電力変換装置の制御方法
【課題】出力電圧が異なる2つのDC電源のうちの、一方のDC電源から他方のDC電源に、高効率で電力を供給することが可能な電力変換装置の制御方法を提供する。
【解決手段】2つのDC電源1-1、1-2の低電位側が共通電力線にて接続され、且つ、この共通電力線とモータ2がグランドスイッチを介して接続され、DC電源1-1の高電位側とモータ2が第1スイッチを介して接続され、且つ、DC電源1-2の高電位側とモータ2が第2スイッチを介して接続される。そして、DC電源1-1、及びDC電源1-2の各出力電力を指令する電力指令(Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2)と、各DC電源1-1、1-2の各出力電圧(Vdc_1、Vdc_2)と、電圧指令(vd*、vq*)と、モータ電力(Pm)とに基づき、第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態でモータ2の駆動電圧を出力する。
【解決手段】2つのDC電源1-1、1-2の低電位側が共通電力線にて接続され、且つ、この共通電力線とモータ2がグランドスイッチを介して接続され、DC電源1-1の高電位側とモータ2が第1スイッチを介して接続され、且つ、DC電源1-2の高電位側とモータ2が第2スイッチを介して接続される。そして、DC電源1-1、及びDC電源1-2の各出力電力を指令する電力指令(Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2)と、各DC電源1-1、1-2の各出力電圧(Vdc_1、Vdc_2)と、電圧指令(vd*、vq*)と、モータ電力(Pm)とに基づき、第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態でモータ2の駆動電圧を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御方法に係り、特に、1つの電源から他の電源へ効率良く供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数電源を備え、各電源から供給する電力を任意の値に制御しモータを駆動する構成が特開2006−33956号公報(特許文献1)に開示されている。該特許文献1では、DC−DCコンバータを用いずに、複数電源を用いたモータ駆動システムをより低損失で、より小型に、より低コストにしつつ、各電源から供給する電力を任意の値に制御可能とすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−33956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された制御方法では、一方の電源から他方の電源に電力を供給する際に、一方の電源によるモータへの電圧指令値を大きく設定し、この大きく設定した分の電力を他方の電源に供給するようにしている。このため、モータが大きく力行して他方の電源で回生するため、モータの相電流リプルが大きくなるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、出力電圧が異なる2つの蓄電手段のうちの、一方の蓄電手段から他方の蓄電手段に、高効率で電力を供給することが可能な電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、2つのDC電源の低電位側または高電位側のうちの一方の電極が共通電力線にて接続され、且つ、共通電力線とモータがグランドスイッチを介して接続され、更に、一方のDC電源の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極とモータとが第1スイッチを介して接続され、且つ、他方のDC電源の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極とモータとが第2スイッチを介して接続される。また、第1スイッチ、及び第2スイッチを制御する制御装置は、少なくとも1回の制御周期期間で、グランドスイッチを遮断すると共に、2つのDC電源の各出力電力を指令する電力指令と、2つのDC電源の各出力電圧と、電圧指令と、モータ電力とに基づき、第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態でモータの駆動電圧を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源直列運転状態を実行する場合に、グランドスイッチを遮断した状態で、第1スイッチ、及び第2スイッチをオン、オフ操作することにより、モータに駆動電圧を出力する。このようにモータを駆動すると、第1の蓄電手段と第2の蓄電手段が逆直列に接続された状態でモータが駆動されるので、2つの電圧指令値を用いることなく一方の蓄電手段は放電、他方の蓄電手段は充電を行うため、相電流のリプル増加させず、更に、スイッチング電圧が各蓄電手段の電圧の差となるため、スイッチング損失を低減し高効率に蓄電手段間での電力の移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る制御方法が適用される電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電力変換装置の、電力変換器及びマルチ出力DC電源の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電力変換装置の、第1の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る電力変換装置の、第2の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る電力変換装置の、第3の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る電力変換装置の、変調率補正のイメージを示す説明図である。
【図7】本発明に係る電力変換装置の、電流・電力変換手段の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る電力変換装置の、変調率演算手段の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る電力変換装置の、運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る電力変換装置の、電圧分配手段の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る電力変換装置の、選択運転状態の設定条件を示す対応マップである。
【図15】本発明に係る電力変換装置の、選択電源の設定条件を示す対応マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る制御方法が適用される電力変換装置の構成を示すブロックである。図1に示すように、この電力変換装置は、出力電圧が異なる2つのDC電源1-1(第1の蓄電手段)、1-2(第2の蓄電手段)を備えるマルチ出力DC電源1と、3相交流モータ2(以下、単に「モータ」と称する)と、マルチ出力DC電源1より出力される電圧を用いてモータ2に印加する電圧を生成する電力変換器3と、該電力変換器3を駆動してモータ2のトルクを制御すると共に、2つのDC電源1-1、1-2のそれぞれから供給される電力の分配比率を制御する制御装置4と、を備えている。なお、第1の蓄電手段、及び第2の蓄電手段として、コンデンサを用いることも可能である。
【0010】
マルチ出力DC電源1は、DC電源1-1の低電位側端子と、DC電源1-2の低電位側端子が接続されて共通電位(以下、「GND電位」と称する)が構成されている。このマルチ出力DC電源1は、GND電位、DC電源1-1の電位Vdc_1、DC電源1-2の電位Vdc_2の、3通りの電位の電圧を出力する電源である。モータ2は、後述する電力変換器3より出力される交流電圧により駆動される。
【0011】
電力変換器3は、マルチ出力DC電源1より出力される3通りの電位による電圧に基づき、モータ2に印加する電圧を生成する直流・交流電力変換器である。図2は、電力変換器3及びマルチDC電源1の回路図である。図示のように、この電力変換器3は、U、V、Wの各相で同一の構成を有するスイッチ手段3-3、3-4、3-5を備えている。
【0012】
以下、U相のスイッチ手段3-3について説明すると、DC電源1-1のプラス側端子が、電線16を介してスイッチ104a、104bに接続され、更に、スイッチ107a、電線15(共通電力線)を介してDC電源1-1のマイナス側端子に接続されている。また、スイッチ104a、104bと、スイッチ107aとの接続点は、モータ2のU相入力端子に接続されている。同様に、DC電源1-2のプラス側端子が、電線14を介してスイッチ101a、101bに接続され、更に、モータ2のU相入力端子に接続されている。
【0013】
スイッチ107aには、ダイオード107bが接続されている。また、電線15は、2つのDC電源1-1、1-2のそれぞれのマイナス側端子に接続されている。更に、電線14と電線15の間には、平滑用のコンデンサ12が設けられ、電線16と電線15の間には、平滑用のコンデンサ13が設けられている。なお、V相、W相のスイッチ手段3-4、3-5についても同様の構成を備えている。
【0014】
そして、スイッチ手段3-3は、モータ2のU相に出力する電圧を生成するために、3通りの電位、即ち、Vdc_1、Vdc_2、及びこれらの差分(Vdc_1−Vdc_2)のうちの一つを選択して接続する機能を備えており、各電位に接続する時間の割合を変化させることで、モータ2に必要な電圧を供給する。V相のスイッチ手段3-4、W相のスイッチ手段3-5も同様である。本実施例ではVdc_2よりもVdc_1の方が大きい場合を例に挙げて説明する。
【0015】
以下、本発明の特徴部分である電力変換器3における3通りの運転状態について説明する。本発明の特徴は、図2に示した電力変換器3を用いてモータ2のトルクを制御しつつ、3通りの運転状態を切り替えて、各DC電源1-1、1-2より供給される電力の割合を指令値に応じて自由に変更することである。
【0016】
以下、3通りの運転状態、即ち、第1の運転状態(電源単独運転状態)、第2の運転状態(電源単独運転状態)、及び第3の運転状態(電源直列運転状態)について詳細に説明する。なお、以下では簡単のためU相のみを取り挙げて説明する。V相、W相についても同様である。
【0017】
[第1の運転状態]
まず、第1の運転状態について図3を参照して説明する。第1の運転状態は、DC電源1-2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a(第2スイッチ)をオフとし、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104a(第1スイッチ)、及びモータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107a(グランドスイッチ)をオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_1[V]と0[V]で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。このとき、瞬時変調率指令は、mu_vdc1_cが用いられる。なお、瞬時変調率指令については後述する。また、図3において、点線で囲むスイッチ101aは、オフ状態であることを示している。
【0018】
[第2の運転状態]
次に、第2の運転状態について図4を参照して説明する。第2の運転状態は、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104aをオフとし、DC電源2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a、及びモータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオン・オフ操作することによりVdc_2[V]と0[V]で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。このとき、瞬時変調率指令は、mu_vdc2_cが用いられる。なお、瞬時変調率指令については後述する。また、図4において、点線で囲むスイッチ104aは、オフ状態であることを示している。
【0019】
[第3の運転状態]
次に、第3の運転状態について図5を参照して説明する。第3の運転状態は、Vdc_1の方がVdc_2よりも大きい場合に、モータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオフとし、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104a、及びモータ2からDC電源1-2の正極へ向かう経路に設けられるスイッチ101bをオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_2[V]と電圧Vdc_1[V]の間で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。
【0020】
他方、Vdc_2の方がVdc_1よりも大きい場合には、モータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオフとし、DC電源1-2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a、及びモータ2からDC電源1-1の正極へ向かう経路に設けられるスイッチ104bをオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_1[V]と電圧Vdc_2[V]の間で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。なお、図5において、点線で囲むスイッチ107aは、オフ状態であることを示している。
【0021】
また、図1に示す制御装置4は、トルク制御手段4-1と、電流・電力制御手段4-2と、変調率演算手段4-3と、変調率補正手段4-4と、PWMパルス生成手段4-5、及び3相/dq変換手段4-6を備えている。
【0022】
トルク制御手段4-1は、外部より与えられるトルク指令Te*、及びモータ2の回転速度ωに基づいて、モータ2のd軸電流の指令id*、及びq軸電流の指令iq*を演算する。
【0023】
電流・電力制御手段4-2は、上述のdq軸電流指令id*、iq*と、dq軸電流値id、iqと、各DC電源1-1、1-2の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、に基づき、前述の各運転状態(第1〜第3の運転状態)に応じたU相電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを生成する。dq軸電流値id、iqは、3相/dq変換手段4-6により、3相電流iu、ivに基づいて求められる。各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ2に供給されるモータ電力Pmの関係は、次の(1)式で示される。
Pm=Pcmd_vdc1+Pcmd_vdc2 ・・・(1)
【0024】
変調率演算手段4-3は、DC電源1-1の電圧Vdc_1、DC電源1-2の電圧Vdc_2を入力し、前述した各電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを正規格化した電圧指令である瞬時変調率指令mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0025】
変調率補正手段4-4は、入力された瞬時変調率指令(mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_s)に対して、PWMを行う前の処理を行い、最終的な瞬時変調率指令mu_vdc1_c、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mu_vdc2_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mu_vdc_s_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_cを生成する。
【0026】
PWMパルス生成手段4-5は、上記の最終的な瞬時変調率指令(mu_vdc1_c、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mu_vdc2_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mu_vdc_s_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_c)に基づいて、電力変換器3の各スイッチ(図2に示す101a,101b〜109a,109b)をオン、オフ操作するためのPWMパルス信号を生成する。
【0027】
次に、電流・電力制御手段4-2の構成について説明する。図7は、電流・電力制御手段4-2の詳細な構成を示すブロックである。該電流・電力制御手段4-2は、電流制御手段5-1と、dq/3相変換手段5-2と、運転割合生成手段5-3と、電圧分配手段5-4と、を備えている。
【0028】
電流制御手段5-1は、dq軸電流指令id*、iq*と、dq軸電流値id、iqに基づき、これらを一致させるためのdq軸電圧指令vd*、vq*を演算する。id、iqは、図1に示した3相/dq変換手段4-6にて、3相電流iu、ivに基づいて算出される。
【0029】
dq/3相変換手段5-2は、上述のdq軸電圧指令vd*、vq*を、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に変換し、更に、3相電圧指令の振幅Vupkを生成する。
【0030】
運転割合生成手段5-3は、電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、上述した3相電圧指令の振幅Vupkと、電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*に基づき、各運転状態(第1、第2、第3の運転状態)における電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成する。この際、次の(2)式に示すように、すべての電力配分指令の和は1となる。
1=rto_vdc1+rto_vdc2+rto_vdc_s ・・・(2)
【0031】
次に、電圧分配手段5-4について説明する。図10は、電圧分配手段5-4の内部構成を示す説明図である。図示ように、電圧分配手段5-4は、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*、及び、電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sに基づいて乗算を行い、各運転状態に応じたU相電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを生成する。即ち、複数の電圧指令からなる電圧指令群を生成する。そして、U相電圧指令は、次の(3a)〜(3c)式で示すことができる。
Vu_vdc1 =Vu*×rto_vdc1 ・・・(3a)
Vu_vdc2 =Vu*×rto_vdc2 ・・・(3b)
Vu_vdc_s=Vu*×rto_vdc_s ・・・(3c)
【0032】
また、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sも同様に計算することができる。
【0033】
また、各運転状態の相電圧指令の和は、3相電圧指令と等しい。即ち、次の(4a)〜(4c)式が成立する。
Vu*=Vu_vdc1+Vu_vdc2+Vu_vdc_s ・・・(4a)
Vv*=Vv_vdc1+Vv_vdc2+Vv_vdc_s ・・・(4b)
Vw*=Vw_vdc1+Vw_vdc2+Vw_vdc_s ・・・(4c)
【0034】
次に、図1に示した変調率演算手段4-3について説明する。図8は、変調率演算手段4-3の内部構成を示す説明図である。図8、及び下記(5a)〜(5c)式に示すように、該変調率演算手段4-3は、DC電源1-1の電圧Vdc_1、DC電源1-2の電圧Vdc_2を入力し、Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを正規格化した電圧指令である瞬時変調率指令mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0035】
【数1】
なお、上記の(5a)〜(5c)式ではU相の瞬時変調率指令の演算式についてのみ示しているが、変調率演算手段4-3はこれと同様に、V相、及びW相の瞬時変調率指令mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0036】
図1に示す変調率補正手段4-4では、電源電圧Vdc_1、Vdc_2と、電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを用いて、変調率の補正を行う。まず、次の(6a)〜(6c)式に基づいて変調率のオフセット値m_vdc1_off、m_vdc2_off、m_vdcs_offを求める。
【数2】
【0037】
更に、上述の(6a)〜(6c)式で求められたオフセット値m_vdc1_off、m_vdc2_off、m_vdcs_offを瞬時変調率指令に加算することにより、最終的な瞬時変調率指令mu_vdc1_c、mu_vdc2_c、mu_vdc_s_cを生成する。即ち、次の(7a)〜(7c)式により、最終的な瞬時変調率指令を求める。
【0038】
mu_vdc1_c=mu_vdc_1+m_vdc1_off ・・・(7a)
mu_vdc2_c=mu_vdc_2+m_vdc2_off ・・・(7b)
mu_vdc_s_c=mu_vdc_s+m_vdcs_off ・・・(7c)
なお、(7a)〜(7c)式では、U相についてのみ示しているが、これと同様に、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_cも生成する。変調率補正のイメージ図を図6に示す。
【0039】
このように、運転状態に応じた瞬時変調率にオフセット値を加算することで、分配電力目標値の大きさが大きい運転状態から生成する電圧を大きくできるようにしている。
【0040】
次に、図1に示したPWMパルス生成手段4-5の動作を説明する。該PWMパルス生成手段4-5は、上述の(7a)〜(7c)式で求められた各運転状態(第1〜第3の運転状態)の瞬時変調率指令と、それに対応したキャリアを用いて比較を行い、PWMパルス生成を行う。
【0041】
まず、第1の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc1_cと、第1の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdc1を生成する。比較時の判定値pwm_vdc1の生成は、次のように行う。
mu_vdc1_c >第1の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc1=ON
mu_vdc1_c ≦第1の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc1=OFF
【0042】
また、第2の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc2_cと、第2の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdc2を生成する。比較時の判定値pwm_vdc2の生成は、次のように行う。
mu_vdc2_c >第2の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc2=ON
mu_vdc2_c ≦第2の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc2=OFF
【0043】
更に、第3の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc_s_cと、第3の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdcsを生成する。比較時の判定値pwm_vdcsの生成は、次のように行う。
mu_vdc_s_c >第3の運転状態用キャリアならば、pwm_vdcs=ON
mu_vdc_s_c ≦第3の運転状態用キャリアならば、pwm_vdcs=OFF
【0044】
また、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態の駆動中を示す変調率mthと第3の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_thを生成する。
【0045】
変調率mthは、前述した(6c)式で求めた変調率オフセットm_vdcs_offより演算し、次の(8)式で示すことができる。
mth=m_vdcs_off×2 ・・・(8)
【0046】
比較時における判定値pwm_thの生成は次のように行う。
mth>第3の運転状態用キャリアならば、pwm_th=ON
mth≦第3の運転状態用キャリアならば、pwm_th=OFF
そして、上述した各判定値pwm_vdc1, pwm_vdc2,pwm_vdcs, pwm_thを用いて、図3に示した各スイッチ101a,101b,104a,104b,107aに与える駆動信号を生成する。
【0047】
スイッチ101aに加える信号をA、スイッチ107bに加える信号をB、スイッチ101bに加える信号をC、スイッチ104aに加える信号をD、スイッチ104bに加える信号をEとした場合の、各信号を次の(9)式に示す。なお、記号A〜Eは、図2に示すA〜Eに対応している。
A=pwm_th or pwm_vdc2
B=not(A) and not(D)
C=not(D)
D=pwm_vdcs or pwm_vdc1
E=pwm_th or not(A) ・・・(9)
【0048】
次に、図9を参照して図7に示した運転割合生成手段5-3の詳細な構成について説明する。図9は、請求項6に対応している。図示のように、運転割合生成手段5-3は、電圧状態比較手段6-1と、モータ電力演算手段6-2と、モータ運転状態判断手段6-3と、移動電力生成手段6-4と、電力比較手段6-5と、運転状態・蓄電手段選択手段6-6、及び最終運転割合生成手段6-7を備えている。そして、前述したように、該運転割合生成手段5-3は、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、電圧指令振幅Vupkと、電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*を入力し、各運転状態における最終運転割合指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成する。そして、最終的な関係としては、次の(10)式に示すように、すべての電力配分指令の和は1となる。
1=rto_vdc1+rto_vdc2+rto_vdc_s ・・・(10)
なお、(10)式は、前述した(2)式と同一である。
【0049】
電圧状態比較手段6-1では、電圧指令の振幅Vupkと、第3の運転状態を用いたときの電力変換器3の入力電圧Vdc_sとの比較を行う。
【0050】
第3の運転状態では、DC電源1-1と、DC電源1-2を逆直列接続し、一つの電源として扱うため、次の(11)式に示すように、各DC電源1-1、1-2の電圧の差が入力電圧Vdc_sとなる。
Vdc_s=|Vdc_1−Vdc_2| ・・・(11)
【0051】
この入力電圧Vdc_sは、電圧指令の振幅の2倍以上の大きさがなければ電力変換器3を駆動することができない。従って、下記のように条件を設定して、判定値V_comを出力する。
Vdc_s≧Vupk×2ならば、V_com =1
Vdc_s<Vupk×2ならば、V_com =0
【0052】
即ち、各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分と、前記電圧指令の振幅を2倍した値と、を比較することにより行われる。
【0053】
モータ電力演算手段6-2は、次の(12)式により、dq軸電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*を用いて、モータ電力Pmを演算する。
Pm=(id*×vd*)+(iq*×vq*) ・・・(12)
【0054】
モータ運転状態判断手段6-3は、モータ2の運転状態(力行運転、回生運転)を判断し、モータ2の運転状態Pm_comを出力する。
【0055】
Pm≧0ならば、Pm_com =1
Pm<0ならば、Pm_com =0
移動電力生成手段6-4は、次の(13a)、(13b)式を用いて、第3の運転状態のみで電力変換器3を駆動し、モータ2に電力を供給したときの移動電力Pmove1、及びPmove2を計算する。
【0056】
【数3】
そして、(13a)、(13b)式で求められるPmove1とPmove2を比較し、より小さいほうを移動電力Pmoveとする。ここで、移動電力Pmoveは、一方の電源に充電される電力と等しいので、負の値となる。
【0057】
電力比較部6-5は、モータ2の運転状態Pm_com、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、移動電力Pmoveに基づき、第3の運転状態での移動電力と、各電源の出力電力指令の大小関係を比較する。そして、下記のように、判定値Pcmd_comを決定する。
【0058】
[Pm_com=1の場合]
Pcmd_vdc2<Pmoveの場合、Pcmd_com=2
Pcmd_vdc2≒Pmoveの場合、Pcmd_com=1
0>Pcmd_vdc2>Pmoveの場合、Pcmd_com=0
Pcmd_vdc2≧0の場合、Pcmd_com=3
[Pm_com=0の場合]
Pcmd_vdc1<Pmoveの場合、Pcmd_com=2
Pcmd_vdc1≒Pmoveの場合、Pcmd_com=1
0>Pcmd_vdc1>Pmoveの場合、Pcmd_com=0
Pcmd_vdc1≧0の場合、Pcmd_com=3
【0059】
また、図9に示す運転状態・蓄電手段選択手段6-6は、電圧状態比較手段6-1より出力されるV_com、電力比較手段6-5より出力される判定値Pcmd_com、モータ運転状態判断手段6-3より出力される運転状態Pm_comを用いて、モータ2を駆動する際の運転状態(電源直列運転状態、または電源単独運転状態)を示す信号である選択運転状態Drive_sele、及び選択した電源(DC電源1-1またはDC電源1-2)を決定する信号である選択電源Vdc_seleを出力する。
【0060】
そして、図14に示す条件により、選択運転状態Drive_seleが、0,1,2のうちのいずれかに設定される。例えば、Pm_com=1、V_com=1、Pcmd_com=3の場合には、Drive_sele=0に設定される。
【0061】
その結果、Drive_sele=2に設定された場合には、第3の運転状態に加え、他の運転状態を組み合わせてモータ2を駆動する。Drive_sele=1に設定された場合には、第3の運転状態のみでモータ2を駆動する。Drive_sele=0に設定された場合には、第3の運転状態は用いずに、他の運転状態のみでモータを駆動する。
【0062】
また、運転状態・蓄電手段選択手段6-6では、図15に示すように、選択電源Vdc_seleが、0,1,2,3のうちのいずれかに設定される。例えば、Pm_com=1、V_com=1、Pcmd_com=3の場合には、選択電源Vdc_sele=3に設定される。そして、上述した選択運転状態Drive_seleによる決定事項に加えて、Vdc_seleの条件を加える。
【0063】
Vdc_sele=3に設定された場合には、第1の運転状態と、第2の運転状態を用いてモータ2を駆動する。Vdc_sele=2に設定された場合には、第2の運転状態を用いてモータ2を駆動する。Vdc_sele=1に設定された場合には、第1の運転状態を用いてモータ2を駆動する。上述した如くの条件設定の下で、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_seleを出力する。
【0064】
最終運転割合生成手段6-7は、選択運転状態Drive_seleと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及び電圧指令の振幅Vupkに基づき、最終運転割合rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成して出力する。ここで、rto_vdc1は第1の運転状態の運転割合指令であり、rto_vdc2は第2の運転状態の運転割合指令であり、rto_vdc_sは第3の運転状態の運転割合指令である。
【0065】
このような流れで運転割合までを求めることによって、第3の運転状態のみを用いた場合には、第1の電源(DC電源1-1)と第2の電源(DC電源1-2)が逆直列に接続された状態でモータ2を駆動するので、電圧指令を2つ用いることなく、一方の電源は放電、他方の電源は充電を行うため、相電流のリプル低減することができる。
【0066】
更に、スイッチング電圧が各DC電源1-1、1-2の出力電圧の差となるため、スイッチング損失を低減し高効率に各蓄電手段間での電力の移動が可能となる。また、運転状態を切り替えて行うときには、電力を配分することができるので、各DC電源1-1、1-2(蓄電手段)の電力を調整することができる。
【0067】
また、モータ2が力行(正トルク)している場合には、電圧が大きい蓄電手段(DC電源1-1)を用いて電圧が小さい蓄電手段(DC電源1-2)を高効率に充電することが、モータ2が回生(負トルク)している場合には電圧が小さい蓄電手段を用いて電圧が大きい蓄電手段を高効率に充電することができる。
【0068】
更に、条件に応じて運転状態を切り替えるので、第1の運転状態のみでは出力できない場合であっても第2,第3の運転状態とすることにより出力可能となる。また、電力の配分ができるので、各DC電源1-1、1-2の電力を調整することができる。
【0069】
また、高電圧であるDC電源1-1が放電を行い、低電圧であるDC電源1-2が充電を行なうことができ、モータ2が力行している場合に、高電圧電源から低電圧電源へ効率良く充電することができる。
【0070】
更に、低電圧であるDC電源1-2が放電を行い、高電圧であるDC電源1-1が充電を行なうことができ、モータ2が回生している場合に、低電圧電源から高電圧電源へ効率良く充電することができる。
【0071】
また、電力指令値、モータ電圧、運転割合により、各運転状態に応じた電圧指令値群を生成し、最終的なパルス信号を作成するので、電力指令値に高応答に追従する出力パルスを出力することができる。
【0072】
更に、第1の運転状態、及び第2の運転状態に用いる各DC電源1-1、1-2を各種条件に基づいて選択するので、電力指令値、電圧指令値を満たす可能性の有るDC電源の組み合わせを取ることができる。
【0073】
また、予め組み合わせが決まっているので、様々な演算を行わなくても、電力指令値、電圧指令値を満たす可能性のあるDC電源の組み合わせを選択することができる。
【0074】
図11は、図9に示した最終運転割合生成手段6-7の詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、該最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段7-1と、運転割合指令手段7-2と、運転割合比較手段7-3、及び最終運転割合指令手段7-4を備えている。
【0075】
最大運転割合算出手段7-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2、及び電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせで、モータ2を駆動する際の第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0076】
そして、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(14a)、(14b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0077】
【数4】
上記(14a)、(14b)式で、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0078】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(15a)、(15b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0079】
【数5】
上記(15a)、(15b)式で、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0080】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。この場合には、第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0081】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。この場合には、第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0082】
以上のように、最大運転割合算出手段7-1は、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合を生成する処理を行う。
【0083】
他方、図11に示す運転割合指令手段7-2は、選択運転状態Drive_seleと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、選択運転状態、選択電源、モータの運転状態に応じ、出力電力指令通り出力可能となる、第3の運転状態の必要運転割合rto_vdc_s_mustを演算し出力する。
【0084】
Drive_sele=2、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(16)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0085】
【数6】
Drive_sele=2、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(17)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0086】
【数7】
Drive_sele=2、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(18)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0087】
【数8】
Drive_sele=2、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(19)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0088】
【数9】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_must=1を出力する。
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_must=0を出力する。
【0089】
上記の如く演算することで、第3の運転状態を用いたときの、必要運転割合を生成する。Drive_sele=0のときは第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態の必要運転割合は0となる。また、Drive_sele=1のときは第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態の必要運転割合は1となる。
【0090】
図11に示す運転割合比較手段7-3は、第3の運転状態の必要運転割合rto_vdc_s_mustと、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxとを比較し、下記の条件に基づいて第3の運転状態での運転割合指令rto_vdc_s_cmdを出力する。
【0091】
rto_vdc_s_must ≦ rto_vdc_s_max の場合には、rto_vdc_s_cmd=rto_vdc_s_mustとする。また、rto_vdc_s_must > rto_vdc_s_max の場合には、rto_vdc_s_cmd=0とする。
【0092】
即ち、必要運転割合が最大運転割合以下であるならば、第3の運転状態を使用した状態で、電力指令を満たし、モータ2を駆動することができるため、運転割合指令として必要運転割合を出力する。他方、必要運転割合が最大運転割合を超える場合においては、第3の運転状態を使用すると電力指令を満たし、モータ2を駆動することは不可能であるため、第3の運転状態の運転割合を0とする。
【0093】
最終運転割合指令算出手段7-4では、第3の運転状態の運転割合指令rto_vdc_s_cmdと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及び選択電源Vdc_seleを用いて、下記の(1)〜(4)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を出力する。
【0094】
(1)rto_vdc_s_cmd≠0、rto_vdc_s_cmd≠1、Vdc_sele=1の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =1−rto_vdc_s
rto_vdc2 =0
(2)rto_vdc_s_cmd≠0、rto_vdc_s_cmd≠1、Vdc_sele=2の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =0
rto_vdc2 =1−rto_vdc_s
(3)rto_vdc_s_cmd=1の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =0
rto_vdc2 =0
(4)rto_vdc_s_cmd=0の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =Pcmd_vdc1/Pm
rto_vdc2 =1−rto_vdc1
【0095】
このように、第3の運転状態を使用する場合には、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら各DC電源1-1、1-2の出力電力指令を満たすことができる。
【0096】
第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、出力電力指令を満たすことができる。
【0097】
また、各運転状態の運転割合rto_vdc1,rto_vdc2,rto_vdc_sが決定すると、各電源電圧Vdc_1,Vdc_2、キャリアの振幅Afc、キャリアの周波数fcに基づいて、次の(20)式により、1制御周期Tを求めることができる。
【0098】
【数10】
このようにして、最大運転割合と、出力電力指令を満たす運転割合とを比較して配分割合を決定するので、出力電力指令に対して高応答に追従を行うことができる。また、第3の運転状態では条件を満たせない場合には、第3の運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずに、確実にモータ2の制御を行うことができる。
【0099】
また、キャリアの周波数fcと運転割合とから制御周期が分かるので、スイッチングの状態、各DC電源1-1、1-2(第1、第2の蓄電手段)の電力と制御周期より、この制御を使っているか否かの発見を行うことができる。
【0100】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図12は、本発明の第2実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7の構成を示すブロック図である。第2実施形態では、前述した第1実施形態と対比して運転割合生成手段5-3に設けられる電圧状態比較手段6-1(図9参照)での演算方法、及び最終運転割合生成手段6-7の構成のみが相違するので、その相違点について説明する。
【0101】
まず、電圧状態比較手段6-1での演算方法の相違点について説明する。
【0102】
図9に示す電圧状態比較手段6-1は、電圧指令の振幅Vupkと、第3の運転状態を用いたときの電力変換器の入力電圧Vdc_sとの比較を行う。第3の運転状態では、DC電源1-1と、DC電源1-2を直列接続して1つの電源として扱うため、各DC電源の電圧の差が入力電圧Vdc_sとなる。
【0103】
そして、入力電圧の1/2の大きさが、電圧指令の振幅Vupk以上でなければ電力変換器を駆動することができず、第3の運転状態の以外の運転状態に切り替えて行う運転状態の選択の条件となる。そして、「Vdc_s/2≧Vupk」ならば「V_com=1」を出力し、「Vdc_s/2<Vupk」ならば「V_com=0」を出力する。
【0104】
即ち、各蓄電手段(DC電源1-1、1-2)の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値と、電圧指令の振幅Vupkと、を比較することにより行われる。このように、各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値を用いるので、前述した電圧指令の振幅Vupkを2倍する場合と比較して操作が簡単になる。
【0105】
次に、最終運転割合生成手段6-7の構成について、図12を参照して説明する。第2実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段8-1と、最大充電電力生成手段8-2と、充電電力指令比較手段8-3、及び最終運転割合指令手段8-4を備えている。
【0106】
最大運転割合算出手段8-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2、電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0107】
Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(21a)、(21b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0108】
【数11】
上記(21a)、(21b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0109】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(22a)、(22b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0110】
【数12】
上記(22a)、(22b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0111】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0112】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0113】
以上のように、最大運転割合算出手段8-1は、選択された運転状態と電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する処理を行う。
【0114】
他方、最大充電電力生成手段8-2は、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_max、モータ電力Pm、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、選択電源Vdc_sele、モータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の手順で最大充電電力Pcharge_maxを算出し出力する。
【0115】
(1)Pm_com=1、Vdc_sele=1の場合には、次の(23)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数13】
【0116】
(2)Pm_com=1、Vdc_sele=2の場合には、次の(24)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数14】
【0117】
(3)Pm_com=0、Vdc_sele=1の場合には、次の(25)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数15】
【0118】
(4)Pm_com=0、Vdc_sele=2の場合には、次の(26)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数16】
【0119】
(5)Pm_com=1、Vdc_sele=0の場合には、次の(27)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数17】
【0120】
(6)Pm_com=0、Vdc_sele=0の場合には、次の(28)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数18】
【0121】
上述の如く演算することにより、モータ2の運転状態、選択電源に合わせた最大充電電力Pcharge_maxを出力する。
【0122】
充電電力指令比較手段8-3は、最大充電電力Pcharge_max、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、及びモータ2の運転状態Pm_comに基づき、下記の条件により充電電力比較Pcharge_comを算出して出力する。
【0123】
[Pm_com=1の場合]
Pcmd_vdc2<Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=1
0>Pcmd_vdc2≧Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=0
Pcmd_vdc2≧0の場合に、Pcharge_com=1
[Pm_com=0の場合]
Pcmd_vdc1<Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=1
0>Pcmd_vdc1≧Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=0
Pcmd_vdc1≧0の場合に、Pcharge_com=1
【0124】
Pcharge=0のときは、第3の運転状態を用いてモータ2を駆動することが可能な状態である。また、Pcharge=1のときは、第3の運転状態を用いた場合にはモータ2を駆動しながら、出力電力指令を満足できない状態である。
【0125】
また、最終運転割合指令手段8-4は、充電電力比較Pcharge_com、選択電源Vdc_sele、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の(1)〜(6)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を演算し出力する。
【0126】
(1)Pcharge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(29a)〜(29c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数19】
【0127】
(2)Pcharge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(30a)〜(30c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数20】
【0128】
(3)Pcharge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(31a)〜(31c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数21】
【0129】
(4)Pcharge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(32a)〜(32c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数22】
【0130】
(5)Pcharge_com=0、Vdc_sele=0の状態では、次の(33a)〜(33c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数23】
【0131】
(6)Pcharge_com=0の状態では、次の(34a)〜(34c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数24】
【0132】
このように、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら電源の電力指令を満たすことができる。
【0133】
第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、出力電力指令を満たすことができる。
【0134】
最大充電電力と、出力電力指令を比較して配分割合を決定するので、第1運転状態での充電限界値を確認するため、出力電力指令設定にFBを行うことができる。また、第1運転状態では条件を満たせない場合には、第1運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずにモータの制御を行うことができる。
【0135】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7の構成を示すブロック図である。第3実施形態では、前述した第1実施形態と対比して運転割合生成手段5-3に設けられる最終運転割合生成手段6-7の構成のみが相違するので、図13を用いて、その相違点について説明する。
【0136】
第3実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段9-1と、最大放電電力生成手段9-2と、放電電力指令比較手段9-3、及び最終運転割合指令手段9-4を備えている。
【0137】
最大運転割合算出手段9-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0138】
Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(35a)、(35b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【数25】
【0139】
上記(35a)、(35b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0140】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(36a)、(36b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【数26】
【0141】
上記(36a)、(36b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0142】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0143】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0144】
以上のように、最大運転割合算出手段9-1は、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する処理を行う。
【0145】
最大放電電力生成手段9-2は、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_max、モータ電力Pm、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、選択電源Vdc_sele、モータの運転状態Pm_comを用いて最大放電電力Pdischarge_maxを出力する。
【0146】
(1)Pm_com=1、Vdc_sele=1の場合には、次の(37)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数27】
【0147】
(2)Pm_com=1、Vdc_sele=2の場合には、次の(38)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数28】
【0148】
(3)Pm_com=0、Vdc_sele=1の場合には、次の(39)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数29】
【0149】
(4)Pm_com=0、Vdc_sele=2の場合には、次の(40)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数30】
【0150】
(5)Pm_com=1、Vdc_sele=0の場合には、次の(41)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数31】
【0151】
(6)Pm_com=0、Vdc_sele=0の場合には、次の(42)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数32】
【0152】
以上のように演算することで、モータの運転状態、選択電源に合わせた最大放電電力Pdischarge_maxを出力する。
【0153】
図13に示す放電電力指令比較手段9-3は、最大放電電力Pdischarge_maxと、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータの運転状態Pm_comとに基づき、下記の条件で放電電力比較Pdischarge_comを出力する。
【0154】
[Pm_com=1の場合]
0<Pcmd_vdc1≦Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=0
Pcmd_vdc1>Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=1
Pcmd_vdc1≦0の場合Pdischarge_com=1
[Pm_com=0の場合]
0<Pcmd_vdc2≦Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=0
Pcmd_vdc2>Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=1
Pcmd_vdc2≦0の場合に、Pdischarge_com=1
【0155】
Pdischarge=0のときは、第3の運転状態を用いてモータ2を駆動することが可能な状態である。また、Pdischarge=1のときは、第3の運転状態を用いた場合にはモータを駆動しながら、出力電力指令を満足できない状態である。
【0156】
また、最終運転割合指令手段9-4は、放電電力比較Pdischarge_comと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の(1)〜(6)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を演算し出力する。
【0157】
(1)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(43a)〜(43c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数33】
【0158】
(2)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(44a)〜(44c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数34】
【0159】
(3)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(45a)〜(45c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数35】
【0160】
(4)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(46a)〜(46c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数36】
【0161】
(5)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=0の状態では、次の(47a)〜(47c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数37】
【0162】
(6)Pdischarge_com=0の状態では、次の(48a)〜(48c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数38】
【0163】
このように、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら電源の出力電力指令を満たすことができる。また、第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、電力指令を満たすことができる。
【0164】
最大放電電力と、電力指令を比較して配分割合を決定するので、第1運転状態での放電限界値を確認するため、電力指令設定にFBを行うことができる。また、また、第1運転状態では条件を満たせない場合には、第1運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずにモータ2の制御を行うことができる。
【0165】
以上、本発明の電力変換装置の制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、複数の電源を用いてモータを駆動する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0167】
1 マルチ出力DC電源
2 3相交流モータ
3 電力変換器
4 制御装置
4-1 トルク制御手段
4-2 電流・電力制御手段
4-3 変調率演算手段
4-4 変調率補正手段
4-5 PWMパルス生成手段
4-6 3相/dq変換手段
5-1 電流制御手段
5-2 dq/3相変換手段
5-3 運転割合生成手段
5-4 電圧分配手段
6-1 電圧状態比較手段
6-2 モータ電力演算手段
6-3 モータ運転状態判断手段
6-4 移動電力生成手段
6-5 電力比較手段
6-6 運転状態・蓄電手段選択手段
6-7 最終運転割合生成手段
7-1 最大運転割合算出手段
7-2 運転割合指令手段
7-3 運転割合比較手段
7-4 最終運転割合指令手段
8-1 最大運転割合算出手段
8-2 最大充電電力生成手段
8-3 充電電力指令比較手段
8-4 最終運転割合指令手段
9-1 最大運転割合算出手段
9-2 最大放電電力生成手段
9-3 放電電力指令比較手段
9-4 最終運転割合指令手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御方法に係り、特に、1つの電源から他の電源へ効率良く供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数電源を備え、各電源から供給する電力を任意の値に制御しモータを駆動する構成が特開2006−33956号公報(特許文献1)に開示されている。該特許文献1では、DC−DCコンバータを用いずに、複数電源を用いたモータ駆動システムをより低損失で、より小型に、より低コストにしつつ、各電源から供給する電力を任意の値に制御可能とすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−33956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された制御方法では、一方の電源から他方の電源に電力を供給する際に、一方の電源によるモータへの電圧指令値を大きく設定し、この大きく設定した分の電力を他方の電源に供給するようにしている。このため、モータが大きく力行して他方の電源で回生するため、モータの相電流リプルが大きくなるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、出力電圧が異なる2つの蓄電手段のうちの、一方の蓄電手段から他方の蓄電手段に、高効率で電力を供給することが可能な電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、2つのDC電源の低電位側または高電位側のうちの一方の電極が共通電力線にて接続され、且つ、共通電力線とモータがグランドスイッチを介して接続され、更に、一方のDC電源の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極とモータとが第1スイッチを介して接続され、且つ、他方のDC電源の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極とモータとが第2スイッチを介して接続される。また、第1スイッチ、及び第2スイッチを制御する制御装置は、少なくとも1回の制御周期期間で、グランドスイッチを遮断すると共に、2つのDC電源の各出力電力を指令する電力指令と、2つのDC電源の各出力電圧と、電圧指令と、モータ電力とに基づき、第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態でモータの駆動電圧を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源直列運転状態を実行する場合に、グランドスイッチを遮断した状態で、第1スイッチ、及び第2スイッチをオン、オフ操作することにより、モータに駆動電圧を出力する。このようにモータを駆動すると、第1の蓄電手段と第2の蓄電手段が逆直列に接続された状態でモータが駆動されるので、2つの電圧指令値を用いることなく一方の蓄電手段は放電、他方の蓄電手段は充電を行うため、相電流のリプル増加させず、更に、スイッチング電圧が各蓄電手段の電圧の差となるため、スイッチング損失を低減し高効率に蓄電手段間での電力の移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る制御方法が適用される電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電力変換装置の、電力変換器及びマルチ出力DC電源の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電力変換装置の、第1の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る電力変換装置の、第2の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る電力変換装置の、第3の運転状態における各スイッチの接続状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る電力変換装置の、変調率補正のイメージを示す説明図である。
【図7】本発明に係る電力変換装置の、電流・電力変換手段の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る電力変換装置の、変調率演算手段の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る電力変換装置の、運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る電力変換装置の、電圧分配手段の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の、最終運転割合生成手段の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る電力変換装置の、選択運転状態の設定条件を示す対応マップである。
【図15】本発明に係る電力変換装置の、選択電源の設定条件を示す対応マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る制御方法が適用される電力変換装置の構成を示すブロックである。図1に示すように、この電力変換装置は、出力電圧が異なる2つのDC電源1-1(第1の蓄電手段)、1-2(第2の蓄電手段)を備えるマルチ出力DC電源1と、3相交流モータ2(以下、単に「モータ」と称する)と、マルチ出力DC電源1より出力される電圧を用いてモータ2に印加する電圧を生成する電力変換器3と、該電力変換器3を駆動してモータ2のトルクを制御すると共に、2つのDC電源1-1、1-2のそれぞれから供給される電力の分配比率を制御する制御装置4と、を備えている。なお、第1の蓄電手段、及び第2の蓄電手段として、コンデンサを用いることも可能である。
【0010】
マルチ出力DC電源1は、DC電源1-1の低電位側端子と、DC電源1-2の低電位側端子が接続されて共通電位(以下、「GND電位」と称する)が構成されている。このマルチ出力DC電源1は、GND電位、DC電源1-1の電位Vdc_1、DC電源1-2の電位Vdc_2の、3通りの電位の電圧を出力する電源である。モータ2は、後述する電力変換器3より出力される交流電圧により駆動される。
【0011】
電力変換器3は、マルチ出力DC電源1より出力される3通りの電位による電圧に基づき、モータ2に印加する電圧を生成する直流・交流電力変換器である。図2は、電力変換器3及びマルチDC電源1の回路図である。図示のように、この電力変換器3は、U、V、Wの各相で同一の構成を有するスイッチ手段3-3、3-4、3-5を備えている。
【0012】
以下、U相のスイッチ手段3-3について説明すると、DC電源1-1のプラス側端子が、電線16を介してスイッチ104a、104bに接続され、更に、スイッチ107a、電線15(共通電力線)を介してDC電源1-1のマイナス側端子に接続されている。また、スイッチ104a、104bと、スイッチ107aとの接続点は、モータ2のU相入力端子に接続されている。同様に、DC電源1-2のプラス側端子が、電線14を介してスイッチ101a、101bに接続され、更に、モータ2のU相入力端子に接続されている。
【0013】
スイッチ107aには、ダイオード107bが接続されている。また、電線15は、2つのDC電源1-1、1-2のそれぞれのマイナス側端子に接続されている。更に、電線14と電線15の間には、平滑用のコンデンサ12が設けられ、電線16と電線15の間には、平滑用のコンデンサ13が設けられている。なお、V相、W相のスイッチ手段3-4、3-5についても同様の構成を備えている。
【0014】
そして、スイッチ手段3-3は、モータ2のU相に出力する電圧を生成するために、3通りの電位、即ち、Vdc_1、Vdc_2、及びこれらの差分(Vdc_1−Vdc_2)のうちの一つを選択して接続する機能を備えており、各電位に接続する時間の割合を変化させることで、モータ2に必要な電圧を供給する。V相のスイッチ手段3-4、W相のスイッチ手段3-5も同様である。本実施例ではVdc_2よりもVdc_1の方が大きい場合を例に挙げて説明する。
【0015】
以下、本発明の特徴部分である電力変換器3における3通りの運転状態について説明する。本発明の特徴は、図2に示した電力変換器3を用いてモータ2のトルクを制御しつつ、3通りの運転状態を切り替えて、各DC電源1-1、1-2より供給される電力の割合を指令値に応じて自由に変更することである。
【0016】
以下、3通りの運転状態、即ち、第1の運転状態(電源単独運転状態)、第2の運転状態(電源単独運転状態)、及び第3の運転状態(電源直列運転状態)について詳細に説明する。なお、以下では簡単のためU相のみを取り挙げて説明する。V相、W相についても同様である。
【0017】
[第1の運転状態]
まず、第1の運転状態について図3を参照して説明する。第1の運転状態は、DC電源1-2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a(第2スイッチ)をオフとし、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104a(第1スイッチ)、及びモータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107a(グランドスイッチ)をオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_1[V]と0[V]で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。このとき、瞬時変調率指令は、mu_vdc1_cが用いられる。なお、瞬時変調率指令については後述する。また、図3において、点線で囲むスイッチ101aは、オフ状態であることを示している。
【0018】
[第2の運転状態]
次に、第2の運転状態について図4を参照して説明する。第2の運転状態は、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104aをオフとし、DC電源2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a、及びモータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオン・オフ操作することによりVdc_2[V]と0[V]で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。このとき、瞬時変調率指令は、mu_vdc2_cが用いられる。なお、瞬時変調率指令については後述する。また、図4において、点線で囲むスイッチ104aは、オフ状態であることを示している。
【0019】
[第3の運転状態]
次に、第3の運転状態について図5を参照して説明する。第3の運転状態は、Vdc_1の方がVdc_2よりも大きい場合に、モータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオフとし、DC電源1-1の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ104a、及びモータ2からDC電源1-2の正極へ向かう経路に設けられるスイッチ101bをオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_2[V]と電圧Vdc_1[V]の間で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。
【0020】
他方、Vdc_2の方がVdc_1よりも大きい場合には、モータ2から共通の負極に向かう経路に設けられるスイッチ107aをオフとし、DC電源1-2の正極からモータ2へ向かう経路に設けられるスイッチ101a、及びモータ2からDC電源1-1の正極へ向かう経路に設けられるスイッチ104bをオン・オフ操作することにより、電圧Vdc_1[V]と電圧Vdc_2[V]の間で変化するパルス状電圧をモータ2へ供給する運転状態である。なお、図5において、点線で囲むスイッチ107aは、オフ状態であることを示している。
【0021】
また、図1に示す制御装置4は、トルク制御手段4-1と、電流・電力制御手段4-2と、変調率演算手段4-3と、変調率補正手段4-4と、PWMパルス生成手段4-5、及び3相/dq変換手段4-6を備えている。
【0022】
トルク制御手段4-1は、外部より与えられるトルク指令Te*、及びモータ2の回転速度ωに基づいて、モータ2のd軸電流の指令id*、及びq軸電流の指令iq*を演算する。
【0023】
電流・電力制御手段4-2は、上述のdq軸電流指令id*、iq*と、dq軸電流値id、iqと、各DC電源1-1、1-2の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、に基づき、前述の各運転状態(第1〜第3の運転状態)に応じたU相電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを生成する。dq軸電流値id、iqは、3相/dq変換手段4-6により、3相電流iu、ivに基づいて求められる。各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ2に供給されるモータ電力Pmの関係は、次の(1)式で示される。
Pm=Pcmd_vdc1+Pcmd_vdc2 ・・・(1)
【0024】
変調率演算手段4-3は、DC電源1-1の電圧Vdc_1、DC電源1-2の電圧Vdc_2を入力し、前述した各電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを正規格化した電圧指令である瞬時変調率指令mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0025】
変調率補正手段4-4は、入力された瞬時変調率指令(mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_s)に対して、PWMを行う前の処理を行い、最終的な瞬時変調率指令mu_vdc1_c、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mu_vdc2_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mu_vdc_s_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_cを生成する。
【0026】
PWMパルス生成手段4-5は、上記の最終的な瞬時変調率指令(mu_vdc1_c、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mu_vdc2_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mu_vdc_s_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_c)に基づいて、電力変換器3の各スイッチ(図2に示す101a,101b〜109a,109b)をオン、オフ操作するためのPWMパルス信号を生成する。
【0027】
次に、電流・電力制御手段4-2の構成について説明する。図7は、電流・電力制御手段4-2の詳細な構成を示すブロックである。該電流・電力制御手段4-2は、電流制御手段5-1と、dq/3相変換手段5-2と、運転割合生成手段5-3と、電圧分配手段5-4と、を備えている。
【0028】
電流制御手段5-1は、dq軸電流指令id*、iq*と、dq軸電流値id、iqに基づき、これらを一致させるためのdq軸電圧指令vd*、vq*を演算する。id、iqは、図1に示した3相/dq変換手段4-6にて、3相電流iu、ivに基づいて算出される。
【0029】
dq/3相変換手段5-2は、上述のdq軸電圧指令vd*、vq*を、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に変換し、更に、3相電圧指令の振幅Vupkを生成する。
【0030】
運転割合生成手段5-3は、電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源1-1、1-2の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、上述した3相電圧指令の振幅Vupkと、電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*に基づき、各運転状態(第1、第2、第3の運転状態)における電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成する。この際、次の(2)式に示すように、すべての電力配分指令の和は1となる。
1=rto_vdc1+rto_vdc2+rto_vdc_s ・・・(2)
【0031】
次に、電圧分配手段5-4について説明する。図10は、電圧分配手段5-4の内部構成を示す説明図である。図示ように、電圧分配手段5-4は、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*、及び、電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sに基づいて乗算を行い、各運転状態に応じたU相電圧指令Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを生成する。即ち、複数の電圧指令からなる電圧指令群を生成する。そして、U相電圧指令は、次の(3a)〜(3c)式で示すことができる。
Vu_vdc1 =Vu*×rto_vdc1 ・・・(3a)
Vu_vdc2 =Vu*×rto_vdc2 ・・・(3b)
Vu_vdc_s=Vu*×rto_vdc_s ・・・(3c)
【0032】
また、V相電圧指令Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、W相電圧指令Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sも同様に計算することができる。
【0033】
また、各運転状態の相電圧指令の和は、3相電圧指令と等しい。即ち、次の(4a)〜(4c)式が成立する。
Vu*=Vu_vdc1+Vu_vdc2+Vu_vdc_s ・・・(4a)
Vv*=Vv_vdc1+Vv_vdc2+Vv_vdc_s ・・・(4b)
Vw*=Vw_vdc1+Vw_vdc2+Vw_vdc_s ・・・(4c)
【0034】
次に、図1に示した変調率演算手段4-3について説明する。図8は、変調率演算手段4-3の内部構成を示す説明図である。図8、及び下記(5a)〜(5c)式に示すように、該変調率演算手段4-3は、DC電源1-1の電圧Vdc_1、DC電源1-2の電圧Vdc_2を入力し、Vu_vdc1、Vu_vdc2、Vu_vdc_s、Vv_vdc1、Vv_vdc2、Vv_vdc_s、Vw_vdc1、Vw_vdc2、Vw_vdc_sを正規格化した電圧指令である瞬時変調率指令mu_vdc1、mu_vdc2、mu_vdc_s、mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0035】
【数1】
なお、上記の(5a)〜(5c)式ではU相の瞬時変調率指令の演算式についてのみ示しているが、変調率演算手段4-3はこれと同様に、V相、及びW相の瞬時変調率指令mv_vdc1、mv_vdc2、mv_vdc_s、mw_vdc1、mw_vdc2、mw_vdc_sを生成する。
【0036】
図1に示す変調率補正手段4-4では、電源電圧Vdc_1、Vdc_2と、電力配分指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを用いて、変調率の補正を行う。まず、次の(6a)〜(6c)式に基づいて変調率のオフセット値m_vdc1_off、m_vdc2_off、m_vdcs_offを求める。
【数2】
【0037】
更に、上述の(6a)〜(6c)式で求められたオフセット値m_vdc1_off、m_vdc2_off、m_vdcs_offを瞬時変調率指令に加算することにより、最終的な瞬時変調率指令mu_vdc1_c、mu_vdc2_c、mu_vdc_s_cを生成する。即ち、次の(7a)〜(7c)式により、最終的な瞬時変調率指令を求める。
【0038】
mu_vdc1_c=mu_vdc_1+m_vdc1_off ・・・(7a)
mu_vdc2_c=mu_vdc_2+m_vdc2_off ・・・(7b)
mu_vdc_s_c=mu_vdc_s+m_vdcs_off ・・・(7c)
なお、(7a)〜(7c)式では、U相についてのみ示しているが、これと同様に、mv_vdc1_c、mw_vdc1_c、mv_vdc2_c、mw_vdc2_c、mv_vdc_s_c、mw_vdc_s_cも生成する。変調率補正のイメージ図を図6に示す。
【0039】
このように、運転状態に応じた瞬時変調率にオフセット値を加算することで、分配電力目標値の大きさが大きい運転状態から生成する電圧を大きくできるようにしている。
【0040】
次に、図1に示したPWMパルス生成手段4-5の動作を説明する。該PWMパルス生成手段4-5は、上述の(7a)〜(7c)式で求められた各運転状態(第1〜第3の運転状態)の瞬時変調率指令と、それに対応したキャリアを用いて比較を行い、PWMパルス生成を行う。
【0041】
まず、第1の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc1_cと、第1の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdc1を生成する。比較時の判定値pwm_vdc1の生成は、次のように行う。
mu_vdc1_c >第1の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc1=ON
mu_vdc1_c ≦第1の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc1=OFF
【0042】
また、第2の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc2_cと、第2の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdc2を生成する。比較時の判定値pwm_vdc2の生成は、次のように行う。
mu_vdc2_c >第2の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc2=ON
mu_vdc2_c ≦第2の運転状態用キャリアならば、pwm_vdc2=OFF
【0043】
更に、第3の運転状態分瞬時変調率指令mu_vdc_s_cと、第3の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_vdcsを生成する。比較時の判定値pwm_vdcsの生成は、次のように行う。
mu_vdc_s_c >第3の運転状態用キャリアならば、pwm_vdcs=ON
mu_vdc_s_c ≦第3の運転状態用キャリアならば、pwm_vdcs=OFF
【0044】
また、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態の駆動中を示す変調率mthと第3の運転状態用キャリアを比較し、判定値pwm_thを生成する。
【0045】
変調率mthは、前述した(6c)式で求めた変調率オフセットm_vdcs_offより演算し、次の(8)式で示すことができる。
mth=m_vdcs_off×2 ・・・(8)
【0046】
比較時における判定値pwm_thの生成は次のように行う。
mth>第3の運転状態用キャリアならば、pwm_th=ON
mth≦第3の運転状態用キャリアならば、pwm_th=OFF
そして、上述した各判定値pwm_vdc1, pwm_vdc2,pwm_vdcs, pwm_thを用いて、図3に示した各スイッチ101a,101b,104a,104b,107aに与える駆動信号を生成する。
【0047】
スイッチ101aに加える信号をA、スイッチ107bに加える信号をB、スイッチ101bに加える信号をC、スイッチ104aに加える信号をD、スイッチ104bに加える信号をEとした場合の、各信号を次の(9)式に示す。なお、記号A〜Eは、図2に示すA〜Eに対応している。
A=pwm_th or pwm_vdc2
B=not(A) and not(D)
C=not(D)
D=pwm_vdcs or pwm_vdc1
E=pwm_th or not(A) ・・・(9)
【0048】
次に、図9を参照して図7に示した運転割合生成手段5-3の詳細な構成について説明する。図9は、請求項6に対応している。図示のように、運転割合生成手段5-3は、電圧状態比較手段6-1と、モータ電力演算手段6-2と、モータ運転状態判断手段6-3と、移動電力生成手段6-4と、電力比較手段6-5と、運転状態・蓄電手段選択手段6-6、及び最終運転割合生成手段6-7を備えている。そして、前述したように、該運転割合生成手段5-3は、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、電圧指令振幅Vupkと、電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*を入力し、各運転状態における最終運転割合指令rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成する。そして、最終的な関係としては、次の(10)式に示すように、すべての電力配分指令の和は1となる。
1=rto_vdc1+rto_vdc2+rto_vdc_s ・・・(10)
なお、(10)式は、前述した(2)式と同一である。
【0049】
電圧状態比較手段6-1では、電圧指令の振幅Vupkと、第3の運転状態を用いたときの電力変換器3の入力電圧Vdc_sとの比較を行う。
【0050】
第3の運転状態では、DC電源1-1と、DC電源1-2を逆直列接続し、一つの電源として扱うため、次の(11)式に示すように、各DC電源1-1、1-2の電圧の差が入力電圧Vdc_sとなる。
Vdc_s=|Vdc_1−Vdc_2| ・・・(11)
【0051】
この入力電圧Vdc_sは、電圧指令の振幅の2倍以上の大きさがなければ電力変換器3を駆動することができない。従って、下記のように条件を設定して、判定値V_comを出力する。
Vdc_s≧Vupk×2ならば、V_com =1
Vdc_s<Vupk×2ならば、V_com =0
【0052】
即ち、各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分と、前記電圧指令の振幅を2倍した値と、を比較することにより行われる。
【0053】
モータ電力演算手段6-2は、次の(12)式により、dq軸電流指令id*、iq*、及びdq軸電圧指令vd*、vq*を用いて、モータ電力Pmを演算する。
Pm=(id*×vd*)+(iq*×vq*) ・・・(12)
【0054】
モータ運転状態判断手段6-3は、モータ2の運転状態(力行運転、回生運転)を判断し、モータ2の運転状態Pm_comを出力する。
【0055】
Pm≧0ならば、Pm_com =1
Pm<0ならば、Pm_com =0
移動電力生成手段6-4は、次の(13a)、(13b)式を用いて、第3の運転状態のみで電力変換器3を駆動し、モータ2に電力を供給したときの移動電力Pmove1、及びPmove2を計算する。
【0056】
【数3】
そして、(13a)、(13b)式で求められるPmove1とPmove2を比較し、より小さいほうを移動電力Pmoveとする。ここで、移動電力Pmoveは、一方の電源に充電される電力と等しいので、負の値となる。
【0057】
電力比較部6-5は、モータ2の運転状態Pm_com、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、移動電力Pmoveに基づき、第3の運転状態での移動電力と、各電源の出力電力指令の大小関係を比較する。そして、下記のように、判定値Pcmd_comを決定する。
【0058】
[Pm_com=1の場合]
Pcmd_vdc2<Pmoveの場合、Pcmd_com=2
Pcmd_vdc2≒Pmoveの場合、Pcmd_com=1
0>Pcmd_vdc2>Pmoveの場合、Pcmd_com=0
Pcmd_vdc2≧0の場合、Pcmd_com=3
[Pm_com=0の場合]
Pcmd_vdc1<Pmoveの場合、Pcmd_com=2
Pcmd_vdc1≒Pmoveの場合、Pcmd_com=1
0>Pcmd_vdc1>Pmoveの場合、Pcmd_com=0
Pcmd_vdc1≧0の場合、Pcmd_com=3
【0059】
また、図9に示す運転状態・蓄電手段選択手段6-6は、電圧状態比較手段6-1より出力されるV_com、電力比較手段6-5より出力される判定値Pcmd_com、モータ運転状態判断手段6-3より出力される運転状態Pm_comを用いて、モータ2を駆動する際の運転状態(電源直列運転状態、または電源単独運転状態)を示す信号である選択運転状態Drive_sele、及び選択した電源(DC電源1-1またはDC電源1-2)を決定する信号である選択電源Vdc_seleを出力する。
【0060】
そして、図14に示す条件により、選択運転状態Drive_seleが、0,1,2のうちのいずれかに設定される。例えば、Pm_com=1、V_com=1、Pcmd_com=3の場合には、Drive_sele=0に設定される。
【0061】
その結果、Drive_sele=2に設定された場合には、第3の運転状態に加え、他の運転状態を組み合わせてモータ2を駆動する。Drive_sele=1に設定された場合には、第3の運転状態のみでモータ2を駆動する。Drive_sele=0に設定された場合には、第3の運転状態は用いずに、他の運転状態のみでモータを駆動する。
【0062】
また、運転状態・蓄電手段選択手段6-6では、図15に示すように、選択電源Vdc_seleが、0,1,2,3のうちのいずれかに設定される。例えば、Pm_com=1、V_com=1、Pcmd_com=3の場合には、選択電源Vdc_sele=3に設定される。そして、上述した選択運転状態Drive_seleによる決定事項に加えて、Vdc_seleの条件を加える。
【0063】
Vdc_sele=3に設定された場合には、第1の運転状態と、第2の運転状態を用いてモータ2を駆動する。Vdc_sele=2に設定された場合には、第2の運転状態を用いてモータ2を駆動する。Vdc_sele=1に設定された場合には、第1の運転状態を用いてモータ2を駆動する。上述した如くの条件設定の下で、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_seleを出力する。
【0064】
最終運転割合生成手段6-7は、選択運転状態Drive_seleと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及び電圧指令の振幅Vupkに基づき、最終運転割合rto_vdc1、rto_vdc2、rto_vdc_sを生成して出力する。ここで、rto_vdc1は第1の運転状態の運転割合指令であり、rto_vdc2は第2の運転状態の運転割合指令であり、rto_vdc_sは第3の運転状態の運転割合指令である。
【0065】
このような流れで運転割合までを求めることによって、第3の運転状態のみを用いた場合には、第1の電源(DC電源1-1)と第2の電源(DC電源1-2)が逆直列に接続された状態でモータ2を駆動するので、電圧指令を2つ用いることなく、一方の電源は放電、他方の電源は充電を行うため、相電流のリプル低減することができる。
【0066】
更に、スイッチング電圧が各DC電源1-1、1-2の出力電圧の差となるため、スイッチング損失を低減し高効率に各蓄電手段間での電力の移動が可能となる。また、運転状態を切り替えて行うときには、電力を配分することができるので、各DC電源1-1、1-2(蓄電手段)の電力を調整することができる。
【0067】
また、モータ2が力行(正トルク)している場合には、電圧が大きい蓄電手段(DC電源1-1)を用いて電圧が小さい蓄電手段(DC電源1-2)を高効率に充電することが、モータ2が回生(負トルク)している場合には電圧が小さい蓄電手段を用いて電圧が大きい蓄電手段を高効率に充電することができる。
【0068】
更に、条件に応じて運転状態を切り替えるので、第1の運転状態のみでは出力できない場合であっても第2,第3の運転状態とすることにより出力可能となる。また、電力の配分ができるので、各DC電源1-1、1-2の電力を調整することができる。
【0069】
また、高電圧であるDC電源1-1が放電を行い、低電圧であるDC電源1-2が充電を行なうことができ、モータ2が力行している場合に、高電圧電源から低電圧電源へ効率良く充電することができる。
【0070】
更に、低電圧であるDC電源1-2が放電を行い、高電圧であるDC電源1-1が充電を行なうことができ、モータ2が回生している場合に、低電圧電源から高電圧電源へ効率良く充電することができる。
【0071】
また、電力指令値、モータ電圧、運転割合により、各運転状態に応じた電圧指令値群を生成し、最終的なパルス信号を作成するので、電力指令値に高応答に追従する出力パルスを出力することができる。
【0072】
更に、第1の運転状態、及び第2の運転状態に用いる各DC電源1-1、1-2を各種条件に基づいて選択するので、電力指令値、電圧指令値を満たす可能性の有るDC電源の組み合わせを取ることができる。
【0073】
また、予め組み合わせが決まっているので、様々な演算を行わなくても、電力指令値、電圧指令値を満たす可能性のあるDC電源の組み合わせを選択することができる。
【0074】
図11は、図9に示した最終運転割合生成手段6-7の詳細な構成を示すブロック図である。同図に示すように、該最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段7-1と、運転割合指令手段7-2と、運転割合比較手段7-3、及び最終運転割合指令手段7-4を備えている。
【0075】
最大運転割合算出手段7-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2、及び電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせで、モータ2を駆動する際の第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0076】
そして、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(14a)、(14b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0077】
【数4】
上記(14a)、(14b)式で、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0078】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(15a)、(15b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0079】
【数5】
上記(15a)、(15b)式で、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0080】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。この場合には、第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0081】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。この場合には、第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0082】
以上のように、最大運転割合算出手段7-1は、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合を生成する処理を行う。
【0083】
他方、図11に示す運転割合指令手段7-2は、選択運転状態Drive_seleと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、選択運転状態、選択電源、モータの運転状態に応じ、出力電力指令通り出力可能となる、第3の運転状態の必要運転割合rto_vdc_s_mustを演算し出力する。
【0084】
Drive_sele=2、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(16)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0085】
【数6】
Drive_sele=2、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(17)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0086】
【数7】
Drive_sele=2、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(18)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0087】
【数8】
Drive_sele=2、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(19)式によりrto_vdc_s_mustを求めて出力する。
【0088】
【数9】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_must=1を出力する。
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_must=0を出力する。
【0089】
上記の如く演算することで、第3の運転状態を用いたときの、必要運転割合を生成する。Drive_sele=0のときは第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態の必要運転割合は0となる。また、Drive_sele=1のときは第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態の必要運転割合は1となる。
【0090】
図11に示す運転割合比較手段7-3は、第3の運転状態の必要運転割合rto_vdc_s_mustと、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxとを比較し、下記の条件に基づいて第3の運転状態での運転割合指令rto_vdc_s_cmdを出力する。
【0091】
rto_vdc_s_must ≦ rto_vdc_s_max の場合には、rto_vdc_s_cmd=rto_vdc_s_mustとする。また、rto_vdc_s_must > rto_vdc_s_max の場合には、rto_vdc_s_cmd=0とする。
【0092】
即ち、必要運転割合が最大運転割合以下であるならば、第3の運転状態を使用した状態で、電力指令を満たし、モータ2を駆動することができるため、運転割合指令として必要運転割合を出力する。他方、必要運転割合が最大運転割合を超える場合においては、第3の運転状態を使用すると電力指令を満たし、モータ2を駆動することは不可能であるため、第3の運転状態の運転割合を0とする。
【0093】
最終運転割合指令算出手段7-4では、第3の運転状態の運転割合指令rto_vdc_s_cmdと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及び選択電源Vdc_seleを用いて、下記の(1)〜(4)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を出力する。
【0094】
(1)rto_vdc_s_cmd≠0、rto_vdc_s_cmd≠1、Vdc_sele=1の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =1−rto_vdc_s
rto_vdc2 =0
(2)rto_vdc_s_cmd≠0、rto_vdc_s_cmd≠1、Vdc_sele=2の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =0
rto_vdc2 =1−rto_vdc_s
(3)rto_vdc_s_cmd=1の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =0
rto_vdc2 =0
(4)rto_vdc_s_cmd=0の場合
rto_vdc_s=rto_vdc_s_cmd
rto_vdc1 =Pcmd_vdc1/Pm
rto_vdc2 =1−rto_vdc1
【0095】
このように、第3の運転状態を使用する場合には、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら各DC電源1-1、1-2の出力電力指令を満たすことができる。
【0096】
第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、出力電力指令を満たすことができる。
【0097】
また、各運転状態の運転割合rto_vdc1,rto_vdc2,rto_vdc_sが決定すると、各電源電圧Vdc_1,Vdc_2、キャリアの振幅Afc、キャリアの周波数fcに基づいて、次の(20)式により、1制御周期Tを求めることができる。
【0098】
【数10】
このようにして、最大運転割合と、出力電力指令を満たす運転割合とを比較して配分割合を決定するので、出力電力指令に対して高応答に追従を行うことができる。また、第3の運転状態では条件を満たせない場合には、第3の運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずに、確実にモータ2の制御を行うことができる。
【0099】
また、キャリアの周波数fcと運転割合とから制御周期が分かるので、スイッチングの状態、各DC電源1-1、1-2(第1、第2の蓄電手段)の電力と制御周期より、この制御を使っているか否かの発見を行うことができる。
【0100】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図12は、本発明の第2実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7の構成を示すブロック図である。第2実施形態では、前述した第1実施形態と対比して運転割合生成手段5-3に設けられる電圧状態比較手段6-1(図9参照)での演算方法、及び最終運転割合生成手段6-7の構成のみが相違するので、その相違点について説明する。
【0101】
まず、電圧状態比較手段6-1での演算方法の相違点について説明する。
【0102】
図9に示す電圧状態比較手段6-1は、電圧指令の振幅Vupkと、第3の運転状態を用いたときの電力変換器の入力電圧Vdc_sとの比較を行う。第3の運転状態では、DC電源1-1と、DC電源1-2を直列接続して1つの電源として扱うため、各DC電源の電圧の差が入力電圧Vdc_sとなる。
【0103】
そして、入力電圧の1/2の大きさが、電圧指令の振幅Vupk以上でなければ電力変換器を駆動することができず、第3の運転状態の以外の運転状態に切り替えて行う運転状態の選択の条件となる。そして、「Vdc_s/2≧Vupk」ならば「V_com=1」を出力し、「Vdc_s/2<Vupk」ならば「V_com=0」を出力する。
【0104】
即ち、各蓄電手段(DC電源1-1、1-2)の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値と、電圧指令の振幅Vupkと、を比較することにより行われる。このように、各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値を用いるので、前述した電圧指令の振幅Vupkを2倍する場合と比較して操作が簡単になる。
【0105】
次に、最終運転割合生成手段6-7の構成について、図12を参照して説明する。第2実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段8-1と、最大充電電力生成手段8-2と、充電電力指令比較手段8-3、及び最終運転割合指令手段8-4を備えている。
【0106】
最大運転割合算出手段8-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2、電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0107】
Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(21a)、(21b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0108】
【数11】
上記(21a)、(21b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0109】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(22a)、(22b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【0110】
【数12】
上記(22a)、(22b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0111】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0112】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0113】
以上のように、最大運転割合算出手段8-1は、選択された運転状態と電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する処理を行う。
【0114】
他方、最大充電電力生成手段8-2は、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_max、モータ電力Pm、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、選択電源Vdc_sele、モータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の手順で最大充電電力Pcharge_maxを算出し出力する。
【0115】
(1)Pm_com=1、Vdc_sele=1の場合には、次の(23)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数13】
【0116】
(2)Pm_com=1、Vdc_sele=2の場合には、次の(24)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数14】
【0117】
(3)Pm_com=0、Vdc_sele=1の場合には、次の(25)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数15】
【0118】
(4)Pm_com=0、Vdc_sele=2の場合には、次の(26)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数16】
【0119】
(5)Pm_com=1、Vdc_sele=0の場合には、次の(27)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数17】
【0120】
(6)Pm_com=0、Vdc_sele=0の場合には、次の(28)式に基づいて最大充電電力Pcharge_maxを算出する。
【数18】
【0121】
上述の如く演算することにより、モータ2の運転状態、選択電源に合わせた最大充電電力Pcharge_maxを出力する。
【0122】
充電電力指令比較手段8-3は、最大充電電力Pcharge_max、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、及びモータ2の運転状態Pm_comに基づき、下記の条件により充電電力比較Pcharge_comを算出して出力する。
【0123】
[Pm_com=1の場合]
Pcmd_vdc2<Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=1
0>Pcmd_vdc2≧Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=0
Pcmd_vdc2≧0の場合に、Pcharge_com=1
[Pm_com=0の場合]
Pcmd_vdc1<Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=1
0>Pcmd_vdc1≧Pcharge_maxの場合に、Pcharge_com=0
Pcmd_vdc1≧0の場合に、Pcharge_com=1
【0124】
Pcharge=0のときは、第3の運転状態を用いてモータ2を駆動することが可能な状態である。また、Pcharge=1のときは、第3の運転状態を用いた場合にはモータ2を駆動しながら、出力電力指令を満足できない状態である。
【0125】
また、最終運転割合指令手段8-4は、充電電力比較Pcharge_com、選択電源Vdc_sele、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、各電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の(1)〜(6)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を演算し出力する。
【0126】
(1)Pcharge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(29a)〜(29c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数19】
【0127】
(2)Pcharge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(30a)〜(30c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数20】
【0128】
(3)Pcharge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(31a)〜(31c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数21】
【0129】
(4)Pcharge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(32a)〜(32c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数22】
【0130】
(5)Pcharge_com=0、Vdc_sele=0の状態では、次の(33a)〜(33c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数23】
【0131】
(6)Pcharge_com=0の状態では、次の(34a)〜(34c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数24】
【0132】
このように、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら電源の電力指令を満たすことができる。
【0133】
第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、出力電力指令を満たすことができる。
【0134】
最大充電電力と、出力電力指令を比較して配分割合を決定するので、第1運転状態での充電限界値を確認するため、出力電力指令設定にFBを行うことができる。また、第1運転状態では条件を満たせない場合には、第1運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずにモータの制御を行うことができる。
【0135】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7の構成を示すブロック図である。第3実施形態では、前述した第1実施形態と対比して運転割合生成手段5-3に設けられる最終運転割合生成手段6-7の構成のみが相違するので、図13を用いて、その相違点について説明する。
【0136】
第3実施形態に係る最終運転割合生成手段6-7は、最大運転割合算出手段9-1と、最大放電電力生成手段9-2と、放電電力指令比較手段9-3、及び最終運転割合指令手段9-4を備えている。
【0137】
最大運転割合算出手段9-1は、選択運転状態Drive_sele、選択電源Vdc_sele、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、電圧指令の振幅Vupkに基づき、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する。
【0138】
Drive_sele=2で、且つVdc_sele=2の状態では、次の(35a)、(35b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【数25】
【0139】
上記(35a)、(35b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0140】
また、Drive_sele=2で、且つVdc_sele=1の状態では、次の(36a)、(36b)式により、rto_vdc_s_maxを求める。
【数26】
【0141】
上記(36a)、(36b)式では、rto_vdc_s_max ≦1の場合と、rto_vdc_s_max >1の場合で、使用する式を変更する。
【0142】
Drive_sele=1の状態では、rto_vdc_s_max=1とする。第3の運転状態のみを使用するので、第3の運転状態は100%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは1となる。
【0143】
Drive_sele=0の状態では、rto_vdc_s_max=0とする。第3の運転状態を使用しないので、第3の運転状態は0%の運転割合となり、rto_vdc_s_maxは0となる。
【0144】
以上のように、最大運転割合算出手段9-1は、選択された運転状態と各DC電源の組み合わせでモータ2を駆動する際の、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_maxを生成する処理を行う。
【0145】
最大放電電力生成手段9-2は、第3の運転状態の最大運転割合rto_vdc_s_max、モータ電力Pm、電源電圧Vdc_1、Vdc_2、選択電源Vdc_sele、モータの運転状態Pm_comを用いて最大放電電力Pdischarge_maxを出力する。
【0146】
(1)Pm_com=1、Vdc_sele=1の場合には、次の(37)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数27】
【0147】
(2)Pm_com=1、Vdc_sele=2の場合には、次の(38)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数28】
【0148】
(3)Pm_com=0、Vdc_sele=1の場合には、次の(39)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数29】
【0149】
(4)Pm_com=0、Vdc_sele=2の場合には、次の(40)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数30】
【0150】
(5)Pm_com=1、Vdc_sele=0の場合には、次の(41)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数31】
【0151】
(6)Pm_com=0、Vdc_sele=0の場合には、次の(42)式により最大放電電力Pdischarge_maxを演算する。
【数32】
【0152】
以上のように演算することで、モータの運転状態、選択電源に合わせた最大放電電力Pdischarge_maxを出力する。
【0153】
図13に示す放電電力指令比較手段9-3は、最大放電電力Pdischarge_maxと、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータの運転状態Pm_comとに基づき、下記の条件で放電電力比較Pdischarge_comを出力する。
【0154】
[Pm_com=1の場合]
0<Pcmd_vdc1≦Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=0
Pcmd_vdc1>Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=1
Pcmd_vdc1≦0の場合Pdischarge_com=1
[Pm_com=0の場合]
0<Pcmd_vdc2≦Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=0
Pcmd_vdc2>Pdischarge_maxの場合に、Pdischarge_com=1
Pcmd_vdc2≦0の場合に、Pdischarge_com=1
【0155】
Pdischarge=0のときは、第3の運転状態を用いてモータ2を駆動することが可能な状態である。また、Pdischarge=1のときは、第3の運転状態を用いた場合にはモータを駆動しながら、出力電力指令を満足できない状態である。
【0156】
また、最終運転割合指令手段9-4は、放電電力比較Pdischarge_comと、選択電源Vdc_seleと、各DC電源の電圧Vdc_1、Vdc_2と、各DC電源の出力電力指令Pcmd_vdc1、Pcmd_vdc2と、モータ電力Pm、及びモータ2の運転状態Pm_comを用いて、下記の(1)〜(6)に示す条件で、最終運転割合指令rto_vdc1(第1の運転状態用)、rto_vdc2(第2の運転状態用)、rto_vdc_s(第3の運転状態用)を演算し出力する。
【0157】
(1)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=1の状態では、次の(43a)〜(43c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数33】
【0158】
(2)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=2、Pm_com=0の状態では、次の(44a)〜(44c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数34】
【0159】
(3)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=1の状態では、次の(45a)〜(45c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数35】
【0160】
(4)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=1、Pm_com=0の状態では、次の(46a)〜(46c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数36】
【0161】
(5)Pdischarge_com=0、Vdc_sele=0の状態では、次の(47a)〜(47c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数37】
【0162】
(6)Pdischarge_com=0の状態では、次の(48a)〜(48c)式により最終運転割合指令を演算する。
【数38】
【0163】
このように、第3の運転状態を使用する際は、第3の運転状態と選択電源との間で運転割合を割り振り、出力することで、モータ2を駆動しながら電源の出力電力指令を満たすことができる。また、第3の運転状態を使用しない場合、或いは使用できない場合には、モータ2を駆動しながら出力電力指令を満たすために、第1の運転状態と、第2の運転状態のみで駆動する。以上のように行うことで、モータ2を駆動しながら、電力指令を満たすことができる。
【0164】
最大放電電力と、電力指令を比較して配分割合を決定するので、第1運転状態での放電限界値を確認するため、電力指令設定にFBを行うことができる。また、また、第1運転状態では条件を満たせない場合には、第1運転状態を使わずに制御を行うので、運転不可能な状態を作らずにモータ2の制御を行うことができる。
【0165】
以上、本発明の電力変換装置の制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、複数の電源を用いてモータを駆動する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0167】
1 マルチ出力DC電源
2 3相交流モータ
3 電力変換器
4 制御装置
4-1 トルク制御手段
4-2 電流・電力制御手段
4-3 変調率演算手段
4-4 変調率補正手段
4-5 PWMパルス生成手段
4-6 3相/dq変換手段
5-1 電流制御手段
5-2 dq/3相変換手段
5-3 運転割合生成手段
5-4 電圧分配手段
6-1 電圧状態比較手段
6-2 モータ電力演算手段
6-3 モータ運転状態判断手段
6-4 移動電力生成手段
6-5 電力比較手段
6-6 運転状態・蓄電手段選択手段
6-7 最終運転割合生成手段
7-1 最大運転割合算出手段
7-2 運転割合指令手段
7-3 運転割合比較手段
7-4 最終運転割合指令手段
8-1 最大運転割合算出手段
8-2 最大充電電力生成手段
8-3 充電電力指令比較手段
8-4 最終運転割合指令手段
9-1 最大運転割合算出手段
9-2 最大放電電力生成手段
9-3 放電電力指令比較手段
9-4 最終運転割合指令手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蓄電手段と、該第1の蓄電手段とは出力電圧が異なる第2の蓄電手段と、を備えた電力変換装置を制御する制御方法であって、
前記各蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの一方の電極が共通電力線にて接続され、且つ、前記共通電力線とモータがグランドスイッチを介して接続され、
更に、前記第1の蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極と前記モータとが第1スイッチを介して接続され、且つ、前記第2の蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極と前記モータとが第2スイッチを介して接続され、
前記第1スイッチ、及び第2スイッチを制御する制御手段は、少なくとも1回の制御周期期間で、前記グランドスイッチを遮断すると共に、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電力を指令する電力指令と、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電圧と、電圧指令と、モータ電力とに基づき、前記第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態で前記モータの駆動電圧を出力することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段が、前記グランドスイッチをオンとし、且つ、前記第1スイッチ、または第2スイッチのいずれか一方をオン・オフ操作することにより、前記モータに電圧を供給する電源単独運転状態を備え、
前記制御手段は、前記電力指令と、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電圧と、前記電圧指令と、前記モータ電力に基づいて、前記電源直列運転状態、または前記電源単独運転状態を切り換えて前記モータの駆動電圧を出力することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記電源直列運転状態のときには、前記モータが正トルクの場合に、前記第1の蓄電手段と前記第2の蓄電手段のうち、電圧の高い方の蓄電手段が放電、電圧の低い方の蓄電手段が充電を行うことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記電源直列運転状態のときには、前記モータが負トルクの場合に、前記第1の蓄電手段と前記第2の蓄電手段のうち、電圧が低い方の蓄電手段が放電、電圧が高い方の蓄電手段が充電を行うことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項3または4のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、
前記電圧指令と、前記電力指令と、前記第1蓄電手段及び第2蓄電手段の各出力電圧と、に基づき、前記電源直列運転状態及び前記電源単独運転状態の運転割合を生成し、
前記運転割合と前記電圧指令に基づいて、前記電源直列運転状態及び前記電源単独運転状態に対応した複数の電圧指令からなる電圧指令群を生成し、
前記電圧指令群に基づいて、前記各運転状態に対応した前記第1スイッチ、第2スイッチ、及びグランドスイッチのうちの少なくとも一つを駆動し、前記電圧指令群に応じたパルス状電圧を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記運転割合を生成する際に、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各電圧と、前記モータ電力とに基づき、前記電源直列運転状態のみで駆動した場合の移動電力を生成し、
前記モータ電力が正トルクであるか、或いは負トルクであるかを判断してモータ運転状態判断結果を取得し、
前記移動電力、及び前記モータ運転状態判断結果に基づいて、各蓄電手段の電力指令の大きさを比較し、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅に基づいて、前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得し、
前記電力指令の大きさの比較結果と、前記モータ運転状態判断結果、及び、前記電圧状態に基づいて、前記モータを駆動するために使用する運転状態を選択し、この選択結果を選択運転状態として出力し、
前記電源単独運転状態が選択された場合に、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段のうち、使用する蓄電手段を選択した選択蓄電手段の決定信号を出力し、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記モータ電力と、前記電圧指令の振幅と、前記電力指令、及び前記モータ運転状態判断結果に基づき、最終運転割合を生成すること、
を特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分と、前記電圧指令の振幅を2倍した値と、を比較することにより行われることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値と、前記電圧指令の振幅と、を比較することにより行われることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源直列運転状態のみを選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項13】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段と電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項14】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段、及び電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項15】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項16】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源直列運転状態のみを選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項17】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項18】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項19】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段と電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項20】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段、及び電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項21】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記電力指令と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号、及び、前記モータ運転状態判断結果に基づき、前記電源直列運転状態の必要運転割合指令を生成し、
更に、前記最大運転割合と、前記必要運転割合指令とを比較して、運転割合比較結果を取得し、
前記運転割合比較結果と、前記各蓄電手段の電圧と、前記モータ電力と、前記電力指令に基づいて、最終運転割合を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項22】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記最大運転割合と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記モータ運転状態判断結果と、に基づいて、前記電源直列運転状態での一方の蓄電手段の最大充電電力を生成し、
前記モータ運転状態判断結果を用いて、前記電力指令と前記最大充電電力の大きさを比較して、充電電力指令比較結果を取得し、
前記充電電力指令比較結果、前記選択蓄電手段の決定信号、前記電力指令、前記モータ電力、前記各蓄電手段の電圧、前記モータ運転状態判断結果に基づいて、最終運転割合指令を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項23】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記最大運転割合と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記モータ運転状態判断結果と、に基づいて、前記電源直列運転状態での一方の蓄電手段の最大放電電力を生成し、
前記モータ運転状態判断結果を用いて、前記電力指令と前記最大放電電力の大きさを比較して、放電電力指令比較結果を取得し、
前記放電電力指令比較結果、前記選択蓄電手段の決定信号、前記電力指令、前記モータ電力、前記各蓄電手段の電圧、前記モータ運転状態判断結果に基づいて、最終運転割合指令を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項24】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御周期は、前記最終運転割合、及びモータの駆動電圧を、PWM出力する搬送波周期により決定することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項1】
第1の蓄電手段と、該第1の蓄電手段とは出力電圧が異なる第2の蓄電手段と、を備えた電力変換装置を制御する制御方法であって、
前記各蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの一方の電極が共通電力線にて接続され、且つ、前記共通電力線とモータがグランドスイッチを介して接続され、
更に、前記第1の蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極と前記モータとが第1スイッチを介して接続され、且つ、前記第2の蓄電手段の、低電位側または高電位側のうちの他方の電極と前記モータとが第2スイッチを介して接続され、
前記第1スイッチ、及び第2スイッチを制御する制御手段は、少なくとも1回の制御周期期間で、前記グランドスイッチを遮断すると共に、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電力を指令する電力指令と、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電圧と、電圧指令と、モータ電力とに基づき、前記第1スイッチ、第2スイッチの双方をオン、オフ操作する電源直列運転状態で前記モータの駆動電圧を出力することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段が、前記グランドスイッチをオンとし、且つ、前記第1スイッチ、または第2スイッチのいずれか一方をオン・オフ操作することにより、前記モータに電圧を供給する電源単独運転状態を備え、
前記制御手段は、前記電力指令と、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各出力電圧と、前記電圧指令と、前記モータ電力に基づいて、前記電源直列運転状態、または前記電源単独運転状態を切り換えて前記モータの駆動電圧を出力することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記電源直列運転状態のときには、前記モータが正トルクの場合に、前記第1の蓄電手段と前記第2の蓄電手段のうち、電圧の高い方の蓄電手段が放電、電圧の低い方の蓄電手段が充電を行うことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記電源直列運転状態のときには、前記モータが負トルクの場合に、前記第1の蓄電手段と前記第2の蓄電手段のうち、電圧が低い方の蓄電手段が放電、電圧が高い方の蓄電手段が充電を行うことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項5】
請求項3または4のいずれかに記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、
前記電圧指令と、前記電力指令と、前記第1蓄電手段及び第2蓄電手段の各出力電圧と、に基づき、前記電源直列運転状態及び前記電源単独運転状態の運転割合を生成し、
前記運転割合と前記電圧指令に基づいて、前記電源直列運転状態及び前記電源単独運転状態に対応した複数の電圧指令からなる電圧指令群を生成し、
前記電圧指令群に基づいて、前記各運転状態に対応した前記第1スイッチ、第2スイッチ、及びグランドスイッチのうちの少なくとも一つを駆動し、前記電圧指令群に応じたパルス状電圧を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記運転割合を生成する際に、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の各電圧と、前記モータ電力とに基づき、前記電源直列運転状態のみで駆動した場合の移動電力を生成し、
前記モータ電力が正トルクであるか、或いは負トルクであるかを判断してモータ運転状態判断結果を取得し、
前記移動電力、及び前記モータ運転状態判断結果に基づいて、各蓄電手段の電力指令の大きさを比較し、
前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅に基づいて、前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得し、
前記電力指令の大きさの比較結果と、前記モータ運転状態判断結果、及び、前記電圧状態に基づいて、前記モータを駆動するために使用する運転状態を選択し、この選択結果を選択運転状態として出力し、
前記電源単独運転状態が選択された場合に、前記第1の蓄電手段及び第2の蓄電手段のうち、使用する蓄電手段を選択した選択蓄電手段の決定信号を出力し、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記モータ電力と、前記電圧指令の振幅と、前記電力指令、及び前記モータ運転状態判断結果に基づき、最終運転割合を生成すること、
を特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分と、前記電圧指令の振幅を2倍した値と、を比較することにより行われることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記各蓄電手段の電圧を比較して電圧状態を取得する処理は、前記各蓄電手段の電圧の差分を1/2倍した値と、前記電圧指令の振幅と、を比較することにより行われることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源直列運転状態のみを選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項13】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段と電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項14】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が正トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段、及び電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項15】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項16】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源直列運転状態のみを選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項17】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、各蓄電手段電圧の差の方が、前記電圧指令の振幅の2倍よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項18】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令の方がともに、前記移動電力よりも大きいと判断した場合に、
前記電源直列運転状態と電源単独運転状態の双方を選択し、且つ、電源単独運転状態において、電圧の低い方の蓄電手段を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項19】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記各蓄電手段に対応する各電力指令と、前記移動電力とがほぼ同一であると判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段と電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項20】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記運転状態の選択、及び蓄電手段の選択は、
前記モータ運転状態判断手段結果が負トルクであり、
前記電圧状態の比較結果は、前記電圧指令の振幅の2倍の方が、各蓄電手段電圧の差よりも大きく、且つ、
前記各蓄電手段の電力指令の比較において、前記移動電力の方が前記各蓄電手段に対応する各電力指令よりも大きいと判断した場合に、
前記電源単独運転状態を選択し、且つ、該電源単独運転状態において、電圧の高い方の蓄電手段、及び電圧の低い方の蓄電手段の双方を選択することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項21】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記電力指令と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号、及び、前記モータ運転状態判断結果に基づき、前記電源直列運転状態の必要運転割合指令を生成し、
更に、前記最大運転割合と、前記必要運転割合指令とを比較して、運転割合比較結果を取得し、
前記運転割合比較結果と、前記各蓄電手段の電圧と、前記モータ電力と、前記電力指令に基づいて、最終運転割合を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項22】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記最大運転割合と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記モータ運転状態判断結果と、に基づいて、前記電源直列運転状態での一方の蓄電手段の最大充電電力を生成し、
前記モータ運転状態判断結果を用いて、前記電力指令と前記最大充電電力の大きさを比較して、充電電力指令比較結果を取得し、
前記充電電力指令比較結果、前記選択蓄電手段の決定信号、前記電力指令、前記モータ電力、前記各蓄電手段の電圧、前記モータ運転状態判断結果に基づいて、最終運転割合指令を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項23】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、前記最終運転割合を生成する処理は、
前記選択運転状態と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記各蓄電手段の電圧と、前記電圧指令の振幅と、に基づいて、前記電源直列運転状態の最大運転割合を生成し、
前記最大運転割合と、前記モータ電力と、前記各蓄電手段の電圧と、前記選択蓄電手段の決定信号と、前記モータ運転状態判断結果と、に基づいて、前記電源直列運転状態での一方の蓄電手段の最大放電電力を生成し、
前記モータ運転状態判断結果を用いて、前記電力指令と前記最大放電電力の大きさを比較して、放電電力指令比較結果を取得し、
前記放電電力指令比較結果、前記選択蓄電手段の決定信号、前記電力指令、前記モータ電力、前記各蓄電手段の電圧、前記モータ運転状態判断結果に基づいて、最終運転割合指令を生成することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項24】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記制御周期は、前記最終運転割合、及びモータの駆動電圧を、PWM出力する搬送波周期により決定することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−178534(P2010−178534A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19730(P2009−19730)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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