説明

電子写真装置及びプログラム

【課題】印刷対象の画像データを補正することなく、孤立ドット等を安定して再現できるようにする。
【解決手段】中間転写体ベルト112上に一定間隔Pごとに孤立ドットを形成し、その濃度をトナー濃度センサ130で検出する。トナー濃度センサ130の検出信号を周波数解析する。その周波数解析の結果において、例えば基本周波数成分のピークCpの値を閾値Thと比較する。ピークCpの値が閾値Thより低ければ、孤立ドットの再現が不安定であると判定する。この場合、孤立ドットの露光時間を単位時間幅だけ増大させた上で、再度一定間隔Pごとに孤立ドットを形成し、その濃度の検出信号を周波数解析し、周波数解析結果のピーク値を閾値Thと比較する。ピーク値が閾値Th以上となるまで、露光時間を段階的に増大させる。ピーク値が閾値Th以上になると、孤立ドットの再現が安定したと判定し、処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、すなわち電子写真方式で媒体上に画像を形成する画像形成装置は、白地部(トナーが無い部分)に広く囲まれたトナー部の再現性が不安定であることが知られている(例えば特許文献1の課題の欄を参照)。このような白地部に広く囲まれたトナー部には、例えば、細線、周囲にトナー像の少ないスクリーン画像部分、孤立ドット(1ドットのみからなるトナー像)などがあり、以下ではこれらを「孤立ドット等」と総称する。
【0003】
近年、孤立ドットのパターンにより原本では視認されにくいが複写すると濃く再現される模様を形成する電子桜紙技術や、用紙表面の各点の座標を示すコードを孤立ドットにより印刷した用紙とスキャナ付きのペンにより手書き筆跡を認識する技術(例えば特許第4289350号明細書参照)等が普及しつつあり、電子写真装置においても孤立ドットを安定して再現できるようにすることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、孤立ドット等の消失をなくすために、画像データ中から孤立ドット等に該当する画素を検出し、その該当画素への露光量を増大させたり(段落0017)、該当画素の近傍の本来は露光しない画素に対して弱く露光するよう画像データを補正したり(段落0046)する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−317716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷対象の画像データを補正することなく、孤立ドット等を安定して再現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、露光装置と、前記露光装置により形成された潜像をトナーにより現像することにより得られたトナー像を担持する、回転する像担持体と、を備える電子写真方式の画像形成機構と、前記像担持体の表面上に、回転方向に沿ってあらかじめ定めた間隔ごとに、前記露光装置の主走査方向に沿った幅があらかじめ定めた微小ドット数以下であるあらかじめ定めた微小なトナー像が形成されるよう、前記画像形成機構を制御する第1制御手段と、前記制御手段による制御により前記像担持体の表面上に形成された、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像の濃度を検出し、その濃度を表す検出信号を出力する濃度検出手段と、前記濃度検出手段が出力した前記検出信号の周波数解析により、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されているかを判定する判定手段と、前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていると判定するまで、前記画像形成機構の現像条件を変更して、前記制御手段に前記あらかじめ定められた間隔ごとの前記微小なトナー像の形成のための制御を実行させ、前記濃度検出手段に検出を行わせ、当該検出による検出信号についての判定を前記判定手段に実行させる第2制御手段と、を備える電子写真装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記第2制御手段は、前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていないと判定した場合、前記現像条件として、前記微小なトナー像を形成する場合の露光時間を長くする、ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記第1制御手段における前記間隔は、前記画像形成機構内のトナー像形成のための各回転体の回転方向の周長のいずれの整数倍とも異なるように選択されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記第1制御手段における前記間隔は、前記画像形成機構に含まれる感光体を帯電させるための交流電力の周波数に対応した間隔の整数倍と異なるように選択されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真装置である。
【0011】
請求項1に係る発明は、露光装置と、前記露光装置により形成された潜像をトナーにより現像することにより得られたトナー像を担持する、回転する像担持体と、を備える電子写真方式の画像形成機構を制御するコンピュータを、前記像担持体の表面上に、回転方向に沿ってあらかじめ定めた間隔ごとに、前記露光装置の主走査方向に沿った幅があらかじめ定めた微小ドット数以下であるあらかじめ定めた微小なトナー像が形成されるよう、前記画像形成機構を制御する第1制御手段、濃度検出手段から、前記制御手段による制御により前記像担持体の表面上に形成された、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像の濃度を検出し、その濃度を表す検出信号を受け取り、受け取った前記検出信号の周波数解析により、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されているかを判定する判定手段、前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていると判定するまで、前記画像形成機構の現像条件を変更して、前記制御手段に前記あらかじめ定められた間隔ごとの前記微小なトナー像の形成のための制御を実行させ、前記濃度検出手段に検出を行わせ、当該検出による検出信号についての判定を前記判定手段に実行させる第2制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又は5に係る発明によれば、印刷対象の画像データを補正することなく、孤立ドット等を安定して再現できるようにすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、あらかじめ定めた微小なトナー像を形成するための露光強度を制御する場合よりも、より高精度な制御が可能になる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、像担持体の表面上に形成されたあらかじめ定めた間隔ごとの微小なトナー像の濃度の検出信号に、画像形成機構内のトナー像形成のための各回転体による周期性の影響が出ることを防止又は低減することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、像担持体の表面上に形成されたあらかじめ定めた間隔ごとの微小なトナー像の濃度の検出信号に、感光体を帯電させるための交流電力の周期の影響が出ることを防止又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の制御が適用される電子写真装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】実施形態における孤立ドット再現の安定性の検査の方法を説明するための図である。
【図3】孤立ドットが周期的に形成された中間転写体ベルトの表面の濃度を検出して得られた検出信号の周波数解析結果を模式的に示す図である。
【図4】走査されるレーザービームのオン時間の変化による、露光量分布の変化を説明するための図である。
【図5】電子写真装置のコントローラ内の機能モジュールのうち、孤立ドット等の安定化のための処理に関係するものを例示した図である。
【図6】孤立ドット等の安定化のための処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず図1を参照して、本発明の実施形態の制御が適用される電子写真装置の一例の概要を説明する。
【0018】
図1の電子写真装置では、矢印Aの向きに回転する感光体ドラム102の表面を帯電器104により一様に帯電させる。その一様帯電した表面の各位置を、感光体ドラム102の回転につれて露光装置106により選択的に露光することで、その表面上に潜像が形成される。露光装置106は、レーザー光源を用いるものでも、LED(発光ダイオード)光源を用いるものでもよい。レーザー光源を用いる構成では、光源から発せられたレーザービームが回転するポリゴンミラーにより主走査方向(感光体ドラム102の表面に沿った方向であって、そのドラム102の回転方向すなわち副走査方向、とは垂直な方向)に走査(主走査)される。この主走査に伴って光源がオンオフされることで、感光体ドラム102表面上に主走査方向に沿った露光量の分布が形成され、これが潜像となる。また、LED方式の露光装置106は、主走査方向に多数のLEDが配列されたLEDプリントヘッドを備える。そのプリントヘッド上の1乃至複数の隣接するLED(その個数は印刷解像度に依存する)により、感光体ドラム102上の、対応する画素を露光する。画素ごとに対応するLEDの発光をオンオフ制御することで、主走査方向に沿った露光量分布が形成され、これが感光体ドラム102表面上に潜像を形成する。
【0019】
潜像は、回転方向Aに沿って下流側に配置された現像装置108から供給されるトナーにより現像される。すなわち、現像装置108内のトナーは、現像ロール108aに付着してそのロール108aの回転に伴って感光体ドラム102の表面近傍に達し、その表面に形成された電位分布(すなわち潜像)に従ってその表面の各位置に選択的に付着する。このようにして、潜像がトナー像へと現像される。現像されたトナー像は、一次転写部109にて、中間転写体ベルト112の表面に転写される。この一次転写の後に感光体ドラム102の表面上に残ったトナーは、クリーナー110により除去される。このようにして清掃された感光体ドラム102の表面が、再び帯電器104で一様帯電され、潜像形成、現像、一次転写のプロセスを経ることとなる。
【0020】
中間転写体ベルト112は、矢印B方向に回転している。感光体ドラム102から中間転写体ベルト112に転写されたトナー像は、二次転写ロール114とバックアップロール113とにより構成された二次転写部にて、給紙部120から給紙された用紙の表面に転写される。用紙に転写されたトナー像は、定着部116にて、例えば熱と圧力により用紙に定着される。なお、二次転写後に中間転写体ベルト112に残ったトナーは、クリーナー118により除去される。
【0021】
トナー濃度センサ130は、トーン再生カーブなどのような電子写真装置の画像再現特性の経時的な変化を補正するために設けられたセンサであり、中間転写体ベルト112上に形成されたトナー像の濃度を検出する。図示は省略するが、トナー濃度センサ130は、LEDなどの光源と、中間転写体ベルト112の表面からの反射光を受光する光検知器とを備えている。光源から放射された光が中間転写体ベルト112の表面で反射され、光検知器により検出される。光検知器は、反射光の強度に応じたレベルの信号を出力するセンサである。トナー濃度センサ130は、光源からの光に対する中間転写体ベルト112表面からの鏡面反射光を検出する光検出器(例えばフォトダイオード)を備える。また、トナー濃度センサ130は、中間転写体ベルト112表面の散乱光を検出する光検出器を更に備えていてもよい。鏡面反射は主として黒トナーの濃度検出に、散乱光は主としてカラートナーの濃度検出に用いられる。
【0022】
電子写真装置の特性変化の経時的な補正では、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、黒)などといった各トナー色や、その組合せである二次色、三次色などについて、濃度が段階的に異なる複数のカラーパッチを中間転写体ベルト112表面上に形成する。そして、それら各パッチの濃度をトナー濃度センサ130で読み取り、読み取った濃度に基づき、例えば、所望の濃度の色を形成するために必要な入力信号の補正量を計算する。
【0023】
コントローラ140は、電子写真装置内の各部の動作を制御して、用紙への印刷や、上述した画像形成特性の補正などの処理を実現する。図1では、本実施形態の制御に関係するものとして、コントローラ140が露光装置106を制御するための制御信号線、及び
トナー濃度センサ130の検出信号をコントローラ140に伝える信号線を図示したが、コントローラ140はこれらに限らず、電子写真装置内の様々な装置やセンサと接続されている。
【0024】
なお、図1に示したのは、本実施形態の制御の説明のために単純化した構造であり、実際の装置はその用途やアーキテクチャに応じた様々な構造を取り得る。例えば、タンデム方式のフルカラーの電子写真装置の場合、図示した露光装置、感光体ドラム、現像装置などからなる組をトナー色ごとに備えたものとなる。また、中間転写体ベルト112等の中間転写体を用いずに、感光体ドラム102上に形成されたトナー像を用紙に直接転写する直接転写方式の電子写真装置もある。直接転写方式の場合、トナー濃度センサ130は、感光体ドラム102の表面上のトナーの濃度を検出する。
【0025】
本実施形態では、このような電子写真装置により、孤立ドットを安定して形成できるようにするための、キャリブレーション処理を行う。本実施形態におけるこのようなキャリブレーション処理の方法の一例を、図2を参照して説明する。
【0026】
なお、ここでいうドットは、印刷の解像度における最小の画像単位、すなわち画素のことである。また、孤立ドットとは、単一のドットのことであり、特に以下では単一ドットを表すトナー像のことを指すものとする。
【0027】
また、ここで、孤立ドットが安定して再現できるとは、孤立ドットを常にほぼ同じ(すなわち差が許容範囲内の)濃度及びサイズ(径)のトナー像として形成できることをいう。湿度や温度等の環境条件が変化したり、継続的な使用により電子写真装置の画像形成に関する特性が変化したりすると、孤立ドットの再現が不安定となり、形成される孤立ドットの濃度やサイズのばらつきが大きくなったり、一部の孤立ドットが形成されなくなったり(すなわち消失)する場合がある。本実施形態では、このような不安定化を検知して補正する。以下、詳しく説明する。
【0028】
図2の例では、中間転写体ベルト112上にトナーの孤立ドット164を一定周期で形成する。一定周期とは、中間転写体ベルト112上での、回転方向Bに沿った隣り合う孤立ドット164同士の間隔Pが一定であるということである。このような周期的な孤立ドット164を形成するために、露光装置106は、感光体ドラム102上の主走査方向に沿った特定の位置に、その間隔Pに対応する時間間隔ごとに、1ドット分の露光時間の露光を行う。これにより、感光体ドラム102上に、間隔Pごとに孤立ドットの潜像162が形成される。これら潜像162が現像装置108により現像されることで、間隔Pごとにトナーの孤立ドット164が形成され、それら孤立ドット164が順に中間転写体ベルト112の表面に転写され、トナー濃度センサ130で読み取られることになる。
【0029】
ここで、トナー濃度センサ130は、画像形成特性(例えばトーン再生カーブ)の補正に用いるある程度の面積(例えば数ミリ四方から数十ミリ四方など)のトナーパッチの濃度を読み取るものなので、孤立ドットを読み取った場合の信号のレベルは、通常のトナーパッチを読み取った場合の信号のレベルよりもはるかに低い。このため、個々の孤立ドットの濃度を読み取ったときのセンサ130の信号だけでは、孤立ドットが想定通りの濃度及びサイズで形成されているかは判定できない。そこで、本実施形態では、間隔Pごとに周期的に形成した多数の孤立ドット164をトナー濃度センサ130で検出し、そのトナー濃度センサ130が時系列的に出力する検出信号(これは各時点で検出した濃度を表す)に対して、フーリエ変換等の周波数解析を行う。そして、その周波数解析の結果において、間隔Pに対応する周波数成分が十分顕著に表れているかどうかを調べることで、孤立ドットの再現が安定しているかどうかを判定する。すなわち、孤立ドットの再現が不安定な場合、間隔Pに対応する周波数成分のピーク値が安定な場合よりも低くなるので、図3に示すように、トナー濃度センサ130の検出信号の周波数解析結果のスペクトル200を求め、そのスペクトル200のうちの、隣接孤立ドット同士の間隔Pに対応する周波数成分のピーク値を、例えばあらかじめ定めた閾値と比較する。そして、ピーク値が閾値以上であれば、孤立ドット群が安定して再現(画像形成)されていると判定し、閾値未満であれば、孤立ドット群の再現が不安定であると判定する。
【0030】
図示例では、基本周波数成分Cpのピーク値を、その成分に対応する閾値Thと比較しているが、高調波成分のピーク値をこれに対応する閾値を比較してもよい。また、基本周波数成分及び高調波成分のうちの複数の成分の組合せを用いて判定してもよい。
【0031】
以上に説明した検査により、孤立ドット群の再現が不安定であると判定された場合、本実施形態の装置では、孤立ドット群の再現を安定化させるように、電子写真プロセスの現像条件を変更する。変更する現像条件としては、例えば、孤立ドット形成のための露光時間、露光強度(すなわち光源の発光強度)、感光体ドラム102の一様帯電の帯電電圧などのうちの1つ、又は2以上の組合せがある。
【0032】
ここで、孤立ドット再現の不安定さ、すなわち形成される孤立ドットの濃度やサイズのばらつきの大きな要因として、露光不足による白地部分との電位差不足により、孤立ドットのやせ細りや消失が考えられる。十分に露光して周囲の白地部分との電位差が十分にあるドットにはほぼ確実に十分なトナーが付着するのに対し、露光が不足して周囲との電位差が十分でないドットには、場合によってトナーが付着したりまったく付着しなかったり(あるいは付着はするものの付着量が個々のドットによって変わったり)する。したがって、上述の検査により孤立ドットの再現が不安定と判定された場合、一例としては、孤立ドットと周囲の白地部分との電位差が大きくなるように現像条件を変更すればよい。例えば、(光源の発光強度は変更せずに)孤立ドットの露光時間を長くする方式や、(孤立ドットの露光時間は変更せずに)孤立ドットを露光する時の光源の発光強度を強くする方式などを用いればよい。ここで、近年の高速印刷を考えると、高速印刷に合わせて光源の発光強度を高速変調するよりは、孤立ドットの露光のための発光時間を変更する方が、高精度の制御が可能である。
【0033】
例えば、レーザーで露光する方式の場合、レーザービームのスポットが感光体ドラム102の表面上を主走査方向に移動していく。したがって、感光体ドラム102表面上の各点は、主走査方向に移動していくレーザービームスポットによる露光を積分した量だけ露光されることになる。図4は、レーザービームを右から左へと主走査する過程で、レーザー光源をオンする時間を段階的に延ばしていった場合の、主走査方向に沿った露光量分布302〜312の変化を模式的に示す図である。各分布302〜312は、主走査の過程において同一時点でレーザー光源をオンし、その後それぞれ異なる時間だけオン状態を維持した後、オフした場合に形成される露光量分布を示している。レーザービームの強度は、光軸の中心に近いほど高いガウス分布などの山型の分布を示すので、主走査により形成される露光量の分布も、両端が低い山型となる。図示したうちもっともオン時間(露光時間)の短い例(分布302)では露光量のピーク値が0.3程度であり、オン時間が増えるに連れて露光の積分の効果により、分布304〜310のように露光量のピーク値が増えていくのが分かる。レーザービームの照射スポットは走査に応じて移動していくので、オン時間がある時間以上になると露光量のピーク値は頭打ちになる(分布310,312)。レーザーのオン時間は極めて短い単位時間幅(例えば主走査方向の走査幅10μmに相当する時間間隔)ごとに制御でき、この単位時間幅は1ドットの画素の幅(例えば50〜100μメートル)に対応する走査時間よりもかなり小さい。図4に例示した分布302〜308は、順にこの単位時間幅ずつ露光時間を増やしていった場合の露光量分布を示している。
【0034】
概略的に言えば、孤立ドットの潜像は、このような露光量分布のピーク値に対応した分だけ周囲の白地部分との間に電位差を持ち、この電位差によりトナーの付着の有無、あるいは付着量の程度が左右される。ここで、例えば孤立ドット形成時の露光時間を分布304に対応する時間とした場合に、上述の検査処理での検査結果が「不安定」となった場合、露光時間を上述の単位時間幅だけ増やすことで、分布306のようにピーク値が上昇し、トナーが付着しやすくなる。この状態で再度孤立ドット群を形成して上述の検査を行う。この検査の結果、分布306でもまだ孤立ドットが「不安定」であれば、更に単位時間幅だけ露光時間を増やし、再度検査を行う。このようなサイクルを繰り返すことで、最終的には、孤立ドット群を安定して再現できる孤立ドット露光時間の最小値が得られる。この露光時間を用いることで、孤立ドットのサイズを不必要に大きくすることなく、孤立ドット群が安定的に形成されるようになる。
【0035】
なお、以上の説明は、レーザー方式の場合であったが、LED方式の露光装置106の場合も、同様に、孤立ドット再現が不安定と判定された場合には、LEDアレイ上の個々のLEDの孤立ドット形成時の点灯時間(これが当該LEDに対応するドットの露光時間に対応する)を長くすればよい。
【0036】
以上、本実施形態の制御の例を説明した。次に、そのような制御を実現するための制御機構及び処理手順の一例を、図5及び図6を参照して説明する。
【0037】
図5に示すように、本実施形態の制御が適用される電子写真装置のコントローラ140は、孤立ドット安定化処理部141、露光制御部146及びドット露光条件記憶部148を備える。
【0038】
孤立ドット安定化処理部141は、上述した孤立ドット再現性の検査及び安定化のための制御を行う機能モジュールである。露光制御部146は、露光装置106を制御して感光体ドラム102への露光光線の照射を行わせる。ドット露光条件記憶部148は、孤立ドットを印刷する場合の露光に関する条件(例えば孤立ドットの露光時間)を記憶している。
【0039】
更に説明すると、孤立ドット安定化処理部141は、再現性判定部142、工程制御部144、及び検査用ドット形成制御部145を備える。
【0040】
工程制御部144は、孤立ドット再現性の検査及び安定化のための制御の工程全体を制御する。検査用ドット形成制御部145は、孤立ドットの再現安定性の検査のために、一定周期(間隔P)ごとの孤立ドットを中間転写体ベルト112上に形成するための制御を行う。すなわち、検査用ドット形成制御部145は、露光制御部146に対し、副走査方向について間隔P(図2)に対応した一定周期ごとに、主走査方向についての同じ位置(トナー濃度センサ130の読み取り位置)に対し、ドット露光条件記憶部148に記憶された露光時間だけ露光を行うようにするための制御信号を供給する。この制御信号に応じて露光装置106が露光を行うことにより、感光体ドラム102表面上に間隔Pごとに孤立ドットの潜像が形成され、それらが現像装置108(図5では省略)により現像され、中間転写体ベルト112に転写される。このようにして中間転写体ベルト112上に一定間隔Pで形成された孤立ドットは、トナー濃度センサ130により読み取られる。
【0041】
再現性判定部142は、トナー濃度センサ130が出力した検出信号を解析し、上述の検査手法に従って孤立ドット群の再現が安定しているかどうかを判定する。この例では、検出信号の解析は、FFT(高速フーリエ変換)143により行う。ただし、これは一例に過ぎず、FFT以外のフーリエ解析手法を用いてもよいし、フーリエ解析以外の周波数解析技術を用いてもよい。
【0042】
工程制御部144は、再現性判定部142の判定結果に応じて、検査を終了するか、露光条件を変えて再度検査を行うか、を制御する。
【0043】
この孤立ドット安定化処理部141の処理手順の一例を、図6を参照して説明する。この手順では、孤立ドット再現性の検査及び安定化の処理の実行タイミングが到来した場合、またはその処理の実行をユーザから明示的に指示された場合、工程制御部144は、検査用ドット形成制御部145に対し、周期的な孤立ドットの形成を指示する(S10)。
【0044】
ここで、本処理の実行タイミングは、あらかじめ電子写真装置に設定しておけばよい。実行タイミングとしては、例えば電子写真装置の起動時がある。また、電子写真装置が稼働中に、ある条件が満たされたことを検知した時に、本処理を実行するようにしてもよい。例えば、湿度又は温度などの環境条件が、本処理を前回行った時点での環境条件からあらかじめ定めた閾値以上変化したことを検知した場合に、本処理を再度実行してもよい。環境条件の変化により、孤立ドットの再現性が変化する可能性があるからである。なお、湿度及び/又は温度の測定は、電子写真装置に設けられた湿度センサ及び/又は温度センサにより行えばよい。また、電子写真装置の使用量(例えば、使用時間や印刷枚数)があらかじめ定めた量ずつ増えるごとに、本処理を実行してもよい。電子写真装置の使用により画像形成特性が変化することで、孤立ドットの再現性が変化する可能性があるからである。
【0045】
また、指示を受けた検査用ドット形成制御部145は、露光制御部146を制御して、周期的な孤立ドットの形成を実行させる。ここで、孤立ドットの潜像は、ドット露光条件記憶部148に記憶されたドット露光時間だけ感光体ドラム102に露光を行うことにより形成される。図6の処理ループを最初に実行する時には、それまでの稼働中に用いていたドット露光条件記憶部148内のドット露光時間を用いて孤立ドットを形成してもよいし、ドット露光条件記憶部148に記憶されるドット露光時間をあらかじめ定められた基準値にリセットし、その基準値を用いて孤立ドットを形成してもよい。
【0046】
処理手順の説明に戻ると、工程制御部144は、検査用ドット形成制御部145の制御に応じて周期的な孤立ドット群が形成された中間転写体ベルト112表面を、トナー濃度センサ130に時系列的に読み取らせる(S10)。再現性判定部142は、トナー濃度センサ130の出力する検出信号をFFT143などにより周波数解析し(S12)、周波数解析結果におけるあらかじめ定めたピーク(例えば基本周波数成分)の高さが閾値以上か否かに基づき、それら孤立ドット群が安定形成されているかどうかを判定する(S14)。
【0047】
再現性判定部142が「不安定」と判定した場合、工程制御部144は、ドット露光条件記憶部148に記憶された孤立ドット露光時間を、単位時間幅だけ長くなるよう更新し(S16)、S10に戻って再度孤立ドット群の形成及び判定(S10〜S14)を繰り返す。この繰り返しの中で、S14にて、周波数解析結果のピーク値が閾値以上(すなわち「安定」)と判定されると、工程制御部144は、本処理を終了する。以上の処理により、ドット露光条件記憶部148には、孤立ドット群を安定して再現するための露光時間の最小値が記憶されることになる。
【0048】
本処理の実行後の通常の印刷処理において孤立ドットを形成する場合には、露光制御部146がドット露光条件記憶部148に記憶された露光時間だけ光源を点灯することで、孤立ドットを露光する。例えば、通常の文書に孤立ドットのパターンが重畳したものを印刷する場合において、印刷データが文書画像のプレーンと孤立ドットのプレーンとを含んでいれば、コントローラ140は、その孤立ドットのプレーンを参照することで個々の孤立ドットを識別し、孤立ドット用の露光制御を行えばよい。また、上に挙げた特許文献1に示されるのと同様の方式で、印刷対象の画像データ中から孤立ドットを識別し、孤立ドット用の露光制御を行うようにしてもよい。もちろん、他の公知の方式により、印刷対象画像中の孤立ドットの識別を行ってもよい。
【0049】
以上、実施形態を説明した。以上の実施形態において、検査のために形成する孤立ドットの間隔P(図2参照)は、感光体ドラム102の帯電から、トナー像の中間転写体ベルト112上への転写までの間に生じる、周期的事象の周期と同期しないように定める。例えば、間隔Pは、感光体ドラム102、現像ロール108a、中間転写体ベルト112のいずれの周長の整数倍とも異なる長さとする。また、間隔Pは、帯電器104を駆動する交流電力の周波数に対応する長さ(例えばその交流電力の周波数が50Hzであれば、1/50秒間の、回転する感光体ドラム102の表面上の点の移動量)の整数倍とも異なる値とする。
【0050】
また、以上の実施形態において、どの色のトナーで孤立ドットを形成するかに応じて、トナー濃度センサ130が内蔵する鏡面反射用及び散乱光用の光検知器のうちのいずれの検出信号を用いて判定を行うかを切り換えてもよい。例えば、孤立ドットを形成するのに黒トナーを用いる場合は鏡面反射用の光検知器の出力を用い、C,M,Y等のカラートナーを用いる場合は散乱光用の光検知器の出力を用いるなどである。もちろん、孤立ドットの形成に用いるトナーの色に依らず、同じ光検知器の出力を用いて判定を行うようにしてもよい。
【0051】
また、以上の実施形態では、カラーパッチの読み取りに用いるトナー濃度センサ130を用いて、検査用に周期的に形成した孤立ドットを読み取ったが、この代わりに、そのような検査用の孤立ドットを読み取るための専用の濃度センサを設けてもよい。ただし、コスト面では、孤立ドットの読み取りにトナー濃度センサ130を流用する方が有利である。
【0052】
また、以上の実施形態では、検査のために周期的に孤立ドットを形成した。孤立ドットの再現が安定していれば、細線、及び、周囲にトナー像の少ないスクリーン画像などの再現も安定的に実現される。なお、細線の安定的な再現を目的とする場合には、検査において、孤立ドットを周期的に形成する代わりに、例えば副走査方向に延びるあらかじめ定めた長さの細線を周期的に形成し、それら周期的な細線の濃度読取結果の信号を解析してもよい。同様に、周囲にトナー像の少ないスクリーン画像の安定的な再現を目的とする場合には、検査において、そのスクリーン画像のパッチを周期的に形成し、それら周期的なパッチの濃度読取結果の信号を解析してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では孤立ドット等の再現が不安定と判定した場合に孤立ドット等の露光時間を増大させたが、この代わりに、孤立ドット等を形成する場合の露光強度を増大させてもよい。また、このように露光条件を変更する代わりに、一様帯電の電圧などといった他の現像条件を変更してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では中間転写体ベルト112上に形成された検査用の周期的な孤立ドット等を読み取ったが、感光体ドラム102など、他の像担持体上の周期的な孤立ドット等を読み取って解析するようにしてもよい。
【0055】
以上に説明した実施形態のコントローラ140は、例えば、汎用のコンピュータに上述の各機能モジュールの処理を表すプログラムを実行させることにより実現される。ここで、コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、CPU等のマイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)等のメモリ(一次記憶)、HDD(ハードディスクドライブ)を制御するHDDコントローラ、各種I/O(入出力)インタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース等が、たとえばバスを介して接続された回路構成を有する。また、そのバスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、CDやDVDなどの可搬型ディスク記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのメモリリーダライタ、などが接続されてもよい。上に例示した各機能モジュールの処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、又はネットワーク等の通信手段経由で、ハードディスクドライブ等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがRAMに読み出されCPU等のマイクロプロセッサにより実行されることにより、上に例示した機能モジュール群が実現される。なお、それら機能モジュール群のうちの一部又は全部を、専用LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウエア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
102 感光体ドラム、104 帯電器、106 露光装置、108 現像装置、108a 現像ロール、109 一次転写部、110 クリーナー、112 中間転写体ベルト、113 バックアップロール、114 二次転写ロール、116 定着部、118 クリーナー、120 給紙部、130 トナー濃度センサ、140 コントローラ、141 孤立ドット安定化処理部、142 再現性判定部、143 FFT、144 工程制御部、145 検査用ドット形成制御部、146 露光制御部、148 ドット露光条件記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置と、前記露光装置により形成された潜像をトナーにより現像することにより得られたトナー像を担持する、回転する像担持体と、を備える電子写真方式の画像形成機構と、
前記像担持体の表面上に、回転方向に沿ってあらかじめ定めた間隔ごとに、前記露光装置の主走査方向に沿った幅があらかじめ定めた微小ドット数以下であるあらかじめ定めた微小なトナー像が形成されるよう、前記画像形成機構を制御する第1制御手段と、
前記制御手段による制御により前記像担持体の表面上に形成された、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像の濃度を検出し、その濃度を表す検出信号を出力する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段が出力した前記検出信号の周波数解析により、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されているかを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていると判定するまで、前記画像形成機構の現像条件を変更して、前記制御手段に前記あらかじめ定められた間隔ごとの前記微小なトナー像の形成のための制御を実行させ、前記濃度検出手段に検出を行わせ、当該検出による検出信号についての判定を前記判定手段に実行させる第2制御手段と、
を備える電子写真装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていないと判定した場合、前記現像条件として、前記微小なトナー像を形成する場合の露光時間を長くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置。
【請求項3】
前記第1制御手段における前記間隔は、前記画像形成機構内のトナー像形成のための各回転体の回転方向の周長のいずれの整数倍とも異なるように選択されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真装置。
【請求項4】
前記第1制御手段における前記間隔は、前記画像形成機構に含まれる感光体を帯電させるための交流電力の周波数に対応した間隔の整数倍と異なるように選択されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真装置。
【請求項5】
露光装置と、前記露光装置により形成された潜像をトナーにより現像することにより得られたトナー像を担持する、回転する像担持体と、を備える電子写真方式の画像形成機構を制御するコンピュータを、
前記像担持体の表面上に、回転方向に沿ってあらかじめ定めた間隔ごとに、前記露光装置の主走査方向に沿った幅があらかじめ定めた微小ドット数以下であるあらかじめ定めた微小なトナー像が形成されるよう、前記画像形成機構を制御する第1制御手段、
濃度検出手段から、前記制御手段による制御により前記像担持体の表面上に形成された、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像の濃度を検出し、その濃度を表す検出信号を受け取り、受け取った前記検出信号の周波数解析により、前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されているかを判定する判定手段、
前記判定手段が前記あらかじめ定めた間隔ごとの前記微小なトナー像が安定して形成されていると判定するまで、前記画像形成機構の現像条件を変更して、前記制御手段に前記あらかじめ定められた間隔ごとの前記微小なトナー像の形成のための制御を実行させ、前記濃度検出手段に検出を行わせ、当該検出による検出信号についての判定を前記判定手段に実行させる第2制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−163629(P2012−163629A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22048(P2011−22048)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】