説明

電気自動車用インバータのエアブリーダ装置

【課題】本発明は、バッテリボックスの下部に配置されているインバータに、簡単な構造で、かつインバータ内部への浸水が十分に防げる吸排気構造が設けられる電気自動車用インバータのエアブリーダ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、バッテリボックス10に内外を連通する連通口32を設け、この連通口32とバッテリボックス10の下部に隣接したインバータ20内部のエアを吸排気するためのブリーザ口30aとを配管部材33で接続して、バッテリボックス内部でインバータ20におけるエアの吸排気を可能とした。同構成により、配管部材33で、隣接するインバータ20とバッテリボックス10との間を接続するという簡単な構造により、インバータ20内部へ浸水することが防止でき、インバータ20の熱による膨張、収縮に伴うインバータ内部のエアの吸排気が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームの側部にバッテリボックスとインバータとを設置した電気自動車のインバータのエアブリーダ装置の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを動力源としたハイブリッド電気トラックでは、ベース車両の変更をできるだけ抑えながらハイブリッド化するために、車体フレームの側部の限られた部分を利用して、リチウムイオンバッテリなどを収めたバッテリボックスや同バッテリに蓄えられた直流電力を交流電力に変換するインバータを搭載することが行われている。
多くは、限られた車体フレームの側部のスペースを有効に活用しつつ、重要部品であるバッテリボックスを冠水しにくくするために、特許文献1にも開示されているようにフレーム側部の上側に防水性を有するバッテリボックスを配置し、同バッテリボックスと隣接して下側に防水性を有するインバータを配置することが行われている。これで、トラックの冠水路の走行中、重要なバッテリを収めたバッテリボックス内に水が浸入するのが抑えられる。このインバータを下側に配置するレイアウトは、同インバータから延びる配線が、大きな負担を強いずに、大きな弧を描いて、車体フレームの内側に搭載された駆動モータに接続されることにもよる。
【0003】
ところで、インバータには、ケーシング内部にインバータ機器の他、DC/DCコンバータなど発熱を伴う機器が収められた構造がある。こうしたインバータは、ケーシング内部の空気が、熱によりかなり膨張したり収縮したりする。特許文献1には、インバータの呼吸を行わせる構造は見られないが、こうしたインバータの多くは、ケーシング内部での膨張、収縮をスムースに行わせるために、大気に開放する呼吸用のブリーダ口をケーシングに設けて、ケーシング内の膨張した空気を外部に逃がしたり、収縮に伴い外気をケーシング内に導入させたりする措置がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−35126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、単に大気に開放しているブリーダ口だと、冠水路の走行中、水がブリーダ口の大気開放側から進入し、インバータ内部が浸水してしまうおそれがある。そこで、浸水を避けるために、ブリーダ口に車体フレームの上方へ延びる大気開放用の配管部材を接続して、配管部材の大気開放端をできるだけ高い地点に配置して、浸水を防ぐことが考えられる。
ところが、トラックは、車両フレームの上部に架装物(荷台、冷蔵庫や冷凍庫など)が搭載されるため、配管部材の大気開放側を上方へ延ばすには限度があり、十分に浸水が防ぎきれない。しかも、配管部材の大気開放側は、バッテリボックスの各部やバッテリボックスの周辺機器を避けて上方へ延ばす必要があるため、呼吸構造は複雑な構造となりやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、バッテリボックスの下部に配置されているインバータに、簡単な構造で、かつインバータ内部への浸水が十分に防げる吸排気構造が設けられる電気自動車用インバータのエアブリーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、バッテリボックスに同バッテリボックスの内外を連通する連通口を設け、同連通口と上記バッテリボックスの下部に隣接して配置してあるインバータ内部のエアを吸排気するためのブリーダ口とを配管部材で接続して、バッテリボックス内部でインバータにおける呼吸を可能としたことにある。
同構成によると、配管部材で、隣接するインバータとバッテリボックスとの間を接続するという簡単な構造により、インバータ内部への浸水が防止でき、かつインバータの熱による膨張、収縮に伴うインバータ内部のエアを吸排気が行える。
【0008】
請求項2の発明は、配管部材の配管が短い配管長さですむよう、バッテリボックスの下部にインバータが配置される凹部を形成し、この凹部に配置されたインバータの近辺のバッテリボックス部分に連通口を配置し、この連通口とインバータのブリーダ口とを配管部材で接続することとした。
請求項3の発明は、バッテリボックスの通気構造を活用して、浸水の心配なくインバータにおける呼吸が行えるよう、バッテリボックスは、当該バッテリボックス内への浸水が抑えられる高さの地点に、外気を内部に通気させるための吸入口および排気口を有し、吸入口および排気口は外部から水の進入を阻止する進入阻止手段を有した構造を用いた。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、インバータの熱による膨張、収縮に伴うインバータ内部のエアの吸排気は、上下に隣接配置されたバッテリボックスとインバータとの間を配管部材で接続するという、車体フレームの上方まで配管を延ばしたり、バッテリボックスの各部やバッテリボックスの周辺機器を考慮して配管したりする必要のない、簡単な構造で実現できる。
特にインバータの熱による膨張、収縮に伴うインバータ内部のエアの吸排気は、単に大気開放する配管構造とは異なり、上位に配置されているバッテリボックス内部で行われるから、インバータ内部への浸水の心配はない。しかも、インバータの空気の出入りは、比較的乾燥しているバッテリボックスの内部で行われるから、湿った空気がインバータ内部に取り入られる心配もない。
【0010】
請求項2の発明によれば、配管部材は短い配管長さで配管することができる。
請求項3の発明によれば、バッテリボックスの通気構造を活用した、浸水の心配のないインバータの呼吸構造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の要部となるハイブリッド電気トラックの車体フレームに搭載されたバッテリ電源系を示す斜視図。
【図2】図1中の矢視IIから見たバッテリボックスの背面側の一部を示す斜視図。
【図3】同バッテリボックスに形成されている水進入阻止構造付の吸入口、排気口を示す断面図。
【図4】図1中のIII−III線に沿うインバータの呼吸構造を示す断面図。
【図5】冠水路を走行したときのバッテリ電源系の状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1ないし図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、電気自動車であるところの例えばハイブリッド電気トラックのバッテリ電源系の一部を示していて、図1中1はハイブリッド電気トラックの車体フレームを示している。
【0013】
同車体フレーム1は、車両前後方向に延びる一対のサイドフレーム2(片側しか図示せず)の間に複数のクロスメンバ3(一部だけ図示)を掛け渡したラダー状に構成されている。この車体フレーム1のフロント側に、エンジン、トランスミッション、駆動モータ、キャブ、一対の操舵輪(いずれも図示しない)が設けられる。リヤ側に、エンジンや駆動モータからの動力を受けるデファレンシャル、同デファレンシャルから分配された駆動力で駆動される一対の駆動輪(いずれも図示しない)が設けられる。また車体フレーム1の上部には、図示はしないが荷台、冷凍庫、冷蔵庫などの架装物が搭載される。なお、架装物の多くは車体フレーム1の車幅方向両側から外側に張り出すように設置されるので、車体フレーム1の車幅方向両側を含め、車体フレーム1の上側は、別途、機器や構造物の設置が許されない部分となる(トラックの特徴)。
【0014】
車体フレーム1の車幅方向片側の側部、具体的には片側のサイドフレーム2の前後輪間におけるサイドフレーム部分2aには、駆動モータなどに電力を供給する電力供給部5が設けられている。電力供給部5は、サイドフレーム部分2aの車幅方向外側の側部に、支持ブラケット7を介して、バッテリボックス10およびインバータ20を据え付けた構造が用いられている。同構造により、サイドフレーム2aからバッテリボックス10とインバータ20とを上下2階建て式に張り出せている。
【0015】
具体的には支持ブラケット7は、例えばサイドフレーム2aの外側部に取着された上下方向に延びる複数本の支持脚部8と、これら支持脚部8の下端部で支持された車両前後方向に延びる水平なバッテリ据付プレート部9とを組み合わせたL形の構造が用いてある。このうちバッテリ据付プレート部9は、車両前方側を後方側よりも高い位置に段差させた階段状に形成してある。また支持脚部7の上端部には締付けベルト8aが取着してある。
【0016】
バッテリボックス10は、上部が開口したボックス形の本体部11aと同上部の開口部を塞ぐ蓋部11bとで構成された防水性の本体12をもち、この本体12内に、例えば多数のリチウムイオンバッテリのセルなどで構成されたバッテリ13、バッテリ冷却用のブロア14、コンタクタなどのヒューズ類15などを収めて構成される。具体的には、本体部11の底面部は、バッテリ据付プレート部9の形状に合わせて下部を階段状にしてあり、バッテリ据付プレート部9に本体12全体を載置可能な構造にしている。バッテリ13は、この底面が高くなった前方部分12aから底面が低くなった後方部分12bまでの上段部分に収めてある。そして、残る後方部分12bのバッテリ13から下側の空間に、上記ブロア14やヒューズ類15などが収めてある。
【0017】
このバッテリボックス10が、バッテリ据付プレート部9の階段形状に合わせて、バッテリ据付プレート部9の上面に載置してある。またバッテリボックス10には、内蔵のブロア14を用いたバッテリ冷却構造が設けられている。同バッテリ冷却構造は、バッテリボックス10内への浸水が抑えられる高さの地点、例えば図2に示されるように本体部11aのサイドフレーム2a側となる壁部11cのうち、車両前方寄りの最上段の地点に、外気を取り入れる吸入口16aを設け(図面では2個)、本体部11aの車両後方側となる壁部11dの最上段に、内部空気を外部に導出させる排気口16bを設けた構造が用いられ、ブロア14の作動により、外気が本体12内部に通気され、バッテリ13の温度上昇が抑えられるようにしてある。
【0018】
また吸入口16a,排気口16bには、いずれも図3に示されるような外部から水が進入するのを阻止する水進入阻止構造17(本願の進入阻止手段に相当)が設けてある。これら進入阻止構造17は、例えばラビリンス状の経路17aを吸入口16a,排気口16bの各開口に連ねた構造が用いられ、同ラビリンス状の経路17aを形成する複数の隔壁17bと空気流との衝突による水分の分離を利用して、水の進入が阻止されるようにしている。
【0019】
このバッテリボックス10が、支持脚部7の上部から延びている締付けベルト8aの巻き付け、さらには締付けベルト8a端のバッテリ据付プレート部6への固定(例えばボルトナット18による)によって、バッテリ据付プレート部6上に締結させてある。これによりバッテリボックス10は、架装物と最も接近する最上位の地点に設置させている。
【0020】
インバータ20は、例えば密閉化(防水化)されたケーシング21内に、インバータ機器22や例えば24Vの電力を得るDC/DCコンバータ23など機器が収められて構成してある。このインバータ20が、バッテリボックス10下部やバッテリ据付プレート部9下部の段差で形成された車両前方側の凹部25内に配置されている。インバータ20は、インバータ用ブラケット26により凹部25内で固定され、インバータ20全体をバッテリボックス10と隣接した下側の地点、すなわち直下に設置させている。なお、バッテリボックス10の周囲、インバータ20の周囲はサイドカバー27やアンダカバー28(いずれも図1には一部だけ図示)で覆われる。
【0021】
ここで、インバータ20の内部空気は、インバータ機器22やDC/DCコンバータ23などの発熱により、膨張したり、収縮したりする。このため、図1および図4に示されるようにインバータ20のケーシング21のうち、例えば車幅方向外側に配置されるケーシング部分21aには、ケーシング21の内外を連通する直管形のブリーダ口部30が設けてあり、インバータ内部のエアを吸排気するブリーダ口30aを形成している(インバータ20の内部空気を出入りさせるもの)。
【0022】
このブリーダ口部30の大気開口側は、インバータ20近辺のバッテリボックス部分、例えばインバータ20の直上に配置されているバッテリボックス10の前方部分12aに接続されている。具体的には、図4に示されるようにブリーダ口30aの上側となる前方部分12aの車幅方向外側の壁部11eのうち上段には、先端を下向きにしたL形の接続口部32(本願の連通口に相当)が設けられている。この接続口部32は、バッテリボックス10の内外を連通する部品である。この口部32の先端とインバータ20のブリーダ口30aとの間がブリーダホース33(本願の配管部材に相当)で接続されている。これでインバータ20内のエアの吸排気が、同インバータ20と隣接したバッテリボックス10の内部で行える構造にしている(図4)。
【0023】
こうしたインバータ20の呼吸構造は、図4に示されるようにインバータ20の内部温度が上昇すると、インバータ内部の膨張した空気がブリーダホース33を通じてバッテリボックス10の内部に逃げる。また内部温度が低下してインバータ内部が収縮すると、ブリーダホース33を通じて、バッテリボックス10の内部空気が取り込まれる。
そのため、図5に示されるように水面が車体フレーム1の上部近くに配置されるような冠水路を走行することがあっても、インバータ20全体や、バッテリボックス10の多くの部分が水に浸るだけで、ブリーダホース33から水がインバータ内部へ浸水することはない。むろん、バッテリボックス10の吸入口16a,排気口16bは、冠水路の走行に備えた地点に配置してあるうえ、外部から水を進入させない構造が施してあるので、冠水路の走行中、吸入口16や排気口17から、水が浸入する心配はない。
【0024】
このようにインバータ20の熱による膨張、収縮に伴うエアの吸排気は、上下に隣接配置されたバッテリボックス10とインバータ20との間をブリーダホース32(配管部材)で接続するという、車体フレーム1上方まで配管を延ばしたり、バッテリボックス10の各部やバッテリボックス10の周辺機器を考慮した配管にする必要のない、簡単な構造で実現できる。特にインバータ20の熱による膨張、収縮に伴うエアの吸排気は、単に大気開放する配管構造とは異なり、上位に配置されているバッテリボックス10の内部で行われるから、インバータ20内部への浸水の心配はない。しかも、インバータ20内には、比較的乾燥しているバッテリボックスの内部空気が出入りするから、湿った空気がインバータ20の内部に取り入られる心配もなく、インバータ20の内部機器の安全性にも寄与する。
【0025】
そのうえ、バッテリボックス10の下部に凹部25を形成し、この凹部25内にインバータ20を配置する構造を採用し、このインバータ20の近辺のバッテリボックス部分に設けた接続口部32(連通口)とインバータ20のブリーダ口30とをブリーダホース33(配管部材)で接続すると、ブリーダホース33の長さ(配管長さ)が短くてすむ。
加えて、バッテリボックス10は、バッテリボックス10内への浸水が抑えられる高さの地点に、水侵入阻止構造17が付いた吸入口16a、排気口16bを設けてあるので、浸水の心配のないインバータ20が容易に実現できる。
【0026】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態では、ブリーダホースでバッテリボックスとインバータ間を連通接続したが、これに限らず、他の構造でバッテリボックスとインバータ間を連通接続してもよい。また一実施形態では、本発明をエンジンとモータを動力源とするハイブリッド電気トラックに適用したが、これに限らず、モータを動力源とする電気トラック(電気自動車)に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0027】
1 車体フレーム
10 バッテリボックス
16a 吸入口
16b 排気口
17 水進入阻止構造(進入阻止手段)
20 インバータ
25 凹部
30a ブリーダ口
32 接続口部(連通口)
33 ブリーダホース(配管部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの側部に設置され、バッテリを収容するバッテリボックスと、
前記バッテリボックスと隣接して下部に設置され、前記バッテリに蓄えられた直流電力を交流電力に変換するインバータとを有した電気自動車であって、
前記バッテリボックスは、当該バッテリボックスの内外を連通する連通口を有し、
前記インバータは、該インバータ内部のエアを吸排気するためのブリーダ口を有し、
前記ブリーダ口と前記連通口とが配管部材で接続され、
前記バッテリボックス内部で前記インバータにおけるエアの吸排気を可能としてなる
ことを特徴とする電気自動車用インバータのエアブリーダ装置。
【請求項2】
前記バッテリボックスは、下部に前記インバータが配置される凹部を有し、
前記連通口は、前記凹部に配置されたインバータの近辺のバッテリボックス部分に配置され、
前記連通口と前記インバータの前記ブリーダ口とが前記配管部材で接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用インバータのエアブリーダ装置。
【請求項3】
前記バッテリボックスは、当該バッテリボックス内への浸水が抑えられる高さの地点に、外気を内部に通気させるための吸入口および排気口を有し、
前記吸入口および前記排気口は、外部から水の進入を阻止する進入阻止手段を有している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気自動車用インバータのエアブリーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121429(P2011−121429A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279472(P2009−279472)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】