説明

電動車両およびその電圧制御方法

【課題】車両の動特性を確保した上で昇圧回路のリアクトル電流におけるリプル成分を小さくする。
【解決手段】アクセル開度Accが100%より若干小さい所定開度Aref未満であり且つ車速Vが最高車速より若干小さい所定車速Vref未満であるときに、昇圧比Dutyが値0.5±αの範囲外となるときには高電圧系電圧VHがモータ駆動に応じた目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータを制御し、昇圧比Dutyが値0.5±αの範囲内となるときには値0.5±αの範囲を上回る最小値を目標電圧VH*として再設定し(S160)、高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータを制御する。これにより、リアクトル電流のリプル成分が大きく範囲となるのを抑制することができ、リアクトルに生じる発熱や振動・騒音を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両およびその電圧制御方法に関し、詳しくは、走行用の動力を入出力する電動機と、二次電池と、二次電池が接続された電池電圧系と電動機が接続された駆動電圧系とに接続され駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上に調整する電圧調整手段と、を備える電動車両およびこうした電動車両の駆動電圧系における電圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、蓄電池と、蓄電池の電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧された直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、昇圧された直流電圧の変動を抑制するように昇圧回路を閉ループ制御する電圧制御部と、を備え、電圧制御部の応答時定数を交流電圧の周期の1倍以上としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、閉ループ制御の応答時定数を長くとることによって、交流電圧の周波数変動に対する過度な反応を鈍化させ、蓄電池のリプル電流を低減している。
【0003】
また、バッテリと、バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧後の直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータと、を備え、冷却系の異常時には、昇圧後の電圧が低下するように昇圧コンバータとインバータとを制御すると共に車両の走行速度を制限するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、昇圧後の電圧を低下して昇圧コンバータのリアクトルに流れる電流の直流成分とリプル成分を共に抑制することによって、リアクトルの発熱を抑制し、リアクトルが過熱により損傷するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−148164号公報
【特許文献2】特開2009−171766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の電圧を昇圧して電動機に供給する昇圧回路を備える電動車両では、冷却系の小型化や車両における振動や騒音の抑制あるいは燃費の改善などの理由により、昇圧回路のリアクトルの発熱や振動・騒音を抑制するのが好ましい。このため、車両の動特性を確保した上でリアクトルの発熱や振動・騒音を生じさせるリアクトル電流のリプル成分を小さくすることが望まれる。
【0006】
本発明の電動車両およびその電圧制御方法は、車両の動特性を確保した上で昇圧回路のリアクトル電流におけるリプル成分を小さくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動車両およびその電圧制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の電動車両は、
走行用の動力を入出力する電動機と、二次電池と、リアクトルとスイッチング素子とを有し前記二次電池が接続された電池電圧系の電圧を昇圧して前記電動機が接続された駆動電圧系に供給する昇圧回路と、前記駆動電圧系の電圧が車両の運転条件に応じた目標電圧となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する電圧制御手段と、を備える電動車両において、
前記電圧制御手段は、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、前記駆動電圧系の電圧をVH,前記電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する手段である、
ことを特徴とする。
【0009】
この本発明の電動車両では、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、電動機が接続された駆動電圧系の電圧をVH,二次電池が接続された電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御する。リアクトルに流れるリプル成分の大きさΔIは、リアクトルのインダクタンスをL、スイッチング素子のスイッチングの際の周波数(キャリア周波数)をfcとすると、次式(1)により計算され、昇圧比が値0.5のときに最大となる。前述したように、リアクトル電流のリプル成分が大きいと、リアクトルの発熱や振動・騒音を生じさせるから、昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御することにより、リアクトル電流のリプル成分が最大とならない範囲で昇圧することができ、リアクトルの発熱や振動・騒音を抑制することができる。もとより、通常運転条件ではないとき、即ち、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件が成立しているときや車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件が成立しているときには、昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御することは行なわれないから、何ら制限されることなく電池電圧系の電圧を昇圧して駆動電圧系に供給することができ、車両の動特性を確保することができる。
【0010】
【数1】

【0011】
こうした本発明の電動車両において、前記電圧制御手段は、前記通常運転条件のときに前記駆動電圧系の電圧を前記目標電圧とすると前記昇圧比が前記所定範囲内となるときには、前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧より高く且つ前記所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、昇圧比が値0.5を含む所定範囲外とすることができると共に電動機の駆動制御を余裕をもって行なうことができる。
【0012】
また、本発明の電動車両において、前記昇圧回路は、前記駆動電圧系の負極母線であると共に前記電池電圧系の負極母線である負極母線と前記駆動電圧系の正極母線とに直列に接続された二つのスイッチング素子と、前記電池電圧系の正極母線と前記二つのスイッチング素子の中間接続点とに接続されたリアクトルと、を有する回路である、ものとすることもできる。
【0013】
本発明の電動車両の電圧制御方法は、
走行用の動力を入出力する電動機と、二次電池と、リアクトルとスイッチング素子とを有し前記二次電池が接続された電池電圧系の電圧を昇圧して前記電動機が接続された駆動電圧系に供給する昇圧回路と、を備え、前記駆動電圧系の電圧が車両の運転条件に応じた目標電圧となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する電動車両の電圧制御方法において、
アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、前記駆動電圧系の電圧をVH,前記電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の電動車両の電圧制御方法では、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、電動機が接続された駆動電圧系の電圧をVH,二次電池が接続された電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御する。リアクトルに流れるリプル成分の大きさΔIは、上述した式(1)により計算され、昇圧比が値0.5のときに最大となり、リアクトル電流のリプル成分が大きいときにリアクトルの発熱や振動・騒音を生じさせるから、昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御することにより、リアクトルの発熱や振動・騒音を抑制することができる。もとより、通常運転条件ではないとき、即ち、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件が成立しているときや車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件が成立しているときには、昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御することは行なわれないから、何ら制限されることなく電池電圧系の電圧を昇圧して駆動電圧系に供給することができ、車両の動特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇圧制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】昇圧比Dutyとリプル成分ΔIとの関係を示す説明図である。
【図5】車速Vと昇圧比Dutyとの時間変化の一例を示す説明図である。
【図6】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例の電機自動車420の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54aとバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)54bとに接続されて高電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VLから最大許容電圧VHmaxの範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン54aと低電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。ここで、最大許容電圧VHmaxは、後述のコンデンサ57の耐圧よりも若干低い値などを用いることができる。
【0018】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、図2のモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成図に示すように、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26と、により構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線との間に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を制御することにより三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。インバータ41,42は、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とを共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ57が接続されている。
【0019】
モータECU40は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,インバータ41,42に取り付けられた図示しない温度センサからのインバータ温度などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
昇圧コンバータ55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とにはそれぞれ高圧バッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して高電圧系電力ライン54aに供給したり、高電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。リアクトルLと高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とには平滑用のコンデンサ58が接続されている。
【0021】
バッテリECU52は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電池電圧系電力ライン54bに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(高電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VL,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0024】
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算すると共に計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の残容量(SOC)に基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なう。このエンジン運転モードでは、エンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を運転停止した方がよいとして定められた閾値Pstop未満に至ったときなどに、エンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。
【0025】
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してこれらをモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26のスイッチング制御を行なう。このモータ運転モードでは、要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nrを乗じて得られる走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*を減じて得られるエンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよいとして定められた閾値Pstart以上に至ったときなどに、エンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。
【0026】
ここで、インバータ41,42のスイッチング制御について説明する。実施例では、モータECU40は、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2とトルク指令Tm1*,Tm2*とに基づいてそれぞれ複数の制御モードから1つの制御モードを選択してインバータ41,42をスイッチング制御する。ここで、インバータ41,42の制御モードは、それぞれ、図示しないマップにより、モータの回転数およびトルクが低い領域から順に、三角波比較によるパルス幅変調(PWM)制御における三角波の振幅以下の振幅で正弦波状の出力電圧指令値を生成して変換した擬似的三相交流電圧としてのPWM信号でインバータをスイッチングする正弦波制御モード,三角波の振幅を超えた振幅で正弦波状の出力電圧指令値を生成して変換した過変調電圧としてのPWM信号でインバータをスイッチングする過変調制御モード,トルク指令に応じた電圧位相の矩形波電圧でインバータをスイッチングする矩形波制御モード,が選択されるように予め定められている。モータMG1,MG2やインバータ41,42の特性として、矩形波制御モード,過変調制御モード,正弦波制御モードの順で、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性が良くなり、出力可能なトルクが小さくなり、インバータ41,42のスイッチング損失などの損失が大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、正弦波制御モードでインバータ41,42を制御することにより、モータMG1,MG2の出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルク領域では、矩形波制御モードを用いてインバータ41,42を制御することにより、より大きなトルクを出力可能とすると共にインバータ41,42のスイッチング損失などの損失を低減することができる。
【0027】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、高電圧系電力ライン54の電圧VHを上昇させる際の昇圧制御について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇圧制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0028】
昇圧制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*や回転数Nm1,Nm2,電圧センサ58aからの低電圧系電圧VL,電圧センサ57aからの高電圧系電圧VHなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*は、上述の駆動制御の処理で設定されたものを入力するものとした。
【0029】
こうしてデータを入力すると、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と回転数Nm1,Nm2とに基づいて高電圧系電力ライン54aの目標電圧VH*を設定すると共に(ステップS110)、高電圧系電圧VHを設定した目標電圧VH*としたときの昇圧比Dutyを次式(2)により計算する(ステップS120)。ここで、高電圧系電力ライン54aの目標電圧VH*は、実施例では、モータMG1の目標動作点(トルク指令Tm1*,回転数Nm1)でモータMG1を駆動できる電圧とモータMG2の目標動作点(トルク指令Tm2*,回転数Nm2)でモータMG2を駆動できる電圧とのうち大きい方の電圧を設定するものとした。
【0030】
【数2】

【0031】
次に、アクセル開度Accが100%より若干小さい開度として予め設定された所定開度Aref(例えば、90%や95%など)未満であるか否か(ステップS130)、車速Vがこの車両の最高車速として予め設定された車速より若干小さい車速として予め定められた所定車速Vref(例えば最高車速が180km/hであれば170km/hや175km/hなど)未満であるか否か(ステップS140)、を判定する。アクセル開度Accが所定開度Aref以上のときは運転者が車両を最大加速度かその近傍の加速度で加速しようとしているときであり、車速Vが所定車速Vref以上のときは車両が最高車速近傍で走行しているときであることから、双方ともモータMG1,MG2から大きなトルク出力が要求されているときであると判断し、高電圧系電圧VHが設定した目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS170)、本ルーチンを終了する。これらの場合、目標電圧VH*には、モータMG1,MG2を駆動するのに必要な値が設定されているから、高電圧系電圧VHを目標電圧VH*とすることにより、運転者の要求する走行を行なうことができる。
【0032】
一方、アクセル開度Accが所定開度Aref未満で且つ車速Vが所定車速Vref未満のときには、車両の運転状態としては最大加速度が要求されていたり最高車速による走行が要求されていたりする特殊な運転条件ではく、通常の運転条件であると判断し、設定した目標電圧VH*を用いて計算した昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内であるか否かを判定し(ステップS150)、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲外であるときには、高電圧系電圧VHが設定した目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS170)、本ルーチンを終了する。昇圧コンバータ55のリアクトルLに流れる電流(リアクトル電流)のリプル成分の大きさΔI(以下、リプル成分ΔIと略す)は、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチングの周波数(キャリア周波数)をfcとすると、次式(3)により計算することができる。昇圧比Dutyは上述した式(2)により定義されているから、昇圧比Dutyとリプル成分ΔIとの関係を示せば図4のようになり、昇圧比Dutyが値0.5のときにリプル成分ΔIが最大となる。リプル成分ΔIは、大きいとリアクトルLの発熱や振動・騒音が大きくなるため、ステップS150の昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内であるか否かを判定する処理は、リアクトルLに生じる発熱や振動・騒音が大きい範囲であるか否かを判定する処理と考えることができる。したがって、圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲外であるときは、リアクトルLに生じる発熱や振動・騒音が大きい範囲ではないと判断して、ステップS110で設定した目標電圧VH*を用いて昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なうのである。なお、「α」は、例えば値0.03や値0.05,値0.07などを用いることができる。
【0033】
【数3】

【0034】
ステップS150で昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内であると判定されたときには、高電圧系電圧VHを目標電圧VH*にするとリアクトルLに生じる発熱や振動・騒音が大きい範囲となると判断し、目標電圧VH*を、モータMG1,MG2の駆動に応じた値(ステップS120で設定した目標電圧VH*)より大きく且つ昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲外となるよう、即ち、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値となるよう次式(4)によって再設定し(ステップS160)、高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS170)、本ルーチンを終了する。このように昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるときには、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値となるよう目標電圧VH*を設定して高電圧系電圧VHを制御することにより、リアクトルLに生じる発熱や振動・騒音を抑制することができる。また、再設定する目標電圧VH*はモータMG1,MG2の駆動に応じた値(ステップS120で設定した目標電圧VH*)より大きく設定されるから、モータMG1,MG2の駆動制御については何ら支障を生じさせることがない。
【0035】
【数4】

【0036】
図5は、車速Vと昇圧比Dutyとの時間変化の一例を示す説明図である。図示するように、運転者がアクセルペダルをある程度踏み込んで発進し、車速Vがある程度大きくなる時間T1までは、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を下回るため、モータMG1,MG2の駆動に応じた目標電圧VH*(ステップS120で設定した目標電圧VH*)により高電圧系電圧VHは制御される。時間T1から運転者が更にアクセルペダルを踏み込んだことによる更なる加速度による加速途中の時間T2までは、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるため、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値となるよう目標電圧VH*が設定され、この目標電圧VH*により高電圧系電圧VHが制御される。時間T2から時間T3では更に加速するが、昇圧比Dutyは値0.5プラスマイナスαの範囲を上回るため、モータMG1,MG2の駆動に応じた目標電圧VH*(ステップS120で設定した目標電圧VH*)により高電圧系電圧VHは制御される。運転者がアクセルペダルの踏み込みを戻して巡航走行に至った時間T3から運転者がアクセルペダルの踏み込みを戻してブレーキペダルを踏み込む時間T4までは、再び昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるため、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値となるよう目標電圧VH*が設定され、この目標電圧VH*により高電圧系電圧VHが制御される。時間T4以降は、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲を下回るため、モータMG1,MG2の駆動に応じた目標電圧VH*(ステップS120で設定した目標電圧VH*)により高電圧系電圧VHは制御される。
【0037】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、アクセル開度Accが100%より若干小さい所定開度Aref未満であり且つ車速Vが最高車速より若干小さい所定車速Vref未満である通常の運転条件のときに、目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲外となるときには高電圧系電圧VHがモータMG1,MG2の駆動に応じて設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御し、目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるときには値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値を目標電圧VH*として再設定し、高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御することにより、即ち、昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲外となるようにすることにより、リアクトル電流のリプル成分ΔIが大きくなる範囲としないようにして、昇圧コンバータ55のリアクトルLに生じる発熱や振動・騒音を抑制することができる。この結果、燃費の向上にも資することができる。しかも、再設定する目標電圧VH*はモータMG1,MG2の駆動に応じて設定した値(ステップS120の目標電圧VH*)より大きく設定されるから、モータMG1,MG2の駆動制御については何ら支障を生じさせることがない。もとより、アクセル開度Accが所定開度Aref以上であったり、車速Vが所定車速Vref以上であるときには、昇圧比Dutyに拘わらずに、高電圧系電圧VHがモータMG1,MG2の駆動に応じて設定した目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御するから、車両の動特性を確保することができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref未満であり且つ車速Vが所定車速Vref未満である通常の運転条件のときに目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるときには、値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値を目標電圧VH*として再設定し、高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御するものとしたが、目標電圧VH*の再設定としては、値0.5プラスマイナスαの範囲を下回る最大値を目標電圧VH*として設定するものとしてもよい。また、目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5以上のときには値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値を目標電圧VH*として再設定し、目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5未満のときには値0.5プラスマイナスαの範囲を下回る最大値を目標電圧VH*として再設定するものとしても構わない。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動輪63a,63bに連結された駆動軸32に出力するものとしたが、図6の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪63a,63bに接続された車軸)とは異なる車軸(図6における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。また、図8の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22からの動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bに接続された車軸とは異なる車軸(図8における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0041】
実施例では、本発明を、駆動軸32にプラネタリギヤ30を介して接続されたエンジン22およびモータMG1と、駆動軸32に接続されたモータMG2と、を備えるハイブリッド自動車20に適用するものとしたが、図9の変形例の電気自動車420に例示するように、走行用の動力を出力するモータMGを備える単純な電気自動車に適用するものとしてもよい。
【0042】
また、こうした自動車に限定されるものではなく、列車などの電動車両の形態としてもよいし、電動車両の電圧制御方法の形態としてもよい。
【0043】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ55が「昇圧回路」に相当し、ハイブリッド用電子制御ユニット70が「電圧制御手段」に相当する。
【0044】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を入出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「昇圧コンバータ」としては、昇圧コンバータ55に限定されるものではなく、リアクトルとスイッチング素子とを有し二次電池が接続された電池電圧系の電圧を昇圧して電動機が接続された駆動電圧系に供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「電圧制御手段」としては、図3の昇圧制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70に限定されるものではなく、通常の運転条件のときに目標電圧VH*を用いた昇圧比Dutyが値0.5プラスマイナスαの範囲内となるときには、値0.5プラスマイナスαの範囲を下回る最大値を目標電圧VH*として再設定すると共に高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御するものとしたり、昇圧比Dutyが値0.5以上のときには値0.5プラスマイナスαの範囲を上回る最小値を目標電圧VH*として再設定すると共に高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御し、昇圧比Dutyが値0.5未満のときには値0.5プラスマイナスαの範囲を下回る最大値を目標電圧VH*として再設定すると共に高電圧系電圧VHが再設定した目標電圧VH*になるように昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32をスイッチング制御するものしたりするなど、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、駆動電圧系の電圧をVH,電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう昇圧回路のスイッチング素子を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0045】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0046】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、電動車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
20,120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、54a 高電圧系電力ライン、54b 電池電圧系電力ライン、55 昇圧コンバータ、57,58 コンデンサ、57a,57b 電圧センサ、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、229 クラッチ、230,330 変速機、420 電気自動車、D11〜D16,D21〜D26,D31,D32 ダイオード、L リアクトル、MG,MG1,MG2 モータ、T11〜T16,T21〜T26,T31,T32 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を入出力する電動機と、二次電池と、リアクトルとスイッチング素子とを有し前記二次電池が接続された電池電圧系の電圧を昇圧して前記電動機が接続された駆動電圧系に供給する昇圧回路と、前記駆動電圧系の電圧が車両の運転条件に応じた目標電圧となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する電圧制御手段と、を備える電動車両において、
前記電圧制御手段は、アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、前記駆動電圧系の電圧をVH,前記電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する手段である、
電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両であって、
前記電圧制御手段は、前記通常運転条件のときに前記駆動電圧系の電圧を前記目標電圧とすると前記昇圧比が前記所定範囲内となるときには、前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧より高く且つ前記所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する手段である、
電動車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動車両であって、
前記昇圧回路は、前記駆動電圧系の負極母線であると共に前記電池電圧系の負極母線である負極母線と前記駆動電圧系の正極母線とに直列に接続された二つのスイッチング素子と、前記電池電圧系の正極母線と前記二つのスイッチング素子の中間接続点とに接続されたリアクトルと、を有する回路である、
電動車両。
【請求項4】
走行用の動力を入出力する電動機と、二次電池と、リアクトルとスイッチング素子とを有し前記二次電池が接続された電池電圧系の電圧を昇圧して前記電動機が接続された駆動電圧系に供給する昇圧回路と、を備え、前記駆動電圧系の電圧が車両の運転条件に応じた目標電圧となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する電動車両の電圧制御方法において、
アクセル開度が100%より若干小さい所定開度以上である条件と車速が車両の最高車速より若干小さい所定車速以上である条件との双方が成立していない通常運転条件のときには、前記駆動電圧系の電圧をVH,前記電池電圧系の電圧をVLとしたときに(VH−VL)/VHとして計算される昇圧比が値0.5を含む所定範囲外となるよう前記昇圧回路のスイッチング素子を制御する、
ことを特徴とする電動車両の電圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−170300(P2012−170300A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31280(P2011−31280)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】