説明

電源ドライバ回路

【課題】 電源ドライバ回路において、電力損失が少なく、出力の変化に対する応答特性に優れるとともに、小型化を図る。
【解決手段】 コイルL0に電流を流すパワートランジスタQ1,Q2をPWM方式でスイッチング制御して入力電圧を降圧または昇圧した電圧を出力するスイッチング電源装置を構成するドライバIC110において、オペアンプOP1の反転入力端子と非反転入力端子との間にスイッチ用トランジスタQsgを設け、トランジスタQ2がオンの期間にトランジスタQ1がオン時、即ちトランジスタQ2がオフ時に不確定となる電位の発生を防止し、電位が確定している状態のノード電位に保つことで、応答性の良い電流検出を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を発生する電源装置の電流検出に関し、特に、スイッチング制御によってパワートランジスタを駆動する電源ドライバ回路における電流検出精度の向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器にはシステム制御装置としてマイクロプロセッサ(以下、CPU(Central Processing Unit)という)が搭載されるものが多くなっている。また、CPUの動作周波数はますます高くなる傾向があり、動作周波数の増加に伴って最大動作電流も増大している。
【0003】
そこで、この大電流の要求に答えるには、複数のスイッチング電源を並列に接続することで電流供給能力を高めたマルチフェーズ電源システムが提案されている。
【0004】
かかる電源システムにおいては、コイルに流れる電流を検出して各電源(フェーズ)に対して均等な電流が流れるように各フェーズのパワートランジスタの駆動信号をフィードバック制御することが必要となる。
【0005】
フィードバック制御のための電流検出には各フェーズの電流を均等に制御するため、比較的高い精度が要求される。
【0006】
この種の電源システムにおいて、電流を精度よく検出する方法としては、たとえば特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2003−232816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のような電源システムによる電流検出技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0008】
すなわち、上記特許文献は、スイッチング電源で用いる場合を考慮しておらず、検出電流の応答速度について触れていない。そのため、スイッチング電源のパワートランジスタがスイッチングする際に応答遅れが生じてしまい、正確な電流値を検出することが困難となってしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、パワートランジスタのスイッチングによる影響を受けずに、スイッチング後の早いタイミングでも電流を高精度で検出することができ、それによって高精度かつ高速の電流制御が可能な技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明は、インダクタに電流を流すパワー半導体素子をPWM方式でスイッチング制御して入力電圧を変換した電圧を出力するスイッチング電源装置を構成する電源ドライバ回路であって、該パワー半導体素子とドレイン端子同士またはコレクタ端子同士が結合され、同一の駆動電圧が制御端子に印加される電流検出用半導体素子と、該電流検出用半導体素子のソース端子またはエミッタ端子に接続された電流検出用抵抗と、該電流検出用抵抗と該電流検出用半導体素子との接続ノードである第1のノードに第1の入力端子が接続され、第2の入力端子に該パワー半導体素子のソース電圧またはエミッタ電圧と同一電位の電圧が印加された演算増幅回路と、該演算増幅回路の一対の入力端子が同一電位となるようにフィードバックループが形成され、電流検出用抵抗で生じる信号を電流検出信号として出力させる電流検出回路とを有するドライバ回路において、スイッチングの状態によらず電流検出回路内の電流が流れるルートを確保することにより、不確定な電位を確定させるものである。
【0013】
また、本願の発明の内容をより具体的に説明すれば以下の通りである。
【0014】
本発明は、インダクタとしてのコイルに電流を流すパワートランジスタをPWM方式でスイッチング制御して入力電圧を変換(昇圧または降圧)して出力電圧を得るスイッチング電源装置を構成する電源ドライバ回路において、電流検出回路のノード電位が不確定となるタイミング時においても電流検出動作状態のノード電位を保つように構成したものである。
【0015】
たとえば、オペアンプの反転入力端子電圧のスイッチングによる接地電位化やオペアンプ内部の出力MOSトランジスタのゲート電位をダイオードとスイッチの直列回路による電位ホールドにより実施する。
【0016】
上記の技術によれば、ノード電圧を電流検出動作状態の電位に設定するため、電圧が不確定になるノード、またはサージ電圧が発生するノードにおいて選択的に電位を設定することができるので、従来のようにノード電位のシフトは発生せず、スイッチング電源装置および電源ドライバ回路ならびにモジュールの出力電流に対し、検出電流の精度と応答速度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
(1)電源ドライバのスイッチングによる電圧不確定状態の影響を抑制することにより、出力電流に対しての電流検出の応答速度を向上させるとともに、電流検出のタイミングによらず電流検出精度を高くすることができる。
【0019】
(2)上記(1)により、高精度の電流制御が可能なスイッチング電源装置およびそれに好適な電源ドライバ回路ならびにモジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図、図2は、図1のスイッチングレギュレータに設けられたオペアンプの一例を示す回路図、図3は、図1のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0022】
本実施の形態1において、スイッチングレギュレータ(電源ドライバ回路)は、降圧型スイッチングレギュレータよりなり、図1に示すように、電源ドライバモジュール100、コントローラ200、コイルL0、平滑容量C0、抵抗R1,R2、センス用抵抗(電流検出用抵抗)Rsなどから構成されている。
【0023】
コイルL0は、モジュール100の出力端子OUTと負荷との間に接続されるインダクタである。平滑容量C0は、コイルL0の負荷側のノードn1と接地点との間に接続され、出力電圧Voutを安定化させる。
【0024】
抵抗R1,R2は、平滑容量C0と接地点(基準電位:GND)との間に直列接続され、出力電圧検出用の抵抗である。
【0025】
センス用抵抗Rsは、電流検出用抵抗であり、後述するトランジスタ(電流検出用素子)Qsと直列接続される。コントローラ(PWM制御回路)200は、抵抗R1,R2の接続ノードn2の電位VFBに基づいてPWM制御パルスPWMを生成してドライバIC110へ供給する。
【0026】
ドライバモジュール100は、ドライバIC110、ハイ側パワーIC130、およびロー側パワーIC140からなる。
【0027】
ハイ側パワーIC130は、トランジスタ(パワー半導体素子)Q1からなる。トランジスタQ1は、ハイ側のトランジスタであり、たとえば、パワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタよりなる。
【0028】
ロー側パワーIC140は、トランジスタ(パワー半導体素子)Q2、センス用トランジスタQsからなる。トランジスタQ2は、ロー側のトランジスタであり、パワーMOSトランジスタよりなる。トランジスタQ1,Q2は、電池などの直流電源から供給される直流電圧Vinが入力される電圧入力端子P0と接地点との間に直列接続されている。
【0029】
ドライバIC100は、ゲート駆動回路111、ゲート駆動回路112、コントロールロジック120、反転回路(電流検出回路)NOT、ダイオード(電流検出回路)D3、オペアンプ(演算増幅回路、電流検出回路)OP1、ならびにバイアス用MOSトランジスタ(電流検出回路)Q3から構成されている。このドライバIC110は、トランジスタQ1,Q2のゲート端子を駆動する。
【0030】
ゲート駆動回路111は、トランジスタQ1のゲート駆動電圧を生成する。ゲート駆動回路112は、トランジスタQ2のゲート駆動電圧を生成する。コントロールロジック120は、コントローラ200からのPWM制御パルスPWMに基づいてトランジスタQ1とトランジスタQ2とが同時にオン状態になって貫通電流が流れないようにデッドタイムを有し、かつ相補的にオン・オフされるように、ゲート駆動回路111,112の入力信号を生成する。
【0031】
センス用トランジスタQsは、電流検出用MOSトランジスタであり、トランジスタQ2と並列接続され、該トランジスタQ2のゲート駆動電圧と同一の電圧がゲート端子に印加される。トランジスタQ3は、バイアス用のMOSトランジスタであり、センス抵抗Rsの他端と電源電圧VDDとの間に接続されている。
【0032】
オペアンプOP1の反転(−)入力端子には、センス用トランジスタQsとセンス用抵抗Rsとの接続ノードn3に接続されている。そして、オペアンプOP1は、センス用抵抗Rsの両端子の電圧がコントローラ200内の差動アンプAMPに入力され、センス用抵抗Rsの端子間電圧を検出する。
【0033】
また、オペアンプOP1の非反転(+)入力端子は接地点に接続され、このオペアンプOP1の出力がトランジスタQ3のゲート端子に印加されている。ノードn3は、ダイオードD3によってクランプされている。
【0034】
また、図1において、電流源ILとして示されているのは、本実施の形態のスイッチングレギュレータからの電流の供給を受けて動作するCPUなどの負荷としての半導体集積回路である。
【0035】
ドライバIC110には、電源電圧VCCを印加するための外部電源端子P1が設けられており、この外部電源端子P1とトランジスタQ1のゲート駆動電圧を生成するゲート駆動回路111との電源端子との間には、ダイオードD1が接続されているとともに、該ダイオードD1のカソード端子(ゲート駆動回路111の電源端子)に接続された外部電源端子P2が設けられており、該外部端子P2とモジュールの出力端子OUTとの間に容量素子C1が接続されることによりダイオードD1と容量素子C1がゲート駆動回路111の電源電圧を昇圧するブートストラップ回路を構成するようにされている。
【0036】
ドライバIC110内のコントロールロジック120では、コントローラ200から供給されるPWM制御パルスPWMに基づいて、ゲート駆動回路111とゲート駆動回路112とにそれぞれ入力されるゲート制御信号が生成される。
【0037】
このとき、ゲート制御信号の遅延時間のばらつきなどでハイレベルの期間が重なるとトランジスタQ1,Q2に貫通電流が流れてしまう。これを回避するためコントロールロジック120では、トランジスタQ1、Q2のゲート駆動信号のハイレベルの期間が重ならないように、ゲート駆動回路111とゲート駆動回路112とにそれぞれ入力されるゲート制御信号が形成される。
【0038】
これらゲート駆動回路111,112により、トランジスタQ1とトランジスタQ2とが入力PWM制御パルスPWMのパルス幅に応じて相補的にオン、オフ動作してコイルL0に電流が流され、PWM制御パルスのデューティ比に応じた電圧Voutが出力される。
【0039】
前述したように、オペアンプOP1を接続したことにより、センス用トランジスタQsのソース端子の電位が、トランジスタQ2のソース端子に印加されている電位(ここでは接地電位GND)と同一の電位にされる。
【0040】
トランジスタQ2、およびセンス用トランジスタQsは、前述したように1つのICによって構成されており、同一の半導体チップ上に同一のプロセスにて素子サイズ(ゲート幅)が所定の比(N:1)となるように形成されるとともに、センス用トランジスタQsのゲート端子にはトランジスタQ2のゲート駆動電圧と同一の電圧が印加されている。
【0041】
その結果、トランジスタQ2とセンス用トランジスタQsとのゲートバイアス状態が同一になり、センス用トランジスタQsには、トランジスタQ2のドレイン電流Imを1/Nに正確に比例縮小したドレイン電流Is(=Im/N)が流れるようになり、精度の高い検出が可能となる。
【0042】
ここで、センス用抵抗Rsの端子間電圧を電圧Vsnsとすると、電圧VsnsはトランジスタQ2のドレイン電流Imと、トランジスタQ2とセンス用トランジスタQsとのサイズ比N、センス抵抗Rsの抵抗値rsを用いて次式
Vsns=Is×rs=(Im/N)×rs
のように、表わすことができる。
【0043】
図2は、図1のオペアンプOP1の内部構成を示した回路図である。
【0044】
オペアンプOP1は、トランジスタQ4〜Q11、電圧抑制部LV、および抵抗R3,R4から構成されている。電圧抑制部LVは、スイッチ用トランジスタ(第1のスイッチ)Qsc、およびダイオード(電圧降下素子)D2から構成されている。
【0045】
オペアンプOP1は、該オペアンプOP1の出力端子OPOUTと接地点GND間にアンプ出力MOSトランジスタQ4を配置してあり、該トランジスタQ4のゲート端子と接地点間に直列にダイオードD2とスイッチ用トランジスタQscが設けられている。
【0046】
また、スイッチ用トランジスタQscのゲートとトランジスタQ2のゲート間には、反転回路NOTが設けられており、トランジスタQ2のゲート電圧とスイッチ用トランジスタQscのゲート電圧Vscは逆相になっている。
【0047】
このゲート電圧Vscは、トランジスタQ2駆動電圧波形と同形の波形ならば同様の効果を得る。たとえば、コントロールロジック120内や、ゲート駆動回路111,112内のノードと接続することも可能である。
【0048】
図3は、スイッチングレギュレータにおける各部の信号波形を示すタイミングチャートである。
【0049】
トランジスタQ2に流れる電流Imの形状に対し、オペアンプOP1のダイオードD2、スイッチ用トランジスタQscが設けられていない一般的なオペアンプを用いた場合、検出電圧Vsns’のように立ち上がりがなまり、応答が遅くなる。
【0050】
その理由としてはまず、トランジスタQ1がオンの期間は、トランジスタQ2はオフとなっており、オペアンプOP1の反転入力端子n3において、その電位が不確定な状態となり電圧が発生する。
【0051】
次に、その電圧によりトランジスタQ9、およびトランジスタQ11に流れる電流が減少し、減少した分の電流がトランジスタQ8,Q10へ流れ込む。よって、アンプ出力用MOSであるトランジスタQ4のゲート電圧Vagが跳ね上がるので、出力電流に対し検出電流の反応が遅れてしまうためである。
【0052】
この問題を回避するために、上記のようにダイオードD2とスイッチ用トランジスタQscを設けることにより、ノードn3の電位が不確定になるタイミング、即ちトランジスタQ1がオンしているタイミングで、トランジスタQ10と並列にダイオードD2を配置することで、トランジスタQ4のゲート電圧VagをトランジスタQ2がオン状態時と同じ電位に保つことで、トランジスタQ4のゲート電圧Vagに発生する電圧を抑制することができ、トランジスタQ4のゲート電圧はVag’のようになる。
【0053】
それにより、本実施の形態1によれば、トランジスタQ4のゲート電圧Vagに発生する電圧を所望のタイミングで抑制することが可能となり、トランジスタQ2に流れる電流Imの形状に対し、検出電圧Vsnsは立ち上がりがなまることなく早いタイミングでの検出が可能となり、時間的にも検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、電圧を抑制するために用いたダイオードD2は、適当な値を持つ抵抗やトランジスタなどを用いることも可能である。
【0055】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図、図5は、図4のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0056】
本実施の形態2において、図4は、本発明に係る電源ドライバ回路を内蔵した電源ドライバモジュールとそれを適用した降圧型スイッチング・レギュレータの他の例を示す回路図を、図5は、そのタイミングチャートを示したものである。
【0057】
本実施の形態2は、前記実施の形態1の図1におけるトランジスタQ2のゲートとオペアンプOP1間に反転回路NOTを配置し、ダイオードD2のスイッチにゲート電圧Vscとして入力していた回路を、トランジスタQ1のゲートとオペアンプOP1間にレベルシフト回路LSを配置し、スイッチ用トランジスタQscのゲートに入力する構成となっている。
【0058】
トランジスタQ1のゲート電圧とトランジスタQ2のゲート電圧は交互にスイッチングするが、それぞれが同時にオン状態になることを回避するため、オン状態がスイッチングするときにハイ側、ロー側共にオフ状態のデッドタイムを設定してある。
【0059】
そのため、トランジスタQ2のゲート電圧の反転信号波形をゲート電圧VscとするよりもトランジスタQ1のゲート信号波形をレベルシフトし、たとえば、0Vと5Vのように信号を変換することで、トランジスタQ2のゲート電圧の反転信号波形とするよりも、オン期間の短い信号を電圧抑制回路のスイッチ信号として入力することができる。
【0060】
それにより、本実施の形態2では、前記実施の形態1より電圧を抑制する期間が短くなる効果があり、不確定になる電圧が小さい場合、または電圧が発生する期間の短い場合などに有効である。
【0061】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図、図7は、図6のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0062】
本実施の形態3において、降圧型のスイッチングレギュレータは、前記実施の形態1の図1におけるトランジスタQ2のゲートとオペアンプOP1間に配置してある反転回路NOTと直列にディレイ回路(タイミング設定手段)DLを配置した構成となっている。なお、当然この場合は反転回路NOTとディレイ回路DLとの順序は問わない。
【0063】
この構成によって、図7に示すように、スイッチ用トランジスタQscのゲート電圧Vscを任意のタイミングに設定することができる。そのため、ゲート電圧Vagに発生する電圧のタイミングがトランジスタQ1のゲート電圧などに同期していない場合であっても所望のタイミングでクランプ動作をされることが可能となる。
【0064】
それにより、本実施の形態3においては、いかなるタイミングで不確定電位が発生した場合においても前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図、図9は、図8のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0066】
本実施の形態4において、降圧型のスイッチングレギュレータは、前記実施の形態1の図1におけるトランジスタQ2のゲートとオペアンプOP1間に配置してある反転回路NOTの代わりにワンショットマルチバイブレータ(信号幅設定手段)OSMにした構成となっている。
【0067】
この構成によって、図9に示すように、スイッチ用トランジスタQscのゲート電圧を任意の幅に設定することができる。そのため、ゲート電圧Vagに発生する電圧の跳ね上がりのタイミングがトランジスタQ1のゲート電圧と幅が異なっている場合においても、所望の時間幅での電圧抑制することが可能となる。
【0068】
それにより、本実施の形態4によれば、不確定電位が発生する期間によらず前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【0070】
本実施の形態5においては、降圧型のスイッチングレギュレータが、前記実施の形態1の図2における電圧抑制回路(ダイオードD2、スイッチ用トランジスタQsc)の代わりに、図1のオペアンプOP1の反転入力端子と接地電位間にスイッチ用トランジスタ(第2のスイッチ)Qsgを設けて、そのゲートをスイッチ用電圧Vscで駆動するように構成されたものである。
【0071】
この場合、スイッチ用トランジスタQsgを設けることによって、トランジスタQ2がオンの期間にトランジスタQ1がオン時、即ちトランジスタQ2がオフ時に不確定となる電位の発生を防止することができる。
【0072】
よって、前記実施の形態1〜4より整定時間は短くなり、電流検出精度をより向上させることができる。
【0073】
また、本実施の形態5では、スイッチ用トランジスタQsgのゲート幅サイズを大きくすることにより、さらに整定時間を早くすることができる。この方法は、スイッチ用トランジスタQsgに検出電流が流れるため、その電圧降下に反比例して整定時間は短くなる傾向にある。
【0074】
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【0075】
本実施の形態6では、降圧型のスイッチングレギュレータが、前記実施の形態5の図10におけるスイッチ用トランジスタQsgのドレインとセンス用トランジスタQsのソースとの間にスイッチ用トランジスタ(第3のスイッチ)Qs1を設け、該スイッチ用トランジスタQs1のゲートとトランジスタQ2,Qsのゲートをそれぞれ接続し、また、トランジスタQ2,Qsのゲートからスイッチ用トランジスタQsgのゲートに反転回路NOTを挿入し、ノードn3と接地電位間に抵抗(放電用抵抗)Rs1を配置した構成となっている。なお、特に規制されるものではないが、抵抗Rs1は100Ω以上の抵抗値を用いることが望ましい。
【0076】
ここでは、トランジスタQ1がオン時、即ちトランジスタQ2がオフ時にオペアンプOP1の反転入力端子は接地電位となり不確定となる電位が発生せず、そのときの検出電流は抵抗Rs1を流れるため、この検出電流がオペアンプOP1の反転入力端子に影響しないことにより、これまでの実施の形態1〜5より極小の整定時間と電流検出精度を得るいことができる。
【0077】
また、本実施の形態6では、スイッチ用トランジスタQs1と抵抗Rs1を配置したことにより、トランジスタQ2,Qsがオフ時に流れる電流を抵抗Rs1に流すことで、よりスイッチングによる影響を抑えることが可能となり、検出精度、応答性共に良くすることができる。
【0078】
(実施の形態7)
図12は、本発明の実施の形態7によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【0079】
本実施の形態7は、降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、前記実施の形態6の図11における抵抗Rs1をMOSトランジスタQrによって構成した際の一例を示したものである。
【0080】
ここでは、前記実施の形態6の同様に動作し、スイッチングによる影響を抑え、検出精度、応答性共によくすることができる。このように抵抗は、MOSトランジスタ以外に、MOS−FET(Field Effect Transistor)やダイオードなどほかの素子に変更しても同様の効果を得ることができる。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0082】
たとえば、前記実施の形態1〜7に示した構成を組み合わせて用いることも可能であり、自由にスイッチの制御波形を変えることも、電圧を制御するノードを変えることも、電圧のレベルを変えることもできる。
【0083】
また、前記実施の形態1〜7では、電源ドライバモジュールにおいて、トランジスタQ1,Q2(図1)やセンス用トランジスタQs(図1)としてMOSFETを使用したものを示したが、これらのトランジスタもバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などで構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の電源ドライバ回路は、たとえば、PWM(パルス幅変調)方式でスイッチング制御して入力電圧を変換して出力電圧を得るスイッチング電源装置のパワートランジスタを駆動する電源ドライバ回路およびそれを内蔵したドライバモジュール、ならびにそのモジュールを使用したスイッチング電源などに適している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図2】図1のスイッチングレギュレータに設けられたオペアンプの一例を示す回路図である。
【図3】図1のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図5】図4のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の形態3によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図7】図6のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の形態4によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図9】図8のスイッチングレギュレータの各部信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施の形態5によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態6によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【図12】本発明の実施の形態7によるスイッチングレギュレータの一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0086】
100 電源ドライバモジュール
110 ドライバIC
111,112 ゲート駆動回路
120 コントロールロジック
130 ハイ側パワーIC
140 ロー側パワーIC
200 コントローラ
L0 コイル
C0 平滑容量
R1,R2 抵抗
R3,R4 抵抗
Rs1 抵抗(放電用抵抗)
Rs センス用抵抗(電流検出用抵抗)
Qs トランジスタ(電流検出用素子)
Q1 トランジスタ(パワー半導体素子)
Q2 トランジスタ(パワー半導体素子)
Q3 トランジスタ(電流検出回路)
Q4〜Q11 トランジスタ
Qsc スイッチ用トランジスタ(第1のスイッチ)
Qsg スイッチ用トランジスタ(第2のスイッチ)
Qs1 スイッチ用トランジスタ(第3のスイッチ)
Qr トランジスタ
NOT 反転回路(電流検出回路)
D2 ダイオード(電圧降下素子)
D3 ダイオード(電流検出回路)
OP1 オペアンプ(演算増幅回路、電流検出回路)
AMP 差動アンプ
LV 電圧抑制部
LS レベルシフト回路
DL ディレイ回路(タイミング設定手段)
OSM ワンショットマルチバイブレータ(信号幅設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタに電流を流すパワー半導体素子をPWM方式でスイッチング制御して入力電圧を変換した電圧を出力するスイッチング電源装置を構成する電源ドライバ回路であって、
前記パワー半導体素子とドレイン端子同士またはコレクタ端子同士が結合され、同一の駆動電圧が制御端子に印加される電流検出用半導体素子と、
前記電流検出用半導体素子のソース端子またはエミッタ端子に接続された電流検出用抵抗と、
前記電流検出用抵抗と前記電流検出用半導体素子との接続ノードである第1のノードに第1の入力端子が接続され、第2の入力端子に前記パワー半導体素子のソース電圧またはエミッタ電圧と同一電位の電圧が印加された演算増幅回路と、
前記演算増幅回路の一対の入力端子が同一電位となるようにフィードバックループが形成され、前記電流検出用抵抗で生じる信号を電流検出信号として出力させる電流検出回路とを有するドライバ回路において、
スイッチングの状態によらず前記電流検出回路内の電流が流れるルートを確保することにより、不確定な電位を確定させることを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項2】
請求項1記載の電源ドライバ回路において、
前記パワー半導体素子は、
第1と第2の電源電圧端子間に直列形態に接続された2つのパワー半導体素子からなり、
前記電流検出用半導体素子は、
前記2つのパワー半導体素子のうち、低電位側の電源電圧端子に接続されたパワー半導体素子とドレイン端子同士またはコレクタ端子同士が結合されていることを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の電源ドライバ回路において、
前記電流検出回路は、
電圧降下素子と、駆動制御信号に基づいて動作する第1のスイッチとを備え、
前記電圧降下素子、ならびに前記第1のスイッチは、
前記演算増幅器の出力ノードと接地電位との間に接続された半導体素子のゲート端子、またはベース端子と接地電位との間に直列接続された構成よりなることを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項4】
請求項1または2記載の電源ドライバ回路において、
前記演算増幅器の一方の入力端子と接地電位との間に接続され、駆動制御信号に基づいて動作する第2のスイッチを備え、
前記第2のスイッチは、
前記演算増幅器の一方の入力端子の電位が、前記パワー半導体素子がスイッチング状態となることによって不確定になる第一の状態において、電位が確定している第二の状態のノード電位を保つことを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
前記演算増幅器の一方の入力端子と、前記電流検出用半導体素子のソース端子またはエミッタ端子と前記電流検出用抵抗の一方の端子が接続されているノードとの間に接続され、駆動制御信号に基づいて動作する第3のスイッチを備え、
前記第3のスイッチは、
前記パワー半導体素子がスイッチング状態の際に、前記演算増幅器の一方の入力端子を接地電位にすることを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項6】
請求項4記載の電源ドライバ回路において、
前記演算増幅器の一方の入力端子と、前記電流検出用半導体素子のソース端子またはエミッタ端子との間に接続され、駆動制御信号に基づいて動作する第3のスイッチを備え、
前記パワー半導体素子がスイッチング状態の際に、前記演算増幅器の一方の入力端子を接地電位にすることを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
前記電流検出用半導体素子のソース端子またはエミッタ端子と前記電流検出用抵抗の一方の端子とが接続されているノードと、接地電位との間に接続され、第一の状態時に発生する電流を放電させる放電用抵抗を備えたことを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
低電位側の電源電圧端子に接続された前記パワー半導体素子のゲート駆動電圧またはベース駆動電圧の信号を反転して駆動制御信号を生成する反転回路を備えたことを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
高電位側の電源電圧回路に接続されたパワー半導体素子のゲート駆動電圧またはベース駆動電圧の信号をレベルシフトして駆動制御信号を生成することを特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
前記第1〜第3のスイッチの駆動制御信号の電圧を任意のタイミングに設定するタイミング設定手段を備えたこと特徴とする電源ドライバ回路。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の電源ドライバ回路において、
前記第1〜第3のスイッチの駆動制御信号の時間幅を任意の時間に設定する信号幅設定手段を備えたこと特徴とする電源ドライバ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−158067(P2006−158067A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344037(P2004−344037)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】