の材料に依存してSOLNETの光結合路の有無が生じ,材料センシティブなSOLNETが実現される。流路1,流路3に,発光性物質のかわりに反射性物質が存在する場合,反射光と書き込み光により,上記と同様の材料センシティブSOLNETが形成される。材料センシティブSOLNETは,例えば,材料分析,人工神経回路網,パターン認識,自動調整システムなど広い応用が期待できる。PR材料としては,これまでに知られているエポキシ/アクリル系材料などを用いることができる。発光スペクトルとのマッチングを取るために,必要に応じてPR材料の分光増感を行う。
【0041】
[第5実施形態]
図6は,本発明の第5実施形態による分子認識マイクロシステムの構造例である。分子認識デバイスとして導波路リング共振器型波長フィルタを用い,3種類の分子(分子1 19a,分子2 19b,分子4 19c)が存在している場合を例にとって説明する。リング部に分子センシティブ導波路MSW1 20a,MSW2 20b,MSW3 20c,MSW4 20d,・・・を形成する。MSWnは,分子nに対するレセプタ21を有する。分子nが存在する場合,これがレセプタに捕獲され,導波光22に対する屈折率が変調される。屈折率変調の原理としては,「分子nの吸着に起因する屈折率変化を導波光が感じる」および「分子nの吸着で表面電位の変化が生じ,MSWの電気光学効果に起因する屈折率変化を導波光が感じる」がある。
【0042】
初めに,分子が存在しないイニシャル状態を考える。Input側の光導波路に波長可変LD23から光を入射させる。入射波長をスイープすると,各リング共振器の共振波長においてOutput側光導波路に光が伝播し,光導波路に接続したPD(PD1 24a,PD2 24b,PD3 24c,PD4 24d)の出力パワーがピークを示す。各共振器の共振波長は,リング直径を少しずつ変化させるなどして,ずらしておくことが望ましい(LDを各共振器に一つずつ配置する場合は,このような工夫は不要となる)。つぎに,分子1,2,4を導入する。MSW1,2,4には分子が捕獲される。MSW3には分子は捕獲されない。このため,MSW1,2,4の共振器の共振波長はシフトし,MSW3の共振器の共振波長はシフトしない。このような,共振波長のシフトの有無から分子認識が可能となる。共振波長のシフトは,例えば,出力光パワーまたはその変化率が極大または極小となる波長の変化から検出できる。
【0043】
リング導波路の直径は,10μm前後,光導波路幅は1μm前後,Input/Output導波路とリング導波路の間のキャップは100nmオーダが普通であるが,これらのパラメータ範囲には限定されない。リング直径およびギャップを大きくするにしたがって,感度が上がる。レセプタとしては,従来報告されている分子を使用することができる。導波路表面に自己組織化単分子層(SAM)として形成することができる。また,Molecular Layer Deposition(MLD)や有機CVDを用いて,基板からポリマワイヤを成長させ(非特許文献1),その先端にレセプタを付加することもできる。
【0044】
[第6実施形態]
図7は,本発明の第6実施形態による平面型発光デバイスの構造例である。有機半導体A30aと有機半導体B30bがpn接合を形成している。さらに,有機半導体Aは,薄膜トランジスタ(TFT)としても働いている。電極は,ソース31が有機半導体A領域に,ドレイン32が有機半導体B領域に,ゲート33がゲート絶縁膜34を介して形成されている。ソースードレイン間の電流をゲート電圧で制御する。on状態ではpn接合領域近傍から発光35を生じる。ゲートを省き,TFT機能をなくすこともできる。この場合は,通常の2端子のダイオード構造となる。pn接合部は,完全には接触せず,隣接した状態でも動作可能である。
【0045】
電極としては,p型半導体に対してはAu,ITOなど,n型半導体に対してはAl,LiドープAl,Mgなどを用いることができる。電極サイズは,10nm−10μmオーダが適正である。発光強度を増大させる場合は,発光部を多数並べることが有効である。その際,図7に示すように,各有機半導体の両側を光らせることが有効である。電極はストライプ形状には限定されず,櫛形,矩形,円形など多様な形とすることが可能である。この場合,電極を外部に取り出すために,多層配線を使用することもできる。
【0046】
有機半導体の形成には,MLD,有機CVDなどを使用する(非特許文献1)。膜厚は1−1000nmオーダが適正である。材料としては,例えば,カーボンナノチューブ,ポリアゾメチン,ポリチオフェン,ポリオキサジアゾール,ペンタセン,TPD,フタロシアニン,Alqなどがある。平面方向のpn接合は,選択成長により作製できる。例えば,最初に,有機半導体Aとして,ペンタセン,TPD,共役ポリマpoly−azomethine(AM)などの疎水性の薄膜をパターン化して成長させる。つぎに,有機半導体Bとして,poly−AMを,キャリアガスタイプMLD(CG−MLD)またはキャリアガスタイプ有機CVD(CG−OCVD)により,p−phenylenediamine(PPDA)とterephthalaldehyde(TPA)を原料分子に用いて成長させる。ここで,有機半導体Aとしてpoly−AMを用いる場合は,有機半導体Aのpoly−AMは有機半導体Bのpoly−AMと異なる構造を持たせることが必要である。これは,置換基の種類やベンゼン環の数を変えることで容易に可能となる。有機半導体Bとして成長させたpoly−AMは,疎水性膜上には成長せず,その他の領域に選択的に成長する。その結果,平面方向の接合が形成できる。場合によっては,電極の側面にアミノアルカンチオールなどのSAMを形成し,ポリマ鎖の配向制御を行い(非特許文献1),キャリアモビリティを向上させることができる。斜め蒸着下地膜を用いたポリマ鎖配向成長(非特許文献1)もモビリティ増大化に有効である。
【0047】
このような平面構造により,透明電極が必須でなくなり,低コスト化が可能となる。また,発光が微小領域から生じるため,微細パターン発光が可能となる。さらに,有機半導体の膜厚が波長以下に設定できるため,薄膜内部の導波効果が抑制でき,光取り出し効率を向上できる。
【0048】
[第7実施形態]
図8は,本発明の第7実施形態による多層導波路集光器の構造例である。図1に示した太陽光エネルギー変換用のIPECSにおいては,集光部にレンズと光導波路が用いられている。図8の構造は,レンズと光導波路の組み合わせにかえて,導波路を主体とした集光を行おうというもので,ミラー(または波長フィルタ)つきの光導波路層が多層化されてできている。集光器を上から見るとミラー位置40が2次元アレイ状に並んでいる。各ミラー位置の番号は,そのミラーが何層目にあるかを表している。図8の例では,上から層1,層2,層3,層4,層5,層6と6層積層されている。ミラー41により,上方から入射した光42は光導波路5に導入され,集光される。図8下側2つの模式図は,それぞれ,層1,2の積層位置関係,および層1,3,5の積層位置関係を示したものである。前者の場合,上下の平行移動,後者の場合,左右の平行移動を行って積層されている。
【0049】
図9(a)に,各層の構造例を模式的に示した。ミラーからの光が合波されてガイドされている。左側の模式図では,直線導波路が使用されている。右側の模式図では,合流する導波路コアが湾曲し,またミラー部付近のコア幅が広くなっている。これは,後述するスカート型コア構造(図13)を適用したものである。垂直入射に近い角度の光に対しては,45°ミラーが適当である。斜め入射の光に対しては,図9(b)に示すように,45°から角度をずらしたミラーが適当である。これらのミラー付き光導波路を45°ミラー付き光導波路とともに積層することにより,幅広い入射角の光を集光することが可能になる。さらに,光導波路の向きを90°または,それ以外の適当な角度に回転させた層を加えて積層することにより,より高効率な集光できるようになる。導波光は,導波路端面,ミラーなどから直接ソーラーセル・光合成セルに導入してもよいし,光ファイバ・光回路などのデバイスに導入してもよい。各光導波路をさらに合流させ,ソーラーセル・光合成セルの数を減らすこともできる。異なる層の光導波路を光Z−コネクションにより合流させることも可能である。
【0050】
光導波路コア径は1μmオーダからmmオーダまで用途によってバリエーションがある。材料としては,典型的には,ポリマ,ガラスがある。45°ミラー付き光導波路形状の空孔に液体を入れた構成も可能である。光閉じ込めを強くするために,エアクラッディング型光導波路を用いることもできる。導波路作製方法としては,光硬化性樹脂を用いた光露光法(built−in mask法など),スタンプ法,インプリント法,エッチング法,射出成形法,ダイシング法などを用いることができる。光導波路層の積層は,光導波路フィルムを作製し,それらを積層する方法,あるいは,ビルトアップ方式で積み重ねる方法などにより行う。
【0051】
多層導波路集光器では,構造シンプル化のため,基本的にはレンズと組合さないが,場合によっては,レンズを上面付近または層間に配置し,集光効率の向上を図ることもできる。また,直射日光下で集光する場合,集光器前面に水などの赤外線吸収フィルタを配置することが有効である。吸収した熱は,お湯として回収し,熱エネルギーとして活用することができる。また,ワイドギャップ半導体(TiOx,ZnO,WOxなど)を用いたソーラーセル・光合成器を集光器前面に配し,青・紫外の光のエネルギー変換を行い,残りの長波長の光を集光することもできる。この場合,光導波路材料は,青・紫外の光を導波する必要がなくなり,低価格導波路材料が使用できることになる。
【0052】
多層導波路集光器は,太陽エネルギー変換システムへの応用のみならず,高効率集光器として様々な分野への応用が可能なことは言うまでもない。また,光の向きを逆転し,導波光がミラーから出射するようにすることにより,照明,ディスプレイなどに応用することも可能である。
【0053】
[第8実施形態]
図10は,本発明の第8実施形態によるエアクラッディング型光導波路である。光導波路コア43をスペーサ44の上に配置し,光導波路とする。全体がエアで囲まれているため光閉じ込めを強くすることができる。超微細な光導波路が必要なチップ内光配線,太陽電池用の集光器などにおいて特に有用となる。スペーサは,基体の上に搭載するか,または,基体に凹凸をつけることなどにより形成できる。
【0054】
図11は,省資源化光導波路の作製プロセスと構造である。作製プロセスとしては,従来から知られているPhotolithographic Packaging with Selectively Occupied Repeated Transfer(PL−Pack with SORT)(非特許文献1)を用いることができる。基体45の上に光導波路コアを高密度に配置する。また,最終基体46上にはキャッチアップサイト47を形成する。キャッチアップサイトは,光導波路コアとの間に,光導波路コアと基体との間の密着力より強い密着力を生じるサイトである。基体を最終基体とアタッチ,デタッチすることにより,光導波路コアが基体から最終基体のキャッチアップサイトに選択的に移植される。例えば,基体上のコアピッチ,最終基体上のコアピッチが,それぞれ50μm,300μmである場合,基体上のコアアレイ中のコアが6本ごとに移植される。基体上に残ったコアは他の最終基板に移植される。1枚の基体から6枚の光導波路が作製できるので,コア材料の消費量とプロセスコストは従来の約1/6にまで低減できることになる。図11の例では,45°ミラーがコアに形成されている。したがって,ミラー材料の消費量とプロセスコストも約1/6にまで低減化できる。図11の例では,45°ミラーはdown−taper型となっている。途中に移植ステップを入れて最終移植時でのコアの上下を反転させることにより,up−taper型の45°ミラーとすることもできる。ミラーの代わりに,誘電体多層膜からなる波長フィルタなどを形成することもできる。この場合は,波長フィルタ材料の消費量とプロセスコストが約1/6にまで低減できる。
【0055】
図12の例では,面発光レーザ(VCSEL),フォトディテクタ(PD),光変調器などの薄膜デバイス48,49がコアに集積化されている。キャッチアップサイトをコアのミラー(または波長フィルタ)部分に形成し,SORTを用いてこれらの薄膜デバイスを配置することにより,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストが低減できる。この例では,移植前,後いずれの場合もup−taper型45°ミラーとなっている。これは,2段階のアタッチ/デタッチにより可能となる。この後,オーバクラッディング層の形成により薄膜デバイスを埋め込むことも可能である。この場合,電極の取り出し,配線など後工程が必要となる。また,薄膜デバイスは,ミラー(または波長フィルタ)付きコアを移植した後,PL−Pack with SORTなどにより配置し,埋め込むこともできる。
【0056】
図11,図12いずれの例の場合も,最終基板にコアを移植した後,オーバクラッディング層を形成し,埋め込み型光導波路とすることができる。この場合,ミラーまたは波長フィルタ面となるコア端ファセット部にメタル薄膜または多層誘電体薄膜を形成し,反射率を上げることが望ましい。また,最終基体上にあらかじめクラッディングフィルムを配し,プロセス終了後最終基体から分離することにより,光導波路フィルムとすることもできる。
【0057】
図13は,最終基体50の上に配置されたコアを3層構造(高屈折率コア51を低屈折率コア52ではさんだ構造)とし,さらに45°ミラー・波長フィルタとなるコア端ファセット部においてコアの幅を広げ,スカート型とした例である。スカート型部53には,ミラー用のメタル薄膜54または波長フィルタ用の誘電体薄膜54が形成されている。3層構造は,例えば,光硬化材料を用いた場合,Built−in Mask法や通常のマスク露光法などにより作製できる。低屈折率コア層,高屈折率コア層,低屈折率コア層の順にコーティングした後,垂直露光,斜め露光により導波路コアと45°ミラー部分を硬化させ,現像して3層構造コアを得る。インプリント法など他の方法を用いることも可能である。
【0058】
3層構造により,導波光の最終基体(クラッドとして使用)へのトンネリングが抑制され,ミラー部でのリークが抑制される。また,スカート型構造により,コア端コーナーパターンの不完全性の影響を回避することができる。コアパターンを作製する際,コーナー部分に丸まりを生じる場合がある。この場合でも,スカート型としておけば,導波光の光路からコーナー部分を遠ざけることができ,コーナーパターンの不完全性の影響を受けずにすむ。スカート部の長さを長くしすぎると,光の広がりが顕著になる。長さとしてはもともとのコア幅の2倍程度以下にすることが適当である。
【0059】
3層・スカート型構造では,コア端ファセット部にメタル・誘電体薄膜を形成する際,位置合わせ精度を緩和できるという利点も期待できる。すなわち,通常の構成では,傾斜面と薄膜形成位置にずれがあると,コアの側面,上面に薄膜が付着し,導波光の散乱を誘発する。これに対して,3層・スカート型構造では,ある程度ずれてもそのようなことは起こらない。コアの層数は3層とは限らず,低屈折率コアと高屈折率コアの2層構造,あるいは,4層以上の構造などを採用することもできる。低屈折率コアの屈折率を,クラッディング領域の屈折率より低くすることもできる。
【0060】
PL−Pack with SORTなどにより,オーバクラッディングつきの光回路とすることもできる。最終基板にコアを移植した後,オーバクラッディング層を形成し,埋め込み型光導波路とすることができる。また,最終基体上にあらかじめクラッディングフィルムを配し,プロセス終了後最終基体から分離することにより,光導波路フィルムとすることもできる。
【0061】
図10で述べた省資源化プロセスを多層・スカート型コアに適用すること,エアクラッディング導波路の作製に省資源化プロセスを適用すること,さらにエアクラッディング導波路のコアとして多層・スカート型コアを用いることが可能であることは言うまでもない。光導波路材料としては,アクリル,エポキシ,ポリイミド,シリコーンなどのポリマがあるが,ガラス,ゾルゲル材料なども使用可能である。
【0062】
[第9実施形態]
第8実施形態では,光導波路の用途は限らず,エアクラッディンング型光導波路,省資源化光導波路,多層コア光導波路,スカート型光導波路について述べた。これらは,本明細で述べてきたIPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,および多層導波路集光器における光導波路部に適用することができる。
【0063】
[第10実施形態]
図14は,本発明の第10実施形態による集積型太陽エネルギー変換システムの構造例である。ここでは,レンズで集光した光をミラー付き光導波路に入射させ,合流光導波路を通してソーラーセルおよび/または光合成器60にガイドし,光エネルギー変換を行う例を示した。本実施形態では,集光器を複数領域に分割し,各領域内にソーラーセルおよび/または光合成器を配置することにより,光導波路内での光伝播ロスによる光エネルギーの散逸を最小限にとどめている。ソーラーセルからの電気エネルギー取出しは,集光器に形成した電極・配線61により行う。光合成器からの生成物の取り出しは,流路を通して行う。領域のサイズは,100μmオーダから10cmオーダ程度までが適切である。
【0064】
図15は,多層導波路集光器を用いた場合の各層の構造例である。分割された領域内にソーラーセルおよび/または光合成器が配置されている。ソーラーセルからの電気エネルギー取出しは,集光器に形成した電極・配線により,各層ごと,または最終的に多層配線によりまとめて行う。光合成器からの生成物の取り出しは,集光器に形成した流路により,各層ごと,または多層流路により最終的にまとめて行う。
【0065】
さらに,集積型太陽エネルギー変換システムにおいて,これまで述べてきたIPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,エアクラッディング型光導波路,省資源化光導波路,多層コア・スカート型光導波路を導入することも可能である。ソーラーセル・光合成器の集積化には,PL−Pack with SORTの適用が有効である。
【0066】
以上述べたようなIPECSにより,太陽エネルギー変換システムや光化学・電気化学などのケミカルプロセスを含むデバイスの小型・集積化,それに伴う高効率化・高機能化を実現することができる。IPECSは,光/電気/化学/液体/気体/固体が融合した集積回路みなすことができ,ケミカルシステム,光エネルギー変換システムなどの小型・低コスト・高性能化の有力手段となる。また,バイオテクノロジー,物質合成,反応化学などにおいても有効である。また,導波型薄膜ソーラーセル/光合成セルおよび複数分子による分光増感により,光エネルギー変換効率の向上,および低コスト化を実現することができる。また,平面型発光デバイスにより,発光デバイスの低コスト化,発光領域の微細化,光取り出し効率の向上を実現することができる。また,多層導波路集光器により,太陽光などの光の高効率でシンプル化された集光を実現することができる。また,エアクラッディング型光導波路により,光閉じ込めの強い光導波路を実現することができる。また,省資源化光導波路により,コア,ミラー,波長フィルタ,薄膜デバイスの材料消費量とプロセスコストを低減できる。また,多層コア光導波路,スカート型光導波路により,ミラー,波長フィルタにおける光リーク・散乱の低下を実現することができる。さらに,低コスト・高性能な集光器,IPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,太陽エネルギー変換システムを実現することができる。さらに
【0067】
【特許文献1】吉村徹三,浅間邦彦:特開2007−107085「集積化ケミカルシステムと集積化光エネルギー変換システム」。
【非特許文献1】吉村徹三:分子ナノシステム−光化コンピュータと太陽エネルギー変換への応用−,コロナ社(2007)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来発明によるIPECSの構造例。
【図2】 本発明の第1実施形態によるIPECSの構造例。
【図3】 本発明の第2実施形態による導波型薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルの構造例。
【図4】 本発明の第3実施形態によるマイクロ分光システムの構造例。
【図5】 本発明の第4実施形態による材料センシティブSOLNETの構造例。
【図6】 本発明の第5実施形態による分子認識マイクロシステムの構造例。
【図7】 本発明の第6実施形態による平面型発光デバイスの構造例。
【図8】 本発明の第7実施形態による多層導波路集光器の構造例。
【図9】 本発明の第7実施形態による多層導波路集光器の各層の構造例。
【図10】 本発明の第8実施形態によるエアクラッディング型導波路の構造例。
【図11】 本発明の第8実施形態による省資源化光導波路の作製プロセスと構造例。
【図12】 本発明の第8実施形態による省資源化光導波路の作製プロセスと構造例。
【図13】 本発明の第8実施形態による多層コア・スカートスカート型コアの構造例。
【図14】 本発明の第10実施形態による集積型太陽エネルギー変換システムの構造例。
【図15】 本発明の第10実施形態による多層導波路集光器を適用した集積型太陽エネルギー変換システムの各層の構造例。
【符号の説明】
薄膜ソーラーセル1,薄膜光合成セル2,半導体3,半導体A 3a,半導体B 3b,半導体C 3c,半導体D 3d,p型半導体3e,n型半導体3f,半導体E 3g,半導体F 3h,波長フィルタ4,光導波路5,レンズ6,流路7,流路1 7a,流路2 7b,流路3 7c,流路4 7d,流路n 7e,流路1 7f,流路2 7g,流路3 7h,電極A 8a,電極B 8b,対向電極8c,電極8d,光9,電解質10,色素11,励起光12,発光13,レンズ14,PR材料15,材料1 16a,材料2 16b,材料3 16c,書き込み光17,SOLNET18,分子1 19a,分子2 19b,分子4 19c,分子センシティブ導波路MSW1 20a,MSW2 20b,MSW3 20c,MSW4 20d,レセプタ21,導波光22,波長可変LD23,PD1 24a,PD2 24b,PD3 24c,PD4 24d,有機半導体A 30a,有機半導体A 30b,ソース31,ドレイン32,ゲート33,ゲート絶縁膜34,発光35,ミラー位置40,ミラー41,光42,光導波路コア43,スペーサ44,基体45,最終基体46,キャッチアップサイト47,薄膜デバイス48,49,最終基体50,高屈折率コア層51,低屈折率コア層52,スカート型部53,メタル・誘電体薄膜54,ソーラーセル・光合成器60,電極・配線61

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体薄膜を具備する薄膜ソーラーセルおよび/または薄膜光合成セルが光導波路と集積化されてなることを特徴とする集積化フォトニック/エレクトロニック/ケミカルシステム(IPECS)。
【請求項2】
液体および/または気体の流路が光導波路と集積化されてなることを特徴とするIPECS。
【請求項3】
請求項1,2に記載のIPECSにおいて,光デバイス,電子デバイスが搭載および/または埋め込みにより集積化されていることを特徴とするIPECS。
【請求項4】
請求項1−3に記載のIPECSにおいて,IPECSが層を重ねた多層構造をもち,薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セル,流路,光導波路の中の少なくとも一つが異なる層に配置されていることを特徴とするIPECS。
【請求項5】
半導体薄膜を具備する薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルにおいて,光を,該半導体薄膜を含む領域に導波させることを特徴とする導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル。
【請求項6】
半導体薄膜を具備する薄膜ソーラーセル,薄膜光合成セルにおいて,該半導体薄膜に2種類以上の分子を配列吸着させることを特徴とする色素増感型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル。
【請求項7】
流路が複数の光導波路の出射端で挟まれていることを特徴とするIPECS。
【請求項8】
請求項7に記載のIPECSにおいて,光導波路の少なくとも一つが45°ミラーを備えていることを特徴とするIPECS。
【請求項9】
光導波路と単一または複数の流路の間に,光が照射されると屈折率が変化する性質をもつフォトリフラクティブ材料を配置し,光導波路から出射した光と該流路からの光により,該光導波路と該流路の間を連結する自己組織化光導波路を形成することを特徴とするIPECS。
【請求項10】
特定の分子に対する捕獲機能をもつレセプタを表面または表面近傍に配した光導波路を光回路に組み込み,該光回路への入力光波長をスイープしたときの出力光パワーの変化を検知し,レセプタに捕獲された分子の存在を認識することを特徴とするIPECS。
【請求項11】
2種類の半導体層をin−plane配置で接触または近接させ,接触または近接領域近傍に該半導体層よりホール・電子を注入し,該接触または近接領域近傍から光を発生させることを特徴とする平面型発光デバイス。
【請求項12】
ミラーまたは波長フィルタを備えた光導波路を重ねてなることを特徴とする多層導波路集光器。
【請求項13】
スペーサを配置した基体上に光導波路コアを移植してなるエアクラッディング型光導波路。
【請求項14】
光導波路コアアレイを基体上に作製し,該コアアレイ中の一部のコアを他の基体に選択的に移植するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする省資源化光導波路。
【請求項15】
請求項14に記載の省資源化光導波路において,光導波路コアアレイ中のコアがミラーおよび/または波長フィルタおよび/または薄膜デバイスを備えていることを特徴とする省資源化光導波路。
【請求項16】
請求項14に記載の省資源化光導波路において,コアを基体に選択的に移植した後に薄膜デバイスを集積化するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする省資源化光導波路。
【請求項17】
光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,屈折率の異なる2つ以上の層からなることを特徴とする多層コア光導波路。
【請求項18】
光導波路のコア端ファセット部および/またはその付近のコアが,他のコア部分のコア幅より広いコア幅をもち,かつ該広いコア幅を持つ部分の光伝播方向の長さが該他のコア部分のコア幅の2倍以内であることを特徴とするスカート型光導波路。
【請求項19】
請求項17,18に記載の多層コア・スカート型光導波路において,光導波路コアアレイを基体上に作製し,該コアアレイ中の一部のコアを他の基体に選択的に移植するステップを含むプロセスを用いて作製することを特徴とする多層コア・スカート型光導波路。
【請求項20】
請求項17,18に記載の多層コア・スカート型光導波路において,コア端ファセット部および/またはその付近にミラー用のメタル薄膜または波長フィルタ用の誘電体薄膜を形成したことを特徴とする多層コア・スカート型光導波路。
【請求項21】
請求項12に記載の多層導波路集光器において,光導波路の少なくとも一部が請求項13−20に記載のエアクラッディング型および/または省資源化および/または多層コア型および/またはスカート型光導波路であることを特徴とする多層導波路集光器。
【請求項22】
請求項1,2に記載のIPECS,請求項5に記載の導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セルにおいて,光導波路の少なくとも一部が請求項13−20に記載のエアクラッディング型および/または省資源化および/または多層コア型および/またはスカート型光導波路であることを特徴とするIPECS,導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル。
【請求項23】
集光器を複数領域に分割し,各領域内にソーラーセルおよび/または光合成器を配置し,該ソーラーセルに連結する電極・配線および/または流路を該集光器に設けたことを特徴とする集積型太陽エネルギー変換システム。
【請求項24】
請求項23に記載の集積型太陽エネルギー変換システムにおいて,請求項1,2に記載のIPECS,請求項5に記載の導波型薄膜ソーラーセル/薄膜光合成セル,請求項12に記載の多層導波路集光器,請求項13に記載のエアクラッディング型光導波路,請求項14に記載の省資源化光導波路,請求項17に記載の多層コア型光導波路,および請求項18に記載のスカート型光導波路から選ばれた少なくとも一つを構成要素として含むことを特徴とする集積型太陽エネルギー変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−4717(P2009−4717A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187617(P2007−187617)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(501358828)
【Fターム(参考)】