説明

電力変換装置

【課題】過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置及びこれを搭載した車両を提供すること。
【解決手段】交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置1。電力変換装置1によって制御される被制御電流の経路内に半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31との接続部4が形成されている。接続部4は、主電極端子21とバスバ端子31とを、先端部211、311同士が同じ方向を向くように重ね合わせると共に先端部211、311において接合してなる。そして、2つの部品の端子を流れる被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関と電気モータの両方を駆動源として有するハイブリッド自動車、その他、電気モータを駆動源として備えた自動車等では、直流電力と交流電力との間で双方向変換する大容量のインバータを必要とする。そのため、このインバータを含む電力変換装置が種々開発されてきた。
【0003】
該電力変換装置は、IGBT素子等の半導体素子を内蔵した半導体モジュールを複数用いて、被制御電流を制御する。上記半導体モジュールは、被制御電流の出し入れをする主電極端子を有しており、該主電極端子は、バッテリーや電気モータ等に接続されたバスバーに接続されている。そして、被制御電流は、バスバー及び主電極端子を流れ、両者の接続部を通過する。
【0004】
かかる電力変換装置において、上記半導体モジュールに過電流が流れて故障することを防ぐべく、主電極端子にヒューズを設けたものが開示されている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、過電流が流れたとき、主電極端子がヒューズにおいて物理的に断線したとしても、断線後の端子片が互いに充分に離れないと、アーク放電によって電気的に繋がった状態が長時間続くおそれがある。これにより、半導体モジュールやその他の部品に過電流が流れ続けるおそれがある。そして、半導体モジュール等の故障の原因となるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−068967号公報
【特許文献2】特開2005−175439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置及びこれを搭載した車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品同士の接続部が形成されており、
該接続部は、一方の部品の端子と他方の部品の端子とを、先端部同士が同じ方向を向くように重ね合わせると共に上記先端部において接合してなり、
上記2つの部品の端子を流れる上記被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0008】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記接続部は、一方の部品の端子と他方の部品の端子とを先端部同士が同じ方向を向くように重ね合わせていると共に、上記先端部において接合されている。それ故、上記接続部に過電流が流れたとき、上記先端部において溶断させることができる。
【0009】
そして、上記2つの部品の端子を流れる上記被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されている。即ち、上記接続部は互いに同じ方向を向いた先端部において接合されているため、これらを流れる被制御電流の主方向は逆向きとなる。それ故、上記2つの端子の間には、被制御電流が流れている間、電磁力に基づく斥力が作用している。そのため、上記のごとく過電流によって接続部が溶断されたとき、2つの端子は即座に互いに離れる方向に動くこととなる。
【0010】
その結果、溶断後において、2つの端子を充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、2つの端子の間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置の故障を最小限に抑制することができる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品の端子同士の接続部が形成されており、
少なくとも一方の上記部品の端子には、該端子の幅方向の側面から切り込まれた切込部が千鳥状に3箇所以上形成されており、これらの間に形成された複数の中間経路部のうち、隣合う中間経路部を流れる上記被制御電流の主方向が互いに逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項10)。
【0013】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
少なくとも一方の上記部品の端子には、上記切込部が形成されているため、上記端子に過電流が流れたとき、該端子を切込部の延長線上において溶断させることができる。
そして、上記隣合う中間経路部を流れる上記被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されているため、上記隣合う中間経路部の間には、被制御電流が流れている間、電磁力に基づく斥力が作用している。そのため、上記のごとく過電流によって端子が溶断されたとき、2つの中間経路部は即座に互いに離れる方向に動くこととなる。
【0014】
その結果、溶断後において、2つの中間経路部を充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、2つの中間経路部の間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置の故障を最小限に抑制することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【0016】
第3の発明は、交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品の端子同士の接続部が形成されており、
少なくとも一方の上記部品の端子は、互いに略平行となる一対の平行経路部が構成されるように折り曲げられた折曲げ部を形成してなると共に、該折曲げ部における折返し頂部には、幅方向の側面から切り込まれたスリット部が形成されており、
上記折曲げ部における上記一対の平行経路部に流れる上記被制御電流の主方向が互いに逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項11)。
【0017】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
少なくとも一方の上記部品の端子には、上記スリット部が形成されているため、上記端子に過電流が流れたとき、該端子をスリット部の延長線上において溶断させることができる。
そして、上記端子には一対の平行経路部を有する上記折曲げ部が形成されており、上記一対の平行経路部を流れる上記被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されている。そのため、上記一対の平行経路部の間には、被制御電流が流れている間、電磁力に基づく斥力が作用している。そのため、上記のごとく過電流によって上記折曲げ部の折返し頂部が溶断されたとき、2つの平行経路部は即座に互いに離れる方向に動くこととなる。
【0018】
その結果、溶断後において、2つの平行経路部を充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、溶断された2つの平行経路部の間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置の故障を最小限に抑制することができる。
【0019】
以上のごとく、本発明によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【0020】
第4の発明は、電気モータを駆動源として利用する車両であって、上記電気モータの駆動電力を生成するための電力変換装置を搭載してなり、該電力変換装置は請求項1〜9のいずれか一項に記載の電力変換装置であることを特徴とする車両にある(請求項12)。
本発明によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を搭載した車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記第1の発明(請求項1)において、上記電力変換装置としては、例えば、DC−DCコンバータやインバータ等がある。また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。
【0022】
また、上記接続部は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールの主電極端子と、該主電極端子に接続されるバスバーとの接続部であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記接続部に過電流が流れた際に早期に断線して、半導体モジュールの故障を最小限に抑制することができる。
上記半導体モジュールは、例えばIGBT素子等の半導体素子を内蔵してなる。
【0023】
また、上記接続部を構成する上記端子は、先端部の断面積が他の部分の断面積よりも小さいことが好ましい(請求項3)。
この場合には、接合部となる先端部の断面積が小さいために、この部分の抵抗値が大きくなる。それ故、過電流が流れたとき、上記接合部(先端部)におけるジュール熱を他の部分よりも大きくすることができ、確実に、上記接合部において溶断させることができる。これにより、過電流通過時における溶断個所を一定させることができ、溶断後の早期かつ確実な断線を実現することができる。
【0024】
また、上記2つの部品の端子は、互いに異なる厚みを有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、接続部の溶断後において、2つの端子が離れる方向に斥力が作用したとき、厚みの薄い方の端子が曲がることにより、電流の継続を確実に防止することができる。そして、溶断後における端子の屈曲方向が一定するため、電力変換装置における部品配置を、予め適切に設計しておくことができる。即ち、溶断後における端子と他の部品との短絡故障等を防ぐことができるよう、適切な部品配置を行うことができる。
【0025】
また、上記接続部は溶接されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記接続部を容易に形成することができる。
溶接は、例えば、TIG等のアーク溶接法によって行うことができる。
【0026】
また、上記接続部は、先端部を曲面形状としていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記接続部が溶断した際におけるアーク放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0027】
また、上記接続部は、先端部を曲率半径20mm以上の曲面形状としていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記接続部が溶断した際におけるアーク放電の発生を一層効果的に抑制することができる。
【0028】
また、上記接続部はリベットによって締結されていてもよい(請求項8)。
この場合には、過電流通過時にリベットにおいて溶断させることができ、溶断個所を安定させることができる。
【0029】
また、上記接続部を構成する上記端子のうち、少なくとも一方は、母材よりも抵抗値の高い金属からなるメッキ層を表面に形成してなることが好ましい(請求項9)。
この場合には、過電流通過時において、抵抗値の高いメッキ層の温度が特に高くなるため、上記メッキ層において溶断させることができ、溶断個所をより安定させることができる。
例えば、上記母材として銅(Cu)を採用した場合、上記メッキ層としては、ニッケル(Ni)、金(Au)等を用いることができる。
【0030】
次に、上記第2の発明(請求項10)において、隣合う中間経路部の間であって上記端子の一方の側面から切り込まれた上記切込部の先端部と、上記端子の他方の側面との間の距離は、流れる電流と導体の幅、厚さに応じて適宜決定される。
【0031】
次に、上記第3の発明(請求項11)において、上記折曲げ部における折返し頂部の上記スリット部を除く幅は、流れる電流と導体の厚さに応じて適宜決定される。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図7を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、直流電力と交流電力との間で電力の変換を行うインバータであり、該電力変換装置1によって制御される被制御電流の経路内に別部品同士の接続部4が形成されている。該接続部4は、具体的には、図1〜図3に示すごとく、半導体素子を内蔵した半導体モジュール2の主電極端子21と、該主電極端子21に接続されるバスバー3との接続部である。
【0033】
図2、図3に示すごとく、接続部4は、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3の端子(バスバ端子31)とを、先端部211、311同士が同じ方向を向くように重ね合わせると共に上記先端部211、311において接合してなる。
そして、図4に示すごとく、上記2つの部品の端子、即ち、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とを流れる上記被制御電流Iの主方向が逆向となるよう構成されている。
【0034】
図2に示すごとく、接続部4を構成する半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とは、先端部211、311の断面積が他の部分の断面積よりも小さい。本例においては、上記先端部211、311の形状を、略台形状としている。
また、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とは、互いに異なる厚みを有する。そして、主電極端子21の厚みをバスバ端子31の厚みよりも小さくしている。具体的には、主電極端子21の厚みを1mmとし、バスバ端子31の厚みを5mmとする。また、主電極端子21及びバスバ端子31の幅は、いずれも10mmであり、先端部211、311の幅は2mmとする。
また、半導体モジュール2の主電極端子21及びバスバー3は、いずれも銅からなる。
【0035】
そして、図2、図3に示すごとく、接続部4は溶接されている。即ち、主電極端子21及びバスバ端子31の先端部211、311において、溶接部40が形成されている。溶接は、例えば、TIG等のアーク溶接法によって行うことができる。
接続部4の先端部、即ち溶接部40は、曲率半径20mm以上の曲面形状を有する。
【0036】
半導体モジュール2は、IGBT等の半導体素子を内蔵したモジュール本体部20と、該モジュール本体部20から突出させた2本の主電極端子21と、該主電極端子21の突出方向と略180度異なる方向へ突出させた信号端子22とよりなる。
そして、上記2本の主電極端子21が、それぞれバスバー3のバスバ端子31に接続されている。
【0037】
また、図1、図6に示すごとく、電力変換装置1は、複数の半導体モジュール2を用いて構成されており、被制御電流が、主電極端子21から半導体モジュール2に入出されるよう、主電極端子21にバスバー3が接続されている。そして、各半導体モジュール2における一方の主電極端子21に接続されたバスバー3は、電気モータ11に接続され、他方の主電極端子に接続されたバスバー3は、電源(図示略)側に接続されている。
【0038】
また、半導体モジュール2の信号端子22は、半導体モジュール2のスイッチング動作を制御する制御回路(図示略)に接続されている。
そして、各半導体モジュール2のスイッチング動作によって、電源側から供給された直流電力を、交流電力に変換して、電気モータ11を駆動することができる。
また、上記電気モータ11を駆動源として利用する、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に、上記電力変換装置1を搭載することができる。
【0039】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記接続部4は、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とを先端部211、311同士が同じ方向を向くように重ね合わせていると共に、先端部211、311において接合されている。それ故、接続部4に過電流が流れたとき、先端部4において溶断させることができる。
【0040】
そして、図4、図5に示すごとく、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とを流れる被制御電流Iの主方向が逆向となるよう構成されている。即ち、上記接続部4は互いに同じ方向を向いた先端部211、311において接合されているため、これらを流れる被制御電流Iの主方向は逆向きとなる。なお、先端の溶接部40以外においても主電極端子21とバスバ端子31とが接触することはあるが、これらの接触部分は接触抵抗が大きくなるため、被制御電流Iの主な流れは、先端部(溶接部40)を通ることとなる。この被制御電流の主な流れの方向が「主方向」である。
【0041】
このように主電極端子21とバスバ端子31とを流れる被制御電流Iの主方向が逆向きとなるため、2つの端子(主電極端子21とバスバ端子31)の間には、被制御電流Iが流れている間、電磁力に基づく斥力Fが作用している。即ち、図5に示すごとく、主電極端子21とバスバ端子31とに互いに逆向きの電流Iが流れている場合、各端子の周囲には、互いに逆向きの磁界Bが発生する。この逆向きの磁界Bによって、電磁力に基づく斥力Fが発生する。
【0042】
そのため、上記のごとく過電流によって接続部4が溶断されたとき、主電極端子21とバスバ端子31とは即座に互いに離れる方向に動くこととなる。その結果、溶断後において、図7に示すごとく、主電極端子21とバスバ端子31とを充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、主電極端子21とバスバ端子31との間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置1の故障を最小限に抑制することができる。
【0043】
また、接続部4を構成する主電極端子21とバスバ端子31とは、先端部211、311の断面積が他の部分の断面積よりも小さい。即ち、接合部(溶接部40)となる先端部211、311の断面積が小さいために、この部分の抵抗値が大きくなる。それ故、過電流が流れたとき、溶接部40(先端部211、311)におけるジュール熱を他の部分よりも大きくすることができ、確実に、上記溶接部40において溶断させることができる。これにより、過電流通過時における溶断個所を一定させることができ、溶断後の早期かつ確実な断線を実現することができる。
【0044】
また、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とは、互いに異なる厚みを有し、主電極端子21の厚みをバスバ端子31の厚みよりも小さくしている。これにより、図7に示すごとく、接続部4の溶断後において、2つの端子が離れる方向に斥力が作用したとき、厚みの薄い方の端子である主電極端子21が曲がることにより、電流の継続を確実に防止することができる。そして、溶断後における端子の屈曲方向が一定するため、電力変換装置1における部品配置を、予め適切に設計しておくことができる。即ち、溶断後における端子と他の部品との短絡故障等を防ぐことができるよう、適切な部品配置を行うことができる。
【0045】
また、上記接続部4の先端部(溶接部40)が曲面形状であるため、上記接続部4が溶断した際におけるアーク放電の発生を効果的に抑制することができる。特に溶接部40の曲面形状は曲率半径20mm以上を有するため、接続部4が溶断した際におけるアーク放電の発生を一層効果的に抑制することができる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置及びこれを搭載した車両を提供することができる。
【0047】
(実施例2)
本例は、接続部4を構成する半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31とのうち、少なくとも一方の表面に、母材よりも抵抗値の高い金属からなるメッキ層を形成した例である。
即ち、上記母材として銅(Cu)を採用した場合、メッキ層としては、ニッケル(Ni)、金(Au)等を用いることができる。
その他は、実施例1と同様である。
【0048】
本例の場合には、過電流通過時において、抵抗値の高いメッキ層の温度が特に高くなるため、上記メッキ層において溶断させることができ、溶断個所をより安定させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバー3のバスバ端子31との接続部4をリベット41によって締結した例である。
即ち、主電極端子21の先端部211とバスバ端子31の先端部311に、開口部を設けておき、その開口部を合せるようにバスバ端子31を重ね合わせて、開口部にリベット41を挿通して締結する。なお、リベット41の材質としては、鉄や銅を用いることができる。
その他は、実施例1と同様である。
【0050】
本例の場合には、過電流通過時にリベット41において溶断させることができ、溶断個所を安定させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0051】
(実施例4)
本例は、図9に示すごとく、半導体モジュール2の主電極端子21に、該主電極端子21の幅方向の側面から切り込まれた切込部212を千鳥状に3箇所形成した例である。
そして、3個の切込部212の間に形成された2本の中間経路部213を流れる被制御電流の主方向が互いに逆向となるよう構成されている。
【0052】
また、2本の中間経路部213の間であって主電極端子21の一方の側面から切り込まれた切込部212の先端部と、主電極端子21の他方の側面との間の距離W1は、流れる電流と導体の長さ、厚さに応じて適宜決定される。
また、上記切込部212は、主電極端子21の長さ方向に対して直角となる方向に形成されている。そして、切込部212の形成間隔L1は、流れる電流と導体の幅、厚さに応じて適宜決定される。
【0053】
なお、本例においては、半導体モジュール2の主電極端子21とバスバ端子31との接続部4の状態としては、実施例1(図2、図3)と同様に先端部211、311同士が同じ方向を向く必要は必ずしもない。
その他は、実施例1と同様である。
【0054】
次に、本例の作用効果につき説明する。
半導体モジュール2の主電極端子21には切込部212が形成されているため、主電極端子21に過電流が流れたとき、主電極端子21を切込部212の延長線上において溶断させることができる。
そして、隣合う中間経路部213を流れる被制御電流Iの主方向が逆向となるよう構成されているため、隣合う中間経路部213の間には、被制御電流Iが流れている間、電磁力に基づく斥力が作用している。そのため、上記のごとく過電流によって主電極端子21が溶断されたとき、2つの中間経路部213は即座に互いに離れる方向に動くこととなる。
【0055】
その結果、溶断後において、2つの中間経路部213を充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、2つの主電極端子21の間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置1の故障を最小限に抑制することができる。
【0056】
以上のごとく、本例によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0057】
(実施例5)
本例は、図10、図11に示すごとく、半導体モジュール2の主電極端子21に、互いに略平行となる一対の平行経路部214が構成されるように折り曲げられた折曲げ部215を形成した例である。
折曲げ部215における折返し頂部216には、幅方向の側面から切り込まれたスリット部217が形成されている。
そして、折曲げ部215における一対の平行経路部214に流れる被制御電流Iの主方向が互いに逆向となるよう構成されている。
【0058】
折曲げ部215は、主電極端子21の長手方向に対して略垂直に突出するように屈曲形成されており、突出量L2は、流れる電流と導体の幅、厚さに応じて適宜決定される。
また、スリット部217は、折返し頂部216の両側面から形成されており、一対のスリット部217の間の距離W2は流れる電流と導体の幅、厚さに応じて適宜決定される。
更に、一対の平行経路部214の間隔L3も、流れる電流と導体の幅、厚さ、長さに応じて適宜決定される。
その他は、実施例1と同様である。
【0059】
次に、本例の作用効果につき説明する。
半導体モジュール2の主電極端子21には、上記スリット部217が形成されているため、主電極端子21に過電流が流れたとき、主電極端子21をスリット部217の延長線上において溶断させることができる。
そして、主電極端子21には一対の平行経路部214を有する折曲げ部215が形成されており、一対の平行経路部214を流れる被制御電流Iの主方向が逆向となるよう構成されている。そのため、一対の平行経路部214の間には、被制御電流Iが流れている間、電磁力に基づく斥力が作用している。そのため、上記のごとく過電流によって折曲げ部215の折返し頂部216が溶断されたとき、2つの平行経路部214は即座に互いに離れる方向に動くこととなる。
【0060】
その結果、溶断後において、2つの平行経路部214を充分に離して、両者の間に電流が流れ続けることを防ぐことができる。また、溶断された2つの平行経路部214の間にアーク放電が生ずることを防ぐことができ、アーク放電による電流継続をも防ぐことができる。
これにより、過電流による電力変換装置1の故障を最小限に抑制することができる。
【0061】
以上のごとく、本例によれば、過電流が流れた際に早期に断線して故障を最小限に抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0062】
上記実施例4、5においては、切込部212、折曲げ部215は、半導体モジュール2の主電極端子21に設けているが、場合によっては、これらをバスバ端子31(図2、図3参照)に設けることもできる。
また、上記各実施例においては、半導体モジュールとバスバーとの接続部の構造について説明したが、これらの接続部に限らず、電力変換装置における他の接続部にも、本発明の構成を適用することはできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1における、電力変換装置の一部を説明する斜視図。
【図2】実施例1における、半導体モジュールとバスバーの斜視図。
【図3】実施例1における、半導体モジュールとバスバーの側面図。
【図4】実施例1における、接続部における被制御電流の流れを示す説明図。
【図5】実施例1における、接続部に働く電磁力に基づく斥力の説明図。
【図6】実施例1における、電力変換装置の回路説明図。
【図7】実施例1における、半導体モジュールの主電極端子とバスバーの端子との断線時の側面説明図。
【図8】実施例3における、半導体モジュールとバスバーの側面図。
【図9】実施例4における、半導体モジュールの主電極端子との正面図。
【図10】実施例5における、半導体モジュールの主電極端子の斜視図。
【図11】図10のA−A線矢視断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
21 主電極端子
211 先端部
3 バスバー
31 バスバ端子
311 先端部
4 接続部
40 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品同士の接続部が形成されており、
該接続部は、一方の部品の端子と他方の部品の端子とを、先端部同士が同じ方向を向くように重ね合わせると共に上記先端部において接合してなり、
上記2つの部品の端子を流れる上記被制御電流の主方向が逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記接続部は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールの主電極端子と、該主電極端子に接続されるバスバーとの接続部であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記接続部を構成する上記端子は、先端部の断面積が他の部分の断面積よりも小さいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記2つの部品の端子は、互いに異なる厚みを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記接続部は溶接されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5において、上記接続部は、先端部を曲面形状としていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6において、上記接続部は、先端部を曲率半径20mm以上の曲面形状としていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記接続部はリベットによって締結されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記接続部を構成する上記端子のうち、少なくとも一方は、母材よりも抵抗値の高い金属からなるメッキ層を表面に形成してなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品の端子同士の接続部が形成されており、
少なくとも一方の上記部品の端子には、該端子の幅方向の側面から切り込まれた切込部が千鳥状に3箇所以上形成されており、これらの間に形成された複数の中間経路部のうち、隣合う中間経路部を流れる上記被制御電流の主方向が互いに逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
交流電力と直流電力との間、或いは直流電力同士若しくは交流電力同士の間で電力の変換を行う電力変換装置であって、
該電力変換装置によって制御される被制御電流の経路内に別部品の端子同士の接続部が形成されており、
少なくとも一方の上記部品の端子は、互いに略平行となる一対の平行経路部が構成されるように折り曲げられた折曲げ部を形成してなると共に、該折曲げ部における折返し頂部には、幅方向の側面から切り込まれたスリット部が形成されており、
上記折曲げ部における上記一対の平行経路部に流れる上記被制御電流の主方向が互いに逆向となるよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
電気モータを駆動源として利用する車両であって、上記電気モータの駆動電力を生成するための電力変換装置を搭載してなり、該電力変換装置は請求項1〜11のいずれか一項に記載の電力変換装置であることを特徴とする車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−259685(P2007−259685A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130247(P2006−130247)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】