説明

電子機器および電子機器において危険の接近を警告方法

【課題】使用者に危険(物体の接近など)が迫っていると推測される状況において使用者に対して警告する。
【解決手段】電子機器は、周囲の状況に対する電子機器の使用者の注意力が不十分か否かを判定する判定手段と、少なくとも前記注意力が不十分と判断されたときに、電子機器の周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する決定手段とを含む。さらに、電子機器は、位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断する判断手段と、位置関係が特定の位置関係となったと判断されると警告を出力する警告出力手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器において危険を警告する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、MP3プレーヤーのような音響装置、デジタルカメラなどの撮像装置、映像を再生する映像再生装置、PDAおよびゲーム機など、携帯型の電子機器が普及している。使用者は、これらの電子機器を携帯しながら利用することで、外出時や運動時などにおいても手軽に趣味に興じることができる。そのため、これらの電子機器は、さらに普及することが見込まれる。
【0003】
ところで、ヘッドフォンを通じて電子機器からの再生音を聞く場合、使用者は、周囲の音響情報を感知しにくくなる。また、デジタルカメラのファインダに接眼しているときも、使用者は、被写体に集中しているため、周囲の状況に対する注意力が不足する。さらに、使用者は、表示装置を使用して映像や画像を視聴しているときも、周囲の状況に対する注意力が不足する。とりわけ、道路を歩きながら電子機器を利用する場合、使用者は、自動車の接近に十分注意しなければならない。
【0004】
従来、レーダーにより障害物の接近を検出することで自動車が障害物に衝突することを防止するシステムが提案されている。
【特許文献1】特開平05−119153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、使用者の注意力が不足しているか否かにかかわらずレーダーによるセンシングを実行する。本来であれば、使用者の注意力が不足していると推測されるような場合にのみ、センシングを実行すれば十分であろう。これは、省電力化の観点からも望まれよう。
【0006】
そこで、本発明は、携帯されることを前提とした電子機器においても使用者に対して、物体の接近を好適に警告できるようにすることを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子機器、とりわけ携帯可能な電子機器において好適に実現される。電子機器は、周囲の状況に対する電子機器の使用者の注意力が不十分か否かを判定する判定手段と、少なくとも前記注意力が不十分と判断されたときに、電子機器の周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する決定手段とを含む。さらに、電子機器は、位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断する判断手段と、位置関係が特定の位置関係となったと判断されると警告を出力する警告出力手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周囲の状況に対する使用者の注意力が不十分であると推測され、かつ、物体との位置関係が特定の位置関係となると警告が出力される。よって、本発明は、使用者に危険が迫っていると推測される状況において使用者に対して警告できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態を示す。もちろん以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0010】
[第1の実施形態]
本発明に係る電子機器は、例えば、MP3プレーヤーのような音響装置、デジタルカメラなどの撮像装置、映像やその他の情報を表示する表示装置、PDAおよびゲーム機など、携帯型の電子機器として実現可能である。ここでは、ワイヤレスヘッドフォンに本発明が適用される事例を紹介する。
【0011】
図1は、実施形態に係る携帯型電子機器の概略構成を示すブロック図である。ワイヤレスヘッドフォン100は、送信装置(図示略)から音響情報を受信して出力する電子機器である。
【0012】
PHY(物理層)101は、無線通信ユニットである。PHY101は、例えば、UWB(Ultra Wide Band)規格に準拠していてもよい。UWB規格は、データ通信と実質的に並行して測距を行うことができる通信規格である。PHY101には、データ通信部102と測距部103とが設けられている。データ通信部102は、例えば、送信装置から送信される音響情報等を受信したり、他の無線通信装置へ情報を送信したりする。測距部103は、周囲に存在する1以上の物体との距離を測定する。UWB用のPHYは、例えば、単一の集積回路によって実現されうる。
【0013】
制御部104は、例えば、CPU、ROMおよびRAMにより構成してもよいし、これらと同等の機能を有するマイコンなどの集積回路により構成してもよい。制御部104は、周囲の状況に対して電子機器の使用者の注意力が不十分か否かを判定する。例えば、音響出力部105から音楽が出力されているときなどに、制御部104は、使用者の注意力が不十分であると判定する。なお、この判定は、実際には「推定」に近い処理である。すなわち、制御部104は、実際に使用者の注意力が不十分であるかどうか判定しているのではなく、使用者の注意力が不十分となりやすい状況か否かを判定しているにすぎない。制御部104は、少なくとも注意力が不十分と判定したときに、電子機器の周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する。不十分でなければ、制御部104は、位置関係の決定処理を省略する。なお、位置関係とは、例えば、物体との距離、距離の変動(相対的な移動方向、相対速度、相対加速度)など、物体とヘッドフォン100との相対的な位置関係を意味する。
【0014】
制御部104は、位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断し、位置関係が特定の位置関係となると警告を出力する。例えば、制御部104は、物体との距離が急激に近づいている場合に、位置関係が特定の位置関係となったと判断する。なお、出力される警告は、音響情報(警告音、音声など)であってもよいが、視覚的出力(光など)や触覚的出力(振動など)であってもよい。後者を実現する場合、LED、LCDなどの表示デバイス、振動発生ユニットなどが追加されることになろう。
【0015】
音響出力部105は、データ通信部102により受信された音響情報(音、音声その他の聴覚により感知可能な情報)を出力するユニットである。音響出力部105は、スピーカー、音量調整つまみ、音声データバッファ、復号回路、D/A変換器などで構成される。また、音響出力部105は、制御部104によって制御される。電源部106は、ヘッドフォン100に電力を供給する電池や燃料電池などである。
【0016】
図2は、実施形態に係る制御部において実現される機能ブロックを示す図である。判定部201は、周囲の状況に対して電子機器(ヘッドフォン)の使用者の注意力が不十分か否かを判定する。決定部202は、少なくとも注意力が不十分と判定されたときに、ヘッドフォンの周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する。判断部203は、位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断する。警告出力部204は、位置関係が特定の位置関係となったと判断されると警告を出力する。
【0017】
図3は、実施形態に係るヘッドフォンの外観構成の一例を示す図である。ヘッドフォン100は、スピーカー301、音量調整つまみ302、電池303、電源スイッチ304、メインユニット305を備えている。メインユニット305は、上述したPHY101や制御部104などである。なお、電池303はヘッドフォン100に内蔵されているものとする。
【0018】
スピーカー301および音量調整つまみ302は、音響出力部105の一部である。電池303および電源スイッチ304は、電源部106の一部である。なお、メインユニット305に含まれるPHY101は、使用者と周囲の物体との間を測距する測距部103を備えているので、ヘッドフォン100の中心に配置されることが望ましい。
【0019】
もちろん、図3に示されたヘッドフォン100の外観は、単なる一例にすぎない。各構成要素がヘッドフォン100内の異なる位置に配置されていてもかまわない。また、スピーカーが耳栓形状のいわゆるイヤホンになっていてもかまわない。
【0020】
図4は、実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートの処理と並行して、データ通信部102は、外部から音響情報を受信でき、また、音響出力部105は、受信した音響情報を出力できるものとする。データ通信部102は、音響情報の受信処理を常に実行してもよいし、定期的にまとめて音響情報を受信してもよい。
【0021】
ステップS401において、制御部104の判定部201は、受信した音響情報を再生中であるか否かを判定する。再生中であれば、使用者は、視聴に夢中になっている可能性がある。すなわち、周囲の状況に対する使用者の注意力が不十分になっている可能性があると推測される。よって、再生中であれば、注意力が不十分となり、再生停止中であれば、注意力が十分であると推定される。再生中であれば、ステップS402へ進む。
【0022】
ステップS402において、制御部104の決定部202は、測距部103へ周囲に存在する物体との距離を測定するよう指示する。測距部103は、予め規定された時間にわたりヘッドフォン100の周囲に存在する少なくとも1つ物体との距離を測定する。決定部202は、測距部から取得した距離に基づいて、移動方向、相対速度、相対化速度なども算出してもよい。このようにして、決定部202は、ヘッドフォンの周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する。
【0023】
ステップS403において、制御部104の判断部203は、使用者に対して危険が接近しているか否かを判定する。例えば、判断部203は、物体との位置関係が、衝突が予想されるような特定の位置関係となったか否かを判断する。なお、判断基準は、種々考えられる。例えば、距離が規定値以内であること、規定値以上の相対速度で近づいてきていること、または、速度と加速度より算出される予想衝突時間が規定値以内であることなどである。また、距離が規定値以内であても、周囲の物体との距離の変化が規定値以下であったならば、判断部203は、危険ではないと判断してもよい。危険が接近していれば、ステップS404に進む。
【0024】
ステップS404において、制御部104の警告出力部204は、音響出力部105へ再生音量を変更するよう指示する。音響出力部105は、その指示に基づいてスピーカー301から出力される音量を変更し、使用者に周囲の状況への注意を促す。音量の変更方法としては、予め規定された音量へ変更すること、音を消すこと、現在再生中の音量を規定割合へと変更することなど、種々の方法が考えられる。警告を促せるのであれば、どのように音量を変更してもよい。また、制御部104は、警告用の音データや、音声データを保存しておいて、それを音響出力部105へ送出してもよい。
【0025】
一方、ステップS403において、危険が推測されなければ、ステップS405に進む。ステップS405において、制御部104は、音量調整つまみ302により設定されている音量設定値を取得する。ステップS406において、制御部104は、取得した音量設置となるよう、スピーカー301から出力される音量を変更する。すなわち、一度、警告のために音量が変更されたとしても、警告が不要となった場合、制御部104は、元の音量に回復させるのである。
【0026】
本実施形態によれば、周囲の状況に対して使用者の注意力が不十分となり、かつ、物体との位置関係が特定の位置関係となると警告が出力される。よって、本実施形態は、使用者に危険が迫っていると推測される状況において使用者に対して警告できる。
【0027】
すなわち、ヘッドフォン100は、周囲に接近する物体が存在すると、使用者に警告を出力する。よって、使用者は、ヘッドフォンの装着により周囲の音が聞き取りにくい状態でも、車などの接近や壁などの障害物への接近を認識でき、使用者の安全を確保することができる。
【0028】
上述した実施形態では、音響情報の再生中であることを警告の条件としたが、これは必須ではない。すなわち、音響情報の再生中でなくても、警告を実行してもよい。ヘッドフォンを装着しているだけでも、使用者の注意力が低下するおそれがあるからである。
【0029】
警告すべきか否かの判断は、例えば、距離が規定値以内であること、規定値以上の相対速度で近づいてきていること、速度と加速度より算出される予想衝突時間が規定値以内であることなどを基準とすることができる。これにより、動かない障害物、等速で接近してくる物体、加速して近づいてくる物体のいずれに対しても、制御部104は、危険を有効に検知できる。
【0030】
また、距離が規定値以内であても、周囲の物体との距離の変化が規定値以下であったならば、制御部104は、危険と判断しないようにする。これにより、使用者が壁際で座っているときなどに、警告を出力することが抑制される。
【0031】
また、制御部104は、警告として、再生音量を変化させることによって、使用者に危険の接近を認知させることができる。とりわけ、再生音量を低下させれば、使用者が周囲の音を聞きやすくなる利点もある。さらに、音量調整だけでなく、さらに、音響出力部105が警告音を出力すれば、使用者は、危険の接近をよりはっきりと認識できるであろう。
【0032】
また、ヘッドフォン100は、音響情報の通信に使用されるPHY101を用いて測距を行うことができる。そのため、特許文献1に記載されているような大掛かりなセンシングデバイスを追加する必要はない。また、このような大掛かりなセンシングデバイスは不要なので、製品のサイズを拡大する必要もない。よって、従来の手法よりも安いコストで、周囲の危険を警告可能なヘッドフォンを実現できるであろう。
【0033】
[第2の実施形態]
本発明に係る電子機器の一例として、表示装置について説明する。近年、パソコン、PDA、携帯電話、ワンセグ受像機、ゲーム装置、メディアプレイヤーなど、静止画や動画を表示可能な表示装置の小型化が進んでいる。使用者は、表示装置を歩行しながら使用することも多い。しかしながら、使用者の意識が表示装置の閲覧および操作に集中してしまいやすいため、車の接近等に気づきにくいといった問題があった。
【0034】
図5は、実施形態に係る表示装置の機能ブロックを示す図である。なお、図1において説明した個所には同一の参照符号を付与することで、説明を簡潔化する。
【0035】
表示装置500は、静止画、動画、文書、WEBコンテンツその他の視覚により感知可能な情報を表示する表示部501を備えている。表示部501は、有機ELデバイス、LCD(液晶表示装置)などにより実現可能である。記録部502は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリデバイス、およびその制御回路で構成される記憶装置である。記録部502には、例えば、表示部501に表示されるデータが記憶されている。操作部503は、音量調節つまみ、動作モード選択スイッチなどである。
【0036】
図6は、実施形態に係る制御部において実現される機能ブロックを示す図である。なお、図1において説明した個所には同一の参照符号を付与することで、説明を簡潔化する。
【0037】
監視部601は、使用者の状態を監視するためのユニットである。例えば、監視部601は、操作部503に対する使用者の操作入力を監視したり、表示部501に表示されている情報の変化を監視したり、表示装置500に適用される動作モード(例:表示モード)を監視したりする。監視部601による監視結果は、判定部201に出力される。判定部は、監視結果に応じて、使用者の注意力が不十分か否かを判定する。
【0038】
図7は、実施形態に係る表示装置の外観構成の一例を示す図である。表示装置500は、液晶モニタ701、操作ボタン702、スピーカー703を備えている。液晶モニタ701は、表示部501の一部である。操作ボタン702は、操作部503の一部である。スピーカー703は、音響出力部105の一部である。操作ボタン702は、液晶モニタ701のバックライトの明るさを変えたり、音量を変えたり、動作モードを変更したりするのに使用される。動作モードとしては、例えば、ゲームモード、WEB閲覧モード、TV表示モード、文章表示モード、静止画表示モード、動画再生モード、待機モードなどがある。
【0039】
図8は、実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートの処理と並行して、データ通信部102は、外部からデータを受信でき、また、表示部501は、当該データを出力できるものとする。図4に関して説明した個所には同一の参照符号を付すことで説明を簡略化する。
【0040】
ステップS802において、制御部104の監視部601は、表示装置500の動作状態を監視する。監視部601は、例えば、操作部503の操作入力の有無、動作モードの変更、表示内容の変更など、使用者の注意力に関連する動作、処理または状態を監視する。ステップS801において、制御部104の判定部201は、監視結果に基づいて、使用者の注意力が不十分していると推測されるか否かを判定する。
【0041】
なお、注意力の判断基準は種々考えられる。例えば、判定部201は、操作ボタン702が連続的に押されているとき、または最後にボタンが操作されてから所定の時間以内であるときは、周囲に対する注意力が不足していると判定してもよい。また、判定部201は、操作ボタン702による操作がロック(禁止)されているとき、周囲に対する注意力が十分であると判定してもよい。また、判定部201は、表示装置500が所定の動作モード(例:動画、静止画、TV、文章などを閲覧するモード)になっているとき、周囲に対する注意力が不十分であると判定してもよい。また、判定部201は、表示部501に表示されている内容が、所定時間以上変化していなかったら、注意力は十分であると判定してもよい。また、判定部201は、液晶モニタ701のバックライトの明るさが所定以下であったら、注意力が十分であると判定してもよい。また、使用者が予め表示装置500を注視する予定の時間(例:通勤・通学時間)を設定しているときは、判定部201が、現在時刻と設定された時間とを比較することで、注意力が十分か否かを判定してもよい。
【0042】
判定の結果、注意力が十分であると推測されれば、ステップS800に戻り、制御部104は、測距を行うことなく、監視を続行する。一方、注意力が不十分であると推測されれば、ステップS402に進み、測距部103が測距を実行する。なお、測距部103は、注意不足が推測されたときのみ、有効(アクティブ)にされてもよいし、常に有効にされていてもよい。また、監視部が電源部106の電池残量に余裕があることを検知したときにのみ、制御部104が測距部103を有効にしてもよい。
【0043】
ステップS403において、危険の接近が推測されるときは、ステップS804に進む。ステップS804において、警告出力部204は、警告を出力する。警告の出力方法は、種々考えられる。第1の実施形態で説明した方法以外にも、例えば、液晶モニタ701に文字や画像を表示する方法、液晶モニタ701を点滅させる方法なども考えられる。もちろん、使用者に警告できれば、どのような警告方法が採用されてもよい。
【0044】
一方、ステップS403において、危険の接近が推測されなかったときは、ステップS805に進み、警告出力部204は、警告を解除する。なお、その時点で警告の出力が継続されていなければ、ステップS805はスキップされてもよい。
【0045】
本実施形態によれば、表示装置の使用者が周囲の状況に対して注意力が不十分となり、かつ、危険が迫っていると警告が出力される。よって、本実施形態は、表示装置に注視していると推測される使用者に対して好適に警告できる。なお、第1の実施形態で説明した他の効果については、第2の実施形態も同様に奏することは言うまでもない。
【0046】
[第3の実施形態]
本発明に係る電子機器の一例として撮像装置(例:デジタルカメラ)について説明する。撮影者が、撮像装置のファインダを覗きながら撮影を行うと、意識が被写体に集中してしまう。よって、撮影者が、車の接近等に気づかないおそれがある。
【0047】
図9は、実施形態に係る撮像装置の例示的なブロック図である。既に説明した個所には同一の参照符号を付すことで説明を簡略化する。撮像装置900は、撮影者がファインダに対して接眼しているか否かを検知するための接眼検知部901と、被写体の像を撮像するための撮像部902を備えている。なお、制御部104の構成については、図2や図6に示した構成を採用できる。
【0048】
図10は、実施形態に係る撮像装置の外観構成例を示す図である。撮像装置900の背面には、操作ボタン1001、液晶モニタ1002、ファインダ1003、接眼検知センサ1004が設けられている。操作ボタン1001は、操作部503の一部である。液晶モニタ1002は表示部501の一部である。ファインダ1003は、被写体の位置を確かめるために使用される光学部品である。接眼検知センサ1004は、接眼検知部901の一部である。撮像装置の使用者(以下、撮影者)が、ファインダ1003を覗くために顔を近づけると、接眼検知センサ1004が接眼したことを検知する。
【0049】
図11は、実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートの処理と並行して、データ通信部102は、外部からデータを受信でき、また、表示部501は、当該データを出力できるものとする。既に説明した個所には同一の参照符号を付すことで説明を簡略化する。
【0050】
図8と比較すると、ステップS800がステップS1100に置換されている。ステップS1100において、制御部104の監視部601は、接眼検知部901から接眼検知の結果を取得する。なお、接眼検知部901は、接眼検知センサ1004が接眼を検知するとフラグを1に設定する。また、接眼検知部901は、接眼検知センサ1004が接眼を検知していないときはフラグを0に設定する。
【0051】
ステップS1101において、判定部201は、監視部601を通じて取得した接眼検知結果に基づいて、周囲に対する撮影者の注意力が十分か否かを判定する。注意力が十分であれば、測距部103を無効にしてステップS1100に戻る。一方、注意力が十分でなければ、ステップS402へ進み、測距部103が位置関係を決定するための測距を実行する。以降の警告処理は、既に説明したとおりである。
【0052】
本実施形態によれば、撮像装置の使用者が周囲の状況に対して注意力が不十分となり、かつ、危険が迫っていると警告が出力される。よって、本実施形態は、撮像にのみ集中していると推測される使用者に対して好適に警告できる。なお、第1、2の実施形態で説明した他の効果については、第3の実施形態も同様に奏することは言うまでもない。
【0053】
[第4の実施形態]
上述したUWBの測距機能を実現する方式は、種々存在する。例えば、IR(インパルス無線)−UWB方式、DS(直接拡散)−UWB方式、または、MB(マルチバンド)−OFDM−UWB方式などを、PHY101に採用できることは言うまでもない。
【0054】
IR−UWB方式は、最も単純な方法であり、搬送波を用いずに微細なパルス幅(0<パルス幅=<1ナノ秒(ns))のパルスを使用する方式である。なお、現時点では、数百ピコ秒(ps)から1ns以下の幅を有するパルスが検討されている。
【0055】
DS−UWB方式およびMB−OFDM−UWB方式は、マルチバンド方式の一種で、UWBで使用する周波数帯を複数のバンドに分割し、各バンドで搬送波を変調する方式である。DS−UWB方式は、直接拡散技術を使用するが、MB−OFDM−UWB方式は、OFDMと周波数ホッピングとを組み合わせて使用する。
【0056】
図12は、実施形態に係るPHYの一例を示す図である。ここでは、IR―UWB方式の無線部について説明する。PHY101は、送信部1200と受信部1250を含む。送信部1200において、パルス発生器1201は、入力されたデータに対応するパルス信号を生成する。増幅器1202は、生成されたパルス信号を増幅する。一方、受信部1250において、増幅器1251は、受信したパルス信号を増幅する。相関器1252は、受信したパルス信号からデータを取り出すために、受信したパルス信号とテンプレートパルス信号との相関値を求める。相関値は、基本的に0か1となるので、相関値に基づいてデータが決定される。
【0057】
なお、測距部103が測距を行うタイミングは、音響情報やデータなどを受信するためにPHY101が使用されていないときであれば、いつでもよい。例えば、スーパーフレームにおいて、65msごとにビーコン区間が挿入されると仮定する。この場合、このビーコン区間を用いて測距を行えば、データ区間に与える影響がほとんどなくて好ましい。
【0058】
測距部103は、測距用のUWBパルス信号が送信部1200から送出されてから測距対象物に反射して受信部1250により受信されるまでの時間を測定する。測距部103は、この時間を電波の伝播速度と乗算することで距離を算出する。なお、この距離は電子機器と測距対象物との間の往復距離となるため、往復距離を2で除算することで、片道の距離が決定される。
【0059】
なお、測距対象物が他の無線通信装置であれば、測距部103は、他の無線通信装置が折り返して送信する信号を受信することで、信号の往復時間を測定してもよい。ただし、折り返し信号を利用する場合は、反射信号を利用する場合に比較し、測距精度が相対的に低下する傾向にある。
【0060】
複数の無線通信装置が同期して通信する場合は、同期時刻からのビーコン到着のずれ時間に基づいて、測距部103は、相手側の無線通信装置まで距離を測定することもできる。ただし、複数の無線通信装置間に同期ずれがあると、この測距方法は測距精度が低下してしまう。よって、測距精度に関しては、反射信号を利用する方法が優れているだろう。一般に、測距情報を利用するアプリケーションによって、必要とされる測距精度が異なってくる。そのため、アプリケーションを考慮した上で測距方法を決定してもよい。
【0061】
なお、あらゆる物体について測距を行うには、最初に説明したパルスの反射を利用する方法が優れている。他の無線通信装置を利用する方法では、自動車など無線通信装置を搭載している物体しか測距できないが、自動車の接近は最も注意すべき事象であるから、この方法を採用してもよいだろう。
【0062】
図13は、実施形態に係る他のPHYの一例を示す図である。ここでは、DS―UWB方式の無線部について説明する。PHY101は、送信部1300と受信部1350を含む。送信部1300の符号変調器1301は、入力されたデータについて位相変調や振幅変調などの1次変調を実行する。拡散変調器1302は、1次変調された信号に対して拡散変調(2次変調)を実行する。一方、受信部1350の拡散復調器1351は、受信した信号を逆拡散する。なお、逆拡散する際には、送信側で使用された拡散符号と同一の拡散符号が用いられる。このような拡散符号の相関演算により、相関ピークが得られる。よって、測距部103は、この相関ピークを用いて、測距を行うことができる。符号復調器1352は、逆拡散された信号を復調することでデータを抽出する。
【0063】
図14は、実施形態に係る他の無線部の一例を示す図である。ここでは、OFDM―UWB方式のPHY101について説明する。送信部1400において、シリアルパラレル変換器(S/P)1401は、入力されたシリアルデータをパラレルデータに変換する。複数の変調器(mod)1402は、各パラレルデータに対して符号変調を実行する。逆フーリエ変換器1403は、符号変調された信号(周波数軸の信号)を時間軸の信号に変換する。一方、受信部1450の低域通過フィルタ(LPF)1451は、受信した信号のうち低域成分を抽出する。フーリエ変換器1452は、抽出された信号をフーリエ変換することで周波数軸上の複数の信号成分に変換する。複数の復調器(dmod)1453は、各信号成分を復調することで、それぞれデータを抽出する。パラレルシリアル変換器(P/S)1454は、パラレルデータをシリアルデータに変換する。
【0064】
ここで、測距に関しては、逆フーリエ変換器1455が、フーリエ変換器1452からの信号を逆フーリエ変換することで時間軸でのパルス列を抽出する。パルス決定部1456は、複数のパルス列のうち最も早く到達したパルスを決定し、決定したパルスのみを測距部103に出力する。よって、測距部103は、この最も早く到達したパルスに基づいて測距をすることができる。
【0065】
図15は、実施形態に係る通信フレームの構成例を示す図である。各フレームの先頭には、ビーコン区間が設けられている。さらに、ビーコン区間に続いて、データ区間が設けられている。なお、n番目のフレームだけでなく、n−1番目のフレーム、n+1番目のフレームも同様の構成である。なお、ビーコン区間は定期的に設けられている。すなわち、無線部は、定期的(例:65ms)にビーコンを送信する。これは、フレームの長さが一定(例:65ms)であることを意味する。フレームは、例えば、256個のメディア・アクセス・スロット(MAS)に分割されている。ビーコンは、同期やMASを予約するために使用される。なお、データ区間内に設けられているDRP(Distributed Reservation Protocol) WUSBは、Wireless USBのデータが行われるMASである。
【0066】
図16は、実施形態に係る通信路の使用状態と無線通信装置の内部処理との時間的な関係を示す図である。図16が示すように、測距部103は、ビーコン区間で、ビーコンの送信と、反射してきたビーコンの受信とを無線部に実行する。そして、測距部103は、データ区間で、無線部から得られた信号に基づいて距離を決定してもよい。例えば、n番目のフレームで測距を行う場合、測距部103は、次のn+1番目のビーコンを送信するタイミングとなるまでに距離の決定を終了すればよい。
【0067】
このように、1つのフレーム周期内で測距を完了できれば、測距部103は、フレームごとに測距を実行できることになる。すなわち、無線部は、定期的にビーコンを送信するため、定期的に測距を実行できる。
【0068】
さらに、測距部103は、定期的に送信されるビーコンに基づいて決定された時間的な距離の変動量から測距対象物の相対速度を測定することができる。例えば、測距部103は、n番目のフレームで検出された距離と、n+1番目のフレームで検出された距離との差分をフレーム周期(例:65ms)で除算することで、移動速度を算出できる。なお、この移動速度は、無線通信装置と測距対象物についての相対速度に相当することは言うまでもない。
【0069】
このようにUWB規格のPHY101を使用することで、データ通信と並行して測距も行うことができる。すなわち、UWB規格を採用した電子機器であれば、データ通信によりコンテンツを閲覧している時でさえも、使用者に対して物体が接近してくることを警告できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施形態に係る携帯型電子機器の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る制御部において実現される機能ブロックを示す図である。
【図3】実施形態に係るヘッドフォンの外観構成の一例を示す図である。
【図4】実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る表示装置の機能ブロックを示す図である。
【図6】実施形態に係る制御部において実現される機能ブロックを示す図である。
【図7】実施形態に係る表示装置の外観構成の一例を示す図である。
【図8】実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る撮像装置の例示的なブロック図である。
【図10】実施形態に係る撮像装置の外観構成例を示す図である。
【図11】実施形態に係る警告方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】実施形態に係るPHYの一例を示す図である。
【図13】実施形態に係る他のPHYの一例を示す図である。
【図14】実施形態に係る他のPHYの一例を示す図である。
【図15】実施形態に係る通信フレームの構成例を示す図である。
【図16】実施形態に係る通信路の使用状態と無線通信装置の内部処理との時間的な関係を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
100 ヘッドフォン
101 PHY(物理層)
102 データ通信部
103 測距部
104 制御部
105 音響出力部
106 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
周囲の状況に対して前記電子機器の使用者の注意力が不十分か否かを判定する判定手段と、
少なくとも前記注意力が不十分と判定されたときに、前記電子機器の周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する決定手段と、
前記位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断する判断手段と、
前記位置関係が特定の位置関係となったと判断されると、警告を出力する警告出力手段と
を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記物体との距離、相対速度または相対加速度の少なくとも1つを測定する測定手段をさらに含み、
前記決定手段は、測定された前記距離離、相対速度または相対加速度の少なくとも1つに基づいて前記物体との位置関係を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記測定手段と、前記測定手段の動作と並行して他の電子機器と通信する通信手段とを含む無線通信手段をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記無線通信手段は、UWB規格に従って動作する無線通信ユニットを含むことを請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記使用者により操作可能な操作手段と、
前記操作手段に対する操作を監視する監視手段と
をさらに含み、
前記判定手段は、前記監視手段において監視された前記操作に応じて前記注意力が不十分か否かを判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
情報を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示されている情報の変化を監視する監視手段と
をさらに含み、
前記判定手段は、前記監視手段において監視された前記情報の変化に応じて前記注意力が不十分か否かを判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
情報を表示する表示手段と、
前記表示手段に適用される表示モードを監視する監視手段と
をさらに含み、
前記判定手段は、前記監視手段において監視された前記表示モードに応じて前記注意力が不十分か否かを判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
音響情報を出力する音響出力手段をさらに含み、
前記警告出力手段は、前記音響情報とともにまたは前記音響情報に代えて前記警告を前記音響出力手段から出力させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
音響情報を出力する音響出力手段をさらに含み、
前記警告出力手段は、
前記警告を出力すべき場合に、前記音響情報の音量を変更する変更手段
を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記電子機器に対する前記使用者の接眼状況を検知する検知手段と、
をさらに含み、
前記判定手段は、前記接眼状況に応じて前記注意力が不十分か否かを判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
電子機器において危険を警告する警告方法であって、
周囲の状況に対して前記電子機器の使用者の注意力が不十分か否かを判定する判定工程と、
少なくとも前記注意力が不十分と判定されたときに、前記電子機器の周囲に存在する少なくとも1つの物体との位置関係を決定する決定工程と、
前記位置関係が特定の位置関係となったか否かを判断する判断工程と、
前記位置関係が特定の位置関係となったと判断されると、警告を出力する警告出力工程と
を含むことを特徴とする警告方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−334609(P2007−334609A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165361(P2006−165361)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】