説明

電動過給機付内燃機関の制御装置

【課題】機関運転時の吸入空気により冷却される電動過給機を備えると共に、アイドルストップ機能を備える内燃機関において、電動過給機の過昇温を効果的に抑制したうえでアイドルストップ制御を実施できる電動過給機内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明は、吸気系統40に電動過給機10が設けられたエンジン1を備えている。このエンジン1は、電動過給機10の温度に相関する温度相関値(電動過給機10の作動時間やコンプレッサの回転軸の軸受部の温度、モータのコイルの温度等)を含む自動停止条件の成立に応じて、アイドルストップECU80により運転が自動停止されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動過給機付内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機を備えると共に、車両停止時に内燃機関の運転を自動停止するアイドルストップ機能を備える内燃機関の制御装置として、過給機の温度が所定値を超えた場合に、内燃機関の運転の自動停止を禁止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。当該制御装置によれば、過給機が過昇温した状態で内燃機関の運転が停止されて過給機の冷却機能が停止されることを抑制でき、過給機を保護できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−66838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、過給機としては、機関運転時に冷却装置により冷却される排気ターボ過給機の他に、機関運転時の吸入空気により冷却される電動過給機が存在する。ここで、排気ターボ過給機と電動過給機とでは、発熱部位、許容温度、昇温による不具合の内容等の特性が相違するので、電動過給機を備える内燃機関では、電動過給機の固有の特性を考慮したうえで、アイドルストップ制御を実施することを要する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、機関運転時の吸入空気により冷却される電動過給機を備えると共に、アイドルストップ機能を備える内燃機関において、電動過給機の過昇温を効果的に抑制したうえでアイドルストップ制御を実施できる電動過給機内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、電動過給機付内燃機関の制御装置は、電動過給機を備える内燃機関の制御装置であって、自動停止条件が成立すると前記内燃機関を自動停止させるアイドルストップ制御部と、前記電動過給機の温度に相関する温度相関値を検出する温度相関値検出部と、を備え、前記アイドルストップ制御部は、前記温度相関値検出部により検出される前記温度相関値を含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する。
【0007】
上記電動過給機付内燃機関の制御装置において、前記温度相関値検出部は、前記電動過給機の作動時間を計測する計測部を備えてもよく、前記アイドルストップ制御部は、前記計測部によって計測される前記電動過給機の作動時間を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御してもよい。
上記過給機付内燃機関の制御装置において、前記温度相関値検出部は、前記電動過給機に設けられたコンプレッサの回転軸を支持する軸受部の温度を検出する軸受部温度検出部を備えてもよく、前記アイドルストップ制御部は、前記軸受部温度検出部によって検出される前記軸受部の温度を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御してもよい。
【0008】
上記過給機付内燃機関の制御装置において、前記温度相関値検出部は、前記電動過給機に設けられたモータのコイルの温度を検出するコイル温度検出部を備えてもよく、前記アイドルストップ制御部は、前記コイル温度検出部によって検出される前記コイルの温度を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御してもよい。
【0009】
上記過給機付内燃機関の制御装置において、前記内燃機関に設けられた電動部へ供給される電力を蓄えるバッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部を備えてもよく、前記アイドルストップ制御部は、前記蓄電量検出部によって検出される前記バッテリの蓄電量を含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記電動過給機付内燃機関の制御装置によれば、機関運転時の吸入空気により冷却される電動過給機を備えると共に、アイドルストップ機能を備える内燃機関において、電動過給機の過昇温を効果的に抑制したうえでアイドルストップ制御を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る制御装置を適用した電動過給機付内燃機関の概略構成図である。
【図2】電動過給機を示す斜視図である。
【図3】電動過給機を示す斜視図である。
【図4】図3の4−4断面図である。
【図5】アイドルストップECUの構成を示す機能ブロック図である。
【図6】アイドルストップECUによる制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を適用した電動過給機付内燃機関の概略構成図である。この図に示すように、電動過給機付内燃機関としてのエンジン1は、電動過給機10を備える。
エンジン1は、シリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20に燃料と空気とからなる混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを備えている。
【0013】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を備えている。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21、ピストン22のヘッド及びシリンダヘッド部30は、燃焼室(気筒)25を形成している。
【0014】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを有すると共に同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを有するイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ39を備えている。
【0015】
吸気系統40は、吸気ポート31に連通したインテークマニホールド41、インテークマニホールド41の一部を構成するサージタンク42、吸気ポート31とインテークマニホールド41とサージタンク42とともに吸気通路を形成する吸気ダクト43、インテークマニホールド41の上流端と吸気ダクト43の下流端とに接続されたボックス44、ボックス44内に配されたエアフィルタ45及び電動過給機10、及び、インテークマニホールド41内に配されたスロットルバルブ46を備えている。
【0016】
電動過給機10は、モータ12と、モータ12の出力により回転するコンプレッサ14とを備えている。エアフィルタ45、モータ12及びコンプレッサ14は、吸気方向上流側から下流側にこの記載した順番で配されており、ボックス44に吸入された空気は、エアフィルタ45を通過してモータ12に接触し、そして、コンプレッサ14により圧縮されてインテークマニホールド41へ送り出される。即ち、電動過給機10は、電力により駆動されてエンジン1に空気を過給する。
【0017】
スロットルバルブ46は、インテークマニホールド41に回転可能に支持され、アクセル操作に連動して又はスロットルバルブアクチュエータから駆動されることによって開度が調整されるようになっている。これにより、スロットルバルブ46は、インテークマニホールド41の通路断面積を可変とするようになっている。
排気系統50は、排気ポート34に連通し該排気ポート34とともに排気通路を形成するエキゾーストマニホールドを有する排気管51、排気管51内に配設された触媒52を備えている。
【0018】
一方、このシステムは、吸気圧センサ61、車速センサ62、水温センサ63、バッテリSOCセンサ64、ブレーキスイッチ66、第1モータ温度センサ67、第2モータ温度センサ68、エンジンECU70、及びアイドルストップECU80を備えている。
吸気圧センサ61は、スロットルバルブ46より下流側における吸入空気の圧力、即ちサージタンク42内の圧力(以下、インマニ圧という)Pimを検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。
【0019】
車速センサ62は、ドライブシャフトの回転数に基づいて車速Vを検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。また、水温センサ63は、エンジン冷却水の温度(以下、エンジン水温という)Teを検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。また、バッテリSOCセンサ64は、エンジン1の電動部及びスタータモータ2等の車両に搭載された各電動部に供給される電力を蓄えるバッテリ3の電圧(以下、バッテリSOCという)を検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。ブレーキスイッチ66は、ブレーキペダル66Aが操作されたことを検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。
【0020】
第1モータ温度センサ67は、電動過給機10のモータ12のコイル120A(図4参照)の温度Tm1を検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。また、第2モータ温度センサ68は、モータ12のロータ122(図4参照)を支持する軸受部124(図4参照)の温度Tm2を検出して検出信号をエンジンECU70へ出力する。
エンジンECU70は、上述の各種のセンサからの信号を入力しつつ、内蔵するマイクロコンピュータにより、所定の演算処理を行って、インジェクタ39等の燃料噴射系統、点火プラグ37(点火系統)へ駆動信号を出力する。
【0021】
アイドルストップECU80には、スタータモータ2、バッテリ3、発電機4等が接続されている。また、スタータモータ2には、リレー回路150が接続されている。リレー回路150は、リレーコイル152とリレースイッチ154とを備えている。リレーコイル152が通電された場合にリレースイッチ154がONになり、バッテリ3からスタータモータ2へ電力が供給される。スタータモータ2が供給された電力により駆動されることによって、エンジン1が始動する。スタータモータ2が駆動される場合としては、運転者のイグニッションキーの操作による場合と、アイドルストップECU80が始動指令を出力した場合とがある。また、エンジンECU70には、イグニッションスイッチ104が接続されており、イグニッションスイッチ104がONになった場合に、エンジンECU70は、エンジン1の燃料噴射系統及び点火系統に駆動信号を出力する。
【0022】
発電機4は、エンジン1のクランク軸24に連結されており、クランク軸24の回転力を利用して発電する。発電機4により発せられた電力は、各電動部及びバッテリ3に供給される。これにより、各電動部は駆動され、バッテリ3は充電される。
エンジンECU70及びアイドルストップECU80は、所定の演算処理を行う演算ユニット(以下、CPUという)と、各種制御プログラムや演算用マップ、制御の実行に際して算出されるデータ等を記憶するメモリとを備えている。アイドルストップECU80は、エンジン1が運転状態である場合に所定の自動停止条件が成立したと判断すると、エンジンECU70へ自動停止信号を送信する。エンジンECU70は、自動停止信号を受信した場合、エンジン1の燃料噴射系統及び点火系統等を停止させてエンジン1の運転を停止させる(アイドルストップを実施する)。
【0023】
一方、アイドルストップECU80は、エンジンが停止状態である場合に所定の始動条件が成立したと判断すると、エンジンECU70へ始動信号を出力する。エンジンECU70は、始動信号を受信した場合、スタータモータ2を作動させると共に、エンジン1の燃料噴射系統及び点火系統に駆動信号を出力してエンジン1を始動させる。
なお、本実施形態に係る車両では、変速機構としてオートマティック・トランスミッション(Automatic Transmission)を備えているため、後述するように、ブレーキペダル66がONであることを自動停止条件に含み、ブレーキペダル66がOFFであることを始動条件に含んでいる。しかし、変速機構としてマニュアルトランスミッション(Manual Transmission)を備える車両の場合には、ニュートラルスイッチがONであることを自動停止条件に含み、ニュートラルスイッチがOFFであることを始動条件に含めばよい。
【0024】
図2は、電動過給機10を示す斜視図である。この図に示すように、電動過給機10は、遠心式のコンプレッサ14と、円筒状のヒートシンク13とを備え、さらにヒートシンク13内に上述のモータ12を備えている。電動過給機10は、不図示のエアフィルタ45とともに、ボックス44に収納されている。
ボックス44は、矩形箱状の筐体であり、図中手前側であるインテークマニホールド41側と図中奥側である吸気ダクト43側とに分割された一対の箱体を気密状態で結合することにより構成されている。ボックス44のインテークマニホールド41側には、コンプレッサ14が配され、ボックス44の吸気ダクト43側には、ヒートシンク13及びモータ12が配されている。モータ12の回転軸は、ボックス44の図中手前側及び奥側の面に対して垂直に配されている。
【0025】
コンプレッサ14は、ハウジング141を備えている。ハウジング141は、モータ12の回転軸の延長線上に形成された吸入口141Aと、吸入口141Aを始端として吸入口141A回りに周回する空気流路形成部141Bと、空気流路形成部141Bの終端に設けられ、インテークマニホールド41に接続される吹出し口141Cとを備えている。
吸気ダクト43からボックス44内に吸入された空気は、ボックス44の内壁とヒートシンク13との間を通って吸入口141Aからハウジング141内に入る。そして、ハウジング141に吸入された空気は、ハウジング141内の空気流路においてコンプレッサ14により圧縮され、吹き出し口141Cからインテークマニホールド41へ送出される。
【0026】
ここで、ヒートシンク13は、ボックス44内に吸入されヒートシンク13とボックス44の内壁との間を通る吸入空気に放熱する。これにより、ヒートシンク13及びヒートシンク13内に収納されたモータ12が冷却される。
図3は、電動過給機10を示す斜視図であり、図4は、図3の4−4断面図である。これらの図に示すように、電動過給機10は、ヒートシンク13内に収容されたモータ12を備えている。モータ12は、DCブラシレスモータであって、ヒートシンク13内に収納されたステータ120と、ステータ120の内周側に配された円柱状のロータ122と、ロータ122を回転自在に支持する軸受部124とを備えている。
【0027】
ステータ120は、ロータ122の軸心回りに配された複数のコイル120Aと、複数のコイル120Aを支持する珪素鋼等により形成されたベース部120Bとを備えている。ロータ122は、ステータ120の軸心に挿通された軸部材である。ロータ122の軸方向一端側は、円柱状の磁石122Aに挿入されて固定されている。また、ロータ122の軸方向他端側は、ステータ120からコンプレッサ14側へ延びている。
【0028】
軸受部124は、円柱状の部材であり、ステータ120とコンプレッサ14との間に配され、ロータ122の軸方向に沿って延びている。この軸受部124の軸方向の一端部は、ステータ120に固定されている。また、軸受部124内には、ロータ122の軸方向一端側が回転自在に挿通されており、ロータ122は、軸受部124に回転自在に支持されている。
【0029】
コンプレッサ14は、ハウジング141内に配されたコンプレッサホイール142を備えている。コンプレッサホイール142は、ロータ122の軸方向他端部に固定されており、ロータ122と一体で回転する。ここで、モータ12がロータ122及びコンプレッサホイール142を回転させることにより、吸入口141Aからハウジング141内に吸入された空気が圧縮されて吹出し口141Cから吹き出される。
【0030】
モータ12には、上述の第1モータ温度センサ67と第2モータ温度センサ68とが配されている。第1モータ温度センサ67は、コイル120Aに接触してコイル120Aの温度を検出するサーミスタ等の温度センサである。また、第2モータ温度センサ68は、軸受部124に接触して軸受部124の温度を検出するサーミスタ等の温度センサである。
【0031】
図5は、アイドルストップECU80の構成を示す機能ブロック図である。この図に示すように、アイドルストップECU80は、CPU81、メモリ82、入出力ポート(I.O)83、及び、カウンタ84等を備えている。入出力ポート83は、各種センサからの電気的信号をデジタル演算処理用の信号に変換する。
入出力ポート83には、入力信号として、吸気圧センサ61により検出されるインマニ圧Pimに応じた信号と、車速センサ62により検出される車速Vに応じた信号と、水温センサ63により検出されるエンジン水温Teに応じた信号と、バッテリSOCセンサ64により検出されるバッテリSOCに応じた信号と、ブレーキスイッチ66のON/OFFに応じた信号と、第1モータ温度センサ67により検出されるコイル120Aの温度Tm1に応じた信号と、第2モータ温度センサ68により検出される軸受部124の温度Tm2に応じた信号とが供給される。
【0032】
カウンタ84は、車両が停止するまでに電動過給機10が作動されている時間Tsをカウントする。ここで、カウンタ84は、初回発進時から今回、車両が停止するまでに、エンジンECU70において過給フラグがONになっている時間をカウントする。また、過給フラグのON/OFFは、CPU81が、インマニ圧Pimが大気圧以上であるか否かを判定し、判定結果に基づいて設定する。即ち、CPU81は、インマニ圧Pimが大気圧以上である場合に過給フラグをONにする一方、インマニ圧Pimが大気圧未満である場合に過給フラグをOFFにする。
【0033】
メモリ82は、自動停止条件として、車速Vの判定値V0、エンジン水温Teの判定値Te0、バッテリSOCの判定値Vsoc0、コイル120Aの温度Tm1の判定値Tm10、軸受部124の温度Tm2の判定値Tm20、電動過給機10の作動時間Tsの判定値Ts0を記憶している。ここで、車速Vの判定値V0は0である。また、エンジン水温Teの判定値Te0は、エンジン1のオーバーヒート等を考慮して許容できる最大値である。また、バッテリSOCの判定値Vsocは、エンジン1の最低動作電圧よりも高い値であり、エンジン1の再始動を考慮して許容できる最低値である。また、温度Tm1の判定値Tm10は、コイル120Aの特性を考慮して許容できる最高値であり、温度Tm2の判定値Tm20は、軸受部124の特性を考慮して許容できる最高値である。さらに、作動時間Tsの判定値Ts0は、コイル120Aと軸受部124の昇温特性を考慮して、温度Tm1、Tm2が、判定値Tm10、Tm20を超える可能性のある時間値である。
【0034】
CPU81は、入出力ポート83に入力される信号と、カウンタ84のカウント数と、メモリ82に記憶されている判定値とに基づいて、自動停止条件が成立したか否か、又は、始動条件が成立したか否かを判定し、判定結果に基づいてエンジンECU70へ自動停止信号又は始動信号を出力する。
図6は、アイドルストップECU80による制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、ステップ100において、CPU81は、入出力ポート83から、車速Vに応じた信号と、エンジン水温Teに応じた信号と、バッテリSOCに応じた信号と、ブレーキスイッチ66のON/OFFに応じた信号と、コイル120Aの温度Tm1に応じた信号と、軸受部124の温度Tm2に応じた信号とを入力する。また、カウンタ84から、電動過給機10の作動時間Tsを入力する。
【0035】
次に、ステップ101では、CPU81は、電動過給機10の作動時間Tsがメモリ82に記憶されている判定値Ts0以下であるか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ102へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ106へ移行する。
ステップ102では、CPU81は、コイル120Aの温度Tm1がメモリ82に記憶されている判定値Ts0以下であるか否か、軸受部124の温度Tm2がメモリ82に記憶されている判定値Tm20以下であるか否かを判定する。全ての判定が肯定された場合にはステップ103へ移行する一方、少なくとも一の判定が否定された場合にはステップ106へ移行する。
【0036】
ステップ103では、CPU81は、バッテリSOCがメモリ82に記憶されている判定値Vsoc以上であるか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ104へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ106へ移行する。
ステップ104では、CPU81は、自動停止禁止フラグをOFFにする。そして、ステップ105へ移行する。一方、ステップ106では、CPU81は、自動停止禁止フラグをONにし、処理ルーチンを終了する。
【0037】
ステップ105では、CPU81は、車速Vがメモリ82に記憶されている判定値V0(即ち0)以下であるか否か、ブレーキスイッチ66がONであるか否か、エンジン水温Teがメモリ82に記憶されている判定値Te0以下であるか否かを判定する。全ての判定が工程された場合には、ステップ107へ移行する一方、少なくとも1つの判定が否定された場合には処理ルーチンを終了する。
【0038】
ステップ107では、CPU81は、自動停止信号をエンジンECU70へ出力する。これにより、エンジン1が自動停止される。以上で処理ルーチンを終了する。
ここで、モータ12は、エンジン1の吸気経路に配されており、エンジン1の作動時の吸入空気により冷却される。また、モータ12は、電気駆動されることによりコイル120Aが発熱し、ロータ122の回転により軸受部124及びヒートシンク13が昇温する。コイル12は過昇温により絶縁性が低下し、軸受部124は過昇温により潤滑剤が劣化する。このため、モータ12のコイル120A、軸受部124及びヒートシンク13が過昇温した状態で、エンジン1のアイドルストップが実施された場合には、コイル120A、軸受部124が冷却されることなく過昇温状態に維持されるので、モータ12の性能が低下する。
【0039】
しかし、本実施形態では、電動過給機10の温度に相関する温度相関値としてのモータ12のコイル120Aの温度Tm1、及び、モータ12の軸受部124の温度Tm2を、温度相関値検出部としての第1、第2モータ温度センサ67、68が検出する。そして、アイドルストップECU80が、検出された温度が閾値以上であるか否か、即ち、モータ12の各部の温度が許容レベルを超えているか否かを判定し、許容レベルを超えている場合には、エンジン1のアイドルストップを禁止する。
【0040】
また、本実施形態では、電動過給機の温度に相関する温度相関値としての電動過給機10の作動時間Tsを、温度相関値検出部としての吸気圧センサ61、CPU81、及びカウンタ84が検出する。そして、アイドルストップECU80が、検出された作動時間Tsが閾値以上であるか否か、即ち、モータ12の発熱時間が許容レベルを超えているか否かを判定し、許容レベルを超えている場合には、エンジン1のアイドルストップを禁止する。これにより、エンジン1の運転時の吸入空気により冷却される電動過給機10のモータ12の過昇温を効果的に抑制しつつ、エンジン1のアイドルストップ制御を実施できる。
【0041】
また、本実施形態では、バッテリSOCを、バッテリSOCセンサ64が検出する。そして、アイドルストップECU80が、検出されたバッテリSOCが閾値以上であるか否か、即ち、バッテリSOCがエンジン1の最低動作電圧に対して余裕をもつ値以上であるか否かを判定し、当該値未満である場合には、エンジン1のアイドルストップを禁止する。これにより、エンジン1の再始動に必要なバッテリSOCを確保しつつ、エンジン1のアイドルストップ制御を実施できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、温度相関値としてのコイル120Aの温度Tm1、軸受部124の温度Tm2を、第1モータ温度センサ67及び第2モータ温度センサ68により測定したが、例えば、ヒートシンク13の温度を測定し、その測定結果から、温度Tm1、Tm2を推定してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
2 スタータモータ
3 バッテリ
4 発電機
10 過給機
12 モータ
13 ヒートシンク
14 コンプレッサ
20 シリンダブロック部
21 シリンダ
22 ピストン
23 コンロッド
24 クランク軸
25 燃焼室
30 シリンダヘッド部
31 吸気ポート
32 吸気弁
33 可変吸気タイミング装置
34 排気ポート
35 排気弁
36 エキゾーストカムシャフト
37 点火プラグ
38 イグナイタ
39 インジェクタ
40 吸気系統
41 インテークマニホールド
42 サージタンク
43 吸気ダクト
44 ボックス
45 エアフィルタ
46 スロットルバルブ
50 排気系統
51 排気管
52 触媒
61 吸気圧センサ
62 車速センサ
63 水温センサ
64 バッテリSOCセンサ(蓄電量検出部)
66 ブレーキスイッチ
66A ブレーキペダル
67 第1水温センサ(温度相関値検出部、コイル温度検出部)
68 第2水温センサ(温度相関値検出部、軸受部温度検出部)
70 エンジンECU
80 アイドルストップECU(アイドルストップ制御部)
81 CPU(アイドルストップ制御部)
82 メモリ
83 入出力ポート
84 カウンタ(温度相関値検出部、計測部)
104 イグニッションスイッチ
120 ステータ
120A コイル
120B ベース部
122 ロータ
122A 磁石
124 軸受部
141 ハウジング
141A 吸入口
141B 空気流路形成部
141C 吹出し口
142 コンプレッサホイール
150 リレー回路
152 リレーコイル
154 リレースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動過給機を備える内燃機関の制御装置であって、
自動停止条件が成立すると前記内燃機関を自動停止させるアイドルストップ制御部と、
前記電動過給機の温度に相関する温度相関値を検出する温度相関値検出部と、を備え、
前記アイドルストップ制御部は、前記温度相関値検出部により検出される前記温度相関値を含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する電動過給機付内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記温度相関値検出部は、前記電動過給機の作動時間を計測する計測部を備え、
前記アイドルストップ制御部は、前記計測部によって計測される前記電動過給機の作動時間を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する請求項1に記載の電動過給機付内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記温度相関値検出部は、前記電動過給機に設けられたコンプレッサの回転軸を支持する軸受部の温度を検出する軸受部温度検出部を備え、
前記アイドルストップ制御部は、前記軸受部温度検出部によって検出される前記軸受部の温度を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する請求項1又は請求項2に記載の電動過給機付内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記温度相関値検出部は、前記電動過給機に設けられたモータのコイルの温度を検出するコイル温度検出部を備え、
前記アイドルストップ制御部は、前記コイル温度検出部によって検出される前記コイルの温度を前記温度相関値として含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する請求項3に記載の電動過給機付内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関に設けられた電動部へ供給される電力を蓄えるバッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部を備え、
前記アイドルストップ制御部は、前記蓄電量検出部によって検出される前記バッテリの蓄電量を含む前記自動停止条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を制御する請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の電動過給機付内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169162(P2011−169162A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31114(P2010−31114)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】