説明

電源装置及び画像形成装置

【課題】負荷インピーダンスが温度や湿度等の外部環境に伴って変化した場合には電源のエラー検知作動ポイントを補正する
【解決手段】 出力と他ノードの間がオープンやショートになった場合にエラー検知するエラー検知部11を備えた電源装置において、外部環境の変化を検知する温度・湿度検知部14と、この温度・湿度検知部14の検知結果に基づいて、エラー検知の作動ポイントを変更するCPU演算部15及びエラー信号補正部13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力と他ノード間がオープンあるいはショートした場合にエラー検知する電源装置及びこの電源装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置において、電源の出力とグランド等の他ノード間にショートやオープン等を検知するエラー検知装置を設けることが広く実施されている。しかしながら、出力に繋ぐ負荷インピーダンスが温度や湿度等の外部環境に伴って大きく変化すると、回路構成によっては正しくショートやオープンを検知できないことがある。
【0003】
図11は正しくショート検知できない事例を示す従来の電源回路図である。この回路においては、正負両方の電位を2つのトランス1、2から得て、1つの出力端子3から出力するようになっている。このとき一方のトランス1から抵抗である負荷4への出力経路には抵抗5が存在するため、負荷4のインピーダンス値が抵抗5の抵抗値に比べて充分に小さくなってしまうと、無負荷の場合と負荷4がショートした場合の差が小さくなり、正しくエラー検出をすることができなくなってしまう。
【0004】
特に、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、像担持体である感光体の画像が転写され、転写された画像を記録媒体である転写紙などに転写するための中間転写ベルトは、温度、湿度によるインピーダンスの変動が大きく、高温高湿時のインピーダンスは通常オフィス環境におけるインピーダンスと比べて、3桁程度変動してしまう事例もあり、エラー誤検知防止を行う必要がある。そこで、中間転写ベルトの近傍に湿度センサなどのセンサを配置して湿度を検知してバイアス電圧を調整することが実施されている。画像形成装置において、温度や湿度条件により画像形成プロセス制御や定着制御を補正する技術は、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−57889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像形成装置に上述したような電源装置を使用した場合、電源の出力と他ノード間にショートやオープンが発生した場合、それらを検知することはできるが、画像形成装置の負荷インピーダンスが温度や湿度等の外部環境に伴って変化しても検知できないことがある。
【0006】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決すべき課題は、負荷インピーダンスが温度や湿度等の外部環境に伴って変化した場合には電源のエラー検知作動ポイントを補正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、第1の手段は、出力と他ノードの間がオープン又はショートになった場合にエラー検知するエラー検知手段を備えた電源装置において、外部環境の変化を検知する手段と、前記外部環境の変化を検知する手段の検知結果に基づいてエラー検知の作動ポイントを変更する手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
第2の手段は、第1の手段において、前記外部環境の変化を検知する手段は外気の温度又は湿度を検知することを特徴とする。
【0009】
第3の手段は、第2の手段において、 前記外部環境の変化を検知する手段は、前記温度又は湿度による抵抗値の変化を検知することを特徴とする。
【0010】
第4の手段は、第1の手段において、前記外部環境の変化を検知する手段が前記出力に繋がる負荷のインピーダンス値から前記外部環境を予測するインピーダンス検知部からなることを特徴とする。
【0011】
第5の手段は、第1の手段において、前記作動ポイントを変更する手段が前記エラー検知手段によって検知されるエラー検知信号値の閾値を変更することを特徴とする。
【0012】
第6の手段は、第5の手段において、前記閾値が記憶手段に格納されたエラー検知信号値テーブルを参照して変更されることを特徴とする。
【0013】
第7の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記作動ポイントを変更する手段が、前記出力の設定値を変更することを特徴とする。
【0014】
第8の手段は、第7の手段において、前記設定値をゼロに設定することを特徴とする。
【0015】
第9の手段は、第7の手段において、出力設定値を徐々に変化させて行き、エラーが発生しなくなった値を前記設定値とすることを特徴とする。
【0016】
第10の手段は、第1ないし第9の手段に係る電源装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0017】
なお、後述の実施形態では、エラー検知部は参照番号11に、電源装置は参照番号10に、外部環境検知部は温度・湿度検知部16に、制御部はエラー信号補正部13とCPU演算部15に、センサは部材17に、インピーダンス検知部は電流・電圧検知部16にそれぞれ対応している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源装置に繋がる負荷のインピーダンスが環境に伴って大きく変化しても、理想的な環境下(温湿度条件)でエラー検知するので、確実にショートやオープンを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。なお、各実施形態において同等な各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係る電源装置の基本構成を示すブロック図である。電源装置10の基本構成としては、この電源装置の出力とグランド等の他ノード間にショートやオープン等を検知するエラー検知部11と、このエラー検知部11からのエラー信号を受けて強制的に電源出力を停止する強制出力停止部12を備えている。負荷20はこの電源装置10からの出力を受けて動作する。
【0021】
図2は本発明の第1の実施形態に係る電源装置を示すブロック図である。この第1の実施の形態に係る電源装置は、図1の基本構成の電源装置に対してエラー検知部11と出力端子間にエラー信号補正部13を備え、さらに電源装置10の外気の温度や湿度等の外部環境の状態を検知する温度・湿度検知部14と、この温度・湿度検知部14で検知された温度、湿度を予め設定された規定値と比較するCPU演算部15とを備えている。その際、CPU演算部15は比較処理に必要な演算を行う。CPU演算部15は温度・湿度検知部14によって検知された温度及び/又は湿度の検知結果と、予め設定された規定値とを比較し、その結果に基づいて信号補正部13でエラー検知部11に送るエラー信号を補正する。これにより、温度及び/又は湿度の変化に伴い負荷20のインピーダンス値が変化した場合でも、理想的な温度、湿度環境下と同等のエラー検知を行うことができる。
【0022】
理想的な温度・湿度環境下でのエラー検知信号値と、温度・湿度が変化した場合のエラー検知信号値の関係をテーブル化し、CPU演算部15での比較演算に用いれば、より効果的である。また、併せて出力設定値を変更させることも効果的である。この電源装置10は負荷20のインピーダンス変動が大きい装置、例えば電子写真形成装置に搭載することで効果を発揮する。
【0023】
図3はこの第1の実施形態によるエラー検知の動作ポイントを変更させるCPU演算部15の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順では、まず最初に、エラー検知部11へ検知信号を入力する(ステップS101)。次に、温度・湿度検知部14が検知した温度や湿度が規定値以上か否かをCPU演算部15でチェックする(ステップS102)。規定値以上の場合はエラー信号補正部13においてエラー検知部11への入力信号を補正し(ステップS103)、補正された入力信号がエラー検知閾値以上か否かをチェックする(ステップS104)。一方、ステップS102において規定値以下の場合はステップS104に進む。ステップS104では、ステップS102で既定値以下と判定された温度、湿度、あるいはステップS103で補正されたエラー検知部11への入力信号をエラー検知閾値と比較し、閾値以上の場合は、エラー検知部11はエラー信号を発信するとともに、強制出力停止部12によって強制的に出力を停止する。閾値未満の場合はステップS101に戻ってステップS101以降の処理を繰り返す。
【0024】
図4は本発明の第2の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。この第2の実施形態では、負荷20に対する電流値及び電圧値からインピーダンス値を導き出し、インピーダンス値から予測した温度、湿度の値に基づいて、エラー検知の動作ポイントを変更するものである。
【0025】
すなわち、本実施形態では、図2に示した第1の実施形態において、温度・湿度検知部14を省略し、エラー信号補正部13と負荷20間に電流・電圧検知部16を設けたものである。この電流・電圧検知部16は、負荷20に対する電流値&電圧値を検知し、検知結果はCPU演算部15に送信するように接続される。CPU演算部15では予め電流値及び電圧値からインピーダンス値を導き出し、インピーダンス値から予測した温度及び湿度の値を記憶しておく。これにより、負荷20に対する電流値及び電圧値からインピーダンス値を導き出し、インピーダンス値から予測した温度及び/又は湿度の値に基づいて、エラー検知の動作ポイントを変更させることができるようにする。その結果、温度及び/又は湿度の変化に伴い負荷20のインピーダンス値が変化した場合でも、理想的な温度・湿度環境下と同等のエラー検知を行うことができる。
【0026】
図5はこの第2の実施形態によるエラー検知の動作ポイントを変更させる動作を説明するフローチャートである。最初に、エラー検知部11へ信号を入力し(ステップS201)、インピーダンス値が規定値以下か否かをCPU演算部15でチェックする(ステップS202)。規定値以下の場合はエラー信号補正部13においてエラー検知部11への入力信号を補正し(ステップS203)、補正された入力信号がエラー検知閾値以上か否かをチェックする(ステップS204)。一方、ステップS202において規定値以下の場合はステップS204に進む。ステップS204では、ステップS202で規定値以下と判定されたインピーダンス値、あるいはステップS203で補正されたエラー検知部への入力信号(インピーダンス値)をエラー閾値(インピーダンス閾値)と比較し、閾値以上の場合は、エラー検知部11はエラー信号を発信するとともに、強制出力停止部12によって強制的に出力を停止する。閾値未満の場合はステップS201に戻って以降の処理を繰り返す。
【0027】
図6は本発明の第3の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。この第2の実施形態では、エラー信号補正部13に温度や湿度の変化に伴って抵抗値が変化する部材を使用し、抵抗値の変化に基づいてエラー検知の動作ポイントを変更させている。従って、電源装置10の構成としては、図1に示した基本構成に対して、エラー検知部11と負荷20との間にエラー信号補正部13を設けた構成となっている。
【0028】
図7は湿度の変化に伴って抵抗値が変化する部材を示す平面図である。この部材17は、セラミックからなる基材17a上に高分子ポリマーからなる感湿材17bを塗布し、この感湿材17b上に金メッキ等で形成された電極17cを櫛歯状に設けたものである。これにより、湿度の変化に伴って電極間17cの抵抗値が変化する。なお、温度の変化に伴い抵抗値が変化する部材としてはサーミスタがある。このように、温度及び/又は湿度環境条件により抵抗値が変化する部材をエラー検知部11に接続することにより、負荷20のインピーダンスの変化を相殺することができる。なお、前記抵抗値が変化する部材の抵抗値特性は、当然負荷20のインピーダンス変化を相殺できるような特性のものを使用する。
【0029】
図8は出力設定値を変化させながらエラーが発生しなくなった値を新設定値とする処理手順を示すフローチャートである。すなわち、エラー検知部11へ検知信号が入力され(ステップS301)、CPU演算部では、エラー検知閾値と比較し(ステップS302)、エラー検知閾値未満になるまで出力設定値を変更する(ステップS303)。この処理は、新設定値を決めるときに、任意の数値を加え、あるいは設定値をゼロにすることも可能である。出力設置値をゼロにすることにより、より効果的に誤検知による出力停止を防ぐことができる。この処理は、特に使用保証範囲外の環境条件の場合は効果がきわめて大きい。なお、負荷への出力値はエラー信号補正部13からCPU演算部15の指示により変更される。
【0030】
図9は出力設定値を変えてエラーが発生しなくなった値を新設定値とする処理の他の処理手順を示すフローチャートである。この例では、外部環境に基づいてエラー検知の動作ポイントを変更するもので、図3に示したステップS103をステップS403及びステップS404に置き換えたものと同等である。すなわち、エラー検知部11へ信号が入力され(ステップS401)、次に、温度・湿度検知部14が検知した温度や湿度の検出値が規定値以上か否かをCPU演算部15でチェックする(ステップS402)。 温度や湿度の検出値が規定値以上であれば、さらにエラー検知閾値と比較し(ステップS403)、エラー検知閾値以上であれば出力設定値がエラー検知閾値未満になるまで出力設定値を変更する(ステップS404)。ステップS402で温度、湿度の検出値が規定値未満の場合、ステップS403で出力設定値の変更により温度、湿度の検出値が閾値未満になった場合、ステップS405でエラー検知閾値と比較し、エラー検知閾値以上の場合はエラー信号を発信するとともに、強制出力停止部12によって強制的に出力を停止する(ステップS406)。閾値以下の場合はステップS401に戻って以降の処理を実行する。
【0031】
図10は前記電源装置10を備えた画像形成装置の制御部の主要構成を示すブロック図である。前記電源装置10から電源が供給される制御部50は、CPU51、メモリ52、入力部53、IO制御部54、書込制御部55等で構成されている。CPU51はマイクロコンピュータ等で構成され、画像形成装置の全体制御を行う。なお、このCPU51はCPU演算部15のCPUと共用しても良い。メモリ52は、制御用プログラムを内蔵するROM、制御に必要なワークエリアを提供するRAM、制御に必要な各種情報を保持するNV−RAMなどである。このメモリ52に上述した理想的な温度、湿度環境下でのエラー検知信号値と、温度・湿度が変化した場合のエラー検知信号値の関係をテーブル化したデータも記憶する。入力部53には、パーソナルコンピュータ、スキャナ等からの画像データが入力される。IO制御部54は、各種モータやソレノイドなどの各種電装品の制御を行う。書込制御部55は印字ヘッドによる画像書き込み制御、キャリッジの移動制御、そして中間転写ベルト等の帯電制御等を行う。画像形成のための動作は従来から良く知られているので、説明は省略する。なお、前記温度・湿度が変化した場合のエラー検知信号値の関係を記憶したテーブルはCPU演算部15に付属させて設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る電源装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態によるエラー検知の動作ポイントを変更する処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態によるエラー検知の動作ポイントを変更する処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【図7】湿度の変化に伴って抵抗値が変化する部材の一例を示す平面図である
【図8】出力設定値を変えてエラーが発生しなくなった値を新設定値とする処理手順を示すフローチャートである。
【図9】出力設定値を変えてエラーが発生しなくなった値を新設定値とする処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御部を示すブロック図である。
【図11】正しくショート検知できない事例を示す従来の電源回路図である。
【符号の説明】
【0033】
11 エラー検知部
12 強制出力停止部
13 エラー信号補正部
14 温度・湿度検知部
15 CPU演算部
16 電流・電圧検知部
17 部材
20 負荷
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力と他ノードの間がオープン又はショートになった場合にエラー検知するエラー検知手段を備えた電源装置において、
外部環境の変化を検知する手段と、
前記外部環境の変化を検知する手段の検知結果に基づいてエラー検知の作動ポイントを変更する手段と、
を備えていることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、
前記外部環境の変化を検知する手段は外気の温度又は湿度を検知することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置において、
前記外部環境の変化を検知する手段は、前記温度又は湿度による抵抗値の変化を検知することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1記載の電源装置において、
前記外部環境の変化を検知する手段が、前記出力に繋がる負荷のインピーダンス値から前記外部環境を予測するインピーダンス検知部からなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1記載の電源装置において、
前記作動ポイントを変更する手段が、前記エラー検知手段によって検知されるエラー検知信号値の閾値を変更することを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項5記載の電源装置において、
前記閾値が記憶手段に格納されたエラー検知信号値テーブルを参照して変更されることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電源装置において、
前記作動ポイントを変更する手段が、前記出力の設定値を変更することを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7記載の電源装置において、
前記設定値をゼロに設定することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項7記載の電源装置において、
出力設定値を徐々に変化させて行き、エラーが発生しなくなった値を前記設定値とすることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の電源装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−148460(P2008−148460A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333506(P2006−333506)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】