説明

電動機

【課題】出力の低下を生じることなく安定した回転速度検出が可能な電動機を提供する。
【解決手段】電動機は、ステータ鉄心1と、ステータ鉄心の軸方向の両側に固定された第1、第2ブラケット5、6と、軸受9を保持し第1ブラケットに取り付けられた第1軸受ハウジング7と、軸受10を保持し第2ブラケットに取り付けられた第2軸受ハウジング8と、軸受により回転自在に支持され回転軸11、およびこの回転軸に取り付けられたロータ鉄心12を有するロータと、ロータ鉄心と第1軸受ハウジングとの間で回転軸に設けられた通風ファン18と、通風ファンの外周部と第1ブラケットとの間に形成されたラビリンス構造部32と、通風ファンと第1軸受ハウジングおよび第1ブラケットと間に形成され、第1軸受ハウジングの吸気口19から導入された外気を第1ブラケットの外周部まで導く通風路5aと、通風ファンに固定され通風路内に位置する被検出部22と、通風路内に被検出部と対向して設けられ、被検出部を検知するセンサ21と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、鉄道車両を駆動する車両用の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両(以下、車両と称する)では、車体の下に配置された台車に主電動機(以下、「電動機」と呼ぶ)を装荷して、この電動機の回転力を継手と歯車装置を介して車輪に伝達して車両を走行させている。
【0003】
メインテナンス周期の延長、即ち、省メインテナンス性の高い電動機のニーズが高まっている。このようなニーズを満たすため、全閉型の電動機の開発が進められている。
【0004】
全閉型の電動機は、例えば円筒状のフレームの内周側に設けられステータコイルを有するステータ鉄心と、フレームの両端側に取付けられ、密閉ケースを構成したブラケットおよびハウジングと、を備え、これらブラケットおよびハウジングにそれぞれ軸受が内蔵されている。密閉ケース内には、ロータ軸が延在され、その両端部は、軸受によって回転自在に支持されている。ロータ軸の中央部にロータ鉄心が取付けられ、ステータ鉄心の内側に位置している。また、密閉ケース内で、ロータ軸に通風ファンが取り付けられている。通風ファンの外周部とブラケットとの間にラビリンスシール部を形成している。ブラケットの軸受の外周部分に吸気口が形成され、この吸気口から外気が通風ファンの中心部分に導かれブラケットの通風路を通って外部に排出される。
【0005】
上記のように構成された電動機は、外気が機内を流通しないため、機内が塵埃で汚損されることがなく、内部清掃のための電動機の分解を無くして省力化を図ることができる。
【0006】
また、電動機は、回転制御や車両ブレーキ制御を行うため、ロータと一体に回転する被検知部と、この被検知部を検知する速度センサとを備えている。これらの被検知部および速度センサは、密閉ケースの外側に設けられ、外気を遮断するためのカバーにより覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−220417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、鉄道車両用の電動機は、台車の狭い取付け空間に設置されるため、寸法の制約がある。そのため、この寸法制約内で上記のようなカバーにより覆われた速度センサおよび被検知部を密閉ケースの外側に取付ける場合、電動機の軸方向寸法(ステータ鉄心およびロータ鉄心の軸方向寸法)が小さくなり、結果的に電動機の出力が少なくなってしまう。
【0009】
この発明の課題は、出力の低下を生じることなく安定した回転速度検出が可能な電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、電動機は、ステータ鉄心と、前記ステータ鉄心の軸方向の両側に固定された第1ブラケットおよび第2ブラケットと、内径部に軸受を保持し、前記第1ブラケットに取り付けられた第1軸受ハウジングと、内径部に軸受を保持し、前記第2ブラケットに取り付けられた第2軸受ハウジングと、前記2つの軸受により回転自在に支持され前記第1、第2ブラケット内に延在する回転軸、およびこの回転軸に取り付けられ前記ステータ鉄心の内側に隙間を置いて対向するロータ鉄心を有するロータと、前記ロータ鉄心と前記第1軸受ハウジングとの間で前記回転軸に設けられた通風ファンと、前記通風ファンの外周部と前記第1ブラケットとの間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、前記通風ファンと前記第1軸受ハウジングおよび第1ブラケットと間に形成され、前記第1軸受ハウジングの軸受の外周側に形成された吸気口から導入された外気を前記第1ブラケットの外周部まで導く通風路と、前記通風ファンに固定され前記通風路内に位置する被検出部と、前記通風路内に前記被検出部と対向して設けられ、前記被検出部を検知するセンサと、を有する回転検出器と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る電動機を示す縦断面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿った前記電動機の横断面図。
【図3】図3は、第2の実施形態に係る電動機の横断面図。
【図4】図4は、第3の実施形態に係る電動機を示す縦断面図。
【図5】図5は、第4の実施形態に係る電動機を示す縦断面図および吐出口を示す正面図。
【図6】図6は、第5の実施形態に係る電動機を示す縦断面図および吐出口を示す断面図。
【図7】図7は、第5の実施形態における変形例に係る電動機の吐出口部分を示す正面図および断面図。
【図8】図8は、第6の実施形態に係る電動機を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全閉型の電動機を示す縦断面図、図2は、図1の線A−Aに沿った電動機の駆動側の横断面を示している。図1に示すように、この電動機は、筒状、例えば、円筒状のステータ鉄心1を備えている。ステータ鉄心1の軸方向両端面には、環状の一対の鉄心押さえ3、3が固定されている。ステータ鉄心1の外周には、複数の繋ぎ板2が配設され、これらの繋ぎ板2は、それぞれステータ鉄心1の軸方向に延び、2つの鉄心押さえ3、3を繋ぎ固定している。複数の繋ぎ板2は、ステータ鉄心1の円周方向に間隔を置いて配置されているとともに、各繋ぎ板2とステータ鉄心1の外周面とにより冷却通風路2aが規定されている。
【0014】
ステータ鉄心1の駆動端側に位置した鉄心押さえ3には、アルミニウム合金等で形成されたほぼ円筒状の第1ブラケット5が取り付けられている。第1ブラケット5の先端側には、環状のベアリングブラケット(第1軸受ハウジング)7が同軸的にボルトにて締結されている。ベアリングブラケット7の中央部には、第1軸受として例えば、ころ軸受9を内蔵した第1軸受部30がボルトにて締結されている。
【0015】
ステータ鉄心1の反駆動端側に位置した鉄心押さえ3には、アルミニウム合金等で形成されたほぼお椀形状の第2ブラケット6が取り付けられている。第2ブラケット6の中央部には、第2軸受として例えば玉軸受10を内蔵した軸受ハウジング8がボルトにて締結されている。
【0016】
ステータ鉄心1、鉄心押え3、3、第1ブラケット5、ベアリングブラケット7、第2ブラケット6、第1軸受部30、軸受ハウジング8により、内部が密閉されたケース(機体)が構成されている。
【0017】
ステータ鉄心1は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。ステータ鉄心1の内周部には、それぞれ軸方向に延びた複数のスロットが形成され、これらのスロットにステータコイル17が埋め込まれている。ステータコイル17のコイルエンドはステータ鉄心1の両端面から軸方向に張り出している。ステータ鉄心1およびステータコイル17によりステータ(固定子)が構成されている。
【0018】
ステータ鉄心1の内側に、一様な隙間Gを置いて、円柱形状のロータ鉄心12が同軸的に配置されている。ロータ鉄心12の中心部に回転軸11が同軸的に取り付けられ、その両端部はころ軸受9および玉軸受10によって回転自在に支持されている。これにより、回転軸11は、ケース内に同軸的に延在している。回転軸11およびロータ鉄心12はロータ16を構成している。回転軸11の駆動側端部11aは機外に延出し、この部分に駆動歯車装置を接続するための継手が取り付けられる。
【0019】
ロータ鉄心12は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。ロータ鉄心12は、回転軸11に取り付けられた一対の鉄心押え13a、13bにより、軸方向両側面から挟まれるように支持されている。鉄心押え板13a、13bは、環状に形成され、その外径は、ロータ鉄心12の外径よりも僅かに小さく形成されている。
【0020】
ロータ鉄心12の外周部には、それぞれ軸方向に延びる複数の溝が形成され、各溝には、ロータバー14が埋め込まれている。ロータバー14の両端部はロータ鉄心12から張出し、その張出部分をエンドリング15、15で一体に接続して誘導電動機のかご形ロータを形成している。ステータコイル17に通電することにより、ロータ鉄心12が誘導されて回転し、回転軸11がロータ鉄心12と一体に回転される。
【0021】
なお、回転子の発熱を抑え、よりコンパクトな電動機を実現するために、かご型ロータに代わって、永久磁石をロータ鉄心に挿入して構成する永久磁石形電動機としてもよい。
【0022】
駆動端側の第1軸受部30とロータ鉄心12との間で回転軸11に通風ファン18が同軸的に取付けられ、回転軸11と一体に回転自在となっている。通風ファン18は、ほぼロート形状に形成され、ロータ鉄心12側から第1ブラケット5に向かって傾斜して延びた主板18aと、主板18aのベアリングブラケット7と対向する外面に設けられた複数の羽根18bとを有している。
【0023】
主板18aは、鉄心押え13aを介して、ロータ鉄心12と多くの面で接触している。また、主板18aの外周縁部と第1ブラケット5の機内側の張出部の内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の略二段構造に形成され、ラビリンス構造部32を形成している。通風ファン18において、ベアリングブラケット7と対向する外面に複数のフィンが形成されている。
図1および図2に示すように、複数の羽根18bは主板18aの外周部に設けられ、それぞれ放射状に延びているとともに、主板18aの円周方向に等間隔を置いて設けられている。
【0024】
図1に示すように、ベアリングブラケット7に、複数の吸気口19が形成されている。これらの吸気口19は第1軸受部30の外側で、回転軸11と同芯の円上に並んで設けられている。また、ベアリングブラケット7の中心部は、回転軸11の軸方向に沿って機内側に突出する突出部7aを有し、その突出端に、例えば、環状の吐出口20が形成されている。吐出口20は回転軸11と同軸的に形成されている。吐出口20は回転軸11の近傍で、かつ、通風ファン18の主板18aの中心部に隣接している。更に、ベアリングブラケット7には、吸気口19から回転軸11の軸方向に沿って延びた後、主板18aの中心部分、つまり、回転軸11に向かって、吐出口20まで延びる、複数の案内流路23が形成されている。
【0025】
主板18aの外面とベアリングブラケット7の内面との間、および第1ブラケット5の外周部に亘って通風路5aが形成されている。この通風路5aは、主板18aの中心部から第1ブラケット5の外周に亘って放射状に延びている。なお、通風路5aは、通風ファン18の主板18aおよびラビリンス構造部32により機体内部と仕切られてる。また、通風ファン18の羽根18bは通風路5a内に位置している。更に、通風路5aは、ステータ鉄心1と繋ぎ板2とにより形成された複数の冷却通風路2aに連通している。
【0026】
電動機の運転時には、ステータコイル17およびロータバー14が発熱するため、冷却用外気を通風路5aに積極的に通風させて、電動機の温度が上昇しないようにして性能が維持できるようにしている。この冷却作用は次の通りである。
【0027】
電動機が回転すると回転軸11と一体に通風ファン18が回転する。通風ファン18の羽根18bの部分に風が発生し、べアリングブラケット7の吸気ロ19から冷たい外気を吸い込み、案内流路23および吐出口20を通して、回転軸11近く、および主板18aの中心部へ導く。冷却風は、更に、主板18aの中心部から主板18aの外面に沿って通風路5a内を外周側に流れる。その際、ロータバー14で発生する熱を、ロータ鉄心12、鉄心押え13a、通風ファンの主板18aを経由して伝熱させ、主板18aおよび羽根18bから冷却風に放熱し、ロータバー14を冷却することが可能になる。同時に、羽根18bによって発生する風は、第1ブラケット5の通風路5aから複数の冷却通風路2aに流入し、これらの冷却通風路2aを通ってステータ鉄心1を冷却した後、外部に排出される。ステータコイル17で発生する熱は、ステータ鉄心1に伝わり、ステータ鉄心1の外周面から冷却風に放熱される。また、繋ぎ板2で囲まれていないステータ鉄心1の表面からは、直接、外気に自然放熱して発熱を更に抑制している。これにより、ステータコイル17を冷却することが可能になる。
【0028】
一方、電動機は、回転制御用や車両ブレーキ制御用に、電動機の回転数を検知する回転検出器を備えている。回転検出器は、例えば、磁気センサであるPGセンサ(パルスジェネラチング)センサ21と、回転軸11と一体に回転し、PGセンサにより検知される被検知部50と、を備えている。
【0029】
図1および図2に示すように、PGセンサ21は、第1ブラケット5の外周部に取り付けられ、第1ブラケットから通風路5a内に突出している。PGセンサ21は、回転軸11に対して径方向に延び、その感知端は、通風路5a内に位置している。
【0030】
被検知部50は、磁性体、例えば、鉄で形成された環状の歯車板22を有している。この歯車板22は、その外周部分が凹凸に形成され、円周方向に所定のピッチで並んだ多数の歯53を構成している。歯車板22は、通風ファン18の主板18aの外周縁部、ここでは、ラビリンス構造部32の外側に固定され、回転軸11と同軸的に位置しているとともに、通風路5a内に位置している。また、歯車板22は、回転軸11の径方向に沿ってPGセンサ21と並んで配置されている。PGセンサ21は、歯車板22に対して径方向の外側に配置され、その検知端は、所定の間隔、例えば、約1mmの隙間を置いて、歯53と対向している。
【0031】
PGセンサ21は、鉛直方向について、吐出口20よりも上方、ここでは、回転軸11の中心を通る水平線Bよりも上方に設けられている。本実施形態では、PGセンサ21は、鉛直方向において、回転軸11の真上に設けられている。
【0032】
上記構成において、電動機が作動し、回転軸11および通風ファン18が回転すると、歯車板22も通風ファン18と一体に回転する。歯車板22の歯53がPGセンサ21の検出端と対向する位置を通過するごとに、PGセンサ21はこの歯53を感知しパルス信号を出力する。そして、PGセンサ21から出力されたパルス信号を検出することにより、電動機の回転数、回転速度を検知することができる。
【0033】
上記のように構成された電動機は、ステータ鉄心1に設けられた取付け腕部54を鉄道車両の台車枠にボルトで締結固定し、回転軸11の駆動端部11aを図示しない継ぎ手を介して駆動用歯車装置に結合することにより、車両に設定される。そして、電動機の回転力を駆動用歯車装置から車輪に伝達し、車両を走行させる。
【0034】
以上のように構成された全閉型の電動機によれば、ステータコイル17、ロータバー14、およびこれらを含む機内は、ステータ4、第1ブラケット5、通風ファン18の主板18a、軸受ハウジング8、第2ブラケット6で囲まれ、更に、通風ファン18と第1ブラケット5との間に設けられたラビリンス構造部32により、外気と遮断されている。また、ステータコイル17の発熱は、ステータ鉄心1の外周面、および冷却通風路2aを流れる冷却風を介して外気に放熱し、ロータバー14の発熱は通風ファン18から通風路5aを流れる冷却風に放熱される。そのため、熱の影響が少なくなり全閉化が実現できる構造となっている。このように改善された全閉型の電動機は、機内への外気導入がないため、ろ過器や機内の清掃が不要になり、格段に保守の低減を図ることができる。更に、機内が汚れないことで、ステータコイルの絶縁性能がいつまでも良好に保たれる。
【0035】
電動機の回転速度を検出するPGセンサ21および歯車板22は、通風ファン18とベアリングブラケット7との間に形成された通風路5a内に設けられている。そのため、これらの回転検出器を機外に設けてカバーで覆う場合に比較して、電動機の軸方向寸法増大を抑制することができる。従って、回転検出器を設けた場合でも、ステータ鉄心およびロータ鉄心の軸方向寸法を小さくする必要がなく、電動機の出力低下を生じることがない。
【0036】
また、PGセンサ21および歯車板22は、回転軸11の径方向に並んで設けられているため、動作時の熱によりロータ16が軸方向に熱膨張した場合でも、PGセンサと歯車板22とが軸方向に僅かにずれるだけで、これらの間の隙間を所定の値に維持することができる。これにより、PGセンサ21により安定して速度検出を行うことができる。
【0037】
PGセンサ21は、通風路5a内で、歯車板22の外側、かつ、吐出口20よりも鉛直方向上方に設けられている。これにより、PGセンサ21と歯車板22との間の異物噛み込みによる回転検出器の損傷を大幅に低減でき、理想的な回転検出器付き全閉型電動機を提供できる。すなわち、電動機が回転すると、通風ファン18が回転し、吸気口19から外気が取り込まれ、吐出口20から通風路5aおよび冷却通風路2aを通って流れる。この際、外気とともに塵埃、砂塵(約0.5以上の大きな塵埃)等が通風路5aに取り込まれる場合がある。図2に示すように、吸気口19から入った塵挨は吐出し口20で一度回転軸11近傍めがけて流れる。この時、小さな塵挨(約0.5mm未満の塵埃)S1は、羽根18bの吸い込み作用で回転軸11近傍から大きく反転して放射上に吹き飛ばされ、冷却風となって第1ブラケット5の通風路5aを通り冷却通風路2aから外部に吐き出される。大きな砂塵S2は、回転軸11等に当った瞬間、速度が落ち、自重も加わり、回転軸11より下の方へ落下する。つまり、PGセンサ21と歯車板22との隙間部分に噛み込むような大きな砂塵は、回転軸11より下の冷却通風路2aを通って外部に吐き出される。したがって、回転軸11の中心よりも鉛直方向上方にPGセンサ21を設けることにより、砂塵等がPGセンサ21と歯車板22との間に到達することがなく、噛み込むのを防止することができる。
以上のことから、出力の低下を生じることなく安定した回転速度検出が可能な全閉型の電動機が得られる。
【0038】
次に、他の実施形態に係る電動機について説明する。
以下に述べる実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0039】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る全閉型の電動機の回転検出器部分を示す断面図である。第2の実施形態では、回転検出器を構成するPGセンサの配設位置が、第1の実施形態と相違している。
【0040】
第2の実施形態によれば、PGセンサ21は、第1ブラケット5の外周部において、回転軸11の鉛直方向真上からやや下方にずれた位置に設けられている。しかし、この場合においても、PGセンサ21は、鉛直方向に対して、吐出口20よりも上方に設けられている。ステータ鉄心1の外周に設けられた4つの冷却通風路2aの内、上部の一箇所の冷却通風路を閉じ、その位置にPGセンサ21が設けられている。PGセンサ21は、第1ブラケット5に固定され、通風路5a内に延出している。更に、PGセンサ21は、歯車板22と回転軸11の径方向に並んで配置されている。
【0041】
冷却通風路2aとPGセンサ21との位置と数は、種々変更可能である。上記のように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る全閉型の電動機の縦断面を示している。第3の実施形態では、電動機は、回転軸11の反駆動側にファン60を備えている。
【0043】
ファン60は、反駆動端側の軸受10とロータ鉄心12との間で鉄心押さえ13bに同軸的に取付けられ、回転軸11と一体に回転自在となっている。ファン60は、ほぼロート形状に形成された主板60aと、主板の外面の外周部に設けられた複数の羽根60bとを有している。複数の羽根60bは、それぞれ放射状に延びているとともに、円周方向に所定の間隔を置いて設けられている。
【0044】
主板60aは、鉄心押え13bを介して、ロータ鉄心12と多くの面で接触している。また、主板60aの外周縁部と第2ブラケット6の機内側の張出部の内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の略二段構造に形成され、ラビリンス構造部62を形成している。このラビリンス構造部62により、電動機の機内と外気とを遮断し、電動機の全閉化を図っている。
【0045】
主板60aの外面と軸受ハウジング8の内面との間に通風路64が形成され、更に、軸受ハウジング8の軸受10の外側に、複数の吸気孔66が形成され、通風路64に連通している。また、第2ブラケット6で軸受ハウジング8の外周側に複数の吐出口68が形成され、通風路64に連通している。
【0046】
回転軸11と一体にファン60が回転すると、ファン60の羽根60bにより、吸気孔66から外気を吸い込み、通風路64を通った後、吐出口68から機外に吐き出す。ロータバー14の発熱をロータ鉄心12と鉄心押え13bを介して伝熱させ、主板60aの外面から冷却風に放熱させる。回転検出器を構成するPGセンサ21および歯車板22は、第1の実施形態と同様に、駆動側の通風路5a内に設けられている。
上記第3の実施形態によれば、より冷却性能の向上した全閉型の電動機が得られる。また、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
なお、回転検出器は、回転軸11の駆動側に限らず、反駆動側に設けてもよい。この場合、歯車板は、ファン60に取り付けられ、反駆動側の通風路内に配置される。また、PGセンサは、第2ブラケット6あるいは軸受ハウジング8に取り付けられ、通風路内に配置される。
【0048】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態に係る全閉型の電動機の縦断面および吐出口の正面図を示している。第4の実施形態では、取り込んだ冷却風を通風路5aに送り出す吐出口20の構成が第1の実施形態と相違している。
【0049】
図5に示すように、ベアリングブラケット7は、その中央部で軸受9の周囲に設けられ機内側に突出するほぼ円筒状の突出部7aを有し、その突出端に円環状の吐出口20が形成されている。吐出口20は、回転軸11の中心に対して鉛直方向上方に偏心して形成されている。すなわち、突出部7aの鉛直方向上側の約半分は、下側の約半分よりも、通風ファン18の主板18a側に接近して位置している。これにより、通風路5aの内、鉛直方向の上側、つまり、PGセンサ21側に位置する部分は、下側の通風路よりも幅が狭くなっている。
【0050】
このような構成とすることにより、吸気口19から冷却風とともに砂塵等の大きな塵埃が取り込まれた場合でも、これらの塵埃が幅の狭い上側の通風路5aに流れ難くなり、PGセンサ21へ到達することをより確実に防止することが可能となる。
【0051】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態に係る全閉型の電動機の縦断面および吐出口を拡大して示す断面図である。第5の実施形態では、取り込んだ冷却風を通風路5aに送り出す吐出口20の構成が第1の実施形態と相違している。
【0052】
図6に示すように、ベアリングブラケット7は、その中央部で軸受9の周囲に設けられ機内側に突出するほぼ円筒状の突出部7aを有し、その突出端に円環状の吐出口20が形成されている。吐出口20は、回転軸11の中心と同軸に形成されている。突出部7aの鉛直方向上側部分は、下側部分よりも、通風ファン18の主板18a側に延出している。これにより、吐出口20の上側部分は、下側部分よりも回転軸11に接近し、かつ、より回転軸の中心側、つまり、PGセンサ21と反対側に向いている。本実施形態では、吐出口20は全周が連続して形成され、回転軸11に対して斜めに傾斜している。
【0053】
このような構成とすることにより、吸気口19から冷却風とともに砂塵等の大きな塵埃が取り込まれた場合でも、これらの塵埃を吐出口20から鉛直方向の下向きに吐き出すことができる。従って、塵埃を上側の通風路5aに流れ難くなり、PGセンサ21へ到達することをより確実に防止することが可能となる。
【0054】
上記構成では、吐出口20は全周が連続して形成されているが、図7に示すように、突出部7aの鉛直方向上側半分のみを、下側部分よりも、通風ファン18の主板18a側に延出してもよい。これにより、吐出口20の上側半分が、下側半分よりも回転軸11に接近し、かつ、より回転軸の中心側、つまり、PGセンサ21と反対側に向いている。このような構成としても、上記と同様に、塵埃を上側の通風路5aに流れ難くなり、PGセンサ21へ到達することをより確実に防止することが可能となる。
【0055】
(第6の実施形態)
図8は、第6の実施形態に係る全閉型の電動機の縦断面を示している。第6の実施形態では、歯車板22およびPGセンサの取り付け位置が、第1の実施形態と相違している。図8に示すように、歯車板22は、円筒状に形成され、通風ファン18の羽根18bに固定されている。歯車板22は、回転軸11と同軸的に配置され、通風路5a内に位置している。歯車板22のベアリングブラケット7側の端は、全周に渡って凹凸に形成され複数の歯53を構成している。
【0056】
PGセンサ21は、ベアリングブラケット7に取り付けられ、回転軸11とほぼ平行な方向に沿って通風路5a内に延出している。PGセンサ21の検知端は、歯車板22の歯53と所定の隙間、例えば、約1mmの隙間を置いて対向している。また、PGセンサ21は、鉛直方向について、回転軸11の中心よりも上方に、ここでは、吐出口20よりも上方に設けられている。このように、PGセンサ21は、第1ブラケット5の外周部に限らず、他の位置に設けても良い。
【0057】
上記のように構成された第6の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様に、PGセンサ21と歯車板22との間の異物噛み込みによる回転検出器の損傷を大幅に低減でき、更に、回転検出器付き全閉型電動機を提供できる。
そして、上述した第2ないし第6の実施形態においても、出力の低下を生じることなく安定した回転速度検出が可能な全閉型の電動機が得られる。
【0058】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施形態において、回転検出器は、PGセンサに限らず、光学センサ等の他のセンサを用いてもよい。第1軸受および第2軸受は、ころ軸受と玉軸受としたが、反対に構成してもよい。また、軸受の組み合わせは、これに限らず、鍔付きころ軸受ところ軸受の組合せとしてもよい。
【0059】
通風ファンは、羽根に加えて、複数のフィンを備えていてもよい。回転軸の反駆動側に設けられたファンは、羽根に代えて、フィンを備える構成としてもよい。電動機は、フレームを持たない構造に限らず、フレーム構造の電動機に適用してもよい。この場合、フレームの一部を冷却通風路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ステータ鉄心、2a…冷却通風路、5…第1ブラケット、5a…通風路、
6…第2ブラケット、7…ベアリングブラケット、7a…突出部、
8…軸受ハウジング、9…ころ軸受、10…玉軸受、11…回転軸、
12…ロータ鉄心、13a、13b…鉄心押さえ、16…ロータ、
17…ステータコイル、18…通風ファン、18a…主板、18b…羽根、
19…吸気口、20…吐出口、21…PGセンサ、22…歯車板、23…案内流路、
32、62…ラビリンス構造部、53…歯、60…ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ鉄心と、
前記ステータ鉄心の軸方向の両側に固定された第1ブラケットおよび第2ブラケットと、
内径部に軸受を保持し、前記第1ブラケットに取り付けられた第1軸受ハウジングと、
内径部に軸受を保持し、前記第2ブラケットに取り付けられた第2軸受ハウジングと、
前記2つの軸受により回転自在に支持され前記第1、第2ブラケット内に延在する回転軸、およびこの回転軸に取り付けられ前記ステータ鉄心の内側に隙間を置いて対向するロータ鉄心を有するロータと、
前記ロータ鉄心と前記第1軸受ハウジングとの間で前記回転軸に設けられた通風ファンと、
前記通風ファンの外周部と前記第1ブラケットとの間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、
前記通風ファンと前記第1軸受ハウジングおよび第1ブラケットと間に形成され、前記第1軸受ハウジングの軸受の外周側に形成された吸気口から導入された外気を前記第1ブラケットの外周部まで導く通風路と、
前記通風ファンに固定され前記通風路内に位置する被検出部と、前記通風路内に前記被検出部と対向して設けられ、前記被検出部を検知するセンサと、を有する回転検出器と、
を備える電動機。
【請求項2】
前記センサは、鉛直方向において、前記回転軸の中心よりも上方に設けられている請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記被検出部は、前記通風ファンに固定され、前記回転軸と同軸的に設けられた環状の歯車板を備え、前記歯車板は、円周方向に所定の間隔で設けられた複数の歯を有し、前記センサは、前記歯に所定の隙間を置いて対向している請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記センサは、前記第1ブラケットの外周部に固定され、前記通風路内に延出している請求項3に記載の電動機。
【請求項5】
前記歯車板は前記ラビリンス構造部の外側で前記通風ファンに設けられ、前記歯車板およびセンサは、前記回転軸の径方向に並んで設けられている請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
前記センサは、前記第1軸受ハウジングに固定され、前記回転軸の軸方向に沿って前記通風路内に延出し、前記歯車板およびセンサは、前記回転軸の軸方向に並んで設けられている請求項3に記載の電動機。
【請求項7】
前記第1軸受ハウジングは、前記通風ファン側に突出し前記軸受の外周側に位置する突出部と、前記突出部の突出端に形成され、前記給気口から導入された外気を前記通風路に吐出する吐出口と、を有し、
前記突出部および吐出口は、前記回転軸に対し、鉛直方向の上方に偏心して設けられている請求項2に記載の電動機。
【請求項8】
前記第1軸受ハウジングは、前記通風ファン側に突出し前記軸受の外周側に位置する突出部と、前記突出部の突出端に形成され、前記給気口から導入された外気を前記通風路に吐出する吐出口と、を有し、
前記突出部および吐出口の鉛直方向上側部分は、下側部分よりも、前記通風ファン側に延出している請求項2に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175757(P2012−175757A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33444(P2011−33444)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】