説明

電子デバイス、発振器及び電子デバイスの製造方法

【課題】蓋基板2とベース基板3の位置合わせを容易とし、不良発生率を低下させた電子デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の電子デバイス1は、蓋基板2と、この蓋基板2と接合し、蓋基板2との間に外気から密閉されるキャビティ4を構成するベース基板3と、このキャビティ4に収納される電子素子5と、蓋基板2又はベース基板3の外表面に設置されるモールド材6とを備えるようにしたので、蓋基板2又はベース基板3の反りが低減した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板間に構成したキャビティに電子素子を実装した電子デバイス、発振器及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及している携帯電話等の携帯情報端末には表面実装型の小型パッケージを用いた電子デバイスが多く使用されている。例えば振動子やMEMS、ジャイロセンサ、加速度センサ等は中空のキャビティ構造のパッケージに電子素子が収納される構造を有している。中空のキャビティ構造のパッケージは、例えばベース基板と蓋基板とを金属膜を介して陽極接合して構成するものが知られている。陽極接合の方法は例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
図10は、この種の電子デバイス50を多数個同時に形成する方法を示している。まず、ベース基板51と蓋基板52を用意する。次にベース基板51に複数の貫通孔を形成し、この貫通孔に導電材料を埋め込んで貫通電極56とする。ベース基板51の裏面には貫通電極56と電気的に接続する電極端子58を形成する。また、ベース基板51の表面には多数の電子素子55を実装する。電子素子55の実装の際には電子素子55と貫通電極56とを電気的に接続する。
【0004】
蓋基板52には多数の凹部59を形成する。そして、ベース基板51と蓋基板52を重ね合わせて接合する。接合は接着剤や陽極接合により行う。蓋基板52の凹部59によりキャビティ54を構成し、このキャビティ54内に電子素子55を収納する。その後、個々の電子デバイスに分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−2845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10に示すように、ベース基板51や蓋基板52は貫通電極56や凹部59を形成すると変形する。そのために、蓋基板52とベース基板51の位置合わせ精度が低下した。ベース基板51と蓋基板52の接合後においても図10に示すように反りが発生した。特にベース基板51や蓋基板52の外径を大きくして取り個数を増やそうとすると、基板の反りが顕著となってベース基板51と蓋基板52の位置合わせが困難となった。また、周囲温度が変化することにより実装した電子素子55に加わる応力が変化し、この応力変化に伴って電子素子55の特性が変動するという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の変形を低減させた電子デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子デバイスは、蓋基板と、前記蓋基板と接合し、前記蓋基板との間に外気から密閉されるキャビティを構成するベース基板と、前記キャビティに収納される電子素子と、前記蓋基板又は前記ベース基板の外表面に設置されるモールド材と、を備えることとした。
【0009】
また、前記蓋基板は凹部を有し、前記凹部が前記キャビティを構成することとした。
【0010】
また、前記ベース基板は前記キャビティ側の内表面から前記キャビティ側とは反対側の外表面にかけて貫通する貫通電極を有し、前記電子素子が前記貫通電極と電気的に接続されることとした。
【0011】
また、前記蓋基板と前記ベース基板とは金属材料を含む接合材を介して接合されることとした。
【0012】
また、前記電子素子は、前記ベース基板の内表面に片持ち状態で実装される水晶振動子であることとした。
【0013】
また、前記モールド材はエポキシ樹脂から成ることとした。
【0014】
本発明の発振器は、上記いずれかに記載した電子デバイスと、前記電子デバイスに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えることとした。
【0015】
本発明の電子デバイスの製造方法は、蓋基板に凹部を形成する凹部形成工程と、ベース基板に電子素子を実装する実装工程と、前記蓋基板又は前記ベース基板の外表面にモールド材を設置するモールド材設置工程と、前記凹部に前記電子素子を収納して前記蓋基板と前記ベース基板を接合する接合工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
【0016】
また、前記モールド材設置工程は前記接合工程の前に行うこととした。
【0017】
また、前記モールド材設置工程は前記接合工程の後に行うこととした。
【0018】
また、前記ベース基板に貫通電極を形成する貫通電極形成工程を更に含み、前記モールド材設置工程は、前記ベース基板の前記電子素子が実装される側とは反対側の外表面に前記貫通電極を露出させて前記モールド材を設置する工程であることとした。
【0019】
また、前記凹部形成工程は前記蓋基板に凹部を複数形成する工程であり、前記実装工程は前記ベース基板に前記電子素子を複数実装する工程であり、接合した前記蓋基板と前記ベース基板からなる積層体を切断分離する分離工程を備えることとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子デバイスは、蓋基板と、この蓋基板に接合し、蓋基板との間にキャビティを構成するベース基板と、キャビティに収納される電子素子と、蓋基板又はベース基板の外表面に設置されたモールド材と、を備える。蓋基板又はベース基板の外表面にモールド材を設置したことにより、基板の反りが低減し蓋基板とベース基板の位置合わせが容易となり、不良発生率を低下させることができる。更に、蓋基板又はベース基板から電子素子に印加される応力変動が減少し電子素子の特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電子デバイスの縦断面模式図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る電子デバイスの縦断面模式図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る電子デバイスの縦断面模式図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る電子デバイスの分解斜視図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係る発振器の上面模式図である。
【図6】本発明の第五実施形態に係る電子デバイスの製造方法を表す工程図である。
【図7】本発明の第五実施形態に係る電子デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係る電子デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る電子デバイスの製造方法を説明するための図である。
【図10】従来公知の電子デバイスを多数個同時に形成する方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<電子デバイス>
本発明の電子デバイスは、蓋基板と、この蓋基板に接合し、蓋基板との間にキャビティを構成するベース基板と、このキャビティに収納される電子素子と、蓋基板又はベース基板の外表面に設置されたモールド材を備える。
【0023】
本発明のこの構成により、蓋基板又はベース基板の反りが低減し、蓋基板とベース基板との間の位置合わせが容易となり、不良の発生率を低減させることができる。また、基板の反りが低減したことにより、大きなガラス基板を使用でき、多数個取りが可能となるので電子デバイスのコストダウンを図ることができる。また、基板の反りが低減したことにより、周囲の温度変化に対して電子素子に印加される応力変動が減少し、電子素子の特性が安定化する。
【0024】
ここで、蓋基板及びベース基板としてガラス、セラミックス、合成樹脂、その他の材料を使用することができる。ガラス材料を使用すれば加工が容易であり、かつ水分や他の不純部の浸透を防止することができるので安価で高信頼性のパッケージを構成することができる。キャビティは、蓋基板側に形成した凹部により構成してもよいし、ベース基板側に形成した凹部により構成してもよい。電子素子は、蓋基板の内表面に実装してもよいし、ベース基板の内表面に実装してもよい。
【0025】
モールド材は蓋基板の外表面に形成してもよいし、ベース基板の外表面に形成してもよいし、蓋基板とベース基板の両基板の外表面それぞれに形成してもよい。モールド材として樹脂材料、例えばエポキシ樹脂に充填材を加えたものを使用することができる。充填材としてはシリカ、アルミナ、アルミナ粉末等を使用することができる。充填材の種類や量に応じてモールド材の線膨張係数を調節することができる。また、モールド材は電子デバイスの外周面となるので、このモールド材に識別番号等を刻印しておけば確実に製品を特定することができる。
【0026】
蓋基板とベース基板とを接着剤を用いて接合する、或いは金属材料を介在させて陽極接合することができる。陽極接合すれば高気密性のキャビティを構成することができる。また、キャビティ内に封止した電子素子からの電極取り出しは、蓋基板とベース基板の接合面に形成した電極により外部に取り出すようにしてもよいし、ベース基板又は蓋基板を貫通する貫通電極により外部に取り出すようにしてもよい。
【0027】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る電子デバイス1の縦断面模式図である。電子デバイス1は、ソーダ石灰ガラスから成る蓋基板2と、蓋基板2に接合し、蓋基板2との間に外気から密閉されるキャビティ4を構成するソーダ石灰ガラスから成るベース基板3と、キャビティ4に収納され、ベース基板3に面実装される電子素子5と、蓋基板2のキャビティ4とは反対側の外表面に設置されるモールド材6とを備える。蓋基板2とベース基板3とは金属材料8を介して接合される。キャビティ4は蓋基板2に形成した凹部9から構成される。
【0028】
蓋基板2は、凹部9を成形した後は凹部9側を凸にして反りやすい。そこで、蓋基板2の凹部9側とは反対側の表面にモールド材6を設置する。この場合に、ソーダ石灰ガラスの線膨張係数が9〜11(ppm/℃)であり、モールド材6の線膨張係数をソーダ石灰ガラスよりも小さくする。モールド材料を蓋基板2の表面に塗布し温度100℃以上で熱硬化させてモールド材6を形成する。冷却して室温にもどした時に、蓋基板2の線膨張係数がモールド材6の線膨張係数より大きいので蓋基板2の外表面に圧縮応力が加わり、蓋基板2は凹部9側に凸となる反りが修正されて平坦化する。モールド材6の線膨張係数はモールド材6に充填する充填材や充填量により調節することができる。モールド材料としてエポキシ樹脂にシリカを充填したものを使用する場合は、シリカの充填量を多くすることによりモールド材6の線膨張係数を低下させることができる。
【0029】
このように、蓋基板2の外表面にモールド材6を設置したので、蓋基板2の反りが低減し、蓋基板2とベース基板3との間の位置合わせが容易となる。また、大型基板を使用して多数個取りが可能となることから電子デバイスのコスト低減化を図ることができる。また、電子デバイス1の反りが低減したことにより、周囲の温度変化に対して電子素子に印加される応力変動が減少し、電子素子の特性を安定化させることができる。
【0030】
(第二実施形態)
図2は本発明の第二実施形態に係る電子デバイス1の縦断面模式図である。電子デバイス1は、ソーダ石灰ガラスから成る蓋基板2と、蓋基板2に接合し、蓋基板2との間に外気から密閉されるキャビティ4を構成するソーダ石灰ガラスから成るベース基板3と、キャビティ4に収納され、ベース基板3に面実装される電子素子5と、蓋基板2及びベース基板3の外表面に設置されるモールド材6a、6bと、を備える。
【0031】
電子デバイス1は、更に、ベース基板3を貫通する貫通電極7a、7bと、モールド材6bの外表面に形成され、モールド材6bを貫通して貫通電極7a、7bそれぞれに電気的に接続する電極端子10a、10bと、を備える。電子素子5は図示しない電極を介して貫通電極7a、7bに電気的に接続してベース基板3の上に実装される。従って、電子素子5は、電極端子10a、10bを介して外部から電力が供給され、また外部への送信が可能になる。
【0032】
本実施形態では、ベース基板3の外表面にもモールド材6bを設置したので、ベース基板3の反りを低減させることができる。モールド材6bはベース基板3の反り、或いは蓋基板2とベース基板3とを接合したときの反りに応じてモールド材6bの線膨張係数を調節すればよい。例えば、ベース基板3が単独で、或いは蓋基板2とベース基板3とを接合した後に電子素子5側を凸にして反りやすい場合は、モールド材6bの線膨張係数をソーダ石灰ガラスの線膨張係数よりも小さくすればよい。
【0033】
更に、モールド材6bは電子デバイス1を基板等に実装した際の緩衝部材として機能する。即ち、モールド材6bが無い場合は、電子デバイス1を基板等に実装する際に貫通電極7a、7bが基板等の実装電極と直接接合する。電子デバイス1の実装時や他の環境変化に伴って貫通電極7a、7bに大きな応力が印加され、貫通電極7a、7b近傍のベース基板3、例えばガラス基板に欠けや亀裂が入り破損する不良が発生した。これに対して本実施形態においては実装基板の電極と貫通電極7a、7bとの間にモールド材6b及び電極端子10a、10bが介在するので、貫通電極7a、7b近傍のベース基板3に印加される応力が緩和され、ベース基板3に割れや欠けが発生することを防ぐことができる。
【0034】
このように、蓋基板2及びベース基板3の外表面にモールド材6a、6bを設置したので、蓋基板2及びベース基板3それぞれの反りが低減し、電子素子5に対して印加される応力が減少して特性が安定する。また、周囲の温度変化に対して電子素子に印加される応力変動が減少し、電子素子の特性を安定させることができる。更に、モールド材6a、6bは応力緩和層として機能するので環境変化に対してベース基板3の割れや欠けの発生を防ぐことができる。このように、特性が安定しかつ信頼性の高い高品質の電子デバイスを提供することができる。
【0035】
(第三実施形態)
図3及び図4は本発明の第三実施形態に係る電子デバイス1の縦断面模式図及び分解斜視図である。第二実施形態と異なる点は、電子素子5が片持ち状態でベース基板3の上に実装される点であり、その他の構成は第二実施形態とほぼ同様である。以下、主に異なる部分について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付している。
【0036】
蓋基板2とベース基板3とは基板外周部において金属材料8を接合材として陽極接合される。電子素子5は、単結晶水晶から成る圧電振動片11と、圧電振動片11の両面に形成した励振電極12と、励振電極12に電気的に接続する接続電極13a、13bから成る。電子素子5は一方の端部が2つの実装部14a、14bに片持ち状態で実装される。2つの接続電極13a、13bは、実装部14a、14b、引回し電極15a、15b、貫通電極7a、7bを介して電極端子10a、10b(又は10c)に互いに電気的に分離して接続される。蓋基板2とベース基板3とを接合した後に蓋基板2側を凸に反りやすい場合は、モールド材6bの線膨張係数を蓋基板2やベース基板3の線膨張係数、例えばソーダ石灰ガラスの線膨張係数よりも小さくすればよい。また、蓋基板2とベース基板3とを接合した後にベース基板3側を凸に反りやすい場合は、モールド材6bの線膨張係数をソーダ石灰ガラスの線膨張係数よりも大きくすればよい。
【0037】
なお、本実施例において、圧電振動片11としてATカット水晶振動片を使用している。ここで、蓋基板2及びベース基板3の外径はそれぞれ略2mm×略1mmであり、蓋基板2及びベース基板3の厚さはそれぞれ略0.2mmであり、モールド材6a、6bの厚さはそれぞれ略50μmであり、蓋基板2に形成した凹部9の深さは略0.1mmである。また、キャビティ4内は真空が維持され、圧電振動片11の振動が空気の抵抗を受けない。
【0038】
このように、蓋基板2及びベース基板3の外表面にモールド材6a、6bを設置したことにより、蓋基板2又はベース基板3の反りが低減し蓋基板2とベース基板3を接合する際の位置合わせが容易となるとともに、圧電振動片11に加わる応力が低減し、圧電振動片11の振動数のばらつきが低減する。加えて、周囲の温度変化に対し周波数特性が安定する。また、モールド材6bは緩衝部材として機能するので、電子デバイス1の実装時や他の環境変化に伴うベース基板3の割れや欠けを防ぐことができる。更に、モールド材6a、6bは電子デバイス1の外周面となるので、このモールド材6a又は6bに識別番号等を刻印しておけば確実に製品を特定することができる。
【0039】
<発振器>
(第四実施形態)
図5は、本発明の第四実施形態に係る発振器40の上面模式図である。本発振器40は第三実施形態に示す単結晶水晶から成る圧電振動片11を用いた電子デバイス1を組み込んでいる。図5に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した電子デバイス1、集積回路41及び電子部品42を備える。電子デバイス1は、電極端子10a、10bに与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、電子デバイス1から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による電子デバイス1は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体をコンパクトに構成することができる。
【0040】
<電子デバイスの製造方法>
本発明に係る電子デバイスの製造方法は、蓋基板に凹部を形成する凹部形成工程と、ベース基板に電子素子を実装する実装工程と、蓋基板又はベース基板のいずれか一方又は両方の外表面にモールド材を設置するモールド材設置工程と、凹部に電子素子を収納して蓋基板とベース基板を接合する接合工程とを備える。
【0041】
蓋基板又はベース基板のいずれか一方又は両方の外表面にモールド材を設置したことにより蓋基板又はベース基板の反りが低減し、蓋基板とベース基板との間の位置合わせが容易となる。更に、ベース基板にモールド材を設置したときは実装工程における電子部品の実装が容易となり、不良発生を低減させることができる。また、基板の反りが低減したことにより大きな基板を用いた多数個取りが可能となり、電子デバイスのコストダウンを図ることができる。同時に、環境変化に対して電子素子の特性変動が小さくなり、電子デバイスの高品質化を図ることができる。
【0042】
(第五実施形態)
図6〜図9は、本発明の第五実施形態に係る電子デバイスの製造方法を説明するための図である。図6が電子デバイスの製造方法を表す工程図であり、図7、図8及び図9が各工程の説明図である。本実施形態においては、蓋基板2及びベース基板3としてソーダ石灰ガラスを使用し、電子素子5は水晶振動子とする。
【0043】
図6及び図7を用いて蓋基板2の製造方法を説明する。まず、蓋基板準備工程S10において、板状の蓋基板2を用意する。次に、型成形法により蓋基板2を成形型に設置し、加熱しながら押圧して複数の凹部9を同時に形成する。例えば、外径が4インチ、厚さが略0.2mmのソーダ石灰ガラス板に深さが略0.1mmの凹部9を多数同時に形成する。なお、凹部9は、型成形により形成することに代えて、蓋基板2の表面にマスクを設置し、サンドブラスト法やエッチング法により多数同時に形成してもよい。
【0044】
次に、金属膜形成工程S2において、蓋基板2の凹部9側の表面にスパッタリング法によりアモルファスシリコンを含有するアルミニウムからなる金属膜17を堆積する。金属膜17は、後工程において蓋基板2とベース基板3との間の接合材として使用する。なお、蒸着法やめっき法により金属膜17を堆積してもよい。また、必要に応じて他の金属材料を使用することができる。
【0045】
次に、モールド材設置工程S3において、蓋基板2の凹部9とは反対側の外表面にモールド材6aを設置する。モールド材料としてエポキシ樹脂材料にシリカを充填したものを使用し、蓋基板2の外表面に塗布し温度約150℃に加熱し硬化させてモールド材6aを形成する。モールド材6aは20μm〜100μmの厚さに、好ましくは50μmの厚さに形成する。
【0046】
図6及び図8を用いてベース基板3の製造方法を説明する。まず、板状のベース基板3を準備し、貫通孔形成工程S40においてベース基板3に複数の貫通孔16を形成する。凹部9の形成と同様に、型成形法により複数の貫通孔16を一括形成することができる。また、型成形法に代えて、表面にマスクを設置して、サンドブラスト法或いはエッチング法によりにより複数の貫通孔16を同時に形成してもよい。例えば、外径が4インチ、厚さが略0.2mmのソーダ石灰ガラス板に直径が50μm〜0.3mmの貫通孔16を縦方向と横方向に略0.5mm〜2mmのピッチで形成する。
【0047】
次に、貫通電極形成工程S4において、貫通孔16に金属材料を充填して貫通電極7とする。例えば、貫通孔16に金属棒を挿入してガラスと金属棒とを熱溶着或いは接着剤を介して気密に接着することができる。その後、ベース基板3の表面を研削又は研磨して平坦化する。
【0048】
次に、モールド材設置工程S5において、ベース基板3の下面に貫通電極7の端面を露出させてモールド材6bを設置する。モールド材料としてエポキシ樹脂材料にシリカを充填したものを使用し、ベース基板3の外表面に塗布し温度約150℃に加熱し硬化させてモールド材6bを形成する。モールド材6bは20μm〜100μmの厚さに、好ましくは50μmの厚さに形成する。なお、モールド材6bの線膨張係数はベース基板3の反りの状態や、蓋基板2と接合した後の反りの状態を考慮して充填材の種類や充填量を調節する。より具体的には、ベース基板3が電子素子5の実装側を凸に反る場合や蓋基板2との接合後に蓋基板2側を凸に反る場合には、モールド材6bの線膨張係数をソーダ石灰ガラスの線膨張係数よりも小さくする。逆に、ベース基板3がモールド材6b側を凸に反る場合や蓋基板2とベース基板3の接合後にベース基板3側を凸に反る場合には、モールド材6bの線膨張係数をソーダ石灰ガラスの線膨張係数よりも大きくする。
【0049】
次に、電極端子形成工程S6において、モールド材6bの表面及び貫通電極7のモールド材6b側の露出面に電極端子10を形成する。電極端子10は、蒸着法、スパッタリング法或いはめっき法等によりモールド材6bの外表面に金属膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びエッチング法によりパターニングしてもよいし、導電材料からなるパターンを印刷し、熱処理して電極端子10としてもよい。
【0050】
次に、実装工程S7において、電子素子5を、実装部14を介してベース基板3の上面に片持ち状に実装する。これにより、電子素子5の表面に形成される図示しない接続電極は、実装部14及び貫通電極7を介して電極端子10に電気的に接続する。なお、本実施形態において電子素子5は水晶振動子であり、一方端を実装部14に固定し、他方端を振動させるためにベース基板3から浮かせた。
【0051】
図6及び図9を用いて蓋基板2とベース基板3の接合工程S8と分割工程S9を説明する。接合工程S8において、蓋基板2の凹部9にベース基板3に実装した電子素子5が収納されるように蓋基板2とベース基板3とを金属膜17を介在させて積層する。この接合工程S8は真空中で行う。蓋基板2とベース基板3のそれぞれの外表面にはモールド材6a及び6bが設置されているので各基板の反り量が小さく、容易に位置合わせを行うことができる。次に、蓋基板2とベース基板3を加熱し、蓋基板2とベース基板3の間に高電圧を印加して両基板の当接部を陽極接合する。例えば温度200℃〜250℃に加熱し蓋基板2とベース基板3に500Vの電圧を印加して陽極接合する。これにより、電子素子5は外気から遮断され、真空中に保持される。次に、分割工程S9においてダイサーにより個々の電子デバイス1に分離する。
【0052】
このように、各基板の反り量が減少し、位置合わせが容易となったことにより、より大きな基板を使用して多数の電子デバイス1を同時に形成することができ、コストダウンを図ることができる。また、周囲の温度変化に対して電子素子に印加される応力変動が減少し、電子素子の特性が安定化し、電子デバイスの高品質化を図ることができる。
【0053】
なお、本実施形態では金属膜17を蓋基板2側に形成したが、金属膜17をベース基板3側に形成してもよい。また、上記実施形態においては金属膜17が蓋基板2の凹部9の側面や底面にも形成したが、金属膜17は接合材として機能すればよいので、凹部9の底面や側面の金属膜17は除去してもよい。また、本発明においては陽極接合が必須要件ではなく、例えば蓋基板2とベース基板3とを接着剤を介して接合してもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、蓋基板2とベース基板3を接合する前に各基板の外表面にモールド材6a、6bを形成したが、本発明はこれに限定されず、蓋基板2とベース基板3を接合した後に蓋基板2又はベース基板3の外表面にモールド材6a、6bを設置してもよい。なお、この場合は蓋基板2とベース基板3の位置合わせが可能である場合に限られる。また、上記実施形態においてモールド材料を基板表面に塗布してモールド材6を形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、蓋基板2やベース基板3を型に設置し、モールド材料を型に流し込んで成型するトランスファー成形によりモールド材6を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電子デバイス
2 蓋基板
3 ベース基板
4 キャビティ
5 電子素子
6 モールド材
7 貫通電極
8 金属材料
9 凹部
10 電極端子
11 圧電振動片
12 励振電極
13 接続電極
14 実装部
15 引回し電極
16 貫通孔
17 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋基板と、
前記蓋基板と接合し、前記蓋基板との間に外気から密閉されるキャビティを構成するベース基板と、
前記キャビティに収納される電子素子と、
前記蓋基板又は前記ベース基板の外表面に設置されるモールド材と、を備える電子デバイス。
【請求項2】
前記蓋基板は凹部を有し、前記凹部が前記キャビティを構成する請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記ベース基板は前記キャビティ側の内表面から前記キャビティ側とは反対側の外表面にかけて貫通する貫通電極を有し、前記電子素子が前記貫通電極と電気的に接続される請求項1又は2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記蓋基板と前記ベース基板とは金属材料を含む接合材を介して接合される請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記電子素子は、前記ベース基板の内表面に片持ち状態で実装される水晶振動子である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記モールド材はエポキシ樹脂から成る請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の電子デバイスと、
前記電子デバイスに駆動信号を供給する駆動回路と、を備える発振器。
【請求項8】
蓋基板に凹部を形成する凹部形成工程と、
ベース基板に電子素子を実装する実装工程と、
前記蓋基板又は前記ベース基板の外表面にモールド材を設置するモールド材設置工程と、
前記凹部に前記電子素子を収納して前記蓋基板と前記ベース基板を接合する接合工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記モールド材設置工程は前記接合工程の前に行う請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記モールド材設置工程は前記接合工程の後に行う請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記ベース基板に貫通電極を形成する貫通電極形成工程を更に含み、
前記モールド材設置工程は、前記ベース基板の前記電子素子が実装される側とは反対側の外表面に前記貫通電極を露出させて前記モールド材を設置する工程である請求項8〜10のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記凹部形成工程は前記蓋基板に凹部を複数形成する工程であり、
前記実装工程は前記ベース基板に前記電子素子を複数実装する工程であり、
接合した前記蓋基板と前記ベース基板からなる積層体を切断分離する分離工程を備える請求項8〜11のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−30957(P2013−30957A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165291(P2011−165291)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】