説明

電子部品の実装装置及び実装方法

【課題】実装ツールに保持した半導体チップを基板に対して精度よく位置決めして実装できる実装装置を提供することにある。
【解決手段】実装ツール11に保持された半導体チップを撮像する部品カメラ13と、位置決めされた基板を撮像する基板カメラ15と、各カメラの撮像信号を画像処理する画像処理部17と、部品カメラの第1の撮像位置から基板カメラの第2の撮像位置まで移動するための第1の移動距離及び第1の移動距離に比べて短い第2の移動距離を設定する設定部21と、第1の撮像位置における半導体チップのずれ量と第2の撮像位置における基板のずれ量とから実装ツールの第1の移動距離を修正する修正距離を算出する演算処理部19と、修正距離を算出している間に実装ツールを第2の移動距離で移動させ、演算処理部が修正距離を算出したならば、その修正距離に基いて第1の移動距離を修正して実装ツールを第2の移動距離からさらに移動させる駆動制御部23を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は実装ツールに保持された電子部品を基板に実装する電子部品の実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品としての半導体チップを基板に実装するダイボンダやインナリードボンダ或いはフリップチップボンダなどの実装装置においては、上記基板をガイドレールに沿って搬送して所定の位置で位置決めする搬送手段が設けられている。この搬送手段によって位置決めされた基板には上記半導体チップが実装ツールによって実装される。
【0003】
上記半導体チップは供給装置から上記実装ツールに受け渡される。供給装置は供給テーブルを有し、この供給テーブルにはウエハリングやチップトレイなどによって上記半導体チップが供給される。
【0004】
実装装置がフリップチップボンダの場合、上記供給テーブルに供給された半導体チップは反転可能な受け渡しヘッドによって取り出される。受け渡しヘッドによって取り出された半導体チップは上下面が180度反転させられてから上記実装ツールに受け渡された後、認識位置に移動して部品カメラによって撮像される。
【0005】
一方、上記搬送手段によって位置決めされた基板の上方には基板カメラが配置されていて、この基板カメラによって上記基板の上記半導体チップが実装される実装位置が撮像される。
【0006】
上記部品カメラと基板カメラからの撮像信号は、画像処理部で画像処理されてから制御装置に出力される。制御装置は、上記部品カメラの撮像信号によって認識位置における半導体チップの中心座標と、上記基板カメラの撮像信号によって基板の半導体チップが実装される実装位置の座標を算出する。
【0007】
認識位置における半導体チップの中心座標と、基板の半導体チップが実装される実装位置における実装座標が算出されると、これらの座標から上記実装ツールが上記認識位置から実装位置に移動するために要する距離が算出され、その算出距離が予め設定された移動距離と比較され、その比較によって修正距離が求められる。なお、上記移動距離は実装装置によって予め設定された既知の値である。
【0008】
すなわち、半導体チップが受け渡しヘッドによって実装ツールに受け渡されたときにずれが生じたり、認識位置に搬送位置決めされた基板にずれが生じることがあるから、これらのずれに基いて上記実装ツールの予め設定された認識位置から実装位置までの移動距離が算出された上記修正距離によって修正される。
【0009】
一方、上記部品カメラと基板カメラからの撮像信号によって上記制御装置が修正距離を算出している間に、制御装置は上記実装ツールを上記認識位置から上記実装位置に向けて駆動する。
【0010】
それによって、制御装置が修正距離を算出している時間が半導体チップを基板に実装するために要するタクトタイムに含まれなくなるから、その分、生産性を向上させることができることになる。
【0011】
特許文献1には認識位置で半導体チップをチップ観察用カメラ(部品カメラ)によって観察し、実装位置で基板を基板観察用カメラ(基板カメラ)で観察して上記半導体チップを基板に実装する実装装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平2−12024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、タクトタイムの短縮を図るために、上述したように制御装置が修正距離を算出している間に、上記実装ツールを予め設定された移動距離に基いて上記認識位置から上記実装位置に向けて移動させるようにすると、修正距離が算出された時点では、上記実装ツールが予め設定された既知の移動距離以上に移動してしまっているということがあったり、実装ツールが移動距離の終端に極めて近い位置、たとえば終端から数十μm近傍の位置まで移動しているということがある。
【0014】
前者のように実装ツールが移動距離の終端を越える位置まで移動している場合、実装ツールの移動方向を逆方向に戻してから、上記実装ツールを実装位置に位置決めしなければならない。つまり、実装ツールを駆動する駆動手段を一端停止させてから逆方向に作動させなければならないから、その方向変換に時間が掛かり、結果的にタクトタイムが短縮されないということがあったり、駆動手段によって実装ツールの駆動方向を逆方向に変換することで、振動の発生原因になるということがある。
【0015】
後者のように実装ツールが移動距離の終端に極めて近い位置まで移動している場合、たとえば既知の移動距離は通常100mm以上であるのに対し、修正距離が算出された時点で実装ツールが目標位置に対して数十μmの極めて近い位置まで移動していると、算出された修正距離に基く実装ツールの残りの移動距離が数十μmの微小な距離になる。
【0016】
実装ツールの通常の移動距離をmm単位で設定する制御装置の場合、実装ツールの修正移動距離を数十μm単位の微小な距離で駆動制御する機能を持ち合わせていないことがほとんどである。
【0017】
そのため、従来の制御装置では実装ツールの移動距離を数十μm単位の微小な距離で修正することができないということがあったり、仮に修正可能であっても、微小な距離を修正するためには時間が掛かることになるから、結果的にタクトタイムが短縮されないということになる。
【0018】
この発明は、電子部品の撮像と基板の撮像に基いて予め設定された実装ツールの移動距離に対する修正距離を算出している間に、実装ツールを認識位置から実装位置に向けて移動させる場合、実装ツールが実装位置を超えて移動するのを防止するとともに、修正距離が算出された時点での実装ツールの残りの移動距離を十分な長さで確保できるようにした電子部品の実装装置及び実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、基板に電子部品を実装する実装装置であって、
上記基板を搬送位置決めする搬送手段と、
上記電子部品を保持する実装ツールと、
この実装ツールに保持された電子部品を上記基板に実装する前に撮像する部品カメラと、
上記搬送手段によって位置決めされた上記基板を撮像する基板カメラと、
上記部品カメラと上記基板カメラとの撮像信号を画像処理する画像処理部と、
上記実装ツールに保持された上記電子部品が上記部品カメラで撮像された第1の撮像位置から上記基板カメラが上記基板を撮像した第2の撮像位置まで移動するための第1の移動距離及びこの第1の移動距離に比べて短い第2の移動距離を予め設定する設定部と、
上記画像処理部で処理された上記部品カメラの撮像信号と上記基板カメラの撮像信号に基いて上記第1の撮像位置における上記電子部品のずれ量と上記第2の撮像位置における上記基板のずれ量とから上記実装ツールの上記第1の移動距離を修正する修正距離を算出する演算処理部と、
この演算処理部が上記修正距離を算出している間に上記実装ツールを上記第2の移動距離で上記部品カメラの上方から上記基板の方向に移動させるとともに、上記演算処理部が上記修正距離を算出したならば、その修正距離に基いて上記第1の移動距離を修正して上記実装ツールを上記第2の移動距離からさらに移動させる駆動制御部と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0020】
上記第2の移動距離は、上記第1の移動距離よりもmm〜数十mm短い距離であることが好ましい。
【0021】
この発明は、実装ツールに保持された電子部品を基板に実装する実装方法であって、
上記基板を搬送位置決めする工程と、
上記実装ツールに保持された電子部品を上記基板に実装する前に部品カメラで撮像する工程と、
位置決めされた上記基板を基板カメラで撮像する工程と、
上記部品カメラと上記基板カメラとの撮像信号を画像処理する工程と、
上記実装ツールに保持された上記電子部品が上記部品カメラで撮像された第1の撮像位置から上記基板カメラが上記基板を撮像した第2の撮像位置まで移動するための第1の移動距離及びこの第1の移動距離に比べて短い第2の移動距離を予め設定する工程と、
画像処理された上記部品カメラの撮像信号と上記基板カメラの撮像信号に基いて上記第1の撮像位置における上記電子部品のずれ量と上記第2の撮像位置における上記基板のずれ量とから上記実装ツールの上記第1の移動距離を修正する修正距離を算出する工程と、
上記修正距離を算出している間に上記実装ツールを上記第2の移動距離の範囲内で上記部品カメラの上方から上記基板の方向に移動させるとともに、上記修正距離が算出されたならば、その修正距離に基いて上記第1の移動距離を修正して上記実装ツールを上記第2の移動距離からさらに移動させる工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法にある。
【0022】
上記第1の移動距離は数百mmの単位であって、上記第2の移動距離は上記第1の移動距離よりもmm〜数十mm短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、電子部品を撮像する第1の撮像位置から基板を撮像する第2の撮像位置までの第1の移動距離を修正するための修正距離が算出される前は、実装ツールは第1の移動距離よりも小さい第2の移動距離で移動させ、修正距離が算出されて第1の移動距離が修正されたならば、実装ツールを第2の移動距離からさらに移動させて位置決めする。
【0024】
そのため、修正距離に基づく実装ツールの移動距離を十分に確保することが可能となるから、実装ツールの位置修正を迅速かつ確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施の形態を示す実装装置の概略的構成図。
【図2】部品カメラと基板カメラとの撮像に基いて実装ツールを駆動する制御系統のブロック図。
【図3】第1の撮像位置で部品カメラによって撮像された画像を示す図。
【図4】第2の撮像位置で基板カメラによって撮像された画像を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実装装置を示す概略的構成図であって、この実装装置は電子部品としての半導体チップ1の供給部2を備えている。この供給部2は、詳細は図示しないが、樹脂製シート3にダイシングされた半導体ウエハ4が貼着されていて、この樹脂製シート3はウエハリング5に引き伸ばされて張設されている。それによって、半導体ウエハ4はダイシングラインに沿って多数の上記半導体チップ1に分割されている。
【0027】
上記ウエハリング5は図示しない駆動機構によって水平方向に駆動されて、ピックアップされる半導体チップ1が所定の位置になるよう位置決めされる。ピックアップ位置に位置決めされた半導体チップ1は、受け渡し手段としてのピックアップツール7によってピックアップされるようになっている。
【0028】
上記ピックアップツール7によってピックアップされる半導体チップ1は、上記ウエハリング5の下方に配置された図示しない突き上げピンによって突き上げられるようになっている。
【0029】
上記ピックアップツール7は支軸8を支点として矢印rで示すように、先端の吸着面7aが実線で示す下方を向いた吸着位置Sと、鎖線で示す上方を向いた受け渡し位置Dとの180度の範囲で回転駆動されるようになっている。上記ピックアップツール7の吸着面7aが上記ウエハリング5から半導体チップ1をピックアップして受け渡し位置Dに回転駆動されると、その吸着面7aに吸着保持された半導体チップ1は実装ツール11の吸着面11aに受け渡される。
【0030】
上記実装ツール11はX・Y・Z駆動機構12によって水平方向であるX、Y方向と、上下方向であるZ方向(X方向とZ方向を図1に矢印で示す。)に駆動されるようになっている。上記実装ツール11は上記受け渡し位置DでZ方向下方に駆動されて上記ピックアップツール7から半導体チップ1を受け取る。
【0031】
ついで、上記実装ツール11は実線で示す位置から鎖線で示す位置まで+X方向に駆動され、撮像面13aを上に向けて垂直に配置された部品カメラ13の上方に位置決めされる。つまり、実装ツール11は軸芯が部品カメラ13の光軸に一致するよう駆動位置決めされる。それによって、上記実装ツール11の吸着面11aに吸着保持された半導体チップ1が上記部品カメラ13によって撮像される。上記部品カメラ13によって上記半導体チップ1を撮像する位置を第1の撮像位置P1とする。
【0032】
上記第1の撮像位置P1で上記部品カメラ13が実装ツール11の吸着面11aに吸着保持された半導体チップ1を撮像すると、上記実装ツール11はさらに+X方向に駆動されて上記半導体チップ1が実装される基板Wの上方に位置決めされる。
【0033】
上記基板Wは一対の搬送レール14に沿ってガイドされ、図示しないチャックなどの送り機構(図示せぬ)によりピッチ送りされるようになっている。上記搬送レール14と上記送り機構は搬送手段を構成している。なお、基板Wの送り方向は上記X方向と直交するY方向である。
【0034】
上記搬送レール14に沿って搬送位置決めされた上記基板Wは、上記搬送レール14の上方に撮像面15aを下方に向けて光軸を垂直して配置された基板カメラ15によって撮像される。基板カメラ15が基板Wを撮像する位置を第2の撮像位置P2とする。
【0035】
上記実装ツール11は、上記第1の撮像位置P1で部品カメラ13によって吸着面11aに吸着保持された半導体チップ1が撮像されると、後述するように上記基板カメラ15の下方に駆動されて位置決めされる。
【0036】
図2に示すように、上記部品カメラ13と上記基板カメラ15の撮像信号は画像処理部17に出力されて画像処理される。画像処理された各カメラ13,15の撮像信号は制御装置18に設けられた演算処理部19に出力される。
【0037】
上記演算処理部19では、図3に示すように上記第1の撮像位置P1における上記部品カメラ13の画像G1から部品カメラ13の光軸座標(X,Y)に対する半導体チップ1の中心座標(X、Y)のずれ量Δd1と、図4に示すように上記第2の撮像位置P2の画像G2から基板カメラ15の光軸座標(X00,Y00)に対する上記基板Wの上記半導体チップ1が実装される位置に設けられたマークmの中心座標(X11,Y11)のずれ量Δd2が算出される。
なお、上記半導体チップ1は、その中心を上記マークmの中心に一致させて基板Wに実装される。
【0038】
上記第1の撮像位置P1における部品カメラ13の光軸座標(X,Y)に対する半導体チップ1の中心座標(X、Y)のずれ量と、上記第2の撮像位置P2における基板カメラ15の光軸座標(X00,Y00)に対する上記基板Wに設けられたマークmの中心座標(X11,Y11)のX、Y方向に対するずれ量Δd1、Δd2がともに0のとき、上記実装ツール11は図1に示すように上記第1の撮像位置P1の光軸中心O1から上記第2の撮像位置P2の光軸中心O2まで移動することで、半導体チップ1の中心位置を上記基板Wの実装位置に設けられたマークの中心座標に対して精密に一致させることができる。
【0039】
このときの実装ツール11の上記第1の撮像位置P1から上記第2の撮像位置P2までの移動距離を図1に示すように第1の移動距離L1とすると、この第1の移動距離L1は部品カメラ13の光軸座標(X,Y)と、基板カメラ15の光軸座標(X00,Y00)は既知であるから、これらの座標に基づいて予め算出することができる。
つまり、上記第1の移動距離L1は既知であって、通常の実装装置では150〜250mm程度、この実施の形態では200mmとなっている。
【0040】
上記実装ツール11の吸着面11aに受け渡された半導体チップ1がX、Y方向に対してずれ量Δd1でずれていたり、基板Wが搬送レール14に対してX、Y方向にずれ量Δd2でずれて位置決めされていると、実装ツール11を第1の撮像位置P1から第1の移動距離L1で移動させても、上記ずれ量Δd1、Δd2によって上記実装ツール11の吸着面11aに吸着保持された半導体チップ1の中心位置が基板Wに設けられたマークmの中心座標に対して一致しないことになる。
【0041】
つまり、半導体チップ1が実装ツール11の吸着面11aに対してずれ量Δd1でずれていて、基板Wが搬送レール14にずれ量Δd2でずれているとき、第1の移動距離L1は上記各ずれ量Δd1とΔd2とに基づいて修正される。このときの修正距離をΔL1とする。
【0042】
すなわち、上記演算処理部19では上記ずれ量Δd1及びΔd2を算出した後、これらずれ量Δd1及びΔd2に基づいて図2に示す設定部21で設定された上記第1の移動距離L1を修正した修正距離ΔL1が算出される。この演算処理部19で算出された修正距離ΔL1は時間制御部22を介して駆動制御部23に出力される。
【0043】
上記設定部21には上記第1の移動距離L1及び第2の移動距離L2が設定される。上記第2の移動距離L2は図1に示すように上記第1の移動距離L1に比べて数mm〜数十mm単位で小さい距離、たとえばこの実施の形態では第1の移動距離L1が200mmの場合、第2の移動距離L2は第1の移動距離L1よりも20mm短い180mmに設定されている。
【0044】
そして、上記部品カメラ13による半導体チップ1の撮像と、上記基板カメラ15による上記基板Wの撮像が終了した時点で、上記設定部21で設定された第2の移動距離L2に基づく駆動信号が上記時間制御部22を介して駆動制御部23に出力される。
【0045】
上記駆動制御部23は上記設定部21に設定された第2の移動距離L2に基づく駆動信号によって上記X・Y・Z駆動機構12を駆動し、上記実装ツール11を+X方向に駆動する。つまり、上記実装ツール11は上記第1の撮像位置P1から第2の撮像位置P2に向かって上記第2の移動距離L2である、180mmの距離まで移動させられる。
【0046】
上記X・Y・Z駆動機構12が実装ツール11を駆動すると、その駆動距離がエンコーダ24によって検出され、その検出信号が駆動制御部23にフィードバックされる。それによって、X・Y・Z駆動機構12による実装ツール11の駆動が精度よく行われるようになっている。
【0047】
上記実装ツール11が上記第1の撮像位置P1から+X方向に上記第2の移動距離L2で駆動された後、上記実装ツール11は上記演算処理部19で算出されて時間制御部22に出力された修正距離ΔL1に基づいてさらに駆動される。
【0048】
すなわち、180mmの第2の移動距離L2で駆動された実装ツール11の残りの移動距離は20mmであるが、演算処理部19で算出されたずれ量Δd1及びΔd2のうち、X方向に対するずれ量がx1であるとすると、上記実装ツール11のX方向の残りの移動距離Xは、
X=(20−x1)
となる。
【0049】
したがって、上記実装ツール11は設定部21で設定された第2の移動距離L2で駆動された後、時間制御部22で設定された時間が経過すると、上記演算処理部19で算出された修正距離ΔL1によって修正された移動距離Xに基づく駆動信号が上記時間制御部22から駆動制御部23に出力され、上記実装ツール11がさらに+X方向に駆動される。
【0050】
それによって、実装ツール11の吸着面11aに吸着保持された半導体チップ1は、X方向の中心位置が基板Wの半導体チップ1が実装される実装位置に設けられたマークmのX座標に一致することになる。
【0051】
X方向に続いて実装ツール11をY方向に駆動し、Y方向に対しても位置決めする。ついで、実装ツール11を下降方向に駆動すれば、半導体チップ1の中心を基板Wに設けられたマークmの中心に対して精密に一致させて実装することができる。なお、実装ツール11のX、Y方向の駆動は同時に行うようにしてもよい。
【0052】
このような実装装置によれば、実装ツール11を初めは第1の撮像位置P1から第2の撮像位置P2までの第1の移動距離L1よりも20mm短い第2の移動距離L2で移動させる。ついで、上記第1の撮像位置P1での半導体チップ1の撮像と、第2の撮像位置P2での基板Wの撮像によって算出された修正距離ΔL1に基づいて上記実装ツール11を上記第2の移動距離L2からさらに移動させるようにした。
【0053】
そのため、演算処理部19で算出された第1の撮像位置P1でのずれ量Δd1及び第2の撮像位置P2でのずれ量Δd2の和から求められる修正距離ΔL1が数十μmの微小な距離であっても、実装ツール11を第2の移動距離L2で移動させた後、第2の撮像位置P2に精密に位置決めするために移動する距離は、第1の移動距離L1と第2の移動距離L2との差の20mmを上記修正距離ΔL1(ずれ量Δd1及びΔd2)で修正した距離となる。
【0054】
つまり、実装ツール11を第2の撮像位置P2に精密に位置決めするために、この実装ツール11を最終的に移動させる制御距離を20mm前後とすることができる。したがって、実装ツール11の位置決め制御を数μm単位の距離で行わなければならなかった従来に比べ、確実かつ迅速に行なうことが可能となる。
【0055】
上記実装ツール11を第1の移動距離L1に比べて数十mm少ない第2の移動距離L2で移動させてから、残りの距離をさらに移動させて上記実装ツール11を位置決めするようにしたから、実装ツール11を第1の移動距離L1を超える位置まで移動させるのを確実に防止できる。
【0056】
そのため、実装ツール11を位置決めする場合に、この実装ツール11の移動方向を逆方向に変えて行うということをせずにすむから、そのことによっても実装ツール11の位置決めに要するタクトタイムを短縮することができるばかりか、実装ツール11の駆動方向を変換させて実装装置を振動させるということもないから、そのことによってタクトタイムの短縮や位置決め精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体チップ、11…実装ツール、12…X・Y・Z駆動機構、13…部品カメラ、14…搬送レール(搬送手段)、15…基板カメラ、17…画像処理部、18…制御装置、19…演算処理部、21…設定部、22…時間制御部、23…駆動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を実装する実装装置であって、
上記基板を搬送位置決めする搬送手段と、
上記電子部品を保持する実装ツールと、
この実装ツールに保持された電子部品を上記基板に実装する前に撮像する部品カメラと、
上記搬送手段によって位置決めされた上記基板を撮像する基板カメラと、
上記部品カメラと上記基板カメラとの撮像信号を画像処理する画像処理部と、
上記実装ツールに保持された上記電子部品が上記部品カメラで撮像された第1の撮像位置から上記基板カメラが上記基板を撮像した第2の撮像位置まで移動するための第1の移動距離及びこの第1の移動距離に比べて短い第2の移動距離を予め設定する設定部と、
上記画像処理部で処理された上記部品カメラの撮像信号と上記基板カメラの撮像信号に基いて上記第1の撮像位置における上記電子部品のずれ量と上記第2の撮像位置における上記基板のずれ量とから上記実装ツールの上記第1の移動距離を修正する修正距離を算出する演算処理部と、
この演算処理部が上記修正距離を算出している間に上記実装ツールを上記第2の移動距離で上記部品カメラの上方から上記基板の方向に移動させるとともに、上記演算処理部が上記修正距離を算出したならば、その修正距離に基いて上記第1の移動距離を修正して上記実装ツールを上記第2の移動距離からさらに移動させる駆動制御部と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
上記第2の移動距離は、上記第1の移動距離よりもmm〜数十mm短い距離であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項3】
実装ツールに保持された電子部品を基板に実装する実装方法であって、
上記基板を搬送位置決めする工程と、
上記実装ツールに保持された電子部品を上記基板に実装する前に部品カメラで撮像する工程と、
位置決めされた上記基板を基板カメラで撮像する工程と、
上記部品カメラと上記基板カメラとの撮像信号を画像処理する工程と、
上記実装ツールに保持された上記電子部品が上記部品カメラで撮像された第1の撮像位置から上記基板カメラが上記基板を撮像した第2の撮像位置まで移動するための第1の移動距離及びこの第1の移動距離に比べて短い第2の移動距離を予め設定する工程と、
画像処理された上記部品カメラの撮像信号と上記基板カメラの撮像信号に基いて上記第1の撮像位置における上記電子部品のずれ量と上記第2の撮像位置における上記基板のずれ量とから上記実装ツールの上記第1の移動距離を修正する修正距離を算出する工程と、
上記修正距離を算出している間に上記実装ツールを上記第2の移動距離で上記部品カメラの上方から上記基板の方向に移動させるとともに、上記修正距離が算出されたならば、その修正距離に基いて上記第1の移動距離を修正して上記実装ツールを上記第2の移動距離からさらに移動させる工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項4】
上記第1の移動距離は数百mmの単位であって、上記第2の移動距離は上記第1の移動距離よりもmm〜数十mm短いことを特徴とする請求項3記載の電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−23424(P2011−23424A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165026(P2009−165026)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】