説明

電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法

【課題】ケースの組み立て作業をケーブルの噛み込みなく能率よく行えるようにする。
【解決手段】一面を開口したケース本体20Aと、ケース本体20Aの開口面の少なくとも一部を閉塞するための第一カバープレート20Bと、ケース本体20Aに収納される、複数の電池セル(1)を積層してなる電池ブロック3と、電池ブロック3と電気的に接続された高電圧ケーブル50と、を備える電源装置であって、ケース本体20A内部に、第一カバープレート20B装着時に高電圧ケーブル50を一時的に待避させるための待避空間53と、第一カバープレート20Bをケース本体20Aに固定後、高電圧ケーブル50を保持する固定空間とを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法に関し、とくに電池セルを収納するケースの閉塞構造を改良した電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータで走行する電気自動車、あるいはモータとエンジンの両方で走行するハイブリッドカー等の自動車は、電池セルをケースに収納している電源装置を搭載している。この電源装置は、モータで自動車を走行させるための出力を得るために、多数の電池セルを直列に接続して出力電圧を高くした電池ブロックとしている。電池ブロックは、ケースに収納することで、電池セルを外部の衝撃から保護し、また防塵、防水を図っている。一般にケースは、上ケースと下ケース等、複数に分割されており、例えば下ケースに電池ブロックや制御手段、ダクト等の必要な部材を収納した状態で、上ケースを閉塞する。
【0003】
一方、ケース内部には、電源線や信号線等、多くの、ケーブルが存在する。ケーブルは一般に可撓性を有し、ケース内部で自由に折曲できるため、下ケースの開口部を上ケースで閉載する際には、ケース同士の接触界面にこれらのケーブルを噛み込むと、固定が阻害される上、ケーブルを破損する可能性があるため、組み立て作業時にはケーブルがケースと干渉しないように注意する必要がある。特にケース内でのケーブルの引き回しの関係上、ケースの側壁近傍にケーブルが集まるような配置となることが多くなる。加えて、図30に示すように、上ケース121をさらに第一上ケース121A、第二上ケース121Bに二分割するような構成においては、上ケースから下側に壁面やリブが突出することがあり、このエッジ部分にケーブル123が噛み込む虞があった。あるいは上ケースがケーブルが接触しないように、ケースの一部に切り欠きを設ける構成も考えられるが、この場合は切り欠き部分のエッジがケーブルに接触して破損することも起こり得る。あるいはまた、ケーブルが組み立て時に噛み込まない位置に保持されるよう、予めケーブルの固定構造を設けておくことも考えられるが、この場合はケーブルを迂回させる必要が生じて配線長が長くなり、最短距離で配線できないという問題がある。特に、電池ブロックの出力を外部に取り出す高電圧ケーブルは、ケーブルが長い程ジュール熱によるオーミック損失も大きくなる上、ケーブルが長くなるほど断線やショートの可能性も高くなる。
【0004】
このため従来は、作業者の1人がケーブルを噛み込まないように支えた状態で、別の作業者が上ケースを閉塞することが行われており、ケースの組み立て作業に複数人が必要となり、作業効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−48515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものであり、主な目的は、ケースの組み立て作業を能率よく行えるようにした電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、一面を開口したケース本体20Aと、前記ケース本体20Aの開口面の少なくとも一部を閉塞するための第一カバープレート20Bと、前記ケース本体20Aに収納される、複数の電池セル1を積層してなる電池ブロック3と、前記電池ブロック3と電気的に接続された高電圧ケーブル50と、を備える電源装置であって、前記ケース本体20A内部に、前記第一カバープレート20B装着時に前記高電圧ケーブル50を一時的に待避させるための待避空間53と、前記第一カバープレート20Bを前記ケース本体20Aに固定後、前記高電圧ケーブル50を保持する固定空間と、を構成することができる。これにより、第一カバープレートの装着時には、高電圧ケーブルを待避空間に案内して一時的に保持し、第一カバープレートが高電圧ケーブルを噛み込まないように、ケース本体に第一カバープレート接合することができ、組み立て作業の能率が改善される。また第一カバープレートの装着後には、高電圧ケーブルを堰止壁から外して取り回すことも可能となり、さらに組み立て作業の利便性が向上する。
【0008】
また第2の側面に係る電源装置によれば、前記待避空間53が、前記ケース本体20A内に設けられた、前記第一カバープレート20Bによる開口面の閉塞を阻害しない位置で前記高電圧ケーブル50を一時的に保持するための第一堰止壁52により形成することができる。これにより、第一カバープレートの装着時には、高電圧ケーブルを第一堰止壁で一時的に保持して、第一カバープレートが高電圧ケーブルを噛み込まないように第一カバープレートをケース本体に接合することができ、組み立て作業の能率が改善される。また第一カバープレートの装着後には、高電圧ケーブルを第一堰止壁から外して取り回すことも可能となり、さらに組み立て作業の利便性が向上する。
【0009】
さらに第3の側面に係る電源装置によれば、さらに前記ケース本体20Aと第一カバープレート20Bの両端面を閉塞する一対の端面プレート30を備え、前記電池ブロック3の端面と前記端面プレート30との間に、前記高電圧ケーブル50を案内するための案内路58を形成してなり、前記案内路58から、前記待避空間53及び固定空間に分岐させることができる。これにより、案内路に案内された高電圧ケーブルを、第一カバープレート閉塞時には待避空間に一時的に保持し、第一カバープレートの固定後は固定空間に移動させて配線することができ、案内路の先の高電圧ケーブルの位置変更が容易に行える。
【0010】
さらにまた第4の側面に係る電源装置によれば、前記電池ブロック3は、前記複数の電池セル1の、少なくともいずれかの電圧を検出する電圧検出手段42と、前記複数の電池セル1の、少なくともいずれかの温度を検出する温度検出手段と、を備え、さらに電源装置は、前記電圧検出手段42及び前記温度検出手段と接続されて、前記電池セル1の電圧及び温度を監視する制御手段70と、前記電圧検出手段42と制御手段70とを電気的に接続する電圧検出ケーブル68と、前記温度検出手段と制御手段70とを電気的に接続する温度ケーブルと、前記電圧検出ケーブル68と温度ケーブルとを保持するための第二堰止壁57と、を備えることができる。これにより、高電圧ケーブルに加え、電圧検出ケーブルや温度ケーブルも第二堰止壁で保持でき、これらのケーブル類により第一カバープレートの装着が阻害される事態を回避できる。
【0011】
さらにまた第5の側面に係る電源装置によれば、さらに前記電池ブロック3の上面で、前記端面プレート30と対向して固定される第一ハーネスダクト51を備え、前記第一ハーネスダクト51は、前記端面プレート30との間で前記案内路58を構成するため、前記端面プレート30と対向する側面側に開口して前記高電圧ケーブル50を保持する第一案内溝54を設けることができる。これにより、第一ハーネスダクトと端面プレートの間に高電圧ケーブルを案内して隔離できる。
【0012】
さらにまた第6の側面に係る電源装置によれば、前記電池ブロック3は、前記複数の電池セル1を積層した端面にエンドプレート10を固定してなり、前記第一ハーネスダクト51を、前記エンドプレート10に固定することができる。これにより、第一ハーネスダクトを電池ブロックに固定する構成を簡素化できる。
【0013】
さらにまた第7の側面に係る電源装置によれば、前記第一ハーネスダクト51は、前記第一案内溝54を設けた側と反対側の面に、前記電圧検出ケーブル及び温度ケーブルを保持する第二案内溝55を設けることができる。これにより、第一ハーネスダクトの両面でそれぞれ高電圧ケーブルと電圧検出ケーブル、温度ケーブルを保持でき、異なるケーブルが絡み合ったりショートする事態を回避できる。
【0014】
さらにまた第8の側面に係る電源装置によれば、さらに前記電池ブロック3の上面であって、前記第一ハーネスダクト51と交差する姿勢に固定される第二ハーネスダクト64を備え、前記第二ハーネスダクト64は、前記固定空間として、高電圧ケーブル50を案内する第三案内溝66を設けており、前記第一ハーネスダクト51の第一案内溝54及び前記第二ハーネスダクト64の第三案内溝66で、前記高電圧ケーブル50を連続的に案内するように構成することができる。これにより、高電圧ケーブルを安定的に所定位置に保持することができ、高電圧ケーブルが組み立て時や使用時の振動によってケース内部でフリーとなって暴れる事態を回避できる。
【0015】
さらにまた、第9の側面に係る車両によれば、上記いずれかの電源装置を備えることができる。
【0016】
さらにまた第10の側面に係る電源装置の組み立て方法によれば、一面を開口したケース本体20Aの内部に、複数の電池セル1を積層した電池ブロック3を挿入して固定し、前記電池ブロック3と電気的に接続された高電圧ケーブル50を、前記ケース本体20A内部に設けられた、前記高電圧ケーブル50を一時的に保持するための第一堰止壁52に引っ掛ける工程と、第一カバープレート20Bで、前記ケース本体20Aの開口面の少なくとも一部を閉塞する工程と、前記高電圧ケーブル50を前記第一堰止壁52から外して、配線を行う工程と、を含むことができる。これにより、第一カバープレートの装着時には、高電圧ケーブルを第一堰止壁で一時的に保持して、第一カバープレートが高電圧ケーブルを噛み込まないようにケース本体に接合することができ、組み立て作業の能率が改善される。また第一カバープレートの装着後には、必要に応じて高電圧ケーブルを第一堰止壁から外して取り回すことも可能となり、さらに組み立て作業の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る電源装置を示す斜視図である。
【図2】図1の状態から第二カバープレートを外した状態を示す分解斜視図である。
【図3】図2の状態から第二ハーネスダクトカバーを外した状態を示す分解斜視図である。
【図4】図3の状態から第一カバープレートを外した状態を示す分解斜視図である。
【図5】図4の状態からさらに前後の端面プレートを外した状態を示す分解斜視図である。
【図6】電源装置の模式断面図である。
【図7】図5のハーネスダクトの部分を示す拡大図である。
【図8】図7から高電圧ケーブルを外した状態を示す分解斜視図である。
【図9】ハーネスダクトを示す斜視図である。
【図10】図9のハーネスダクトを背面側から見た斜視図である。
【図11】端面プレートを示す斜視図である。
【図12】図11の端面プレートを背面側から見た斜視図である。
【図13】図4の電源装置を後方側から見た斜視図である。
【図14】図13からケーブル類を外した状態を示す斜視図である。
【図15】図13の電源装置を右斜め方向から見た斜視図である。
【図16】図15からケーブル類を外した状態を示す斜視図である。
【図17】図13の電源装置を左斜め方向から見た斜視図である。
【図18】図17からケーブル類を外した状態を示す斜視図である。
【図19】図17にカバープレートを装着した状態を示す斜視図である。
【図20】図19からケーブル類を外した状態を示す斜視図である。
【図21】図19にさらに第二ハーネスダクトを装着した状態を示す斜視図である。
【図22】図21からケーブル類を外した状態を示す斜視図である。
【図23】電池セルとセパレータの積層構造を示す分解斜視図である。
【図24】電池ブロックと高電圧ケーブルの配置関係を示す模式平面図である。
【図25】電池ブロックの分解斜視図である。
【図26】図3のケース本体を右側側面から見た斜視図である。
【図27】図26から第一カバープレートを外した状態を示す斜視図である。
【図28】エンジンとモータの走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図29】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図30】二分割した上ケースを下ケースに固定する状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0019】
図1〜図27に基づいて、一実施の形態に係る電源装置として、車載用の電源装置に適用した例を説明する。これらの図において、図1は電源装置の斜視図、図2は図1の状態から第二カバープレートを外した状態を示す分解斜視図、図3は図2の状態から第二ハーネスダクトカバーを外した状態の分解斜視図、図4は図3の状態から第一カバープレートを外した状態を示す分解斜視図、図5は図4の状態からさらに前後の端面プレートを外した状態を示す分解斜視図、図6は電源装置の模式断面図、図7は図5のハーネスダクトの部分を示す拡大図、図8は図7から高電圧ケーブルを外した状態の分解斜視図、図9はハーネスダクトの斜視図、図10は図9を背面側から見たハーネスダクトの斜視図、図11は端面プレートの斜視図、図12は図11の背面側から見た端面プレートの斜視図、図13は図4の電源装置を後方側から見た斜視図、図14は図13からケーブル類を外した斜視図、図15は図13の電源装置を右斜め方向から見た斜視図、図16は図15からケーブル類を外した斜視図、図17は図13の電源装置を左斜め方向から見た斜視図、図18は図17からケーブル類を外した斜視図、図19は図17にカバープレートを装着した状態の斜視図、図20は図19からケーブル類を外した斜視図、図21は図19にさらに第二ハーネスダクトを装着した状態の斜視図、図22は図21からケーブル類を外した斜視図、図23は電池セルとセパレータの積層構造を示す分解斜視図、図24は電池ブロックと高電圧ケーブルの配置関係を示す模式平面図、図25は電池ブロックの分解斜視図、図26は図3のケース本体を右側側面から見た斜視図、図27は図26から第一カバープレートを外した状態を示す斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置は、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーや、モータのみで走行する電気自動車等の電動車両の電源に最適である。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッドカーや電気自動車以外の車両に使用し、また電動車両以外の大出力が要求される用途にも使用できる。さらにケースは、電源装置以外にも、電子回路を収納する制御装置等、内部にケーブル類を含む部材を収納するケーシングとして好適に利用できる。
【0020】
図1〜図5の電源装置のケース20は、上方を開口しているケース本体20Aと、このケース本体20Aの開口部の内、左側を閉塞する第一カバープレート20Bと、右側を閉塞する第二カバープレート20Cで構成される。これら第一カバープレート20B及び第二カバープレート20Cは、必要に応じて封止部材40を介して、開口部を水密に閉塞した状態に、固定部材で固定している。第二カバープレート20Cは、図2の斜視図及び図6の断面図に示すように、第一カバープレート20Bの上から固定される。ずなわち、第一カバープレート20Bの一部を先にケース本体20Aに固定した状態で、制御手段70等をセットし、これを第二カバープレート20Cで被覆するように固定される。
【0021】
この構成では、第一カバープレート20Bと第二カバープレート20Cとで上ケースを構成し、下ケースであるケース本体20Aの開口面を閉塞している。このように上ケースを二分割することで、ケース本体20Aと第一カバープレート20Bとを連結して、第一カバープレート20Bがケース本体20Aを上方向に支えることができ、強度的な向上が得られる。また第一カバープレート20Bにより、電池ブロックを空冷する冷却気体の送風路を形成すると共に、冷却気体の封止を兼ねた構造とすることができる。さらに、第一カバープレート20Bで4つの電池ブロック3を被覆することで、電池ブロック側とこれを制御する制御手段70側とを第一カバープレート20Bの金属板で分離することができ、電磁ノイズを低減する効果も期待できる。加えて、保守作業の際、制御手段70などの点検、交換に際して、高圧の電池ブロック側を第一カバープレート20Bで被覆したままとできるため、不意に高電圧の部位に触れる事態を回避でき、安全性の向上にも寄与できる利点が得られる。なお、この構成に限られず、上ケースを1枚で構成したり、あるいは3枚以上に分割することもできる。
【0022】
ケース本体20Aは、上方を開口する箱形として、内部に多数の電池セル1と送風機構9と制御回路を内蔵している。ケース本体20Aは周囲に本体鍔部21Aを設けて、この本体鍔部21Aの上縁をカバープレート20B、20Cの下面に封止部材40を介して防水構造で連結している。これらのケースは、金属板や硬質のプラスチック、とくに繊維で補強したプラスチック製とできる。
(接合面)
【0023】
カバープレート20B、20Cとケース本体20Aは、それぞれ外側に突出するカバー鍔部21B、本体鍔部21Aを有し、このカバー鍔部21Bと本体鍔部21Aを、固定部材であるボルト24とナット25で固定している。本体鍔部21Aとカバー鍔部21Bとを接合界面とし、ケース20の鍔部21とする。このため各鍔部は、ケース20の長手方向に沿ってほぼ平面状に形成している。ただし、若干の段差を設けてもよい。図1及び図2の例では、部分的に段差を設けて水平面の高さを変更している。これにより、例えばケース本体20Aとカバープレート20B、20Cの接合界面で形成されるねじ頭等、様々な凹凸があってもこれを避けるように設計でき、種々の構造のケースに対して柔軟に対応できる。
【0024】
図1及び図2のケース20は、鍔部21を電池ブロック3の側面に配置している。ただ、鍔部は、電池ブロックの上部や下部、あるいはその中間に配置することもできる。このケース20は、電池ブロック3のエンドプレート10をケース本体20Aに止ネジ(図示せず)で固定して、電池ブロック3を固定している。止ネジは、ケース本体20Aを貫通してエンドプレート10のネジ孔(図示せず)にねじ込まれて、電池ブロック3をケース20に固定する。止ネジは、頭部をケース本体20Aから突出させている。さらに、図1及び図2のケース20は、内部に電池ブロック3を固定して、電池ブロック3の外側面とケース20の側壁22の内面との間に送風ダクト5を設けている。
(端面プレート30)
【0025】
さらに、ケース20は、その両端に図11及び図12に示す端面プレート30を連結している。一対の端面プレート30は、ケース本体20Aと第一カバープレート20B及び第二カバープレート20Cの両端面を閉塞する。また端面プレート30は、図7等に示すように、電池ブロック3のエンドプレート10と固定される。このように電池ブロック3の端面に端面プレート30を付加することで、後述する高電圧ケーブル50を案内する案内路58を容易に形成できる。
【0026】
端面プレート30は、電池ブロック3に連結される状態で、供給ダクト6と排出ダクト7からなる送風ダクト5に連結される連結ダクト31を、プラスチック等で一体的に成形して外側に突出するように設けている。この連結ダクト31は、強制送風機構9に連結され、あるいは電源装置から冷却気体を排気する外部排気ダクト(図示せず)に連結される。これらのダクトは、硬質のプラスチックや金属板で製作できる。端面プレート30は、係止構造で電池ブロック3のエンドプレート10に連結している。ただ、端面プレートは、係止構造以外の連結構造で電池ブロックに連結し、あるいは、ケースに固定することもできる。
【0027】
これらの図に示す電源装置は、複数の角形電池からなる電池セル1を冷却隙間4ができる状態で積層している電池ブロック3と、この電池ブロック3の電池セル1に冷却気体を強制送風して冷却する強制送風機構9とを備える。電池ブロック3は、積層している電池セル1の間にセパレータ2を挟着している。このセパレータ2は、図23に示すように、電池セル1との間に冷却隙間4ができる形状としている。さらに、図のセパレータ2は、両面に電池セル1を嵌着構造で連結している。電池セル1に嵌着構造で連結されるセパレータ2を介して、隣接する電池セル1の位置ずれを阻止して積層している。
【0028】
角形電池の電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。図の電池セル1は、所定の厚さを有する四角形で、上面の両端部には正負の電極端子13を突出して設けており、上面の中央部には安全弁の開口部1Aを設けている。積層される電池セル1は、隣接する電極端子13を連結具(図示せず)で連結して、互いに直列に接続される。電源装置は、隣接する電池セル1の正負の電極端子13を積層状態で連結して、互いに直列に接続している。電池セル1は、正負の電極端子13をバスバー(図示せず)で連結して互いに直列に接続することができる。隣接する電池セル1を互いに直列に接続する電源装置は、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただし、電源装置は、隣接する電池 セルを並列に接続することもできる。
(高電圧ケーブル50)
【0029】
また電池ブロック3からの出力は、高電圧ケーブル50を介して高電圧出力端子60と接続される。高電圧ケーブル50は電池ブロック3の出力と電気的に接続される電源出力用の高電圧線である。この例では、高電圧ケーブル50として、正極側の出力を取り出す正極高電圧ケーブル50Aと、負極側の出力を取り出す負極高電圧ケーブル50Bの2本を備える。また図24の平面図に示すように4つの電池ブロック3を直列に接続しており、一対の高電圧ケーブル50A、50Bは、図7及び図8に示すように、電池ブロック3の同じ面側から取り出される。
【0030】
電池セル1は、金属製の外装缶で製作している。この電池セル1は、隣接する電池セル1の外装缶のショートを防止するために絶縁材のセパレータ2を挟着している。電池セルは、外装缶をプラスチック等の絶縁材で製作することもできる。この電池セルは、外装缶を絶縁して積層する必要がないので、セパレータを金属製とすることもできる。
【0031】
セパレータ2は、プラスチック等の絶縁材で製作して、隣接する電池セル1を絶縁している。セパレータ2は、電池セル1を冷却するために、電池セル1との間に、空気等の冷却気体を通過させる冷却隙間4を設けている。図23のセパレータ2は、電池セル1との対向面に、両側縁まで延びる溝2Aを設けて、電池セル1との間に冷却隙間4を設けている。図のセパレータ2は、複数の溝2Aを、互いに平行に所定の間隔で設けている。図23のセパレータ2は、両面に溝2Aを設けており、互いに隣接する電池セル1とセパレータ2との間に冷却隙間4を構成する。この構造は、セパレータ2の両側に形成される冷却隙間4で、両側の電池セル1を効果的に冷却できる特長がある。ただ、セパレータは、片面にのみ溝を設けて、電池セルとセパレータとの間に冷却隙間を設けることもできる。図の冷却隙間4は、電池ブロック3の左右に開口するように水平方向に設けられている。さらに、図23のセパレータ2は、両側に切欠部2Bを設けている。このセパレータ2は、両側に設けた切欠部2Bにおいて、隣接する電池セル1の対向面の間隔を広くして、冷却気体の通過抵抗を少なくできる。このため、冷却気体を切欠部2Bからセパレータ2と電池セル1との間の冷却隙間4にスムーズに送風して、電池セル1を効果的に冷却できる。以上のように、冷却隙間4に強制送風される空気は、電池セル1の外装缶を直接に効率よく冷却する。この構造は、電池セル1の熱暴走を有効に阻止しながら、電池セル1を効率よく冷却できる特長がある。
(エンドプレート10)
【0032】
電池ブロック3は、両端にエンドプレート10を設けて、一対のエンドプレート10を連結材11で連結して、積層している電池セル1とセパレータ2とを挟着する状態に固定している。エンドプレート10は、電池セル1の外形にほぼ等しい外形の四角形としている。連結材11は、図25に示すように、両端を内側に折曲して折曲片11dをエンドプレート10に止ネジ12で固定している。図示しないが、連結材の折曲部分を延長して、エンドプレートを囲むようにして止ネジで固定することもできる。あるいは、エンドプレートの側面に雌ねじ孔を設けて、連結材を貫通する止ネジをねじ込んで固定してもよい。エンドプレートの外側面に固定される連結材は折曲片を設けることなく、直線状としてエンドプレートに固定される。
(温度検出手段)
【0033】
さらに図25に示すように、複数の電池セル1の内幾つかには温度検出手段として温度センサ41が熱結合されており、電池セル1の温度を温度センサ41で検出することにより、電池ブロック3全体の温度を推測する。温度センサ41には熱電対やサーミスタ、PTCやバリスタ等が使用できる。また電源装置は制御手段70を備え、電池ブロック3の温度に基づいて、冷却能力を制御し、あるいは充放電電流を制御する。各温度センサは、温度ケーブル69を介して制御手段70と接続されている。
(電圧検出手段42)
【0034】
加えて、電池ブロック3は電池セル1の電圧を検出する電圧検出手段42を備えている。電圧検出手段42は、すべての電池セルの電圧をモニタする他、代表的な電池セルの電圧を検出するよう構成してもよい。各電圧検出手段42は、電圧検出ケーブル68によって制御手段70と接続されている。
(制御手段70)
【0035】
制御手段70は、電圧検出手段42及び温度検出手段と接続されて、電池セル1の電圧及び温度を監視し、これに応じて電池セルの充放電を制御するコントローラである。
【0036】
図25のエンドプレート10は、外側に補強リブ10Aを一体的に成形して設けて補強している金属製である。金属製のエンドプレート10は十分な強度を有し、止ネジ12の締結トルクにも耐性を有する。さらに、エンドプレート10の外側の表面に、連結材11の折曲片11dを連結する連結孔10aを設けている。図25のエンドプレート10は、外側表面の四隅部に4個の連結孔10aを設けている。連結孔10aは雌ネジ穴である。このエンドプレート10は、連結材11を貫通する止ネジ12を雌ネジ穴にねじ込んで連結材11を固定することができる。
【0037】
以上の電池ブロック3は、図4に示すように、2列に分離して配列されて、2列の電池ブロック3の間と外側に送風ダクト5が設けられる。図の電源装置は、2列の電池ブロック3の間に、各々の冷却隙間4に連結する供給ダクト6を設けている。さらに、2列に分離された電池ブロック3の外側には排出ダクト7を設けており、排出ダクト7と供給ダクト6との間に複数の冷却隙間4を並列に連結している。この電源装置は、図1の矢印で示すように、強制送風機構9でもって供給ダクト6から排出ダクト7に向けて冷却気体を強制送風して電池セル1を冷却する。供給ダクト6から排出ダクト7に強制送風される冷却気体は、供給ダクト6から分岐されて、各々の冷却隙間4に送風されて電池セル1を冷却する。電池セル1を冷却した冷却気体は、排出ダクト7に集合して排気される。
(保持機構)
【0038】
ここで、ケース本体20Aに上ケースを固定する状態を説明するため、図3のケース本体20Aを右側側面から見た斜視図を図26に、図26から第一カバープレート20Bを外した状態を図27に、それぞれ示す。なおこれらの図においては、ケース内部構造の図示を省略している。第一カバープレート20B及び第二カバープレート20Cは、図2〜図6に示すように、組み合わせてケース本体20Aの開口面を閉塞する上ケースを構成する。第一カバープレート20Bは、図4及び図6に示すように、断面をほぼL字状とするよう、水平プレート43と垂直プレート44とで構成される。水平プレート43は、上ケース開口面の左側半分以上を被覆する。垂直プレート44は、図26及び図27に示すように、下方に突出してケース本体20Aの底面に固定される。このため垂直プレート44の先端は、ケース本体20Aと対向して接合するように折曲した、垂直接合面45を設けており、垂直接合面45には固定のためのねじ穴が開口される。
【0039】
一方、第二カバープレート20Cは、第一カバープレート20Bを先にケース本体20Aに固定した状態で、水平プレート43と垂直プレート44の折曲部分近傍で固定される。このため第二カバープレート20Cは、第一カバープレート20Bと重なる第二接合面46にねじ穴を開口している。この第二カバープレート20Cは、第二接合面46で第一カバープレート20Bと、また反対側側面に設けられた鍔部でケース本体20Aと、それぞれ固定される。
【0040】
このような構成において、第一カバープレート20Bをケース本体20Aに固定する際、下方に突出した垂直プレート44先端の垂直接合面45が、高電圧ケーブルを挟むことがある。高電圧ケーブルを挟み込むと固定が阻害され、また高電圧ケーブルを破損する可能性もある。そこで、このような噛み込みを防止するため、第一カバープレート20Bの接合時に高電圧ケーブル50を噛み込みの生じない位置に一時的に保持する保持機構を設ける。保持機構によって高電圧ケーブル50を一時的に保持することで、第一カバープレート20Bの固定時には高電圧ケーブル50が干渉しないように保持できるので、従来のように高電圧ケーブルを押さえる必要がなくなり、作業者が1人でも第一カバープレート20Bの固定作業を行えるようになる。また第一カバープレート20Bの固定後は、高電圧ケーブル50を保持機構から外して配線できるので、高電圧ケーブル50のケーブル長を長くする必要もなくなり、熱損失等の問題も回避できる。
(第一ハーネスダクト51)
【0041】
保持機構を備える第一ハーネスダクト51を図17及び図18に示す。これらの図に示す第一ハーネスダクト51は、保持機構として、高電圧ケーブル50を一時的に保持する第一堰止壁52を設けている。第一堰止壁52は、垂直姿勢に固定された壁状で、この内側、すなわち第一堰止壁52と端面プレート30との間に高電圧ケーブル50を一時的に待避させるための待避空間53を構成する。
(第一堰止壁52)
【0042】
第一ハーネスダクト51の斜視図を、図9及び図10に示す。これらの図に示す第一ハーネスダクト51は、一面に第一案内溝54と、他面に第二案内溝55を設けている。この第一ハーネスダクト51は、垂直姿勢の縦板56から左右に、水平姿勢の水平板を複数突出させ、これらをほぼ平行姿勢に並べることで、各ケーブルを収納する案内溝を構成する。また水平板の内、第一案内溝54の底面を構成する水平板を延長し、その端縁から垂直に折曲して上方に突出させて第一堰止壁52を形成している。第一堰止壁52は、水平板の両側でなく片側(図9の例では手前側、すなわち第二案内溝55を設けた側)に設けているが、両側に設けてもよい。また図9の例では、第一堰止壁52は第一案内溝54の側壁となる縦板56と同一平面でなく、図17に示すように高電圧ケーブル50が遠ざかる側、すなわち図において奥側にシフトさせている。これにより、高電圧ケーブル50を第一カバープレート20Bの垂直プレート44から極力離して、噛み込みを回避できる。
(第二堰止壁57)
【0043】
さらに第一ハーネスダクト51は、後述する電圧検出ケーブル68や温度ケーブル69を保持するための第二堰止壁57を設けている。好ましくは、第二堰止壁57は、第一堰止壁52と異なる高さに設けられる。例えば、第二堰止壁57は、第一堰止壁52を設けた水平板と異なる水平板に設けられる。図9及び図17の例では、第一堰止壁52を相対的に高い位置に、第二堰止壁57を相対的に低い位置に設けることで、高電圧ケーブル50を上に、電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69を下に積層するように配置でき、第一カバープレート20Bから極力離間できる。いいかえると、これらのケーブルを横に並べるといずれかのケーブルが第一カバープレート20B側に近くなって噛み込みの可能性が高くなる事態を回避できる。特にこれらのケーブルは径が太く、可撓性が比較的悪いため、意図通りの姿勢に保持することが容易でない。よってこれらのケーブル類を極力第一カバープレート20Bから離間させた姿勢に保持することで、噛み込みを回避して信頼性高く第一カバープレート20Bの固定や組み立てが実現される。
【0044】
第一ハーネスダクト51は樹脂等の絶縁性部材で構成され、好ましくは第一案内溝54や第二案内溝55、第一堰止壁52、第二堰止壁57を一体的に成型して設ける。この第一ハーネスダクト51は、垂直姿勢で端面プレート30と対向する姿勢に、電池ブロック3の上面に固定される。なお、第一堰止壁、第二堰止壁は第一ハーネスダクトに設ける構成に限られず、他の部材、例えばサイドプレートに設けてもよい。
(第一案内溝54)
【0045】
第一ハーネスダクト51は、図10に示すように、端面プレート30との間で案内路58を構成するため、端面プレート30と対向する側面側に開口して高電圧ケーブル50を保持する第一案内溝54を設けている。これにより、第一ハーネスダクト51と端面プレート30の間に高電圧ケーブル50を案内する案内路58を形成して、高電圧ケーブル50を隔離できる。
(第二案内溝55)
【0046】
また第一ハーネスダクト51の反対側の面には、図9に示すように、電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69を保持する第二案内溝55を設けている。この例では、電圧検出ケーブル68用の案内溝と温度ケーブル69用の案内溝をそれぞれ個別に設けており、各ケーブルを混線なく確実に案内する。このように第一ハーネスダクト51の両面に、異なるケーブル類を保持する案内溝を設けることで、これらのケーブル類の縺れや混線を防ぎ、さらに絶縁や断熱も図られる。また第二案内溝55には、図15等に示すように、溝内に挿入された各ケーブルが抜けないよう、開口部を狭くするように突出させたリブ59を溝の開口端で延長方向に沿って複数箇所に設けている。
(案内路58)
【0047】
この第一ハーネスダクト51は、図7、図8に示すように、エンドプレート10の上面に固定されて、電池ブロック3の上面に配置される。この状態で、図17等に示すように、第一ハーネスダクト51の第一案内溝54と端面プレート30とで案内路58が形成され、ここに高電圧ケーブル50が案内される。
【0048】
さらにこの第一ハーネスダクト51は、図17〜図21に示すように、隔離された案内路58から引き出された高電圧ケーブル50を、待避空間53と固定空間に隔てる第一堰止壁52を設けている。すなわち、第一堰止壁52で案内路58から待避空間53及び固定空間に分岐されている。そして高電圧ケーブル50を、第一カバープレート20B閉塞時には待避空間53に一時的に保持することで高電圧ケーブル50による干渉が回避され、さらに第一カバープレート20Bの固定後は高電圧ケーブル50を固定空間に移動させて配線することができ、案内路58の先の高電圧ケーブル50の位置変更が容易に行える。
(固定空間)
【0049】
固定空間は、高電圧ケーブル50の本来配置するための空間である。具体的には、高電圧ケーブル50の先端を、高電圧出力端子60に接続するよう、ケース内部で適切な姿勢に配置する。この例では図24に示すように、高電圧ケーブル50は高電圧出力端子60を収納する出力端子ボックス61の端子に接続される。出力端子ボックス61は、内部に高電圧出力端子60を収納する筒状である。図21、図22に示すように、第二ハーネスダクト64を用いて高電圧ケーブル50が案内される。
(第二ハーネスダクト64)
【0050】
第二ハーネスダクト64は、垂直板を複数平行に並べた形状としており、図21、図22において右側の溝を高電圧ケーブル50を案内する第三案内溝66としている。第三案内溝66は、固定空間を構成し、第一ハーネスダクト51の第一案内溝54で案内された高電圧ケーブル50を第三案内溝66で受け、図13及び図14に示すように直角方向に折曲して出力端子ボックス61側に案内する。このように第一案内溝54と第三案内溝66で高電圧ケーブル50を連続的に受けることで、これを安定的に所定位置に保持することができ、高電圧ケーブル50が組み立て時や使用時の振動によってケース内部でフリーとなって暴れる事態を回避できる。第三案内溝66も第二案内溝と同様、図21、図22等に示すように、溝内に挿入されたケーブル類が簡単に抜けないように、開口部を狭くするように突出させたリブ67を、溝の開口端で延長方向に沿って複数箇所に設けている。またこの第三案内溝66は、可撓性に劣る高電圧ケーブル50等を無理なく折曲するために、一旦曲率半径を大きくした状態で高電圧ケーブル50等を折曲した後、逆向きに湾曲させてほぼ直交位置に高電圧ケーブル50等を案内している。さらに第二ハーネスダクト64は、図3等に示すように上面を第二ハーネスダクトカバー65で閉塞される。
(第三案内溝66)
【0051】
この第二ハーネスダクト64は、電池ブロック3の上面で水平姿勢に固定される。図24に、高電圧ケーブル50を出力端子ボックス61に引き出す模式平面図を示す。第二ハーネスダクト64は上述の通り、垂直姿勢に固定された第一ハーネスダクト51で案内された高電圧ケーブル50を第三案内溝66で受けて、直角方向に折曲して、水平姿勢に固定された第二ハーネスダクト64の第三案内溝66で出力端子ボックス61に案内される。このように、ケース内部の端縁では第一ハーネスダクト51を縦置きとして、ケースの横幅の拡大を抑え、また高電圧ケーブル50をケース内で横切る領域では第二ハーネスダクト64を横置きとしてケースの厚みが増すことを回避でき、電源装置の小型化に寄与できる。
【0052】
図13〜図16に示すように、高電圧ケーブル50は、端面プレート30に沿って配置され、さらにケースの側面を通って出力端子ボックス61に案内される。高電圧ケーブル50は極力短い距離で、また折曲を少なくして配線することが好ましい。距離が長いとジュール損失がそれだけ大きくなり、また折曲が多いとその部分での破損や劣化の可能性が高くなるからである。このため、ケース内で基本的に壁面に沿うように高電圧ケーブル50を案内している。また折曲部分に第二ハーネスダクト64を配置することで、折曲後の高電圧ケーブル50を両端で、すなわち第二ハーネスダクト64と出力端子ボックス61で安定的に保持して、ケーブルのたるみやあばれを低減できる。なお高電圧ケーブル50は極力最短距離で接続することが好ましいが、図3の例では、他の部材との干渉を避けるために部分的にU字状に折曲して出力端子ボックス61に接続されている。
(電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69)
【0053】
さらに図17〜図21等に示すように、電池セル1に接続された電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69は、第一ハーネスダクト51の第二案内溝55に保持される。第二案内溝55から引き出された電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69は、第二堰止壁57で保持される。また、電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69は、結束バンド71で結束することで、これらを纏めて第二堰止壁57に保持することが可能となる。
る。
(組み立て方法)
【0054】
以上の図に示す電源装置は、以下のようにして第一カバープレート20Bを固定し、高電圧ケーブル50を配線する。まず図5に示すように、ケース本体20Aの内部に、電池ブロック3を挿入して固定する。電池ブロック3には、図8等に示すように一対の高電圧ケーブル50が固定されている。また電池ブロック3のエンドプレート10の上面には、第一ハーネスダクト51が固定される。さらにケース本体20Aの両端面には、図7に示すように端面プレート30が固定される。
【0055】
この状態で、図13に示すように、電圧検出ケーブル68及び温度ケーブル69を結束バンド71で締結し、第二堰止壁57に係止する。さらに案内路58から引き出された高電圧ケーブル50を第一堰止壁52に係止する。この状態で、図4に示すように第一カバープレート20Bが固定される。この際、図19に示すようにケーブル類は堰止壁で保持される結果、第一カバープレート20Bで挟み込まれる事態が回避される。
【0056】
その後、図21に示すように第二ハーネスダクト64に電圧検出ケーブル68、温度ケーブル69を挿入し、さらに高電圧ケーブル50を破線で示す位置から矢印で示すように、第一堰止壁52から外し、第二ハーネスダクト64の第三案内溝66に挿入する。さらに高電圧ケーブル50の先端の配線を行う。そして図2〜図3に示すように、第二カバープレート20Cを固定する。このようにして、ケーブル類を破損することなく安全に、かつ噛み込み防止のための補助者を必要とせずに効率よく電源装置の組み立て作業を行うことができる。
【0057】
以上の電源装置は、車載用のバッテリシステムとして利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
【0058】
図28に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給するバッテリシステム100Bと、バッテリシステム100Bの電池を充電する発電機94とを備えている。バッテリシステム100Bは、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、バッテリシステム100Bの電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、バッテリシステム100Bから電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、バッテリシステム100Bの電池を充電する。
【0059】
また図29に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給するバッテリシステム100Cと、このバッテリシステム100Cの電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、バッテリシステム100Cから電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、バッテリシステム100Cの電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る車両用電源装置及びこれを備える車両並びに電源装置の組み立て方法は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。また防水ケースは、電源装置を収納するケースに限られず、防水構造が求められる他の用途にも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
100B、100C…バッテリシステム
1…電池セル;1A…開口部
2…セパレータ;2A…溝;2B…切欠部
3…電池ブロック
4…冷却隙間
5…送風ダクト
6…供給ダクト
7…排出ダクト
9…送風機構
10…エンドプレート;10A…補強リブ;10a…連結孔
11…連結材;11d…折曲片
12…止ネジ
13…電極端子
20…ケース;20A…ケース本体;20B…第一カバープレート
20C…第二カバープレート
21…鍔部
21A…本体鍔部
21B…カバー鍔部
22…側壁
24…ボルト
25…ナット
30…端面プレート
31…連結ダクト
40…封止部材
41…温度センサ
42…電圧検出手段
43…水平プレート
44…垂直プレート
45…垂直接合面
46…第二接合面
50…高電圧ケーブル
50A…正極高電圧ケーブル
50B…負極高電圧ケーブル
51…第一ハーネスダクト
52…第一堰止壁
53…待避空間
54…第一案内溝
55…第二案内溝
56…縦板
57…第二堰止壁
58…案内路
59…リブ
60…高電圧出力端子
61…出力端子ボックス
64…第二ハーネスダクト
65…第二ハーネスダクトカバー
66…第三案内溝
67…リブ
68…電圧検出ケーブル
69…温度ケーブル
70…制御手段
71…結束バンド
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
121…上ケース
121A…第一上ケース
121B…第二上ケース
123…ケーブル
EV、HV…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を開口したケース本体(20A)と、
前記ケース本体(20A)の開口面の少なくとも一部を閉塞するための第一カバープレート(20B)と、
前記ケース本体(20A)に収納される、複数の電池セル(1)を積層してなる電池ブロック(3)と、
前記電池ブロック(3)と電気的に接続された高電圧ケーブル(50)と、
を備える電源装置であって、
前記ケース本体(20A)内部に、
前記第一カバープレート(20B)装着時に前記高電圧ケーブル(50)を一時的に待避させるための待避空間(53)と、
前記第一カバープレート(20B)を前記ケース本体(20A)に固定後、前記高電圧ケーブル(50)を保持する固定空間と、
を構成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記待避空間(53)が、前記ケース本体(20A)内に設けられた、前記第一カバープレート(20B)による開口面の閉塞を阻害しない位置で前記高電圧ケーブル(50)を一時的に保持するための第一堰止壁(52)により形成されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、さらに、
前記ケース本体(20A)と第一カバープレート(20B)の両端面を閉塞する一対の端面プレート(30)を備え、
前記電池ブロック(3)の端面と前記端面プレート(30)との間に、前記高電圧ケーブル(50)を案内するための案内路(58)を形成してなり、
前記案内路(58)から、前記待避空間(53)及び固定空間に分岐されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記電池ブロック(3)は、
前記複数の電池セル(1)の、少なくともいずれかの電圧を検出する電圧検出手段(42)と、
前記複数の電池セル(1)の、少なくともいずれかの温度を検出する温度検出手段と、
を備え、
さらに電源装置は、前記電圧検出手段(42)及び前記温度検出手段と接続されて、前記電池セル(1)の電圧及び温度を監視する制御手段(70)と、
前記電圧検出手段(42)と制御手段(70)とを電気的に接続する電圧検出ケーブル(68)と、
前記温度検出手段と制御手段(70)とを電気的に接続する温度ケーブル(69)と、
前記電圧検出ケーブル(68)と温度ケーブル(69)とを保持するための第二堰止壁(57)と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(3)の上面で、前記端面プレート(30)と対向して固定される第一ハーネスダクト(51)を備え、
前記第一ハーネスダクト(51)は、前記端面プレート(30)との間で前記案内路(58)を構成するため、前記端面プレート(30)と対向する側面側に開口して前記高電圧ケーブル(50)を保持する第一案内溝(54)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(3)は、前記複数の電池セル(1)を積層した端面にエンドプレート(10)を固定してなり、
前記第一ハーネスダクト(51)が、前記エンドプレート(10)に固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
前記第一ハーネスダクト(51)は、前記第一案内溝(54)を設けた側と反対側の面に、前記電圧検出ケーブル(68)及び温度ケーブル(69)を保持する第二案内溝(55)を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(3)の上面であって、前記第一ハーネスダクト(51)と交差する姿勢に固定される第二ハーネスダクト(64)を備え、
前記第二ハーネスダクト(64)は、前記固定空間として、前記高電圧ケーブル(50)を案内する第三案内溝(66)を設けており、
前記第一ハーネスダクト(51)の第一案内溝(54)及び前記第二ハーネスダクト(64)の第三案内溝(66)で、前記高電圧ケーブル(50)を連続的に案内するように構成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一に記載の電源装置を備える車両。
【請求項10】
電源装置の組み立て方法であって、
一面を開口したケース本体(20A)の内部に、複数の電池セル(1)を積層した電池ブロック(3)を挿入して固定し、前記電池ブロック(3)と電気的に接続された高電圧ケーブル(50)を、前記ケース本体(20A)内部に設けられた、前記高電圧ケーブル(50)を一時的に保持するための第一堰止壁(52)に引っ掛ける工程と、
第一カバープレート(20B)で、前記ケース本体(20A)の開口面の少なくとも一部を閉塞する工程と、
前記高電圧ケーブル(50)を前記第一堰止壁(52)から外して、配線を行う工程と、
を含むことを特徴とする電源装置の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−108379(P2011−108379A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259333(P2009−259333)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】