説明

電気炊飯器および製パン用内鍋

【課題】炊飯時の水漏れを防止できて大型化を招くことなく製パンも可能にできる電気炊飯器および製パン用内鍋を提供する。
【解決手段】この電気炊飯器によれば、炊飯時には、炊飯用内鍋10が炊飯器本体1に装着され、撹拌モータ17が駆動されることで、ロータ16の駆動側磁石18が回転磁界を発生させ、撹拌翼40の被駆動側磁石42との磁気カップリングにより、撹拌翼40が非接触で回転駆動される。よって、炊飯時の水漏れを防ぎつつ被加熱物を撹拌できる。一方、製パン時には、製パン用内鍋60を炊飯器本体1に装着することで、製パン用内鍋60のパンこね羽根63に連結している嵌合回転部材62の嵌合部66がロータ16の嵌合部44に相対回転不可に嵌合されて、撹拌モータ17の回転トルクがロータ16から嵌合回転部材62に機械的に直接伝達され、パンこね羽根63を大きなトルクで回転駆動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯だけでなく製パンも可能な電気炊飯器およびその電気炊飯器で使用される製パン用内鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯機能と製パン機能の両方を備えた製パン機能付き炊飯器が提案されている(特許文献1(特開2008−18122号公報),特許文献2(特開2004−261247号公報)参照)。この製パン機能付き炊飯器は、製パン時にモータによって練り羽根を回転させて容器内でパン材料を練り混ぜてパン生地を生成している。
【0003】
しかし、上記製パン機能付き炊飯器では、モータの回転トルクを伝達する回転軸が容器の底部を貫通している。このため、回転軸と容器との間に水漏れを防ぐためのシール部を設けても、炊飯を繰り返しているうちにシール部の経時劣化が生じて炊飯時に貫通箇所から水漏れが発生し易くなるという問題がある。
【0004】
一方、水漏れを回避するためには、モータの回転トルクをマグネットカップリングにより練り羽根に伝達することも考えられる。
【0005】
しかし、この場合は、パン材料を練り混ぜるのに必要な回転トルクを得るためにはマグネットが大型化し、炊飯時の邪魔になるとともに製品も大型化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18122号公報
【特許文献2】特開2004−261247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、炊飯時の水漏れを防止できて大型化を招くことなく製パンも可能にできる電気炊飯器および製パン用内鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の電気炊飯器は、被加熱物を収容する炊飯用内鍋と、
上記炊飯用内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記炊飯用内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記炊飯用内鍋内に回転自在に配置され、被駆動側磁石を有する撹拌体と、
上記炊飯用内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記炊飯用内鍋を加熱する加熱部と
を備え、
上記回転駆動装置は、
駆動モータと、
上記駆動モータの回転軸に取り付けられ、上記被駆動側磁石と磁気カップリングする駆動側磁石を有すると共に上記駆動モータが駆動されることで上記撹拌体を回転駆動するための回転磁界を発生させる回転磁界発生部と、
上記駆動モータの回転軸に取り付けられており、上記炊飯用内鍋に替えて製パン用内鍋が上記炊飯器本体に収納されたときに、上記製パン用内鍋内に回転自在に配置されたパンこね部材に取り付けられた被駆動部材に機械的に連結されて、上記駆動モータの回転トルクを上記被駆動部材に機械的に直接伝達する機械的連結部と
を有することを特徴としている。
【0009】
この発明の電気炊飯器によれば、炊飯時には、上記炊飯用内鍋を炊飯器本体に収納し、上記加熱部で炊飯用内鍋を加熱し、上記駆動モータが駆動されることで、上記回転駆動装置が回転磁界を発生させ、上記炊飯用内鍋内の撹拌体の被駆動側磁石との磁気カップリングにより、撹拌体が非接触で回転駆動される。これにより、撹拌体を回転駆動するための回転駆動装置が炊飯用内鍋を貫通する必要がなく、水漏れを起こすことなく、被加熱物(米と水等)が撹拌されて温度を均一にできると共に米に吸水させることができる。
【0010】
一方、製パン時に、上記炊飯用内鍋に替えて、上記被駆動部材に取り付けられパンこね部材を有する製パン用内鍋を上記炊飯器本体に収納することができる。これにより、上記製パン用内鍋の上記被駆動部材が上記回転駆動装置の機械的連結部に機械的に連結されて上記機械的連結部から上記駆動モータの回転トルクが上記被駆動部材に機械的に直接伝達される。したがって、磁気カップリングに比べて、大きな回転トルクで上記パンこね部材を回転させることができ、回転トルクが不足することなくパン材料を充分に練り混ぜてパン生地を生成できる。
【0011】
なお、パンこねは常温で行われるため、炊飯に比べると水漏れは起こりにくいので、シール部材によって水漏れを防止可能となる。また、一般に、製パンの頻度は炊飯の頻度に比べて低いから、上記シール部材の経時劣化も抑えられる。
【0012】
また、一実施形態の電気炊飯器は、上記炊飯器本体に上記炊飯用内鍋に替えて収納され、上記加熱部により加熱可能な製パン用内鍋を備え、
上記製パン用内鍋は、
内鍋本体と、
上記内鍋本体に回転自在に取り付けられていると共に上記内鍋本体が上記炊飯器本体に収納されたときに上記機械的連結部に連結されて上記駆動モータの回転トルクが上記機械的連結部から機械的に直接伝達される被駆動部材と、
上記被駆動部材に取り付けられたパンこね部材と
を有する。
【0013】
この実施形態の電気炊飯器によれば、上記炊飯用内鍋に替えて、上記製パン用内鍋を上記炊飯器本体に収納することで、パンこね部材に取り付けられた被駆動部材に、上記駆動モータに取り付けられた機械的連結部が連結され、上記駆動モータの回転トルクが上記被駆動部材に機械的に直接伝達される。したがって、磁気カップリングに比べて、大きな回転トルクでパンこね部材を回転させることができる。また、上記加熱部により、上記製パン用内鍋を加熱してパンを焼き上げることができる。
【0014】
また、一実施形態の電気炊飯器は、上記炊飯器本体に取り付けられていると共に、上記炊飯器本体に上記炊飯用内鍋が収納されているときに上記炊飯用内鍋の温度を検出し、上記炊飯器本体に上記製パン用内鍋が収納されているときに上記製パン用内鍋の温度を検出する温度センサとを備え、
上記温度センサの検知面に接触する上記製パン用内鍋の被検知面の形状を、上記温度センサの検知面に接触する上記炊飯用内鍋の被検知面の形状と略同じ形状にした。
【0015】
この実施形態の電気炊飯器によれば、炊飯時と製パン時の両方において、上記温度センサを共用して、上記温度センサで炊飯用内鍋と製パン用内鍋の温度を正確に検出できる。
【0016】
また、この発明の製パン用内鍋は、内鍋本体と、
上記内鍋本体に回転自在に取り付けられていると共に上記内鍋本体が炊飯器本体に収納されたときに駆動モータの磁気カップリング用の駆動用磁石を有する回転軸に取り付けられた機械的連結部に機械的に連結されて、上記駆動モータの回転トルクが上記機械的連結部から機械的に直接伝達される被駆動部材と、
上記被駆動部材に取り付けられたパンこね部材と
を有する。
【0017】
この製パン用内鍋によれば、上記炊飯器本体に収納することにより、上記パンこね部材に取り付けられている被駆動部材が上記駆動モータの回転軸に取り付けられた機械的連結部に連結される。この機械的連結部は、上記パンこね部材に取り付けられている被駆動部材に駆動モータの回転トルクを機械的に直接伝達するので、磁気カップリングに比べて、大きな回転トルクでパンこね部材を回転させることができる。
【0018】
また、一実施形態の製パン用内鍋では、上記炊飯器本体に収納されたときに上記炊飯器本体の内壁に対向する外壁と、
上記外壁の内側に形成されていると共に上記パンこね部材を囲む内壁とを有する。
【0019】
この実施形態の製パン用内鍋によれば、パン材料を内壁内の外径が小さな領域に集めることができるので、パンこね部材を回転させるのに必要なトルクを低減できる。
【0020】
また、一実施形態の製パン用内鍋では、上記内壁は、四角い筒形状である。
【0021】
この実施形態の製パン用内鍋によれば、上記パンこね部材を回転させたときに、パン材料が内壁に当たり易いので、内壁が円筒形状である場合に比べて、パン生地をこね易くなる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の電気炊飯器によれば、炊飯時には、炊飯用内鍋を炊飯器本体に収納し、加熱部で炊飯用内鍋を加熱し、駆動モータを駆動することで、回転駆動装置で回転磁界を発生させ、磁気カップリングにより内鍋内の撹拌体を非接触で回転駆動するので、水漏れを起こすことなく被加熱物(米と水等)を撹拌できて温度を均一にできると共に米に吸水させることができる。
【0023】
一方、製パン時には、上記炊飯用内鍋に替えて、被駆動部材に連結されたパンこね部材を有する製パン用内鍋を炊飯器本体に収納することにより、上記製パン用内鍋の上記被駆動部材が上記回転駆動装置の機械的連結部に接続されて上記機械的連結部から上記駆動モータの回転トルクが上記被駆動部材に機械的に直接伝達される。したがって、磁気カップリングに比べて、大きな回転トルクで上記パンこね部材を回転させることができ、回転トルクの不足を招くことなく、パン材料を練り混ぜてパン生地を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器の斜視図である。
【図2】図2は上記電気炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図4】図4は図1のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図5】図5は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【図6】図6は炊飯用内鍋に替えて製パン用内鍋を収納した上記電気炊飯器の縦断面図である。
【図7】図7は上記製パン用内鍋の変形例を収納した上記電気炊飯器の縦断面図である。
【図8】図8は上記製パン用内鍋の変形例を上方から下方へ見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0026】
図1はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器を斜め上方から見た斜視図を示している。
【0027】
この実施の一形態の電気炊飯器は、図1に示すように、炊飯器本体1と、炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2とを備えている。炊飯器本体1は、前面側に設けられた表示操作部3と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン4と、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル5と、後面側かつ下側に接続された電源コード6とを有する。また、蓋体2の後面側に蒸気口2aを設けている。表示操作部3は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンにより構成され、調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。蓋体2は、炊飯器本体1に設けられたラッチ機構(図示せず)により係脱可能に係止された状態で閉じられており、フックボタン4を押すことによりラッチ機構が外れて、スプリング26(図3に示す)の付勢力で蓋体2が開く。
【0028】
また、図2は上記電気炊飯器の蓋体2を開いた状態の斜視図を示しており、図1と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0029】
この電気炊飯器は、図2に示すように、炊飯器本体1の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸20(図3に示す)を介して蓋体2を上下方向に回動自在に支持している。この蓋体2は、外蓋21と内蓋22とを有する。また、炊飯器本体1内に被加熱物を収容する炊飯用内鍋10を収納している。
【0030】
上記炊飯用内鍋10の上側開口の縁に環状のフランジ部10aを設けている。その炊飯用内鍋10のフランジ部10aの半径方向に対向する位置に、耐熱樹脂製の内鍋把手11,11を取り付けている。炊飯器本体1の上面の左右2箇所に、位置決め部の一例としての凹部12a(図2では右側のみを示す)を設けて、この2つの凹部12aに炊飯用内鍋10の内鍋把手11,11が夫々嵌合する。これにより、炊飯器本体1に収納された炊飯用内鍋10が炊飯器本体1に対して位置決めされる。
【0031】
図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図3に示すように、炊飯器本体1は、外ケース12と、その外ケース12内に配置され、炊飯用内鍋10を収納する内ケース13とを有する。内ケース13は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【0032】
上記外ケース12と内ケース13との間の空間の後面側(図3の右側)に、電源回路やインバータ回路などを含む電源部14を配置し、電源部14の下側に電源部14などを冷却する冷却ファン15を配置している。さらに、冷却ファン15の下側かつ外ケース12の底部に、電源コード6を巻き取るコードリール7を配置している。
【0033】
また、炊飯用内鍋10の底部に、内側に突出する円筒形状の凸部10bを設けている。この炊飯用内鍋10の凸部10bに円板形状の撹拌翼40を回転自在に嵌合している。この撹拌翼40は、環状のヨーク41と、そのヨーク41の内側に周方向かつ等間隔に配列された被駆動側磁石としての複数の磁石42とを有する。この炊飯用内鍋10の凸部10bに対向する内ケース13の領域に開口部13aを設けている。この開口部13aは、上記凸部10bに沿って突出した内ケース13の突出部13bに形成されている。
【0034】
そして、炊飯用内鍋10の凸部10bの下側かつ内ケース13の突出部13bの内側に、駆動側磁石としての複数の磁石18が周方向かつ等間隔に配置された頭部16bを有する回転磁界発生部であるロータ16を配置している。頭部16bは嵌合部44を有し、この嵌合部44は上記開口部13aで上記突出部13bから露出している。ロータ16の頭部16bが機械的連結部を構成している。また、このロータ16の軸部16aに回転軸17aが連結された駆動モータとしての撹拌モータ17を炊飯用内鍋10の底部の下側に配置している。
【0035】
なお、撹拌モータ17,ロータ16は回転駆動装置の一例である。また、図3の90は、ロータ16の軸部16aを囲むカバーである。カバー90とロータ16との間にシール部を設けてもよい。
【0036】
そして、ロータ16と撹拌翼40は、夫々の磁石18,42によりラジアル型の磁気カップリングにより連結され、撹拌モータ17により駆動されたロータ16が回転することにより、磁気カップリングを介して撹拌翼40が回転する。
【0037】
また、外ケース12と内ケース13との間の空間の前面側(図3の左側)に、表示操作部3(図1,図2に示す)と電源部14のインバータ回路と冷却ファン15および撹拌モータ17などを制御する制御部30を配置している。
【0038】
また、炊飯器本体1内の内ケース13の下側かつ外側に、炊飯用内鍋10を誘導加熱するための誘導コイル31を配置している。この誘導コイル31は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース13の外面に接着されている。また、誘導コイル31の下側には、誘導コイル31の漏れ磁束を防止するフェライト部材38を配置している。さらに、炊飯器本体1内の内ケース13の上側の側面を囲むように横ヒータ32を周方向に沿って配置している。また、内ケース13の下側に内ケース13を貫通する底温度センサ33を配置している。この底温度センサ33は、内ケース13に収納された炊飯用内鍋10の底部近傍の被検知面10cに先端部の検知面33aが接触して、炊飯用内鍋10の温度を検出する。なお、蓋体2内に蓋ヒータ39(図4に示す)と蓋温度センサ34(図5に示す)を配置している。
【0039】
上記誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ39で炊飯用内鍋10全体を加熱する加熱部を構成している。
【0040】
上記炊飯用内鍋10は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。
【0041】
一方、上記蓋体2は、炊飯器本体1の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸20(図3に示す)を介して蓋体2が回動自在に支持された外蓋21と、その外蓋21の炊飯用内鍋10に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋22とを有する。この内蓋22の外周に環状の耐熱ゴム製のパッキン23を着脱自在に取り付けている。蓋体2が閉じられたときにパッキン23は、炊飯用内鍋10のフランジ部10aの上面に密着して、炊飯用内鍋10と内蓋22との間をシールする。また、図3において、24は内蓋22に設けられた蒸気穴である。
【0042】
図4は図1のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図4に示すように、炊飯器本体1の外ケース12の上面の左右2箇所に設けられた凹部12a,12aに、炊飯用内鍋10の内鍋把手11,11を嵌合させると、炊飯用内鍋10は炊飯器本体1に対して位置決めされる。
【0043】
そして、上記内鍋把手11内には磁石50を埋め込んでいる。また、外蓋21の磁石50上に位置する部分に、蓋体2を閉じたときに磁石50の磁気によりオンする磁気センサとしてのリードスイッチ25を取り付けている。なお、内鍋把手11,11のどちらにも磁石50を埋め込んでいる。また、上記磁気センサとして、ホール素子を用いてもよい。
【0044】
図5は上記電気炊飯器の制御ブロック図を示している。上記制御部30は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、表示操作部3からの操作信号や、リードスイッチ25,底温度センサ33,蓋温度センサ34からの信号などに基づいて、表示操作部3,撹拌モータ17,冷却ファン15,誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36および蓋ヒータ用回路37を制御する。誘導コイル用インバータ回路35は、誘導コイル31に交番磁界を発生させる。上記誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37は、電源部14(図3に示す)に含まれている。
【0045】
上記構成の電気炊飯器によれば、適量の米と水を入れた炊飯用内鍋10を炊飯器本体1内に収納した後、使用者が表示操作部3を操作して、加熱調理(炊飯)を開始すると、制御部30は、リードスイッチ25がオンか否かを判定する。すなわち、炊飯器本体1内に炊飯用内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられているか否かを判定する。そして、制御部30がリードスイッチ25がオンしていると判定すると、誘導コイル31,横ヒータ32,蓋ヒータ39を制御して加熱調理(炊飯)を開始する。一方、制御部30がリードスイッチ25がオンしていないと判定すると、加熱調理を開始しない。このとき、表示操作部3に炊飯器本体1内に炊飯用内鍋10が収納された状態で蓋体2が閉じられていないことを表示してもよい。
【0046】
この加熱調理運転では、制御部30は、予熱運転モード、立ち上げ運転モード、炊き上げ運転モード、蒸らし運転モード、保温運転モードの順に制御を行う。
【0047】
〔予熱運転モード〕
まず、予熱運転モードでは、撹拌モータ17により撹拌翼40を回転駆動して、炊飯用内鍋10内を撹拌しながら、誘導コイル用インバータ回路35から誘導コイル31に小電力を供給して、誘導コイル31により炊飯用内鍋10を誘導加熱し、底温度センサ33により検出された炊飯用内鍋10内の温度を60℃に保つように誘導コイル31の電力を制御して、予熱運転を所定時間行う。このとき、撹拌翼40により炊飯用内鍋10内を撹拌することにより、炊飯用内鍋10内の被加熱物(米と水)を均一な目標温度(60℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成する。
【0048】
この予熱運転モードでは、澱粉分解酵素が最も有効に働く温度である60℃に設定されており、15分〜20分の間、炊飯用内鍋10内の温度を60℃に保つ。この実施の形態では、予熱運転モードの目標温度を60℃としたが、これに限らず、目標温度は諸条件に応じて適宜設定すればよい。
【0049】
〔立ち上げ運転モード〕
次に、撹拌モータ17の運転を停止して撹拌翼40を止めた後、誘導コイル用インバータ回路35から誘導コイル31に大電力を供給して、誘導コイル31により炊飯用内鍋10を誘導加熱すると共に、横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37を制御して、横ヒータ32,蓋ヒータ39により炊飯用内鍋10を側方と上側から加熱し、炊飯用内鍋10内の温度を100℃に立ち上げる立ち上げ運転を行う。ここで、炊飯用内鍋10内の温度は、底温度センサ33と蓋温度センサ34により検出する。
【0050】
〔炊き上げ運転モード〕
次に、炊飯用内鍋10内の温度が100℃に達してから炊飯用内鍋10内の温度が120℃になるまで、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ39による加熱量を調整して沸騰を維持した炊き上げ運転を行う。ここで、炊飯用内鍋10内の水が無くなって沸騰しなくなると、炊飯用内鍋10内の温度が100℃から上昇し始める。
【0051】
上記炊き上げ運転によって、米に熱と水が加わって米に含まれるβ澱粉がα澱粉へと変化する糊化という化学反応が起こり、美味しいご飯ができる。
【0052】
〔蒸らし運転モード〕
そうして、炊飯用内鍋10内の温度が120℃に達すると、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ39による加熱量を調整して蒸らし運転を所定時間行った後、加熱調理(炊飯)を終了して、保温運転モードに移る。
【0053】
このように、この実施形態の電気炊飯器によれば、炊飯時に、炊飯用内鍋10が炊飯器本体1に装着され、撹拌モータ17が駆動されることで、ロータ16の磁石18が回転磁界を発生させ、撹拌翼40の磁石42との磁気カップリングにより、撹拌翼40が非接触で回転駆動される。これにより、水漏れを起こすことなく、被加熱物(米と水等)が撹拌されて温度を均一にできると共に米に吸水させることができる。
【0054】
次に、図6を参照して、上記電気炊飯器で製パンを行う場合に、炊飯用内鍋10に替えて、炊飯器本体1に収納される製パン用内鍋60を説明する。図6は、図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図に相当している。
【0055】
この製パン用内鍋60は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。この製パン用内鍋60は、内鍋本体61の底部61aに回転自在に設けられた被駆動部材としての嵌合回転部材62と、嵌合回転部材62に連結されたパンこね羽根63とを有する。底部61aと嵌合回転部材62との間にはシール部材64,65を含むシール部68が配置されている。嵌合回転部材62は、炊飯器本体1のロータ16の機械的連結部としての頭部16bの嵌合部44に嵌合する嵌合部66を有する。炊飯器本体1に製パン用内鍋60を収納すると、製パン用内鍋60の嵌合回転部材62の嵌合部66が、炊飯器本体1のロータ16の嵌合部44に、相対回転不可に噛合される。この嵌合部66と嵌合部44との嵌合によって、製パン用内鍋60の嵌合回転部材62が炊飯器本体1のロータ16に相対回転不可に機械的に連結される。なお、嵌合部66と嵌合部44とは、セレーション嵌合によって相対回転不可に嵌合されるものでもよく、非円柱形状の凸部と非円柱形状の凹部との嵌合もしくは多角柱形状の凸部と多角柱形状の凹部との嵌合によって相対回転不可に嵌合されるものでもよい。
【0056】
また、製パン用内鍋60は、底温度センサ33の検知面33aに沿って接触する被検知面60cを有する。底温度センサ33で製パン用内鍋60の温度が検出される。製パン用内鍋60の被検知面60cの形状を、炊飯用内鍋10の被検知面10cの形状と同じ形状にしたので、底温度センサ33で製パン用内鍋60の温度を正確に検出でき、炊飯時と製パン時の両方において底温度センサ33を共用できる。また、製パン用内鍋60は、上側開口の縁に環状のフランジ部60aを設けている。その製パン用内鍋10のフランジ部10aの半径方向に対向する位置に、耐熱樹脂製の内鍋把手(図示せず)を取り付けている。この内鍋把手は、図4に示す炊飯用内鍋10の内鍋把手11と同様であり、炊飯器本体1の位置決め部としての凹部12aに嵌合する。また、この内鍋把手は、炊飯用内鍋10の内鍋把手11の磁石50と同様の磁石(図示せず)が埋め込まれていて、蓋体2を閉じたときに上記磁石の磁気によりリードスイッチ25がオンする。
【0057】
次に、図6に示すように、製パン用内鍋60を炊飯器本体1に収納した電気炊飯器で製パンを行う動作を説明する。まず、パン材料(水,小麦等)を入れた製パン用内鍋60を炊飯器本体1に収納した後、使用者が表示操作部3を操作して、製パンを開始させる。すると、制御部30はリードスイッチ25がオンか否かを判定する。すなわち、炊飯器本体1内に製パン用内鍋60が収納された状態で蓋体2が閉じられているか否かを判定する。そして、制御部30がリードスイッチ25がオンしていると判定すると、撹拌モータ17を駆動する。これにより、ロータ16が回転し、ロータ16の嵌合部44に相対回転不可に嵌合している嵌合部66が回転して、嵌合回転部材62,パンこね羽根63が回転することで、パン材料が練り混ぜられて、パン生地が生成される。
【0058】
撹拌モータ17を予め定められた時間だけ駆動して、パン生地の生成が終了すると、制御部30は、撹拌モータ17を停止し、次の発酵処理が開始される。この発酵処理では、誘導コイル用インバータ回路35から誘導コイル31に電力を供給して、誘導コイル31により製パン用内鍋60を誘導加熱すると共に、横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37を制御して、横ヒータ32,蓋ヒータ39により製パン用内鍋60を側方と上側から加熱し、製パン用内鍋60内の温度が発酵温度に制御される。ここで、製パン用内鍋60内の温度は、底温度センサ33と蓋温度センサ34により検出する。この発酵処理によって、パン生地が発酵すると、パン生地を焼き上げる焼成処理へ移り、誘導コイル31,横ヒータ32,蓋ヒータ39により製パン用内鍋60がより高い焼き温度に加熱される。ここで、製パン用内鍋60は、底部61aが底部61a以外の部分に比べて肉厚に成形されていて、所望の焼き温度が保持される。こうして、パンが焼き上がったら、誘導コイル31と横ヒータ32および蓋ヒータ39による加熱量を低減して保温運転モードに移る。
【0059】
このように、この実施形態の電気炊飯器によれば、製パン時に、製パン用内鍋60を炊飯器本体1に装着することで、製パン用内鍋60のパンこね羽根63に連結している嵌合回転部材62の嵌合部66がロータ16の嵌合部44に相対回転不可に嵌合される。よって、ロータ16に嵌合回転部材62が機械的に直結されるので、撹拌モータ17は、磁気カップリングに比べて、パンこね羽根63を大きなトルクで回転駆動でき、回転トルクが不足することなくパン材料を充分に練り混ぜてパン生地を生成することが可能になる。
【0060】
したがって、この実施形態によれば、炊飯時の水漏れを防ぎながら製パンも可能にできる。
【0061】
次に、図7,図8を参照して、上記製パン用内鍋60の変形例を説明する。図7は、この変形例の製パン用内鍋70を炊飯器本体1に収納した状態を示す断面図である。また、図8は、製パン用内鍋70を上方から下方に見た平面図である。この製パン用内鍋70は、内鍋本体71が内壁72と外壁73を有する点だけが前述の製パン用内鍋60と異なる。よって、この製パン用内鍋70は、前述の製パン用内鍋60と同様の部分には同様の符号を付している。なお、図8では、パンこね羽根63を省略している。
【0062】
この製パン用内鍋70の外壁73は、炊飯器本体1の内壁をなす内ケース13に沿って対向している。また、内壁72は外壁73の内側に形成されていてパンこね羽根63を囲んでいる。
【0063】
この製パン用内鍋70によれば、パン材料を内壁72内の外径が小さな領域に集めることができるので、パンこね羽根63を回転させるのに必要なトルクを低減できる。また、加熱時には、誘導コイル31と横ヒータ32によって、まず、外壁73が加熱され、この外壁73から外壁73と内壁72間の空間の空気を経由して内壁72に伝熱されるので、内壁72は間接的に加熱されることとなり、均一に加熱され易くなって、パン生地を均一に加熱することができる。
【0064】
また、この製パン用内鍋70は、前述の製パン用内鍋60と同様、底温度センサ33の検知面33aに沿って接触する被検知面70cを有する。底温度センサ33で製パン用内鍋70の温度が検出される。製パン用内鍋70の被検知面70cの形状を、炊飯用内鍋10の被検知面10cの形状と同じ形状にしたので、底温度センサ33で製パン用内鍋70の温度を正確に検出でき、炊飯時と製パン時の両方において底温度センサ33を共用できる。また、この製パン用内鍋70は、前述の製パン用内鍋60と同様、上側開口の縁に環状のフランジ部70aを設けている。この製パン用内鍋70のフランジ部70aの半径方向に対向する位置に、耐熱樹脂製の内鍋把手(図示せず)を取り付けている。この内鍋把手は、図4に示す炊飯用内鍋10の内鍋把手11と同様であり、炊飯器本体1の位置決め部としての凹部12aに嵌合する。また、この内鍋把手は、炊飯用内鍋10の内鍋把手11の磁石50と同様の磁石(図示せず)が埋め込まれていて、蓋体2を閉じたときに上記磁石の磁気によりリードスイッチ25がオンする。
【0065】
また、図8に示すように、内壁72を四角い筒形状にしたので、パンこね羽根63を回転させたときに、パン材料が内壁72に当たり易く、内壁72が円筒形状である場合に比べて、パン生地をこね易くなる。なお、内壁72の形状は四角い筒形状に限らないのは勿論で円筒形状,楕円の筒形状,多角形の筒形状であってもよい。
【0066】
尚、上記実施形態では、機械的連結部としてのロータ16の嵌合部44と製パン用内鍋の被駆動部材としての嵌合回転部材62の嵌合部66とが相対回転不可に嵌合するものとしたが、上記機械的連結部と被駆動部材を歯車とし、互いに噛合する2つの歯車によるギア機構で回転トルクを伝達するようにしてもよい。また、上記実施形態において、誘導コイル31の換わりに、横ヒータ32と同様のヒータを用いてもよい。このヒータを用いる場合、炊飯用内鍋10,製パン用内鍋60,70の高熱伝導部材の外面に磁性体を貼り付けなくてもよい。
【0067】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…炊飯器本体
2…蓋体
2a…蒸気口
3…表示操作部
4…フックボタン
5…本体ハンドル
6…電源コード
7…コードリール
10…炊飯用内鍋
10a…フランジ部
10b…凸部
10c…被検知面
11…内鍋把手
12…外ケース
12a…凹部
13…内ケース
13a…開口部
13b…突出部
14…電源部
15…冷却ファン
16…ロータ
16a…軸部
16b…頭部
17…撹拌モータ
17a…回転軸
18…磁石
20…ヒンジ軸
21…外蓋
22…内蓋
23…パッキン
24…蒸気穴
25…リードスイッチ
26…スプリング
30…制御部
31…誘導コイル
32…横ヒータ
33…底温度センサ
33a…検知面
34…蓋温度センサ
35…誘導コイル用インバータ回路
36…横ヒータ用回路
37…蓋ヒータ用回路
38…フェライト部材
39…蓋ヒータ
40…撹拌翼
41…ヨーク
42…磁石
44…嵌合部
50…磁石
60…製パン用内鍋
60a…フランジ部
60c…被検知面
61…内鍋本体
61a…底部
62…嵌合回転部材
63…パンこね羽根
64,65…シール部材
66…嵌合部
68…シール部
70…製パン用内鍋
70a…フランジ部
70c…被検知面
71…内鍋本体
72…内壁
73…外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する炊飯用内鍋と、
上記炊飯用内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記炊飯用内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記炊飯用内鍋内に回転自在に配置され、被駆動側磁石を有する撹拌体と、
上記炊飯用内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記炊飯用内鍋を加熱する加熱部と
を備え、
上記回転駆動装置は、
駆動モータと、
上記駆動モータの回転軸に取り付けられ、上記被駆動側磁石と磁気カップリングする駆動側磁石を有すると共に上記駆動モータが駆動されることで上記撹拌体を回転駆動するための回転磁界を発生させる回転磁界発生部と、
上記駆動モータの回転軸に取り付けられており、上記炊飯用内鍋に替えて製パン用内鍋が上記炊飯器本体に収納されたときに、上記製パン用内鍋内に回転自在に配置されたパンこね部材に取り付けられた被駆動部材に機械的に連結されて、上記駆動モータの回転トルクを上記被駆動部材に機械的に直接伝達する機械的連結部と
を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気炊飯器において、
上記炊飯器本体に上記炊飯用内鍋に替えて収納され、上記加熱部により加熱可能な製パン用内鍋を備え、
上記製パン用内鍋は、
内鍋本体と、
上記内鍋本体に回転自在に取り付けられていると共に上記内鍋本体が上記炊飯器本体に収納されたときに上記機械的連結部に連結されて上記駆動モータの回転トルクが上記機械的連結部から機械的に直接伝達される被駆動部材と、
上記被駆動部材に取り付けられたパンこね部材と
を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気炊飯器において、
上記炊飯器本体に取り付けられていると共に、上記炊飯器本体に上記炊飯用内鍋が収納されているときに上記炊飯用内鍋の温度を検出し、上記炊飯器本体に上記製パン用内鍋が収納されているときに上記製パン用内鍋の温度を検出する温度センサを備え、
上記温度センサの検知面に接触する上記製パン用内鍋の被検知面の形状を、上記温度センサの検知面に接触する上記炊飯用内鍋の被検知面の形状と略同じ形状にしたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項4】
内鍋本体と、
上記内鍋本体に回転自在に取り付けられていると共に上記内鍋本体が炊飯器本体に収納されたときに駆動モータの磁気カップリング用の駆動用磁石を有する回転軸に取り付けられた機械的連結部に機械的に連結されて、上記駆動モータの回転トルクが上記機械的連結部から機械的に直接伝達される被駆動部材と、
上記被駆動部材に取り付けられたパンこね部材と
を有することを特徴とする製パン用内鍋。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の製パン用内鍋において、
上記炊飯器本体に収納されたときに上記炊飯器本体の内壁に対向する外壁と、
上記外壁の内側に形成されていると共に上記パンこね部材を囲む内壁とを有することを特徴とする製パン用内鍋。
【請求項6】
請求項5に記載の製パン用内鍋において、
上記内壁は、四角い筒形状であることを特徴とする製パン用内鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−229612(P2011−229612A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101119(P2010−101119)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】