説明

電極接合構造体

【課題】回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を、絶縁性接合樹脂を用いて接合する電極接合において、マイグレーション不良の発生を抑えることができる電極接合構造体を提供する。
【解決手段】配線方向に沿って延在する第1電極を複数本配列して有する第1回路形成体と、第1回路形成体の複数の第1電極にそれぞれ対向して配置されて電気的に接続された複数の第2電極を有する第2回路形成体と、第1回路形成体と第2回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂とを備え、第1回路形成体において、隣接する第1電極間の領域の幅を、対向領域の少なくとも1つの端部近傍において対向領域の中央部よりも大きく形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を、絶縁性接合樹脂を用いて接合する電極接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板やフレキシブル基板等の回路形成体の電極に、他のガラス基板やフレキシブル基板、あるいは電子部品等の回路形成体の電極を電気的に接合する技術として、絶縁性接合樹脂、例えば絶縁性樹脂材料内に導電性粒子が分散された樹脂シート材料である異方性導電性シートを用いる技術が知られている。この技術は、接合対象となる電極間に異方性導電性シートを配置し、回路形成体を介して異方性導電性シートを圧着ツールで加圧するとともに加熱することで、絶縁性接合樹脂を溶融させて、導電性粒子を介して電極間を導通させる技術である。
【0003】
この異方性導電性シートを用いる電極接合技術は、様々な形態の電極接合に適応可能であり、例えば、ガラス基板とフレキシブル基板との電極接合(FOG)、ガラス基板とICチップ部品との電極接合(COG)、フレキシブル基板とICチップ部品との電極接合(COF)、プリント配線基板とICチップ部品との電極接合、フレキシブル基板とフレキシブル基板との電極接合、フレキシブル基板とプリント配線基板との電極接合等、幅広く適用されている。
【0004】
近年、例えばガラス基板とフレキシブル基板との電極接合に代表されるフラットパネルの接合技術においては、電極間に高電圧が印加されるときの信頼性の確保とともに、電子機器の高密度化に伴って隣接配線電極間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。具体的には、その隣接配線電極間のピッチは、従来求められていた200μm〜100μmから、100μm〜50μm以下まで狭ピッチ化することが求められている。
【0005】
このように隣接配線電極間の狭ピッチ化が進むと、異方性導電性シートを用いる電極接合技術においては、隣接する電極間がショート(短絡)して接合不良となる可能性が高くなり、接合の信頼性を向上させることが求められる。そこで、従来の電極接合方法においては、接合の信頼性を向上させるための様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
ここで、従来における電極接合方法の一般的な例として、ガラス基板にフレキシブル基板を接合するフラットパネルの接合方法について、模式図を用いて説明する。
【0007】
まず、図11の模式平面図に示すように、フラットパネルの接合構造においては、図示上下方向である配線方向に延在して配列された複数の第1電極103がその上面に形成されたガラス基板104と、これらの第1電極103に対向するように同様の配置にて形成された複数の第2電極105がその下面に形成されたフレキシブル基板106とが、絶縁性接合樹脂107をその間に介して接合された構造となっている。
【0008】
具体的には、図12の模式断面図に示すように、フレキシブル基板106とガラス基板104との間の対向領域Rの中央付近(樹脂配置(貼付)領域R1)に、絶縁性接合樹脂107中に、導電性粒子108が分散された異方性導電性シート(ACF)109を配置し、その後、ヒータ21を内蔵した加熱加圧ツール20にて、フレキシブル基板106の上面側から、加圧しながら加熱することにより両者の接合を行う。このような加熱加圧処理が行われると、図13の模式断面図に示すように、両者の対向領域の中央付近にのみ配置されていたACF109が、加熱されて溶融状態とされ、この状態にて加圧されることにより、対向領域R全体へと拡がって、対向領域Rから僅かにはみ出した状態とされる。このような樹脂107の流動により、対向領域Rの空間が樹脂107により埋められながら分散されていた導電性粒子108が、第1電極103と第2電極105との間に介在することにより、両者の電気的接続がなされる。このような状態で樹脂107がさらに加熱されることにより、樹脂107が熱硬化されて、ガラス基板104とフレキシブル基板106との接合が維持される。
【0009】
【特許文献1】特開平06−349339号公報
【特許文献2】特開平05−013119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図11〜図13の電極接合構造においては、図11の接合構造におけるA−A線断面図である図13と、B−B線断面図である図14に示すように、対向領域Rにおける端部近傍の領域(図12におけるACF109の樹脂配置(貼付)領域R1に隣接する領域、以降、「樹脂流動領域」とする。)R2において、樹脂107中にボイド110が形成されてしまう。このようにボイド110が樹脂107中に存在するような接合構造においては、マイグレーション不良が起きやすくなる。
【0011】
ここで、このようなボイド110が形成されてしまう原因について図面を用いて説明する。まず、ガラス基板104上にACF109が配置された状態の模式平面図を図15に示し、加熱加圧処理が行われた後、すなわち接合後におけるガラス基板104上のACF109の状態を示す模式平面図を図16に示す。なお、図15及び図16においては、説明の便宜上、フレキシブル基板106を省略し、かつACF109の内部を半透過させた状態の図としている。
【0012】
図15において、フレキシブル基板106とガラス基板104との対向領域の中央付近の樹脂配置領域R1に配置されたACF109に対して、加圧力が付与されると、溶融された状態の樹脂107が、図16に示すように、配線方向(図示上下方向)に沿って、押し拡げられるように流動を開始する。隣接電極間が狭ピッチ化された構造においては、隣接する第1電極105間の領域(空間)幅も小さくなり、このように流動する樹脂107の流速Vが増大する。流速Vが増大すれば、第1電極105間の領域への樹脂107の充填性が低下し、図16に示すように樹脂107の樹脂流動領域R2において、樹脂107が十分に充填されない部分、すなわちボイド110が形成されることになる。このようにボイドが形成されることにより、マイグレーション不良が起き易くなり、その結果、接合の信頼性が低下することになる。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、回路形成体の電極に他の回路形成体の電極を、絶縁性接合樹脂を用いて接合する電極接合において、マイグレーション不良の発生を抑えて、接合の信頼性を高めることができる電極接合構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0015】
本発明の第1態様によれば、配線方向に沿って延在する第1電極を複数本配列して有する第1回路形成体と、
上記第1回路形成体の複数の上記第1電極にそれぞれ対向して配置されて電気的に接続された複数の第2電極を有する第2回路形成体と、
上記第1回路形成体と上記第2回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂とを備え、
上記第1回路形成体において、隣接する上記第1電極間の領域の幅が、上記対向領域の少なくとも1つの端部近傍において上記対向領域の中央部よりも大きく形成され、上記第1電極間の領域に上記絶縁性接合樹脂が充填されていることを特徴とする電極接合構造体を提供する。
【0016】
本発明の第2態様によれば、上記第1回路形成体において、上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極の幅が、上記対向領域の中央部の幅よりも小さく形成されている、第1態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0017】
本発明の第3態様によれば、配線方向に沿って延在する第1電極を複数本配列して有する第1回路形成体と、
上記第1回路形成体の複数の上記第1電極にそれぞれ対向して配置されて電気的に接続された複数の第2電極を有する第2回路形成体と、
上記第1回路形成体と上記第2回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂とを備え、
上記対向領域の少なくとも1つの端部近傍において、上記第1回路形成体の隣接する上記第1電極間の領域が、上記配線方向に対して湾曲して延在するように形成され、上記第1電極間の領域に上記絶縁性接合樹脂が充填されていることを特徴とする電極接合構造体を提供する。
【0018】
本発明の第4態様によれば、上記第1回路形成体において、上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極が同一の湾曲形状を有し、上記対向領域の中央部に配置される上記それぞれの第1電極が上記配線方向沿いに直線状の形状を有する、第3態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0019】
本発明の第5態様によれば、上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極の湾曲形状には、湾曲方向の反転部が含まれる、第4態様に記載の電極接合構造体を提供する。
【0020】
本発明の第6態様によれば、上記第1回路形成体の上記それぞれの第1電極は、銀により形成されている、第1態様から第5態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0021】
本発明の第7態様によれば、上記第2回路形成体の上記それぞれの第2電極が、上記対向領域の端部近傍において、上記それぞれの第1電極と同じ形状及び配置にて形成されている、第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【0022】
本発明の第8態様によれば、上記絶縁性接合樹脂中に分散され、上記第1回路形成体の複数の上記第1電極と、それらに対向する上記第2回路形成体の複数の上記第2電極とをそれぞれ電気的に接合する導電性粒子をさらに備える、第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の電極接合構造体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1回路形成体において、隣接する第1電極間の領域の幅が、第1及び第2回路形成体の対向領域の少なくとも1つの端部近傍において、対向領域の中央部よりも大きく形成されていることにより、第1及び第2回路形成体の接合時における加熱加圧処理が行われる際に、絶縁性接合樹脂の流動が積極的に行われる上記対向領域の端部近傍において、樹脂の流動速度を中央部に比して遅くすることができる。従って、対向領域において、中央部よりもボイドが発生し易い領域である端部近傍にて、樹脂の充填性を向上させて、ボイドの発生を抑制することができる。よって、マイグレーション不良の発生を抑えて、高電圧での接続信頼性を確保することができるとともに、狭ピッチ化(例えば0.1mm以下)に対応することができる電極接合構造体を提供することができる。
【0024】
また、本発明の別の態様によれば、対向領域の少なくとも1つの端部近傍において、第1回路形成体の隣接する第1電極間の領域が、第1回路形成体の配線方向に対して湾曲して延在するように形成されていることにより、第1及び第2回路形成体の接合時における加熱加圧処理が行われる際に、絶縁性接合樹脂の流動が積極的に行われる上記対向領域の端部近傍において、樹脂の流動速度を中央部に比して遅くすることができる。従って、対向領域において、中央部よりもボイドが発生し易い領域である端部近傍にて、樹脂の充填性を向上させて、ボイドの発生を抑制することができる。よって、マイグレーション不良の発生を抑えて、高電圧での接続信頼性を確保することができるとともに、狭ピッチ化(例えば0.1mm以下)に対応することができる電極接合構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる電極接合構造体の模式平面図を図1に示す。本第1実施形態では、フラットパネルの端子部の接合構造であるガラス基板とフレキシブル基板の接合構造体10を、電極接合構造体の例として説明する。
【0027】
本明の第1実施形態にかかる電極接合構造体10は、複数の第1電極3を有する第1回路形成体の一例であるガラス基板4と、ガラス基板4の複数の第1電極3にそれぞれ対向して配置された複数の第2電極5を有する第2回路形成体の一例であるフレキシブル基板6と、ガラス基板4とフレキシブル基板6との対向領域Rに配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂7と、絶縁性接合樹脂7中に分散され、ガラス基板4のそれぞれの第1電極3と、それらに対向するフレキシブル基板6のそれぞれの第2電極5とを電気的に接続する導電性粒子8(図3参照)とを備えている。なお、この導電性粒子8と絶縁性接合樹脂7とを用いた接合構成は、例えば、絶縁性接合樹脂7中に導電性粒子8が分散された異方性導電性シート(ACF)9を用いて構成される。
【0028】
ガラス基板4の複数の第1電極3は、例えば厚さ3〜15μm程度の銀で形成された銀電極で構成されている。一般に銀はマイグレーション不良を起こしやすい材質として知られている。フレキシブル基板6の複数の第2電極5は、例えば厚さ20μm程度の銅で形成された銅電極で構成されている。ガラス基板4において、それぞれの第1電極3は、ガラス基板4の配線が形成されている方向、すなわち図1の図示上下方向である配線方向Sに沿って延在するように形成され、配線方向Sと直交する方向に、例えば所定の間隔ピッチにて配列されている。同様に、フレキシブル基板6において、それぞれの第2電極5は、配線方向Sに沿って延在するように形成され、配線方向Sと直交する方向に、同じ間隔ピッチにて配列されている。従って、ガラス基板4に対して、フレキシブル基板6を対向させて接合することで、第1電極3と第2電極4とが互いに接続されるように構成されている。
【0029】
ここで、ガラス基板4の模式平面図を図2に示し、図1の接合構造体10におけるC−C線断面図を図3に示し、D−D線断面図を図4に示す。
【0030】
図2に示すように、ガラス基板4の第1電極3は、その電極幅が細く設定されている部分を含むように形成されている。具体的には、ガラス基板4とフレキシブル基板6との対向領域Rにおいて、その中央部付近(後述する「樹脂配置領域R1」)の電極幅W1に対して、対向領域Rの端部近傍(後述する「樹脂流動領域R2」)の電極幅W2が小さくなるように、それぞれの第1電極3が形成されている。このように第1電極3の電極幅に、対向領域Rの中央部付近と端部近傍との間で大小の差が設けられていることにより、図2〜図4に示すように、隣接する第1電極3間の領域(空間)の幅が、対向領域Rの中央部付近の領域幅W3に比して、端部近傍の領域幅W4が拡大された構成となっている。ここで、第1電極3において電極幅W2にて形成されている部分を、電極幅狭小部3Aとする。電極接合構造体10においては、ガラス基板4のそれぞれの第1電極3の電極幅狭小部3Aが形成されている位置に、フレキシブル基板6の端部が位置されるように、絶縁性接合樹脂7を介して両者の接合が行われた構造を有している。
【0031】
また、絶縁性接合樹脂7は、ガラス基板4の複数の第1電極3とフレキシブル基板6の複数の第2電極5とを封止するように、対向領域Rの全体に拡がるとともに、対向領域Rより外側にはみ出すように配置されている。絶縁性接合樹脂7は、熱硬化性樹脂で形成され、例えば、加圧されるとともに加熱されたときに低温でかつ短時間で硬化するアクリル樹脂や、耐熱性、耐吸湿性、接着性、絶縁性等の面で機能的に優れたエポキシ樹脂等で形成されている。導電性粒子8は、例えば、ニッケル等の導電性の金属で構成された粒子である。導電性粒子8の平均粒子径は、3〜15μmの範囲内で形成されることが好ましい。導電性粒子8の平均粒子径が3μm未満である場合には電極間の導通(電気的接続)を確保することが困難であり、導電性粒子8の平均粒子径が15μmを越える場合には、電極間のピッチが0.1mm以下ではショート不良が発生しやすくなる。なお、本第1実施形態においては、絶縁性接合樹脂7中に導電性粒子8が分散配置されたACF9を用いて、ガラス基板4とフレキシブル基板6との接合が行われるような場合について説明するが、このような場合のみについて本発明が限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、導電性粒子が含まれていない絶縁性接合樹脂を用いて、両者の接合を行い、第1電極3と第2電極5とを直接的に接続するような構成を採用することもできる。
【0032】
次に、このような構造を有する本第1実施形態の電極接合構造体の製造方法、すなわち、ガラス基板4とフレキシブル基板6との接合方法について図5及び図6の模式断面図を用いて説明する。なお、図6の模式断面図は、図1の接合構造体10におけるE−E線の断面図である。
【0033】
図5の模式断面図に示すように、フレキシブル基板6とガラス基板4との間の対向領域Rの中央部付近の領域である樹脂配置領域R1に、絶縁性接合樹脂7中に導電性粒子8が分散された異方性導電性シート(ACF)9を配置する。このようなACF9の配置は、例えば、ガラス基板4の第1電極3が形成されている面における樹脂配置領域R1に、ACF9を貼り付けることにより行われる。その後、ACF9が貼り付けられたガラス基板4とフレキシブル基板6との位置合わせを行い、ガラス基板4上にACF9を介してフレキシブル基板6が配置される。このような配置により、ガラス基板4とフレキシブル基板6との間に対向領域Rが形成されることになるが、この状態では対向領域Rにおける樹脂配置領域R1にのみ、ACF9が配置された状態となっている。
【0034】
その後、ヒータ21を内蔵した加熱加圧ツール20の下降を開始し、フレキシブル基板6の上面に接した加熱加圧ツール20により、両者の接合にための加熱加圧処理を開始する。具体的には、両者の対向領域Rの中央部付近である樹脂配置領域R1にのみ配置されていたACF9が、加熱加圧ツール20からの伝熱により加熱されると、熱可塑性樹脂である絶縁性接合樹脂7が溶融状態へと移行される。このように溶融状態とされ、さらに加熱加圧ツール20により加圧力が付加されることにより、絶縁性接合樹脂7が、樹脂配置領域R1から隣接する樹脂流動領域R2へと流動し、やがて対向領域Rの全体へと拡がる。この流動の際に、樹脂7とともに導電性粒子8も流動され、対向領域Rの全体へと拡散される。一部の樹脂7は、対向領域Rから僅かにはみ出した状態とされる。その結果、対向領域Rにおける空間が樹脂7により埋められるとともに、第1電極3と第2電極5との間に流動して配置された導電性粒子8を介して、第1電極3と第2電極5とが電気的に接続された状態とされる。
【0035】
さらに、加熱加圧が行われることにより、溶融状態にあった樹脂7がその熱硬化性により熱硬化されて、ガラス基板4とフレキシブル基板6との接合が維持される。その結果、それぞれの第1電極3と第2電極5との電気的な接続がなされた状態にて、ガラス基板4とフレキシブル基板6とが接合されて、両者の電気的な接続が維持されるとともに、この電気的な接続部分を封止するように対向領域R全体が樹脂7により埋め尽くされた状態とされる。
【0036】
ここで、ガラス基板4とフレキシブル基板6との接合のための加熱加圧処理の際に、対向領域Rにおける樹脂7の流動について、図7及び図8に示す模式説明図を用いて説明する。なお、図7及び図8においては、説明の便宜上、フレキシブル基板6を省略し、かつACF9の内部を半透過させた状態の図としている。
【0037】
まず、図7において、フレキシブル基板6とガラス基板4との対向領域の中央付近の樹脂配置領域R1に配置されたACF9に対して加圧力が付与されると、溶融された状態の樹脂7が、それぞれの第1電極3の形成方向(配線方向S)に沿って流動し、隣接する樹脂流動領域R2へと流れ込む。ガラス基板4において、第1電極3の樹脂流動領域R2の電極幅W2が、樹脂配置領域R1の電極幅W1よりも小さくなるように、電極幅狭小部3Aが形成されているため、樹脂流動領域R2における第1電極3間の領域幅W4が、樹脂配置領域R1における領域幅W3よりも大きくなっている。また、対向領域Rにおいて、第1電極3と第2電極5とは互いに近接して、導電性粒子8を介して接続されるため、溶融状態の樹脂7は、第1電極3同士の間あるいは第2電極同士の間の領域を主として流動することになる。そのため、樹脂流動領域R2における溶融された樹脂7の流動の流速Vは、樹脂配置領域R1における溶融された樹脂7の流動の流速Vよりも低減(抑制)されることになる。このような流速Vの低減は、第1電極3間の領域幅W3/W4の比に応じたものとなる。
【0038】
このように、樹脂配置領域R1から流動される樹脂7の流速VがVに比して低減されていることにより、樹脂流動領域R2における樹脂7の充填性が向上されることになる。すなわち、流速VがVに比して低減されていることにより、図8に示すように、樹脂流動領域R2において流動される樹脂7を、第1電極3間の領域の隅々にまで行き渡らせることができ、流速がVで流動されるような場合に比して、ボイドの発生等を確実に防止することができ、樹脂7の充填性を高めることができる。
【0039】
また、このように樹脂7の充填性が高められ、ボイド等の発生が抑制できることにより、電極接合構造体10において、マイグレーション不良の発生を抑制することができ、接合の信頼性を向上することができる。特に、マイグレーション不良の問題が比較的懸念される銀電極が、第1電極3として用いられるような場合であっても、樹脂流動領域R2において電極幅狭小部3Aを形成することで、マイグレーション不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0040】
なお、このように第1電極3の配線幅を領域により変化させることで、樹脂7の流動における流速を制御して、その充填性を向上させるという考え方からは、第1電極3の配線幅の変化部分の形状は、なだらかな形状を有することが好ましい。なだらかな形状とすることで、樹脂7の充填性をより向上させることができる。したがって、高電圧での接続信頼性を確保するとともに、狭ピッチ化(例えば0.1mm以下)に対応することができる。
【0041】
また、本第1実施形態にかかる電極接合構造体10によれば、このようにマイグレーションの発生が抑えられるので、ガラス基板4の第1電極3を銀で形成することができ、フラットディスプレイパネルなどへの適用が可能となる。
【0042】
具体的な実施例における電極寸法の例としては、例えば、第1電極3間の間隔ピッチが100μm、樹脂配置領域R1の配線幅W1が45μm、領域R1の配線間の領域幅W3が55μmに設定されるとき、樹脂流動領域R2の配線幅W2が20〜25μm、領域R2の配線間の領域幅W4が80〜75μmに設定することができる。なお、配線方向における樹脂配置領域R1の長さは3mm、樹脂流動領域R2の長さが1mmに設定される。
【0043】
また、樹脂配置領域R1は、第1電極3と第2電極5との間でより確実な電気的接続が要求されるような領域であり、この領域R1においては、電気的な接続を重視する観点から電極幅W1が決定されることが好ましい。これに対して、樹脂流動領域R2は、電気的な接続よりもマイグレーションの発生を抑制するための樹脂の充填性が強く要求されるような領域であり、このような観点から、第1電極3の配線としての配線方向Sにおける電気的導通性を確保できる限度において、その配線幅W2がW1に対して縮小されて決定されることが好ましい。
【0044】
また、このように樹脂流動領域R2における流速が抑制されていることにより、対向領域Rから外側にはみ出す樹脂7の量を抑制することができ、配線の狭小化設計において効果的である。
【0045】
また、本第1実施形態の電極接合構造体10においては、図2の配線方向Sの上方側の樹脂流動領域R2における樹脂7の流速が抑制されるように電極幅狭小部3Aが形成されていればよい。特にこの部分は、フレキシブル基板6の端部近傍であり、銀電極である第1電極3が延在する側の対向領域Rの端部近傍であるため、マイグレーションの発生を効果的に抑制することが求められる領域でもあるからである。ただし、このような場合についてのみ限られず、図7及び図8に示すように、配線方向Sにおける図示下方側の領域、すなわちガラス基板4の端部側の領域においても、第1電極3の配線幅を狭小化させることで、マイグレーション抑制やはみ出し部分の縮小化の効果を得ることができる。
【0046】
さらに、本第1実施形態では、ガラス基板4の第1電極3に電極幅狭小部3Aを形成するような場合について説明したが、電極幅狭小部は、第1電極3及び第2電極5のいずれか一方にのみ形成されていれば、本第1実施形態の効果を得ることができ、両方に同様な形状にて電極幅狭小部が形成されていることがより好ましい。ただし、第1電極3が銀電極として形成されているような場合には、少なくとも第1電極3に電極幅狭小部3Aを形成することがマイグレーション抑制にはより効果的である。
【0047】
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2の実施形態にかかる電極接合構造体について説明する。ここで、本第2実施形態の電極接合構造体におけるガラス基板34の模式平面図を図9及び図10に示し、ガラス基板34における電極構造及び樹脂7の流動について説明する。なお、図9及び図10は、上記第1実施形態の図7及び図8に対応する図である。
【0048】
図9に示すように、本第2実施形態におけるガラス基板34には、樹脂流動領域R2に相当する領域にて、第1電極33に電極湾曲部33Aが形成されている点において、上記第1実施形態とは異なる構成を有している。図9に示すように、電極湾曲部33Aはその配線幅はW1と略同じにて形成されながら、配線方向Sに対して湾曲するように、具体的にはS字形状を有するように形成されている。また、樹脂流動領域R2において、隣接する第1電極33間の領域もS字形状を有するように湾曲して形成されている。
【0049】
このように電極湾曲部3Aが形成されていることにより、図9及び図10に示すように、樹脂配置領域R1において流速Vにて流動した樹脂7が、樹脂流動領域R2において例えば流速Vにてその流動方向が配線方向Sに対して傾斜されかつ可変されながら流動されることになる。そのため、樹脂7はS字を描くように流動され、配線方向Sにおける実質上の流速は、流速Vに対して流速Vに減少されることとなる。このように実質上減少された流速Vにて、図10に示すように、樹脂流動領域R2に樹脂7が流動されて、樹脂7が充填される。
【0050】
本第2実施形態のように、樹脂流動領域R2において、第1電極33を湾曲させて形成することで、樹脂7の流動における実質上の流速を抑制し、樹脂7の充填性を向上させることができる。従って、マイグレーションの発生を抑制することができ、狭ピッチな接合構造体において、接合の信頼性を高めることができる。
【0051】
また、このように第1電極33に電極湾曲部33Aを形成することで、第1電極33の電極幅を縮小しなくても、樹脂7の充填性を向上させることができるという利点を得ることができる。ただし、電極幅狭小部が設けられても電気的な導通性を十分に確保できるような場合には、例えば、上記第1実施形態の電極幅狭小部3Aと、本第2実施形態の電極湾曲部33Aとを組み合わせた構造として、電極湾曲部の幅が狭小化されているような構造を採用することもできる。このような構造においては、樹脂の流動における流速を大幅に低減することができ、その充填性をより高めることができる。
【0052】
また、このような第1電極33の湾曲構造は、その湾曲方向の反転部33Bが含まれるように形成されることが好ましい。具体的には、図9に示すように、湾曲方向の反転部33Bが含まれることで、樹脂7の流動方向をも反転させることができ、樹脂流動領域R2における樹脂7の充填性をより均一な状態とすることができる。
【0053】
また、上記それぞれの実施形態では、ガラス基板4を第1の回路形成体の一例として挙げたが、第1の回路形成体としては、ガラス基板の他、ガラエポ配線基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリカーボネート基板、ポリエチレンナフタレート基板、ポリイミド基板、セラミック基板、プリント配線基板、フレキシブル基板等が用いられてもよい。
また、フレキシブル基板6を第2の回路形成体の一例して挙げたが、第2の回路形成体としては、フレキシブル基板の他に、ガラス基板、ガラエポ配線基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリカーボネート基板、ポリエチレンナフタレート基板、ポリイミド基板、セラミック基板、プリント配線基板、ICチップ等が用いられてもよい。第1及び第2回路形成体をこのような構成にすることにより、高い生産性を保ちつつ高品質な電極接合構造体を安価に提供することができる。
【0054】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる電極接合構造体の模式平面図
【図2】第1実施形態のガラス基板の模式平面図
【図3】図1の電極接合構造体のC−C線断面図
【図4】図1の電極接合構造体のD−D線断面図
【図5】第1実施形態の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合前)
【図6】第1実施形態の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合後)
【図7】第1実施形態のガラス基板において、樹脂が配置された状態の模式図
【図8】第1実施形態のガラス基板において、樹脂が流動された状態の模式図
【図9】本発明の第2実施形態のガラス基板において、樹脂が配置された状態の模式図
【図10】第2実施形態のガラス基板において、樹脂が流動された状態の模式図
【図11】従来の電極接合構造体の模式平面図
【図12】従来の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合前)
【図13】従来の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合後)
【図14】図11の電極接合構造体のB−B線断面図
【図15】従来の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合前)
【図16】従来の電極接合構造体に接合方法の模式説明図(接合後)
【符号の説明】
【0056】
3 第1電極
3A 電極幅狭小部
4 ガラス基板
5 第2電極
6 フレキシブル井板
7 絶縁性接合樹脂
8 導電性粒子
9 ACF
10 電極接合構造体
33 第1電極
33A 湾曲電極部
33B 反転部
34 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線方向に沿って延在する第1電極を複数本配列して有する第1回路形成体と、
上記第1回路形成体の複数の上記第1電極にそれぞれ対向して配置されて電気的に接続された複数の第2電極を有する第2回路形成体と、
上記第1回路形成体と上記第2回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂とを備え、
上記第1回路形成体において、隣接する上記第1電極間の領域の幅が、上記対向領域の少なくとも1つの端部近傍において上記対向領域の中央部よりも大きく形成され、上記第1電極間の領域に上記絶縁性接合樹脂が充填されていることを特徴とする電極接合構造体。
【請求項2】
上記第1回路形成体において、上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極の幅が、上記対向領域の中央部の幅よりも小さく形成されている、請求項1に記載の電極接合構造体。
【請求項3】
配線方向に沿って延在する第1電極を複数本配列して有する第1回路形成体と、
上記第1回路形成体の複数の上記第1電極にそれぞれ対向して配置されて電気的に接続された複数の第2電極を有する第2回路形成体と、
上記第1回路形成体と上記第2回路形成体との対向領域に配置されて両者を接合する絶縁性接合樹脂とを備え、
上記対向領域の少なくとも1つの端部近傍において、上記第1回路形成体の隣接する上記第1電極間の領域が、上記配線方向に対して湾曲して延在するように形成され、上記第1電極間の領域に上記絶縁性接合樹脂が充填されていることを特徴とする電極接合構造体。
【請求項4】
上記第1回路形成体において、上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極が同一の湾曲形状を有し、上記対向領域の中央部に配置される上記それぞれの第1電極が上記配線方向沿いに直線状の形状を有する、請求項3に記載の電極接合構造体。
【請求項5】
上記対向領域の上記端部近傍に配置される上記それぞれの第1電極の湾曲形状には、湾曲方向の反転部が含まれる、請求項4に記載の電極接合構造体。
【請求項6】
上記第1回路形成体の上記それぞれの第1電極は、銀により形成されている、請求項1から5のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項7】
上記第2回路形成体の上記それぞれの第2電極が、上記対向領域の端部近傍において、上記それぞれの第1電極と同じ形状及び配置にて形成されている、請求項1から6のいずれか1つに記載の電極接合構造体。
【請求項8】
上記絶縁性接合樹脂中に分散され、上記第1回路形成体の複数の上記第1電極と、それらに対向する上記第2回路形成体の複数の上記第2電極とをそれぞれ電気的に接合する導電性粒子をさらに備える、請求項1から7のいずれか1つに記載の電極接合構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−4614(P2009−4614A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165001(P2007−165001)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】