電力変換装置の制御装置および制御方法
【課題】制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する出力変動を抑制する。
【解決手段】キャリア周期可変部42は、周期が変動するキャリア信号を発生する。デッドタイム補償演算部43は、デッドタイムにより生じる電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値αを演算する。キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、デッドタイム補償値αに(制御周期Ts/平均キャリア周期Tc_mn)を乗じて補正する。PWM比較部41は、加算器45で電力変換装置に対する指令値とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力とを加えたものとキャリア信号との比較に基づいてスイッチング信号を発生する。
【解決手段】キャリア周期可変部42は、周期が変動するキャリア信号を発生する。デッドタイム補償演算部43は、デッドタイムにより生じる電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値αを演算する。キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、デッドタイム補償値αに(制御周期Ts/平均キャリア周期Tc_mn)を乗じて補正する。PWM比較部41は、加算器45で電力変換装置に対する指令値とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力とを加えたものとキャリア信号との比較に基づいてスイッチング信号を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の出力をPWM(Pulse Width Modulation)変調することにより、所望の電力に変換する電力変換装置の制御装置及び制御方法に係り、特にキャリア周波数(キャリア周期)に起因する不具合の発生を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下PWMと略す)信号のキャリア周波数およびその高調波の周波数に起因するスイッチングノイズを低減する技術として、下記特許文献1が知られている。この技術によれば、PWMキャリア周波数に対して、さらに低い周波数を有する正弦波で周波数変調をかけるようにしている。
【特許文献1】特開平7−99795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、キャリア周波数(キャリア周期)を周期的に変化させた場合、デッドタイムによる出力変動を低減できるとは限らないという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、キャリア周期を変化させた場合でも、デッドタイムによる出力変動を低減することができる電力変換装置の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正することで、電力変換装置の指令値と出力値との間に生じる誤差を補償するようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明に係る電力変換装置の制御装置の実施例1の構成を説明する電力変換システムの構成図である。図1において、電力変換システムは、バッテリから構成される直流電源1と、直流電源1を交流電源に変換するインバータ装置を含んで構成される電力変換装置2と、電力変換装置2を制御する制御装置4と、制御装置4に指令値Vu*を供給する指令発生部5と、電力変換装置2から出力電流Iを供給されるモータである負荷装置6とを備えている。
【0009】
制御装置4は、指令発生部5の指令値Vu*に基づいて、電力変換装置2の内部にあるスイッチング素子をオン・オフさせるスイッチング信号を電力変換装置2へ出力する。その結果、電力変換装置2は、上記スイッチング信号に基づいて直流電流を交流電流に変換して、負荷装置6へ供給する。
【0010】
制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイムを設けることにより生じる電力変換装置2の電流歪みを補償するデッドタイム補償値αを演算するデッドタイム補償演算部43と、デッドタイム補償値αを補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、指令発生部5が出力する電力変換装置2に対する指令値Vu*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’とを加える加算器45と、加算器45の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0011】
キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御装置4の制御周期Tsを検出する制御周期検出部442と、制御周期Ts中に変化するキャリア周期Tcの平均周期Tc_mnを検出する平均周期検出部441と、制御周期Tsとキャリア周期Tcの平均周期Tc_mnとの比(Ts/Tc_mn)に応じて、デッドタイム補償演算部43の出力αを補正した値であるα’を出力するデッドタイム補正部444とを備える。
【0012】
図2は、電力変換装置2が内蔵するスイッチング部の上下アームを説明する回路図である。図2において図1と同じ構成要素は、同じ符号を付与している。電力変換装置2は、入力される直流電圧を平滑するコンデンサCと、U相の上アームとなるスイッチング素子Tu+と、U相の下アームとなるスイッチング素子Tu−と、V相の上アームとなるスイッチング素子Tv+と、V相の下アームとなるスイッチング素子Tv−と、W相の上アームとなるスイッチング素子Tw+と、W相の下アームとなるスイッチング素子Tw−とを備える。各スイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−は、図2ではNPN型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いているが、その他のスイッチング素子、例えばMOS−FETを用いてもよい。
【0013】
各スイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−のスイッチング信号(駆動信号)は、制御装置4から供給される。ここで、上下アームの対を構成するスイッチング素子Tu+とTu−、スイッチング素子Tv+とTv−、スイッチング素子Tw+とTw−とは、上下アームが同時に導通して直流電源1を短絡させないように、スイッチング信号にデッドタイムが設けられている。
【0014】
図3は、キャリア信号を説明する図である。キャリア信号は、PWM比較部41で比較される三角波状の信号である。図3(a)において、破線が一定周期を示し、実線が図3(b)のように時間経過につれて変動するキャリア周期Tcによるキャリア信号を示す。図1のキャリア周期可変部42は、時間経過とともにキャリア周期Tcを変化させたキャリア信号をPWM比較手段41へ出力する。PWM比較部41は、加算器45の出力とキャリア信号とを比較して、電力変換装置2の駆動信号を生成する。なお、図3(a)および(b)は、キャリア周期Tcが時間変化する一周期分の波形を示している。例えば、キャリア周期はマイコンの周期設定レジスタを書き換えることで変化させることができる。
【0015】
図4,5は、電力変換装置2の出力を説明する図である。図4に制御周期とキャリア周期が同期していない場合、図5に制御周期とキャリア周期が同期している場合の例を用いて説明する。
【0016】
図4(a)は図1における電力変換装置2の内部にある上下アームを構成するスイッチング素子の一方に供給される信号を説明する図である。この場合、制御周期Tsの中に、キャリア周期Tc1,Tc2,Tc3と、Tc4の一部が入っている。このとき、制御周期Ts中にTc4が、どの程度含まれるかが問題となる。言い換えると、制御周期中に何回デッドタイムが含まれるかで、平均キャリア周期Tc_mn及びキャリア周期可変分デッドタイム補償値α’が変化する。このため、制御周期とキャリア周期が同期していない場合、式(3)または式(4)のような判別演算を行うことで平均キャリア周期Tc_mnを算出し、この平均キャリア周期Tc_mnを用いて式(1)により補償演算を行う。
【0017】
【数1】
【0018】
図4(a)の場合、n=3となる。このとき、制御周期TsとTc(1)+Tc(2)+Tc(3)の差分がTc(4)の半周期と比較して大きい場合、つまり制御周期中にデッドタイムの回数が増える場合、上記(3)式を用い、逆の場合は上記(4)式を用い、キャリア周期可変分デッドタイム補償演算式(8)を行う。
【0019】
図4(b)は電力変換装置2の出力であり、実線Aは所望の出力、破線Bは指令値Vu*とキャリア波形とを比較した出力にデッドタイムを付加した場合の出力を示している。
これに対し、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44により、補償された場合を図4(b)の破線Cに示す。
【0020】
本発明のキャリア周期可変分デッドタイム補償部44を備えない比較例では、式(5)、(6)に示すように、図1における指令発生部5が出力する指令値Vu*と、デッドタイム補償部43の出力αとを加算器45で加算したVu_ref をPWM比較部41の入力としていた。
【0021】
ここで、式(6)におけるTdは、上下アームの短絡を防止するために、上下アームのスイッチング素子が共にオフとなる短絡防止時間として一定値に設定したものである。またVdcは、直流電源1の電圧である。
【0022】
【数2】
【0023】
これに対して本実施例では、制御周期Tsがキャリア周期Tcよりも長い場合、デッドタイム補償部43の出力αに対して、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44で以下の式(8)の補正を行う。これにより、PWM比較部41の入力は式(7)となる。
【0024】
【数3】
【0025】
図5は、制御周期Tsとキャリア周期Tcとが同期している場合の例を示す。即ち、制御周期Tsが複数のキャリア周期の和に等しい場合である。図5の例では、制御周期Tsの長さがキャリア周期Tc1,Tc2,Tc3の和に等しい状態を示している。この場合、上記式(3)、式(4)のような判別演算は必要なく、平均キャリア周期Tc_mnは、次に示す式(9)となる。
【0026】
【数4】
【0027】
図5の場合、n=3となる。この式(9)により算出した平均キャリア周期Tc_mnを用いて、式(8)により補正値を算出する。そして加算器45で式(7)により求めた値Vu_ref をPWM比較部41に供給する。
【0028】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0029】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【実施例2】
【0030】
図6は、本発明の実施例2の構成を説明するシステム構成図である。図1に示した実施例1の制御装置4に対して、制御周期を可変する制御周期可変部46を追加した構成となっている。そして、制御周期検出部442は、制御周期可変部46が変更した制御周期を検出する。その他の構成要素は、実施例1と同様であるので、同じ構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0031】
次に図7を参照して実施例2の動作を説明する。図3における制御周期Tsが時間と共にTs(1) 、Ts(2) 、…、Ts(N) と変化する。図7では、制御周期とキャリア周期が同期している場合を例に説明する。制御周期Ts1の中に入るキャリア周期の個数が3、制御周期Ts2の中に入るキャリア周期の個数が4、制御周期TsNの中に入るキャリア周期の個数がnの場合のそれぞれのキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力を示している。
【0032】
このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α'(N)は以下のようになる。
【0033】
【数5】
【0034】
加算器45は、指令発生部5の指令値Vu*に、このキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α'(N)を加算したVu_ref をPWM比較部41に供給する。
【0035】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0036】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0037】
さらに本実施例によれば、制御周期が時間と共に変化する場合においても、変化した制御周期を検出して、制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じてデッドタイム補償値を補正しているので、キャリア周期の変化に起因する電力変換装置の出力の変動を平均的に低減することができるという効果がある。
【実施例3】
【0038】
図8は、本発明の実施例3の構成を説明するシステム構成図である。本実施例は、図1に示した実施例1の制御装置4に対して、電力変換装置2の出力電流を検出する電流検出部3の電流検出値に基づいて、出力電流Iの極性を判別する電流極性判別部48を有する構成である。その他の構成要素は、実施例1と同様であるので、同じ構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0039】
ここで、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を判別した場合、デッドタイム補償演算部43に、出力電流Iの極性の判別に係る信号である電流極性信号を出力する。そして、デッドタイム補償演算部43は、出力電流Iの極性が正の場合、デッドタイム補償値αとして正の一定値を発生する。一方、出力電流Iの極性が負の場合、デッドタイム補償値αとして負の一定値を発生する。また、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、出力電流Iの極性が正の場合、時間と共に変化するキャリア周期TcとTsの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期分補正値α’を発生する。一方、出力電流Iの極性が負の場合、時間と共に変化するキャリア周期TcとTsの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期分補正値α’を発生する。
【0040】
図9は、図8に示すキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’を説明する図である。ここで、図9(a)は電力変換装置2の出力電流Iの時間変化を表している。図9(b)はデッドタイム補償演算部43からの出力αを表している。図9(c)は制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比(Ts/Tc_mn)を表している。図9(d)はキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’を表している。
【0041】
なお、図9(a)〜(d)は出力電流Iの一周期分の波形を示している。図9(a)に示すように、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を正と判別した場合、デッドタイム補償演算部43はデッドタイム補償値αを正の一定値とする(図9(b)参照)。このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を発生する。
【0042】
一方、図9(a)に示すように、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を負と判別した場合、デッドタイム補償演算部43は出力αを負の一定値とする(図9(b)参照)。このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期の比と符号が逆で数値が同じ傾きで時間変化するキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を発生する。
【0043】
更に、デッドタイム補償補正部444は、上記のデッドタイム補償値αと、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比(Ts/Tc_mn)とを乗算したキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を加算器45に出力する。加算器45では、実施例1と同様に、上記キャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’と指令発生部5の指令値Vu*とを加算することで新たな指令値として、PWM比較部41へ出力する。PWM比較部41は加算器45の出力とキャリア周期可変部42の出力であるキャリア信号との比較に基づいてスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号を電力変換装置2のスイッチに出力する。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0045】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0046】
さらに本実施例によれば、電力変換装置の出力電流の向きが変化する場合においても、電力変換装置の出力電流の極性に応じて、デッドタイム補償値を補正しているために、キャリア周期が時間と共に変化することに起因する電力変換装置の出力の変動を抑制することができるという効果がある。
【実施例4】
【0047】
図10は、本発明の実施例4を説明するシステム構成図である。本実施例では、負荷装置6は永久磁石型3相同期モータとする。
【0048】
図10において、本実施例の制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイムを設けることにより生じる電力変換装置2の電流歪みを補償するデッドタイム補償値α''を演算するデッドタイム補償演算部43と、デッドタイム補償値α''を補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、電力変換装置2の出力電流を検出する電流検出部3と、電流検出部3が検出した3相量の電流検出値をd−q軸の2相量に変換する座標変換部50(第1の座標変換手段)と、エンコーダ等を用いて永久磁石同期モータの磁極の位置を検出する位置検出部52と、指令発生部5が発生する指令値Vu*を、第1の座標変換部50の出力と位置検出部52の出力に基づいて電圧指令値Vq*に変換する電圧指令発生部47と、電圧指令発生部47が出力する電圧指令値Vq*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44が出力する補償値α''' とを加える加算器45と、加算器45の出力を2相量から3相量へ変換する第2の座標変換部51(第2の座標変換手段)と、座標変換部51の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0049】
図10において、PWM比較部41,キャリア周期可変部42,デッドタイム補償演算部43の詳細は、実施例1と同様であるので重複する説明を省略する。
【0050】
本実施例の制御装置4では、実施例3の電流極性判別部を備えていないことが特徴である。これは、出力電流の極性と推定電流の極性に誤差が生じてしまうなど、正確な電流極性判別が困難な場合に有効である。本実施例では電流極性判別部を付加せずに、キャリア周期を可変することによる電力変換装置2の出力電圧(電流)リプルの発生を抑制することができる。
【0051】
制御装置4は、実施例3と異なり、3相量から2相量へ変換する座標変換部50と、2相量から3相量へ変換する座標変換部51とを有している。この座標変換部50と51は位置検出部52の情報を用いて座標変換する。また、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、電圧指令発生部47から発生する電圧指令値を補償する。
【0052】
図11は、図10のキャリア周期可変分デッドタイム補償部44による補償電圧α''' を説明する図である。図11(a)は、図10における制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnとの比(Ts/Tc_mn)の時間変化を表している。図11(b)は、図10におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部44から発生する補償電圧α''' を表している。補償電圧α''' は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期の比に同期している。
【0053】
具体的には、制御周期中に変化させるキャリア周期の平均Tc_mn(N) を、デッドタイムをTd、直流電源1の電圧をVdcとすると、補償電圧α''' は以下のように表される。
【0054】
【数6】
【0055】
ここで、デッドタイムTdは上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間として一定値に設定している。なお、負荷装置6は同期モータなのでキャリア周期可変分デッドタイム補償部44はq軸電圧のみ補正する。これにより、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0056】
実施例4の制御装置4では、負荷が同期モータであるため、出力電流の極性判別部を設けることなく、或いは正確な電流極性判別が難しい場合に、q軸電圧のみ補償することで制御周期に対しキャリア周期Tcを可変させた場合でも出力電圧(電流)リプルの発生を抑制できる。更に、キャリア周期Tcを可変しているので、キャリア周期Tcおよびそのn次高調波の周波数に対するノイズレベルの高いスペクトル成分を有するスイッチングノイズを低減することができる。
【0057】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0058】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0059】
さらに本実施例によれば、負荷が同期モータであり、q軸電圧のみ補償しているので、出力電流の極性判別部を設けることなく、或いは正確な出力電流の極性判別が難しい場合にも、キャリア周波数変動による電力変換装置の出力誤差の発生を低減することができるという効果がある。
【実施例5】
【0060】
図12(a)は、本発明の実施例5を説明するシステム構成図である。図12(a)において、本実施例の制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイム補償値αを補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、指令発生部5が出力する電力変換装置2に対する指令値Vu*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’(N)とを加える加算器45と、加算器45の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0061】
そして、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、キャリア周期可変部42へ指示するキャリア周期Tcと、時間経過に伴って周期が変動する制御周期Tsと、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力となる補正値α’とを関係付けた数値列のマップ445を備えている。
【0062】
図12(b)はそのマップ445の例である。制御周期Ts1内で用いられるキャリア周期がTc11、Tc12,Tc13、Tc14、…、Tc(1n)である。これらのキャリア周期の平均値と制御周期Ts1により、予め演算された補正値α’がα’1としてマップ445に記憶されている。同様に、制御周期Ts2内で用いられるキャリア周期がTc21、Tc22,…、Tc(2n)である。これらのキャリア周期の平均値と制御周期Ts2により、予め演算された補正値α’がα’2としてマップ445に記憶されている。そして、このマップ445から順次、制御周期と、その制御周期内に用いる複数のキャリア周期と、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44が出力する補正値α’を読み出して、制御周期、キャリア周期、補正値を制御している。
【0063】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0064】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期との組み合わせを予め決めておき、制御周期とこの制御周期内に含まれるキャリア周期の平均周期とから予め補正値α’を演算してマップに記憶させることにより、制御装置4の演算負荷を低減することができるという効果がある。
【0065】
なお、以上に説明した実施例は、本発明の実施の一例であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、実施例1及び実施例2では、直流電源1としてバッテリを用いた例を示しているが、特にこれに限定されるものでなく、商用交流電源を整流して直流とする直流電源回路でもよい。更に、電力変換装置2はインバータ装置を含んで構成される例を示しているが、特にこれに限定されるものでなく、他の回路でも良い。同様に、負荷装置6の例としてモータを示しているが、特にこれに限定されるものでなく、他の負荷装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る電力変換装置の実施例1の構成を説明する構成図である。
【図2】電力変換装置の上アームと下アームの例を説明する図である。
【図3】キャリアキャリア信号を説明する図である。
【図4】制御周期とキャリア周期が同期しない場合のPWM比較部を説明する図である。
【図5】制御周期とキャリア周期が同期する場合のPWM比較部を説明する図である。
【図6】本発明に係る電力変換装置の実施例2の構成を説明する構成図である。
【図7】実施例2のPWM比較部を説明する図である。
【図8】本発明に係る電力変換装置の実施例3の構成を説明する構成図である。
【図9】実施例3におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部の出力を説明する図である。
【図10】本発明に係る電力変換装置の実施例4の構成を説明する構成図である。
【図11】実施例4におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部の出力を説明する図である。
【図12】(a)本発明に係る電力変換装置の実施例5の構成を説明する構成図、(b)実施例5におけるマップの例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1…直流電源、2…電力変換装置、3…電流検出装置、4…制御装置、5…指令発生部、6…負荷装置、41…PWM比較部、42…キャリア周期可変部、43…デッドタイム補償演算部、44…キャリア周期可変分デッドタイム補償部、45…加算器、46…制御周期可変部、47…電圧指令発生部、48…電流極性判別部、50…座標変換部、51…座標変換部、52…位置検出部、441…平均周期検出部、442…制御周期検出部、443…除算器、444…デッドタイム補正部、445…マップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の出力をPWM(Pulse Width Modulation)変調することにより、所望の電力に変換する電力変換装置の制御装置及び制御方法に係り、特にキャリア周波数(キャリア周期)に起因する不具合の発生を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下PWMと略す)信号のキャリア周波数およびその高調波の周波数に起因するスイッチングノイズを低減する技術として、下記特許文献1が知られている。この技術によれば、PWMキャリア周波数に対して、さらに低い周波数を有する正弦波で周波数変調をかけるようにしている。
【特許文献1】特開平7−99795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、キャリア周波数(キャリア周期)を周期的に変化させた場合、デッドタイムによる出力変動を低減できるとは限らないという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、キャリア周期を変化させた場合でも、デッドタイムによる出力変動を低減することができる電力変換装置の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正することで、電力変換装置の指令値と出力値との間に生じる誤差を補償するようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明に係る電力変換装置の制御装置の実施例1の構成を説明する電力変換システムの構成図である。図1において、電力変換システムは、バッテリから構成される直流電源1と、直流電源1を交流電源に変換するインバータ装置を含んで構成される電力変換装置2と、電力変換装置2を制御する制御装置4と、制御装置4に指令値Vu*を供給する指令発生部5と、電力変換装置2から出力電流Iを供給されるモータである負荷装置6とを備えている。
【0009】
制御装置4は、指令発生部5の指令値Vu*に基づいて、電力変換装置2の内部にあるスイッチング素子をオン・オフさせるスイッチング信号を電力変換装置2へ出力する。その結果、電力変換装置2は、上記スイッチング信号に基づいて直流電流を交流電流に変換して、負荷装置6へ供給する。
【0010】
制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイムを設けることにより生じる電力変換装置2の電流歪みを補償するデッドタイム補償値αを演算するデッドタイム補償演算部43と、デッドタイム補償値αを補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、指令発生部5が出力する電力変換装置2に対する指令値Vu*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’とを加える加算器45と、加算器45の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0011】
キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御装置4の制御周期Tsを検出する制御周期検出部442と、制御周期Ts中に変化するキャリア周期Tcの平均周期Tc_mnを検出する平均周期検出部441と、制御周期Tsとキャリア周期Tcの平均周期Tc_mnとの比(Ts/Tc_mn)に応じて、デッドタイム補償演算部43の出力αを補正した値であるα’を出力するデッドタイム補正部444とを備える。
【0012】
図2は、電力変換装置2が内蔵するスイッチング部の上下アームを説明する回路図である。図2において図1と同じ構成要素は、同じ符号を付与している。電力変換装置2は、入力される直流電圧を平滑するコンデンサCと、U相の上アームとなるスイッチング素子Tu+と、U相の下アームとなるスイッチング素子Tu−と、V相の上アームとなるスイッチング素子Tv+と、V相の下アームとなるスイッチング素子Tv−と、W相の上アームとなるスイッチング素子Tw+と、W相の下アームとなるスイッチング素子Tw−とを備える。各スイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−は、図2ではNPN型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いているが、その他のスイッチング素子、例えばMOS−FETを用いてもよい。
【0013】
各スイッチング素子Tu+、Tu−、Tv+、Tv−、Tw+、Tw−のスイッチング信号(駆動信号)は、制御装置4から供給される。ここで、上下アームの対を構成するスイッチング素子Tu+とTu−、スイッチング素子Tv+とTv−、スイッチング素子Tw+とTw−とは、上下アームが同時に導通して直流電源1を短絡させないように、スイッチング信号にデッドタイムが設けられている。
【0014】
図3は、キャリア信号を説明する図である。キャリア信号は、PWM比較部41で比較される三角波状の信号である。図3(a)において、破線が一定周期を示し、実線が図3(b)のように時間経過につれて変動するキャリア周期Tcによるキャリア信号を示す。図1のキャリア周期可変部42は、時間経過とともにキャリア周期Tcを変化させたキャリア信号をPWM比較手段41へ出力する。PWM比較部41は、加算器45の出力とキャリア信号とを比較して、電力変換装置2の駆動信号を生成する。なお、図3(a)および(b)は、キャリア周期Tcが時間変化する一周期分の波形を示している。例えば、キャリア周期はマイコンの周期設定レジスタを書き換えることで変化させることができる。
【0015】
図4,5は、電力変換装置2の出力を説明する図である。図4に制御周期とキャリア周期が同期していない場合、図5に制御周期とキャリア周期が同期している場合の例を用いて説明する。
【0016】
図4(a)は図1における電力変換装置2の内部にある上下アームを構成するスイッチング素子の一方に供給される信号を説明する図である。この場合、制御周期Tsの中に、キャリア周期Tc1,Tc2,Tc3と、Tc4の一部が入っている。このとき、制御周期Ts中にTc4が、どの程度含まれるかが問題となる。言い換えると、制御周期中に何回デッドタイムが含まれるかで、平均キャリア周期Tc_mn及びキャリア周期可変分デッドタイム補償値α’が変化する。このため、制御周期とキャリア周期が同期していない場合、式(3)または式(4)のような判別演算を行うことで平均キャリア周期Tc_mnを算出し、この平均キャリア周期Tc_mnを用いて式(1)により補償演算を行う。
【0017】
【数1】
【0018】
図4(a)の場合、n=3となる。このとき、制御周期TsとTc(1)+Tc(2)+Tc(3)の差分がTc(4)の半周期と比較して大きい場合、つまり制御周期中にデッドタイムの回数が増える場合、上記(3)式を用い、逆の場合は上記(4)式を用い、キャリア周期可変分デッドタイム補償演算式(8)を行う。
【0019】
図4(b)は電力変換装置2の出力であり、実線Aは所望の出力、破線Bは指令値Vu*とキャリア波形とを比較した出力にデッドタイムを付加した場合の出力を示している。
これに対し、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44により、補償された場合を図4(b)の破線Cに示す。
【0020】
本発明のキャリア周期可変分デッドタイム補償部44を備えない比較例では、式(5)、(6)に示すように、図1における指令発生部5が出力する指令値Vu*と、デッドタイム補償部43の出力αとを加算器45で加算したVu_ref をPWM比較部41の入力としていた。
【0021】
ここで、式(6)におけるTdは、上下アームの短絡を防止するために、上下アームのスイッチング素子が共にオフとなる短絡防止時間として一定値に設定したものである。またVdcは、直流電源1の電圧である。
【0022】
【数2】
【0023】
これに対して本実施例では、制御周期Tsがキャリア周期Tcよりも長い場合、デッドタイム補償部43の出力αに対して、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44で以下の式(8)の補正を行う。これにより、PWM比較部41の入力は式(7)となる。
【0024】
【数3】
【0025】
図5は、制御周期Tsとキャリア周期Tcとが同期している場合の例を示す。即ち、制御周期Tsが複数のキャリア周期の和に等しい場合である。図5の例では、制御周期Tsの長さがキャリア周期Tc1,Tc2,Tc3の和に等しい状態を示している。この場合、上記式(3)、式(4)のような判別演算は必要なく、平均キャリア周期Tc_mnは、次に示す式(9)となる。
【0026】
【数4】
【0027】
図5の場合、n=3となる。この式(9)により算出した平均キャリア周期Tc_mnを用いて、式(8)により補正値を算出する。そして加算器45で式(7)により求めた値Vu_ref をPWM比較部41に供給する。
【0028】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0029】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【実施例2】
【0030】
図6は、本発明の実施例2の構成を説明するシステム構成図である。図1に示した実施例1の制御装置4に対して、制御周期を可変する制御周期可変部46を追加した構成となっている。そして、制御周期検出部442は、制御周期可変部46が変更した制御周期を検出する。その他の構成要素は、実施例1と同様であるので、同じ構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0031】
次に図7を参照して実施例2の動作を説明する。図3における制御周期Tsが時間と共にTs(1) 、Ts(2) 、…、Ts(N) と変化する。図7では、制御周期とキャリア周期が同期している場合を例に説明する。制御周期Ts1の中に入るキャリア周期の個数が3、制御周期Ts2の中に入るキャリア周期の個数が4、制御周期TsNの中に入るキャリア周期の個数がnの場合のそれぞれのキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力を示している。
【0032】
このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α'(N)は以下のようになる。
【0033】
【数5】
【0034】
加算器45は、指令発生部5の指令値Vu*に、このキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α'(N)を加算したVu_ref をPWM比較部41に供給する。
【0035】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0036】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0037】
さらに本実施例によれば、制御周期が時間と共に変化する場合においても、変化した制御周期を検出して、制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じてデッドタイム補償値を補正しているので、キャリア周期の変化に起因する電力変換装置の出力の変動を平均的に低減することができるという効果がある。
【実施例3】
【0038】
図8は、本発明の実施例3の構成を説明するシステム構成図である。本実施例は、図1に示した実施例1の制御装置4に対して、電力変換装置2の出力電流を検出する電流検出部3の電流検出値に基づいて、出力電流Iの極性を判別する電流極性判別部48を有する構成である。その他の構成要素は、実施例1と同様であるので、同じ構成要素には同じ符号を付与して重複する説明を省略する。
【0039】
ここで、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を判別した場合、デッドタイム補償演算部43に、出力電流Iの極性の判別に係る信号である電流極性信号を出力する。そして、デッドタイム補償演算部43は、出力電流Iの極性が正の場合、デッドタイム補償値αとして正の一定値を発生する。一方、出力電流Iの極性が負の場合、デッドタイム補償値αとして負の一定値を発生する。また、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、出力電流Iの極性が正の場合、時間と共に変化するキャリア周期TcとTsの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期分補正値α’を発生する。一方、出力電流Iの極性が負の場合、時間と共に変化するキャリア周期TcとTsの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期分補正値α’を発生する。
【0040】
図9は、図8に示すキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’を説明する図である。ここで、図9(a)は電力変換装置2の出力電流Iの時間変化を表している。図9(b)はデッドタイム補償演算部43からの出力αを表している。図9(c)は制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比(Ts/Tc_mn)を表している。図9(d)はキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’を表している。
【0041】
なお、図9(a)〜(d)は出力電流Iの一周期分の波形を示している。図9(a)に示すように、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を正と判別した場合、デッドタイム補償演算部43はデッドタイム補償値αを正の一定値とする(図9(b)参照)。このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比と同じ傾きで時間変化するキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を発生する。
【0042】
一方、図9(a)に示すように、電流極性判別部48が、電流検出部3の電流検出値より電力変換装置2の出力電流Iの極性を負と判別した場合、デッドタイム補償演算部43は出力αを負の一定値とする(図9(b)参照)。このとき、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期の比と符号が逆で数値が同じ傾きで時間変化するキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を発生する。
【0043】
更に、デッドタイム補償補正部444は、上記のデッドタイム補償値αと、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnの比(Ts/Tc_mn)とを乗算したキャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’(図9(d)参照)を加算器45に出力する。加算器45では、実施例1と同様に、上記キャリア周期可変分デッドタイム補償部出力α’と指令発生部5の指令値Vu*とを加算することで新たな指令値として、PWM比較部41へ出力する。PWM比較部41は加算器45の出力とキャリア周期可変部42の出力であるキャリア信号との比較に基づいてスイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号を電力変換装置2のスイッチに出力する。
【0044】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0045】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償値の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0046】
さらに本実施例によれば、電力変換装置の出力電流の向きが変化する場合においても、電力変換装置の出力電流の極性に応じて、デッドタイム補償値を補正しているために、キャリア周期が時間と共に変化することに起因する電力変換装置の出力の変動を抑制することができるという効果がある。
【実施例4】
【0047】
図10は、本発明の実施例4を説明するシステム構成図である。本実施例では、負荷装置6は永久磁石型3相同期モータとする。
【0048】
図10において、本実施例の制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイムを設けることにより生じる電力変換装置2の電流歪みを補償するデッドタイム補償値α''を演算するデッドタイム補償演算部43と、デッドタイム補償値α''を補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、電力変換装置2の出力電流を検出する電流検出部3と、電流検出部3が検出した3相量の電流検出値をd−q軸の2相量に変換する座標変換部50(第1の座標変換手段)と、エンコーダ等を用いて永久磁石同期モータの磁極の位置を検出する位置検出部52と、指令発生部5が発生する指令値Vu*を、第1の座標変換部50の出力と位置検出部52の出力に基づいて電圧指令値Vq*に変換する電圧指令発生部47と、電圧指令発生部47が出力する電圧指令値Vq*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44が出力する補償値α''' とを加える加算器45と、加算器45の出力を2相量から3相量へ変換する第2の座標変換部51(第2の座標変換手段)と、座標変換部51の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0049】
図10において、PWM比較部41,キャリア周期可変部42,デッドタイム補償演算部43の詳細は、実施例1と同様であるので重複する説明を省略する。
【0050】
本実施例の制御装置4では、実施例3の電流極性判別部を備えていないことが特徴である。これは、出力電流の極性と推定電流の極性に誤差が生じてしまうなど、正確な電流極性判別が困難な場合に有効である。本実施例では電流極性判別部を付加せずに、キャリア周期を可変することによる電力変換装置2の出力電圧(電流)リプルの発生を抑制することができる。
【0051】
制御装置4は、実施例3と異なり、3相量から2相量へ変換する座標変換部50と、2相量から3相量へ変換する座標変換部51とを有している。この座標変換部50と51は位置検出部52の情報を用いて座標変換する。また、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、電圧指令発生部47から発生する電圧指令値を補償する。
【0052】
図11は、図10のキャリア周期可変分デッドタイム補償部44による補償電圧α''' を説明する図である。図11(a)は、図10における制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期Tc_mnとの比(Ts/Tc_mn)の時間変化を表している。図11(b)は、図10におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部44から発生する補償電圧α''' を表している。補償電圧α''' は、制御周期Tsとその制御周期内で変化するキャリア周期の平均周期の比に同期している。
【0053】
具体的には、制御周期中に変化させるキャリア周期の平均Tc_mn(N) を、デッドタイムをTd、直流電源1の電圧をVdcとすると、補償電圧α''' は以下のように表される。
【0054】
【数6】
【0055】
ここで、デッドタイムTdは上下アームの短絡を防止するための短絡防止時間として一定値に設定している。なお、負荷装置6は同期モータなのでキャリア周期可変分デッドタイム補償部44はq軸電圧のみ補正する。これにより、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0056】
実施例4の制御装置4では、負荷が同期モータであるため、出力電流の極性判別部を設けることなく、或いは正確な電流極性判別が難しい場合に、q軸電圧のみ補償することで制御周期に対しキャリア周期Tcを可変させた場合でも出力電圧(電流)リプルの発生を抑制できる。更に、キャリア周期Tcを可変しているので、キャリア周期Tcおよびそのn次高調波の周波数に対するノイズレベルの高いスペクトル成分を有するスイッチングノイズを低減することができる。
【0057】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0058】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期とが同期している場合、制御周期の長さと連続する複数キャリア周期の長さの和とが等しくなるので、制御周期内に最後のキャリア周期がどの程度含まれるかの判別が不要となり、デッドタイム補償の補正演算を容易にすることができるという効果がある。
【0059】
さらに本実施例によれば、負荷が同期モータであり、q軸電圧のみ補償しているので、出力電流の極性判別部を設けることなく、或いは正確な出力電流の極性判別が難しい場合にも、キャリア周波数変動による電力変換装置の出力誤差の発生を低減することができるという効果がある。
【実施例5】
【0060】
図12(a)は、本発明の実施例5を説明するシステム構成図である。図12(a)において、本実施例の制御装置4は、時間経過に伴ってキャリア周期Tcが変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変部42と、デッドタイム補償値αを補正することにより、キャリア周期変動が電力変換装置2の指令値と電力変換装置2の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償部44と、指令発生部5が出力する電力変換装置2に対する指令値Vu*とキャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力α’(N)とを加える加算器45と、加算器45の出力とキャリア信号との比較に基づいて電力変換装置2へスイッチング信号を供給するPWM比較部41とを備える。
【0061】
そして、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44は、キャリア周期可変部42へ指示するキャリア周期Tcと、時間経過に伴って周期が変動する制御周期Tsと、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44の出力となる補正値α’とを関係付けた数値列のマップ445を備えている。
【0062】
図12(b)はそのマップ445の例である。制御周期Ts1内で用いられるキャリア周期がTc11、Tc12,Tc13、Tc14、…、Tc(1n)である。これらのキャリア周期の平均値と制御周期Ts1により、予め演算された補正値α’がα’1としてマップ445に記憶されている。同様に、制御周期Ts2内で用いられるキャリア周期がTc21、Tc22,…、Tc(2n)である。これらのキャリア周期の平均値と制御周期Ts2により、予め演算された補正値α’がα’2としてマップ445に記憶されている。そして、このマップ445から順次、制御周期と、その制御周期内に用いる複数のキャリア周期と、キャリア周期可変分デッドタイム補償部44が出力する補正値α’を読み出して、制御周期、キャリア周期、補正値を制御している。
【0063】
以上説明した本実施例によれば、スイッチング手段の上下アームの短絡を防止するデッドタイムを設けることで生じる電流歪みを補償するデッドタイム補償値を、制御装置の制御周期とキャリア周期の平均周期との比に応じて補正しているので、制御周期がキャリア周期よりも長く、且つキャリア周期が時間と共に変化する電力変換装置のデッドタイム補償に起因する電力変換装置の出力変動を平均的に抑制することができるという効果がある。
【0064】
また本実施例によれば、制御周期とキャリア周期との組み合わせを予め決めておき、制御周期とこの制御周期内に含まれるキャリア周期の平均周期とから予め補正値α’を演算してマップに記憶させることにより、制御装置4の演算負荷を低減することができるという効果がある。
【0065】
なお、以上に説明した実施例は、本発明の実施の一例であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、実施例1及び実施例2では、直流電源1としてバッテリを用いた例を示しているが、特にこれに限定されるものでなく、商用交流電源を整流して直流とする直流電源回路でもよい。更に、電力変換装置2はインバータ装置を含んで構成される例を示しているが、特にこれに限定されるものでなく、他の回路でも良い。同様に、負荷装置6の例としてモータを示しているが、特にこれに限定されるものでなく、他の負荷装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る電力変換装置の実施例1の構成を説明する構成図である。
【図2】電力変換装置の上アームと下アームの例を説明する図である。
【図3】キャリアキャリア信号を説明する図である。
【図4】制御周期とキャリア周期が同期しない場合のPWM比較部を説明する図である。
【図5】制御周期とキャリア周期が同期する場合のPWM比較部を説明する図である。
【図6】本発明に係る電力変換装置の実施例2の構成を説明する構成図である。
【図7】実施例2のPWM比較部を説明する図である。
【図8】本発明に係る電力変換装置の実施例3の構成を説明する構成図である。
【図9】実施例3におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部の出力を説明する図である。
【図10】本発明に係る電力変換装置の実施例4の構成を説明する構成図である。
【図11】実施例4におけるキャリア周期可変分デッドタイム補償部の出力を説明する図である。
【図12】(a)本発明に係る電力変換装置の実施例5の構成を説明する構成図、(b)実施例5におけるマップの例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1…直流電源、2…電力変換装置、3…電流検出装置、4…制御装置、5…指令発生部、6…負荷装置、41…PWM比較部、42…キャリア周期可変部、43…デッドタイム補償演算部、44…キャリア周期可変分デッドタイム補償部、45…加算器、46…制御周期可変部、47…電圧指令発生部、48…電流極性判別部、50…座標変換部、51…座標変換部、52…位置検出部、441…平均周期検出部、442…制御周期検出部、443…除算器、444…デッドタイム補正部、445…マップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御装置において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変手段と、
デッドタイムを設けることにより生じる前記電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値を演算するデッドタイム補償演算手段と、
前記デッドタイム補償値を補正することにより、前記キャリア周期変動が前記電力変換装置の指令値と前記電力変換装置の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償手段と、
前記電力変換装置に対する指令値と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加える加算手段と、
該加算手段の出力と前記キャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給するPWM比較手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御装置の制御周期を検出する制御周期検出手段と、
前記制御周期中に変化するキャリア周期の平均周期を検出する平均周期検出手段と、
前記制御周期と前記キャリア周期の平均周期との比に応じて、前記デッドタイム補償演算手段の出力を補正するデッドタイム補正手段と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御周期と前記キャリア周期とは同期していることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記制御周期を時間と共に変化させる制御周期可変手段を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御周期と前記キャリア周期との比に応じて、前記誤差を補償することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記電力変換装置の出力電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段の電流検出値に基づいて出力電流の極性を判別する電流極性判別手段と、を備え
前記デッドタイム補償演算手段は、前記電流極性判別手段からの前記判別結果に基づいて、前記デッドタイム補償値の極性を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記電力変換装置の負荷装置は3相同期モータであり、
前記制御装置は、
前記電力変換装置の出力電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段の出力の3相量から2相量へ座標変換する第1の座標変換手段と、
第1の座標変換手段の出力と外部から入力される電力変換装置に対する指令値とに基づいて、電圧指令値を発生する電圧指令発生手段と、
該電圧指令発生手段の出力と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加算する加算手段と、
該加算手段の出力の2相量から3相量へ座標変換する第2の座標変換手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段はq軸電圧を補償することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御装置において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変手段と、
前記キャリア周期変動が前記電力変換装置の指令値と前記電力変換装置の出力値との間に生じる誤差を補正する補正値を出力するキャリア周期可変分デッドタイム補償手段と、
前記電力変換装置に対する指令値と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加える加算手段と、
該加算手段の出力とキャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給するPWM比較手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御周期と前記キャリア周期と前記補正値とを関係付けたマップを有し、
前記制御周期に応じて、前記マップから読み出した複数のキャリア周期を順次前記キャリア周期可変手段へ指示するとともに、前記マップから読み出した制御周期毎の補正値を前記加算手段へ供給することを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御方法において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生し、
前記電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値を演算し、
制御周期と、前記キャリア周期の平均周期との比に応じて、前記デッドタイム補償値を補正し、
前記電力変換装置に対する指令値と補正されたデッドタイム補償値とを加算し、
該加算された指令値及び補正されたデッドタイム補償値と、前記キャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給する電力変換装置の制御方法。
【請求項1】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御装置において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変手段と、
デッドタイムを設けることにより生じる前記電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値を演算するデッドタイム補償演算手段と、
前記デッドタイム補償値を補正することにより、前記キャリア周期変動が前記電力変換装置の指令値と前記電力変換装置の出力値との間に生じる誤差を補償するキャリア周期可変分デッドタイム補償手段と、
前記電力変換装置に対する指令値と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加える加算手段と、
該加算手段の出力と前記キャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給するPWM比較手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御装置の制御周期を検出する制御周期検出手段と、
前記制御周期中に変化するキャリア周期の平均周期を検出する平均周期検出手段と、
前記制御周期と前記キャリア周期の平均周期との比に応じて、前記デッドタイム補償演算手段の出力を補正するデッドタイム補正手段と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御周期と前記キャリア周期とは同期していることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記制御周期を時間と共に変化させる制御周期可変手段を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御周期と前記キャリア周期との比に応じて、前記誤差を補償することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記電力変換装置の出力電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段の電流検出値に基づいて出力電流の極性を判別する電流極性判別手段と、を備え
前記デッドタイム補償演算手段は、前記電流極性判別手段からの前記判別結果に基づいて、前記デッドタイム補償値の極性を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記電力変換装置の負荷装置は3相同期モータであり、
前記制御装置は、
前記電力変換装置の出力電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段の出力の3相量から2相量へ座標変換する第1の座標変換手段と、
第1の座標変換手段の出力と外部から入力される電力変換装置に対する指令値とに基づいて、電圧指令値を発生する電圧指令発生手段と、
該電圧指令発生手段の出力と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加算する加算手段と、
該加算手段の出力の2相量から3相量へ座標変換する第2の座標変換手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段はq軸電圧を補償することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御装置において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生するキャリア周期可変手段と、
前記キャリア周期変動が前記電力変換装置の指令値と前記電力変換装置の出力値との間に生じる誤差を補正する補正値を出力するキャリア周期可変分デッドタイム補償手段と、
前記電力変換装置に対する指令値と前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段の出力とを加える加算手段と、
該加算手段の出力とキャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給するPWM比較手段と、
を備え、
前記キャリア周期可変分デッドタイム補償手段は、
前記制御周期と前記キャリア周期と前記補正値とを関係付けたマップを有し、
前記制御周期に応じて、前記マップから読み出した複数のキャリア周期を順次前記キャリア周期可変手段へ指示するとともに、前記マップから読み出した制御周期毎の補正値を前記加算手段へ供給することを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
内蔵するスイッチング手段の上下アームの短絡を防止するためのデッドタイムを設けた電力変換装置の制御方法において、
時間経過に伴ってキャリア周期が変動する三角波形状のキャリア信号を発生し、
前記電力変換装置の電流歪みを補償するデッドタイム補償値を演算し、
制御周期と、前記キャリア周期の平均周期との比に応じて、前記デッドタイム補償値を補正し、
前記電力変換装置に対する指令値と補正されたデッドタイム補償値とを加算し、
該加算された指令値及び補正されたデッドタイム補償値と、前記キャリア信号との比較に基づいて前記電力変換装置へスイッチング信号を供給する電力変換装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−41877(P2010−41877A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204298(P2008−204298)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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