説明

電気光学装置の製造方法

【課題】例えば、IPS駆動方式等の横電界駆動方式を採用する液晶装置等の電気光学装置について、液晶層を挟持する一対の基板の一方の表面を簡便な製造プロセスで平坦化する。
【解決手段】第2電極(9a)のうち第1穴部(161)に延びる部分であるコンタクト部(165)によって囲まれた空間を規定する第3穴部(163)と、第2穴部(162)との夫々に絶縁材料を埋め込むことによって、第2穴部(162)及び第3穴部(163)を並行して塞ぐ。これら穴部(162)及び(163)に、例えば、同時に、或いは相前後して、アクリル樹脂等の絶縁材料を充填し、露光処理等のパターニング処理を施すことによって、第2穴部(162)及び第3穴部(163)を塞ぎ、絶縁膜(49)及び第2電極(9a)の夫々からなる表面を含むTFTアレイ基板10上の面を平坦な面に近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、FFS(Fringe Field Switching)駆動方式、或いはIPS(In Plane Switching)駆動方式等の横電界駆動方式を採用した液晶装置等の電気光学装置を製造するための電気光学装置の製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、透明な画素電極を微細加工することによって、画素部の開口率、即ち、画素領域のうち実質的に光が透過可能な領域の割合を高める技術が開示されている(例えば、特許文献1乃至5参照。)。
【0003】
また、FSS駆動方式或いはIPS駆動方式等の横電界駆動方式を採用する液晶装置等の電気光学装置では、液晶層を挟持する一対の基板間に発生する縦電界によって液晶を駆動する縦電界駆動方式を採用する電気光学装置と異なり、画像信号に応じた電位に設定される画素電極である第1電極と、当該画素電極の電位と相互に異なる電位に設定される第2電極とが一の基板に形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−304793号公報
【特許文献2】特開2002−169166号公報
【特許文献3】特開2004−295016号公報
【特許文献4】特開2007−57744号公報
【特許文献5】特開平10−82909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1電極及び第2電極が一の基板に形成されているため、一の基板の表面を平坦な面に近づけることが技術的に困難である。したがって、一の基板の表面における凹凸が液晶の駆動を妨げてしまい、画像の表示品位を高めることが困難になる問題点がある。特に、一の基板の基板面に沿った横電界によって液晶を駆動する横電界駆動方式を採用する液晶装置では、一の基板の表面に存在する凹凸が画像の表示品位に与える影響は、縦電界駆動方式を採用する液晶装置に比べて大きい。
【0006】
また、開口率を向上させることを目的として第1電極等の画素電極を微細加工し、且つ一の基板の表面を平坦な面に加工するためには、電気光学装置の製造プロセスが煩雑化してしまう製造プロセス上の問題点もある。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、IPS駆動方式等の横電界駆動方式を採用する液晶装置等の電気光学装置について、液晶層を挟持する一対の基板の一方の表面を簡便な製造プロセスで平坦化することができる電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上の表示領域に形成された透明な第1電極と、前記基板の基板面に沿った第1方向に沿うように各々延びる第1部分及び第2部分を有しており、前記基板上において前記第1電極と相互に異なる層に形成された透明な第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間に形成された絶縁膜とを備えており、前記第1電極及び前記第2電極間に発生する電界によって電気光学物質を駆動する電気光学装置を製造するための電気光学装置の製造方法であって、前記表示領域となるべき領域に、前記第1電極を形成する第1工程と、前記第1電極上に前記絶縁膜を形成する第2工程と、前記表示領域となるべき領域のうち前記第1電極が形成されていない非形成領域において、前記絶縁膜を貫通する第1穴部を形成する第3工程と、前記絶縁膜の上面と、前第1穴部の内壁及び底面とに渡って透明導電膜を形成する第4工程と、前記透明導電膜を部分的に除去することによって、前記第2電極を形成すると共に、前記第1部分及び前記第2部分間の領域において前記絶縁膜から前記第1電極が露出する第2穴部を形成する第5工程と、前記第2電極のうち前記第1穴部に延びる部分によって囲まれた空間を規定する第3穴部と、前記第2穴部との夫々に絶縁材料を埋め込むことによって、前記第2穴部及び第3穴部を並行して塞ぐ第6工程とを備える。
【0009】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によって形成可能な電気光学装置は、基板と、前記基板上の表示領域に形成された透明な第1電極とを備える。第1電極は、電気光学装置の駆動時において、例えば、画像信号に応じた電位に設定される第2電極と相互に異なる電位に設定される電極である。当該電気光学装置は、前記基板上において前記第1電極と相互に異なる層に形成された透明な第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間に形成された絶縁膜とを備えており、前記第1電極及び前記第2電極間に発生する電界、言い換えれば、第1電極及び第2電極間に発生する横電界によって、電気光学物質を駆動する。第2電極は、前記基板の基板面に沿った第1方向に沿うように各々延びる第1部分及び第2部分を有する櫛歯状の平面形状を有しており、例えば、画素領域毎に設けられた画素電極である。
【0010】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、第1工程において、前記表示領域となるべき領域に、例えば、アクリル樹脂等の絶縁材料を下地層として、ITO等の透明導電材料で構成された第1電極を形成する。
【0011】
第2工程では、例えば、汎用の成膜法を用いて、前記第1電極上に窒化シリコン膜等の絶縁材料からなる絶縁膜を形成する。
【0012】
第3工程では、前記表示領域となるべき領域のうち前記第1電極が形成されていない非形成領域において、前記絶縁膜を貫通する第1穴部を形成する。ここで、非形成領域とは、当該電気光学装置の駆動時において、光が透過しない非開口領域となる領域をいう。第1穴部は、例えば、絶縁膜上に形成される第2電極と、絶縁膜の下層側とを相互に電気的に接続するための接続部が形成される部分である。
【0013】
第4工程では、前記絶縁膜の上面と、前第1穴部の内壁及び底面とに渡って、例えば、ITO等の透明導電材料を成膜し、透明導電膜を形成する。
【0014】
第5工程では、例えば、ドライエッチング法を用いて、前記透明導電膜を部分的に除去することによって、前記第2電極を形成すると共に、前記第1部分及び前記第2部分間の領域において前記絶縁膜から前記第1電極が露出する第2穴部を形成する。ここで、第2穴部は、第2電極を所定の平面形状にパターニングする際に形成されてしまう穴部であり、絶縁膜及び第2電極の夫々の表面に形成される凹凸を構成する。
【0015】
第6工程では、前記第2電極のうち前記第1穴部に延びる部分によって囲まれた空間を規定する第3穴部と、前記第2穴部との夫々に絶縁材料を埋め込むことによって、前記第2穴部及び第3穴部を並行して塞ぐ。これら穴部は、絶縁膜及び第2電極の夫々の表面に形成される凹凸を構成する部分である。これら穴部に、例えば、同時に、或いは相前後して、アクリル樹脂等の絶縁材料を充填し、露光処理等のパターニング処理を施すことによって、第2穴部及び第3穴部を塞ぎ、絶縁膜及び第2電極の夫々からなる表面を含む基板上の面を平坦化する。
【0016】
したがって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、例えば、液晶層に接する配向膜の表面を平坦な面に近づけることが可能であるため、横電界駆動方式によって高品位の画像を表示できる。加えて、第2穴部及び第3穴部を並行して塞ぐことが可能であるため、これら穴部を塞ぐ工程を別々に実行する場合に比べて、電気光学装置の製造プロセスを煩雑化させない利点も得られる。
【0017】
本発明に係る電気光学装置の製造方法の一の態様では、記第2電極のうち前記第1穴部に延びる部分は、前記第2電極と、前記第1電極の下層側に延びる導電部とを相互に電気的に接続するコンタクト部を構成していてもよい。
【0018】
この態様によれば、コンタクト部に起因して生じる凹凸を低減でき、例えば、配向膜が形成される表面を平坦な面に形成できる。
【0019】
本発明に係る電気光学装置の製造方法の他の態様では、記第6工程と並行して、前記第1方向に沿って延び、且つ前記第2電極に画像信号を供給する画像信号線と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びており、前記画像信号及び前記第2電極間を電気的に中継するスイッチング素子にスイッチング信号を供給する走査線とが相互に交差する交差領域に、前記絶縁材料を用いてスペーサを形成する第7工程とを備えていてもよい。
【0020】
この態様によれば、第2穴部及び第3穴部を塞ぐ工程と並行して、基板と、当該基板に対向するように当該基板上に配置される対向基板との間の距離を一定に保つスペーサを形成できるため、工程数を増大させることなく、高品位の画像を表示可能な電気光学装置を製造可能である。
【0021】
本発明に係る電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第6工程において、前記第3穴部に前記絶縁材料を埋め込むことによって形成された埋め込み部は、前記第3穴部に前記絶縁材料が埋め込まれた埋め込み部本体と、前記第3穴部上に突出した突出部とを有していてもよい。
【0022】
この態様によれば、突出部をスペーサとして用いることが可能であるため、工程数を増大させることなく、高品位の画像を表示可能な電気光学装置を製造可能である。
【0023】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置の製造方法の実施形態を説明する。
【0025】
<1:電気光学装置>
先ず、図1乃至図7を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって製造可能な電気光学装置の一例である、IPS駆動方式を採用した液晶装置1の構成を説明する。
【0026】
<1−1:電気光学装置の全体構成>
図1乃至図3を参照しながら、液晶装置1の全体構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。図3は、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0027】
図1及び図2において、液晶装置1では、本発明の「基板」の一例であるTFTアレイ基板10と、対向基板20とが、相互に向かい合うように配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に、本発明の「電気光学物質」の一例である液晶からなる液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素部が設けられる表示領域たる画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0028】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されていてもよい。
【0029】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。尚、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。言い換えれば、本実施形態においては特に、TFTアレイ基板10の中心から見て、この額縁遮光膜53より以遠が周辺領域として規定されている。
【0030】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0031】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0032】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の第2電極9a上に、配向膜16(図5等参照。)が形成されている。他方、対向基板20上には、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層(図中下側)部分に配向膜22(図5等参照。)が形成されている。尚、第2電極9aは、各画素部に形成されており、画素電極として機能する。
【0033】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0034】
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の画像表示領域10aにおける回路構成を説明する。
【0035】
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部の夫々は、第2電極9a及びTFT30を有している。TFT30は、第2電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に第2電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0036】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。第2電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。第2電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、TFTアレイ基板10に形成された第1電極21(図5等参照。)との間で一定期間保持される。
【0037】
液晶層50に含まれる液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。蓄積容量70は、画像信号がリークすることを防ぐために、第2電極9aと第1電極21との間に形成される液晶容量と電気的に並列に接続されている。
【0038】
<1−2:電気光学装置の具体的な構成>
次に、図4乃至図7を参照しながら、液晶装置1の具体的な構成を説明する。図4は、データ線6a、走査線3a、及び第2電極9a等が形成されたTFTアレイ基板10の相隣接する複数の画素部72の平面図である。図5乃至図7の夫々は、図4のV−V´線、VI−VI´線、及びVII−VII´線の夫々に対応する部分断面図である。尚、図5乃至図7では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0039】
図4において、液晶装置1は、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成された透明な第2電極9aと、本発明の「第1方向」の一例であるY方向に延びる、本発明の「画像信号線」に相当するデータ線6aと、本発明の「第2方向」の一例であるX方向に延びる走査線3aと、デュアルゲートトランジスタであるTFT30と、スペーサ63と、コンタクト部165とを備えている。
【0040】
第2電極9aは、TFTアレイ基板10上において第2電極21と相互に異なる層に形成され、且つ画素領域毎に設けられた画素電極である。第2電極9aは、液晶装置1の駆動時において、データ線6aを介して供給される画像信号に応じた電位に設定される。第2電極9aは、TTFアレイ基板10の基板面に沿ったY方向に沿うように各々延びる第1部分9a1及び第2部分9a2を有する櫛歯状の平面形状を有している。
【0041】
TFT30は、データ線6a及び第2電9a間を電気的に中継するスイッチング素子であり、不図示のコンタクト部を介して、活性層1aの一部であるソース領域がデータ線6aに電気的に接続されており、ドレイン領域がコンタクト部165を介して第2電極9aに電気的に接続されている。このようなTFT30は、走査線3aを介してゲートに供給される走査信号に応じてオンオフされ、データ線6aから第2電極9aに画像信号を供給する。走査線3aの一部は、TFT30のゲート電極を構成しており、液晶装置1の動作時において、TFT30のオンオフを切り替えるための走査信号をTFT30に供給する。
【0042】
スペーサ63は、画像表示領域10aにおいて、データ線6a及び走査線3aが相互の交差する交差領域に、アクリル樹脂等の絶縁材料を用いて形成されている。
【0043】
図5乃至図7において、液晶装置1は、TFTアレイ基板10上に形成された絶縁膜41、42、43,44、45、46、47、48を備えている。これら絶縁膜のうち絶縁膜49が、本発明の「絶縁膜」の一例である。
【0044】
第1電極21及び第2電極9aは、TFTアレイ基板10上において相互に異なる層に形成されている。より具体的には、第1電極21は、絶縁膜48上に形成されており、第2電極9aは、絶縁膜49上に形成されている。液晶装置1の駆動時には、第1電極21及び第2電極9a間に発生する横電界Eによって、液晶層50が駆動される。
【0045】
図5に示すように、第1部分9a1及び第2部分9a2を相互に隔てる領域には、第2穴部162を塞ぐように埋め込み部61が形成されている。埋め込み部61は、後述する埋め込み部62と並行して形成されている。このような埋め込み部61は、第2穴部にアクリル樹脂等の感光性を有する絶縁材料を充填した後、露光処理を施すことによって余分な部分が除去され、且つ第2穴部を塞ぐようにパターニングされる。
【0046】
図6に示すように、埋め込み部62は、第2電極9aのうち第1穴部163の内壁及び底面に延びる部分によって規定された第3穴部163を塞ぐように、第3穴部163にアクリル樹脂等の感光性を有する絶縁材料を充填することによって形成されている。
【0047】
埋め込み部61及び62によれば、液晶層50に接する配向膜16の表面を平坦な面に近づけることが可能であり、液晶装置1による高品位の画像が可能になる。
【0048】
コンタクト部165は、第2電極9aのうち第1穴部161に延びる部分によって構成されており、その内側の第3穴部163の空間を規定している。コンタクト部165は、第2電極9aと、TFT30の活性層1aにおけるドレイン領域とを相互に電気的に接続している。
【0049】
図7に示すように、スペーサ63は、TFTアレイ基板10及び対向基板20間の距離を一定に維持する。スペーサ63によれば、液晶装置1の開口率を低下させることなく、基板間の距離を一定に維持できるため、液晶装置1による高品位の画像表示が可能になる。
【0050】
<2:電気光学装置の製造方法>
次に、図8乃至図11を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を説明する。図8乃至図10の夫々は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程断面図である。図11は、コンタクト部165上に形成される埋め込み部の変形例を示した部分断面図である。尚、図8乃至図10では、説明の便宜上、図5乃至図7の夫々に示した断面に対応する工程断面図を並べて示している。
【0051】
図8(a)において、TFTアレイ基板10上において、画像表示領域10aとなるべき領域に、膜厚50nmのITO膜からなる第1電極21を形成する。尚、後述する工程で、コンタクト部165が形成される領域では、汎用のパターニング法を用いて第1電極21が部分的に除去される。
【0052】
次に、図8(b)において、第1電極21上に窒化シリコン等の絶縁材料からなる膜厚100nmの絶縁膜49を汎用の成膜法を用いて形成する。
【0053】
次に、図9(c)において、TFTアレイ基板10上において、画像表示領域10aとなるべき領域のうち第1電極21が形成されていない非形成領域において、絶縁膜49を貫通する第1穴部161を、例えば、ドライエッチング法を用いて形成する。ここで、非形成領域とは、当該液晶装置1の駆動時において、光が透過しない非開口領域となる領域をいう。第1穴部161は、絶縁膜49上に形成される第2電極9aと、絶縁膜49の下層側に形成されたTFT30の活性層1aを相互に電気的に接続するためのコンタクト部165が形成される部分である。
【0054】
次に、図9(d)において、絶縁膜49の上面と、第1穴部161の内壁及び底面とに渡って、ITO等の透明導電材料からなる膜厚50nmの透明導電膜60を形成する。
【0055】
次に、図10(e)において、ドライエッチング法を用いて、透明導電膜60を部分的に除去することによって、第2電極9aを形成すると共に、第1部分9a1及び第2部分9a2間の領域において絶縁膜49から第1電極21が露出する第2穴部162を形成する。第2穴部162は、第2電極9aを所定の平面形状にパターニングする際に形成されてしまう穴部であり、絶縁膜49及び第2電極9aの夫々の表面からなる面に形成される凹凸を構成する。
【0056】
次に、図10(f)において、第2電極9aのうち第1穴部161に延びる部分であるコンタクト部165によって囲まれた空間を規定する第3穴部163と、第2穴部162との夫々に絶縁材料を埋め込むことによって、第2穴部162及び第3穴部163を並行して塞ぐ。これら穴部は、絶縁膜49及び第2電極9aの夫々の表面からなる面に形成される凹凸を構成する部分である。これら穴部162及び163に、例えば、同時に、或いは相前後して、アクリル樹脂等の絶縁材料を充填し、露光処理等のパターニング処理を施すことによって、第2穴部612及び第3穴部163を塞ぎ、絶縁膜49及び第2電極9aの夫々からなる表面を含むTFTアレイ基板10上の面を平坦化する。
【0057】
より具体的には、第2穴部162及び第3穴部163の夫々に感光性を有するアクリル樹脂を充填した後、その上から、第2穴部162に充填されたアクリル樹脂に向かってマスクM1を介してハーフトーン露光を施し、第3穴部163に充填されたアクリル樹脂にマスクM2を介して通常の露光処理を施す。このように第2穴部162及び第3穴部163の夫々に充填されたアクリル樹脂に相互の異なる露光処理を施すことによって、各穴部からはみ出した余分な樹脂を除去することができると共に、厚みが相互に異なる埋め込み部61及び62を並行して形成可能である。
【0058】
その後、液晶装置1の構成要素のうち第2電極9a上に設けられる各構成要素を順次形成することによって、液晶装置1が製造される。
【0059】
したがって、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、液晶層50に接する配向膜16が形成される面を平坦な面に近づけることが可能であるため、横電界駆動方式によって高品位の画像を表示できる。加えて、第2穴部162及び第3穴部163を並行して塞ぐことが可能であるため、これら穴部を塞ぐ工程を別々に実行する場合に比べて、液晶装置1の製造プロセスを煩雑化させない利点も得られる。
【0060】
加えて、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、配向膜16を平坦な面に形成できるため、配向膜16をラビング処理する際に発生するラビングむらも低減でき、表示画像の画質の向上及び液晶装置1を製造する際の歩留まりも向上させることが可能である。さらに加えて、TFTアレイ基板10上の表面の平坦化を、製造プロセスを煩雑化させることなく実現可能であるため、液晶装置1の表示性能を高めつつ、製造コストを抑制できる効果も得られる。
【0061】
図10(f)に示すように、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、埋め込み部61及び62を形成する工程と並行して、絶縁膜49上にアクリル樹脂を塗布することによって、スペーサ63を形成してもよい。したがって、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、第2穴部162及び第3穴部163を塞ぐ工程と並行して、TFTアレイ基板10と、当該基板に対向するように当該基板上に配置される対向基板20との間の距離を一定に保つスペーサ63を形成できるため、工程数を増大させることなく、高品位の画像を表示可能な液晶装置1を製造可能である。
【0062】
また、図11に示すように、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、第3穴部163に絶縁材料を埋め込むことによって形成された埋め込み部64は、第3穴部163に絶縁材料が埋め込まれた埋め込み部本体64aと、第3穴部163上に突出した突出部64bとを有していてもよい。
【0063】
このような埋め込み部64によれば、突出部64bをスペーサとして用いることが可能であるため、工程数を増大させることなく、高品位の画像を表示可能な液晶装置1を提供可能である。
【0064】
尚、このような製造方法によって製造された液晶装置1を、ヘッドアップディスプレイ装置等の電子機器に応用することによって、当該電子機器による画像の表示性能も向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって製造される液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって製造される液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【図4】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって製造される液晶装置において相隣接する複数の画素部72の平面図である。
【図5】図4のV−V´線に対応する部分断面図である。
【図6】図4のVI−VI´線に対応する部分断面図である。
【図7】図4のVII−VII´線に対応する部分断面図である。
【図8】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程断面図(その1)である。
【図9】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程断面図(その2)である。
【図10】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程断面図(その3)である。
【図11】コンタクト部上に形成される埋め込み部の変形例を示した部分断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・液晶装置、9a・・・第2電極、10・・・TFTアレイ基板、20・・・対向基板、21・・・第1電極、161・・・第1穴部、162・・・第2穴部、163・・・第3穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上の表示領域に形成された透明な第1電極と、前記基板の基板面に沿った第1方向に沿うように各々延びる第1部分及び第2部分を有しており、前記基板上において前記第1電極と相互に異なる層に形成された透明な第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間に形成された絶縁膜とを備えており、前記第1電極及び前記第2電極間に発生する電界によって電気光学物質を駆動する電気光学装置を製造するための電気光学装置の製造方法であって、
前記表示領域となるべき領域に、前記第1電極を形成する第1工程と、
前記第1電極上に前記絶縁膜を形成する第2工程と、
前記表示領域となるべき領域のうち前記第1電極が形成されていない非形成領域において、前記絶縁膜を貫通する第1穴部を形成する第3工程と、
前記絶縁膜の上面と、前第1穴部の内壁及び底面とに渡って透明導電膜を形成する第4工程と、
前記透明導電膜を部分的に除去することによって、前記第2電極を形成すると共に、前記第1部分及び前記第2部分間の領域において前記絶縁膜から前記第1電極が露出する第2穴部を形成する第5工程と、
前記第2電極のうち前記第1穴部に延びる部分によって囲まれた空間を規定する第3穴部と、前記第2穴部との夫々に絶縁材料を埋め込むことによって、前記第2穴部及び第3穴部を並行して塞ぐ第6工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2電極のうち前記第1穴部に延びる部分は、前記第2電極と、前記第1電極の下層側に延びる導電部とを相互に電気的に接続するコンタクト部を構成していること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記第6工程と並行して、前記第1方向に沿って延び、且つ前記第2電極に画像信号を供給する画像信号線と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びており、前記画像信号及び前記第2電極間を電気的に中継するスイッチング素子にスイッチング信号を供給する走査線とが相互に交差する交差領域に、前記絶縁材料を用いてスペーサを形成する第7工程と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記第6工程において、前記第3穴部に前記絶縁材料を埋め込むことによって形成された埋め込み部は、前記第3穴部に前記絶縁材料が埋め込まれた埋め込み部本体と、前記第3穴部上に突出した突出部とを有すること
を特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−134000(P2010−134000A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307107(P2008−307107)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】