説明

電子部品搭載用基板およびその製造方法

【課題】 電子部品が備える凸状の金属端子との接続が容易な接続パッドが絶縁基板の主面に設けられた電子部品搭載用基板を提供する。
【解決手段】 ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基板1と、絶縁基板1の内部から主面にかけて形成された貫通導体3と、絶縁基板1の主面から貫通導体3の端面にかけて被着されたメタライズ層からなる接続パッド2とを備え、接続パッド2に電子部品11の電極12が凸状の金属端子13を介して接続される電子部品搭載用基板9であって、貫通導体3の中心部に、貫通導体3の長さ方向に沿った長いガラスセラミック焼結体からなる中心材3aが埋設されている電子部品搭載用基板9である。中心材3aの埋設により貫通導体3の焼成収縮が絶縁基板1の焼成収縮に近くなるため、収縮の差による貫通導体3の突出が抑制され、接続パッド2の変形を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基板の主面に、電子部品の電極が金属端子を介して接続される接続パッドが設けられた電子部品搭載用基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や容量素子,圧電振動子等の電子部品が搭載される電子部品搭載用基板として、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる四角板状等の絶縁基板と、絶縁基板の主面に銅や銀等の金属材料を用いて設けられた、電子部品の電極が電気的に接続される接続パッドとを備えたものが多用されている。
【0003】
接続パッドは、円形状等のパターンのメタライズ層からなり、絶縁基板の内部から主面にかけて絶縁層を厚み方向に貫通して形成された貫通導体の端面がメタライズ層と接続されている。この貫通導体を介して、メタライズ層に電気的に接続された電子部品の電極が、絶縁基板の内部や下面等に配置された配線導体や外部接続用パッド等と電気的に接続される。この貫通導体は、一般に、メタライズ層に対する接続を確実にするために、平面視でメタライズ層の中央部分においてメタライズ層と接続されている。
【0004】
接続パッドに対する電子部品の電極の電気的な接続は、例えば、電子部品の電極と対向するように接続パッドを絶縁基板の主面に設けておいて、金やはんだ,アルミニウム等の金属材料からなる凸状の金属端子を電子部品の電極の表面に接合し、この金属端子を接続パッドに超音波圧着等の接合方法で直接に接続することにより行なわれる。
【0005】
このような電子部品搭載用基板は、一般に、ガラス粉末とセラミック粉末とを有機溶剤およびバインダとともにシート状に成形して作製したセラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、貫通孔内に金属ペースト充填した後、その充填した金属ペーストの端面およびその周囲のセラミックグリーンシートの主面に金属ペーストを所定の接続パッドのパターンで印刷し、その後、複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成する方法で製作されている。積層されて焼成されたそれぞれのセラミックグリーンシートが、絶縁基板を構成する各絶縁層になり、貫通孔内に充填された金属ペーストが貫通導体になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−87917号公報
【特許文献2】特開2005−268692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような電子部品搭載用基板は、絶縁基板を構成する絶縁層となるセラミックグリーンシートと貫通導体となる金属ペーストとの間で焼成時の収縮率が異なる(セラミックグリーンシートの方が大きく収縮する)ため、焼成時に貫通導体の端部が絶縁基板の主面よりも外側に突出しやすい傾向がある。この場合、貫通導体の端部が突出すると、それに応じて接続パッドを構成するメタライズ層の中央部が凸状に変形して、接続パッドの表面が凸状になる。貫通導体(金属ペースト)は、外周部分では、接している絶縁基板(セラミックグリーンシート)の収縮の影響を受けるため突出量が比較的小さいのに対し、中央部で突出量が比較的大きくなる。
【0008】
そのため、電子部品の金属端子が接続パッドの表面で滑りやすくなる可能性があり、金属端子と接続パッドとを位置合わせして接続することが難しくなるという問題点があった。
【0009】
特に、上記のようにガラスセラミック焼結体で絶縁層が形成されている場合には、セラミックグリーンシートと金属ペーストとの間で焼成時の収縮率の差が大きくなる傾向があるため、このような問題点が発生しやすい。
【0010】
本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、電子部品が備える凸状の金属端子との接続が容易な接続パッドが絶縁基板の主面に設けられた電子部品搭載用基板、およびその電子部品搭載用基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子部品搭載用基板は、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基板と、該絶縁基板の内部から主面にかけて形成された貫通導体と、前記絶縁基板の主面から前記貫通導体の端面にかけて被着されたメタライズ層からなる接続パッドとを備え、該接続パッドに電子部品の電極が凸状の金属端子を介して接続される電子部品搭載用基板であって、前記貫通導体の中心部に、該貫通導体の長さ方向に沿った長いガラスセラミック焼結体からなる中心材が埋設されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の電子部品搭載用基板の製造方法は、ガラス粉末およびセラミック粉末をシート状に成形して複数のセラミックグリーンシートを準備するとともに、該セラミックグリーンシートに厚み方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、
複数の前記セラミックグリーンシートの一部について前記貫通孔内に金属ペーストを充填する工程と、
複数の前記セラミックグリーンシートの他の一部について、前記貫通孔の内側面に金属ペーストを塗布した後、該金属ペーストの内側にガラス粉末およびセラミック粉末を含むセラミックペーストを充填する工程と、
前記貫通孔内に金属ペーストを充填した前記セラミックグリーンシートを最上層および最下層として複数の前記セラミックグリーンシートを積層して積層体とし、該積層体の主面から前記貫通孔に充填した金属ペーストの露出した端面にかけて金属ペーストを塗布した後、前記積層体を焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品搭載用基板によれば、貫通導体の中心部に、その貫通導体の長さ方向に沿った長いガラスセラミック焼結体からなる中心材が埋設されていることから、貫通導体の中心部における収縮が、埋設されたガラスセラミック焼結体からなる、焼成時の収縮が大きい中心材によって大きくなっている。そのため、貫通導体の端部の突出が抑制され、それに応じて接続パッドを構成するメタライズ層の中央部における凸状の変形が効果的に抑制される。
【0014】
したがって、本発明の電子部品搭載用基板によれば、電子部品が備える凸状の金属端子との接続が容易な接続パッドが絶縁基板の主面に設けられた電子部品搭載用基板を提供することができる。
【0015】
本発明の電子部品搭載用基板の製造方法によれば、上記工程を備え、貫通孔内に金属ペーストを充填したセラミックグリーンシートを最上層および最下層として、それらのセラミックグリーンシートの間に、貫通孔の内側面に塗布した金属ペーストの内側にセラミックペーストを充填したセラミックグリーンシートを積層して焼成することから、貫通導体となる金属ペーストの中心部において焼成時の収縮を大きくすることができる。そのため、貫通導体の端部の突出を抑制することができ、それに応じて接続パッドを構成するメタライズ層の中央部における凸状の変形を効果的に抑制して、電子部品搭載用基板を製作することができる。したがって、電子部品が備える凸状の金属端子との接続が容易な接続パッドが絶縁基板の主面に設けられた電子部品搭載用基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の電子部品搭載用基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)はそのA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す電子部品搭載用基板の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の電子部品搭載用基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電子部品搭載用基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)は本発明の電子部品搭載用基板の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。また、図2は、図1に示す電子部品搭載用基板の要部を拡大して示す拡大断面図である。図1および図2において、1は絶縁基板、2はメタライズ層(符号なし)からなる接続パッド、3は貫通導体、4は配線導体である。絶縁基板1と、絶縁基板1の主面に設けられた接続パッド2とにより電子部品搭載用基板9が基本的に構成されている。
【0018】
絶縁基板1は、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層(符号なし)が積層されて形成されている。絶縁層の積層数は、図1に示す例では5層であり、そのうち上側の4層について貫通導体3が形成されているが、これ以外の積層数でも構わない。
【0019】
絶縁基板1は、例えば各絶縁層が、ホウケイ酸系ガラスにセラミック成分として酸化アルミニウムを添加してなるガラスセラミック焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作することができる。すなわち、酸化ケイ素,酸化ホウ素等のガラス成分の粉末に酸化アルミニウム等のセラミック粉末を添加した原料粉末に適当な有機バインダおよび有機溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やリップコータ法等のシート成形技術を採用してシート状となすことによって複数枚のセラミックグリーンシートを作製し、その後、セラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工によって適当な形状とするとともにこれを複数枚積層し、最後にこの積層されたセラミックグリーンシートを還元雰囲気中において約950〜1000℃の温度で焼成することによって製作される。
【0020】
絶縁基板1は、例えば四角板状であり、電子部品11を搭載し支持するための基体として機能し、主面(図1に示す例では上面)に電子部品11が搭載される。電子部品11としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子、およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子、弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子,容量素子,抵抗器,半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品11が挙げられる。
【0021】
絶縁基板1の電子部品11が搭載される主面には、電子部品11の電極12が電気的に接続される接続パッド2が設けられている。電極12と接続パッド2との電気的な接続は、例えば図2に示すように、金やはんだ,アルミニウム等の金属からなる凸状の金属端子13を電極12に接合しておき、この金属端子13を接続パッド2に超音波圧着等の接合方法で直接に接続することによって行なわれる。なお、金属端子13の電極12に対する接合は、超音波圧着や溶融接合等の方法で行なわれる。
【0022】
接続パッド2は、例えば円形状や楕円形状,四角形状等のパターンであり、絶縁基板1の主面から貫通導体3の端面にかけて被着されたメタライズ層からなる。また、接続パッド2が端面に被着された貫通導体3は、接続パッド2に接続される電子部品11の電極12を、絶縁基板1の内部等に配置された配線導体4や外部電気回路(図示せず)等と電気的に接続するためのものである。つまり、接続パッド2および貫通導体3は、電子部品11の電極12を外部電気回路等に電気的に接続するための導電路として機能する。接続パッド2および貫通導体3を通って、電子部品11と外部の電気回路との間で授受される電気信号が伝送される。
【0023】
接続パッド2および貫通導体3は、銅や銀,パラジウム,金,白金等の金属材料により形成されている。これらの金属材料、特に銅および銀は、電気抵抗が低いため、接続パッド2および貫通導体3における電気抵抗を低く抑えて、電子部品搭載用基板9としての電気特性を高くする上で有利である。
【0024】
本発明の電子部品搭載用基板9においては、絶縁基板1がガラスセラミック焼結体からなる絶縁層が積層されたものであるため、絶縁基板1を製作するときの焼成温度が上記のように比較的低く、銅や銀等の融点(銅:約1083℃、銀:約962℃)が比較的低い金属材料で接続パッド2を、絶縁基板1との同時焼成で形成することが容易である。
【0025】
なお、接続パッド2を形成するメタライズ層の厚さは、例えば前述したような電子部品11の金属端子13が金やはんだからなる場合であれば、約10〜35μmに設定すればよい。
【0026】
貫通導体3は、例えば端面が円形状や楕円形状であり、直径(長軸および短軸)が約50〜200μm程度の寸法で形成されている。
【0027】
本発明の電子部品搭載用基板9においては、貫通導体3の中心部に、貫通導体3の長さ方向に沿った長いガラスセラミック焼結体からなる中心材3aが埋設されている。このような中心材3aが埋設されていることから、貫通導体3の中心部における収縮が、埋設されたガラスセラミック焼結体からなる、焼成時の収縮が大きい中心材3aにより大きくなっている。すなわち、貫通導体3のうち特に突出しやすい中央部において、その収縮を大きくして突出を抑制するような材料を内部に埋設している。そのため、貫通導体3の端部の突出が抑制され、それに応じて接続パッド2を構成するメタライズ層の中央部における凸状の変形が効果的に抑制される。したがって、電子部品11が備える凸状の金属端子13との接続が容易な接続パッド2が絶縁基板1の主面に設けられた電子部品搭載用基板9を提供することができる。
【0028】
上記のような効果を十分に得るために、中心材3aは、貫通導体3の長さ方向に沿って長い形状で埋設され、貫通導体3の中心部に存在する金属材料(収縮量が小さい)を極力少なくしている。
【0029】
なお、中心材3aを形成するガラスセラミック焼結体は、例えば絶縁基板1と同様のガラスセラミック焼結体を用いることができる。また、中心材3aを形成するガラスセラミック焼結体は、絶縁基板1を形成するガラスセラミック焼結体よりもガラスの含有量を多くして、焼成時の収縮をより大きくするようにしてもよい。
【0030】
この場合、中心材3aが絶縁体であるため、貫通導体3(導体部分)の断面積が小さくなるが、貫通導体3を伝送される電気信号は数MHz程度の高周波化が進んでおり、このような高周波信号では、いわゆる表皮効果によって貫通導体3の主に外周部分を信号が伝送される。そのため、このような中心材3aが埋設されていたとしても、貫通導体3を通る電気信号の伝送が妨げられることは効果的に抑えることができる。
【0031】
次に、本発明の電子部品搭載用基板9の製造方法について、添付の図3を参照しつつ説明する。図3(a)〜(d)は、それぞれ本発明の電子部品搭載用基板9の製造方法を工程順に示す断面図である。図3において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、ガラス粉末およびセラミック粉末をシート状に成形して複数のセラミックグリーンシート21を準備するとともに、これらのセラミックグリーンシート21に厚み方向に貫通する貫通孔22を形成する。なお、図3(a)では1つのセラミックグリーンシート21のみを示し、他は省略している。
【0033】
セラミックグリーンシート21は、例えば前述したように、酸化ケイ素および酸化ホウ素等のガラス成分の粉末に酸化アルミニウム等のセラミック粉末を添加した原料粉末を適当な有機バインダおよび有機溶剤とともにドクターブレード法やリップコータ法等の方法でシート状に成形する方法で準備することができる。
【0034】
貫通孔22は、貫通導体3を形成する所定の位置において、セラミックグリーンシート21に打ち抜き用の金属ピンを配置した金型を用いた機械的な打ち抜き加工や、レーザ光を用いた孔あけ加工等の加工を施す方法で形成することができる。
【0035】
通常、このような金属ピンが円柱状(先端が尖った棒状等)であり、またレーザ光の照射範囲が円形状であるため、貫通孔22は、上記加工方法での形成を容易とする上では開口が円形状であるものが好ましい。また、貫通孔22は、開口が楕円形状や四角形状等の、円形状以外のものとする場合であれば、楕円柱状等の開口の形状に応じた断面の金属ピンを用いたり、レーザ光の照射口に楕円形状等のマスクを配置して照射範囲を所定の楕円形状等の形状としたりすればよい。
【0036】
次に、図3(b)に示すように、複数のセラミックグリーンシート21の一部21aについて貫通孔22内に金属ペースト23aを充填する。
【0037】
金属ペースト23aは、銅や銀,パラジウム,金,白金等の金属材料の粉末に有機溶剤および有機バインダ等を添加し、ミル等を用いて混練する方法で作製することができる。
【0038】
また、貫通孔22内への金属ペースト23aの充填は、スクリーン印刷法等の印刷法で行なうことができる。この場合、有機溶剤や有機バインダの添加量を調整して金属ペースト23aの粘度を調整すれば、貫通孔22内への金属ペースト23aの充填をより容易とすることもできる。
【0039】
次に、図3(c)に示すように、複数のセラミックグリーンシート21の他の一部21bについて、貫通孔22の内側面に金属ペースト23aを塗布した後、金属ペースト23aの内側にガラス粉末およびセラミック粉末を含むセラミックペースト23bを充填する。
【0040】
この工程で使用する金属ペースト23aも、上記の、貫通孔22内に金属ペースト23aを充填する工程と同様の材料を用い、同様の方法で作製することができる。
【0041】
また、貫通孔22の内側面への金属ペースト23aの塗布は、貫通孔22の下側から真空吸引で吸引しながら、貫通孔22の上側からスクリーン印刷法で金属ペースト23aを貫通孔22内に入り込ませる方法等の方法で行なうことができる。この場合も、金属ペースト23aに添加する有機溶剤の量等を調節して金属ペースト23aの粘度を調整して、このような塗布をより容易に行なえるようにしてもよい。
【0042】
セラミックペースト23bは、例えばセラミックグリーンシート21を作製するために用いるのと同様のガラス粉末およびセラミック粉末を用い、これに有機溶剤および有機バインダ等を添加し、混練する方法で作製することができる。
【0043】
セラミックペースト23bの貫通孔22内(貫通孔22の内側面に塗布された金属ペースト23aの内側)への充填も、スクリーン印刷法で行なうことができる。また、この場合も、セラミックペースト23bに添加する有機溶剤の量等を調節してセラミックペースト23bの粘度を調整して、このような充填をより容易に行なえるようにしてもよい。
【0044】
例えば平面視で円形状である貫通孔22の内側面に金属ペースト23aをほぼ均一な厚みで塗布したときに、その金属ペースト23aの内側も平面視で円形状であり、充填したセラミックペースト23bも平面視で円形状になる。
【0045】
次に、図3(d)に示すように、貫通孔22内に金属ペースト23aを充填したセラミックグリーンシート21aを最上層および最下層として複数のセラミックグリーンシート21(21a,21b)を積層して積層体(符合なし)とし、この積層体の主面から貫通孔22に充填した金属ペースト23aの露出した端面にかけて接続パッド2を形成するメタライズ層となる金属ペースト23aを塗布した後、積層体を焼成すれば、図1に示すような電子部品搭載用基板9を製作することができる。
【0046】
なお、この図3(d)に示した例では、貫通孔22を形成した最下層のセラミックグリーンシート21aの下側に、貫通孔22を形成していないセラミックグリーンシート21を追加して積層している。このような貫通孔22を形成していないセラミックグリーンシート21を、配線導体4のパターン等の都合に応じて積層しても構わない。
【0047】
このような本発明の電子部品搭載用基板9の製造方法によれば、上記工程を備え、貫通孔22内に金属ペースト23aを充填したセラミックグリーンシート21aを最上層および最下層として、その間に、貫通孔22の内側面に塗布した金属ペースト23aの内側にセラミックペースト23bを充填したセラミックグリーンシート21(21a,21b)を積層して焼成することから、貫通導体3となる金属ペースト23aの中心部において焼成時の収縮を大きくすることができる。そのため、貫通導体3の端部の突出を抑制することができ、それに応じて接続パッド2を構成するメタライズ層の中央部における凸状の変形を効果的に抑制して、電子部品搭載用基板9を製作することができる。
【0048】
上記のような効果を得るために、中心材3aとなるセラミックペースト23bは、貫通導体3となる金属ペースト23aの長さ方向に沿って長い形状で埋設されている。中心材3aの長さは、例えば、電子部品搭載用基板9のような基板において多用されている、銅または銀からなる、直径が約50〜200μmの円形状であり、長さが約150〜1500μm程度の貫通導体3の場合であれば、その長さの約60%程度以上とすればよい。なお、貫通導体3の端部分は、接続パッド2や配線導体4との電気的な接続のために、中心材3aが露出しないようにしておくことが好ましい。
【0049】
また、中心材3aの平面視における大きさは、例えば上記のような貫通導体3の場合であれば、貫通導体3の直径の約60〜80%程度の円形状とすればよい。
【0050】
次に、本発明の電子部品搭載用基板の製造方法における効果を示す一例として、ホウケイ酸ガラス(ガラス)粉末と酸化アルミニウム(セラミック)粉末とを主成分とする、厚みが約200μmのセラミックグリーンシート21を4層積層して絶縁基板1を作製するときに、開口が円形状(直径が約75μm)の貫通孔22をセラミックグリーンシート21の全層に形成した場合について説明する。
【0051】
まず、貫通導体3となる金属ペースト23aおよび接続パッド2となる金属ペースト23aは、銅の粉末に有機溶剤および有機バインダを添加して作製した。また、中心材3aとなるセラミックペースト23bは、セラミックグリーンシート21を作製するのと同様のホウケイ酸ガラス粉末および酸化アルミニウム粉末をセラミックグリーンシート21の場合と同様の組成で混合し、これに有機溶剤および有機バインダを添加した後に混練して作製した。
【0052】
上記の4層のセラミックグリーンシート21のうち最上層および最下層となるものの貫通孔22には金属ペースト23aを充填し、他のセラミックグリーンシート21の貫通孔には、内側面に金属ペースト23aを約15μmの厚みで塗布し、その金属ペースト23aの内側にセラミックペースト23bを充填した。
【0053】
そして、これらのセラミックグリーンシート21を積層して積層体とした後、積層体の主面(上面および下面ともに)から貫通孔22に充填した金属ペースト23aの端面にかけて接続パッド2となる金属ペースト23aを塗布するとともに焼成して、接続パッド2の変形の程度を測定した。この変形の測定は、3次元測定装置で行なった。なお、比較例として、従来技術の製造方法で、中心材3aとなるセラミックペースト23bを用いないこと以外は上記と同様にして、電子部品搭載用基板(図示せず)を製作した。
【0054】
その結果、このような本発明の電子部品搭載用基板の製造方法の一例によって製作した電子部品搭載用基板9においては、接続パッド2の表面の変形(突出)が最大で約10μm程度であった。これに対し、比較例の製造方法で製作した電子部品搭載用基板では、接続パッド(図示せず)の変形(突出)が最大で約30μm程度であった。これにより、本発明の製造方法における、貫通導体3(および接続パッド2)の突出を抑制する効果を確認することができた。
【0055】
なお、上記の工程において、メタライズ層となる金属ペースト23aは、貫通孔22に充填した金属ペースト23aと同様の材料で作製したものを用いることができる。また、この金属ペースト23aの塗布も、スクリーン印刷法等の方法で行なうことができる。この場合も、メタライズ層となる金属ペースト23aは、有機溶剤や有機バインダ等の添加量を調整して、セラミックグリーンシート21(21a)の主面等への印刷等の方法での塗布が容易な程度に粘度を調整してもよい。
【0056】
セラミックグリーンシート21の積層は、各セラミックグリーンシート21の対応する貫通孔22が上下につながるように位置合わせしながら行なう。セラミックグリーンシート21の位置合わせは、例えばセラミックグリーンシート21の外周部分に切り込み等の位置合わせ用の目印(図示せず)を設けておいて、これを基準にして行なう。
【0057】
この場合、金属ペースト23aとセラミックペースト23bとが内部に塗布または充填された複数の貫通孔22がつながって、電子部品搭載用基板9における、中心材3aが埋設された貫通導体3が形成される。
【0058】
また、セラミックグリーンシート21には、配線導体4を形成するための金属ペースト23aを塗布している。この配線導体4用の金属ペースト23aも、貫通孔22に充填する金属ペースト23aと同様の材料で作製したものを用いることができる。なお、配線導体4のうち絶縁基板1の側面に位置する部分は、図3(d)の工程で積層体を作製した後、この積層体の外側面に上記と同様の金属ペースト23a(図示せず)を塗布すれば、形成することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・絶縁基板
2・・・接続パッド
3・・・貫通導体
3a・・中心材
4・・・配線導体
9・・・電子部品搭載用基板
11・・・電子部品
12・・・電極
13・・・金属端子
21・・・セラミックグリーンシート
21a・・セラミックグリーンシートの一部
21b・・セラミックグリーンシートの他の一部
22・・・貫通孔
23a・・金属ペースト
23b・・セラミックペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基板と、該絶縁基板の内部から主面にかけて形成された貫通導体と、前記絶縁基板の主面から前記貫通導体の端面にかけて被着されたメタライズ層からなる接続パッドとを備え、該接続パッドに電子部品の電極が凸状の金属端子を介して接続される電子部品搭載用基板であって、前記貫通導体の中心部に、該貫通導体の長さ方向に沿った長いガラスセラミック焼結体からなる中心材が埋設されていることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項2】
ガラス粉末およびセラミック粉末をシート状に成形して複数のセラミックグリーンシートを準備するとともに、該セラミックグリーンシートに厚み方向に貫通する貫通孔を形成する工程と、
複数の前記セラミックグリーンシートの一部について前記貫通孔内に金属ペーストを充填する工程と、
複数の前記セラミックグリーンシートの他の一部について、前記貫通孔の内側面に金属ペーストを塗布した後、該金属ペーストの内側にガラス粉末およびセラミック粉末を含むセラミックペーストを充填する工程と、
前記貫通孔内に金属ペーストを充填した前記セラミックグリーンシートを最上層および最下層として複数の前記セラミックグリーンシートを積層して積層体とし、該積層体の主面から前記貫通孔に充填した金属ペーストの露出した端面にかけて金属ペーストを塗布した後、前記積層体を焼成する工程とを備えることを特徴とする電子部品搭載用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−49342(P2011−49342A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196225(P2009−196225)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】