説明

電圧制御周波数発生器における妨害を補償する装置及び方法

本発明は、電圧制御周波数発生器を有する位相同期ループにおいて妨害を補償する装置及び方法であって、周波数発生器が同調電圧Vtuneにより公称周波数に同調され、この周波数発生器の実際の周波数は周波数比較により基準周波数と比較され、周波数比較を介して偏差が検出された場合に再調整され、妨害が発生した場合に同調電圧Vtuneが妨害事象に依存する妨害電圧Vstorにより変えられ、かくして公称周波数から逸脱した周波数が発生し、該周波数偏差が位相同期ループにより再び補正されるような装置及び方法に関するもので、電圧制御周波数発生器を有する位相同期ループにおいて妨害補償をする装置及び方法を提供する目的に基づき、既知の妨害事象が起きたならば、この方法で既定の公称周波数からの偏差を避ける。この目的は、本発明により、もし既知の妨害事象が起きるならば、妨害電圧Vstorを補償する電圧Vcompが妨害電圧Vstorに同期して符号を反転して生成され、妨害電圧Vstorに重畳される、という方法により達成される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御周波数発生器における妨害を補償する装置及び方法であって、該周波数発生器が同調電圧Vtuneを介して公称周波数に同調され、該周波数発生器の実際の周波数が周波数比較により基準周波数と比較され、周波数比較を介して偏差が発見された場合に同調され、妨害事象において妨害事象に依存する妨害電圧Vstorにより同調電圧Vtuneが変化され、したがって公称周波数からのずれた周波数が生成され、該周波数偏差が位相同期ループにより再び補正される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば無線に基づいて動作する多くの伝送システムにおいては、所望の搬送波周波数は、位相同期ループ(PLL)により所望の値に同調される。もし適切に機能するならば、非常に安定した搬送波周波数が位相同期ループにより生成される。特にこれは、高速伝送レートを持つWLANシステムにおけるような高次の変調のために利用される。64QAM OFDMの場合、許容される静的な周波数偏差はおよそ20ppmであり得るのに対し、性能の低下をもたらす動的な偏差は0.5ppm(搬送波周波数が5GHzの場合は2.5kHz)以上に過ぎない。
【0003】
現代の通信規格では典型的に送受信間の高速切り替えが必要とされ、これは、切り替え動作の間及び/又は後での位相同期ループの周波数の短期的な不安定につながり得る。
【0004】
この性質の妨害を補償する現状技術の変形例では、位相同期ループは、妨害を発生させる切り替え事象に続いて既定の所望の値から逸脱した周波数を示し、該事象は別の取りうるチャネルへの切り替え、即ち位相同期ループが切断されることであり得る。この切り替え事象に続いて、位相同期ループは、電圧制御発振器(VCO)の周波数を公称周波数に近づけて、位相同期ループが公称周波数に再び結合するまで調整する。この場合、電圧制御発振器の同調電圧Vtuneは、この説明の範囲外の効果による妨害又は切り替え事象の前の同調電圧とわずかに異なる。
【0005】
この特別な動作にもかかわらず、各妨害事象は位相同期ループにおいて過渡応答を起こす。すなわちそれは、妨害により起こされる周波数偏差を完全に補償し、位相同期ループが公称周波数に戻るように、同調電圧Vtuneに加えられなければならない電圧ステップを決定する。
【0006】
現状技術の位相同期ループは、例えば基準クロックパルスが供給される位相検出電荷ポンプ(PDCP)を有する。このモジュールは、ループフィルタ、ことによると三次のループフィルタを介して電圧制御発振器(VCO)に接続される。発振器周波数を出力する該電圧制御発振器の出力は、公称周波数と実際の周波数とを比較するために位相検出電荷ポンプの第2の入力に周波数分割器を介して接続される。もし電圧制御発振器の出力周波数が既定の公称値から逸脱していれば、電圧制御発振器の制御電圧Vtuneは、公称周波数に近づくまで位相検出電荷ポンプにより再び調整される。
【0007】
それゆえに、位相同期ループにより発生されるべき搬送波周波数は、既知の又は未知の妨害事象の場合に公称周波数から逸脱する。既知の妨害事象は、送信から受信への切り替え動作及びその逆又はチャネルの変更のような、装置の動作における態様により引き起こされる状態の変化を意味すると理解される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、電圧制御周波数発生器における妨害を補償する装置及び方法を創作し、それにより既知の妨害事象が発生する場合に規定された公称周波数から逸脱するのを避けることである。
【0009】
本目的は、本発明によれば、冒頭の段落に記載されたタイプの電圧制御周波数発生器を有する位相同期ループにおける妨害を補償する方法であって、もし既知の妨害事象が発生した場合、妨害電圧Vstorを補償する電圧Vcompが妨害電圧に同期して符号反転をして発生され、妨害電圧Vstorに重畳される、方法を用いて達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
送信/受信装置におけるある状態から別の状態への切り替え動作、例えば送信と受信との間での切り替えは、既知の妨害事象をもたらし、電圧制御発振器を制御する同調電圧Vtuneの妨害電圧Vstorの振幅の値による変化をもたらす。もし既知の妨害事象の時間と妨害事象に関連した妨害電圧Vstorの振幅の値との両方が知られていたら、符号反転させた時間同期補償電圧Vcompを発生させることにより、同調電圧Vtune及び発振器の実際の周波数に対する妨害事象の影響が除去できる。一つ又はそれ以上の知られた妨害事象がこのように除去されうる。
【0011】
本発明の一実施例において、関連する補償電圧Vcompは、すべての可能性のある既知の妨害事象に対して一つの測定動作において決定され、この関連する電圧は補償テーブルに格納される。
【0012】
本発明のさらなる実施例では、装置が動作されるとき及び/又は動作の間に、測定動作及び補償テーブルへの電圧値の格納が実行される。
【0013】
妨害事象により生成される妨害電圧値Vstorは、本発明にしたがって妨害を補償することを可能にするためには知られていなければならないので、妨害電圧値はそれぞれのありえる妨害事象に対して測定されなければならず、測定された値は補償電圧値としてデータベース、例えば補償テーブルに表形式で格納されなければならない。このため、送信/受信ユニットにおける状態変化により1つの測定動作において、一連の既知の妨害事象が次々にシミュレートされ、測定が実行される。最初に装置が動作されるとき、この動作は、周期的に、プログラム制御により又は動作時における状態変化を通じて開始されうる。補償テーブルの生成に続いて、テーブルに格納された値は、妨害を補償するために本発明に従った方法により利用される。該測定は、該方法により妨害を補償する間もまた実行され得、この方法がどの様に動作するかを監視し、補償が適切におこなわれない場合に妨害事象に割り当てられた値を補正する。
【0014】
本発明の特別な一実施例では、補償テーブルに格納された関連する補償電圧値は、妨害電圧Vstorを発生させる既知の妨害事象の発生の前に読み出され、この値を用いて補償電圧Vcompの発生は妨害電圧の発生と同期して制御される。
【0015】
動作状態の変化が起きる時間は送信/受信装置において知られているので、関連する値は既知の妨害事象が起きる前のちょうど良い時点に補償テーブルから読まれ、この値を用いて補償電圧Vcompの発生は、例えば制御可能な電圧源により妨害事象と同期して制御されうる。
【0016】
前記目的は、本発明によれば冒頭の段落に記載されたタイプの電圧制御発振器を含む位相同期ループにおいて妨害を補償する装置の場合に、電圧制御周波数発生器のVarGND端子が制御可能な電圧源に接続される態様で、達成される。
【0017】
極性が妨害電圧Vstorのものとは逆である補償電圧Vcompは、VarGND端子に印加され、このVarGND端子は、現状技術ではGNDポテンシャルに接続されるものである。もし両方の電圧が同じ振幅の値を持つならば、それらは互いに相殺し、したがってそれらの電圧制御周波数発生器に対する影響を打ち消す。
【0018】
本発明の一実施例では制御可能な電圧源は、VarGND端子及びGNDポテンシャルの間に位置された抵抗器並びにVarGND端子及び抵抗器の間に接続された電流源を有している。
【0019】
電圧制御周波数発生器のVarGND端子に補償電圧Vcompを発生させるために電流は、VarGND端子とGNDポテンシャルとの間の抵抗を通じて制御可能な電流源により流される。電流は抵抗器の両端に電圧降下を発生させる。この電圧降下は発生されるべき補償電圧と一致している。制御可能な電流源により発生された電流の大きさは、事前に補償テーブルから読み出される補償値により決定される。
【0020】
本発明のさらなる一実施例では、電圧制御周波数発生器のVarGND端子は、補償電流を発生させるデジタルアナログ変換器に接続されており、該デジタルアナログ変換器は送信/受信スイッチを介して2つのレジスタに接続されている。
【0021】
この実施例において、VarGND端子は制御可能な電流源に接続されており、この電流源の電流はVarGND端子とGNDポテンシャルとの間に位置された抵抗器を通じて流れ、これによってこの抵抗器の両端に補償電圧と対応する電圧降下を発生させる。デジタルアナログ変換器として設計された制御可能な電流源は、装置の動作状態に依存して、送信を支配するレジスタの部分又は受信を支配するレジスタの部分に反転スイッチにより接続され、この部分に発生されるべき補償の値が格納される。
【0022】
本発明の特別な一実施例では、VarGND端子が制御可能な電圧源に電圧分割器を介して接続されていて、電圧分割器が第1部分抵抗器で制御可能電圧源に接続され、第2の直列に接続された部分抵抗器はGNDポテンシャルに接続され、VarGND端子は第1部分抵抗器の第2部分抵抗器との接続部に接続される。
【0023】
中間の引き出し口へVarGND端子が接続されている、2つの抵抗器を持つ電圧分割器を有する電圧源は、制御可能な発振器のVarGND端子で補償電圧Vcompを発生させるために利用されうる。電圧分割器の分割比率のため、必要とされる補償電圧Vcompは適宜必要な大きさにされうる。VarGND端子とGNDとの間の抵抗器の両端に発生された電圧降下は、補償電圧Vcompと一致している。電圧源は補償テーブル内に格納された値によって制御され、したがって妨害事象と対応した電圧値を発生させる。
【0024】
本発明の一実施例では、位相検出電荷ポンプが配置され、該電荷ポンプには基準クロックパルスが第1位相検出入力(PDin1)を介して供給され、位相検出電荷ポンプの出力(Cpout)がループフィルタを介して電圧制御周波数発生器の入力に接続され、電圧制御周波数発生器の出力が周波数分割器を介して第2位相検出入力(PDin2)に接続され、更に測定回路が配置され、ループフィルタは、入力の第1コンデンサ、出力の第3コンデンサ、ループフィルタの入出力間に配置された第2抵抗器並びに入力に接続されており第1抵抗器及び第2コンデンサを有する直列回路、を有し、直列回路における第2コンデンサは測定回路の入力に接続されており、測定回路の入力は仮想接地端子を形成する。
【0025】
本発明による装置によって補償されるべき妨害電圧Vstorを測定するために測定装置は、該装置がループフィルタ端子に接続するように構成されている。同調電圧Vtuneは、この構成により異なる規定可能な時点で測定される。たとえばもし妨害事象が起きる前に第1の測定がおこなわれ、既定の時間tが経過したあとで第2の測定がなされるならば、妨害事象により起きる電圧の違いが測定され、デジタルの値に変換され、補償テーブルに格納されうる。測定回路入力は、第1抵抗器と第2コンデンサとを有する直列回路に対して仮想接地端子を形成し、実際のGNDポテンシャルとわずかな電位偏差をもたらす。しかしながらこのわずかな偏差は、位相同期ループの機能に対して、機能的な影響はない。
【0026】
本発明の別の実施例では、測定回路はネガティブフィードバック反転演算増幅器装置及びアナログデジタル変換器ユニットを有する。
【0027】
電位差は、非常に小さな振幅しかないので、アナログデジタル変換器の上流で演算増幅器により増幅される。反転入力及びその出力の間で演算増幅器は、2つのネガティブフィードバック逆並列ダイオードを有する外部回路を持ち、下流のアナログデジタル変換器への出力電圧を0Vから1.5Vの範囲に制限する。
【0028】
本発明の特に有利な実施例では、測定回路が電圧制御周波数発生器のvtune入力に接続され、測定回路はバッファ増幅器として働く第1演算増幅器を有し、この増幅器の出力は第1抵抗器及びコンデンサを介してネガティブフィードバック反転増幅として働く第2演算増幅器の反転入力に接続され、第2演算増幅器の非反転入力は基準電圧に接続され、第2演算増幅器の出力は2つの逆並列ダイオードを介して反転入力に帰還され、第2演算増幅器の出力は更に第2抵抗器を介して第1抵抗器及びコンデンサの接続部分に接続され、並びに第2演算増幅器の出力は電圧を出力するためにTDet端子を持つ。
【0029】
測定回路を電気回路に組み込む場合、大容量値のコンデンサは問題になる。この解決策はたとえば、望ましくない外部の素子としてコンデンサを実施することである。本発明による装置では、公称値がおよそ1pFである非常に小さなコンデンサで十分である。更に必要とされ、非反転入力がvtune端子に接続されている演算増幅器OP−AMPは、バッファ増幅器として働く。第2OP−AMPはネガティブフィードバック反転増幅器として動作する。ネガティブフィードバック増幅器の逆並列ダイオードは、出力信号TDetが0Vから1.5Vの範囲に限定されるような電圧にコンデンサCが充電されるようにする。
【0030】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記述される実施例を参照することで明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、現状技術から知られた位相同期ループの構成を示す。該位相同期ループは、素子R1、R2、C1、C2及びC3を有する三次のループフィルタ2を介して電圧制御発振器(VCO)3に接続された位相検出電荷ポンプ1を有する。発振器3により出力Outで生成された周波数を調整するために、この周波数は、周波数分割器4を介して位相検出電荷ポンプ1の入力PDin2に帰還される。外部基準周波数は、周波数比較のために第2入力PDin1に印加される。もし入力PDin1の基準周波数と、周波数分割器4により分割された発振器3の実際の周波数との間を比較した結果、不適切な偏差が発見された場合、発振器周波数を調整する同調電圧Vtuneは公称周波数の値が達成されるまで変化される。
【0032】
通常ループフィルタ2に属するコンデンサC3は、電圧制御発振器3の入力と並列に接続されるので、コンデンサC3の一端はVtune入力と接続されており、他端は発振器3のVarGND端子と接続されている。VarGND端子は更に当該回路の中央GNDポテンシャルに接続されている。
【0033】
本発明による方法を実施するために、発振器3のVarGND入力は、図2に示すように第3抵抗器R3を介して該回路のGNDポテンシャルに接続されている。この抵抗器を介して発生された電圧降下は補償電圧Vcompに対応する。この電圧の振幅は、デジタルアナログ変換器5(DAC)により制御され得、該変換器は発振器3における入力VarGNDに接続され、電圧又は電流を発生する。電圧制御デジタルアナログ変換器5では、第4抵抗器R4は発振器3の入力VarGNDと変換器5との間に挿入される。
【0034】
妨害事象は同調電圧Vtuneの振幅にわずかな影響しか与えないので、妨害電圧が0.1mVから10mVのオーダーの場合は、必要とされる補償電圧Vcompもまた小さい。補償電圧Vcompを発生させる一つのありえる方法は、デジタルアナログ変換器5を使うことである。もしこれが0から1V程度の出力電圧範囲を有するなら、例えば、発生されるべき補償電圧Vcompは、電圧を分割する抵抗器R3とR4とを有する直列回路を用いることにより発生される。電力源としてデジタルアナログ変換器5を使う場合、図2における回路構成で示された抵抗器R4は必要ではない。例えば、もしデジタルアナログ変換器5からの最大出力電流が1mAならば、抵抗器R3はR3=10オームとなるように寸法決めされる。
【0035】
切り替え動作を通じて、例えば送信と受信との間で切り替えが生じる場合にみられるノイズ(グリッチ)は、時間軸と対称的に起きる。もしT(Z1,Z2)が、状態1から状態2に遷移したときに発生したノイズに対応しているならば、これはT(Z1,Z2)=−T(Z2,Z1)であることを意味する。もし妨害電圧Vstorの振幅に対応した補償電圧Vcompが符号反転して供給されているならば、同調電圧Vtuneに対する及び発振器3の実際の周波数に対する該ノイズの負の影響はなくなる。いくつかのノイズが同時又は連続して起こる場合も同じ原則が適用されうる。妨害補償は、ここでは妨害と関連した補償電圧Vcompの同期的な発生により行う。このために図3は送信/受信ユニットの典型的なプロセスを示し、ここでシステムが送信状態「Tx」から既定の高い受信ゲインをもつ「CCA」状態へ切り替えられる。AGC動作は続いて開始し、その後実際の受信動作「Rx」となる。受信動作「Rx」のあとで再び新たに「CCA」状態となり、さらなるデータパケットの送信のために再び送信状態「Tx」となる。ある動作状態から次の状態に遷移する間にいつも妨害が起きるが、この妨害に関連した補償電圧Vcompを発生させることを通じて本発明による方法により該妨害は補償される。
【0036】
妨害事象に関連した補償電圧Vcompを発生させるために、関連する妨害電圧Vstorが決定されなければならない。これは、最終的なシステムにおける妨害電圧Vstorを測定する方法及び装置を必要とする。可能な一実施例が図4に示されている。この測定方法は、例えば温度変化又は他の影響によりドリフトする動作パラメータが追跡されねばならないので、好ましくは通常の機能を阻害すべきではない。起こる妨害事象は典型的に制御時間の経過に続いて位相同期ループにより補償されるので、同調電圧Vtuneの違いは、補償値の目安として又は誤り判定規準として位相同期ループの制御時間の前及び後の両方に利用されうる。適切に補償がおこなわれたならば、ある状態から別の状態へと遷移する間に同調電圧Vtuneにおいて理想的には変化が観測されないべきである。妨害事象の前及び位相同期ループによる過渡応答の後に測定されたVtuneの値の違いは、もしそれぞれの測定における定数が変化しないままだとすれば、起きる妨害電圧に比例する。
【0037】
補償電圧Vcompは同調電圧Vtuneよりも小さいので、電圧における変化のみが測定されるはずである。あらゆる事象においてVtuneにおける変化は小さいので、十分な増幅が必要とされる。適した測定回路は、図4で示され、C2が仮想接地端子に接続され、それは反転演算増幅器6により生成されている。
【0038】
演算増幅器6は、入力及び出力に対する動作電圧限界まで働くことができて入力電流が小さいCMOSのrail-to-railタイプであるべきである。電圧ゲインは交流電圧信号に対してnであり、例えばn=100とする。浮動直流電圧上限は、逆並列ダイオードにより制限される。妥当な基準電圧は、Vref=0.75Vで、アナログデジタル変換器構成(ADC)に対して0から1.5Vのオーダーの入力電圧となる。
【0039】
補償電圧Vcompは、アナログデジタル変換器ユニット7の2つのADCサンプル間の違いを計算することにより測定され、その際に、第1サンプルは妨害事象の時間付近に決定され、第2サンプルは位相同期ループによる過渡応答(ループフィルタ2により識別される)に続いて決定される。この違いは、R2及びR3により形成されるローパスフィルタがメインループフィルタよりも実質的に高い臨界周波数を持つならば、Vtuneの違いに近いC1における電位差に比例する。
【0040】
OP−AMP6は、Miklos Herpyによる「Analoge integrierte Schaltungen」(Franzis Verlag 1979, ISBN 3-7723-6152-8)という書籍に記載されたタイプのようなネガティブフィードバック反転増幅器6として動作される。OP−AMPのネガティブフィードバックにおけるRC素子のインピーダンスはZ2=nR1+n/(jωC2)であり、反転入力前は
Z1=R1+1/(jωC2)
それゆえ交流電圧ゲインはおよそ
v=−Z2/Z1=−n
であり、特に周波数に依存していない。ネガティブフィードバックは、OP−AMP6の反転入力における電位が非反転入力における電位すなわちVref=0.75Vと実質的に同一であることを保証する働きをするので、位相同期ループのループフィルタ2の振る舞いは、この検出回路によってはほとんど影響されない。図2における当初のフィルターに対して付加的となる、この直流電圧はコンデンサC2により阻止され、動的な振る舞いを変化させない。
【0041】
図5は、TD−2 RF構造における方法を実施する本発明による装置の更なる変形例を示す。TD−2 RFはスーパーヘテロダインアーキテクトに基づくので、常に2つの位相同期ループ(IF及びRF)が送信(Tx)及び受信(Rx)動作に含まれる。例えば図4に示された回路は、図5において2回構成されている。TD−2 BBは、妨害電圧を補償するために使われる2つのSigma/SeltaDACを持つ。該TD 2BBは更にRSSI測定をするADCをサポートしており、該ADCはTD−2 RFに接続され、アナログ多重化装置は簡素な差分変換器を介してADCに切り替えられる2つの入力を持つ。
【0042】
ループフィルタ2は、位相同期ループの完全な過渡応答がおよそ200マイクロ秒以内で達成されるように設計されている。既知の妨害事象は別として、例えば温度ドリフトにより起きる変化は同調電圧においても観測され、この変化は位相同期ループを切断させずに同調電圧Vtuneに変化をもたらす。短期的効果と長期的効果とを見分けるために、ADCサンプルは、状態変化のおよそ100マイクロ秒後に生成される。
【0043】
厳格な要件が周波数安定のための規準に対してなされ、位相同期ループを持つような将来のRFチップに、妨害補償及び測定回路装置を集積させることは、有利である。付加された回路は簡素で、これ以上のエネルギーを必要としない。
【0044】
VarGND端子に接続される内部電流モードDACは、図6に示されるように補償のために利用されうる。この電流モードDACは制御可能な電流源として働く。GNDポテンシャルの反対側にある外部の抵抗器R3は、実効補償電圧を決定する。TD−2RFの経験に基づいて、外部抵抗10オームに対して最大出力電流0.5mAの9ビットの単調なDACが使われるべきである。
【0045】
図4に示された回路は通常、集積化するには大きすぎるコンデンサを必要とする。バッファ増幅器として更に演算増幅器OP−AMP6が必要とされるがしかし、図6に示された回路では1pFのオーダーのコンデンサCであれば十分であり、それゆえより集積化に適している。該OP−AMP6は直接同調電圧Vtuneに接続されており、従来の非補償回路で使われているもの以外に追加のICピンは使われない。第2OP−AMP6は、交流電圧ゲインv=−nR5/R5=−nのネガティブフィードバック反転増幅器として利用される。
【0046】
ネガティブフィードバックモードにおける逆並列ダイオードは、出力信号TDetが0から1.5Vの範囲に制限されるような電圧にコンデンサCが充電されるようにさせる。
【0047】
参照リスト
1.位相検出電荷ポンプ
2.ループフィルタ
3.電圧制御周波数発生器
4.周波数分割器
5.デジタルアナログ変換器
6.演算増幅器
7.アナログデジタル変換器ユニット
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、現状技術による位相同期ループの構成を示す。
【図2】図2は、本発明による妨害電圧補償を持つ位相同期ループの構成を示す。
【図3】図3は、送信/受信ユニットの典型的なフローチャートを示す。
【図4】図4は、妨害電圧Vstorを決定する測定装置及び本発明による妨害電圧補償を持つ位相同期ループの構成を示す。
【図5】図5は、送信/受信ユニットにおける本発明による方法の測定及び補償を実施するさらなる装置を示す。
【図6】図6は、電気回路に集積化するのにふさわしい本発明による方法を実施するさらなる一実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御周波数発生器を有する位相同期ループにおける妨害を補償する方法であって、該周波数発生器は、同調電圧Vtuneを介して公称周波数に同調され、該周波数発生器の実際の周波数は周波数比較により基準周波数と比較され、もし該周波数比較を介して偏差が見つかったならば同調されるような方法であって、妨害の場合、前記同調電圧Vtuneは妨害事象に依存した妨害電圧Vstorにより変化され、したがって前記公称周波数から逸脱した周波数が発生され、該周波数が前記位相同期ループによって再び補正されるような方法において、もし既知の妨害事象が起きたならば、前記妨害電圧Vstorを補償する電圧Vcompが該妨害電圧Vstorに同期して符号反転して発生され、該妨害電圧Vstorに重畳されることを特徴とする方法。
【請求項2】
関連した前記補償電圧Vcompがすべての可能性のある前記既知の妨害事象の測定動作で決定され、この測定値が補償テーブルに格納されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該装置が動作させられるとき及び/又は動作中に、前記測定動作及び前記補償テーブルへの前記電圧値の格納がおこなわれることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補償テーブルに保存される前記関連した補償電圧値が、妨害電圧Vstorを発生させる既知の妨害事象の前に読み出され、該補償電圧値を用いて前記補償電圧Vcompが、該妨害電圧の発生と同期して制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電圧制御周波数発生器を有する位相同期ループにおける妨害を補償する装置であって、該周波数発生器はVtune入力及びVarGND端子を持ち、該電圧制御周波数発生器のVarGND端子は制御可能な電圧源に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記制御可能な電圧源が、前記VarGND端子及び前記GNDポテンシャルの間に接続された抵抗器、並びに該VarGND端子及び該抵抗器の間に接続された制御可能な電流源を有することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記電圧制御周波数発生器の前記VarGND端子が、補償電流を発生するデジタルアナログ変換器に接続され、このデジタルアナログ変換器が、送信/受信切り替えスイッチを介して2つのレジスタに接続されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記VarGND端子が電圧分割器を介して前記制御可能な電圧源に接続され、その場合に、該電圧分割器は第1部分抵抗器を介して該制御可能な電圧源に接続され、直列に接続された第2部分抵抗器は前記GNDポテンシャルに接続され、該第1部分抵抗器との接続部で該VarGND端子は該第2部分抵抗器に接続されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
基準クロックが第1位相検出器入力を介して印加されるような位相検出電荷ポンプが配設され、この位相検出電荷ポンプの出力がループフィルタを介して電圧制御周波数発生器の入力に接続され、この電圧制御周波数発生器の出力が周波数分割器を介して第2位相検出器入力に接続され、更に測定回路が配設され、前記ループフィルタは、入力端に第1コンデンサ、出力端に第3コンデンサ、該ループフィルタの入力と出力との間に配置された第2抵抗器並びに該入力に接続されると共に第1抵抗器及び第2コンデンサを有する直列回路を有しており、該直列回路の該第2コンデンサは前記測定回路の入力に接続されており、該測定回路の入力が仮想接地端子を形成することを特徴とする、請求項5乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記測定回路がネガティブフィードバック反転演算増幅器装置及びアナログデジタル変換器ユニットを有することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
測定回路が前記電圧制御周波数発生器のVtune入力に接続され、該測定回路はバッファ増幅器として働く第1演算増幅器を有し、該演算増幅器の出力が第1抵抗器及びコンデンサを介して第2演算増幅器の反転入力に接続され、この第2演算増幅器はネガティブフィードバック反転増幅器として働き、該第2演算増幅器の非反転入力は基準電圧に接続され、該第2演算増幅器の出力は2つの逆並列ダイオードを介して反転入力に帰還され、該第2演算増幅器の出力は更に、第2抵抗器を介して該第1抵抗器と前記コンデンサとの接続部に接続され、該第2演算増幅器の出力は電圧を出力するTDet端子を持つことを特徴とする、請求項5乃至8の何れか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−515120(P2007−515120A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544649(P2006−544649)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052756
【国際公開番号】WO2005/062471
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】