説明

電子写真印刷機

【課題】簡単な部品構成で心ずれやスラスト荷重が発生しない構成で感光ドラムと転写ドラムを支持でき、またこれの装着を容易にできるようにした電子写真印刷機とする。
【解決手段】感光ドラム1と転写ドラム2を有する電子写真印刷機において、感光ドラムと転写ドラムを、奥側の軸部を軸受装置16にて片持支持可能にして支持されたそれぞれのドラム本体12,13に、手前側へ引き出し可能に嵌合し、上記各ドラム本体の手前側の軸部を、この各軸部に対して軸方向に抜き動作可能にした軸保持筒24と、この軸保持筒を軸受30を介して支持するハウジング22,23とからなる可動軸受17,18にて支持し、この両可動軸受を手前側のフレームFに回動可能に設けた回動フレーム21に支持し、転写ドラム側の可動軸受のハウジング23と転写ドラムのドラム本体の奥側の軸部を支持する軸受装置のハウジング31とを偏心ハウジングとし、両ハウジングを角変位することにより転写ドラムを感光ドラムに対して接離可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光ドラムと転写ドラムとを有する電子写真印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子写真印刷機にあっては、感光ドラムと転写ドラムはこれの保守、点検のために容易に装脱することが望ましい。そしてこれらが容易に装脱出きるようにした従来技術として、若干技術分野を異にするが引用文献1に示されたドラム装置が知られている。
【0003】
この従来の技術のドラム装置にあっては、側壁に軸受けされた少なくとも1つのドラムを備えた輪転印刷機に関するものであり、上記側壁の1つはこの側壁に回動可能に支持された扉または取り外し可能な蓋を有し、この扉または蓋に上記ドラムが軸受を介して支承され、上記扉または蓋により、上記ドラムの端面側が開放されるようになっている。
【0004】
そしてドラムの上記扉に向けられた端面側に、円錐台形の突出部と、この突出部が嵌合する円錐台形の凹部を有する対の円錐形上部を備えた分離箇所が設けられ、この分離箇所においてジャーナルまたはこのジャーナルの一部が上記ドラム本体から分離可能になっており、上記軸受と共に上記扉によって回動可能になっている。
【0005】
この従来の技術にあっては、凹凸の円錐形状部により軸受け部とドラムとが連結され、またこの円錐形状部にて軸心の位置決めされるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特許第3037279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術にあっては、円錐形状部を精度よく加工する上での加工の難しさ、凹凸形状のそれぞれの心位置が狂いやすい、円錐形状の凹凸の接続時における片当たりが発生しやすいため、その場合に片当たり部分の磨耗の進行が早い等の問題があり、その上、円錐形状の角度構成によっては軸に対してラジアル荷重の分力としてスラスト荷重が発生し、スラスト方向の構成要素の全てがスラスト方向に固定されていないと軸心の振れが生じるという問題が生じる。
【0008】
本発明は簡単な部品構成にて、心ずれやスラスト荷重が発生しない構成で、電子写真印刷機の感光ドラムと転写ドラムを支持できると共に、容易に装脱できるようにした電子写真印刷機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子写真印刷機は、感光ドラムと転写ドラムを有する電子写真印刷機において、感光ドラムと転写ドラムを、奥側の軸部を軸受装置にて片持支持可能にして支持されたそれぞれのドラム本体に、手前側へ引き出し可能に嵌合し、上記各ドラム本体の手前側の軸部を、この各軸部に対して軸方向に抜き動作可能にした軸保持筒と、この軸保持筒を軸受を介して支持するハウジングとからなる可動軸受にて支持し、この両可動軸受を手前側のフレームに回動可能に設けた回動フレームに支持し、転写ドラム側の可動軸受のハウジングと転写ドラムのドラム本体の奥側の軸部を支持する軸受装置のハウジングとを偏心ハウジングとし、両ハウジングを角変位することにより転写ドラムを感光ドラムに対して接離可能にした構成になっている。
【0010】
そして上記写真印刷機において、回動フレームを感光ドラム側の可動軸受を支持する部分と、転写ドラム側の可動軸受を支持する部分とを別体にして個々に回動可能にした。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明によれば、容易に装脱できるようにした感光ドラムと転写ドラムとを、回転時にスラスト方向等、軸直角方向以外の分力が作用することがない通常用いられるラジアル構成の軸受にて保持固定することができ、したがって軸心の回転による振れを最少に押さえられて、印刷精度、印刷品質を維持することができる。
【0012】
また、感光ドラム及び転写ドラムが嵌合支持されるそれぞれのドラム本体の手前側の軸部を支持する軸受構成が簡単であり、しかも各軸部との装脱が軸保持筒の抜き差しと回動フレームの回動とにより容易に行うことができて感光ドラムと転写ドラムの保守点検のための装脱を容易に行うことができる。
【0013】
そして感光ドラムと転写ドラムのそれぞれの手前側の可動軸受を支持する回動フレームを、それぞれの可動軸受ごとに別体として別々に回動できるようにしたことにより、感光ドラムと転写ドラムのそれぞれの保守点検を別々に行うことができ、それぞれの耐用性に応じて個々に保持点検を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明を実施しようとする電子写真印刷機を概略的に示す説明図であり、図中1は感光ドラム、2はこの感光ドラム1に対接する転写ドラム、3はこの転写ドラム2に対接するバックアップローラである。
【0015】
この電子写真印刷機にあっては、上記感光ドラム1は図示しないモータ等の駆動手段にて画像形成時に一定速度で矢印方向に回転され、感光ドラム1の表面は帯電装置4にて暗中にて一様に帯電され、ついで感光ドラム1の表面に露光装置5により原稿光像が照射結像され、これにより感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。その後、静電潜像が現像領域を通過する際に、現像装置6にてこの静電潜像が可視像化されて感光ドラム1の表面にトナー像が形成される。
【0016】
そして、この感光ドラム1の表面上におけるトナー像は、転写領域にて転写ドラム2を通して印加されるバイアス電圧とドラム間のニップ圧により、転写ドラム2の表面に1次転写され、この1次転写のトナー像は2次転写領域にて、転写ドラム2とバックアップローラ3の間を通過する被記録媒体7に2次転写されるようになっている。なお、図中8aは感光ドラム1に残留したトナーを除去する感光体クリーナ、8bは同じく転写ドラム2に残留したトナーを除去する転写体クリーナ、9aは除電器、9bはキャリア液供給装置である。
【0017】
上記感光ドラム1と転写ドラム2は図2に示すようになっている。感光ドラム1と転写ドラム2は手前側を端板10,11にて閉じるスリーブ状になっていて、それぞれはドラム本体12,13に対して手前側から装脱可能に嵌合されるようになっている。各ドラム本体12,13の周面の複数個所には軸方向に案内部材14が設けてあり、この案内部材14に各ドラム1,2の内周面に案内される。そして各ドラム本体12,13の手前側の軸12a,13aに設けたねじに螺合する固定ねじ15,15にて奥側へ向けて固定されている。このときのドラム本体12,13の円周方向の位置決めは、図6に示したように、ドラム本体12,13の端面に設けた突起12b,13bが感光ドラム1の端板10,11に設けた穴1a,2aに嵌合することによって行われるようになっている。
【0018】
上記各ドラム本体12,13のそれぞれの奥側の軸部は、奥側の本体フレームFに支持された軸受装置16にて片持支持可能に支承されている。またそれぞれの手前側の軸12a,13aは、軸方向に移動可能にした可動軸受17,18に支承されている。この両可動軸受17,18は、電子写真印刷機の手前側の本体フレームFに一端をヒンジ部材20にて枢支された回動フレーム21に設けられている。
【0019】
上記両可動軸受17,18は、これらを上記回動フレーム21に支持するハウジング22,23の構成が異なるだけで他の構成は同一であるので、感光ドラム1側の可動軸受17を図3にて説明する。
【0020】
24は軸12aの先端側から嵌合深さ寸法Lにわたって軸方向に摺動可能に、かつ密に嵌合する軸保持筒であり、この軸保持筒24の外周は軸受ジャーナル25となっている。そしてこの軸保持筒24には、この軸保持筒24の軸心部を手前から貫通して先端部に雄ねじ26を有する係止軸27が回転可能に、かつスラストベアリング28を介して軸方向に支持されて設けてある。この係止軸27の先端にノブ29が固着してある。上記雄ねじ26は、ドラム本体12の手前側の軸12aの軸端に設けた雌ねじ12cに螺合するようになっている。
【0021】
上記軸保持筒24の軸受ジャーナル25は、回動フレーム21に固着されたハウジング22に、例えばニードルベアリングを用いた軸受30を介して回転自在に、かつ軸方向に摺動可能にして支承されている。そして軸保持筒24は、ハウジング22に対して上記軸12aと軸保持筒24との嵌合深さ寸法Lより長い範囲にわたって手前側へ移動できるようになっている。
【0022】
図3は係止軸27をノブ29にて回転して、これの先端に設けた雄ねじ26を軸12aの雌ねじ12cにねじ込んだ状態を示す。この状態では係止軸27のねじ込み移動に追随して軸保持筒24が奥側へ移動し、これの筒部が嵌合深さLにわたって軸12aに嵌合する。そしてこの状態では係止軸27の締め付けにより軸保持筒24が軸12aに一体結合され、軸12aはこの軸保持筒24を介して軸受30にてハウジング22に支承される。
【0023】
一方、図4は係止軸27をノブ29にて逆方向に回転して、これの先端に設けた雄ねじ26を軸12aの雌ねじ12cから離脱した状態を示す。この状態では係止軸27の抜け出しに追随して軸保持筒24が手前側へ移動し、上記両ねじ26,12cの離脱により係止軸27は手前側へ自由に移動し、軸保持筒24の筒部が軸12aから外れ、この軸12aが可動軸受17に対して軸方向及び軸直角方向に自由状態となる。
【0024】
図2にて示される転写ドラム2のドラム本体13の手前側の軸13aを支承する他方の可動軸受18は、上記したように感光ドラム1側の可動軸受17とその構成が基本的に同一であるが、これの軸受30を受ける手前側のハウジング23が回動フレーム21に回転可能に支持されている。そして図5に示すように、このハウジング23の回動フレーム21に対する回転中心Oに対してドラム本体13の軸13aの中心である軸受30の中心Oが偏心されている。
【0025】
また、この図2にて示される軸受装置16において、転写ドラム2側のドラム本体13の奥側の軸部を支承するハウジング31が上記手前側のハウジング23と対称同一の偏心構成になっている。
【0026】
そして上記両ハウジング23,31には液圧あるいは空圧にて作動するシリンダ装置32a,32bの一端が連結されていて、この両シリンダ装置32a,32bを同期して作動することにより両ハウジング23,31が同一方向に回動し、この各ハウジング23,31に偏心して支持されている転写ドラム2の軸心が感光ドラム1に対して遠近する方向に移動されるようになっている。上記手前側のシリンダ装置32aの他端は回動フレーム21に、奥側のシリンダ装置32bの他端は奥側のフレームFにそれぞれに連結されている。
【0027】
回動フレーム21の先端部には、この回動フレーム21を手前側のフレームFに沿う状態に、すなわち閉じ状態にしたときにこの回動フレーム21を手前側のフレームFに係止するクランプハンドル33が設けてある。また、この係止状態ではフレームFに設けた位置決めピン35に回動フレーム21に設けた穴36が嵌合して位置決めされるようになっている。
【0028】
上記構成において、感光ドラム1と転写ドラム2を電子写真印刷機から離脱する作動を以下に説明する。
【0029】
図2、図5において、手前側と奥側のシリンダ装置32a,32bを同期して、例えば図5において短縮動することによりハウジング23,31を回動して、転写ドラム2の軸心を感光ドラム1の軸心から遠くなる方向に移動する。これにより感光ドラム1と転写ドラム2の対向周面が離隔される。
【0030】
ついで両可動軸受17,18のそれぞれのノブ29を各雄ねじ26が抜け出る方向に回転して、この各雄ねじ26が各ドラム本体12,13の軸12a,13aの雌ねじ12b,13bから離脱し、各軸保持筒24の筒部を各軸12a13aから抜き出す。図4はこの状態を示すもので、各軸12a,13aは可動軸受17,18の軸保持筒24,24に対して直径方向に自由となる。そしてこの状態で、各ドラム本体12,13は奥側の軸受装置16にて片持状に支持される。
【0031】
ついでクランプハンドル33を操作して回動フレーム21の手前側のフレームFとの係止を解除し、この回動フレーム21を開ける。このときの回動フレーム21はヒンジ部材20を支点にて円弧動作するが、各ドラム本体12,13の軸12a,13aは可動軸受17,18のそれぞれの軸保持筒24,24に対して直径方向に自由となっているので、回動フレーム21は上記各軸12a,13aと干渉することなく開き動作できる。
【0032】
ついで図6に示すように、感光ドラム1と転写ドラム2のそれぞれのドラム本体12,13の軸12a,13aに螺合している固定ねじ15,15を外し、両ドラム1,2を各ドラム本体12,13から引き抜き、手前側の本体フレームFの外側へ取り出す。このとき、各ドラム1,2の端板10,11に設けた取手34を持って行う。
【0033】
一方、新しい感光ドラム1及び転写ドラム2を各ドラム本体12,13に装着する場合は上記離脱手段を逆に行う。そしてこの装着状態での各ドラム1,2は、固定ねじ15にて各ドラム本体12,13に固定される。このときの各ドラム本体12,13の手前側の軸12a,13aは、各可動軸受17,18の軸保持筒24を介して軸受30にて支承され、この装着状態の各ドラム本体12,13は両持ち状態で保持される。各可動軸受17,18の軸保持体24,24はノブ29と共に各ドラム本体12,13と一体状に回転する。また、各ドラム本体12,13の装脱時には、これの周面に設けた案内部材14にて各ドラム1,2の内周面に案内される。このとき、上記案内部材14は樹脂製ですべりやすい軟らかい材料にて構成することによりドラム1,2の内側に傷がつくことがない。
【0034】
上記した実施の形態では、感光ドラム1と転写ドラム2のそれぞれのドラム本体12,13の手前側の軸12a,13aを保持する可動軸受17,18を1つの回動フレーム21に設け、この1つの回動フレーム21を回動することにより両可動軸受17,18が一体状になって移動するようにした例を示したが、上記回動フレーム21を図5に鎖線で示すように、感光ドラム1側の可動軸受17を支持する第1の回動フレーム21aと転写ドラム2側の可動軸受18を支持する第2の回動フレーム21bに別体にし、それぞれクランプハンドル33,33にて手前側のフレームFに係脱可能に係止するようにしてもよい。
【0035】
この場合、感光ドラム1と転写ドラム2の双方を個々に装脱することができ、損耗度合いが異なる両ドラム1,2のメンテナンスを、それぞれに応じて他のドラムに関係なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用しようとする電子写真印刷機の一例を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す構成説明図である。
【図3】本発明の要部で、かつ可動軸受の装着状態を示す断面図である。
【図4】本発明の要部で、かつ可動軸受の離脱状態を示す断面図である。
【図5】回動フレームの一例を示す正面図である。
【図6】感光ドラムと転写ドラムの離脱作用を示す分解図である。
【符号の説明】
【0037】
1…感光ドラム、2…転写ドラム、1a,2a…穴、3…バックアップローラ、4…帯電装置、5…露光装置、6…現像装置、7…被記録媒体、8a…感光体クリーナ、8b…転写体クリーナ、9a…除電器、10,11…端板、12,13…ドラム本体、12a,13a…軸、12b,13b…突起、12c…雌ねじ、14…案内部材、15…固定ねじ、16…軸受装置、17,18…可動軸受、20…ヒンジ部材、21…回動フレーム、22,23,31…ハウジング、24…軸保持筒、25…軸受ジャーナル、26…雄ねじ、27…係止軸、28…スラストベアリング、29…ノブ、30…軸受、32a,32b…シリンダ装置、33…クランプハンドル、34…取手、35…位置決めピン、36…穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと転写ドラムを有する電子写真印刷機において、
感光ドラムと転写ドラムを、奥側の軸部を軸受装置にて片持支持可能にして支持されたそれぞれのドラム本体に、手前側へ引き出し可能に嵌合し、
上記各ドラム本体の手前側の軸部を、この各軸部に対して軸方向に抜き動作可能にした軸保持筒と、この軸保持筒を軸受を介して支持するハウジングとからなる可動軸受にて支持し、
この両可動軸受を手前側のフレームに回動可能に設けた回動フレームに支持し、
転写ドラム側の可動軸受のハウジングと転写ドラムのドラム本体の奥側の軸部を支持する軸受装置のハウジングとを偏心ハウジングとし、両ハウジングを角変位することにより転写ドラムを感光ドラムに対して接離可能にしたことを特徴とする電子写真印刷機。
【請求項2】
回動フレームを感光ドラム側の可動軸受を支持する部分と、転写ドラム側の可動軸受を支持する部分とを別体にして個々に回動可能にしたことを特徴とする請求項1記載の電子写真印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−157176(P2009−157176A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336381(P2007−336381)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】